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  [No.2862] With Heart and Voice 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2013/01/27(Sun) 22:23:44   132clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ダイハル】 【げしげし】 【セルフげしげし

With Heart and Voice




 ここから見える景色は変わらない。白い波、キャモメの鳴き声、吹き付ける穏やかな潮風。なのに一番いて欲しいものはここにない。
 赤いバンダナを海風にたなびかせ、乱れる髪もそのままに遠くを見つめていた。魂が抜けたような顔で空と海の交わる境界を見つめる。頭の中に繰り返し浮かぶのは、ここにいない人のこと。
「どこ行っちゃったんだろう」
 机の上の手紙が風に飛ぶ。物音に後ろを振り返り、手紙と一緒にあったモンスターボールを取る。自分の代わりに、とあの人が置いていったもの。ボールを握りしめた。手紙の差出人、ダイゴのことを思い出して。
「ダイゴさんに、会いたいよ」
 育ちの良さを感じさせる綺麗な字で書かれた手紙を拾う。ここへ来るであろうハルカという少女に戻らないと告げた文面。二度と触れることの出来ないその人の表情、しぐさ、声まで会ったばかりのように蘇る。


 ハルカがダイゴに初めて会ったのは、石の洞窟という真っ暗なところだった。
「こんにちは。トレーナーかな?」
 ランタンの明かり一つ。そこにいたのは、ハルカが今までに会ったこともないような人間だった。整った顔立ち、凛々しい声。オレンジの光に照らされた笑顔に、ハルカは言うべき言葉が見つからない。固まったままのハルカを見てダイゴもどうしていいか解らないようだ。
「あ、あの……」
 ようやく出たハルカの声は震えていた。
「私、ここにいるダイゴさんって人に手紙を届けるよう頼まれて……」
「ああ、僕がダイゴだよ。めずらしい石に興味があってあちこち旅しててね……こんな奥までわざわざありがとう」
 デボンの社長に頼まれていた手紙を渡そうとした。上手く手紙が掴めない。ただ渡すだけなのに。怖いわけではない。それなのになぜこんなに緊張するのだろう。ハルカには解らなかった。
「うん。受け取ったよ。そうだ、君にはお礼させてもらおうかな」
 ダイゴは手紙を確認すると、荷物入れの中にしまった。そして代わりに取り出したのは、ポケモンに技を教える技マシンだった。
「これは技マシン。鋼の翼を教えることができるんだ。僕のお気に入りの技だから、君にも使ってほしいな」
 不思議な人だ。見ているだけで嬉しい気持ちになり、話すには勇気がいる。
 そして、そんなハルカには目もくれず、ひたすら作業をしているのだ。

 次に会った時は晴天の下、そして道の真ん中。
「やあ! 君はムロで会ったトレーナーじゃないか」
 ほとんど不意をつくように現れたダイゴに、ハルカの心臓は爆発寸前だった。石の洞窟であったように、緊張して動けない。何か言おうとしても、声は伴わずにいた。
「そういえば君の名前を聞いてなかったけど……」
「ハルカ……です……」
 何も言えないハルカを察したように、ダイゴは優しく話しかけてきた。凍り付いたからだが魔法のように解けるのを感じる。
「ハルカちゃんか! うん、覚えておく。君とはまた会うかもしれないからね」
 明るいところで見たダイゴは印象が違っていた。薄く青い髪が風に揺れている。その動きはやわらかく、ふんわりとしたダイゴの髪。まじめで冷静な顔をしているのに、口調は情熱的。ポケモンについてこんなに真剣な人に会ったことがなかった。
「ハルカちゃんはどう思う?」
「えっと……私は育てれば強くなると思います」
 話なんて半分が抜けていった。楽しそうに語るダイゴの目や、声に聞き入っていて。こうして話していることが信じられない。
 ハルカの隣に住む少年ユウキや、トウカシティで出会ったミツルには感じたこともなかったのに。

 それから偶然会うことが多くなった。
「ハルカちゃんは本当にいいものを持ってるね」
 その度にいいバトルセンスをしているとダイゴは言う。どうしてなのかハルカには解らない。それでも、つぼみをつけた花を眺めるようにダイゴは話しかけてきていた。集めたバッジを見せながらたくさん話しても嫌な顔一つせずに聞いてくれる。
「うん、その調子。僕はがんばってるポケモンとトレーナーが好きだから、君のこといいと思うよ」
 頭を撫でられた。ハルカは礼も言えず、だまってうつむいた。嬉しくて嬉しくて、なんて言っていいのか解らない。もっと撫でてほしくて、じっとしていた。

