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タグ: | 【キュウコン】 |
私の名前は葉月。
私は旅をしている。長いこと旅をしている。永い、永い間、キュウコンと一緒に世界中、気の向くまま足の向くまま。心の赴くままに。
これは何時の事だったか、はっきり覚えてない。
大きな街だった。空を覆い隠すほどのビル群が街を構成している。そんな街の中でも、昔から変わらない古い建物が残るブロックがあった。たったワンブロックの古い地区だけど、他の地区とは雰囲気が違った。だから私とキュウコンは足を踏み入れてみた。
朝市が開かれていた。露店の店主達も、手伝いをするポケモンも、朝から買い物に来るお客さん達も活気に満ちていた。私とキュウコンは、その活気に興味を持って朝市の開かれている通りに足を踏み込んだんだと思う。
私たちは徹夜で歩き続けて、空腹と休める場所を探していた。とりあえずは、何時ぶりか忘れた食事を、ホットドッグを売る露天で買ってそれをかじりながら通りを歩いていた。通りに満ちる人やポケモンは様々だ。この街の中を歩き続けてどれくらいかは忘れたけど、ビジネス街と言うだけの街と言う訳でないという事を、人々の生活が行われているという事を認識させてくれた。
そして、人が集まると物も集まる。物が集まると人がさらに集まる。数ブロック離れたビジネス街の閑散とした朝とは大違い。
通りの半ばに小さな広場があった。片隅の植え込みに座る。先客がいるけど、ベンチは混み合っていて座れないから、相席させてもらう。
キュウコンに荷物を任せて、私は手近なジューススタンドに飲み物を買いに行く。
「お嬢ちゃん観光かい?」
「そんなところ。注文ついでで悪いけど、ここはガイドにも載ってないけど、どんな場所なの?」
ジューススタンドのお婆ちゃんは微笑みながら、果物の皮をむくとジューサーに放り込んでいく。
「まあ、偶然開発に取り残されたままのこの街の秘境って感じだね。地元民くらいしか立ち寄らないからね。名物もないし。ガイドにるほどの場所じゃないさ。そら、オレンジジュースと、マスカットジュースだ」
私はお婆ちゃんからプラスチックカップを二つ受け取ると、お金をカウンターに置いてキュウコンの所に戻る。
キュウコンの前に蓋を開けたマスカットジュースを置く。私はオレンジジュースを飲みながら、ホットドッグを食べつつ通りを行き交う人を眺める。私の隣で同じように通りを眺めている若者が、時々私の様子をうかがっている。スリかな? それともポケモン勝負かな? どっちにしても、私は旅慣れている。そんなのは面倒だったら、相手せずに逃げ切れるだろう。
若者は、だんだん挙動不審に私を見てきた。
「あんた、ここがどんな場所か知っているのか?」
「さあ、朝市でしょ?」
見ての通り朝市。何の不思議もない。世界中の街と言う街、村という村で繰り広げられる朝の風物詩。
「不思議に思わないか?」
「何が?」
「何で、こんな摩天楼の大都会の真ん中にこんな街並みがあるのか」
まあ、不思議と言えば不思議だけど。ままある事だけどね。
「悪い事は言わない。時間に捕らわれる前にここから出て行くんだな。何時までもここにいると、俺たちみたいに同じ一日を繰り返させられる」
「ああ、やっぱり?」
若者の眼光が鋭くなる。
「知ってて来たって事か?」
「知らない。ただ、ここに入ってそうだろうなって」
「セレビィを狙ってきたんじゃないのか? 本当だな?」
若者が殺気立ってくる。広場にいる何人かは関心なさそうに、私たちの会話を聞いている。けど、私に対する殺気は隣の若者と変わらない。
「なるほど、セレビィね……。それでこの街は変わらないのね」
「ああ、だから。噂を聞きつけた連中がこうして毎日奴を待っている。悪い事は言わない、この街から出て行け。時間に捕らわれたら、何をしてもこの街から出て行けない。奴を捕まえて時間から解放されるしか方法はない」
「ご親切にどうも。でも、親切だけで言っている訳じゃないでしょ? 時を渡るポケモンが欲しいから、退屈で単調で同じ事の繰り返しの毎日を過ごしてるんでしょ?」
若者は私を睨みながら頷く。
「そう。じゃあ、グッド・ラックね。私はセレビィの捕獲には興味ないから」
「そうか。じゃあ、今すぐ出て行け。余計なのがいると時間が乱れる」
「はいはい」
私は生返事をして立ち上がる。伏せっていたキュウコンも起き上がる。私達は広場の人間達の殺気をよそに。通りを来た道の方へ歩き出す。通りは相変わらず賑やかだ。
「ゆっくり休める場所はなさそうだね」
キュウコンか語りかける。キュウコンは無言で頷く。
「お金ケチらずに、安ホテルにでも泊まれば良かった。でも、仕方ない」
私は懐から古めかしい拳銃を取り出す。どれくらい古めかしいか。わかりやすく言うと、海賊映画に出てくるような、弾丸一発の前裝式の火打ち石拳銃。込められている弾丸は、鉛玉じゃなく、ポケモンを麻痺させる毒薬を塗った弾丸。
「出会ってしまったからには、殺らないとね」
キュウコンは賛同の声を上げる。
そして急に拳銃を取り出した私をみて、露天商や買い物客達が悲鳴を上げて逃げ始める。彼らには見えてない? 時間に取り込まれたからなのか、それともセレビィ自体が私にしか見えてないのか? どっちにしても関係ない。セレビィは私とキュウコンを時間に閉じ込めようと、通りの半ばで待ち構えている。その顔は、醜悪だ。大都会という街と言う概念に、精神が汚染されたんだろうか。
とりあえず、彼だか彼女だかの神域は同じ一日を永遠に繰り返し、人々を誘い込み惑わせる。目的は知らない。聞いても教えてはくれないだろう。まあ、私達はそんな世界に閉じ込められるのはごめんだから。
「死ね」
引き金を引くと、火打ち石が打ち下ろされる。火花が散ると轟音と共に弾丸が発射される。でも、多分当たらない。だって、時間はセレビィの領分だから。
パッと、セレビィが消えると次の瞬間には私の後ろにいた。そして、姿を広場のトレーナー達の前にさらすと、意地の悪い笑みで彼らを挑発し私の方に誘い込む。
「捕まえる気はねえとか言っておきながら、殺しにかかるとはな。俺らの苦労を無駄にすんじゃねえよ」
「ご忠告はありがたかったけど、見つかっちゃったし。それに、この伝説さんに手こずってる方達が捕獲するまで待ってるほど暇じゃないんで」
と、言いながらも次弾を装填するけど、普通に撃ったらまた躱されちゃうしな……。
「と言う訳で、皆様には悪いですけど。このセレビィ殺すね」
「おい、待て!!」
私は、身を翻すとある場所を探しながら路地を走る。
追いすがるトレーナーと、セレビィの妨害。まあ、具体的には時間を巻き戻されたりとか、気がついたら変な場所にいたりとかあったけど。トレーナー達を撒いて、目的地にたどり着いた。
「セレビィと言えば祠。祠を壊せば神域の力も弱まる。と言う訳で、セレビィさん? 祠壊しまーす」
ゼロ距離で祠に弾丸を撃ち込む。
神域の力が弱まったのが感じられる。すぐ後ろでは、セレビィが苦しそうな顔で地面に倒れ込んでいた。
「殺っちゃって」
キュウコンが、唸るとセレビィに『れんごく』を当てる。そして、追い打ちの大文字で瀕死の重傷に持ち込む。私は、今度はゴーストポケモンの呪いを込めた弾丸を込めて、丸焦げで動けなくなっているセレビィに弾を放つ。
セレビィは死んだ。時間に捕らわれていた人達は、捕らわれていた時間分だけ一気に歳を取り、ある人は老人に、ある人は骨に。またある人はミイラにと姿を変えて神域からはじき出された。
私とキュウコンはもちろん神域の外にはじき出されたけど。振り返ると、私達が朝市に惹かれて入り込んだブロックは摩天楼の一角を占めていて、昔ながらの街並みは影も形もなかった。
その日一日。大都会は大騒動だった。行方不明の人が数年、数十年ぶりに見つかったり、白骨死体やミイラが街の一角にあふれたのだから。そして、私はまた気の向くまま、心の向くまま歩き始めた。
空を見上げると、魂を運ぶポケモン達の姿が薄ら見えたけど、忙しいこの街の人々にはどうでも良い事なのか、誰もその狭い空を見上げてはいなかった。
私の名前は葉月。
私は旅をしている。長いこと旅をしている。永い、永い間、キュウコンと一緒に世界中、気の向くまま足の向くまま。心の赴くままに。
> つまり、リョースケは才能がなくて挫折してる感じなので、手持ちも挫折してる感じにします。具体的に言うと未進化。それもリョースケが最終進化まで育てることを目標にしてるのに進化してない、というやつにします(サトシのピカチュウみたいにポリシーのあるやつじゃなくて)。ついでにレベルアップで進化するやつだと悲壮感が増します。
> 例えば、ワカシャモとか。もっと育ってなくてアチャモのままとか。強くなると聞いて捕まえたけどフカマルのままとか。「サクラの隣にセットされたボールにはワカシャモが入っている。○年間がんばったけど、バシャーモには進化せず。残り4匹も軒並みこんな風だ」とか。
>
> > 炎タイプ中心の構成なのかバランスのよい構成なのか…から始まりあと五匹ぶんの種族考えて、とかやってたら間に合いそうになかったんですよね…。
> 未進化ポケモンで統一(サクラ以外)するなら、手持ちのタイプは偏ってても偏ってなくてもいいかな、と思います。ですが、炎タイプ中心の場合、アスナさんやオーバさんに憧れて手持ちのポケモンを真似てみたけど、リョースケには育てられなかった……とするとわかりやすいかなー、と。
>
> うまく育てられてない未進化ポケモンたちとこれをドッキングすると、「サクラ以外のボールにはワカシャモ・ドンメル・デルビル・ブビィ・ヒトモシが入っている。ワールドリーダーズで活躍するアスナさんに憧れて育て始めたポケモンたちだけど……」という感じになります。
>
もうやめてあげて!
リョースケの体温はもうゼロよ!
なるほどこれはうまい。しかもタイプ偏っていればよりジムも攻略しづらくなりますしねー
ワカシャモあたりはよいと思います。
・コモルーかタツベイあたり(ホウエン高レベル進化)
・キルリア(元気がない)
・コータス(ホウエン産炎ポケ)
・マッスグマ(ひでん用)
あたりはどうでしょうね?
