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あなたがいたから 僕は外の世界を知ることができた
あなたがいたから 毎日がとても楽しかった
あなたがいたから 辛いことでも乗り越えていけた
あなたがいたから あなたのために頑張ろうと思った
あなたがいるなら どこへでも行ける気がした
あなたといるなら なんだってできる気がした
あなたといること それが僕の当たり前だった
あなたといたから 時間はあっという間に過ぎて行った
あなたといられて とても幸せだった
あなたといたこと 一番大好きだったあなたへ
――ありがとう
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
大好きな人との時間は永遠に続いてほしいけど、なぜかすぐに時が過ぎてしまう
こちらの第9回のバクフーンのイラストを見ながら書きました
http://7iro.raindrop.jp/
今でも時々夢に見る、あの光景。あれから一度も行ったことはないけど、それでもハッキリ覚えている。
随分と引っ込み思案だった私を。他人に合わせることしか出来なかった私を。
ガラリと変えたのは、紛れもない、あの出来事なのだ。
――――――――――――――――――
生まれてから幾度目かの夏が巡って来て、そして終わった。まだ少し蒸し暑い日もあるけど、朝方と夜の冷え込みは秋が少しずつ夏との椅子取りゲームに勝って来ていることを教えてくれる。
空は高い。雲は時々入道雲、鰯雲。雨は降る時にはしつこく、止むとまた少し涼しさを持ってくる。そんな昼夜の気温が安定しない日々で、私が考えていたことといえば、一匹のツタージャのことだった。
ツンとした態度と、時折見せる寂しげな表情。ロンリーボーイ……ガールではないと思う。会って少し経ったが、その子の性別は未だはっきりしない。そもそも自分のポケモンとしてポケモンセンターや育て屋に連れて行っていいのか、それが分からなかった。
生まれて十四年が経過したが、ポケモンを持たせてもらったことは一度もない。両親が海外へ行く前に免許は取ったが、どうしても持つ気になれなかった。持っていた方が何かと便利であることも、市民権をより強く得ることができるのも分かっている。
だけど……。
ピンポーン、という音で我に返った。慌ててパスを反対にして翳す。幸いにも後ろに待っている人はいなかった。
最寄り駅であるライモンシティから少し離れた場所。住宅街に面した、どちらかといえば田舎寄りの土地。同じような家が並び、何処が誰の家なのか見分けがつかない。
だが、迷うことは無い。何故なら、今から自分が行こうとしている家はそれらからかなり浮いているからだ。
「趣味が伺えるなあ……」
アースカラーが似合う家。壁にはめられたステンドグラス。今日はよく晴れていて、青い空がグラスに映っている。光を浴びている彫られたポケモンも、活き活きとしているように見える。
家と家の間に申し訳無さそうに建っている。写真を撮ろうにも全て同じアングルからしか撮れないだろう、というくらい小さい。まるでシンオウ地方にあるという白い時計台のようだ。ビルとビルの間にあり、たとえタウンマップの表紙を飾っても現地に行けば驚かれてしまうような……
いつも通りにノックして、ドアを開ける。そして――
ひっくり返る。頭を打った場所が芝生の上だったことが不幸中の幸いで、ゴチン!という目を覆いたくなるような惨事にはならなかった。
一応後頭部を撫でる。鈍い痛みはあるが、たんこぶになるような気配はない。一体全体どうしたもんだ、と前に視線をやった私が見た物は……。
「あ」
『キュウウ』
お馴染みの目と目が合う。大きな瞳に、私の間抜けな顔が映りこんでいる。眼鏡がズレているのを直すと、私は立ち上がった。ついでにパンツの埃を払う。
ツタージャは焦っているようだった。妙にわたわたしていて、いつもの冷静沈着な面は見えない。思わずクスリと笑うと、怒ったらしくつるのムチで頬をペシペシと叩いてきた。
ごめん、ごめんと謝ると腰に手を当てたままムスッとしている。
「珍しいね。自ら出てくるなんて」
『……』
「どういう風の吹き回し?」
私のからかいを無視して、そのままてってっと道路の方へ走っていく。予想外の行動に暫し呆然としていたが、慌てて開けっ放しになっていたドアを閉めて、ツタージャの後を追う。
相手の足の長さが幸いして、私は迷路のような住宅街でもその子を見失わずにすぐに追いつくことができた。
鉄の焦げる匂いがする。聞きなれた、ノイズ混じりの男性の声。スピーカーから流れる、割れたチャイム。小型ポケモンは料金は無料だということを思い出し、私は再びパスを通して改札口を通った。
「駅……」
ついさっき私が通ってきた駅。可愛らしいカフェは付いていないが、海と山、両方に囲まれた土地にあるため比較的通っている路線の数は多い。四番線まである。
その中の一つ―― 三番線ホームへの入り口である階段前に、ツタージャは立っていた。しきりに上の方を見つめている。見慣れた屋根の裏側。蛍光グリーンの文字盤が、時間を示す。電光掲示板はここからでは見えない。
そっと足を動かしては、引っ込めるという動作を繰り返すその子に、私はもしや、と思い訪ねた。
「……足、上がらない?」
『……』
「上に行きたいんだね?」
頷いたのを確認してから、私はそっと彼の腕の下に手を滑らせた。そのまま胸元まで抱き上げ、階段を上がっていく。多少プライドを傷つけられたのか、しばらくそっぽを向いていた。
変化があったのは五十段目を昇り終えた時。私が油断していたせいもあるけど、昇り終えて気が抜けていた私の手をひょいっと抜け出した。
「こら!」
そのままてててと停まっている電車に滑り込んでいく。右側に線路にドンと居座る、シルバーに緑色のラインが入った車体。ちなみに反対側はブルー。
息を切らして乗り込むと、ツタージャは一番前の座席の端っこにちょこんと座っていた。周りにポケモンを連れた乗客は数人。一人はヨーテリー、一人はドレディア(しかも恋人繋ぎ)、そして最後はツタージャの進化系であるジャローダ。
彼らの間で見えない火花が散った気がした。厄介ごとになる前に、相手のトレーナーがペシンと頭を叩いたから、大丈夫だったけど。
いつの間にかアナウンスが流れ、ドアが閉まっていた。ガタン、ゴトンと列車が動き出す。このまま立っているのも危ないので、ミドリはツタージャの隣に腰を下ろした。
上を見ると、広告と一緒に路線案内図が貼られている。何か書いてあるのは分かるが、両目とも視力0、1のミドリには読めない。
たとえ、眼鏡をかけていても今は。
(見えない物、か)
以前読んだ本に書いてあったフレーズが、ふと頭を過った。
『大切なものは、目に見えない――』
周りに付き合うことに疲れていたミドリの心に、それは深く響いた。
友達は、大切。その関係という物は目には見えない。だけど、人間は目には見える。目に見える物と見えない物が合わさり、この世界は成り立っている。
それに気付けるかどうかは、彼ら次第なのだと…… 他人に教えてもらうより、自分で気付けるかどうかが大切なのだということに気付いた。
窓ガラスが黒い画用紙を貼ったように黒くなっていた。そこに自分とツタージャの姿が映る。鏡のようだ。
その中に映る自分はどんな顔をしているのか。ぼやけてよく見えない。
いつの間にか周りに立つ人間が増えていた。その中の人集団に目を留める。彼らの格好はほぼ同じ。髪を短く切り、ピアスをしている。この季節には似合わない、よく焼けた肌の色。大荷物。左手首に不思議な形の日焼けの跡。
それに当てはまる物を考えた瞬間、一気に車内が明るくなった。ツタージャが眩しそうに目を覆う。ミドリも振り返って窓の外を見て―― 答えが出た。
キラキラ光る線。太陽が丁度世界の中心に上っている。青い波が押し寄せては崩れ、白波へと変わる。
小さな人影。皆が皆、彼らと同じような格好をしている。波に乗り、風を掴み、どれだけ転んでも立ち上がる。
周りに迷惑をかけることのないこの時期を選んだのだろう。
海だ。
山と崖に囲まれた場所に、海が広がっていた。
降り立った駅はかなり寂れていた。そもそもこんな駅でもきちんと成立しているのか、と考えてしまうくらいボロボロの建物である。屋根のペンキは剥がれ落ち、かつては赤だったと思わせる色。今では色あせ、その赤色の面影もない。どちらかといえば限りなく白に近いピンクに見える。
自動販売機があったが、ラベルが色あせていたためしばらく取り替えられていないことが分かる。つまりはドが付くほどの田舎だということだ。
「ライモンシティとは大違い……」
流石に呆然としたミドリの耳に、ツタージャの声が届いた。振り向くと改札口を通り過ぎ、そのまま道へ走って行こうとしている。
またこのパターンか、と思いながらもミドリは好奇心が湧き出てくるのを感じていた。ツタージャが知っている世界を、自分も見てみたい。
そんな思いを胸に足を動かす。
車通りは少なく、ツタージャはその短い足を器用に動かして先導していく。途中で寂れた飲食店、未だ現役なコンビニ(駐車場付き)を幾つか通り過ぎた。いかにも、な看板が目に入り、ふと懐かしさを覚える。
やがて、私の足は海の側にある小さな裏道の入り口で止まった。
まだ青い木々が行く手を阻む、坂道。『止まれ』の白い文字はハゲかけている。
「ここを登るの?」
『キュウ!』
それだけ言って上っていく。だがなかなか進まない。それでも確実に上がっていく。迷いは無い。
……慣れている。
汗一つかいていないツタージャと反対に、登り始めてたったの五分で息が上がり始めたミドリ。帰ったら運動しよう、と決心する。
それにしても、かなり長い坂だ。途中で右に曲がり、その後は一方通行。視界に『野生ポケモン出没注意』と書かれた看板があった気がしたが、気のせいだと思いたい。
