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  [No.429] Link ふゆーんフユンテ 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/05/12(Thu) 17:55:18   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
Link ふゆーんフユンテ (画像サイズ: 1068×1513 293kB)

私がこのサイトに初投稿したのは、去年の12月31日でした。
本当に、懐かしいものですね。

実はこの絵は、私が初めてマスキングテープを貼った絵です。
今見ると「ここ、ちょっとずれてる」「色薄い」など、修正したいところだらけです(^^;


  [No.430] Link1 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/05/12(Thu) 17:56:48   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 昨日はとても風が強かった。牧場のミルタンクたちを小屋に入れようと外に出たときには、3匹に1匹のミルタンクがひっくり返ってばたばたしていた。その必死な姿が…なんというか…メタボである母にそっくりで、少しにやけてしまった。
 そして今、私は牧場の端にある風車の前に立っていた。風車に何か得体の知れない物体が引っかかっているのである。ふよふよと風にゆれ、砂まみれになっているその物体は、じっとこっちを見ている。
「…ポケモン?」
「ふゆーん」
ちょっと不気味なその声にビビりながらも、助けないわけにもいかないので、私は風車の中の階段をかけ上り、そのポケモンが引っかかっている風車の羽に近い窓を開けた。
「ぷわわー」
「…わっ、わかった。今助けるからその不気味な声出さないで」
ポケモンの紐(?)が風車に結ばれていて、これじゃあ自力で抜け出せないはずだと1人で納得しなから、私はポケモンの紐をほどいて窓からポケモンを中に入れた。なんていうポケモンなんだろう…こんなポケモン見たことない。
「すごい砂まみれ…昨日の風に吹き飛ばされちゃったの?」
「…」
「洗っても大丈夫かな?水苦手?」
「…」
「あ、ごめん、声出していいよ。ほどほどに…なら」
「ふゆゆーん♪」
 そのポケモンはゴムのような布のような謎の手触りで、どこもかしこも謎だらけだった。とりあえず、ミルタンクの水浴び用の桶に水をためて、その中に入ってもらったのだが、何故か沈まない。まるでうきわみたいだ。しかたがないので風呂場に行き、家のシャワーで砂だけ落としてやった。すると、そのポケモンが嬉しそうに空中をくるくるまわり始めた。
「ふゆーん♪ふっゆゆーん♪」
その声を聞きつけたのか、父が風呂場までやってきた。
「なんだ…新しいポケモンか?」
「風車に引っかかってたの。お父さん、このポケモンの名前知らない?」
「…本棚に最新のポケモン百科事典入ってたぞ」
「ホント!?ありがとう!」
 私はすぐさま本棚から百科事典を取り出し、ぱらぱらとめくった。最初のほうのポケモンは見たことがあるのに、後ろのほうになると全然わからない。まぁ、普段からミルタンクにしか縁のない私にとっては、他のポケモンなんて知らなくても困ったりしないのだが。
「あった!…フワンテ?」
「ぷわわー♪」
いつのまにか後ろにポケモン…じゃなくてフワンテがいた。最初は不気味だと思っていたその声も、慣れてくればそんなに気にならない。むしろ、可愛いとさえ思い始めていた。
 私はフワンテをつれて外付けに出て、フワンテの紐…じゃなくて手を離した。すると、フワンテはふよふよと空を飛び始めていた。
「ねぇお父さん、フワンテ飼っちゃ…」
そう言いかけたとき、急に風が吹いて、フワンテは風にさらわれてしまった。それは、突然の別れだった。
「どうした?」
「ううん、何でもない。私、ミルタンクたちを小屋に戻してくるね」
 これでいいと自分に言い聞かせながらも、翌日私はまた風車に向かって歩いていた。そんなに何度も引っかかるわけないのに…とあきらめかけていたそのとき
「ふ…ふゆーん」
聞き覚えのある可愛い声、風車を見上げると、フワンテが申し訳なさそうにこっちを見つめていた。