 マグマ団とアクア団の抗争に巻き込まれてしまい、ハルカは途方にくれていた。深海に眠る巨大なポケモンが目覚め、空が狂い、叫んだ。
 もうどうしようもないと海の上で空を見つめるしかなかった。何もかもが手遅れなのだ。ここで世界が壊れていくのを見ているしかない。
 諦めた時に見えた銀色の翼。夢を見ているのではないかと思った。
「ハルカちゃん! 大丈夫か?」
「ダイゴ、さん? ダイゴさん!」
 助かるんだ。根拠は全くないけれど、ハルカはそう感じた。ダイゴが来てくれた。だからもう助かる。まだこの事態は抑えることができると。
「ハルカちゃん。無理だけはするなよ」
 ハルカから一通りの話を聞いた後、ダイゴはそれだけ言い残すと鋼の翼に乗って飛び去った。その時、初めて会った時のことを思い出した。鋼の翼は僕のお気に入りなのだよ、と。

 いつの間にかハルカはダイゴにはっきりと感じていた。他の誰にも感じたことのない感情。ダイゴだけが特別だという想い。あの事件以降、さらにそれは強くなる。
 テノールの声を聞けばすぐに解るし、その後ろ姿を見ただけでハルカは駆け出した。驚かしてやろうと思っても、その数歩前に必ず振り向く。いつも失敗していたけれど、ダイゴは優しく迎えてくれた。
「ハルカちゃんは解りやすいからね」
 そんなダイゴの側にいられるだけでハルカは幸せだった。海に囲まれた島の街、トクサネシティにあるダイゴの自宅に何度も遊びに行った。突然行っても嫌な顔一つしなかった。
 少なくとも嫌われてはいない。ハルカは時間が許すかぎり、ダイゴに会いに行っていた。そしていつかダイゴの特別な存在になれるような気がしていた。だってダイゴはハルカをほめ、成長を喜んでくれているのだから。
 それに負けたのか、ダイゴはカギを預けてくれた。もし、留守中に来た時に入ってていいよ、と。まさかそんなことをしてくれるとは思わず、嬉しくてその日は眠れなかった。迷惑にならないように、なるべく在宅中の時間を見計らって訪ねる。なので、カギを使ったことはなかった。

 ルネシティジムリーダーに勝ち、ついにジムバッジが八つ揃った。そのことを報告すると、ダイゴは笑うこともなく、まじめな顔をしていた。
「楽しみだね」
 ダイゴからはそれだけ。いつものようなおめでとうとも何もなく。次はサイユウシティのポケモンリーグに行くんだね、とこちらの予定を見抜いたかのように。あまり喜んでくれないことを不思議に思ったけれど、それは今考えれば当たり前だったのかもしれない。
「ねえハルカちゃん。そこで約束しないか。次に会うのは、ホウエンリーグチャンピオンと勝った後にしよう」

 サイユウシティのチャンピオンロードを越える。口で言うには容易いけれど、想像を絶する厳しさだった。野生のポケモンは強いし、同じくチャンピオンロードを越えようとするトレーナーも手強い。用意した薬や道具が底をつきかけた時、眩しい光を見た。残った力を振り絞り、泥で汚れた足で駆け出す。
「ハルカさん!」
 自分を呼ぶ声にハルカは止まる。サイユウの青い空の下、友達とも再会する。最後にキンセツシティで会った時よりかなり元気そうだ。
「ミツル君! 元気だった?」
 久しぶりの再会。彼に迷わず最近のこととしてダイゴのことを話す。最近ずっと会っていないダイゴのことが、自然と出て来たのだ。するとミツルはとても不思議そうな顔をして聞いて来た。
「その人と、付き合ってるのですか?」
 そう聞かれて気づいた。そんな関係ではない。
 ハルカが一方的にダイゴが好きなだけ。ダイゴが子供だから仕方ないと追い払わないだけのような。ダイゴが直接言ったわけではないけれど急に不安になる。すぐに確かめたかった。けれど次に会う時はポケモンリーグのチャンピオンに勝った後だと約束した。ダイゴからそう言って来たけれど、きっと追い出すとかそういう意味ではないはずだ。
「そういうのじゃない、かなあ……でもね、今までこんな人いなかったの! こんなに会うだけで嬉しい人なんて初めて!」
 ダイゴのことを想うだけでなく、他の人に話すだけでも心が軽くなる。チャンピオンロードの疲れなどなかったかのようだ。
「そうなんですか? ハルカさんはとてもその人のこと好きなんですね。初恋は実りにくいっていうけど、ハルカさんなら大丈夫ですよ」
「ありがとう! チャンピオンに勝ったら報告しなきゃ! じゃあね!」
 初恋は実りにくい。そんなことあるわけがない。ダイゴはずっとほめてくれてたし、迎え入れてくれていた。そんなダイゴが拒否するわけがない。
 ハルカのすぐ目の前はポケモンリーグ。南国の花々が鮮やかな彩りで迎えた。この先のチャンピオンを越えたらダイゴに会える。
 一刻も早く会いたい。そんなハルカの気持ちが、ポケモンリーグの挑戦を急かす。