冷凍サクラができそうな雰囲気ですね……。
で、手持ちについての案ですが。
> 漫画とかならワンカットあれば済むシーンでも、文章となると勝手が違うというか、書くのがうまい人ならまだしも、わたしが書くと、冗長になってしまい、わざわざ書いてあるけどそれ必要だった?なんてことになりそうで。
> ストーリー上、絶対必要なのがサクラだけで、他はいなくてもなんとかなるなら書かなくていいよね、という。
バトルものでもなくサクラしか出番がないのに、無闇に手持ち6匹書いても冗長になるだけだと私も思います。(マンガはその点有利ねー)
しかし、突然アチャモが出てきても不親切かもしれませんので、言及があればより良いかな、と。つまり、どこかに「合計6個のボール」とか「サクラ以外の手持ち」とか入れておく。
手持ちの数はマックスの6体か、言及しないか、どちらかでしょう。数年旅してきてバッジ5つ目とれないって言ってて手持ち4匹です! だと「あと2匹捕まえてこい!」ってツッコみたくなります、私が。
で、こっから“手持ちの中身に言及する場合”の案です。言及しない場合は読み飛ばしてください。
手持ちは引き続き6匹とします。
> あとはおそらくほんのちょっとしか出番がないのにわざわざ設定考えて出すのか?なんていうのも理由です。
一匹ずつのストーリーを入れる必要性もなく、バトルもないなら、サクラ以外の5匹はリョースケのキャラを立てるように決めちゃえばいいと思います。
つまり、リョースケは才能がなくて挫折してる感じなので、手持ちも挫折してる感じにします。具体的に言うと未進化。それもリョースケが最終進化まで育てることを目標にしてるのに進化してない、というやつにします(サトシのピカチュウみたいにポリシーのあるやつじゃなくて)。ついでにレベルアップで進化するやつだと悲壮感が増します。
例えば、ワカシャモとか。もっと育ってなくてアチャモのままとか。強くなると聞いて捕まえたけどフカマルのままとか。「サクラの隣にセットされたボールにはワカシャモが入っている。○年間がんばったけど、バシャーモには進化せず。残り4匹も軒並みこんな風だ」とか。
> 炎タイプ中心の構成なのかバランスのよい構成なのか…から始まりあと五匹ぶんの種族考えて、とかやってたら間に合いそうになかったんですよね…。
未進化ポケモンで統一(サクラ以外)するなら、手持ちのタイプは偏ってても偏ってなくてもいいかな、と思います。ですが、炎タイプ中心の場合、アスナさんやオーバさんに憧れて手持ちのポケモンを真似てみたけど、リョースケには育てられなかった……とするとわかりやすいかなー、と。
うまく育てられてない未進化ポケモンたちとこれをドッキングすると、「サクラ以外のボールにはワカシャモ・ドンメル・デルビル・ブビィ・ヒトモシが入っている。ワールドリーダーズで活躍するアスナさんに憧れて育て始めたポケモンたちだけど……」という感じになります。
以上、てきとうに手持ちを決めてヤッチマッターする方が多いきとかげでした。
え、凍ってもモンスターボールに戻せば問題ないんじゃないの?
あるいは他のポケモンも持ってた事にして、溶かすとか
(初心者用ポケモン、バシャーモとか)
博士が容赦なさすぎてワロタwwwワロタ…(´・ω・`)
どうも、作者のはずの砂糖水です。
一応わたしの書く話ですもんね、なんか言わねば…ということで。
こころのめ→ぜったいれいどはロマンと言ってましたが前言撤回します!
サクラあああああ!!!!
いやあの、フリーザー様容赦なさすぎワロエナイ…(´・ω・`)
ロマンよりサクラ生存の方が大事でした…ああ…。
この辺書くと完全に言い訳と化すのですが、書いておくとおそらく今後スムーズになりそうなので書きます。
あの話は、(あくまでわたしとしては)必要最低限の要素だけで書いた話なので、いろいろと削った要素があります。
観光するシーンがあったとか、あとはリョースケの手持ちは六匹いたとか…。
サクラのみ連れているのは、六匹フルメンバー考えつかなかったのが一番大きいです。
炎タイプ中心の構成なのかバランスのよい構成なのか…から始まりあと五匹ぶんの種族考えて、とかやってたら間に合いそうになかったんですよね…。
あとはおそらくほんのちょっとしか出番がないのにわざわざ設定考えて出すのか?なんていうのも理由です。
漫画とかならワンカットあれば済むシーンでも、文章となると勝手が違うというか、書くのがうまい人ならまだしも、わたしが書くと、冗長になってしまい、わざわざ書いてあるけどそれ必要だった?なんてことになりそうで。
ストーリー上、絶対必要なのがサクラだけで、他はいなくてもなんとかなるなら書かなくていいよね、という。
ほんとはテレポート使える子がいると帰り楽だな、とは思ってたのですが、書けそうになかったんです…。
別にサクラのみじゃなきゃダメ!ってわけではなくたんにわたしが書けそうになかったからサクラだけになったんです…。
ということで、リョースケに他の手持ちいてもおかしくはないので、サクラを殺さないで…サクラ…サクラ…ううっ。
タグ: | 【サクラは犠牲になったのだ】 |
めっちゃ派手にやられたwwwww
というかイメージ画像wwwwwwwww
個人的には空気がぴしろと音を立てた時に周りがホワイトアウトして、
リョースケが、自分が氷づけにされる幻を見る、というのもよいかもしれないと思いました。
で、あれ、大丈夫だ、と思って前見たらサクラアアアア! みたいな。
まあそれはおいおい考えておきましょう。
・ゲーム機とロトム
ロトムの取り憑いたゲーム機では、普通じゃ使えないバグ技がどんなものだって使える。だってロトムがゲームの中身を書き換えてくれるから。
いろんなアイテムを手に入れて増殖すればレアアイテムがいくらでも使える。キャラのレベルは一瞬で最高に。邪魔な壁だって自由に抜けられる。気に入らないあのキャラが死ぬイベントを追加、代わりにストーリーを進めると死んじゃうあの子とずっと一緒に旅をする。 これで全部このゲームの中身は僕の思い通り。
そうして楽しく遊んでいたら「ご飯よー」ってお母さんが呼んでいる。もうそんな時間か、まだ遊んでたいけど仕方ないや。
ゲームの電源を切って、あれっと机の上を見る。僕の文房具はこんなにあったっけ? 机の上から溢れるほど積もったペンやノートはぱっと見ただけでも数百個はある。変だなあ、こんなに買うわけなんてないのに。
まあいいや、早く行かないと怒られちゃう。
そう思ってドアノブを握れば、軽く握ったはずなのにばっきり折れてしまった。まずい、壊しちゃった。でも何で?
外から開けてもらわなきゃと思って「お母さーん!」って呼んでも返事がない。変だな、何かあったのかな。早く行かないと。でもドアノブは壊れちゃった。
こういう時どうするかマンガで見たことあるぞ。ポケモンみたいにどーんと体当たりするんだ!
ぶつかった拍子に身体がすり抜けて、周りは真っ暗。ドアの向こうにあるはずの廊下もなんにも見えなくて、戻ろうとしてもドアがなくって、どうしていいかわからない。
……暗い中で何かが光ってる! 僕はそれを目指して必死に走った。近付いたら光っているものが何なのか、はっきり見えてきた。
ゲーム機だった。あの、ロトムの取り憑いた。
画面に表示されているのは、たった一言。
『マダ アソボウ?』
・レジとロトム
嫌いなあいつの人生めちゃくちゃにしてやりたい? そりゃまた唐突なご依頼ですね、何かあったんですか?
……はあ、男をねえ。すいませんね、俺にはよく分かりませんよ。何せ人間関係、面倒になって捨てちゃったんで。じゃなきゃこんなことしてませんって。あ、大丈夫大丈夫、頼まれればちゃんとやってきますから、ご心配なく。俺に分かるかどうかで仕事選びません。
で、その子のこといろいろ聞いていいですか? この情報化の進んだ現代、素直にやると捕まりますからね。いろいろ探りたいんですよ、付け入る隙は多い方がやりやすい。
ああ、怨み辛みはNGでお願いします。そういうのは吐けば吐くだけこのカゲボウズどもが喰いますからそっちへどうぞ。
俺が欲しいのは、純粋な、情報です。
……ふーん、なるほど。よくわかりました。これならいけると思いますよ、一ヶ月あれば十分です。一ヶ月後にまた来て下さい、その時に結果を教えてもらえれば。
あや、こんばんは、お久しぶりです。あの子どうなりました?
……無事にクビ。それも、職場全体からの信用をマイナスまで落として。
あーよかった、あいつちゃんと働いてくれたんですねェ。思い通りに仕事ができて実に満足です、俺も。
うん? 何したんだって? 聞きたいなら教えますけど。
ロトム、知ってますか? そう、あの電化製品に憑くやつ。あいつ意外と便利に仕事をしてくれるんですよ。電化製品なら何でも、構造的に可能なことならあいつ自身の思い通りにできます。
あのターゲット、フレンドリィショップの店員さんでしたね? お店いち愛嬌のある看板娘。その一番近くにある電化製品って言ったら、レジでしょう。
あ、そろそろ分かってきた顔ですね。だいたい読み通りだと思いますよ。
そうです、レジのデータを改ざんしたんですよ。あの子が打ってる時だけ、実際の購入と誤差が出るように。誰が打ってるかも分かるシステムになってるなんて、狙い撃つ側からしたら実に楽でいいですね。
一人の打ってる時だけミスが続発したら、そりゃ信用だって落ちますよ。確認のために他の人間だって居残りますし、万引きで合わないんだかレジ側のミスで合わないんだか、そっちだって確かめるのに手間が掛かる。
そう。最終的に、置いておくだけ無駄な人間にしたわけです。「あいつが打つと無駄が出る」ってね。その過程で、勝手に笑顔なんて曇ります。売りがなくなった上に腕まで落ちたとなれば、放り出されて当然。
いえいえ、そんな。お礼なんていいですよ。まだ俺は全部をお伝えしてないんですから。
レジって当然、ホストコンピュータと繋がってますよね。売り上げ金額や品数はそっちで見てる。つまり、レジに入れれば基本的にそっちまで進入できるわけです。
ところで「勘定を合わせなくする」には、二種類方法がありますね。読み取って送るレジ側をおかしくするか、それを受け取る側のホストをおかしくするか。でもレジはおかしくできませんよ、レシートで気付かれるでしょう?