  [No.431] Link2 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/05/12(Thu) 17:58:12   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「手癖が悪い!」
「ふ…ふゆーん…」
「でも、ありがとう。もらっとくね」
 最近フワンテがいろんな物を拾ってくるようになった。良いときはやみのいしとかきのみを自慢の手に引っかけて(?)きてくれるのに、悪いときは黒き流星(G)を得意げな顔をして引っかけてきたりする。本当に手癖が悪い。
「色々持ってきてくれるなら、ランプを持ってきてくれたらいいのになぁ…」
 この前フワンテが引っかかっていた風車は、ど田舎にあるこの牧場に電気を届けるために国が作ってくれたものである。ただ、風が吹かなかった日は、夜家が真っ暗になってしまう。だから、風のない日はいつも19時には寝るようにしている。どこぞのおばあちゃんだと思った奴、お前も未来のおじいちゃんおばあちゃんだ。
「ふゆっ!ぷわわ!」
「え、どうしたの?ちょっとまって、フワンテぇ!?」
まるで「ボクが持ってきてあげるよ」とでも言うように、フワンテは空に飛び立っ…というか吹き飛ばされていった。大丈夫なのだろうかあの子。私はさっきフワンテがくれたやみのいしをポケットに入れて、風車に向かって走り出した。また風車に引っかかってるかもしれない。…というかあの子が風車に引っかかっていないことのほうが珍しいのだ。
「…いない」
 風車についた私は、ちっともまわっていないその羽に、フワンテを見つけることができなかった。少しの沈黙と湧き上がる不安。まるで息子を心配する母親のような気分だ。産んでないけど。
 次の日も、また次の日も、フワンテは帰ってこなかった。
「もぉ、どこいっちゃったのかしらねぇ」
ミルタンク激似の母も心配そうに空を見上げている。
「大丈夫、そのうち帰ってくるよ。風の吹いた日に」
「そぉかしら?」
「お母さんも、動かないと本物のミルタンクになっちゃうんだからね!私、ミルタンクに水浴びさせてくる」
 この前フワンテを洗おうとして失敗した桶に水を入れて、私は外に出た。風車に一番近いミルタンクに水をかけ、私はまた風車をみつめた。そのとき、急に風が吹いて風車がまわりはじめた。フワンテが帰ってくるかもしれない。私はからっぽになった桶を持って家まで走った。
「ふゆーん!」
 案の定、フワンテが帰ってきていた。しかも、また得体の知れない物体を引っかけて。フワンテの手からそれを受け取ると、それは私をじぃっと見つめた。見た目はたしかにランプに似ている…けどこれは絶対ランプじゃない!
「ぷわわー」
フワンテは器用に本棚からポケモン百科事典を取り出してぱらぱらめくった。そして、その物体と思われるポケモンのページを開いた。
「…ランプラー?」
「ふゆーん!」
「ふよーん♪」
2匹は似たような返事をすると、くるくるまわってみせた。同じゴーストタイプなので気が合うらしい。
「フワンテ、ちょっとおいで」
「ふゆ?」
「手癖が悪い。でも、ありがと」
私はフワンテをそっと引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。


