絵本っぽいものその二。
ポケモンはね、何も草むらにばっかりいるんじゃないんだよ。 ぼくがやってるみたいに、耳をすませて、じーっとあたりをよく見てみて。
ほら、いるでしょ? 景色に隠れたつもりでいる、たくさんのポケモンたちが。 あそこの花畑の中に紛れた、一際目立つ大きなお花はラフレシア。 あんなに大きなお花を頭に乗っけておいて、自分はうまく隠れてると思い込んでるみたい。 小さな花が揺れるのに合わせて、自分の自慢の花も揺らしてる。 すっごい花粉が辺りに振りまかれてるけど、不思議なことに、周りのお花はくしゃみの一つもしないみたい。 仲の良いお友達なのかもね。 綺麗だから、まあいっか。
こっちのひまわり畑に紛れてるのは、キマワリ。 こっちは本当にそっくりだから、ラフレシアよりも自信満々みたいだけど、ムダなんだからね。 そんなふうにニコニコ笑ってるひまわりなんて、キミだけだよ。 背の高いお花の中で、キミだけ少しちいさいし。 楽しそうだから、まあいっか。
こっちのため池のハスの花の中に紛れてるのは、ハスボー。 そっくりさんだからキマワリよりもっと自信満々に見えるけど、ムダなんだからね。 そんなふうにポケモンを運んでるハスの葉っぱなんて、キミだけだよ。 どうもちっちゃなコラッタが向こうに渡るのを手伝ってるみたい。 まるでバタフリーに蓮の葉っぱを引かれて移動する、おやゆび姫みたいだね。 陸に上がったコラッタが、しっぽをブンブン振ってる。ありがとう、って言ってるみたい。 ほのぼのするから、まあいっか。
ふー、ちょっと疲れたなあ。 あ、あそこに腰かけるのにちょうどいい岩があるぞ。 よいしょっと……う、うわ、動いた!? わー!! 石かと思ったら、道ばたでねてたゴローンだった!! ごめんなさーい!!!!
ふう、ひどい目にあった……。おうちに帰って休もうっと。 あれ? おうちの入り口にカボチャがゴロゴロ転がってる。 なんだろう。あ、一こだけ張り紙がしてあるカボチャがある。
「いっぱい取れたから、いっぱい食べなさい」だって。 近所に住んでるぼくのおばあちゃんからだ。 どうせならあがっていけばいいのに。あとでお礼にいかなくちゃ。 その前にこのカボチャをお母さんのいる台所に運ばないとね……あれ、こっちのカボチャ、割れてる。 その近くのカボチャは、体があるぞ!? わー!! カボチャだと思ったら、フシギダネの背中のタネだった!! 自慢のカッターでカボチャを割って、中の種とオレンジの部分を食べてたみたい! ゆるせなーい!!
フシギダネはぼくのいかりを感じとって逃げたけど、絶対に逃さないぞ。 むしとりしょうねんの近所の兄ちゃんもまっさおな、ボクのうでまえを見せてやる! そりゃー、のしかかり!! どうだー、カビゴンほどじゃないけど、ぼくもなかなかのもんだろう! おどろいたみたいで泣いてる。ふっふっふ、泣いたってもう逃げられないぞ。
フシギダネはお腹がすいてたみたいだ。 おかあさんにフシギダネをかかえて見せてきたら、今日のお夕飯は一人分増えるわね、だって。 おばあちゃんのカボチャは、おかあさんのほうちょうとおナベと調味料で、スープになっちゃった。 フシギダネにもおすそわけ。 カボチャが好きなくせに、カボチャがスープになったことはわからないみたい。 ボクがスプーンですくって飲んでみせたら、フシギダネも顔をお皿に押しつけて飲みだした。 一心不乱にスープを飲んで、顔をあげるフシギダネ。 おいしい、ってほっぺに書いてあるよ。 フシギダネも飲むスープだけど、べつにフシギスープじゃないんだ。 フシギダネ、じゃなかった不思議だね。
アニポケのDVDのサイドストーリー3に収録されてる新米トレーナーのお話に出てきた、 カボチャに紛れてるフシギダネに悶死したので書きました。 季節感が謎ですが、一応カボチャの収穫時期は夏だそうなので ヒマワリと同時期に存在しててもありかなあと。
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