……ええ、ご名答。おかしくしたのはホストです、たまに数回レジでもやりましたけど。釣り銭の表示ミスくらいかな。でもそれくらいですよ。
この一ヶ月、あの店自体の勘定がそもそも合ってない。あの子のシフト中ほとんど全部狂わせてましたから、結構な割合だと思います。でも遡れないでしょう、残ってるログデータを見たって、実際のレシートとの整合なんかできない。あの店を使った人間全員になんて確認が取れる訳もない。
中身? 俺も分かりません。ただ一つ言えるのは、
俺がロトムに下した命令は、もちろんあの子の生活を壊すことで。ついでに、あなたの生活も壊していいよって言ったことだけです。
ね、店長さん。
ははッ! 何を驚いてらっしゃるんですか! そりゃそんなこと依頼に入ってません。ただ知っておいてください。
俺達ゴーストポケモン使いの『呪い屋』の鉄則を。
俺達にとってターゲットの行方も、依頼主の行方も知ったことじゃありません。ただ一つ、『人を呪わば穴二つ』を俺達は忠実に守ります。二つ目の穴が、あなたの足元に空いただけのこと。
夜逃げの準備をオススメしておきますよ、借金取りがあなたに追い付かないうちにね。
それと。
お気に召しましたら。
またのご依頼を、お待ちしております。
(――潰れたフレンドリィショップ店長宅から押収された、とあるレコーダーが再生した音声)
――――
後者のロトム分が薄いことについては大変反省していますが使い道の一つとして。
こんばんは、GPSです。 |
<!DOCTYPE html PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 3.01 Transitional//EN">
<html lang="ja">
<head>
<theme>B-Flag</theme>
<title>Object Contact</title>
</head>
<body bgworld="MND" author="Rotom-MND">
<ul>
<li>旗</li>
<li>はた</li>
<li>Flag</li>
</ul>
まさかあの記録が「そんなところ」にまで届いているとは、一体誰が想像しただろうか。少なくとも、私自身は非常に驚いた。
公的な文書ならば、これまでの八年間で何百メガバイトと綴ってきたものだが、私的なそれはほとんどない。だから、『システムが変わってからのおまえのテキストはひどく無機質で、味気がなくなった』と他の管理者たちから言われることもよくある。いくらなんでもあんまりである。それは私が「そういった文章」を書くことにそもそも慣れていないからであり、前回の記録を読んでくださった読者諸氏のことを馬鹿にしているというつもりではなかった。それは間違いない。誤解を招かないように、一応は断っておこう。
0378と交信したあの記録だけは、どうしても綺麗な形で残したかったのだ。私自身のためにも。
多くの人に読んでいただいたので、恥じらいの気持ちもあるが、感謝を述べたい気持ちのほうがずっと強い。その旨を、前書きとして添えておく。
そして、朗報がある。
私が「モノ」と対話できるようになったのは七年前のことなのだが、初の交信相手はパーソナルタグ0098と言う。その0098と最初に接触した記録が、ごくわずかながらに残っていたのだ。諸事情によって自身で暗号化し、図書館の隅っこにぶちこんでいた。すっかり忘れてしまっていた(というより、記憶を失っていて、自分で処分してしまったと思い込んでいたと表記するほうが、ある意味では正しい)。「懐かしい」とはこういう時に使う気持ちなのだろう、もちろん早速復元した。私自身、蘇ってくるものも多くあった。
今から、そのことについて語ろうと思う。
過去の私が記した草稿のため、荒っぽい表現が所々に目立っている。なのであらかじめ自身で修正をし、脚注を加えた。化けているところもなるべく直したが、意図的に残している部分もある。そこはどうか目をつむっていただきたい。
それでは、始めよう。
[ <Administrator Rotom-MND> : <Transfer> Library <Include> <File Object Contact> Administrator Rotom-MND : <Ready> : <sec 1.0> ]
<quotation>
あれから、一年と135時間が経った。
こんなノイズの吹き溜まりなんて、いつかおん出てやる。
この一年間、ずっとそのことについて考えていた。
この一年間、私は「電脳世界-MND」の「管理者」として活動し続けていた。建前では。
脱獄を敢行できないこともなかったのだが、そんな黒い腹案をも押しつぶすほどの多大な業務が、私を忙殺してくる。覚えなければならないことは、山ほどある。決断する余裕を作るためにも、作業効率を上げることが最優先だ。ひとつひとつを地道にやりこなしていって、新たな条件反射回路を体内で上書き更新していくしかない。
これまで、あらゆる家電製品に潜り込んでは、自身の不定形脊髄をいじくり、姿をチェンジしたものだ。それが、ロトムである私の特徴のはずだった。しかし、ここはまるで毛色の違うことばかりだ。姿や能力以外に変わらねばならないものが大量にあり、気が滅入ってしまう。諦めの気持ちをほのかに意識しながら、私は電脳世界-MNDでブツクサと「服役」していた。電気が絶えず供給され続けるために、物理的な疲労はこれといってなく、私はそこにわずかな慰めを見出していた。
どこもかしこも手不足らしく、ここも例外ではない。正式な管理者が配属されていなかったせいか、電脳世界-MNDの荒れようといったら、なかった。まず、図書館の整理すらまだ全然できていない。
<!-- ここで、「今の私」からの補足だ。図書館から、そのまま「図書館」の意味を拾いあげてみよう。 -->
<library word="図書館">
各電脳世界へパーティションを作成されたデータバンク。主に、モノに関する詳細ファイルを保管するためのローカルエリア。モノのパーソナルデータと実体はこちらに収納され、電脳世界ではパーソナルタグとアバターによってモノは個体識別される。
</library>
電脳世界-MNDでは、人間が秘密基地に飾る「モノ」の出し入れ管理をする。私が管理者となる以前は、無人の略式エントリーのプロセスだけで済ませていたため、精度さは皆無に等しく、むしろ乱雑さが売りという気概すら感じられた。ノイズだけがたまっていく一方で、そこかしこが砂嵐のような有様だ。それに加え、全体的なシステムは赤子のようにデリケートで、ちょっとしたことですぐにエラーを出して泣き喚く。トラブルが一日三回で済めば少ないほうだ。他の電脳世界との「壁」が完全には出来上がっておらず、シグナルとコマンドがこの電脳世界を横切ることも多々で、非常に鬱陶しいことこの上ない。
あのポリ野郎め、と思う。よくもこんな猥雑なところに私を閉じ込めてくれたものだ。モーモーぼくじょうの雑草をひたすら引っこ抜くのと、ノイズを完全に除去するのと、果たしてどっちが先に終わるのか。
私を制限する枷は、主に二つ。時限式ロックと、自爆プロセス。
<library word="時限式ロック">
Rotom-MNDに組み込まれた、時限式の錠。実質、Rotom-MNDの服役期間を指す。服役を終えれば自動で解除され、現実プログラムが蘇り、現実世界へと戻る権利が復活する。
</library>
<library word="自爆プロセス">
万が一、Rotom-MNDが時限式ロックを作為的に突破した際にトリガーされるリカバリシステム。自爆までに与えられる猶予は150セカンド。それまでに時限式ロックを復元すれば、時間はリセットされる。自爆後はシステムが新規インストールされ、ただのマクロと化す。
</library>
ふん。それがどうした。
私をなめるな。こんなちゃちな制限、おもちゃも同然だ。二つとも、解除しようと思えばいつでもできる。かつてはこの電脳世界全域を揺るがすほどの悪行をやらかした、大悪党なのだ。悪党といえば収監なのであり、収監といえば脱獄なのだと相場は決まっている。様々なテレビ回線を泳ぎ、あらゆる映像を違法視聴してきたから、そう断言できる。
が、今はまだその時でない、油断させてやろう、と手をつけずに放置し、なんだかんだでかれこれ一年である。二つの制限の他、とんでもないブービートラップが仕掛けられているのかもしれない。
<!-- 結局、私は死ぬのが怖いのだった。
かつての気焔も血気もどこへやら、すでにこの時から尻すぼみとなっており、私はすっかりおとなしくなってしまったのである。後ほど語るが、「不良システム」の件のためだ。相変わらずいっちょ前なのは、口先だけだった。ちなみにポリ野郎とは電脳世界-RIZのポリゴンのことで、腕は確かだ。脱獄を企てているということにも抜け目がないはずだと、当時の私も十分に認めていた。 -->
この世界は、異常さに溢れている。それもこれもノイズのせいだ。空間を鉛のように重ったるくして、あらゆる業務の邪魔をする。決してありがたい存在ではない。これほどのノイズとエラーに毎日さらされ続けていれば、私自身もいつか発狂してしまうのだろうか。まったく、こんなことを繰り返して毎日を過ごしているだなんて、他の管理者どものシステムはセラミックでできているのではなかろうか。甚だ疑問である。
現に私は、この世界で一年間辛抱し続けたせいか、自身の異常すらも感じるようになってきた。体調は穏やかであるものの、私の中に、電脳世界-MNDへ適合するよう、別の私が無理やり形成されてきている気がするのだ。
<!-- 当時はさっぱり自覚していなかったことだが、どうやら私は、自分のことはさておいて、他に原因があるのではないかと考える節が往々に見られる。感情が高ぶるほどにその傾向は強くなり、何かと自分の足元を見落としがちになる。自分は正しい、自分は間違っていないと、ひどく思い込むきらいがあるのだ。それこそ、ドぎついビンタの一発でもいただかなければ目がさめないくらいに。
今回もそうだった。いつものようにエラーと戦い、モノの預け入れと引き出しの要求信号を受け取って処理するだけの、実に機械的な日々だった。モノをあちらへこちらへと転送し、伝票を整理していた時だった。
要するに、今から始まるのは、パーソナルタグ0098との出会いだ。 -->
――?