 四天王との戦いは激しかった。悪タイプのカゲツ、ゴーストタイプのフヨウ、氷タイプのプリム。そしてドラゴンタイプのゲンジとの戦いをハルカは勝利で終結させた。よくやったとほめてポケモンを戻す。そしてゲンジは言った。次はチャンピオンだな、と。
「ありがとうございます!」
「ただし強いからな」
「はい! でも負けません」
 チャンピオンに勝てばダイゴに会える。そうしたら話したい事、聞きたい事……たくさんある。奥の階段を登り、チャンピオンとの戦いに備える。最初は速いポケモンがいいだろうか。どんな作戦で行こうか。どんな人なのか、そしてどれくらい強いのか。けれど負けない。そのためにここにきた。ポケモンたちのボールを握って、ハルカは階段を駆け上がる。そして……。
「ようこそハルカちゃん」
 待ち構えるのはダイゴだった。ハルカは立ち止まり、黙ってダイゴを見ている。何がなんだか解らないようだった。そんなハルカのために、ダイゴは最初から噛み砕いて説明する。僕がホウエンのチャンピオンなのだよ、と。
「初めて見た時から君はただ者じゃないとは思っていたけどね。ここまで来れるかどうか楽しみだったんだよ」
「じゃあ、チャンピオンに勝ったらっていう約束は……」
「そういうことだよハルカちゃん。さて、長々話していても仕方ない。ホウエンリーグチャンピオンとして、僕は挑戦者と全力で戦う!」
 ダイゴはボールを投げた。現れるのは鋼の翼、エアームド。ハルカも応えるようにポケモンを出す。チャンピオンに勝てるまでと言ったダイゴが、目の前で勝負をしかけてきている。混乱する頭を落ち着かせて、ハルカもトレーナーとしてダイゴの約束を果たすためにも勝たなければならなかった。
「行け、ライボルト! スパーク!」
 ハルカの号令にライボルトが電気を溜めた。全身に電気を帯びて毛が逆立っている。そして立ちはだかるエアームドに飛び掛かる。けれどダイゴのエアームドは倒れる気配もない。相性だけではない。今までの相手より数段格上の相手。
「手加減はしない」
 目の前にいるのはよく知った優しいダイゴではなかった。チャンピオンとして君臨するダイゴ。王者の風格が漂い、挑戦者を威圧する。
 勝てる気配は全くない。けれどハルカは勝たなければならない。焦る気持ちがライボルトにも伝わるのか、静電気がたまっているのか、ぴりぴりとした空気がそこにある。この重圧にも勝てないと、チャンピオンを倒すには難しい。
 エアームドは風を刃にして攻撃する。エアカッターと呼ばれる技だ。けれどこの技を使った後に一瞬の隙が生じる。それを逃さずハルカは命令した。電気タイプの最高レベルの技、雷を。閃光と轟音が室内に響き、エアームドが倒れた。
「さすがだね。けれど次はどうかな?」
 試すようなダイゴの言葉。答える余裕もなく、ハルカは次の命令をライボルトに伝えた。次に出て来たボスゴドラは、ダイゴの命令が解ってたかのように大きな体ごと衝撃を与えてきた。ライボルトの体が吹き飛ばされ、瀕死状態となる。エアームドの攻撃を受けていたとはいえ、たった一撃でライボルトが瀕死に追い込まれた。
 ダイゴのポケモンはどれも別格だ。集中しなければハルカは的確な状況判断が出来ない。常にフィールドを見て、命令しなければ負ける。
 旅を初めてから常に一緒のラグラージがボスゴドラを地の力でねじ伏せた。その力は大抵のポケモンを沈めて来たけれど、今回もそうだと限らない。次に出て来るのは見たこともないポケモンだった。ダイゴはユレイドル、と呼んでいた。
 ラグラージを戻す。そして砂漠の精霊フライゴン。どんなにレベル差があっても、フライゴンはその素早さで翻弄して来た。けれどダイゴのポケモンは格が違う。いつものように行くかどうか解らない。
「フライゴン、地震!」
「いわなだれ」
 フライゴンが大きく地面を揺らすと同時に、空中へ飛び上がる。そして急旋回し、ユレイドルの岩攻撃を避ける。
 ハルカの二回目の指示が出る。フライゴンは忠実に実行した。しかしそれすらもチャンピオンであるダイゴは読んでいた。
「ギガドレイン」
「そのままいっけぇ!」
 フライゴンは地震で攻撃し、ユレイドルに接近する。その隙を逃すはずなく、フライゴンはユレイドルの触手に捉えられ、体力を吸われた。
「もう終わり? そんなことないでしょ?」
 ダイゴは余裕の表情で見ている。体力が減っているフライゴンの様子を窺いながらハルカは一度、ダイゴを見た。
「いいえ。まだ終わってない」
 ハルカの表情は自然と緩んだ。
 始まったばかりの時は解らなかった。この場にはダイゴとハルカの二人しかいない。たった二人の、誰にも邪魔されない真剣勝負。それが今なのだ。
 ふとハルカにはこの時間が永遠に続くように感じた。負けるかもしれないなど焦りの感情はすでにない。ダイゴと二人でホウエンの最高頂の戦いができることの快感が、ハルカの体を駆け巡っていた。

