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  [No.3539] 海の底から 投稿者:GPS   投稿日:2014/12/31(Wed) 01:51:45   48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

昔々の話です。


太陽の光が届かないほど深い海の底に暮らす神様は、真っ暗な住処に嫌気が差していました。
寝ても覚めても闇が広がるだけ、そんな世界から抜け出したいと願ったものの、海を守る神様は海の底から出ていくわけにはいきません。
そこで神様は、同じく海の底に住んでいた一匹の魚に声をかけました。

「私はここから動くことは出来ない。だからお前が私の代わりに、この場所に光を持ってきてくれ」

神様はこうも言いました。

「その礼に、お前には陸の姿を貸そう」

そして魚は神様から陸の姿を借り受けました。美しい鱗が傷つかないための厚い膜、水の代わりに空を泳ぐ鰭、獣の四足と牙に対峙する両腕。新しい身体を手に入れた魚は、水面の向こうに広がる世界へと飛び出しました。

魚は、神様のために光を集めました。
それこそ海の底に揺蕩う闇のような濃紺の身体は、魚が光を手に入れる度に眩しく輝く紋様を刻みました。
その身に抱えきれるだけの光を集め終わると、魚はまた海の底へと帰っていきました。

魚が光を持ち帰ると、神様はとても喜びました。
海の底を照らした光の褒美にと、神様は魚に新たな力、手に入れたその光を操る能力を分け与えました。

そして魚は、その後も何度と無く神様の遣いとして陸へと光を集めにいきました。
その度に神様は喜び、魚に新しい力を与えたのです。
その力は時に炎を生み出すものでしたし、時に鋼鉄に根ざしたものでした。龍の魔術を秘めた力だったこともありましたし、時には、空を飛ぶことすら可能にする力だったことだってありました。

そんな日々は、しばらく続きました。
しかしある時魚は、陸の生き物に惹かれてしまいました。
神様から借りている陸の姿を、魚は陸の者とその身を繋ぐために使ってしまったのです。

陸に染まってしまった魚に、神様は激怒しました。
いつものように光を受け取ることもなく、神様は魚にこう言い放ちました。

「お前はもう、海に生きることは許されない」

そして神様は、魚から海の姿を取り上げてしまいました。

「今まで与えた力は全てそのままにしてやろう。しかし、海の世界に生きる力を持つ資格はお前には無い」

神様はそれだけ言い残し、魚を海から追い出しました。
海の姿を失った魚は、悲しさと後悔に襲われながら陸を漂い続けました。
そうしているうちに、魚はやがて、かつて神様の元に光を持って帰ったあの時の海の底によく似た、小さな洞窟に辿り着きたました。
光が所々に輝くその場所で、魚はひっそりと暮らすことに決めました。


その場所こそが、イッシュ地方にある電気石の洞穴だと言われています。

多様な技を使えるシビルドンが、水と関わる技を覚えることが出来ないのは、遠い昔に海から追い出されたからだという説があります。

今もまだ、シビルドンは水中の代わりに空気を泳ぎ、かつて光を届けた海を陸から見つめ続けているのです。


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