携帯電話は圏外だった。
「あー……」
登り始めておよそ二十四分と五十三秒。ようやく視界が開けた。緑一色だったのが、青と土色が混ざる。
柔らかい風が髪を撫でていく。
まず最初に目に映ったのは、木で作られた家。昔読んだ某医療漫画の主人公の家によく似ている。だがそのシチュレーションがぴったり合って、ミドリはほう……とため息をついた。
ツタージャがつるのムチでドアノブを回そうとする。だが鍵がかかっているようで開かない。
「鍵無いの?」
頷いたのを見て、ミドリは少し下がった。そして――
「はっ!」
思いっきり体当たりした。錆び付いていたのだろう。バキッという音がしてドアが倒れる。はずみで地面に転がった。
舞う埃に咳き込みながら辺りを見回す。内装、家具共にカントリー調だった。しばらく使われていないのだろう、埃が積もりに積もっている。
ツタージャが遅れて入ってくる。小さな足跡が、床に付く。見れば自分が穿いているスニーカーの跡もくっきり付いていた。
……ついでに、転んだ跡も。
「ここは……」
『キュウウ!』
再びつるのムチ。目の前のテーブル横にある引き出しの一つを、必死で開けようとしている。長いこと開けられてなかったせいだろうか。その天然の木で作られた引き出しは染み出る樹液で固まっており、ビクともしない。
だがツタージャは気付かない。しまいにはタンス本体がガタガタと音を立て始めた。
「ストップ!」
不満げな顔をするツタージャを抱き上げ、テーブルの上に乗せる。自分で引っ張ってみたが、やはり動かない。
仕方ないので持っていたペンケースからカッターナイフを出し、境目に刃を擦り付ける。ガキン、という嫌な音がした。何とか引っかからずに刃が通るようになってから取り出す。
銀色に輝く刃は、見事にジグザグ状の割れ跡が入っていた。もう使えないだろう。
幾許かの虚しさを感じ、ミドリは使い物にならなくなったカッターナイフを机の上に置いた。続いて引き出しの取っ手を引っ張る。
刃を犠牲にしたおかげか、それは先ほどとは比べ物にならないくらいスムーズに開いた。
「……何だこれ」
古い、古いノートとスケッチブック。最近雑貨屋に増えてきたアンティーク風にデザインされたノートよりも、よっぽど年季が入っているように見える。色あせ、開いて見た中の文字はかなり薄くなっていた。
スケッチブックを傍らに寄せ、ノートの文字を見る。ツタージャにも見せようかと思ったが、しきりにスケッチブックを漁っているので放っておく。
「えー、なになに……って、英語!?」
日本語ではなかった。授業で習っていない単語のオンパレード。それでも今までの経験値とこの家の雰囲気からヒントをもらい、頑張って分かる単語を組み合わせていく。
一ページ読むのに五分。その日記は約二十ページあった。×五で百分。一時間と四十分。そういうわけで、ようやく納得できる翻訳を終えた時には既に西日が窓から差し込んでいた。
立ちっぱなしで棒のようになった足を擦る。埃だらけの椅子を持っていたティッシュで拭い、座る。机に突っ伏して、内容を反芻する。
「ツタージャのご主人様の、家なんだね」
『キュウ』
「ん?」
ツタージャがスケッチブックから一枚の紙を取り出し、私に見せた。良く見ればそれは紙ではない。いや一応紙の分類に入るのかもしれないけど、色あせた画像のオプション付き。
今とあまり変わらない服装の男女が立っている。撮影場所は多分この家の前。その真ん中にツタージャ。写真の状態から見て、二十年くらい前のようだ。
日記の内容と照らし合わせて再び考える。
その日記は、このツタージャのご主人が、自分が死ぬ前に書き記した物だった。
時は三十年ほど前。その男は、デザイナーとして世界中を回っていた。カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ。同じ場所に一年留まることなく、まるで風のように居場所を変え続ける。――いや、居場所なんて求めていなかったのかもしれない。新しいデザインのネタとなりそうな噂を嗅ぎ付ければ、たとえどんなに遠い場所でもすぐに向かう。そんな生活をしていた。
そしてそんな生活の中で、彼はふとしたことから伝説のポケモンに魅入られてしまった。神話や昔話だけに登場し、気まぐれに人間の前に姿を現す、希少な存在。それは何処の地方へ行っても伝わっており、その話をする人間の瞳は輝いていた。どんなに歳を取った者でも、それを口にする時その瞳は子供のように輝く。
そして、その男もそうだった。
彼は旅の途中で出会った女性と結婚し、彼女と共に各地の伝承や昔話が書いてある本を求めて回った。理由は一つ。想像図で描かれた伝説のポケモンを、何らかの形で残したいと思ったから。
その形は、彼の職業によってすぐに成すこととなる。
それが、ステンドグラスだった。
想像だけで描かれた物も多く、細部などはなかなか納得のいく物ができず、作っては壊しの繰り返し。それでもやっと、ほとんどのポケモンをモチーフにしたそれを作り上げた。
さて、少し落ち着いたかと思った彼の耳に飛び込んで来た、新しい情報。それは、イッシュ地方の英雄伝説だった。
理想と現実。対立した二人。それぞれについた、黒と白のドラゴンポケモン。
男はすぐさまイッシュに飛んだ。愛する妻と共に。ツタージャとはそこで出会ったようだ。育て屋の主人と知り合い、タマゴを分けてもらったのだという。
特に戦わせることなく、だが一緒に本を読んだりしたおかげで思考回路だけは発達したようだ。その気になれば仕事を手伝ってくれたりもしたらしい。
だが、イッシュに来てから三年目の冬に妻が倒れた。長い間連れまわしていたせいで彼女の体には病魔が巣食っていた。
我慢強い性格ということに気付けなかった男は、仕事を放り出して妻の看病をした。だが妻はステンドグラスの完成を望むと言い残して息を引き取った。
悲しみに暮れていた男だったが、妻の最期の言葉を思い出して再び英雄伝説を調べ始める。気付けばイッシュに来てから五年が経過していた。
そして、やっと完成したというところで男は倒れる。彼の体にもまた、病魔が巣食っていた。
死を予感した男は、一匹で残されてしまうツタージャを思い、死の床で手紙を書いた。それは遺言状だった。
内容は――
「『このツタージャが認めた者は、自分の今まで造り上げたステンドグラスの所有権を持つ。その人間が現れるまで、作品は全て何処かの場所に保存しておくこと』」
昔からの知り合いに頼み、全ての遺産を使って保存しておく場所である小さな家を建てた。
ツタージャを任せ、彼が素晴らしいパートナーにめぐり合えることを祈った。
そして、息を引き取った。
日記に書かれていた文は最後の方が震えていた。おそらく最後までペンを握っていたのだろう。
「……」
ツタージャの瞳は綺麗だ。だが、その目が主人の最期を見ていたのかと思うと、何とも言えない気持ちになる。
明日が分からない世界に、自分は生きている。たとえば家に帰ったら両親の訃報がメールで来ていたり、今こうしている瞬間に巨大な地震が起きて死ぬ―― なんてことも考えられないことではないのだ。
『ありえない』と言い切れない。
それが、怖い。
――だけど。
「『ありえない』そんな言葉通りの世界なら、きっと君は私をここに連れて来る事はなかったんだよね」
『……』
「ううん。きっと、会うこともなかった。私を垣根の上から見つけて、私が貴方を見つけて、目が合うことも―― そしてここまで発展することも」
何が起きるか分からない。未来は、何が起きるか予測できない。
――だから、面白い。そう思いながら生きれば、きっとアクシデントも乗り越えられる。
そう、信じたい。
「……ご主人のこと、好きだった?」
『キュウ』
「私は、ご主人にはなれない?」
『……キュウ』
予想していた言葉。私だって、この子の『ご主人』になる気はない。だから。
「じゃあ、私と『友達』になってくれる?」
そっと右手を差し出す。『友達になってください』なんて言うことはないと思ってた。だって友達は自然に作るものだと思ってたから。
でも今なら分かる。
この仕草って、恥ずかしいけど……。
『キュウウ!』
なんだか、嬉しい。
ツタージャの小さな手と、私の人差し指が繋がった。
ガタガタという音と共に、窓が全開になった。
驚く私達をよそに、カーテンが海風に煽られて広がる。
一人と一匹の影が、夕方近くの太陽に照らされていた。
「――浜辺を散歩してから、帰ろうか」
私の言葉に、ツタージャは目を閉じて頷いた。
――――――――――――――――――――
『ソラミネ ミドリ』
誕生日:12月4日 射手座
身長:154センチ(中二) 156センチ(高三)
体重:51キロ 53キロ
在住:イッシュ地方 ライモンシティ
主な使用ポケモン:ツタージャ(中二) ジャローダ、フリージオ、あと何か水タイプ(高三)
性格:れいせい
特記事項:両目とも近視。祖父は官房長官。叔父は監査官。父は世界的に有名な科学者。母はフラワーアレンジメント。
きなりの キャラで かなり しょきから いる。
めがねをしたり はずしていたり デザインが おちつかない。
あいぼうは ねいろさんの もちキャラである コクトウさん。
まさに あいぼう。
はくしきだが だんじょかんけいには うとい。
レディ・ファントムが からむと あつくなる。
めさきのじけんに とらわれて たいせつなものを みおとす タイプ。
あるいみ しあわせなこである。
――――――――――――――――――――
『紀成』から『神風紀成』になったのと、高校入学の年から卒業の年まで来たので、リメイクしてみた。
ついでに途中から来た人は知らないであろううちのキャラのプロフィールを載せてみた。
もう少し続ける予定。
うおおぉぉはじめまして!!紀成さんからコメントいただいちまったぜひゃっほう!