 
「僕は最後のポケモンだ」
 瀕死となったネンドールを戻した時、ダイゴが静かに宣言した。
「もう終わりなんですか?」
 必死なのを悟られまいと、ハルカも笑みで返す。しかしハルカも残りは一匹。余裕はないけれど、不思議と負ける感じがしない。
「ハルカちゃんは本当に凄いね。こんなに追い詰められてぞくぞくするとは思わなかった」
 もう後がないというのに、ダイゴの表情はとても生き生きとしていた。まるで遊びに夢中の子供だ。
 ダイゴの出したポケモンは見た事もなかった。メタグロスという種類だと教えてくれたが、それ以外は何も解らない。太い四つの足が体を支えている。そこからどう攻撃が出るのか、ハルカには想像もつかない。
「遅いよ」
 メタグロスの攻撃が速かった。流星のように煌めく拳が、ラグラージの脇をかすめて飛んだ。あんなに強い攻撃は見た事がない。体力があるラグラージだけど、もし今の攻撃がもう一度きたら、体力は残らなそうだ。
「ラグラージか。そして僕が正しければ、君ももうラグラージしか残っていないだろう?」
「よく見てますね。その通りです」
 ダイゴの目は常に二手も三手も先を見通している。ラグラージの体力がもうないことなど、とっくに解っているだろう。そして次に命じるのはあの破壊神のような大きな攻撃だ。だとするとハルカが取れる行動は一つしかない。
「メタグロス、コメットパンチ!」
「ハイドロポンプ!」
 フィールドに響くダイゴの声に重なるハルカの声。ラグラージの体にめり込むメタグロスの爪。一瞬だけ静まり返るバトルフィールド。今までに聞いたことのないような爆音がメタグロスの重い体を軽々と吹き飛ばした。
 ダイゴもハルカもしばらく目の前を見つめていた。フィールドに立つのはラグラージだった。
「……チャンピオンである僕が負けるとはね……さすがだハルカちゃん! 君は本当に素晴らしいポケモントレーナーだよ!」
 ダイゴはメタグロスに労りの声をかけてボールに戻す。そして両手を上げた。もうポケモンがいないことを示す合図。
「おめでとう! 君のポケモンを思う気持ち、そしてその気持ちに応えるため全力を尽くしたポケモンたち……新しいチャンピオンの誕生だ」
 ダイゴに言われても、まだ勝負の熱が冷めきれない。ダイゴに勝ったからといって、チャンピオンと言われても実感が湧かない。二人の時間が、こんなに速くあっという間に終わってしまうなんて。
 ハルカはラグラージを戻した。けれどまだ終わっていないような違和感がずっと残っている。先ほどまでの熱狂的な空気をまだ感じるというのに。
「ハルカちゃんとの約束を守れたね」
 深呼吸の後、ダイゴは静かに言った。
「何か違いません? 私、ダイゴさんとこうなるなんて思ってもなかった」
「参ったね。じゃあ後でトクサネの自宅においで。お祝いしてあげよう。本当にチャンピオンおめでとう」
 それだけ言い残し、勝負の場から去って行くダイゴ。後ろ姿も見慣れたものなのに、ハルカには何か違って見えた。ダイゴがチャンピオンだったという事実なのか、それとも見間違いなのか。解らなかったけれど、後で会いに行けるという予定だけがはっきりとしている。それだけでハルカは嬉しかった。
 すでにチャンピオンになったことなんてハルカの頭の中にはなかった。リーグ関係者に囲まれても、頭に浮かぶのはダイゴのことだけ。テレビ報道もインタビューも、何を言ったかなんて覚えてない。ここから早く抜け出して、行くべきところにいって。話すことなんてたくさんある。何から話題にあげようか、順番を考えて。
 しかし順番なんて考えても仕方ない。言いたいことは一つだけ。ダイゴにずっと抱いていた気持ちを伝えること。そしてそれからのことも考えていたのに。