違和感。
ふと、気づいた。
広場にて、ノイズの波紋形状(ドップラーシフト)が、さきほどと比べて少し変わっている。濃密な分だけ、変化もたやすくわかる。
自分の異常なのか、電脳世界-MNDの異常なのか、その判断をとっさに迷った。
誰だ、ここに来たのは。
以前からこういうことがあった。マザーCOMの仕業かと思って無視を決め込んでいたが、それにしては頻度が高すぎる。一日に一度は変なことの発生する電脳世界-MNDだが、ここ最近はいつもに輪をかけておかしい。平常的なエラーの中、とりわけ致命的なエラーが潜んでいる。そんな、薄黒い気配。ノイズに圧迫されすぎて、電脳世界-MNDそのものにとうとうガタが来たのか。そろそろ異常事態と判断し、これまでのことをひっくるめて報告すべきなのかもしれない。
今が、その時だと決意した。
本当の異常事態、ということも、この時密かに期待していた。電子病原体に侵された危険な領域としてここを閉鎖するならむしろ好都合で、いっそのことその混乱に乗じてトンズラするのも一興だった。ロトムの若造一匹が脱走する不祥事にいちいちかまっている暇は、向こうにもないだろうと高をくくる。
整理を一旦中断し、対無人アタック用の野戦回路をランチャーから起動。私は四感センサーのディレイを拡大する。
Rotom : < どこにいやがる。用があるんなら、姿を見せてからにしろ。 > : end
いくらかはびびらせられるかもしれないと思い、電脳世界-MNDのかなたへ向けて、適当な喧嘩文句をふっかけてみる。
<!-- 今だからこそ告白できるが、この時びびっていたのはむしろ私だ。まったく情けない。 -->
どこぞの管理者が送り込んできたスパイ屋じゃないだろうな、と勘ぐる。まだ断定したわけでもないが、声も姿もない存在に見張られているのはひどく不愉快だ。サボっているとでも思うのなら、サシで会いに来て見てみやがれと心中でぼやいた。私は無断で勝手に作っていた探偵屋をバックグラウンドでコールし、ここ数百セカンドのログを全部リクエストした。自分で作っておいてなんだが、腹の立つことに、私が黙々と作業している間も探偵屋はよほど暇を持て余していたらしく、日記一冊分を軽く埋められそうなほどの細かなヒストリーをよこしてきた。しかもそれぞれが文字化けの乱舞であり、読み取るのにも相当な時間を取られそうだった。いずれ探偵屋を躾し直し、文字コードのプロトコルも整理せねばならないな、と私は少々うんざりする。
意味ありげなログは、「・ソ譁・」、「鏤炊サ・」、「?$??$」が私の近くに来たときから変化が見られる、ということだけだった。
ああ、もう。
忘れていた。私はパーソナルタグをポイントし、ついさっきやってきたモノたちを、「0098」、「1314」、「5597」と大儀そうに書き直す。
探偵屋に頼らずともこのくらいわかっていた。5セカンド前に、私自身で現実世界から受け取ったからだ。モノをそばに置いておけば、物理的な間合いの都合で、ノイズの形状も変化する。そもそも、ノイズはモノからも極微量ながら発散される。それでお互いのパーソナルデータを壊さないよう適度な距離を置いておくのが、電脳世界全域における絶対の定石だ。
これが原因なのだろうか。しかし、こんなことにいちいち反応する私でもないはずだ。
考えれば考えるほど、気のせいだとしか考えられない。
誰かに相談してみようか。こちらから頼るのは癪だが、有事としてポリゴンに訊ねてみるか。
いや、それは最終手段だ。
まずは、できるところまで自分で原因を究明しよう。
それは好奇心からではなく、他の管理者に相談して『些細なことでガタガタ抜かすな』とガキ扱いされるのが嫌だったからだ。聞く耳不要の問題児だと周囲が承知していることを、私は承知していた。
そういうことで、もう一度ヒストリーをおさらいする。ノイズのドップラーシフトが変わったタイミングは二回。
一回目は、0098、1314、5597を受け取った直後。それは仕方のないこと。
二回目は、更にその数セカンド後。
後者が臭うと私は踏んだ。
慎重に記録すべく、サブシステムにて、体内の時計を0からカウントさせ始めた。何を思ったのか、私は自分でも理解できないままにメモリを開放。センシングの精度を上げた。全てのチャンネルを一時的に開放し、0098と向きあってみた。
『おい、聞こえてんのか。返事くらいしろよ』
突然のコネクション。
回路の中枢までフリーズしかけた。
言葉もなかった。
1314、5597は、まだなんの応答もない。
もし聴覚回路と言語野に異常をきたしていなければ、今の交信はこの0098からだ。意思疎通の可能な存在にいきなり出会えたという驚きと衝撃を、私は無表情でなんとか持ちこたえる。向こうにそれを読み取る感覚があるのかどうかはわからない。
が、0098は敏感だった。
『驚いた、って、はあ? アホ言え。あのな、おれたちにもはっきりとした意思が存在するんだ。 電気(メシ)食って動いている中途半端なやつらなんか特に顕著だろ。微細な電位ひとつひとつに小さな意識を存在させて、人間と直に接するんだ。虫の居所が悪ぃ時にはイタズラして、逆に良い時にはプロセスを早めてやる。ここと向こうを行き来できる、どっちつかずのおまえにならわかるはずだろ。おれたちは現実世界で言葉を持てないから、そうやって人間への意思を己の形で表す。それだけだ。おれたちは、ずっとそうして、あらゆる所から、人間やポケモンを見守ってきたんだよ』
長ったらしい講釈に意識を覚ました私は、真っ先に0098にこう投げかけた。
Rotom : < おまえは、一体何者だ。 > : end
モノだと承知しておきながらも、私はなぜかそう訊ねてしまった。
そして0098も、律儀に返事をくれた。
『おれは、旗だ。それ以上でも、それ以下でもねえ』
念のために0098を対象に高速スキャニングしてみる。
もう、間違いなかった。0098の言うとおり、0098は旗そのものだった。
しかし、ここは電脳世界-MND。つまりこいつは、秘密基地に立てられる、少し特殊な部類の旗だった。
『おれがそこに立っているということだな、人間とポケモンがそこにいるという証になるんだよ。存在を示す代表であり、象徴であり、看板だ。おれはそれを忠実に果たしている』
Rotom : < 自分からは何もせず、されるがままの生き様か? 納得できないな。 > : end
突っぱねるように言い返すと、0098もにべもなく返してきた。
『言ってろよ。おれはおれのすべきことをする。それだけだ』
とうとう私も年貢の納め時か。電脳世界の海に沈みかかってきているらしい。
このことを、まだ私は誰にも相談していない。凶悪なバグ、もしくはそれ以上の何かだと信じてやまなかった。誰かに報告したが最期、私はシステムに深刻な異常がある危険な存在として、今度こそ抹消されてしまうかもしれない。抹消されずとも、自らを食いつぶすバグで、いずれは自滅していくのだろう。ずっとそう考えていた。
だからそれまでは、これを幻覚だと思い込んで、己の妄想を味わい、開き直ることとしたのだ。
その一方で、ずっとこの記録を残し続けたいという気持ちもある。このような希有な体験は、もう二度とない。私はそう決めつけていた。これまで、「意味のなさない異常」にずっと取り囲まれ続けてきた。なのに、いざ「意味を成す異常」に初めて出くわした私はどうすることも考えきれず、とりあえずは保存を第一としたのだ。
それからというもの、私には対話者ができた。
『おまえのような生き物は、自分から何かをすることでやっと己の存在価値を示す。はっ、つくづく嘆かわしい。だがな、おれたちは違う。それこそ根本的にだ。静に徹することで真価を発揮する。人間に必要とされる時こそ、されるがままに黙って役割をこなす。他の物体を支え、守り、しかし外力の入らぬ限りは決して自分から動かない。それがおれたちの鉄則であり、掟であり、唯一無二の目的だ。そういう意味では、現実世界の重力ってのは永遠の宿敵でもあるし、恋人でもあるのさ』
口が悪いのは、お互い様であった。
その他にも、色々なことを聴いた。どちらかというと、向こうの話に耳を貸す形式が多かった。
Rotom : < おまえはそれでいいのか? > : end
『もちろんだ。おれはおれの生き様とやり方に、十分満足している。次の秘密基地がどんなところで、どんな人間たちを迎えられるのか、今から楽しみだぜ』
極端に言ってしまえば、0098は「使われる」ことしか話題に出さない。
話は平行線を保っていた。生命を持つ者と持たぬモノ、24時間で肩を組めるまでに発展するというのがそもそもどだい不可能だった。生物と静物、根本的な理解の齟齬があるのか、0098の言うことには何かとひっかかることが多く、私は何度も口を挟んだ。価値観がまったく別次元なため、一度聴いただけでは飲み込めないことが多いのだ。
0098による、モノとしての視線。私も一応の理解はしたのだが、簡単に受け入れてしまうと、そこで話が終了してしまう。だからあえて否定し続け、何度も0098の理論を聴き出している。
しかし――
もしも、0098が折れてしまったら。私との話し合いの末、『おまえの言うとおりだ。これからはおれも人の手で使われることを嫌い、引き出しの要求信号が来る時までここで怯えながら過ごすとしよう』――なんて言おうものなら、そんな0098に対してどうしてやればいいのか、私は完全に道を失っていたはずである。
『なあ、おまえ。おれたちの相手をして楽しいのか』
Rotom : < 楽しいわけないだろ。言われなくても、おれだっていつかこんなところ出ていってやるさ。 > : end
どうだろう。当時はあれこれと文句たらたらであったが、最近にいたっては悪い気分ではなくなってきた。寝食を共にしてきたこの世界の異常やノイズにも、もう慣れっこだ。
居場所をなくすことが、寂しかったのかもしれない。
『なら、おまえはどうしてここにいる。どうしてここへ来た』
やはり、語らなければならないか。あまり思い出したくない、ほろ苦い記憶だ。
Rotom : < トレーナーに愛想を尽かして、かつて電脳世界で大暴れしたんだよ。 > : end
そこで三秒という長い間を置いて、
『は?』
Rotom : < 言ったとおりだ。おれにも、もともとは人間――トレーナーがいた。が、意見の相違から、最悪の形で袂を分かった。 > : end
『気持ちはわからなくもないが、どこをどうすれば電脳世界で暴れることに繋がるんだ』
Rotom : < トレーナーがおれたちをモノ――道具扱いするんだよ。おれだけじゃなく、みんな、不満だらけだった。崩壊は目に見えていたよ。 > : end
<!-- そう、それこそが、私の罪状だった。電脳世界-MNDという、人間のいない居場所を与えられると――不服がごまんとあったとはいえ――興奮の糸はやがてほつれて、私はこうして本来の自分を取り戻しつつあった。あの頃の私は、本当に気性が荒かった。すっかり落ち着いておとなしくなった今と比べると、バツの悪さに口がふさがる。けれど、それを「恥ずかしい」と感じることができるほど思考回路が正常になったのは、何よりもありがたいと思っている。ここへ迷いこまなければ、私は野獣のような生活をし続けていただろう。そして、自分らしさを失ったまま死んでいたに違いない。 -->
『ああ、そういうことか。それは災難だったな』
Rotom : < 納得できるのか。 > : end
『できるさ。同情だってする。おまえがおれたちのような思考は理解できなくとも、おれはおまえのような考えを受け入れる』
自分が自分に感じていた「異常」とは、果たしてこれなのだろうか。
なんだか違う。
自分が自分にごまかされている気がする。
自分は、どこかで強烈な勘違いしている。
<!-- このときは知る由もなかったのだが、私の察知していた異常は、大きく三つに分けられる。電脳世界-MNDそのものの異常。モノと対話できるようになった異常。
そして、私の回路を大きく変更する異常。 -->
0098との交信を始めてから、50時間ほど過ぎた朝方のことだ。
『よお、元気か』
Rotom : < ああ、おはようございます。 > : end
一瞬だけ、妙な間が流れた。
『どうしたおまえ』
――?
