マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.432] Link3 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/05/12(Thu) 18:00:42   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「フワンテ、シャンデラ、そろそろ暗くなるから帰っておいで」
「ふゆーん」
「ふゆーん」
 風車に引っかかっていたフワンテと、そのフワンテが拾ってきたやみのいしで進化したシャンデラを家に招きいれると、暗かったリビングが灯りに包まれた。シャンデラは青い炎を赤い炎に調節し、テーブルの上にふよふよ浮いた。
「シャンデラ、いつもありがとう」
そう言う私を見て、フワンテはむすっとそっぽを向いてしまった。「どうせボクは役に立たないですよー」と言わんばかりのすねっぷりで、思わず笑ってしまった。
「明後日から雨が続くんですって。やぁねぇ、またミルタンクが機嫌損ねちゃうわ」
「え、じゃあてるてるぼうず作らなきゃ。闘牛みたいなミルタンクなんてもう一生見たくないもん」
 2年ほど前、雨が続いてミルタンクたちを外に出せなかったことがある。外に出られないストレスがたまったのか、ミルクはとれないし、いつも私がポニーテールにゆわっているリボンに反応して暴れしだすし、とにかく大変だったのだ。
「フワンテ、てるてるぼうず作るの手伝ってよ、ね?」
「ぷわわー♪」
 私は白いハンカチとティッシュを持ってきて、てるてるぼうずを作り始めた。それをじっと見つめるフワンテ。すると、何か思いついたらしく、私の服の裾をひっぱって玄関までつれてこられてしまった。フワンテが黒い傘をつんつんつっつくので傘を開いてあげると、次はシャンデラを呼んで、器用に傘の取っ手をシャンデラにひっかけた。
「フワンテ…?」
「ふゆーん!」
フワンテは傘の上の部分を持つと、外に出ていってしまった。家からは灯りが消え、何も見えない。
「お父さん、お母さん。あの子たち、今日はもう絶対に帰ってこないから、もう寝よう」
そう言って、その日はもう寝ることにした。
 フワンテが帰ってきたのはその2日後、丁度雨が降り始めた日だった。
「ぷわー!ぷわわー!」
得意げにそう言うフワンテの下には、傘、シャンデラ、そして黒いてるてるぼうずが6匹ぶらさがっていた。
「…カゲボウズ?」
 フワンテとシャンデラが引き連れてきた黒いてるてるぼうずは、どうやらポケモンらしい。しかも、なんかいい香りがする。なんていうか・・・洗いたてって感じ。
「フワンテおいで。あんただけ、傘の上にいたから雨で汚くなってるよ」
「ふゆーん♪」
私はフワンテをお湯で濡らしたタオルで拭いてあげた。カゲボウズたちがじっとこっちを見る。瞬きもしないでじぃっと…
「…負けた。カゲボウズたちも洗ってあげるからこっちおいで。」
「ふゆゆん♪」
「シャンデラは水苦手だからいいよね?」
「ふよーん」
それにしても、なんだろう。ゴーストポケモンってみんな同じような鳴き方するんだね。ふゆーんとかふよーんとか…うーん不思議。
 私はお湯をためた桶に6匹のカゲボウズを入れて1匹ずつ丁寧に洗った。いつもの液体洗剤を泡立てて使ってしまったけど、布だから大丈夫だよね。うん、大丈夫。カゲボウズたちは泡に息を吹きかけて遊んでいる。可愛い…
 水できちんと洗い流した後、首をしめない程度にカゲボウズを絞ってシャンデラに引っかけた。カゲボウズたちもぬくぬくと幸せそうな顔をしている。シャンデラも、カゲボウズから石鹸の香りがするらしく、機嫌がいい。
「フワンテ、ミルタンクの小屋に行くけど一緒にくる?」
「ふゆーん!」
 私は念のため髪を結わっていた赤いリボンをはずしてテーブルに置いた。ミルタンクはイライラすると赤い色に反応する。小屋とつながる廊下を抜けると案の定ミルタンクが少しイライラし始めていた。まだ雨が降って1日もたってないのに、これじゃあミルタンクが本当に闘牛になってしまう。
 ふと振り向いてみると、後ろからカゲボウズが5匹ついてきていた。ミルタンクを見ると嬉しそうに近くによっていった。一方ミルタンクは、さっきのイライラが嘘のように消えて穏やかな顔をしている。
そっか、カゲボウズって恨みとかを食べるんだっけ…
 それにしても、カゲボウズが1匹足りない。私はその1匹が仲間はずれにされてるんじゃないかと思って急いで家に戻った。すると、テーブルの上で他よりもだいぶ小さなカゲボウズが私の置いた赤いリボンをくわえて何かをしようとしていた。テーブルの上をころころころがりながら器用にリボンを首に巻きつけていく。あっ…
「ぷぎゅっ…!?」
「大丈夫?」
カゲボウズはテーブルからぽとりと落ちて床に激突した。目をぎゅっとつぶっているカゲボウズを、そっと手に乗せてみる。まだ、少し湿っている。
「リボン…首に巻いてあげようか?」
私はカゲボウズの首に巻いてある(正確に言えばからまってる)リボンをほどいて、背中のほうでリボン結びにしてあげた。カゲボウズはくるくると回ると、小屋のほうに引き寄せられていった。ミルタンクの恨みを食べにいったのだろう。
 そうして、結局雨が止んだのは3日後のことだった。カゲボウズたちのおかげでミルタンクが暴れることもなかったので、お礼として今日は朝から桶で洗ってあげた。
「そろそろ、帰ったほうがいいよ。あなた達、帰る場所があるんでしょ?」
「ふゆ?」
「だって始めて会ったとき、いい香りしたもん。誰かが絶対洗ってくれてる感じだった。今はわからないかもしれないけど、帰る場所があるっていうのはすごく幸せなことだから…それに、きっと心配されてると思うよ」
カゲボウズたちはお互いの顔を見合わせて、ざわざわした。小さいカゲボウズの赤いリボンがふわふわ揺れた。そして、家に来たときのようにシャンデラにひっついた。
「シャンデラ、もう雨が止んだから、あなただけでもカゲボウズたちをもとの場所に帰してあげられるよね?」
「ふよん!」
「フワンテは私と一緒にミルタンクの世話を手伝って」
「ふゆーん♪」
「…カゲボウズたちも、気が向いたらまたおいで」
「ふゆ!」
シャンデラはカゲボウズをぶら下げて、ふわふわと飛んでいった。私とフワンテはそれが見えなくなるまで手をふっていた。そして新しくした青いリボンで髪を結び、ミルタンクが待っている小屋まで走った。


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