> ふっかつのタネ売ってたとかバカだよね!そして空探イーブイはパートナーにしてはいけなかったよ!
> HP少なすぎ+特性発動で全く使えやしねえ!
にげあしがこんなにもイライラ特性とは思わなんだ……
「わたし主人公を信じるよ!」とか言っておきながら逃げるとかどういうキャラを目指しているんだろうか。
> > ゲンガー「ケケッ、とうとうオレたちイジワルズの活躍をドラマチックに描いた待望の新作が発売するってのか」
> >
> > ハスブレロ「んなわけねーだろ」
>
> 辛辣なコメントありがとう
> あの時はまだゲンガーの可愛さに気付いていなかったのだよ 今更やる気起きないけど
ならゲンガーさんは私がもらっていきますねww
ゲンガー派とヨノワール派に分かれたのはポケダンが原因だと思うんだ……
次回作はシャンデラあたりが参戦するのかな。
> > ジュプトル「ヨノワール、やはりキサマが黒幕か」
>
> ちょっと違うぞジュプトル!空のスペシャルエピソードはガチ泣きした
あの朝焼けのシーンでおいセレビィそこかわれとか思ってたアホな人間は私だけでいい。
ぽけだんわよいこのためのげーむです
> > モルフォン「新技ちょうのまいからのぎんいろのかぜで今まで以上に暴れてやんぜ」
> >
> > デンチュラ「ふっかつのたねなんぞ食わせるか」
> >
> > ゴローニャ「がんじょうで堪えてじしんで全体攻撃します」
> >
> > チラチーノ「夢特性次第で無双します」
> >
> > エルフーン「いたずらごころでおいかぜします」
>
> ごめんなさいお願いだからそれだけはやめて子供が泣いちゃう
> どうせならエンディング後に出てくるチートダンジョンに出てきてくれ……
意外なポケモンが意外な強さを発揮する、それがポケダンの醍醐味です。
さあ…きゅうじょいらいを消化する日々が始まるぜ。
コメントありがとうございました!
【みんなもポケダンの思い出語るといいのよ】
ある日のこと。
黄緑色の小さな妖精が円状に十二個の種を地面へと埋めました。
毎日、水をいっぱい与え、育ちますようにと願いました。
すると、最初の萌芽がやってきました。
地面の中から、一葉をつけた芽が現れて、黄緑色の妖精が群青色の神様を呼びます。
双葉の姿を見て、群青色の神様が黄緑色の妖精の小さな頭をなでます。
それから群青色の神様が力を込めますと、辺りに結晶が現れてその一葉の芽を抱きしめたかと思うと、その双葉は結晶の中に取り込まれていきます。
かちんと何かがはまったかのような音とともに、透き通った結晶の中には一葉がありました。
その後、二個目の種も地面から芽を伸ばし、一本の木になったところで、黄緑色の妖精がまた群青色の神様を呼びました。
すると、双葉のときと同様、群青色の神様はその木も結晶に抱かせました。
またその後、三個目の種も地面から芽を生やし、それはたちまち大きくなって、それはそれはその身に淡い桃色の花をたくさんつけた大樹となりました。
その桃色の花びらが宙に舞う姿に心を躍らせながら、黄緑色の妖精は群青色の神様を呼びました。
綺麗だ綺麗だと目を輝かせながら語る黄緑色の妖精に、群青色の神様は微笑みながら一つ頷くと、その大樹を結晶の中に入れました。
美しい桃色の大樹が生まれた後、四個目の種から芽が息を上げました。
一個目のときとは違い、双葉になったときに群青色の神様によって、結晶の中に入りました。
四個目に続いて五個目は緑色の太い茎が伸びたところで、結晶の中に入ります。
それから六個目の種からは大きな黄色の花が咲きました。黄緑色の妖精は自分の顔と、たくましい茎の上で揺れているその花の大きさを見比べて、大きい大きいと楽しそうに騒ぎます。
その様子を見ながら、群青色の神様はその大きな黄色の花を結晶の中へと取り込ませました。
大きな黄色の花に驚いた後に、七個目の種から芽が生まれます。
今度は三葉の状態で、群青色の神様は結晶の中に入れます。
そして八個目は二個目のときと同様に、一本の木のところで結晶の中に入りました。
その後、九個目の種からは真っ赤な葉っぱを衣にした一本の大樹が生まれました。その真っ赤な色に黄緑色の妖精は心を奪われたかのように呆然としています。
それから、群青色の神様はその大樹を結晶の中へと取り込ませました。
真っ赤な大樹が生まれた後、十個目の種から目が生まれます。
今度は四葉の状態で、群青色の神様は結晶の中に入れます。
それから十一個目は緑色の茎が伸びてきたところで、結晶の中に入りました。
ようやく最後の十二個目の種から出てきたのは、中央に小さな黄色の花を咲かせた白い花でした。高さは黄緑色の妖精より少し低く、右手を使って背丈を比べていた黄緑色の妖精は自分の方がお姉さんだねと笑いかけていました。
それから、群青色の神様はその花を結晶の中へと取り込ませました。
こうしてできあがった十二個、円状に並ぶ結晶の中にあるのは芽や木や花たち。
それらを眺め、準備はできたとでもいうように群青色の神様は一つ鳴きますと、その円の内側を沿うように歩き始めます。
どしんどしんとゆっくり、歩を刻んでいき、黄緑色の妖精はその姿を眺めながら歌い始めます。一つ一つの種からどんなものが生まれるのだろうか、それを楽しみにしていた心。また、種から生まれた奇跡に喜んだ心を音色に変えながら、歌いました。
するとどうでしょう、一個、一個の結晶が淡い光を放ち始めるではないですか。
最初はちかちかと小さな光でしたが、やがて、辺りをも染めるかの大きな光へとなっていきます。
その色は緑だったり、黄色だったり、桃色だったり、真っ赤だったり、白だったりと様々で、その光と光が合わさるとまた別の色になって辺りに漂います。その光の動きはなんだか楽しそうなものでした。
群青色の神様がゆっくりと一周すると、黄緑色の妖精が隣の結晶に移動し、また群青色の神様がゆっくりと一周歩き出します。
やがて暖かい風が流れ。
続いて暑い風が流れて。
それから涼しい風が流れて。
その後に冷たい風が流れて。
ぐるぐると十二個の結晶の内側で刻まれていく軌跡が羽ばたいていって――。
世界に時間が満ち、季節が巡り回り始めました。
今も――。
群青色の神様が大きな針のように。
黄緑色の妖精が小さい針のように。
この世界の時を刻み、季節を彩っています。
【書いてみました】
お久しぶりの投稿となります、どうもです、巳佑です。
今回は時と関係深そうな二匹を書いてみました。
ある意味、この話の中では、お互い時間を司るパートナーみたいなものかなと思ってみたり。
まぁ、群青色の神様のパートナー的存在は某ぱるぱるぅさんだと思われますが(苦笑)
楽しんでいただけたら幸いです(ドキドキ)
ありがとうございました。
【気がつけば、理シリーズも4つ目と相成りました】
【なにをしてもいいですよ♪】
夜遅くにこんばんは! イサリです。
先日は過剰に反応してしまい申し訳ありませんでした。
無礼をどうかお許しください。
『空を飛んで』を読ませて頂きました。描写が自然と頭に浮かんできて、とても読みやすいです。タイトルの通り、吹き抜けるような爽やかな読了感のあるお話でした。
愛する人のために共に苦難を乗り越える話は、やはり良いものだなあと思いました。
ダイゴさんはイケメンでした!