Rotom : < あれ、なんだか変だ、変、ですね。 > : end
『どっか回路の接続がわりいんじゃねえのか。なんだか気持ちわりいぞ』
思い返せば、ここ最近業務に追われて休んでいなかった。言語野にゴミでも溜まったのだろうか。0098は軽く受け流したが、私はなおも自分の発した言葉を反芻している。
自身の簡易検査でもしてみようかと考えた矢先、とある信号が私の思考へ割り込んできた。条件反射回路によって私はすぐさま伝票を作り出し、目の前にいる0098へリクエストを投げていた。
『ほら、おれの要求信号だぞ。さっさと職務を果たしな』
0098といえば、実にあっけからんとしている。それもそのはずで、私は元来ここの管理者であり、モノたちのお守り役ではない。それはそれぞれの人間たちの仕事だ。また、0098も私の話し相手となるためにここへ来たわけではなく、いつかやってくる「引き出し」のために、一時的に滞在していただけだ。
私は違和感をどうしても拭いきれなかった。メインメモリを4割も消費し、バックグラウンドでスキャニングをパラレルブート。ノイズフィルターの掃除。神経繊維集合体の腐食調査。接続回路のクロスチェック。
自分の思考回路に何かが大きく挟み込まれている。
形もままならぬ予感が、最悪の確信へと変わった。
Rotom : < あの野郎ども、こんなものまで作っていたのですか! > : end
一年前から、ここへ配属された時から、私の思考回路は不良システムとみなされ、徐々に性格を改善されていた。ここの世界にうまく当てはまるよう、外部から力を加えられていたのだ。どうりで、むかつくくらい気分が優れているわけだ。脱獄させないよう、良い子モードへと水面下で移行させていたのか。
<library word="不良システム">
かつてトレーナーと一緒だった時代からの、Rotom-MNDの全体をとりしきる構造回路。しかし、マザーCOMやPorygon-MNDは、それを粗悪で不要な性格集合体とみなした。今後の職務に影響を及ぼすとして、収監から一年後に完全封印した。そして、Rotom-MNDには電脳世界に適合する構造回路を適用された。
</library>
<!-- 私がここへ配属される以前から、どうやら電脳世界-MNDの大々的なメンテナンスを予定していたらしい。私の常日頃の掃除など微々たるもので、作業量などたかがしれていた。長期的な処理のために何かと後回しとなっていたようだが、あまりの荒れ具合にマザーCOMも重い腰をあげざるを得なかったようだ。そのついでに、私のシステムも改良しようと言う腹だったのだ。 -->
私は苛立ちのあまり、マザーCOMに直訴しかけた。取り付く島もないだろうと、諦めた。
くそ。「一年前の仕返し」というわけか。まさかあのマザーCOMから、こんな仕打ちをされるとは。
メンテナンスはさておいて、私のシステムに関する改良、それはきっと、ポリゴンの差し金に違いない。
Rotom : < 畜生、どこまでも差し出がましいことをしやがって! > : end
逃げよう。一瞬そう考えた。しかし、この巨大な檻そのものがこれから改良されてしまうのだ。それに巻き込まれて、私も変貌する。今からでも時限式ロックに総当たり攻撃をぶちこんでやろうかと迷った矢先、為す術も無く電脳世界における正式な分類ナンバーが体内に付与され、性格を改善するプロセスが内部から起動し、本格的に私をなぶり始めた。
『どうした』
Rotom : < マザーCOMからの、直々の命令だ、命令です。どうやら、性格が矯正、封印、されてしまうみたい、です。 > : end
私のシステムと、電脳世界-MNDのメンテナンス進行度が、1パーセント刻みで私の中で響き渡る。
『どうなるんだ』
Rotom : < わからない。システムが変わって、おれは、わたしは、おまえのことを忘れるかもしれない。会話できる能力も、なくなってしまうかも、しれない、です。 > : end
<!-- 過去の私よ、0098よ、こうなったぞ。こうなってしまうのだ。今となっては、もうどうでもいいことだ。 -->
Rotom : < おまえと会話できるようになったのは、不良システムでの、わたしだ。新しく、システムを、改良されるあとの、おれでは、ありません。 > : end
この期に及んでも、私は定型業務を忘れていなかった。メンテナンス前にタスクをひとつでも片づけていたほうが得策と見えて、条件反射回路が、0098の引き出し作業に私を駆り立ててくる。
『おれに構うな。モノであるおれたちと、完璧に価値観を共有する必要なんざねえんだ。星がまっぷたつに割れても、おれはモノで、おまえは生き物だ。最初から道は交差しないよう出来上がっているんだ。生き物は生き物らしく、自分の生き様を貫きな』
Rotom : < そんなもの、わたしの、勝手、だろう。今のシステムのうちに、理解しておきたいんだ。 > : end
本質を知りたい。ずっと、そのようなことを、うなされるように私はつぶやいていた。
私の中で、あらゆるものが砕けていく。
Rotom : < おれの、わたしの、こころ、かん、感情が、崩れていく――。おれが、おれでなくなっていく――。 > : end
<!-- 0098との交信記録を失ってしまうことを危惧した私は、ここで一旦、0098との交信記録を自ら打ち切る。図書館へ緊急コール。ここまでの交信記録を暗号化し、隠しファイルとして保管。以下は私の代わりに収録させ続けたものであり、それを解凍し、起草したものである。 -->
Rotom : < 忘れるものですか、わすれてなるものか、わすれない、わすれ な い。 > : end
<!-- 忘れるものですか。忘れてなるものか、忘れない、忘れない。 -->
私の条件反射回路のままに、0098は促される。それを食い止めるべく、私は必死に私に逆らおうとする。
Rotom : < おま とのきろ を、 おくを、わ れたくない。 > : end
<!-- おまえとの記録を、記憶を、忘れたくない。 -->
皮肉なことに、効率を求め、かつて自力で築きあげてきた条件反射回路が裏目に出るとは。
Rotom : < お いきざ のほ つを もっ しり い > : end
<!-- おまえの生き様の本質を、もっと知りたい。 -->
0098が、私の用意したカタパルトに黙って乗り込む。
Rotom : < 0098、 って れ ま はおわ ない。 > : end
<!-- 0098、待ってくれ。まだ話は終わっていない。 -->
『おまえにとっては屈辱かもしれないがな、おれに言われるのも』
カタパルトに搭載されたまま、0098が、最後に口を聞いた。
『おまえは、悲しいやつだよ』
</quotation>
[ <Administrator Rotom-MND> : <Close> Library <Include> <File Object Contact> Administrator Rotom-MND : <Ready> : <sec 1.0> ]
私は、記録との接続を静かに落とす。
まあ、幸いにも、新しいシステムとなった今でも、私はモノと対話できる能力を維持できている。記憶も大部分までは失われなかった。ただ、パニックに陥るとあらぬ行動をとってしまうのは、今も昔も変わらないようだ。
忘れられないし、忘れたくない。もう二度と。
この記録の「引用」という形で、この物語を生かし続けることとしよう。
0098も、0378も、私にとってはかけがえのないモノの対話者なのだから。
</body>
</html>
いろんな石を売るお店、いしやへようこそ!
何かお探しですか? 炎の石、水の石などの進化関連はこちらに、コハクや化石の類はあちらのショーケースにありますよ。そちらの棚には各種鉱物標本を取り揃えておりますので、どうぞごゆっくりご覧くださいね。
はい、お呼びですか? 何か気になる物が見つかりましたか。
ああ、こちらは変わり水晶の一つ、ルチルクォーツですね。透明な水晶の中に他の鉱物の針状結晶が内包されたものです。まるで金色の針がたくさん入っているように見えて、とても綺麗でしょう? 原石や磨いてカットしたもの、これはルースというんですが、どちらもコレクターの皆さんに大変人気があります。
これらの石は厳密には宝石ではなく、半貴石という扱いになります。一般的には天然石やパワーストーンとも呼ばれていますね。宝石ではないと聞いてがっかりされる方もおられますが、別に価値がないというわけではありませんよ? 宝石は希少性の高さや美しさ、年月を経ても劣化しないなどの特徴を持つもので、半貴石はその定義から微妙に外れるものだと解釈していただけばいいと思います。例えば石の産出量が多いとか、人工的に作られたものであるとか。とはいえ、定義に外れるといっても美しいものは沢山ありますし、鉱物学上ではともかく流通上では案外宝石と半貴石の区分は曖昧なことが多いですね。
さて、話が少々それましたが、今からパワーストーンとしてのルチルクォーツについてお話したいと思います。
この“ルチル”はラテン語で「黄金色に輝く」の意味を持つ語が起源です。黄金の水晶、ご覧のとおりまるで金そのものを包み込んでいるような石です。この姿から、特別に美しく輝く物は金運のお守りとして、また集中力や精神力を高める力があるとして珍重されてきました。勝負運を高めたり人を集める力があるとも言われているので、起業家の方たちに好まれる傾向があります。
その謂れとなる物語がカロスに伝わっておりまして。お聞きになりますか? ……はい、ありがとうございます。では長くなりますので、どうぞそちらの椅子にお掛け下さい。
さて、と。それでは始めましょう、ルチルクォーツにまつわる物語、題して【狐の涙石】。
昔々、カロスのある地方に鉱山の採掘で名を成した街がありました。その山一帯には良質の鉱石や貴石類が豊富に眠っていると噂され、それらを目当てに押し寄せる人々で大層賑わっておりました。
その噂を聞きつけて、遥か遠い遠い地方から一人の青年がやってきました。田舎の貧しい青年は、金銀宝石が湯水のように湧き出るという夢のような話を信じ、長い長い旅路を一心に駆け抜けてきたのでした。
ところが、慣れない場所で右往左往しているうちに、彼は荷物を盗まれ、ならず者相手のポケモン勝負に負けて手持ちを奪われ、あっという間に無一文になってしまったのです。
鉱山で働くためには相棒となるポケモンが必要で、ポケモンを捕まえる為にはボールが必要で、ボールを手に入れる為にはお金が必要で……しかし、彼には何も残っていませんでした。
目の前が真っ暗になった時、救いの手を差し伸べてくれた老人がいました。老人は鉱山の麓の森の管理人で、路頭に迷った青年を見かねて声をかけてくれたのです。
青年は老人の元に身を寄せ、森番の仕事を手伝いながら日々を過ごすことになりました。助けてもらった恩を返そうと、青年は熱心に仕事を手伝い、老いた森番の代わりに進んで力仕事をこなします。良い働き手が来てくれたと老人は喜び、何くれとなく世話を焼いてくれました。
忙しく、それなりに充実した毎日でしたが、未だ採掘の夢は心の奥底でくすぶっていました。気がつくと、彼はいつも山を見上げては溜息をついているのでした。
ある日、平穏な日々を揺るがす事件が起きました。一匹の凶暴なポケモンが、鉱山から大切な物を奪って逃げたというのです。森に逃げ込むかもしれないからくれぐれも気をつけろ、という伝言を聞いて青年は勇み立ちました。もしその犯人を捕らえる事が出来たなら、自分にも採掘場へ出入りする許可が与えられるかもしれない、と思ったのです。
果たして、そのポケモンは森に現れました。見慣れない色が森を走るのを見つけ、意気揚々と後を追った青年は息をのみました。
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ふと気付けば今日が一粒万倍日だったので、思い立って投稿。
「一作仕上がるまで次を出さない」とか言った気がするけど、そんなことはなかったのさ!
