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79 フェアリータイプではなかった妖精 その1  リング(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。


 カロス地方には、様々な妖精の言い伝えが残っており、その言い伝えの多くにフェアリータイプのポケモンが関わっております。
 もちろん、これはフェアリータイプという呼び名が先に出来たわけではなく、フェアリー――つまるところ、妖精の存在が先にあり、妖精の仕業と信じられていた行為の多くが『とあるタイプ』を持っていたことから、その『とあるタイプ』がフェアリータイプと呼ばれるようになったとされています。
 ただ、一口に妖精の仕業だとされていた者も、ふたを開けてみればフェアリータイプを持つポケモンの仕業ではなく、全く別のタイプを持ったポケモンであることも少なくなかったようです。

 例えば、レッドキャップと呼ばれる妖精。これは、非常に凶暴な性質を持つ妖精で、その名の通り赤い帽子をかぶり、長く縮れた髪、しわくちゃの顔、鉤爪の生えた手と言う姿で杖を携え、斧を武器に人間に襲い掛かるという化け物という姿がカロス地方の各地で伝わっております。
 人を襲う際は、どんなに距離が離れていても一瞬で距離を詰め、斧を振りかざして襲い掛かり、その血を浴びることを至福としているため、レッドキャップを見かけたら、相手に見つかる前に直ちにその場所を離れるのが良いとされています。

 この妖精のモデル。または正体と呼べるポケモンは、悪・鋼タイプ。バトルや育成にいそしむトレーナーの皆さんならば連想できると思われるそのポケモンは、コマタナと呼ばれるポケモンでした。
 コマタナや、その進化形であるキリキザンが出現する地域では、何処に行っても危険なポケモンとしてガイドブックに載る扱いを受けていることからもわかるように、コマタナはレッドキャップの伝承に恥じないだけの危険さを誇るポケモンです。
 このコマタナというポケモンは集団で暮らすポケモンで、狩りも集団で行うポケモンです。コマタナやキリキザンの狩りの仕方は、コマタナたちが獲物を追い詰め、とどめはそのリーダーであるキリキザンが刺すという方式なので、実際には伝承のように距離を一瞬で詰めるのではなく、別の個体のコマタナやキリキザンの不意打ちを後ろから食らったのを、同行者が勘違いしたのではないかと言われています。
 なんにせよ、一瞬で距離を詰める力がなくとも凶暴なことには変わりなく、今でも強力なポケモンを持っていなければ、コマタナを見た時点でその場を離れるのが得策です。

 ところで、レッドキャップは殺人が行われた廃墟や墓場などに出没するとされています。現在のカロス地方でもそれを裏付けるように、15番道路沿いに存在する、事故が起きて閉鎖を余儀なくされ荒れ果てたホテルに出没します。ですがこれも、死者の魂がどうとか、血の匂いが好きだからというような理由ではなく、コマタナたちが身を隠す場所が多い所を好むという本能に従った結果、墓場や廃墟だっただけであるというのが真相のようです。