そこはとある稲荷神社。
周りには一人もいない静かな境内、まるでそこだけ別世界のような不思議な静寂が漂う中、一匹の獣がそこにただずんでいました。
神社の外側はぐるっと木々で覆いつくされており、内側に招き入れたかのように差し込む月光がその狐を照らしています。
白銀に身を包んだ滑らかな肢体。
ふんわりと揺れている九つの尻尾。
そして、その尻尾にはたくさんの短冊が貼られていました。
くわぁああん。
くわぁあああん。
凛と天に向かって鳴く獣の声はまるで鈴の音のように。
そして、笛の音を奏でるように獣の口元から青白い焔が伸びていきます。
くわぁあああん。
くわぁああああああん。
何度も月に木霊していく自分の歌に合わせて、獣は踊り始めます。
青白い焔がその踊りに導かれるように、宵の宙を舞い、いくつかの輪を作っていきます。
月光に照らされた青白い焔はらんらんと妖しく、まるでおいでおいでと誰かを招くかのように揺れています。
くわぁあああん。
くわぁああああああん。
やがて、獣の吐いた青白い焔は尻尾の方にゆらりと向かい、そしてそこに張られている紙に取りつきます。
すると、青白い焔に抱かれた紙は燃えていき、やがて、真白な灰となって、高く高く宵の空に昇っては消えていきます。
また一枚。
もう一枚。
青白い焔で灰となって、宵の空に飛んでいっていきます。
『もっとポケモンバトルが強くなりますように』
『タマムシ大学に受かりますように』
『タマゴから元気なポケモンが生まれますように』
様々な願いが星へと届いていきます。
くわぁあああん。
くわぁああああああん。
短冊に込められた願いを感じながら獣は踊り続けます。
星に人やポケモンの願いを聞かせるように青白い歌を紡ぎながら。
くわぁあああん。
くわぁああああああん。
くわぁあああん。
くわぁああああああああああん。