マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.869] 第一話「プロローグ:旅立ちと始まり」 投稿者:名無し   《URL》   投稿日:2012/02/21(Tue) 22:11:38   36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

夜………
とある地方のとある街の高いビル……

???「……………………」

その屋上から街を見下ろす人物が一人…………
黒いローブを纏い、表情も頭からすっぽりかぶったフードで見えない。
まさしく…………漆黒………………………
夜空に浮かぶ月の光が無ければ、その姿は夜の闇に完全に紛れていただろう……………

???「………………………………」

バタバタ………………
夜風がローブを撫でる……………………
その漆黒の人物はただただ、摩天楼の上から眼下に広がる街を見下ろしていた……………………











カントー地方・マサラタウン。
一言で言えば、田舎町。
大きなビルや建物はほとんど無い。それどころか車や人通りもまばらである。
唯一、この町の特徴をあげるとするならば、ポケモン研究の権威、「オーキド」の研究所があるという事ぐらいだろう。
だが………都会では決して手に入らないものもいっぱいある。

数年前、そんな町から一人の少年が旅立った。
彼の夢は「ポケモンマスター」。ポケモントレーナーの頂点に立つこと。
彼はその夢を叶えるため、多くの人々やポケモン達との出会いと別れを繰り返し、バトル&ゲットの日々を送った。
そんな彼も今では、カントーでは1、2を争うほどのトレーナーに成長していた。
だが、「ポケモンマスター」になるという目標は未だ達成されていない。彼の選んだ道はそれだけ険しいものなのだ。

そして、その夢の実現のため、少年は相棒のピカチュウと共に、再びここマサラタウンから旅立とうとしていた…………………


サトシ「じゃ、行ってきます!」
ハナコ「まったく忙しないわね……。もう少しゆっくりしていけばいいのに…………」
サトシ「そんなじっとしてらんないよ!俺はもっと……もっと強くなるんだ!!」
ピカチュウ「ピカチュウッ!!」

帽子の少年………サトシの肩に乗るピカチュウが「同じく!!」と言わんばかりに鳴く。
空は快晴。ポッポやピジョンといった鳥ポケモン達が気持ちよさそうに飛んでいる。
新たな旅立ちの日にはもってこいの朝だ。

ハナコ「ホント、あんたはソレばっかりね。10歳の頃とちっとも変わってないんだから………。」

サトシの母………ハナコが呆れ気味に言う。

サトシ「何だよ母さん。もっと明るく見送ってくれよ……。愛しい息子の決意の朝なんだぜ?」
ハナコ「ハイハイ。じゃあ、気をつけて行ってらっしゃい。身体は大事にね?」
サトシ「おう!行ってきま〜す!」

ハナコは遠ざかっていく息子の背中を見る…………もう何度こうやって送ったことか……………
小さい頃から二言目にはポケモンマスター、ポケモンマスターって………耳にタコができるくらい聞かされたっけ。まぁ今もだけと。
でも、もうあの子も17か……………ずいぶんたくましくなったわね………………
嬉しいような………寂しいような…………………

ハナコ(………さて。次あの子が帰ってきた時は何を作ってあげましょうかね?)

ハナコはその背中が点に見えるほど小さくなるまで見つめ、やがて家に入っていった……………







サトシ「う〜ん。ちょっと早すぎたかなぁ……」
ピカチュウ「ピカ〜……」

ハナダシティの駅の西口。
駅構内はサラリーマンやらトレーナーやらと、多くの人でごった返している。
そんな中、サトシはある人物達と待ち合わせをしていた。
時計を見る。待ち合わせ時間15分前。サトシにしては早い。

サトシ「しっかし変わったなぁハナダシティも………。」

いわゆる高層化。元々そんなに田舎町というわけではなかったが、10歳のころ自分が初めて訪れた時と比べれば、高層ビルやらなにやらが多く建ち並ぶ様になり、大分印象が変わっていた。

