74 バッフロンの角笛 奏多
イッシュ地方、カナワタウンの先には森が広がっています。そして、その森を抜けたところには、大平原が広がっています。この大平原は、大陸の中央部であり、今でも多くの先住民が住んでいます。大平原には、バッフロンやオドシシ、ウォーグルが多く生息していて、先住民と強いつながりを持ったポケモンたちです。
先住民たちは、ある思想を持っています。この世界は「大いなる神秘」によって創造され、世界の中心に「大いなる神秘」が存在している、というものです。「大いなる神秘」とは、よく様々な地方にある神話のように、ポケモンではりません。まして、人の形をしているものでもない。「宇宙の真理」といった、形の無いものです。「宇宙の真理」には、始まりも終わりもありません。「大いなる神秘」のもとでは、ポケモンも人も全てが平等です。いえ、それだけではなく、世界の全てが平等、世界に存在するもの全て、石や木さえ、平等だと考えられています。全てのものは「大いなる神秘」のもとに、平等であり、尊重されるのです。
そんな先住民には、とても大事な儀式があります。「サンダンス」と呼ばれる儀式です。「大いなる神秘」と対話をするための、先住民にとって、最も大事な儀式です。先住民の日常は「大いなる神秘」との対話で成り立っています。その時に、「聖なるパイプ」と煙草が最も重要とされます。先住民は「聖なるパイプ」を吹かし、「大いなる神秘」と対話します。
「聖なるパイプ」は、カルメットと呼ばれます。パイプは、石でできた火皿と、木製の柄からなっています。石は赤い石が最も美しいとされています。一番高級なものは、エスピオン・ルビーと呼ばれる、エーフィの額の宝玉に似た石を使ったものです。柄の部分には、ウォーグルの羽やバッフロンの毛、ビーズの細工などが施されています。
この「聖なるパイプ」を吹かすことのできるのは、大人たちだけです。では、子供たちは儀式の際、どうしていたのでしょう? 子供たちは、バッフロンの角で作られた、角笛を使っています。バッフロンの角は、オドシシの角とは違い、一度切ったら生えてくることはありません。そのため、角笛を造る際は、死んでしまったバッフロンから角を採ります。角を採る時は子供たちを連れて行きます。そして、自分たちが生き物から何かをいただいて生きている、ということを学ばせるそうです。そして子供たちは、一生懸命、自分の手で角笛を作ります。両親に教わりながら、自分だけの角笛を作るのです。表面には、自分のお気に入りのポケモンを、彫るようです。こうして出来上がった、バッフロンの角笛は一つ一つ大きさは異なり、それぞれの音を奏でます。
子供たちは、儀式の際にこの角笛を吹いて「大いなる神秘」と対話します。そして、子供の時に作った角笛は、一生の宝物となり、家宝となっていくそうです。
そのため、バッフロンの角笛というと、先住民にとっては、その人を表す大事なものだそうです。
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