 ここは変わらない。沖の白い波、野生のキャモメの鳴き声、涼しい潮風。それなのにもうダイゴはいなかった。置き手紙とモンスターボールを残して。
「僕の一番大切にしているポケモンをあげる。チャンピオンおめでとう!」
 何かが違うのだダイゴは。ハルカが欲しいのはそんな言葉ではない。チャンピオンとして健闘を讃える言葉でも、大切なポケモンを送ることでもない。何が欲しいのか、そんなの解りきっていた。
「いつものように、ダイゴさんがいればそれでよかったのに」
 気づいた時には遅い。もう会えない人のことを想っても仕方ないのは解っている。もしダイゴに勝たなければこんな結末にならなかったのではないか。チャンピオンなど欲しなければ……。
 けれどそんなもの、なんの慰めにもならない。胸の中心が苦しい。苦しさを吐き出すように咳き込んでも、痛みは取れない。息苦しさにしゃがみ込み、止まらない涙に視界がぼやける。初めての恋というのは実らないと言われても、こんな形で終わるなんて誰が予想できたのか。
 薄い青の髪、凛とした顔、テノールの声。忘れることなんて出来ない。どんなに忘れようとしても、思い出が強烈に跳ね返る。
 強く吹き付ける潮風がハルカの髪を乱していった。

















ハルカちゃんへ
 僕は思うことがあって、しばらく修業を続ける
 当分家に帰らない
 そこでお願いだ
 机の上にあるモンスターボールを受け取ってほしい
 中にいるのはダンバルといって僕のお気に入りのポケモンだからよろしく頼むよ
 では、またいつか会おう!
                             ツワブキダイゴより





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「今からでも間に合うよ!本出せよ!」
餃子を食べながらそんな会話が出て来た某所で。
「出すならうぃずはーとがいいなあ。表紙かいてースペースかしてー」
そんな無茶な要求通るまいと思ったら、通ってしまった。通ってしまっただよ!
Σ(・ω・)

ポケスコ3のうぃずはーとあんどゔぉいすを今の力で直してみました。
自分を納得いくまでげしげしできるのは自分しかいないっすなあ。なんてお前はヘタクソなんだ!!俺が直してやる!って思いながらやってました
そして、冬コミのスペースの一角に並んだコピ本。

鳩さんの綺麗な表紙が素晴らしかったです。
うぃずはーとだったはずが、表紙ついたらなんだかサウダージに見えて来た不思議。

本を手にとっていただいた方々、ありがとうございました。かなり余ると思ってました。
あと表紙かいてくれたのと、スペースかしてくれた鳩さん、本当にありがとうございます!


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