サトシ「この駅も昔は小さ………あっ!お〜いカスミぃ〜!!」

サトシは人混みの中に見覚えのあるオレンジ色を見つけ、大声で叫んだ。
それに気づいた少女がやや恥ずかしそうにしながら急ぎ足で近づいて来る。

カスミ「ちょっと!そんな大きな声出さないでよ!恥ずかしいじゃない!」
サトシ「いやだって、こんな広い所これくらいじゃなきゃ聞こえないだろ?」

サトシはまるで悪びれていない………………
カスミはそんなサトシに多少イラつくも、

サトシ「いやぁ〜でも久しぶりだなぁカスミ!ちょっとは女らしくなったんじゃね?」

サトシがそんな事を言ってきたので、とりあえずさっきのは帳消しすることにした。

カスミ「へぇ〜?あんたも少しは成長したじゃない。このアタシの魅力に遅れながらも気がついたなんて。」
サトシ「まぁ、だって元がアレじゃあさ……ってウソウソ、ジョーダン……ソレ当たったら怪我………」

カスミが近くの小石を拾おうとしたので、サトシは続きを言うのをやめた。
せっかく帳消しにしたのに…………マイナスに逆戻りである。

カスミ「ったく…………ん?あれタケシじゃない?」

カスミが向こうを見ながら言う。サトシもカスミが見る方へ目を移した。

サトシ「あ、ホントだ!お〜いタケシィィ!!こっちだこっち〜!!」
タケシ「おお二人とも!久しぶりだなぁ!」

細目の男。タケシの登場だ。
雰囲気は昔とあまり変わらないが、いくぶんか背が高くなったようだ。

サトシ「久しぶりだなタケシ!どうだ?彼女できたか?」

冗談気味に言うサトシ…………………が、

タケシ「サ、ササササササトシが…………彼女って……………言った……!?」

いきなりしどろもどろになるタケシ………無理もない。
それだけ目の前のサトシと言う少年は、そういう事に関しては超鈍感だという印象が強かったのだから。

サトシ「何だよ〜、そんなびっくりすんなよ〜!冗談だって!」
タケシ「サトシからその部類の冗談が出るとはな…………。この数年の月日は伊達じゃないってことか……。」
カスミ「アタシもちょ〜っとだけビックリしたわ……。でも行動が突飛なとこは今でも変わんないわね。」
タケシ「だな。いきなり「初心に戻りたいから最初のメンバーで旅しよう」だなんて……。まったく、人のこと考えてるのかよ。」

溜め息混じりに言うタケシ。
だがそうは言うものの、タケシもカスミもまんざらでもない様だ。

サトシ「ハハハ。でも二人とも来てくれたじゃん。やっぱ仲間だよなぁ〜俺たち!」

サトシは数日前、かのカントー最強のトレーナー、ドラゴン使いのワタルとバトルした。
何故そんな変則マッチが実現したかと言うと……………
カントーリーグ協会がサトシの有望性を買い、何とポケモンリーグ、四天王リーグともにすっ飛ばし、特別にワタルへの挑戦権を与えたのだった。
勿論それに勝てばチャンピオン………なわけではなく、あくまで腕試しの意味合いでという事だ。
そして当然サトシも意気揚々とそれに挑戦した。
だが結果は…………完敗。
何とか三体を戦闘不能に追い込んだものの………最後はワタルのカイリュー相手に手も足も出ず、ストレート負け。
その圧倒的な力の差にサトシは愕然とした。
だが………………

ワタル『君の再挑戦を心から待っている…………』

その言葉でサトシは吹っ切れた。
世界は広い…………俺はまだまだ強くなれる……………!

