78 夏の終わり 奏多
イッシュ地方ではハロウィーンの名称で親しまれている十月三十日のお祭りは、カロス地方の古い言葉では「サムハイン」といい、夏の終わりという意味だ。起源は古く、三千年前から始まったともいわれている。カロスの古い暦では、十一月一日が新年であり、その前日に死者の魂を迎える祭りとしてはじまった。
人々は、カボチャをくりぬいたランタンをつくり、その中にロウソクを灯し、死者の魂の導(しるべ)としたそうだ。始めはそうやって作られていた、カボチャのランタンだが、時が経つにつれてその目的は変わってきた。死者の魂は忌むべきものとされ、生きている人間と関わることの無いようにすべきだと考えられた。死者の魂がさまようハロウィーンの夜、ランタンを玄関先に吊るし、その中に入った魂を閉じ込めるようとした。そのランタンの中に魂が入り、動き出したものが、バケッチャだと考えられている。バケッチャの大きさがそれぞれ異なるのは、入ったカボチャの大きさがそれぞれ違うからだ。
ハロウィーンが近づくとバケッチャは、自分がランタンの中に入ったことを思い出し、どことなく意気揚々として行動し始めるという。
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