  [No.432] Link3 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/05/12(Thu) 18:00:42   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「フワンテ、シャンデラ、そろそろ暗くなるから帰っておいで」
「ふゆーん」
「ふゆーん」
 風車に引っかかっていたフワンテと、そのフワンテが拾ってきたやみのいしで進化したシャンデラを家に招きいれると、暗かったリビングが灯りに包まれた。シャンデラは青い炎を赤い炎に調節し、テーブルの上にふよふよ浮いた。
「シャンデラ、いつもありがとう」
そう言う私を見て、フワンテはむすっとそっぽを向いてしまった。「どうせボクは役に立たないですよー」と言わんばかりのすねっぷりで、思わず笑ってしまった。
「明後日から雨が続くんですって。やぁねぇ、またミルタンクが機嫌損ねちゃうわ」
「え、じゃあてるてるぼうず作らなきゃ。闘牛みたいなミルタンクなんてもう一生見たくないもん」
 2年ほど前、雨が続いてミルタンクたちを外に出せなかったことがある。外に出られないストレスがたまったのか、ミルクはとれないし、いつも私がポニーテールにゆわっているリボンに反応して暴れしだすし、とにかく大変だったのだ。
「フワンテ、てるてるぼうず作るの手伝ってよ、ね?」
「ぷわわー♪」
 私は白いハンカチとティッシュを持ってきて、てるてるぼうずを作り始めた。それをじっと見つめるフワンテ。すると、何か思いついたらしく、私の服の裾をひっぱって玄関までつれてこられてしまった。フワンテが黒い傘をつんつんつっつくので傘を開いてあげると、次はシャンデラを呼んで、器用に傘の取っ手をシャンデラにひっかけた。
「フワンテ…?」
「ふゆーん!」
フワンテは傘の上の部分を持つと、外に出ていってしまった。家からは灯りが消え、何も見えない。
「お父さん、お母さん。あの子たち、今日はもう絶対に帰ってこないから、もう寝よう」
そう言って、その日はもう寝ることにした。
 フワンテが帰ってきたのはその2日後、丁度雨が降り始めた日だった。
「ぷわー!ぷわわー!」
得意げにそう言うフワンテの下には、傘、シャンデラ、そして黒いてるてるぼうずが6匹ぶらさがっていた。
「…カゲボウズ?」
 フワンテとシャンデラが引き連れてきた黒いてるてるぼうずは、どうやらポケモンらしい。しかも、なんかいい香りがする。なんていうか・・・洗いたてって感じ。
「フワンテおいで。あんただけ、傘の上にいたから雨で汚くなってるよ」
「ふゆーん♪」
私はフワンテをお湯で濡らしたタオルで拭いてあげた。カゲボウズたちがじっとこっちを見る。瞬きもしないでじぃっと…
「…負けた。カゲボウズたちも洗ってあげるからこっちおいで。」
「ふゆゆん♪」
「シャンデラは水苦手だからいいよね?」
「ふよーん」
それにしても、なんだろう。ゴーストポケモンってみんな同じような鳴き方するんだね。ふゆーんとかふよーんとか…うーん不思議。
 私はお湯をためた桶に6匹のカゲボウズを入れて1匹ずつ丁寧に洗った。いつもの液体洗剤を泡立てて使ってしまったけど、布だから大丈夫だよね。うん、大丈夫。カゲボウズたちは泡に息を吹きかけて遊んでいる。可愛い…
 水できちんと洗い流した後、首をしめない程度にカゲボウズを絞ってシャンデラに引っかけた。カゲボウズたちもぬくぬくと幸せそうな顔をしている。シャンデラも、カゲボウズから石鹸の香りがするらしく、機嫌がいい。
「フワンテ、ミルタンクの小屋に行くけど一緒にくる?」
「ふゆーん!」
 私は念のため髪を結わっていた赤いリボンをはずしてテーブルに置いた。ミルタンクはイライラすると赤い色に反応する。小屋とつながる廊下を抜けると案の定ミルタンクが少しイライラし始めていた。まだ雨が降って1日もたってないのに、これじゃあミルタンクが本当に闘牛になってしまう。
 ふと振り向いてみると、後ろからカゲボウズが5匹ついてきていた。ミルタンクを見ると嬉しそうに近くによっていった。一方ミルタンクは、さっきのイライラが嘘のように消えて穏やかな顔をしている。
そっか、カゲボウズって恨みとかを食べるんだっけ…
 それにしても、カゲボウズが1匹足りない。私はその1匹が仲間はずれにされてるんじゃないかと思って急いで家に戻った。すると、テーブルの上で他よりもだいぶ小さなカゲボウズが私の置いた赤いリボンをくわえて何かをしようとしていた。テーブルの上をころころころがりながら器用にリボンを首に巻きつけていく。あっ…
「ぷぎゅっ…!?」
「大丈夫?」
カゲボウズはテーブルからぽとりと落ちて床に激突した。目をぎゅっとつぶっているカゲボウズを、そっと手に乗せてみる。まだ、少し湿っている。
「リボン…首に巻いてあげようか?」
私はカゲボウズの首に巻いてある(正確に言えばからまってる)リボンをほどいて、背中のほうでリボン結びにしてあげた。カゲボウズはくるくると回ると、小屋のほうに引き寄せられていった。ミルタンクの恨みを食べにいったのだろう。
 そうして、結局雨が止んだのは3日後のことだった。カゲボウズたちのおかげでミルタンクが暴れることもなかったので、お礼として今日は朝から桶で洗ってあげた。
「そろそろ、帰ったほうがいいよ。あなた達、帰る場所があるんでしょ?」
「ふゆ?」
「だって始めて会ったとき、いい香りしたもん。誰かが絶対洗ってくれてる感じだった。今はわからないかもしれないけど、帰る場所があるっていうのはすごく幸せなことだから…それに、きっと心配されてると思うよ」
カゲボウズたちはお互いの顔を見合わせて、ざわざわした。小さいカゲボウズの赤いリボンがふわふわ揺れた。そして、家に来たときのようにシャンデラにひっついた。
「シャンデラ、もう雨が止んだから、あなただけでもカゲボウズたちをもとの場所に帰してあげられるよね?」
「ふよん!」
「フワンテは私と一緒にミルタンクの世話を手伝って」
「ふゆーん♪」
「…カゲボウズたちも、気が向いたらまたおいで」
「ふゆ!」
シャンデラはカゲボウズをぶら下げて、ふわふわと飛んでいった。私とフワンテはそれが見えなくなるまで手をふっていた。そして新しくした青いリボンで髪を結び、ミルタンクが待っている小屋まで走った。


