この世では、夜のとばりが下りて真っ暗になりますと、ルナトーンという月のポケモンが宵の町を照らしていました。
夜道では暗闇に紛れて、野生のポケモンが人間を襲おうかと意図をくるくるとめぐらしますが、全ての悪事はルナトーンの光で明るみになり、人間たちはその光のおかげで宵の世界を生きることができていました。
しかし、ある日のこと。
町でたくさんの酒を胃に流し込み、見事な千鳥足を舞う二人の男が肩組みしながら夜空を見上げました。
二人とも黒ヒゲを蓄えた顔に、鼻は真っ赤に染まっています。
「たしかに、夜はあかるいけどよぉー! 昼間に比べたらぁ、おなごの姿がよく見えねぇことべよー!」
「そうだ、そうだ、ほろ酔いの娘をよく見せろー! 見せろー!」
「おう、相棒、これはあれじゃねぇかべぇ?」
「なんだい兄弟」
「月の野郎は抜けがけしてんじゃねぇのかって思うんだべぇ!」
「なんでい、ひっでぇ話だなぁ。夜を照らしているついでに娘を覗き見かよっ」
「ちっげぇべ相棒。月の野郎はおなごを覗き見しているついでに夜を照らしているんだべぇ」
「そいつはもっとひでぇなっ!」
二人の男はガハハと下品に笑いますと、夜空に向かって、こう叫びました。
やーい!
やーい!
べぇーすけ!
べぇーすけ!
宵の町より
酔いの小町がお好みかぁー!?
おなごや夜道は用心して歩を進め
月の明かりは
鼻の下が長い送り狼の閨(ねや)ぞ
もしも抱かれてしまったら
二度と朝日を拝めないぞ
まずいことに、この男達の歌は大きく響いていき、やがてはルナトーンの耳にまで届く始末に。
もちろん、滑稽にされたことに怒ったルナトーンは二度とこの世の宵を照らすことなどするもんかと断言してしまいました。
さぁさ、大変なことになりました。
このままルナトーンがどこかへと去っていってしまえば、再び、この世の夜は外が真っ暗に染まってしまいます。
これでは夜遊びどころか、おちおち外に出歩くことさえもままなりません。
暗闇に紛れた野生のポケモンがいつ襲いかかってくるか分かったものではなかったからです。
町の人々や、流石に二人の男もどうしよう、いかがしようと困っていたときのことでした。
どこからともなく、たくさんのうさぎが現れました。
茶色の体に、綿あめのようなもこもことした毛を身につけたうさぎポケモン――ミミロルとミミロップです。
そのうさぎ達は木製の杵(きね)や臼(うす)を持っており、臼を地面に置きますと、杵を臼に向かって振り落とし始めました。
臼の中には何かが入っているようで、うさぎ達が杵を振り上げるときに白く伸びるものが現れます。
それは真っ白なお餅でした。
はいやお月さま
ほいやお月さま
そんなに顔を真っ赤にさせたら
爆ぜ(はぜ)てしまいんす
宵を照らすあなたの光は
酒をこぼす盃(さかずき)のよう
うさぎも酔って
ニンゲンも酔って
あなたも酔って
みんなみんな
好い(よい)仲間ではないか
うさぎ達が歌いながら、または踊りながら餅をついていきますと、まずは二人の男が歌いながら踊りだします。
それからこの祭のような賑わいに、町に住まう人間達が引き寄せられ、同じく歌いながら踊りだします。
そして、最後にルナトーンもうさぎ達と人間達の真上で踊りだします。
先程まで、鬼のような顔を見せていたのに、あら不思議。
ルナトーンは笑顔を浮かべていました。
怒りたい気持ちをぺったんこ
みんなの仲をぴったんこ
好い仲間のしるしとして
お団子食べれば
みんな良い笑顔
歌い踊り終われば、ちょうどいい塩梅(あんばい)にお団子ができあがりました。
その味に人間達はほっぺたが落っこちそうになり、うさぎ達は耳が伸びそうになります。
もちろんルナトーンにもお団子が手渡されました。
どうぞとお団子を差し出したうさぎはなんとも美しいミミロップで、顔を真っ赤にさせたルナトーンは爆発しました。
あれま大変と、急いで人間とうさぎ達はお団子を使って、ぴったんぺったんとルナトーンを直します。
「なんだ、やっぱりお月さんもオイラたちと一緒だべな!」
その男の言葉に人間達もうさぎ達も、そしてルナトーンも楽しげに笑いました。
【書いてみました】
(一応)前置き:このルナトーンはスケベクチバシ先生ではありません。
『おつきみだんごっ!』内で出てきたお伽話を作ろうと思って、今回の物語を考えました。
月見団子って、地球と月の縁をくっつける為に供えるものでもあるのかなぁと考えながら書いていき……。
結局、星と月がケンカではなく、悪口を言われた月がグレそうになるといった感じになってしまいましたが、一応、『おつきみだんごっ!』から生まれたということで、こちらの記事に付けさせてもらった所存でございます。
それにしてもお団子って不思議ですよね。
本当に縁をくっつける力がありますよね、きっと。
だって、人間と鳩尾キラーのロコンとかも(以下略)
そうですねぇ、そのロコンにはみたらし団子をあげれば……おや、誰か来たようd(ドカバキャグシャ!)
ありがとうございました。
【何をしてもいいですよ♪】