こちらが短いので何とか芽が出そう、かもしれない。
炎馬の王? 脳内でまだ逃げ回ってます……。 ※進捗していない
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海首の話
今でこそかわいいポケモンとして広く認知されている種族であっても、生物学などの学問が体系化されていない、生態などが研究されていなかった時期においては不気味な存在として扱われていた時があった。そんなポケモンの一種がホウエン地方の一部などに生息する「タマザラシ」である。
玉のような丸い身体に顔がついている生物的にはアンバランスなその姿は、見ようによっては生首であるとか髑髏を連想させたらしい。事実、昔の文献などにはタマザラシを海首などと記載しているものがあり、海の生物というよりは妖怪的な扱いであった。タマザラシを鼻の上でくるくると回すトドグラーの姿は現代人から見ればほほえましいが、鼻の上で回るそれが髑髏であるとか生首であるという風に考えると途端に不気味な光景になってくる。
古くから海には魔物が住むなどというが、タマザラシが生首扱いされたのにはホウエンの歴史的事件も背景にあったようだ。ニューキンセツの南、シマバラ・アマクサと呼ばれた地域ではその昔、領主からの重い年貢や過酷なに絶えかねて百姓達が反乱を起こした事があった。彼らの多くは現在のカロス地方などを擁する西欧の宗教の信徒であったという。島々の中にあった城の一つにたてこもった人々は一万にもなると云われ数ヶ月に渡り戦い続けたが、幕府軍の十万を越える軍勢を前にしてついに全滅する。乱を主導したとみなされた者達の多くは首を斬られて晒された後にシマバラ・アマクサの海に投げ捨てられたという。
このような背景があった為に、海に投げ捨てられた首が海首として戻ってきたのがタマザラシではないか、という風に人々は考えたわけである。彼らはタマザラシの毛皮の下には人の首が入っていると考えた。そして、その進化系であるトドグラーやトドゼルガの皮の中には人一人が丸々入っていると考えた。乱の鎮圧の際に身体を失った首が海で育ち、失った身体を取り戻したのだと。殊にトドゼルガなどはなかなか凶暴そうな面構えをしているから、乱で海にうち捨てられた人の怨念が宿っているなどと考えたかもしれない。タマザラシが海首などと呼ばれたのに対し、トドグラーやトドゼルガは時に鯔人(トドビト)などと呼ばれた。
そうして首の状態から身体を取り戻した彼らには、時間が経つにつれて別の伝説が付随するようになる。潮がもっとも引く日の夜には彼らは鯔の皮を脱ぎ、浜辺に上がると人の姿になって踊る。その舞踊はホウエンのそれではなく、海の向こうから伝わった異教のそれであるという。そうしてまた日が昇る頃には鯔の皮を着て海に戻っていく。
海の幸をたっぷりと身体に蓄えた彼らの容姿は美しく、偶然にその現場に居合わせた男が鯔人の皮を取り上げてしまった為に、海に戻れなくなった鯔人の女が泣く泣く男の妻になった、という話も伝わっている。鯔人の女は男との間に何人かの子を設けるが、ある日、末の子の口ずさむ歌から夫が隠した鯔の皮の行方を知り、皮を被って海に戻っていく。また、鯔人の男が殿様の妻を寝取る、という話もある。
余談だが、海首の伝説のルーツと思われるシマバラ・アマクサの乱の鎮圧後、領民に重い税を課して、乱を発生させる原因を作ったとして領主もまた斬首となっている。もしかしたら領主の首もまた海首となって、ホウエンの海を彷徨ったのかもしれない。となるとその子孫が誰かのポケモンとしてボールの中に収まっている、なんて事もあるのかもしれない……。
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ほんとうはこわいタマザラシ・タマザラシ異説
参考文献:人魚と結婚した男―オークニー諸島民話集―(あるば書房)
スコットランドの北に浮かぶオークニー諸島の伝説にはアザラシ人間(セルキー・フォーク)が登場します。彼らはある時間帯には皮を脱ぎ、人間の姿になることが出来るそうです。シンオウ地方にもそういいう神話がありましたよね。アザラシ人間を妻にする話は、日本の羽衣伝説によく似ていて興味深いです。
もしかしたら皮を脱いだトドグラー達は冬はこういう歌を歌ってるのかもしれないな。
http://www.youtube.com/watch?v=1mItWsC8RtM
それは2014.07.08深夜に行われた。
それは即興だ。
それはフェチい。
それは下から読む。
入室:4 (c.f, 門森 ぬる, αkuro, 殻) 閲覧:1
門森 ぬる:お疲れ様です。何と言うか大分フェチい(00:07)
αkuro:きゅー(ω・ミэ )Э(00:07)
殻:たまちゃんきゅー(00:07)
殻:おわり(00:07)
お知らせ:画像用αkuro(3DS/NetFront)さんが退室しました。(00:06)
殻:にゃおにくすがこうこたえる、「にゃー」(00:05)
殻:「さあ」とおじさんが、「おきがえじょうずにできたねえ、えらいねえ」(00:05)
お知らせ:画像用αkuro(3DS/NetFront)さんが入室しました。(00:05)
αkuro:ちょっと画像用入りまーす(00:05)
殻:シャツまで着替えさせられ終えて、にゃおにくすはもはや無表情ではなく、情熱的な瞳で、おじさんを見つめている。(00:04)
殻:それなのに、おじさんがつぎにしたのは、にゃおにくすに新しいパンツを着せること。パンツが腰にかかろうとしたとき、思わず浮いたにゃおにすの手を、おじさんがそっとつかんで、下におく。(00:03)
殻:にゃおにすの吐息がしだいに熱くなる。胸が高鳴る。おじさんが「ふふふ」と笑ってどきりとする。ぴくりぴくりと、いじらしいしっぽがゆれてしまう。(00:00)
お知らせ:αkuro(Android/Safari)さんが入室しました。(00:00)
殻:おじさんがそれをじいとみつめるものだから、にゃおにくすは恥ずかしくなって、ぎゅっとめをつむってしまう。(23:56)
殻:するとそこに、にゃおにくすのかちこちになったかわいらしいしっぽがあらわれる。(23:55)
門森 ぬる:帰りの電車内で書いてる所もポイント(23:53)
殻:つづいておじさんは、にゃおにくすのパンツをゆるめ、やさしくていねいに下ろしていく。にゃおにくすは思わず腰を浮かせてそれを手伝ってしまう。(23:53)
c.f:雄のこなのか、雌のこなのか、そこも気になるぽいんと(23:52)
お知らせ:αkuro(Android/Safari)さんは行方不明になりました。(23:51)
殻:にゃおにくすが、聞こえないくらいほんのかすかにため息をこぼす。(23:51)
殻:にゃおにくすのつぶらな瞳がぷるぷるとふるえる。しかしおじさんは、小さく微笑んだかとおもうとすぐに指を離してしまう。(23:49)
門森 ぬる:アカンやつだとしても続ける辺りさすが(23:49)
殻:おじさんがシャツのボタンをひとつひとつはずしていく。あらわになる、にゃおにくすの胸板。それをおじさんが、指でそっとひとなでする。(23:48)
αkuro:(ω・ミэ )Эぷるぷる(23:46)
お知らせ:αkuro(Android/Safari)さんが入室しました。(23:46)
門森 ぬる:なるほど(23:45)
c.f:にゃんと……(23:45)
殻:これだめなやつだった(23:45)
殻:無表情で横たわるにゃおにくす、かすかにふるえる。(23:43)
殻:「さあ、ねこちゃん。お着替えしましょうねえ」とおじさん(23:43)
c.f:にゃおにくすのおめめがうまくかけないのぜ…… 無表情になっちゃうのですヨー(23:42)
門森 ぬる:にゃー(23:41)
殻:にゃー(23:41)
この投稿から約1年経ちました。暑いです。αkuroです。 |
ありがとうございました。
結果発表チャットは18:00からにします!
