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48 フォルクローレ  No.017(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。



 フォルクローレ [folclore] という言葉を聞いた事があるでしょうか。
 本来の意味としては、民俗学とか民俗伝承一般という意味ですが、我が国においては民族音楽として、ことにアンデス山脈周辺の音楽として認識されている事が多いようです。
 その代表曲といえばやはりEl Condor Pasa――「コンドルは飛んでいく」でしょう。
 歌にある「コンドル」は現地の言葉でファイアローを指しています。
 この地域に住むファイアローは一般に認知されている平均的個体より身体が大きく、その大きさは一.五倍とも二倍とも言われています。アンデスのファイアローは上昇気流を捕まえて、悠々と山間を飛び続けます。この地域の神話にはしばしば登場し、重要な役割を果たしている国の鳥ポケモンです。
 この曲は民俗音楽研究家アロミア・ロブレスが現地の伝承曲のメロディを採譜し、それをモチーフにして作曲したとされ、イッシュ地方の音楽グループ、サイドン&ドンファンクルがカバーアレンジを発表した事で一躍有名になりました。
 その後、様々な国・地方の言語で歌詞がつけられています。ここではそのうちの一つを紹介しましょう。


  大空に今日もまたはばたく
  一羽のコンドルが
  どこからかあらわれて
  アンデスのやまあいを
  飛んでいます

  ※
  太陽の栄える国 豊かなこの地に
  宝をもとめて 白人が攻めてきました

  殺された王は灰の中から
  コンドルに蘇えりました
  空高くコンドルは
  国を守るでしょう いつまでも

  ※繰り返し

  飛べ飛べコンドル 飛べよ
  果てしない空を
  アンデスのやまに
  影を落として
  裏切られたインカの
  笛の音かなし
  自由のため死ねと
  パチャママの教え

  作詞/オスカル・バージェス
  訳詩/吉田秀士


 かつてアンデス山脈周辺の国々はカロス地方などを要する西欧諸国に植民地支配された悲しい歴史を持っています。その過程でインカ帝国を含む様々な文明が滅びていきました。
 このバージョンの歌詞では、かつてのインカ帝国の滅ぼされた王が灰の中からコンドル――すなわち炎の鳥、ファイアローとして蘇り、国を見守っているという内容を情緒的に歌い上げています。
 ファイアローは昼間は山に大きな影を落とし、夜は闇を燃やして、飛び続けます。
 国としてのインカが滅びてしまっても、その精神は滅びず、ファイアローが空にある限り、歌のある限り生き続けるのです。

 また、歌詞中のパチャママとは豊穣を司る大地の女神であり、全てのものの母親とされています。侵略以降、ほとんどの土地の神様は信仰されなくなってしまいましたが、彼女の信仰だけは、侵略側の宗教の聖母と同一視するという方法で生き残っており、現代においても、祭りや結婚式の際の慣習として信仰の儀式が伝えられています。
 女性のしたたかさというか、強さが垣間見えるエピソードですね。
 その姿はミルタンクやガルーラなど♀のポケモンで表現される事もあるようです。