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  [No.3405] 自由研究 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/09/20(Sat) 00:24:23   96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:種?】 【ヒマワリ?】 【ゴンベ?

 どうしよう。いったいぜんたいこれぜったい、どうしたもんだろう。おれは夏休みに入る前にもらったプリン
トを前に、頭を抱えていた。

 夏休みのプリントには、右上に大してうまくもない太陽と朝顔が描いてあって、その下にはいろいろとめんど
くさいことが書いてある。夏休みの間に気をつけること。危ないところにいかない、海や川は大人につきそって
もらって行くこと、花火をするときは水をバケツに一杯、必ず用意して大人と一緒にやること。これは夏休みじ
ゃなくても当然のことだが、野山のポケモンたちをいじめたり、怒らせたりしないこと。

 その中に、課題一覧の項目があった。算数ドリル二十〜三十ページまで、漢字の書き取り漢字ドリル十五ペー
ジまで、絵日記毎日、エトセトラ。今年の宿題は多かった。だからおれなりに頑張って夏休みの最初の方できれ
いに終わらせたつもりだった。

 多かったせいで、忘れていたのだ。
 項目の中のひとつ、『自由研究』を。
 早くに終わらせたから遊べるぞーっと遊びまくったせいで、今日は八月三十日。
 明日で夏休みが終わる。
 どうやっても自由研究なんか間に合いやしない。
 担任のうるさいゴンベ(もちろんアダ名だ)に怒られる。

 困ってしまったおれは、近くの自然公園へと足を運んでいた。ヤンヤンマがつがいのメスと仲良く飛んでいる


 今年の夏はいい思い出が出来た。むしとり大会で優勝出来たからだ。
 ポケモンを探した思い出の茂みから、一匹のポケモンが出てきた。

 その時、おれは図書館にある「かいけつルカリオ」の本のごとく、すばらしいちえがぴーんと頭にひらめいた
のだ!

 

ヒマワリの観察日記 3年4組 ムシダ ジュンタ 

 8月30日 はれ 
今日は自然公園で、変わった種をみつけた。
さっそく庭に植えてみることにする。
よく育つように肥料もあげよう。



 8月31日 はれ
びっくりした! きのう植えたばっかりの種が、一晩で大きなヒマワリの花をさかせた。
夏休みの最後に、すてきな思い出ができちゃった。



「アホタレ!!!」

 九月一日の放課後、元気よく全ての宿題を提出し終えたおれは、誰もいない教室に居残りさせられ、ゴンベの
きあいパンチ、じゃないや、得意気に提出した自由研究レポートを顔にぶつけられた。

「なーにが大きなヒマワリの花だ。こりゃどう見てもキマワリにたいようのいしをやっただけだろうが、ドアホ
! ポケモンをくだらないイタズラに巻きこむなと前から言っとるだろうが!」

 担任のゴンベはポケモンにやさしい。キョロリとした目に、小さくて丸々した体がゴンベそっくりだから、ポ
ケモンに甘いんだ。

「お前がキマワリにやったのは、お前をなんの前知識もなしにいきなり大人に成長させて、仕事させるのと全く
変わらんのだぞ、反省しろ!」

 ゴンベはそう怒鳴り散らした後、おれの手に十枚も居残り用のプリント(大っきらいな、算数のプリントだ)
を押しつけて、戻ってくるまでにやっとけ! とまたもう一回怒鳴って、ドスドス歩いて行ってしまった。ゴン
ベと体重が同じというウワサはウワサじゃあないのかも。ちなみにゴンベの体重は一〇五.〇キロだ。

「あんなに怒ることないじゃんなあ、ちゃんと宿題やってきたんだからさ」
「キマー?」

 ボールから出した元ヒマナッツ・現キマワリに話かけると、キマワリはヒマワリそっくりな顔を傾げて、さん
さんと太陽が降りそそぐ窓の方へ走って行ってしまった。

 たいようのいしで進化したコイツは、太陽そのものが好きなのかもしれない。だから顔が、太陽大好きなヒマ
ワリにも、太陽そのものにもそっくりなんだ。
 
「夏休みの最後に、すてきな思い出が出来た、っていうのは本当なんだけどなー」

 おれは言いながら、腰につけておいた二つのモンスターボールを投げる。むしとり大会でも大活躍をした相棒
のストライクと、そのむしとり大会でつかまえたカイロス。それと、ひなたで昼寝のまっさいチュウなキマワリ


