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  [No.3491] 付いて来る 投稿者:マームル   投稿日:2014/11/05(Wed) 00:30:15   81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

続編のようなもの。
そこそこ良く書けた気がするからこっちにも投げる。
pixivでちょこちょこやってます。

……哺乳類でも卵なんだよなあ(システム上は)。

--------------


 夢を見ていた。
幼い頃、暮らしていた草原の夢だ。
隣にはシママ、今はゼブライカ。僕もまだ、主人と出会ってなく、ポニータだった頃の夢だった。

 目を覚ますと、やけに寝ていたな、とムクホークが呆れたように僕を見た。
確かに、と僕は思う。
秋も過ぎようとする今、炎の鬣を纏っている僕にとっては涼しい今、中々心地いい天気だったからかもしれない

ゆっくりと立ち上がり、僕は森へと行く事にした。
湖の方には、ゾロアークとオーダイル、それとこの頃そこに住んでいるアーケオスとアバゴーラが居るだろうけ
ど、そっちには行かない。
森の中、僕が主人のポケモンとなってからもずっと、僕に付いて来てくれた友であり、番でもあるゼブライカの
所に行こうと思った。

 どうして付いて来てくれたのだろうと、今でも良く思う。
主人がフライゴンに乗って空を飛んでいる時、モンスターボールの中からゼブライカがそれを追いかけて来るの
を見た事がある。
海を越えて、戻って来てその夜、野宿していたその外で、安堵した目つきで僕の方にやって来た時もあった。
……僕は、ゼブライカに惚れられていた、とは思えない。
今でもそうだ。番と言うよりは、とても仲の良い友達、という方がしっくり来る。
どうして、そこまでして僕と一緒に居ようとしたのだろう。いや、旅の途中にばれたけど、どうして主人から隠
れるようにして、主人のポケモンになった僕に付いて来たのだろう。
今でも分からない謎だ。これは。


 ぼふぼふと、腐葉土の上を寂しい音を立てながら歩いて行く。
僕は夢を見たからか、幼少の頃の事を思い出していた。
風で草が良くなびく、のどかな草原。ここからだときっと、走って5,6日した所にある、そんなに広大でもない
草原。
そこで僕は生きていた。
親から早く離れ、でも大して親から距離は取っていない場所で、幼馴染のシママと一緒にのんびり、特に大して
何も考えずにぼうっとのどかに暮らしていた。
しいて気を付けていた事と言えば、トレーナーからは逃げていたのと、凶暴そうなポケモンには近付かなかった
事。
それだけ。
足は元々速かった方だから、大して危険にも出くわさずに、本当にのんびり暮らしていたと思う。

 そんなある日、僕はビブラーバと出会った。出遭ってしまったというべきか。良く分からない。
あそこでずっとのんびり暮らしていても、大して僕の幸せには影響がなかったと思うから。
そう考えると、ゼブライカにとっては出遭ってしまった、になるのかもしれない。
僕に付いて来るのは大変だったろうし、海の向こうに行ってしまった時は、とても悲しんだだろうし。
見慣れない顔だなぁ、と思っているとトレーナーがやってきて、いつの間にかバトルが始まってしまった。
逃げていたら、きっと逃げきれていたんだろうけども、そこまで僕はバトル自体を嫌悪していた訳でもなかった

そして、相性の差で普通に負けて、いつの間にかポケモンセンターで小さいボールの中に入っていた。
シママは、どうしてるんだろうと、最初に思った。


 シママが付いて来ているのに気付いたのは、その数日後だった。
かぽかぽと町の石畳の上を歩くのも良いなと思っていた時、柵の外で僕を悲し気に見ていた。
とても、印象に残っていた。
町の外に出て、野宿する夜に再会して、かなり心配そうに体を舐め回された。鬱陶しいとも思ってしまった程に

……そう言えば、シママには両親が居なかった。
この前の夏、クーラーの効いた部屋で主人に「クーラーをガンガンかけなきゃいけないじゃないか」と愚痴を言
われながらも図々しく居座っていた時に、テレビで見た事を思い出した。
良い個体同士を番わせて、より良い個体を作ろうとしているトレーナーが問題になっているって。
現チャンピオンがそれをやっていて、チャンピオンを辞める事になったとか。
それは強い根拠も無い仮説だった。
僅かな根拠としては恵まれなかった子は沢山色んな所に逃がされたという事と、チャンピオンの手持ちにゼブラ
イカが居た事の二つ。
断定は出来ない。
でも、そう思える。逃がされた、望まない個体だったと。

 僕がギャロップに進化する前に、シママはゼブライカに進化していた。
悔しくもあったけど、納得も僕はしていた。僕は精々一日に数回バトルをするだけで、後はボールの中で過ごし
たり、かぽかぽ主人を乗せて歩いていたりしただけだけど、シママはずっと僕を野生のまま追いかけて、様々な
ポケモンの縄張りの中も通って来たんだろうから。
でも、悔しい気持ちはやっぱりあったからか、僕もその後すぐに進化出来た。
ゾロアがゾロアークになり、ビブラーバがフライゴンになり、手持ちにガントルとムクバードが加わった。
ゼブライカはただ、僕にひっそり付いて来ていた。


 ゼブライカは今日も僕が来ると嬉しそうに喉を鳴らした。
それはやっぱり、番のようなものではなくて、親友のようなものだった。
……僕は、君にとってどのような存在なんだい?
聞いてみたいけれど、それは叶わない。
一体ゼブライカが何を思っているのか、明確な言葉を持つ人間とは違って、僕は聞く事は出来ない。
どうして、僕に付いて来てくれたんだい? どうして、主人にばれても、主人が悪い人じゃないと分かっても、
目の前には姿を現さないんだい?
何も、聞く事は出来ない。
とても、もどかしい。
でも、それでも良いとは思う。
僕達はポケモンだから。人間じゃない。
明確な言葉を持つ必要がない、ポケモンなんだから。
僕は、ゼブライカの膨らんだ腹を見て、耳を傾けた。
もうそろそろ、卵を産む時期だ。冬になる前に、生まれると良いんだけど。
今、何かゼブライカに一つ聞けるとしたら、きっと僕はそれを選ぶだろう。
冬の前に、産めるかい?
それが今、一番重要な事だ。


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