  [No.433] Link4 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/05/12(Thu) 18:02:38   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
Link4 (画像サイズ: 1591×911 238kB)

「フワンテおかえりー!」
「ふっゆゆーん!」
 今日の朝は、珍しく風車が動いていた。風が強い日には、フワンテは小さな旅をして、数日後には帰ってくる。だから、そろそろ帰ってくるんじゃないかなぁって思ってたんだ。さっきまではシャンデラも一緒に待ってたんだけど、お父さんが明かりがほしいって言って連れて行ってしまった。あとでシャンデラに会いに行かなくっちゃ……ね?
 でも、今日はフワンテだけじゃなかった。フワンテのまわりに黒いふわふわが5つ、くっついている。なんだろう、アレ。フワンテがだんだんこっちに近づいてくると、ようやく私にもその正体がわかった。私だって、カントーのポケモンくらいなら百科事典見なくてもわかる。アレは確か……ゴース。フワンテと同じゴーストポケモンのゴースだ。
「フワンテおかえりっ!」
 私は宙にういているフワンテの手を引っ張って、フワンテを自分に引き寄せた。大切なお人形を抱きしめるようにぎゅっとすると、フワンテは私の胸でぷわわーと鳴いた。
「ねぇフワンテ。このゴースたちはフワンテのお友だち?」
私がそう聞くと、フワンテはこくこくと頷き、ゴースたちはにこにこした。へぇ……ランプラー吊ってきたことはあったけど、お友だちを連れてくるなんて初めてだ。
 私はフワンテを腕から解放し、ゴースを呼んでみた。すると、1匹のゴースがふわふわとこっちにやってきた。私がゴースをぎゅっとしながらなでると、まわりのゴースが驚いたようにざわざわし始めた。
「きゅきゅいきゅきゅい!」
「ふゆーん?」
「きゅ……きゅきゅうい!」
 フワンテとゴースがおしゃべりしてる……?と思ったら、フワンテが急に家の中に入っていってしまった。それを追いかけて家の中に入ると、フワンテは私が小さい頃に使っていた五十音順ひらがな表と、30センチものさしを出していた。たたんであったひらがな表を器用に広げ、ものさしを手に持ったフワンテは、またゴースとしゃべり始めた。
「ふゆ?」
「きゅ、きゅきゅい、きゅきゅっきゅ。」
それを聞いて頷いたフワンテは、ものさしで文字を指し始めた。

おれらに さわれた にんげん はじめて

おぉっ。話が通じる。新しい意思の疎通方法だ。フワンテいつこんなの覚えたの?

ごーすと に おしえて もらった

ほうほう、ゴーストってゴースの進化系よね。ゴースの友だち?え?一緒に住んでる?へぇ、そうなんだ。

いっしょに すんでる おんな も すごい けど おまえ も すごい

えっあっ……ありがとう。何がすごいのかさっぱりわからないけどありがとう。
腕の中でゴースがすごくにこにこしてる。そっか、この子たちは人間のぬくもりを知らないんだ。一緒に住んで、一緒に笑って……そういうぬくもりを感じることはできても、人間のからだのぬくもりは知らないんだ。だから、からだがこんなにも冷たいのかもしれない。
「いつでも遊びにおいで。」
「きゅい!」
「私も、いつかゴースの住んでる家に行ってみたいなぁ。ねぇ、フワンテ。フワライドに進化したら、私も連れて行ってくれる?」
「ふゆーん♪」
「約束ね?」
 その後ゴースは、牧場でめいっぱい遊んで、私に洗われて帰っていった。

『いっしょに すんでる おんな も すごい けど おまえ も すごい』

いつか、その女の子に会ってみたいなぁ……なんて思いながら、私はフワンテと一緒にゴースたちを見送った。