というわけで初心に戻り、一番最初のメンバーで修行の旅を再会しようというのだ。

サトシ「まっ!回るのはカントーだけだからさ!それまでの間つきあってくれよ!」
ピカチュウ「ピッカチュウ〜!」

ピカチュウが「ごめんね〜」と言わんばかりに可愛らしく鳴く。

カスミ「しょうがないわね。可愛いピカチュウに免じて、つきあってやるわ!」
タケシ「まぁ俺たちにとってもためになるかもしれないしな。ブリーダー修行の旅、再開だ!」
サトシ「そうこなくちゃ!よろしくな二人とも!」

バンバン!と、満面の笑みで二人の肩を叩くサトシ。

カスミ「イタ!?もうちょっと加減しなさいよ〜!」
サトシ「ハハハ!悪い悪い!」

やはり悪びれる素振りも見せない………………

カスミ「………で、カントー回った後はどうするつもりなのアンタ?」
サトシ「う〜ん、まだ決めてない。ホウエンにでも行ってみようかなぁ〜……。」
カスミ「ほぉ?ホウエンねぇ……。」

カスミは何故かニヤニヤしている……………

サトシ「何ニヤついてんだよ。気持ちわりぃなぁ。」
カスミ「アンタいつからそんな毒舌になったわけ!?」
サトシ「そんなのカスミの影響に決まってんだろ!」
カスミ「はぁ!?アタシそんなキャラじゃないわよ!」
タケシ「懐かしいなぁこの光景………。」

まるで姉弟喧嘩を見ている様だ…………前はこれが当たり前だったっけなぁ…………
などとタケシが遠い目をして物思いにふけっていると、

サトシ「ッッッッ!ああ〜もうっ!さっさと行くぞ!?」

喧嘩を強引に中断し、ズカズカと進んで行くサトシ。

カスミ「ちょっ、行くってどこ行くのよ!………ってもう聞いてないし……。」
タケシ「やれやれ、お前ら全然変わってないなぁ。」
カスミ「あんなお子ちゃまと一緒にしないでくれる?アタシはアイツと違って、もう青春をエンジョイしてるんだからね!」

意味深な発言をするカスミ………その顔はさっきサトシをからかった時と同じニヤけ顔である。

タケシ「え?……それってどういう…………」
カスミ「フフフ。ヒ・ミ・ツ!」
タケシ「……おいおいまさか…………?」

サトシとは間逆で、こういう事には悲しいくらいに敏感なタケシは何かに感づいた様だ。

カスミ「ハーイハイ、この話はここまで。さっ、サトシ追いかけましょ?このままじゃアイツ迷子になるから。」

そう言ってサトシを追いかけるカスミ。
タケシはそんな彼女の背を唖然としながら見る………………


タケシ「…………こりゃ、俺たちもうかうかしてられないな。サトシよ。」

そう静かに呟くタケシ。
とにもかくにも、こうして再び彼らの修行の旅が始まったのであった。















どこかの街のビルの地下……………………

???「…………状況は?」

低い。地獄の底から響いてくるかの様な声。

部下?「はっ!先程、監視の者から入った連絡によりますと、ターゲットは今朝マサラタウンを出発。現在はハナダシティ駅にてトレーナーと思われる仲間二名と合流したとの事です!」

部下と思われる男が軍隊じみた口調で報告をあげる。

???「仲間というのは?」
部下1「はっ!ニビシティジムリーダー・タケシ、ハナダシティジムリーダー・カスミと思われます!」
???「なるほど。昔のメンツと言うわけか……。監視を続けろ。動くのは奴らに隙ができた時だ。その際、他の者は適当に追っ払っておけ。目的はあくまでサトシ君のみだからな。」
部下1「はっ!」
???「よし。お前はもう下がれ。次の報告を。」

するともう一人の部下が前へ出てくると、先程の部下と同様に軍隊口調で、

部下2「はっ!解析は現在35%完了。このペースでいきますと10日後には完了いたします。」
???「思ったよりかかっているな。急げ。」
部下2「はっ!すぐに伝令を!」

バタン………部下達が扉を閉める音……………
もう部屋にはボスと思われる男一人しかいない。
少し手間取ったものの、こちらは近い内にメドがつくだろう…………………
後は………………

???「……『ワダツミ』…………か……………」




ポケモンマスターを目指し再び故郷を旅立つ少年、サトシ。
様々な陰謀が渦巻くこの世界を、彼はどう歩み、そして、何を見出すのか。

今………新たな歴史が刻まれようとしていた………………


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