56 体は絆を表す ピッチ
18日から、ミナモシティ美術館は特別展として「ランセ地方 ブショーの生き様に見る美」を開催する。
ランセ各地に伝わるブショーゆかりの刀や掛け軸といった美術品の展示とともに、開催期間中の毎週日曜日は10時からと14時からの1日2回、当時のイクサを再現した特別形式のポケモンバトルショーを行う。
本誌では特別取材として、今回展示の責任者であるミナモ美術館学芸員のイワオさんにインタビューを行った。
ズバリ今回一番の見所は? と聞いてみると、イワオさんは「できれば全部、じっくり見ていただきたいですね」といささか苦笑しつつも、「今回最も見ごたえがあるのは、ランセのブショーの中でも知名度の高いカネツグが生涯に使った鎧兜のうち現在見つかっているものすべてを時系列順に並べた展示だと思います」と答えてくれた。
カネツグの武具といえば「愛」の字を冠した派手な兜がよく知られているが、それはカネツグの生涯の中でも後半、彼の武勲が知られてきた頃に初めて使用されたもので、さらにその「愛」を冠した兜だけでも2種類が存在するそうだ。
イワオさんによれば、ランセ地方のブショーはポケモンとの絆の深まりに応じ、鎧兜を変えたのだという。
「ランセ地方にはぼんぐりの木が自生しておらず、また他地方からそれが持ち込まれることも長らくありませんでした。ですから、ぼんぐりの存在が知られる前のランセにおいてポケモンを持ちブショーとなることはそれだけで大変な勇猛さを示すことだったのです。
ですが、その威光は同じようにポケモンを従えたブショーには通じません。ですからブショーたちはイクサでの強さと、それに直結する自らのポケモンとの絆の深さを絶えず競い合っていました。
さらにポケモンと深い絆を結び多くの武勲を挙げたブショーは、他のブショーを大きく上回る実力を持つことを示すために鎧や兜といったものを自身のポケモンに似せて作り直しました。パートナーのポケモンと一心同体の存在であることを示すその鎧は、敵軍の畏怖と味方の羨望の的だったという話が多くの古文書にみられます。その誉れを損なわないために、ポケモンに似せた鎧は例えばその地の城に務める武術師範にイクサで勝った者でなければ作ってはならないとか、そういう決まりがある地域も多かったようです。そういう意味では、ある種現在のジムバッジに近いものといえるかもしれません。
またポケモンが進化し、力をつけるとともに姿を変えることになぞらえて、十分な実力を示し鎧を新調することを『ブショーの進化』であるとも呼んでいたそうです。ランセの人々にとってブショーは、私たちの思うポケモントレーナーのような存在であるという域を超えて、半ばポケモンに近い存在として扱われていたのかもしれませんね」
モンスターボールなくしてポケモンと歩み、一生を通じてイクサ場を駆け抜けながらポケモンとの絆を深め続けたブショーたち。当時の美術品を眺めながらその生涯に思いを馳せ、そして自身のポケモンとの歩みを振り返る。そんな時間を、しばしの間この特別展で過ごしてみてはいかがだろうか。
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