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  [No.3067] スズねの小路 投稿者:奏多   投稿日:2013/09/23(Mon) 23:44:45   76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「こら、ナデシコ。待ちなさい」
私はそう言いながら、エンジュの森を走っていく。
私の十メートルほど先には、きつねポケモンのロコンの姿が見える。あの子が、私の大事なものをくわえて行ってしまっているのだ。
「ナデシコ、止まらないと、もうご飯あげないわよ!」
そう叫びながら走っている私を、近所の人が物珍しそうに見ている。見ているだけじゃなくて、あの子を止めてほしいと思ってしまう。だが、追いかけっこに参加してくれる人は、もちろんいない。
自分のポケットを探るが、いつも入れているはずのモンスターボールは、入っていなかった。
そういえば学校から帰ってきたときに、机に置いたことを思い出した。
「全く、ついてない……」
思わず舌打ちを漏らし、そう呟いた。

あの子が持っていったのは、神楽鈴。巫女鈴とも呼ばれるもの。一応、巫女が舞を捧げるときに使う、重要なものだ。
私個人としては、あの鈴一つなくなっても、神社にはまだあるので問題はない。だが、祖母に怒られる、というオプションが付いてくるのは頂けない。
私は森の中の細い道を走っている。そんなうちに、木々の間から私の目に、塔が飛び込んできた。いつの間にか、エンジュのスズの塔の近くにまで来ていた。夕暮れの近いこの時間、そして秋の紅葉の時期もあり、オレンジに辺りは照らされていた。
私は走っていたその足を、ゆっくりと止めた。乱れていた呼吸を、深呼吸をして落ち着かせていく。

「ナデシコ? いるの?」
ゆっくりとこの細い道を歩いていると、ふわふわとした尻尾が見えた。
「ナデシコ」
私が名前を呼ぶと、ナデシコは振り向く。だが、すぐに前を見て歩き出してしまう。
私は小走りで、ナデシコの後を追う。
そして少し歩いた先は、森の終わりだった。
そこにあったのは、一面紅葉の絨毯と大きな塔。それを見て、私は自分がどこにいるか分かった。
「スズねの小路……」
エンジュジムのバッジを持っていないと入ることのできない場所だ。もちろん私はジムバッジを持っていないが。
ナデシコはご機嫌なようで、私に神楽鈴を返してくれた。
「もう、ナデシコ……」
私はナデシコを抱き上げる。
「私にこれを見せるために、こんなことしたの?」
ナデシコはそうだというように、鳴き声を上げた。
「ありがとう。でも、神楽鈴は今度から止めてね。おばあちゃんに怒られたくないの」
私の言葉にナデシコは、じっと私と目を会わせてくれる。良い子ねと頭を撫でてやる。
そして私は、こんな素敵な場所に連れてきてくれたナデシコを、ぎゅっと抱き締めた。


帰り道はどうしよう、とか。お坊さんに見つかったらどうしよう、などと思いながら。






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初めまして、奏多といいます。
基本ROM専だったのですが、「鳥居の向こう」に応募してみたので、こちらになんとなく短編を上げてみたり……

マサポケは3年ほど前から、ずっと覗いていました。
皆さんの素敵な作品が、大好きです。

このお話は、もう1作品「鳥居の向こう」に応募したいと考えているものの登場人物のお話です。

ええっと、私はロコンの尻尾をもふもふするのが夢です。


【か、描いてくださっていいんですよ】


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