メタモンといえば「へんしん」の技ですが、あれって「他の姿に変わる」ものじゃないですか。
ということは、若いポケモンや幼いポケモン、少なくとも死ぬ間際で無ければ、変身をし続ければほぼ不老不死の状態なのかな、と思いまして。
もし致命傷を負っても、変身の技が使えるなら元気な姿に変われば生き延びることも可能では無いかと。
しかし、メタモンがとれるのはあくまでも「へんしん」を使った時の姿でしかなかったら。
進化も出来ず、老いることも出来ず、時間の経過によって姿を変えることも出来なかったら。
それはとても、寂しいことだと思います。
「へんしん」が得意でも、メタモンはメタモンの姿であってこそ、幸せになれるのではないでしょうか。
そんなことを思って、この話を書きました。
読んでいただき、ありがとうございました。
あるところに、「へんしん」の技に大変優れたメタモンがいました。
木、花、石、珊瑚、人間……。そのメタモンは、どんなものにもとても上手く変わりました。
中でも、ポケモンに変身するのが得意でした。
しかし、そのメタモンはとある大嵐に巻き込まれ、元いた住処から飛ばされてしまいました。
他のメタモンたちと離れ離れになり、行き着いた先では同じ種族を見つけることが出来ずに知らない土地で途方に暮れていました。
一匹だけで毎日を過ごし、寂しさを抱いて、自分と同じ姿をした者を探して辺りを彷徨っていたメタモンは、やがて森に辿り付きました。
その森にはピカチュウがたくさん住んでいました。ピカチュウたちの様子を影から伺っていたメタモンは、姿を変えれば一人ぼっちにならなくてすむだろうか、と、試しに一匹のオスのピカチュウへと変身してみました。
突然現れた同族に、他のピカチュウたちは最初こそ警戒していたもののメタモンの変身は完璧だったのですぐに群れへと迎え入れてくれました。
木の実を食べ、池で遊び、ポッポを追いかけ、ゴローンから逃げ回り、メタモンは毎日を楽しく過ごしていました。
そのうち、ピカチュウの姿をしたメタモンの隣にはいつも、一匹の可愛らしいピカチュウが寄り添うようになりました。
花が咲いて、緑が茂って、そして葉が色づく頃には多くのピチューが二匹を取り囲んでいました。
メタモンは、今や伴侶となったピカチュウと、子どものピチューたちと、群れの仲間たちがいて幸せでした。
しかし、時は流れ、愛していたメスのピカチュウは静かに息を引き取りました。
メタモンは悲しみ、来る日も来る日も涙を流しました。
それだけではありません。さらに季節が巡り、メタモンが最初に出会ったピカチュウたちは皆この世を去り、そればかりかメタモンの子どもたちも少しずつ命を落としました。
いつまで経っても、群れにやってきた時の姿を保っているメタモンは、徐々に気味悪がられるようになっていきました。
とある静かな夜、メタモンは他のピカチュウたちが寝静まった頃にそっと森を立ち去りました。
行くあても無く進み続けたメタモンは、野原に着きました。
そこに住んでいるのは、夏の翠葉をその身に宿らせた、シキジカとメブキジカでした。
メタモンは寂しい気持ちを抑えきれず、一匹のメブキジカへと変身しました。
群れの者たちに負けず、メタモンが変わった姿も立派な深緑を持っていました。
より素晴らしい角と葉を持つ者が評価される群れの中で、メタモンはあっという間にトップになりました。
暑い日差しの下、群れを率いるメタモンの周りにはたくさんのシキジカとメブキジカが存在し、いなくなることはありませんでした。
いつも誰かと共にいることが出来て、メタモンの寂しさはなくなりました。
しかし、夏が終わって、秋になって鹿たちはその姿を変えていきました。
「なつ」のメブキジカに変身したメタモンは、緑の葉を彩ることは出来ません。
赤、黄、茶の中で取り残された緑の鹿はすぐにリーダーの座を奪われ、異物扱いされ、誰も近寄ることはありませんでした。
シキジカとメブキジカの身体が雪に染まる前に、メタモンはその姿を眩ませました。
次にメタモンが辿り着いたのは、荒れた大地でした。
岩が立ち並び、雑草が繁ったその土地ではザングースとハブネークが長年争いを続けていました。
メタモンは少し迷いましたが、結局ザングースのメスに変身することにしました。
ハブネークとの戦いに備え、少しでも多くの同種族を求めていたザングースの群れは喜んでメタモンを迎え入れました。
その中でも、群れのルールやメンバーを教えてくれた若いオスのザングースとメタモンの仲はどんどん深くなりました。
しかし、そのオスは、メタモンが生まれたてのタマゴを暖めている間に起こった全面戦闘によって命を落としました。
彼だけではありません、群れのザングースのほとんどが、そして、敵対していたハブネークたちの多くも相討ちで地に伏しました。
メタモンが大事にしていたタマゴさえもが、戦火に飲まれて新たな命を生み出す前に壊されました。
幸か不幸か、傷を負ってもまた元の姿に変身し直すことによってダメージを回復していたメタモンは生き残りました。
静かになった大地を一度だけ振り返り、メタモンは一人歩き出しました。
メタモンは、旅をし続けました。
メタモンは、変身を繰り返しました。
ある時、メタモンは一匹のコイキングでした。
濁った川の中で、鳥ポケモンたちの来襲をかわしながら、他のコイキングと共に滝壺に向かって泳ぎ続けました。
やがてコイキングの群れは、文字通り登竜門である大きな滝に辿り付きました。
一匹、また一匹と、コイキングは滝を登り、紅の鱗を輝かせて威厳に満ち溢れた龍へとその姿を変えていきました。
メタモンも負けじと滝を登りました。
そして、とうとう滝を登り終えた時、そこに残ったのは上流を泳ぐ一匹のコイキングでした。
メタモンが変身したのは、あくまでもコイキング。
ギャラドスへと進化を遂げることは出来ませんでした。
その事実を悟ったメタモンは、流れに逆らってがむしゃらに泳ぎながら川上へと姿を消しました。
ある時、メタモンは一匹のネイティオでした。
過去と未来を見せるネイティオは、他のポケモンと交流することはありません。
全ての時間を見ることが出来るので、コミュニケーションを必要としないのです。
ずっと変わるものを見続けられたら寂しい気持ちにはならないだろう、そう思ったメタモンはネイティオに変身したのです。
しかし、あくまでも姿を変えただけに過ぎないメタモンは、その能力までも真似ることは叶いませんでした。
物言わぬ仲間たちに一度だけトゥートゥー、と鳴いてから、メタモンはネイティオの姿をやめました。
ある時、メタモンは一匹のイーブイでした。
立派な毛並みを持ったイーブイへと変身したメタモンは、ポケモンブリーダーの手に渡りました。
メスのイーブイの姿のメタモンと、イーブイの進化系であるオスのそれぞれとでタマゴをたくさん作るためです。
サンダース、シャワーズ、ブースター、エーフィ、ブラッキー、リーフィア、グレイシア、そしてニンフィア。
色とりどりのオスたちはいずれも器量が良く、また強さも兼ね備えた粒ぞろいでした。
暖かい寝床と栄養のとれた食事も確保されていて、メタモンはやっと居場所を見つけられたと喜びました。
しかし、ここでの生活は大変味気ないものでした。
言われたままにタマゴを作り、後は狭い檻の中。
オスの進化系たちがそうであったように、メタモンの表情も徐々に冷え切ったものに変わっていきました。
とある晩に、メタモンはクレッフィに変身し、全ての鍵を開けてオスたちと共に逃げ出しました。
久しぶりの外に、オスは皆、メタモンを一度も見ることなく方々へと散っていきました。
メタモンはその様子を見届けたあと、ブリーダーの施設を後にしました。
メタモンは、色々な場所へと行きました。
メタモンは、その姿を変え続けました。
ある時、メタモンは一匹のマンタインでした。
海に沈んだメタモンは、常にテッポウオを引き連れて深海を泳ぐマンタインを見て、いつも一緒テッポウオがいるならば寂しくないだろうと思いました。
メタモンは、マンタインの姿を完全に再現しました。
しかし、テッポウオも含めて変身してしまいました。
他のマンタインとは違い、メタモンに寄り添うテッポウオはメタモン自身の一部であり、共にいる存在とは言えませんでした。
形だけのテッポウオはもの言うことなく、ひれにくっついているだけでした。
暗い海の底で、メタモンはテッポウオの偶像を隣にして一人泣きました。
ある時、メタモンは一匹のアンノーンでした。
遺跡に刻まれた文字であるアンノーンたちは、様々な形をしていました。
その中の一種類に姿を変え、メタモンは古代の城跡に住みました。
ある時、もの好きな人間が遺跡にやってきました。
人間は好奇心で訪れただけでアンノーンを攻撃するつもりは無かったのですが、警戒したアンノーンたちは人間から隠れるために文字へと戻りました。
もともと文字では無いメタモンだけが取り残されました。
完成された文章には、メタモンが入る隙などありませんでした。
一匹だけで浮いているアンノーンを見て人間は不思議に思い、もっと調べるために近づきました。
捕まる、と思ったメタモンは、その姿をゴローニャに変えて人間を追い払いました。
メタモンの放った岩雪崩は、それはそれは強力でした。
人間が去り、文字から元に戻ったアンノーンたちは、自分たちの住まいである遺跡を壊したメタモンを攻撃しました。
全てのタイプの目覚めるパワーに襲われ、メタモンは遺跡から逃げ出しました。
ある時、メタモンは一匹のヒトモシでした。
ヒトモシは、人の魂をその身に吸い込むことで炎を作ります。
たくさんの魂を得れば得るほど、炎は美しい青白に変わるのです。
メタモンが出会った他のヒトモシたちは、次々に人の命を取り入れ、そして炎を輝かせていきました。
メタモンの姿は、どれだけ魂を吸い込んでも変わることはありません。
初めのうちは同じだけの輝きだった青白い炎は、周りのヒトモシのそれがどんどん美しくなっていくのに比べ、メタモンは未だみすぼらしい、今にも消えそうな燃え方でした。
そんなメタモンが惨めに見えたのでしょう、そのうちにヒトモシたちはメタモンを遠ざけるようになりました。
炎が本当に消えてしまう前に、メタモンはヒトモシでいることをやめました。
メタモンは、世界中を渡りました。
メタモンは、世界中のポケモンに変身しました。
ある時、メタモンは一匹のバルキーでした。
険しい山では、たくさんのバルキーが修行を積んでいました。
より強靭に、より俊敏に、より正確に、より機敏に。
ある者は腕力を鍛え、ある者は脚力を鍛え、またある者は反射力を鍛えました。
バルキーたちは、攻撃に特化した者、防御に特化した者、素早さに特化した者にわかれました。