 どれもみんな、宿題の絵日記の一ページなんかには書ききれない、大切な思い出だ。
 怒られたことにも単純に落ち込んだけど、一番気になったのはゴンベの言葉だ。
 つかまえたてのヒマナッツを進化させるというのは、そんなにいけないことだったのか。

 そういえば、ポケモンは進化すると覚えるわざの数が少なくなると聞いたことがある。無理やり大人にして仕
事させる、っていうゴンベの言葉を思い出して、ゾッとした。

 急にひなたで寝てるキマワリにすごい悪いことをした気になって、カバンから端末機器を取り出してキマワリ
で検索をかけた。

「あ、なんだよ、キマワリ普通に進化しても結構いい技覚えるじゃん、くそー、ゴンベめー、お前なんかカビゴ
ンに進化しちまえー」

 ちょっとホッとして、おれはプリントの乗った机の上に顔を伏せた。
 
「ストライッ!」

 ストライクが、カマの形の手をおれの肩に乗せて、プリントをやれとうながす。ストライクのカマは、そうと
意識しない時はスパッと切れないらしくて、肩にカマの手をのせられても痛くはない。

 テレビで見たオーキド博士の話によると、子どもを優しく抱きあげてやるためにそうやって進化したんだって
言ってたけど。

 それにしてもコイツ、担任のゴンベよりスリムなくせにゴンベよりうるさい。なんだいなにがストライクだ、
ストライキしてやるぞー。ところでストライキって何だっけ。

「ちぇー、みんなうっさいなー。かあちゃんが三人もいるみたいだ」

 大っ嫌いな算数の問題を解きながら、ちょっとだけゴンベが言ったことを考える。確かにキマワリは進化して
も全然技を覚えないポケモンじゃなかった。

 でもこれが、他のポケモンだったとしたら?
 ゴンベの言っていた例えは、現実になっちゃうのかもしれない。

「なんとか出来たー」
「ストライッ!」
「カイカイッ!」

 ストライクはカマの手を打ち鳴らして、カイロスは頭の角をグワグワ動かして、おれの健闘をほめてくれた。
キマワリは相変わらず日向でお昼寝まっさいチュウ。

 教室の扉が開いて、担任のゴンベが入ってきた。

「どうだ、できたか……間違いもあるけど、前より正解が増えてるじゃないか。すごいぞ。それとな、お前」

 ゴンベは特製ポロックを食べた後のゴンベみたいに、ニコニコしてる。なんかいいことあったのかな。

「自由研究が酷かったから、後のはどんなんだと思ったけど、他のはすごく良く出来てるじゃあないか。特に絵
日記は、楽しそうに毎日を過ごしていたのが、よく書けてたぞ」

 だがなあ、と今度のゴンベはあきれたような顔をした。あきれているゴンベ。ポケモンとしてはレアな顔だ。

 だめだなあここの木になっていたモモンのみを食い散らかしたやつは。てんで食い方がなっちゃいない。そん
なセリフが、外国の映画の吹き替えみたいに、頭に浮かんで消えた。

「キマワリをヒマワリだとごまかすなら、絵日記の方に『ヒマナッツをつかまえた。虫取り大会でもらったたい
ようのいしで進化させた。』だの『キマワリはヒマワリみたいだ。進化させてから庭で楽しそうにアサガオとは
しゃいでる』だの、答え合わせみたいなことは描いちゃいかんだろう」
「だってさ、日記にウソは書いちゃいけないって、ゴンベ先生言ってたじゃないかー」
「自由研究でもウソをついてはいかん! それに私はゴンベじゃない、ゴンベエだ!」
「ちゃんとゴンベエ先生っていったよ」

 なーんちゃって、ウソウソ。でも絵日記にはウソを書けないっていうのは、ホントだよ。ストライクもカイロ
スもキマワリも、大事な夏の思い出だからね。もちろん絵日記の一ページになんて、まとめきれるもんじゃない
けど。

 ひなたでは、ヒマワリにそっくりなポケモンが、まだまだお昼寝まっさいチュウ。 

自由研究 (画像サイズ: 500×375 129kB)

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