昔ルビーをプレイした時の彼の印象は「信念はあるのにつかみどころのない人」でしたが、こういう、いざというとき頼りになる姿はいいですよね。
『星空を見上げる海の上』で危うい印象を持っていただけに、最後はハルカちゃんが強かで安心しました。
お前が言うなの嵐でしょうが、やっぱりハッピーエンドが一番ですね!(
それでは、失礼いたしました。
一体、どれくらい書いたのだろう。
二年間という、長くも短い年月。その間にその力は、どんどん強くなっていった。
物語を書くことの楽しさを。それを評価してもらうことの楽しさを。
――私は、きっと忘れない。
殿堂入りおめでとう!君と君のポケモンたちががんばったんだ。
ポケモン図鑑もいい感じだ。お、そうだ旅を初めてからずっとレポートも書いてもらってたな。ぜひ見せてもらおう!
ほぅぇん ポヶモソ
きょぅ
ぁたし
みしろたぅんに引っ越した
ひっこすまえより、マジパナィぃなヵ
となりに ュゥキ がぃた
ュゥキは トレーナーだった
それなりにィヶめん
どっかぃった
ぃなヵすぎてそとにぃった
へんなおぢさんがいた
キモリもらった
ュゥキとしょぅぶした
キモリがかっゃくしたょ
ちょーヵヮィィゎら
パパにぁぃに トゥかシティにいった
そしたらみつるがいた
みつるはびょぅじゃく らしぃ
で ぁたしに ポケモン とるの てつだってこぃってゅった
ぁたしポケモン つかまぇるのも とくぃだからー
みつるはちゃんとポケモンつかまぇた
ぁたしも ょろこんだ
もりにはぃったら まぐまだんゅってるおぢさんがおぢさんをぃじめてた
ぃじめょくなぃょ!ってゅった
まぐまだんはにげたヮラ
おぢさんはでぼんってヵィしゃのひとらしい
でぼんのしゃちょぅは、ぁたしに だぃごってひとにてがみとどけろってゅった
ひとだすけってちょーきもちィィこと しってるヮラ
だから とどけて ぁげるコトに した
はぎせんちょたすけたから ふねだしてくれるゅぅてたゎら
ぁたしちょーヵヮィィから みんな たすけてくれるゎラ
だぃごは ュゥキくらいィヶめんだった
ぁたしの ポケモン みて ちょーほめてた
ぁたし もしかして てんさぃ?わら
ゅぅきにあったからたたかった
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ゅぅきちょろぃわら
まぐまだん マジぅざぃ
とくに ほむらっていう おぢさんが キモぃわら
みつるにあった
つかまえた ぽけもんが それなりにつょくなってたヶドぁたしのてきじゃないワラ
かざんばぃちょーぅざぃ
まぐまだん マジぅざぃ
ってぉもってたら、 あくあだんってぃぅのもでてきた
だんちょーが だんでぃーでちょーィヶめん!
ぁたし おとなにも モテるからワラ
ぉんせんにいったら ゅぅきにぁった
のぞきゅるさなぃからねってゅうたらのぞかねえってゅってた
ぱぱと たたかった
ぁたし てんさぃだから ょゅぅワラ
ぁたしの まぇに ィヶめんきた
なまぇ わすれちゃってたヶドわら
むこうからなのってた
だぃごだった
まぐまだんちょーぅざぃ
ゅぅきにぁったからたたかった
ぁたしてんさい
まだだぃごにあった
でぼんすこーぷくれた
これでかくれおんさがしてねゅってたワラ
まぐまだんちょーぅざぃ
でもィヶめんぁくぁだんだんちょーに ぁったからゅるす
せんすぃかん ぬすんで むかしの ぽけもん つかまぇるんだって
なんだかゎからないけど まぐまだんちょーぅざぃからじゃまする
グラードンはその力は絶大すぎて世界を干上がらせる力を持つ(ここだけ切り貼りしてある)
かぃてぃに にげたヶド ぁたしのまりるり もぐれないしぃ
だぃごに ぁった
これでもぐれるねゅってだいびんぐくれた
ぁたしヵヮィィし
まぐまだんぉぃかけてみた
まぐまだんちょーぅざぃ
ぐらーどんみた
すっごくおっきかった
ぁたしちょーかんどぅした
ぁくぁだんィヶめんだんちょーがきた
そとにでたらめのくらげがひあがってたわら
こっちってゅゎれてぐらーどんつかまえた
これでぽけもんりーぐぃけるわら
ちゃんぴおんろーどでみつるにぁった
びょうじゃくィヶめんになってたワラ
もひかんにかったワラ
いろぐろにかったワラ
つめたいひとにかったワラ
うちゅうせんかんゃまとみたいなひとにかったワラ
っぎがちゃんぴおんだからかくワラ
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ユウキになれていたので何も言わなかったが、私はまずレポートの書き方を教えなければならなかったのだろうか。
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スイーツ(笑)でもいいんじゃない、たまには
【好きにしてください】【他地方主人公のレポート募集】
いきなり視界が揺れ、衝撃と共にハルカの体はフライゴンから投げ出された。
白い雲と同じくらいの高さから落ちていくのを感じる。その感覚にハルカは悲鳴をあげた。フライゴンは自分の視界に入って来ない。
下は海。けれど運悪くこのスピードではあの顔を出した岩に頭から落ちてしまう。
散々いろんな人から注意を受けた。それに事故のニュースもたくさん見て来た。ポケモンの技で空を飛んでも、その途中で落ちてしまうことだってあるのだ。落下して死亡するニュースなどたくさん見て来た。
けれど自分だけは大丈夫だとどこかで思っていた。フライゴンは振り落としたりしないと。
そんな考えをぐるぐるまわしているうちに岩はどんどんハルカに近づいて来る。
ああ、もう死ぬ。いやだ、いやだ! 死にたくないダイゴさんに会いたい 助けてダイゴさん いやだよう!
