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  [No.399] 【立候補してみた】 その未来は――。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/05(Thu) 20:24:27   23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



前置き:こんにちは、巳佑という者でございます。
    今回、ハッピーエンドに挑戦してみましたが、
    色々と勝手にやってしまったかもしれません。(汗)

前置き2:再投稿させてもらいました。よろしくお願いします。


【1】

『命、輝くもの。命、失うもの。二つの世界が交わる場所』

そう呼ばれている『もどりのどうぐつ』と呼ばれているところは、
命あるものが産まれしとき、また死せるとき、通る場所だとされている。
今、その『もどりのどうぐつ』の奥に二匹のポケモンがいた。
黄色と水色のポケモンだ。


「お前も来たのか、サンダース」
「シャワーズ……」


死んでから誰かに呼ばれるように導かれて、ここまでやってきたサンダースは目を見開いた。
まさかシャワーズもいたなんて、思いもしなかった。
サンダースが驚いている様子にシャワーズは嘲笑(ちょうしょう)を含んだ微笑みを向けた。


このサンダースとシャワーズは幼なじみであった。
ただ、よくケンカを売り買いしては、お互い暴れまわっていて、
おまけに加減をお互い知らなかったものだから、骨折などの大ケガすることも珍しくなかった。
だけどケンカすればするほど仲がよい……のかどうか分からないが、この二匹が離れるということはなく、
お互い、悩みを相談しあったりすることもあった仲である。


しかし、ある雨の日のことであった。
意味が分からないイライラに悩まされていたサンダースはワケも分からないままシャワーズにぶつけてしまった。
そして本気のケンカの中でサンダースは渾身(こんしん)の『かみなり』をシャワーズにぶつけてしまい、
当たりどころが悪かったシャワーズはそのまま死んでしまった。
その後、サンダースは周りのポケモンから責められ、
そのときに打たれた『どくばり』の毒によって死んでしまったのであった。


そして、今、こうして死んでから初めて、サンダースとシャワーズは再会した。
「……なぁ、シャワーズ」
「なんだよ?」
「俺が……悪かった……」
とんでもないことをしてしまったという顔を浮かべているサンダース。
「許すわけないだろ」
さっきまでの嘲笑から一転、シャワーズの目つきが険しいものになった。
「いきなり、お前のワケ分からない逆ギレに僕は巻き込まれて、よく分からないまま死んだ。
 ……正直に言おうか? 僕はお前が死んでせいせいしているんだよ」
シャワーズの言葉がサンダースの胸に突き刺さっていく。
本来のサンダースならその言葉に逆ギレしているところだが、
しかしサンダースは苦虫を噛んだかのような顔になって、何も言えなかった。


サンダースは死ぬ前にセレビィという時渡りポケモンに出逢い、
シャワーズを死なせてしまった『かみなり』を打つ過去の自分を止めに時渡りをしてもらったが……止めることはできなかった。
そこでサンダースは過去を変えることはできないということを教えてもらった。
過去を変えることはできない、その言葉がサンダースの頭だけに留まらず、
骨の髄(ずい)まで染みこんでいったのだ。


「お……俺のことは許さなくてもいいし……なんだって言ってもいい。だけど……これだけは言わせてくれ」
セレビィは死んでいくサンダースに過去は変えることはできないという言葉と同時に
もう一つの言葉を教えてもらった。
「これだけは、言わなきゃダメなんだ。本当にゴメン!!」
それは未来を変えることはできること。
もう死んでいる身だし、この先のことはよく分からない。
だけど、この先、もし、自分を変えることができるという未来があるというのなら、
変えてみたい。
いや、変えなきゃダメなんだとサンダースは自分に言い聞かせていた。
変えなきゃ、この先、自分は同じことを繰り返してしまうだろうと思ったから。
「…………お前」
「っ!」
シャワーズの顔がいきなり近づいてきてサンダースは思わず目をつむった。
「なんか、変わったよな。何があったんだよ?」
「へっ?」
「……勘違いするなよ。僕はお前を許したわけでもないし……ただ」
シャワーズは苦笑いを浮かべていた。
「なんかお前がこんなにも本気で謝ってくるなんて、ちょっとおかしくてさ」


シャワーズとサンダースは今までケンカしても、お互い謝ったことなんてなかった。
ケンカは日常茶飯事であったし、
謝ったらなんか負けかな、というプライドを二匹は持っていた。
だから謝るなんていらなかった。
だけど、サンダースは本気で謝ってきた。
謝っても死んだことは変えることはできないし、今さら何を、という感じは否めないが、
それでも、あの口よりも手が速く出るサンダースが本気で謝ってきているという事実は
シャワーズに何かしらのものが伝わったみたいだった。


