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  [No.2516] コイループ【ポケライフ】 投稿者:   投稿日:2012/07/17(Tue) 21:31:13   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 コイループ。それは商売繁盛祈願の一つである。
 発端は、ポケモンでない方のコイルが針金などひも状のものを、螺旋状や渦巻状に巻いたもののことを指すことから、『お客様が来る』→『お客様を満足させる』→『お客様がまた来たいと思う』→『お客様が来る』というスパイラルと見做したことによる。
 店舗とお客で、お客とお客で、商店街の入り口でレンタルできる数匹のコイルを交換し合い、お客様と交流を図るこの運動は、『(客よ)来いループ』として始められ、最近で言えばジョウトはコガネの地下商店街を見事発展させたという逸話が残っている。その際は、アサギシティより鋼タイプのジムリーダーのミカンを呼び込んで、大々的に交換イベントが開かれたそうだ。
 指紋のようにコイルによって一匹一匹違う磁紋を認証し、十匹以上のコイルを交換できたものは景品がもらえる。ありふれたイベントかもしれないし、それ以降にも頻繁に行われた各種イベントが功を奏したおかげの発展で、コイループは関係がないかも知れない。
 しかし、ゲン担ぎというのは何事においても肝心な物というのは変わりなく、最近ライモンシティの南端に出来たジョインアベニューでも、コイループによる興行の準備は着々と進んでいる。

 ライモンジムの一室にて。
「ねぇ、ホミカちゃん」
 そのコイループに広告塔となるのは、ライモンにジムを構える、トップモデル兼電気タイプのジムリーダーカミツレと、タチワキシティにジムを構える毒タイプのジムリーダーホミカだ。
「ん、なんだよ?」
「えっとね、貴方の作詞作曲してくれた子の曲なんだけれどね……」
 バンドを兼業しているホミカは、今回ジョインアベニューの公式応援ソングの歌手として、カミツレとのコラボを依頼されており、現在は曲や歌詞の調整の真っ最中だ。
「とってもノリのいい曲で好きなんだけれど、この歌詞……」

『Join us! Let'hava ball! How wonderful pay follow!
なんて、素敵な 想いの連鎖!
コイルを抱いて、交換のループで
伝わる気持ち

想いを胸に抱いたら
浮足立つ心を押さえて、電磁浮遊は使用禁止さ きちんと受け止めて
自信があるなら、型を破って当たって砕けろ 頑丈も無視して!
真実の想いを伝えて、心をクロスフレイムだ!
C! O! I! L! 恋ループ!! HEY!!』
「って……これじゃコイルを本気で殺しにかかっているじゃない! 電磁浮遊禁止とか型破り地震とか!」
 歌詞カードを指差しつつ、カミツレは悲痛な訴えをする。
「え、なんか浮き足立っちゃダメかなと思って……電磁浮遊とかそんな感じのイメージがあるからさー」
「型破りで自信とか、地震と掛けちゃだめよ……オノノクスにやられたら死にかねないもの……クロスフレイムも、レシラムの特性がターボブレイズだから死んじゃうわよ……流石にここまでの虐待ソングは……」
「まぁまぁまぁ、いいじゃないか。ここではコイルをハートに例えているんだ。自信をもって告白すれば、相手の心もキュンと来るってなぁ。今の時代、商売繁盛祈願ももちろん大事だけれど、現代の奥手な紳士淑女には恋愛も大事だろ? 当たって砕けろって気持ちを電磁浮遊なんかに頼らない心意気で表すのさ」
「うーん……なるほど。私としてはコイルが苛められるところ見たくないんだけれどなぁ……ホミカちゃんはなんかコイルに恨みでもあったりしてね」
 冗談めかして、カミツレは微笑み、再び歌詞をじっくりと読もうと思ったが。
「ギクッ」
 ホミカがわざわざ声に出して動揺した。
「いや、ホミカちゃん。声に出す必要はないのよ」
「いやまぁ、あるんだよ。毒タイプ対策には鋼タイプというのが定石だけれどさタチワキから旅立ったり、ヒオウギとかからの相手は大概コイルを連れてきやがるし……そのせいで、こっち為すすべなくやられたりさー。初心者相手に地震を使うわけにもいかないし……悩みの種なんだよ。
 全力でやって負けるならともかく、本気出せずに負けるのはな……」
「あー……なるほど。私も初心者相手に目覚めるパワーとか、カットロトムとかを使うわけにはいかないから、そこらへん悩みの種よねー。なるほど、そんな風にコイルに恨みがあったのね」
「まぁ、な。個人的な恨みを歌に込めるのもどうかとは思うけれど、スッキリまとまったからいいかなって、思ったんだ」
「じゃ、そういうことにしましょうかね。くれぐれもリアルでコイルを苛めちゃだめよ」
「わーってるつうの。ホミカもそこまで子供じゃねーし」
 こんな様子で、ちょっとした作詞に関する意見を取り入れ、調整しながら二人は歌を完成させてゆく。ジョインアベニューのお披露目の日には、その新曲が披露されることで湧き上がる熱気は、アベニューに人が入りきらないほどの大盛況。アベニューには入場制限をかけた上での開通式となった。
 そして、公式応援ソングが流れるアベニューの中で行われたコイルの交換会も大成功。客同士だったり、お店とお客で交換し合ったり。そうすることでそれらの間に交流が生まれ、談笑する機会やナンパする機会が出来る。
 ノルマをクリアすれば、恋愛成就のハートの鱗が貰えるので、片思い中の女性や恋に恋する乙女の間でもジョインアベニューは大人気、ホミカのもくろみ通りの『恋ループ』という言葉に、新たな可能性が生まれたようだ。


 ジョインアベニューが十分に発展した今でも、観光客でにぎわうバカンスの時期にはコイループによる粗品贈呈が行われている。時折やってくるカミツレやサブウェイマスターを始めとした有名人ともコイループが出来る事があり、それもまた一つの魅力となっている。
 そういうタイミングに居合わせることを祈って、貴方もコイループをしにジョインアベニューを訪ねてみては如何であろうか?


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