トクサネシティにあるダイゴの自宅ではその主が紅茶を飲んでいた。今にも血管が浮き出そうなくらいに目が怒っている。落ち着こうと紅茶をいれても焼け石に水。
約束の時間を過ぎても一向にハルカが来ない。もう2時間30分も遅刻している。新しい子をもらったから修行してくださいと頼み込んだのはハルカの方なのに。
これはまず遅刻する時は一報することから叱らなければならない。さっきから一分刻みで記されているハルカへの発信履歴を見て、何をいってやろうか考えを巡らす。そしてまたポケナビに手を取るとハルカへと発信した。1秒、2秒……16秒と表示され、留守番電話サービスにつながる。
機嫌の悪い主人の八つ当たりの対象にされたポケナビはたまったものじゃない。ダイゴの力で叩かれても抗議の声もあげずに、新たな発信履歴を刻み込んだ。
紅茶が空になる。カップに注ぐ。少し濃くなった紅茶が満たされるが、ダイゴの心は怒りに満ちたまま。
あと30分しても来ないなら明日以降にみっちりと説教をする。泣き出しても構わない。約束を2時間以上もすっぽかし、連絡にすら出ないなど人としてあり得ない。
ふわふわとした感触にハルカは目をあけた。視界がぼんやりしている。見た事もない原っぱに、石碑がぽつんとあった。
ここが死んだ後の世界? 花畑も川もないけれど、そんな気がした。
「ダイゴさん……」
会いたい。死ぬ前に会いたかった。あんな誰も通らないような場所で一人で死にたくなかった。
けれどこれが現実だった。せめて一言だけでも言いたかった。
「あまりに強い恋心は貴方の障害になりますよ」
「誰!?」
姿は見えない。けれどとても落ち着いた声だった。死後の世界の役人かなにかだろうか。
「ダイゴサンはどこにいるの?」
ハルカの問いには答えようとしない。さっきとは別の声がハルカに話しかける。
「ダイゴさんは、トクサネシティの……」
「あの家ですね」
家の形を思い浮かべた瞬間だった。ハルカが何も説明していないのに声は答える。
「ダイゴさんをどうするの!?」
「貴方が会いたいと願ったのでしょう。ならばそれを叶えるまでです」
そんな。まさか。ここに連れてきてしまっては、ダイゴが死んでしまう。それだけはやめて。ハルカが言い終わらないうちに視界が消えた。
ダイゴのイライラは頂点を通り越していた。あれから30分。紅茶は5杯目、茶葉は3種類目。その他にチョコレートせんべいポテトチップスを並べてるが、ハルカが来る気配が全くない。
ダイゴは窓に近寄ると、外で日光浴をしているユレイドルに話しかける。主人の声にユレイドルがひらひらを伸ばして来た。遊んで欲しい時にユレイドルはいつもこうする。
「おせんべい食べる? 1枚だけだよ」
ダイゴの手からしょうゆせんべいを受け取る。水中で獲物を捕まえたりする触手は器用にせんべいを口に運ぶ。そしてそのままぱっくんと飲み込んでしまった。期待するようにダイゴをみている。もう一枚くれ、といったところ。触手をダイゴの腕にからめて甘える。
「ダメだよ。ポケモンにあげるには塩分高いんだから。はい」
かわりにポフィンを出した。あますっぱポフィンはユレイドルの大好物。
「シンオウ小麦とバターだって。ドライチェリー入りの高級品だよ。こんなことユレイドルにいっても解らないけどね」
シンオウへ父親の代わりに出張した時のお土産だ。留守中のポケモンの世話を引き受けてくれたハルカには琥珀とソノオの花畑で取れるハチミツ。
ああまた思い出してしまった。今日はハルカのことを思い出すだけで怒りがぶり返す。満足そうなユレイドルに背を向けてダイゴは紅茶を飲んだ。
主人の怒りを察知して、ポケモンたちはみな部屋の隅っこの方にいる。ネンドールは気配すら消して部屋と同化している。エアームドはいつでも命令が聞けるよう、ダイゴの後ろにいた。一回も振り向くことはなかったが。
約束の時間から3時間20分が経つ。
今日の夕食の買い物に行かなければならない。家の鍵をしめてダイゴは出かける。
一人分とはいえ野菜は重くてかさばる。そんなときにボスゴドラは荷物を持ってくれるのだ。キャベツにタマネギ、リンゴとカボチャ。牛肉が安かったから多めに買ってしまった。納豆もこれだけあればしばらく料理しなくてもいい。パンは質量の割に場所を取る。タマゴはいつも安いから行くたびに買ってしまう。
ダイゴが玄関を引いてみた。鍵はかかったままだ。期待などするからこうなる。怒りのこもった手で鍵をあけ、中に入った。
買ったものを冷蔵庫に入れた。残ったビニール袋をまとめると、後ろからメタグロスがダイゴのことを見ていた。
「ああ、お腹減ったんだね。今日は何にしようかな」
メタグロスの金属製のボディを撫でる。この感触がやめられない。固いポケモンの触り心地が大好きなのだ。
そんな幸せに浸っていると、チャイムが鳴る。さあなんて叱責しようとダイゴはゆっくり玄関に向かう。
「今何時だと思ってるの?」
ドア越しに聞いた。その向こうにいるであろう人間に。
「あ、すみません。夜は遅くないと思ったのですが」
予想と反する声が返って来る。全く知らない声だ。間違えてしまった。
「あ、いえ。こちらこそ知り合いかと思ったので。どちらさまでしょうか?」
強盗でも困る。玄関をしめたまま向こうにいる人に訪ねた。
「実は貴方に会いたいと言う方に会いました。家がここだと聞いたので来たのです」
「どういうことでしょうか?」
「ダイゴサンって人ですよね?」
違う声がする。声の高さからいって男女二人。名乗らないことも妖しい。玄関の鍵をあけるか開けないか迷っていると、ダイゴの足元にメタグロスがいた。その隣にはエアームドも。何かあったら実力は任せろ、と言わんばかりだ。
「はい、私はツワブキダイゴですが。その会いたいという人は誰ですか? そしてどちら様でしょうか?」
チェーンをかけ、鍵をゆっくりと開ける。これで相手から開かれても一回くらいは防げる。
「この子ですよ」
隙間から見えた男女二人。頭のキレが良さそうな男と、大きな琥珀色の目が特徴の女。そしてその男の腕の中で眠っているハルカだった。
「ハルカちゃん!?」
思わずチェーンを外し、玄関を全開にした。強盗など気にも止めずに。
「この子とどこで?いやなぜうちに?とにかくお二人とも上がってください」
「いえ、私たちは帰ります」
「私たちは長居できません」
男はハルカをダイゴに差し出す。起きる気配のないハルカを受け取り、二人に上がるよう勧めるがうなずこうとしない。本当にハルカが世話になったのならお礼をしたいし、そうでないならば家の中の方がやりやすい。
ハルカを腕に抱く。その体は冷たく、長いこと海風に当たっていたかのようだ。
「本当に何もありませんが、夕食くらいごちそうさせてください。遠慮せずにどうぞ」
ダイゴは食い下がると、二人はお互いの顔を見合わせて相談している。
「どうしたらいい?」
「人間はここで入るのが自然なようです」
二人はそんな会話をした。ちぐはぐな会話。ダイゴは二人を逃がさないように見る。その目は睨んでるとも言える。
「ではごちそうになります」
「ではごちそうになるね」
家の中に入る二人。ダイゴはハルカを抱いたまま鍵をしめ、チェーンをかけた。すぐには逃げられないだろう。
ネンドールに二人の世話を頼む。お茶とお菓子を出して、と。ネンドールは解ったと台所にいった。その横にはメタグロスもついている。二人は任して大丈夫だろう。
「ハルカちゃん、起きて」
軽く揺すっても叩いてもハルカは起きない。ハルカを寝室につれていく。布団をかけて優しく頬を撫でる。
「ダイゴ、さん?」
ハルカが目をあける。
「ハルカちゃん!? 大丈夫かい?」
「ダイゴさん!? ダイゴさん!」
目に涙をためて、ハルカはダイゴに抱きついた。ただごとではない様子だ。ダイゴはなるべく優しくハルカを抱いた。
「ごめんなさい!私が、ダイゴさんに会いたいっていったから、ダイゴさんが!」
「どうしたんだい? 何があったの? 嫌な事されたの?」
泣いてばかりで、ハルカはまともに言うことができない。冷たい背中をなでる。怖いことがあったのだろう。落ち着くまで優しくさすった。
「ハルカちゃんを送ってくれた人たちがね、今待ってるんだ」
「ダメ!」
ハルカは顔をあげる。ダイゴつかむ力が強くなった。
「ダイゴさん、ダメ……死んじゃう!」
「どういうこと?」
かちゃ、と寝室のドアが開く。振り向くとあの二人が立っていた。無機質な表情だ。ダイゴはハルカを自分の後ろへと隠すように向く。
「起きた」
「起きましたね、よかったです」
ハルカはダイゴにさらにしがみついた。二人を見ておびえている。
「君たち……一体何者なの? 答え次第では実力公使も考える」
ダイゴは睨む。ひるむとは思っていない。それに二人の背後にはネンドールとメタグロスがいる。合図をすればすぐに動いてくれる。ネンドールはつねにこちらを見ている。