「それに免じて……もう一つ正直な話をしてやるよ」
シャワーズは上を向いて、何か遠くのものを見ているかのような顔で語り始めた。
「僕はしばらく、ここで考えていたんだ。もちろん、最初はお前に殺されたって怒っていたけどな」
シャワーズの溜め息が上に浮かぶ。
「なんで、お前が不機嫌だったのかとか、お前は今頃どうしてんのかな,とか色々考えてた……」
あの雨の日、超がつくほど不機嫌だったサンダースの神経を逆なでしてしまったという点から、
いささかだが、シャワーズにも非があったと言えるかもしれない。
……けど、殺されてしまったという結果がシャワーズにそれを認めさせてなかった。
「僕は……自分が悪かったとは思っていない……ただ」
「ただ?」
「……お前の不機嫌の理由を聞けなかったっていう後悔は残ってる」
あのとき、いつもの憎まれ口調ではなく、
何があったのかを尋ねていれば、結果は変わっていたのか?
もしかしたら、自分もサンダースも生きていたのか? とシャワーズの心は揺れ始めていた。
サンダースが本気で謝ってきたときから。
「ほ、本当に勘違いするなよ!? 僕はお前のことを許したわけじゃないんだからな!」
「……分かってるって」
言ってて何だか恥ずかしくなってきたシャワーズにサンダースは苦笑いしていた。
シャワーズを殺してしまった上に、なんだかシャワーズに悩みごとをさせていたみたいで、
本当に自分はとんでもないことをしてしまったという事実が更に重くサンダースにのしかかった。

この先、どんな世界が広がろうとも、その罪は消えない。
その過去は消すことはできないが、
未来を変えることができるのなら、
自分を変えることができるのなら、
許してくれなくてもいい、
でも、
その未来の自分を見せることが、
今、自分にできるシャワーズに対しての償いだったから。
時間はかかるかもしれないけど。

サンダースがそう思ったのと同時に光が現れ、
そこでサンダースの意識も、シャワーズの意識も、一旦、途切れた。 
 

【2】

雨の日だった。
怒りに我を忘れて本気以上の『かみなり』を当ててしまった。
声をかけても返事がなかった。
体をゆすっても返事がなかった。
何度、それを繰り返しても結果は同じだった。
認めたくなかった。
一粒、また一粒、透明な雫が頬を伝って(つたって)いった。
止まらなかった。
思いっきり叫んでいた。

そして、
目の前が真っ暗になった。


【3】

ポッポのさえずりが遠くから聞こえてくる。
森の奥にある、一軒の木造の家。
並んで置いてある柔らかい二つのベッドの上に
それぞれ黄色と水色。

「どうですか? エルフーン先生、二匹の容態は」
「うん、シャワーズ君の傷は半分ぐらい直ったかな。サンダース君の精神状態も安定してきているし……やっと峠は越えたってところかな」
「良かったです〜。もう! 二匹ともいくらなんでも今回はやりすぎ! あとでお説教なんだから!」
「そうだね……今回は死んでいてもおかしくなかったからね、二匹とも」
「もう! エルフーン先生からもなにか言ってくださいよ!」
「あはは……それは君に任せるよ、なんかハリセン持っててやる気まんまんだし」
「分かりました! もうビシバシと……!」
「あわわっ! 頼むから傷口を開かせないようにね!?」

窓から木漏れ日がベッドの上で眠っている二匹の顔を優しく照らしていて、
外から、風に吹かれた葉っぱが子守唄のようにささやいた。

『大丈夫、誰でも、もちろん君たちでも、未来を変えることはできるから……』 




【あとがき】

★今回の話の流れ。

今回の話では最初に以下のようなルートを考えてみました。

1・サンダース君がシャワーズ君に『かみなり』を撃つ。
2・意識不明になったシャワーズ君にサンダース君が死んだと思って、精神に大ダメージを負い、倒れる。
3・エルフーン先生のところに運ばれ、なんとか二匹とも一命を取りとめる。

この2と3の間に
まず、セレビィさんが干渉してサンダース君にシャワーズ君が死んだ後の世界(幻?)を見せる。
その後、幻でもなんでもなく、本当にサンダース君が生死の境をさまよっているときにシャワーズ君と再会し、今回の話へ。

ちなみに場所を『もどりのどうぐつ』にしたのは、
あそこは……三途の川みたいな場所なのかな……と考えてみた結果です。(汗)

……とまぁ、こんな流れかなぁと思いながら、ハッピーエンドを考えてみました。(汗)
最初は全部、サンダース君がシャワーズ君に『かみなり』を撃ったことも含めて、
夢だったんだという終わりを考えてみましたが、
セレビィさんのセリフと、
ふにょんさんのあとがきから、
サンダース君がシャワーズ君に『かみなり』を撃ったという事実までも夢にしては、
過去は変えられないという重さが伝わらなくなってしまうかも!? と思って、
上記の通り、生死をさまよってからの生還という終わりにしてみました。
と、とりあえず、ハッピーエンドってこんな感じで良かったですかね?(汗)

あ、それと勝手にエルフーン先生も使ってしまって、大丈夫だったでしょうか……?(汗)
最初はラッキーさんとかタブンネさんとかを考えていましたが、
ふにょんさんの作品ですし、あの可愛い先生がいいかなと思いまして。


★未来からのメッセージの感想。


過去は変えられないこそ、それを認めることが難しいのかな……。
シャワーズを殺した後の「わざとじゃないんだ!」というサンダースの言葉から、そう思いました。


★最後に……。

改めて、ふにょんさん、
【ハッピーエンドは任せたのよ】に微力ながら立候補してみました。

ありがとうございました。

それでは、長文、失礼しました。


【五分間シリーズで一番好きなキャラはエルフーン先生なのよ】
【エルフーン先生を応援してるのよ】
【サンダース君とシャワーズ君に幸あれ!】


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