招き猫は、前足を上げて人を招く仕草をした猫のポケモンの置物である。商売繁盛の縁起物として親しまれている。 この起源には諸説があり、南ではエネコが殿様を寺に案内し雨宿りさせたからだとか、北ではニャルマーが豪商を宿に招いたからだとかいろいろあるが、やはり一番有名なのはニャースのエピソードであろう。
カントーの中心地が江戸と呼ばれていた頃、一人の老婆がニャースと共に暮らしていた。老婆はとてもニャースを可愛がっていたが、暮らし向きは思わしくなく、それはそれは貧乏だったという。老婆には一人の息子がおり、近くに住んでいた。が、真面目なのにもかかわらず何をやってもうまくいかなかった。貰ったばかりの嫁には逃げられ、職を転々としていたという。 老婆は息子がうまくいくようにと、近くの今戸神社によく詣でては願を掛けていた。賽銭はニャースがときたま拾ってくるお金だった。老婆にとっても貴重なお金であったのだが、それで息子がうまくいくならと強く願っていたのであろう。着る服も日々の糧もぎりぎりに切り詰めて、老婆は一心に願をかけた。 年の瀬も迫った頃、ふとニャースが姿を消した。いつものように二、三日したら帰ってくるだろうと思っていたのだが、いつまで経っても帰ってこない。隙間風の寒さに震えながら、老婆は帰りを待っていたが、十日経っても帰ってこなかった。そうして十五日目の夜のこと、夜も更け、いつの間にか眠ってしまった老婆の夢枕にニャースが立ったのだった。 夢に現れたニャースは後ろ足で立ち上がり、人の言葉を巧みに話し、猫撫で声で次のことを語ったという。 「自分はあの今戸神社の神様の下でご奉公することになった。なのでもう会うことが出来ないのだ」 「神様の下で働く代わりに、福を授かる方法を教えてもらったので、伝授しよう」 「私の姿を人形にしなさい。そうすれば必ずや福を授かるであろう」 ニャースはそう言い残して消えたという。 老婆がその事を息子に伝えると、息子はさっそくニャースの置物をこしらえた。浅草の参道で売りに出したところ評判がよく、近年にない正月を迎えることが出来たのだった。それから風向きのよくなった息子は、新しい嫁を貰い、商売も繁盛し、よい家に引っ越すと、老婆をそこに呼び寄せた。孫にも恵まれて老婆は大いに幸せであったが、時々奉公に出てしまったニャースのことを思い出しては涙したという。
ちなみに老婆のかつての住居地は、現在のタマムシシティ、それもタマムシマンション付近であると紹介されることがあるが、定かではない。
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