「それは答えられない。けど私がその子とぶつかっちゃったのだから、その子が行きたいところに送るのは当たり前」
「小さな子をこんなに泣かすまで何をしたの?」
「ぶつかったからじゃないでしょうか。相当なスピードでぶつかってしまいましたし、フライゴンもしばらく気絶してましたし。これに関してはこちらが前を見ていなかったからなのです。その子はおろかフライゴンの方に非はありません」
「それだけ?おかしいだろう?」
「気に触ったのなら私たちはもう帰ります。すみませんでした」
あっさりと頭を下げる。二人は足並みをそろえて玄関へと向かう。
「待ちたまえ!」
ハルカをこんなに泣かせ、ただで帰れると思うな。ダイゴが男の方を掴む。首根っこを掴んだのだ。
「……翼?」
ダイゴの腹には青いものが当たっている。そして掴んでいるのは服の感触なんかではない。目の前にいたのは人間の男であったのに、なにか違う。
「ラティ……オス?」
絵本や絵画の中でしか見た事のないポケモン。ホウエンの海を飛び、祝福を与えるポケモンと言われている。ダイゴのつかんでいるのはどうみてもラティオス。赤い瞳が後ろのダイゴを見ている。
「じゃあ、まさか君は」
金色の瞳は人間の女と思われていた。正体がバレたと観念してラティアスは本当の姿を現す。ラティオスと対で描かれるポケモンだ。
「姿消して飛んでたらぶつかった。だからその子とフライゴンは悪く無い。だから送り届けた」
「人間にしては力が強い方ですね。申し訳ないのですが放していただけませんか」
ラティオスは穏やかに、そして冷静に言った。ポケモンと話している。その事がダイゴは信じられない。
「ああ、はい」
「それでは、改めてすみませんでした。私たちは帰ります」
「ああ、待って」
2匹は振り向いた。
「やっぱり夕食をごちそうしよう。それからでも遅く無いと思う」
2匹はお互いを見てしばらくだまった。2匹にしか解らない会話をしているようだった。
「……貴方、ポケモントレーナーでしょう」
「ポケモントレーナーは私たちを捕まえる。だから一緒にいられない」
ポケモンとトレーナーが対等というのはあり得ない。それはダイゴが一番よく知っている。
どんなに仲がよくても所詮は人とポケモン。そしてそのポケモンを理解し、管理するのがトレーナーの役目。上下関係なんてないという青臭い意見をダイゴが持っていた時期もあった。
違うのだ。あって当然。人はポケモンの状態を見て戦わせる。その逆は決してないのだ。だからこそ一緒にはいられない。どうしても一緒にいるには、ダイゴがラティオスとラティアスを従わせる他、方法はない。
「待って!」
ハルカが呼び止める。ラティオスは振り向いた。やや遅れてラティアスが振り向く。
「あの、海に落ちて死んじゃうって思った時に助けてくれたの、ありがとう!」
「いえいえ、こちらこそラティアスがすみませんでした」
「だから、私もお礼がしたい!夕食だけでも!」
ハルカはラティアスの翼を引っ張る。再び2匹はお互いを見ていた。
「こんな時間にどうしたんだダイゴ」
リビングではラティオスとラティアス、そしてハルカがにぎわっている。他のポケモンたちも一緒であるが、フライゴンだけは隅っこの方にいる。ハルカがどんなに呼んでもフライゴンはじっとしている。
そして台所ではダイゴがポケモンたちのご飯を作っていた。自分のポケモンはまだいい。特にラティオスとラティアスは何を食べているのか不明だ。
「うん、ドラゴンタイプのポケモンって何を食べてるのか解らなくて。ゲンジなら解るかなあって」
解らないなら専門家に聞くべきだ。ホウエンリーグの四天王、ドラゴンタイプのゲンジに連絡する。
「普通のポケモンと同じだ。ポケモンによって好きな味があったりなかったり。ああ、年齢にもよるが人間より味濃くても大丈夫だぞ」
「じゃあポフィンとかポロックも?」
「もちろんもちろん。ちなみにボーマンダはゴーヤーチャンプルーが好きだ」
思わぬ好物に吹き出しそうになる。あの強面なボーマンダがゴーヤーチャンプルーをほおばっているところを想像すると、似合わないところがかわいく思えた。
「なるほど。ゴーヤはないな。豆腐ならあったかな。ありがとう」
冷蔵庫の中身と相談して、ラティオスとラティアスの食べるものを作る。そういえばあのまま人間だと思っていたら、今頃はグラタンを食べさせていた。
ハルカの方は、作ったばかりというポロックをラティオスとラティアスにふるまっていた。おいしいだのまずいだの、三つの味がするとかこっちは五つだとか。
ダイゴはラティオスとラティアスにすき焼きを振る舞う。甘辛い出し、牛肉、豆腐、ネギ、しらたきの奏でる鍋は誰もが楽しみにする食べ物。2匹はあっという間に平らげ、人間の食べるものはおいしいと感想を告げる。そしてすぐに帰ると言い出した。
そのままハルカも帰るという。元々今日は夜までには帰る予定だったのだ。ダイゴは2匹と一人を玄関で見送る。
「ツワブキダイゴ」
ラティオスは帰り際に言う。
「全ては縁。過去があったのも今があるのも未来に向かうのも。私たちがツワブキダイゴみたいなトレーナーを知ったのも縁。私たちは興味があります。貴方が今後どのような人生をいくのか」
靴ひもを結び、ハルカが立ち上がる。そしてフライゴンのボールを開けた。
「じゃダイゴさん、次に新しい子見せますね!じゃあ!」
ハルカが一瞬ダイゴを見た時だった。フライゴンはおびえて2枚羽をしまい、ラティオスとラティアスから見えない影に隠れてしまう。
「フライゴン!? 大丈夫だよ、フライゴン!?」
ハルカが呼びにいっても、フライゴンは飛ぼうとしない。その羽が震えている。墜落したことがトラウマになってしまったのか、技を命令しても全く言うことを聞かない。
「ちょっと、フライゴン飛んでよ!そうじゃないとミシロタウンに帰れないよ!」
いやいやとフライゴンは飛ばない。2枚の羽はトクサネの風にただ吹かれていた。
「帰る?ハルカの家はツワブキダイゴのところじゃないの?」
現れたラティアスを見るとフライゴンは地面にうずくまり、起き上がろうとしない。いくら一回墜落したからって、この調子ではフライゴンと共にいることができないではないか。
そしてラティアスは何を言っているんだ。フライゴンを起こしながら言われた言葉にかみつきたかったが、的確にかみつける材料がない。
「……フライゴンがその調子なら、私が送って行きましょう。ミシロタウンの、あの家ですね」
ハルカの考えを読み取ったようにラティオスは言う。そしてハルカが乗りやすいようにラティオスが地面に足をつけた。遠慮しながらもハルカはラティオスの背中に乗ろうとする。慣れないポケモンなのか、中々ハルカも乗ることができない。棒立ちしたままラティオスを見つめてる。
「ハルカちゃん、早く帰らないと」
「わかってます、解ってますけど……!」
フライゴンだけじゃない。空中で衝突し、岩に激突する寸前まで光景を見ていた。そのことがハルカにとってトラウマとなってもおかしくはない。大人ですら二度と乗れなくなる人がいるというのに。
ハルカの足は震えている。ラティオスの翼を掴むのもやっとだった。けれどすぐに手を放してしまう。
「ラティオス、ラティアス。せっかくだけど夜も遅いから、明日の朝に方法を考えるよ。君たちはハルカちゃんの恩人だから、またいつでも遊びにきてくれ」
2匹は顔を見合わせ、そしてダイゴとハルカに一礼すると闇夜に溶け込んで消えていく。
地面に座り込むハルカに戻ろうと声をかけた。それに気付いてハルカが立ち上がる。
「しかしどうしようかね。ラグラージはいるのかい?」
トクサネシティは島にある街だ。ミシロタウンはかなり遠く、空を飛んでいつも行き来していた。空の足が使えないとなると、海なのだが。
「今日はダイゴさんに新しい子を見せるために、フライゴンとその子しか持ってないんです」
「その子は水タイプではないのかい?」
「泳ぎますけど水タイプじゃないんです……」
「そうか。どちらにしろ今日は帰れないか」
そして明日の天気は悪い。空を飛べなくなるのがこんなにも不自由など思いもしなかった。
「じゃあ、せっかくだしその新しい子、見せてくれない?」
ダイゴがそういうと、ハルカはモンスターボールを取り出した。そして開いたボールから出て来たのは、頭に白い石灰化した兜がある青い竜、タツベイだ。ユウキにもらったタマゴが孵ったのだそうだ。
「ねえハルカちゃん。タツベイは」
「知ってます。空を飛びたいポケモンです」
知ってるなら話は早い。空を飛びたいタツベイが、空を飛べなくなったフライゴンとその主人を、もしかしたら救ってくれるかもしれない。
そんな勝手な期待をしてはいけないだろうか。タツベイはダイゴをじっと見ていた。
元気のいい足音の後に鳴るチャイム。玄関を開ける前から訪問者の名前は解ってる。いつもは一人なのだけど、最近は二人で来るのだ。それも仕方ないことなのだけど。
