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  [No.2831] 流行のポケモン 投稿者:   《URL》   投稿日:2013/01/09(Wed) 00:30:46   166clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:コマンドシリーズ】 【ポケモンの名前は大体間違えてる】 【フォッコもふもふ


 それぞれに手錠をかけられ、パトカーに積み込まれる犯人たちを眺めつつ、キランはため息を吐き出した。これから数ヶ月、この犯人たちと同種の人間たちを、ムショに放り込まねばなるまい。それを思うと、この大掛かりな検挙の成功も、急に色褪せて見える。どうして人間は同じ過ちを繰り返すのだろう、とキランは哲学じみたことを考え出した。疲れているらしい。
 捕り物の終わった現場の真ん中に立っている彼を、他の捜査員が邪魔そうに追いやった。邪魔にならなさそうな場所を探し、出番のなかったパトカーに影に回ると、そこには仕事を放り出して遊んでいる彼の上司。三匹のポケモンと戯れている。上司は顔を上げると、キランと目を合わせてクスリと笑った。腕の中には暖色の、見たこともないキツネポケモンが抱きかかえられている。背中にはこれまた見たことのない水色のカエルポケモンが申し訳なさそうに張り付き、もう一匹、見たことのないハリモグラのポケモンは、場所にあぶれたらしい、彼女に構って欲しそうに周囲を走り回っている。楽しそうだ。
 見たこともないポケモンだ……というのは比喩ではなく、キランや彼の上司の知識不足でもなく、本当に彼らの知らない所からやってきた、見たことのないポケモンだからだ。
 この度、イッシュ地方と、新たな地方との間の航路が開拓されるにあたって、早速その地方のポケモンがこのイッシュ地方にやって来た。無認可で、闇取引の為に。十ヶ月もすればポケモンの取引には許可が下りるのに、ご苦労なことだ。
 キランは上司の近くに腰を下ろした。彼女は逮捕や護送や取り調べなんてどこ吹く風。ポケモンたちと遊んでいる。主に、キツネポケモンの毛をわしゃわしゃしている。キツネはすっかりリラックスした様子で、彼女に全てを預けていた。種族名はなんと言ったっけ。フォクソンだっけか。とにかくキツネの子どもみたいな名前だった。上司の背中のカエルと、離れて構ってアピールをするハリモグラが恨めしそうにフォクソンを見ている。でもってカエルがケツマロ、ではない。そんな子どもに悪影響を及ぼしそうな名前ではなかった。なんだったっけ。ケロマロ? ハリモグラは……ハリなんとかだった気がする。ハリマロ。いや、ケロマロと被っていなかったはずだ。ハリスケ。駄目だ、一回聞いただけだったから思い出せない。恥をしのんで上司に聞くことにした。
「名前、なんでしたっけ」
「レンリ」
「貴女の名前ではありません」
 見事に名乗ってくれた上司からそっと目を逸らし、「この子たちの名前ですよ」と言って、キランは手近にいたハリスケに手を伸ばす。ハリスケは顔の周りに付いた葉っぱをビンと立てて、威嚇してきた。そして何故か、キツネも毛を逆立て、カエルも剣呑な鳴き声を上げた。キランが彼女に少し近付いたというだけで威嚇してきたものらしい。キランは手を引っ込めた。
「名前?」
 上司も覚えていないのか、首を少し傾げて考える素振りを見せた。そして一秒も経たない内に、左手で拳を作って右手の平を軽く叩いた。そして、いつにない笑顔で喋り出した。
「そうだな。キツネはコンでどうだろう。ハリモグラはモグで、カエルはケロだ」
「名前を付けてどうするんですか! その子たちは元の地方に返すんですよ!」
「証拠ポケモンの横領なんて大した罪じゃない」
「大してなくても犯罪ですからそれ!」
 そうだなー、と聞いているのか聞いていないのか、上司はぼんやりと答えた。キツネポケモンの顔を覗き込み、毛を梳る。表情はキランからは見えない。
「それに、お前らは故郷に帰って、もっといい奴と出会わないといけないもんなー」
 話しかけるように呟く。その言葉に反応したのか、三匹はそれぞれに寂しそうな、嬉しそうな表情で、彼女にそっと寄りそった。

 三匹を故郷に送り返す日。キランと彼の上司も見送りに行った。三匹はキランには目もくれず、上司に対してはやたらと名残惜しそうにしていた。上司は笑って「また会いたくなかったら悪い人に捕まってここにおいで」なんて笑えない冗談を言っていた。そうして、あっという間に別れの時が来て、三匹はモンスターボールに収められて、高速船に積まれて港を出ていってしまった。
「寂しくないですか?」
 高速船が朱色に染まった水平線の向こうに消えるまで目をこらして見つめて、どうやっても見えなくなってから、キランは上司に尋ねた。「少しは寂しいさ」けれど上司は嬉しそうに笑って付け加えた。「でも、向こうでもっと愉快に過ごすんだから」と。そして、見えもしない三匹の故郷へ手を振った。

〜〜
犯人は「フォッコをもふりたかった」などと供述しており(略)


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