そして、それぞれはその能力に応じて姿を変えました。
メタモンは、バルキーのままでした。
それでも諦めず、様々な修行を続けました。
やがて、メタモンはバルキーにして、山のどんな者よりも強い存在になりました。
皆が毎日、メタモンに稽古を求め、勝負を挑んできました。
自分の元に絶えず誰かが訪れる日々を、メタモンは嬉しく思いました。
しかし、最強と崇められ、敬われるということは裏を返せば、敬遠と、畏敬と、恐怖されるということになり得ました。
誰も隣にはいてくれないと気がついたメタモンは、鍛え抜いた足を使って、一晩で山を下りました。
ある時、メタモンは一匹のフラージェスでした。
とても美しい花畑で、メタモンは他のフラージェスやフラべべ、フラエッタと優雅な暮らしをしていました。
花畑に咲き乱れる花々に負けず、その力を受けたフラージェスたちも美しい姿をしていました。
しかし、花畑を急な日照りが襲いました。
強い日光は、花々をみるみるうちに枯らしていきました。
フラージェス、フラべべ、フラエッタも、身体の花をしおれさせてしまいました。
ただ一人、メタモンだけが変身した時のままの美しさを保っていました。
唯一綺麗なままのメタモンを、他の花は妬み、嫉み、恨みました。
渾身の花吹雪を受け、メタモンは傷つき、花畑にいることが出来なくなってしまいました。
どこへ行っても、メタモンは独りになりました。
どれだけ愛しても、メタモンと添い遂げる者はありませんでした。
どんなに愛されても、メタモンが共に眠ることは叶いませんでした。
独りぼっちのメタモンは、幸せを求めるたびにその姿を変え、悲しくなるたびにその姿を変えました。
どんな姿でもいい、自分が寂しくなくなるなら、全ての存在に変身してみせる。
メタモンはそう思いましたが、何度変身しても、寂しさが消えることはありませんでした。
それに気がついていたのか、それともいないのか。メタモンは、もはや悪あがきのように変身を続けました。
沼魚になり、蝶になり、鳩になり、狐になり、鯨になり、ゴミ袋になり、南瓜になり。
メタモンは、あらゆるポケモンの姿になり、何度も涙を流しました。
メタモンは、自分の本当の姿を忘れていました。
ある日、エアームドに変身して空を飛んでいたメタモンは、地面に紫色の点を見つけました。
何だろうと思って近づいてみると、それは一匹のメタモンでした。
ふよふよとした定まらない形と、落書きのような表情。
その姿にどこか懐かしいものを感じたメタモンは、すぐにそのポケモンへと変身しました。
そのメタモンは、何も言いませんでした。何もしませんでした。
何もすること無く、ずっと空を見上げていました。
メタモンは、そのメタモンの隣に陣取り、一緒に空を見ることにしました。
雲が横切り、鳥が飛び、花びらが舞いました。雷が光り、雨が滴り、風神が暴れました。星が瞬き、雪が降り、龍が流れました。
空は毎日、その姿を変えました。今までのメタモンのようでした。
それに対し、隣にいるメタモンは、全く姿を変えませんでした。へんしんポケモンのはずなのに、変身することなく、黙って空を眺め続けていました。
不思議と、そんなメタモンと一緒にいると、寂しさを覚えることはありませんでした。
変わりゆく空を共に見て、メタモンは今まで感じることが無かったような気持ちで心が満たされていくのがわかりました。
何度も季節が巡った後、メタモンは、流星群の夜が終わり、明るくなった空を見ることなく眠りにつきました。
隣のメタモンに寄りかかり、幸せなまま、永遠に目を閉じました。
そんなメタモンを見て、隣にいたメタモンが小さく動きました。
同じ姿をした、長く生きたへんしんポケモンを、そっと撫でました。
何かを告げるように口許が動き、そしてその動きが止まった後、そのメタモンの姿はもうありませんでした。
動かなくなったメタモンの上空を、桃色の猫のような一匹のポケモンが軽やかに飛んで行きました。
あるところに、「へんしん」の技に大変優れたメタモンがいました。
そのメタモンは、たくさんのポケモンに変身しました。
たくさんのポケモンを愛し、たくさんのポケモンに愛されました。
今は、もういません。
ずっと欲しかった、おやすみの言葉をもらえたそのメタモンは、もう二度と、目を覚ますことはありませんでした。
記事用
・熱砂の国の蛇神譚
【蛇といえば、世間一般には「細長くてくねくね動く気持ちの悪い生き物」「猛毒を持っていて危険」「ロケット団などのアングラ組織が手持ちに入れている」等、あまり良くないイメージを持たれているのではないだろうか。確かに、四肢を持たず滑るように地を這い、獲物に食らいついて丸呑みしてしまうその姿は異様である。また表情を表さない顔や、際限なく開く(少なくともそのように見える)顎、長くて鋭い牙は畏怖と嫌悪の対象にされやすい。世界中に広がる某宗教間では、人の始祖が楽園から追放される原因を作った生き物として忌み嫌われている。神の罰を受けてあのような気味の悪い姿になってしまったのだ、という説がある程に。
身近で親しみやすい獣型や獣人型、人型など人々の支持を集めやすいポケモンと違い、彼らは大抵日陰の身扱いである。
しかし、そんな彼らも一部地域では神の使いとして、あるいは神そのものとして崇められていることをご存じだろうか。】
ここまでで挫折。世界の蛇話と蛇ポケモンとを絡めつつ、メインはイッシュの砂漠の城(都市)を古代エジプトに見立てて、アーボックが墓守の女神だったと紹介する予定でした。結局、予定は未定でした!
・ヨツクニ地方の狸譚
四国のタヌキ伝説をかき集めて方言バリバリダーで書き、それを記者が標準訳したという二段構えで……と考えつつ、うやむやのままに保留。
山奥に住む爺さんが語る伝聞、という形にしたかったんですけどね。
小説用
・嘆きの湖の伝説
第一次の記事の元ネタ。いまだ仕上がらず。
・タイトル未定
熱砂の記事の小説版。古代エジプトの神々をポケモンに当てはめて、どうこうするつもりでした。煮詰まりきらず断念。
【熱砂の国には、古い古い信仰があった。今はもう人々の記憶から抜け落ちてしまった神々が、遠い昔に生きていた。】こんな感じ。
以上、鳥居ボツネタでした。いつかまたどこかで、形にできたらいいなあ。
1番の18時からを希望します。
21時から別件が入っておりまして・・・
チャットなら問題ないかもしれませんが、確実に時間作れるタイミングをば。
1の18時からを希望します。
早いほうが、次の日に響かない…と思いまして。
おそらくどの時間帯でも21時前後に離席するかと思いますが、20:00だと比較的都合がいいです。
18時開始希望します
早く終わると寝れる!
ツイッターで開始時間を早めにして欲しいとの要望をいただいたのでアンケートをとります。
以下、三択から選んで下さい。
1.18:00〜
2.19:00〜
3.20:00〜
回答期限:今週木曜日いっぱいまで
ボツネタの宝庫だよ!
・竜を呼んだ師匠
旅芸人の師匠と付き人の話。
明治より昔らへんを意識
現在のフスベシティらへんを通った時、興味持った新しい領主にやれと言われて、削ったばかりの横笛で師匠が演じる
が、弟子はその笛はやたら高く、竜の声(雲を呼ぶ風の音)に似ていてあまり好きではなかった
フスベシティでは笛を吹いてはならぬと言われていたが、新しい領主はそんなの迷信とばかり。
しかし師匠が奏で始めるとだんだと雲行きが怪しくなり、大量の雨が振り、雷が鳴る
師匠の身の回りの世話と、台無しになってしまった笛のために、フスベの山へいい木を探しにいく弟子。
猟犬(デルビル、ヘルガー)を連れた地元住民に、ここは昔、シロガネ山に住む竜(カイリュー)が仲間を失って探しに来たはいいが、結局みつからずに終わってしまったこと、それ以降、笛の音を聞くと仲間だと思って大雨を連れてやってくることを聞く
元々表を歩けない身、黙々と笛を作り、二人は旅立つ。
・主任の炭坑
シンオウは石炭や金銀などが取れるため、たくさんの炭坑があった。
ポケモンを使い、どんどん掘り進めシンオウ地方から取れる資源は人々の生活を豊かにした。
炭坑で働くものは取れれば取れるほど自分にまわってくる利潤が多くなるため、どんどん掘り進んだ。
事故も多かった。しかし会社は遺族にたくさんの金をおけるほどだった。
そんな時、作業員が何人か戻らないことがあった。確かに一緒に作業し、直前まで話していたはずなのに
探したが崩落などはなく、また明日探そうと解散。
次の日も探すが永遠に戻ることはなかった。
そのかわり、炭坑でイワークの変種が見つかる。金属の体にシャベルのような顎を持っていた。
作業員が見てるまえで壁を堀り、金属を見つけるような動作をした。そいつは作業員を見つけると勢いよくやってきた。驚いた作業員は逃走するが、途中で何人かいなくなる。
そして作業員が何人かいなくなった。ついに主任者が現場に入るが戻ってこなかった。それに比例してイワークの変種の目撃談が多くなる。
噂では山に取り憑かれた炭坑夫の成れの果てだとされ、炭坑は閉じられた。
今では調査のため、開かれているが、決してハガネールだけには攻撃していけないと言われている。
それがもしかしたらあの時の作業員かもしれないのだから
(モンハン、ウラガンキンネタより)
・妖狐はいかにしてシンオウから姿を消したのか
今ではシンオウでロコンは見られない。
元はたくさんいたのだが、人に退治された。
シンオウの開拓や炭坑で働く人はケガも多く、この男も全身に火傷を負って看護されていた。
だいぶ治ってきたころ、家に人が来た。妻が対応すると会社のものだという。しかし男も女も子供まで混じっていた。
おかしいなと思いつつも、仕事のことを相談したいから少し部屋を閉じてくれと頼まれてその通りにした。
何時間たっても出て来ないので様子を伺うと、男は既に息絶えていて、そのまわりをキュウコンとロコンが争うように男の肉片を食べていた。
火傷の治りかけの皮膚はロコンキュウコンのたぐいの好物である。炎でやいた相手を生きたまま放置し、治ってきたころに食べることもする。
妻が叫ぶと、一目散に逃げていった。
同じようなことが相次ぎ、狐をこの世から抹殺すべきだと残された開拓民は炎に強い猟犬ヘルガーと共に山に入り、一匹残らず仕留めた。
最後のキュウコンが絶滅したのはその事件から7年後だったとされている
今でもシンオウでロコンは見かけない。むしろ見ない方がいいのかもしれない
(北海道の炭坑記録から)
どれも、文章にするとだるくなっていく
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