「いらっしゃいハルカちゃん。ユウキくんも入って入って」
家の主であるダイゴは小さな友人を迎える。そのユウキは何度きても落ち着かない様子ではある。
「なんか二人の仲を邪魔しちゃ悪いような……」
二人の仲を知ってるだけに、なんだか気まずい。ダイゴの友達とかその他の人たちと一緒に遊びに来るのはまだいいのだけど、二人っきりの時間を奪っている。そんな気がするが、ダイゴは気にしないでと笑うだけだった。
ユウキがそれでもハルカと来る理由。それはハルカの方にあった。
フライゴンと共に空を飛んでいる時に墜落事故があった。そしてその原因のラティオスとラティアスに助けられた。命は助かった。けれど心に空は怖いという感情を深く刻み込んでしまった。フライゴンもハルカも空を飛ぶ事ができない。
それをハルカの父親に連絡して迎えにきてもらおうと思ったらなぜかユウキが来たのだ。その理由は、彼の持ってるネイティオ。空を飛んで帰ろうとしたのかと思ったが違った。
「テレポートで帰ろう。こいつ俺んち覚えてるからそこからなら歩いて帰れるし」
その手があったのかとダイゴは感心した。有名なオダマキ博士の子供らしく、ポケモンの知識が豊富なのだ。子供ならではのひらめきも。ただその顔は父親に頼まれたから来てやったという顔だった。色々と感受性の高い時期に差し掛かったのだろう。
そしてその日は二人で帰った。それからというもの二人でやって来るようになったのだ。
カウンセラーにいってみただの、フライゴンもポケモンセンターに預けてオオスバメと一緒に遊ばせてみただの。そんな報告をしていくが、どれも効果がないことはダイゴにも理解ができる。
ある有名カウンセラーには、これを機にポケモントレーナーをやめて違う道を選んだらどうかとも言われたと。さすがにそれはないと答えたという。
今日もユウキとハルカはダイゴの家に遊びに来ている。ダイゴは二人のためにお茶をいれている。楽しそうにソファで並んで話しているのが、横目に入った。
そして同時にわき上がる感情。即座にそれを否定する。僕は何を子供に嫉妬してるんだ、と。
けれど否定すれば否定するほど、心に入り込んで来る。それはおかしいことだと否定しても。ユウキはハルカの友達であって、父親が知り合いなのだから仲良くても仕方ない。それはダイゴも解っている。それにハルカはジョウトから来た。ホウエンで初めての友達なのだから、特別に仲が良くても当たり前なのに。
戸棚からスティックシュガーを出した。その瞬間に楽しそうな笑い声が上がる。ダイゴの視線がきつくなった。それに気付かず二人は楽しそうに話している。ハルカのことを言えた義理ではない。ハルカは自分のものではないのだから、仲がいい友達や男の子とか話すのだって彼女の自由だ。そこまで否定する相手とは付き合いたいと思わないだろう。
「はい、どうぞ」
紅茶と茶菓子を二人に出す。嬉しそうにハルカはカップに口をつける。俺はこんなもの飲まないけどもったいないから飲んでやるといった顔でユウキも口をつける。
「ダイゴさん」
ユウキがいじわるそうな目をしてダイゴを見る。もしや頭の中を読まれたのだろうか。ダイゴは冷静を装って返事をする。
「バトルフロンティア難しいですよ!」
「ああ、エニシダさんの」
「知り合いの息子がチャンピオンだったから、難しさの調整をしてもらったって言ってたけど、皆が皆チャンピオンレベルじゃないんですから! 解ってます!?」
「そんなこといったって、頼まれた以上はやるしかないさ。結果的にやたら強くなってしまったからね、そこは反省しているけど」
窓の外からユレイドルが覗いていた。その後ろにはボスゴドラが。珍しい客でもないだろう。ダイゴがなだめようと窓を開ける。
「ツワブキダイゴ」
「ツワブキダイゴ」
同じタイミングで聞いた事のある声がする。それは覚えてる。
「お久しぶりです。今日は様子みにきました」
少しずつ姿を現していく。青い翼のラティオスだ。ハルカが墜落した時に助けてくれたポケモンで、隣にはラティアスもいた。こんな昼間に訪ねてくるとは思わなかった。
「あれ、どうしたの? 一週間前も来たけどお久しぶり?」
「長いこと会わないと人間はお久しぶりと言うらしいのですが違うんですか? 用件があるのでハルカ呼んでください」
「ハルカちゃんは今来てるけど、お友達も一緒で……大丈夫なの?」
「……じゃあ姿かくして様子みますので入ってもいいですか?」
窓からラティオスとラティアスは姿をまわりの景色に溶け込ませて入って来る。リビングに戻って来るダイゴを、ユウキとハルカは不思議そうに見た。ラティオスとラティアスには気付いていないみたいだ。本格的に溶け込むと、ダイゴですらもうどこにいるか解らない。
「ああ、いやちょっとユレイドルとね遊んでたんだ」
軽く言い訳をして逃れた。ユウキは呆れたような目で見ている。
「ツワブキダイゴ、この子がハルカの友達?」
ダイゴの後ろからラティアスが小声で話しかけてきた。2匹ともダイゴの後ろにいるようだ。
ポケモンの話で盛り上がる。ダイゴはうんうんと頷いていた。はきはきと喋るユウキに主導権を奪われっぱなしだ。全てハルカではなくダイゴに話しかけてるような、そんな感じだ。俺はこんなにポケモンのことに関して知識があるんだと見せつけんばかりに。
専門外となるとダイゴの知識も妖しい。自分のポケモンたちに関しての知識は負けないと思っているが、あまり意識のしなかったこととなると疎い。コンテストは観客でしかないし、ポケスロンとなればテレビで見るくらい。
そういった弱点を見抜き、次々にあれはどうだ、これはどうだと話しかけて来る。きみの勝ちだよ、と遠回しに言ってもユウキは話す事をやめない。完全に認めるまでやめてくれそうにない。ユウキの隣ではハルカが笑っていた。
時計は夕方を指していた。ユウキの攻撃も止んでいた。ダイゴに積極的に話しかけるのは変わらない。
「そろそろ夕飯だね。何食べようか?」
ダイゴがそういって席を立つ。
「じゃあその前に挨拶しましょうか」
今まで黙っていたから寝ていたのかと思ったがそうではない。ラティオスとラティアスは確実にダイゴの後ろで見ていたのだ。そしてユウキとハルカの前に姿を現す。
「こんにちは、初めまして。ラティオスです」
「ラティアスです。そしてハルカ久しぶり」
ユウキは驚いて何も言えなかった。いきなりポケモンが現れれば驚かないはずがない。そしてそれが喋っている。絵本や物語の中でしか語られていないラティオスとラティアスなのだからなおさら。いくら詳しいといっても、実物を見た事がなかった。
「な、なんで……ダイゴさんちに……」
「ハルカとぶつかったのが私。そんな仲だけどやっぱり来ない方がよかったかな」
「とりあえずハルカに用事だけ伝えて帰りましょう」
ラティオスは光る石をハルカに見せた。真珠のようだけど、全く見た事がない。ダイゴも思わずその石を見た。
「空を飛ぶのが怖いのは、多分人間じゃ治せません。人間で治るなら、ハルカが空を飛ぶのが怖いとツワブキダイゴに言ったところで解決されてます。これは心のしずくで、生き物の心を浄化することができます。記憶が抜けるというわけじゃないので、空を飛んで怖かったという記憶は残りますが、もう二度と飛びたく無いという傷は回復できます」
「けどね、もしかしたらなんだけど、ハルカがその前後で思ってたことも普通になっちゃうというか……あっさり言うと、ツワブキダイゴが好きだったっていうことがなくなるかもしれない」
その場の空気が重たくなった。誰もが声を出す事ができない。
「どうしますか? この石をハルカの心の傷に当てる事はできます。今までハルカがツワブキダイゴと一緒にいた記憶も残ります。けれど気持ちだけは残るかどうか疑問です。人間のガンの治療で、正常な組織もごっそり取ると聞きました。それみたいなものだと思ってください。そして消えた気持ちは戻りません。これは確実に言えます。その賭けに出るならば、私たちは協力します」
そのまま空を飛べなければトレーナーとして不自由なことが待っているのは事実だ。交通機関があるけれど、お金がかかる。ポケモンに全ての投資をするトレーナーとしては死活問題だ。
けれどハルカにはそれ以上に告げられた事実は衝撃的だった。ポケモントレーナーを続ける代わりが、ダイゴと今まで築いた関係を全て捨てることになる。どちらも選べないし、どちらも選びたい。
「それだけです。人間が人間を好きになってその人が大切なのは知っています。だからこそハルカにはよく考えてほしいです。ハルカにはユウキみたいな仲のいい友達もいますし、ツワブキダイゴのことを忘れるわけじゃありません。そして絶対に気持ちがなくなるわけじゃないです。半分くらいの確率だと思います。あくまでも、最悪の事態の話。そこは間違えないでください」
ラティオスとラティアスはそれだけ告げると窓を開けた。
「どうするかまた明日来ます。保留なら保留でいいので、答えを聞かせてください」
景色に溶け込み、ラティオスとラティアスは消えた。夕方の冷えた風が家の中に入り込む。
その後の夕食で三人はろくに話もしなかった。話してはいけない雰囲気がそこを支配していた。そのかわりに、つけっぱなしのバラエティ番組がずっと喋っていた。
「まさかラティオスとラティアスと知り合いとは思わなかったな」
ユウキが沈黙を破った。食べかけのじゃがいもが箸から落ちる。彼もが動揺していることは解る。
「僕も最初はラティオスとラティアスだと解らなかったんだけど」
その後は会話が続かなかった。ハルカはずっと黙ってテレビを見ていた。彼らの話が最初からないかのように。
夕食の片付けを手伝い、一段落したところでユウキは帰ろうとハルカに声をかける。その言葉にハルカは立ち上がった。
「あの、ユウキごめん。今日はダイゴさんちに泊まる。お父さんにもそう言っておくから。ごめんね、いつもわがままいって連れてきてもらってるのに」
ユウキは何かに気付いたようだった。黙ってダイゴに一礼すると、玄関から出て行く。ダイゴはその姿を見送った。
「ユウキくんの前じゃ言えなかったんだね」
隣にいるハルカに声をかけた。ずっと何か言いたそうにしていたから。
「ダイゴさん。私はジムリーダーになって、その街の人たちにポケモン教えたり戦ったりしたいです」
とりあえず座ろう、とダイゴはハルカを座り心地のよいソファに座らせる。
「だから、ポケモントレーナーで不自由するのは辛いです。私はラティオスの力を借りようと思います」
「それがハルカちゃんの決意なら僕は止めないよ。そこまで覚悟しているのは凄いと思う」
「でもダイゴさんが好きだってことを忘れちゃうのは辛いです。ホウエンに来て、ポケモンもらって石の洞窟で会ってからずっとダイゴさんが好きで……それなのに忘れたくないです」
「大丈夫だよ。ラティオスの言っていたのはもしかしたら、じゃないか」
「でもそのもしかしたらが来たらどうしますか? ダイゴさんのことを覚えていても、ダイゴさんが好きだったことはなくなるなんて私には耐えられません」
ハルカはダイゴに抱きついた。そしてダイゴをソファにそのまま押し倒す。
「抱いてください。ダイゴさんに抱かれたという記憶を、ダイゴさんが好きなうちに残しておきたいんです」
逆光にハルカの表情がさらに艶かしく見えた。ダイゴは目の前にあるごちそうに手をのばさないわけにいかない。ハルカの腕をつかんで、自分の方に引き寄せた。そしてもう二度と離れないように強く抱きしめた。
「ハルカちゃんが好き。それはハルカちゃんが僕のことを好きじゃなくても変わらないよ」
唇に触れる。やわらかくて、ずっと触れていたい。このまま一緒になれたらいいのに。ちいさな舌を包み込んでも足りない。心がこんなに触れているのに、体は一度たりともつながった事がない。だからこそ忘れないうちに、愛しているうちに。
ハルカの手がダイゴのズボンを緩めてるのを感じる。彼女の手がダイゴの下着越しに触れているのも感じる。
熱を帯びていた。いつでもいいと言うかのように。それを解っているからこそ、ハルカはダイゴの下着の中に手を入れた。
「よく考えて。ハルカちゃんが僕のことを好きじゃないのに、僕としたことだけが記憶残る。好きじゃない人間としたことを後悔してしまうよ」
ハルカの手を取る。このままさせておきたかった。そして彼女によっていかせてほしかった。けれどそれは二人にはまだ禁じられていること。
「ダイゴさんは、やっぱり私としたくないんですか?」
「違うよ。したいからこそできないんだ。もしハルカちゃんと結婚して子供ができてね、その子がまだ14才なのに10も年上の男としているなんて聞いたら、僕はその男をぶちのめしに行くかな。それに僕はハルカちゃんが抱けないからって不満に思ったこともない」
ハルカの体によって押し付けられている。それだけでまだかと急かされてるようだった。
「でも、嫌です。ダイゴさんが好きじゃない私はやだ!」
「大丈夫」
ハルカの頭を撫でる。冷静を装って。でなければ本当にこのまま押し倒してしまいそうだ。
「ハルカちゃんが僕を忘れることなんてない。もし僕のことを好きだということを忘れても、僕はきみをもう一度好きにさせる自信がある」
ハルカは泣くのを必死にこらえていたようだ。目がいつも以上に潤んでる。
「それにハルカちゃんが僕をこんなに大好きなのに、忘れるわけなんてない。僕はそう信じてる」
ダイゴにしがみつくように抱きついた。ダイゴの名前を何度も呼んだ。子供が親を探すかのように、ハルカは離れない。
そんな彼女を今すぐ脱がせ、一方的にでも犯したい。泣いても叫んでもかまうものか。自分のものとして一生閉じ込めておきたい。そうすればこんなに悩まなくて済むことだ。
ダイゴが性欲につかった思考から我に返ったのは、名前を呼ばれたからだ。
「一緒にお風呂はいりませんか?」
「入りたいのはやまやまだけど、先に入っておいで。僕はやることがあるから」
こんな時に裸を見せるなど、襲ってくれと言わんばかりではないか。ダイゴだからこんな関係を保てるが、他の男だったら骨の髄まで食べられてしまっている気がする。
それにまだ急かしているものの処理もしなければならない。ここまで熱を持ってしまったら後にひけないのだ。
ハルカが手袋を外す。モンスターボールを掴みやすいのだそうだ。なんとなく彼女を見ていたが、ダイゴは気付いた。彼女の左手薬指に、自分があげた指輪があることに。あれはそう、ハルカがダイゴのことを好きでいると約束した指輪。
もしハルカが好きだということを忘れても、二人で過ごしたたくさんの時間までは忘れないと言った。何を恐れているのだろう。過ごした時間に、好きという記憶が残っていないはずがない。
大丈夫だ。ラティオスの言った通りにはならない。ダイゴは確信した。
「それでいいのですね?」
次の日、ラティオスは二人の答えを聞いて心のしずくを取り出した。ハルカの隣にはフライゴンがいる。同じく心が傷ついてしまい、空を飛べなくなってしまったのだ。
「では、いきましょう。ラティアス」
「うん、ラティオス。ハルカ、心のしずくをじっと見ててね」
心のしずくの輝きが増す。白く光ったり赤だったり黄色だったり。緑、青、紫と色を変えて行く。それは光の洪水となって、ハルカの心の中に入って行く。フライゴンはじっと見続けていた。
「まだ目を閉じちゃダメ」
耐えきれずに目を閉じたくなる。目をほそめて心のしずくを見続けた。
「まぶしい……」
金色の光になった時、ハルカは目を閉じる。同時に心のしずくは元の真珠のような石に戻っていた。
「どう? ハルカ」
「これで終わりですが、どうでしょうか? 目をあけてみてください」
ハルカは目を開ける。隣ではフライゴンがぱたぱたと2枚の羽を動かした。部屋の窓から海風に乗って空へ飛んで行く。
「飛んだ! フライゴンが飛んだ!」
ハルカは外に出て、フライゴンを呼ぶ。そしてその背中に乗る。恐怖心はもうない。フライゴンの体が浮き上がっても何も怖くない。エアームドに手伝ってもらったのに、ちょっと浮いただけで吐いてしまったこともあった。タツベイと一緒に段差から降りてみたが、そんなに高くないのにしばらく歩けなくなってしまった。
そんなことが嘘のように、空の風が気持ちいい。この新鮮な感じは、初めてフライゴンの背に乗った時以上だ。
ハルカとフライゴンを見上げ、ダイゴは嬉しく感じた。久しぶりにポケモンに乗って空を飛んでる彼女は、本当に生粋のポケモントレーナーらしい。
「ツワブキダイゴ」
後ろからラティアスが話しかけた。
「ハルカの心はどうなったか解らない。けど傷はもう痛まない」
「そうか。ありがとう、ハルカちゃんのためにしてくれて」
「元々は私がぶつかったから。ツワブキダイゴとも知り合いになれたし、ハルカは気のいい人間だ。ユウキもポケモンのことたくさん知ってた」
最初は一緒にいられないと拒絶されたものだった。けれどハルカのこともあって、ダイゴの家に時々来るようになっていた。嫌々のようだったが、いつの間にか友人くらいの親しさにはなっていた。
「またいつでも来てくれ。留守の時もあるけれどね」
「意外に楽しかった。また来ると思う」
ポケモンの友達がいるなど、おそらく誰に言っても信じてもらえないだろう。ダイゴもこんなに話せるポケモンがいるとは思っていなかったのだから。
「それで、もしハルカがダイゴのこと好きじゃなくなってたら」
「それはないと思っている。あの話は万が一、ってことだろう?」
「そうだけど……その確率は半分だよ?」
「じゃあ賭けようかラティアス。僕はハルカちゃんを信じる」
ダイゴはフライゴンと共に空を飛んでるハルカに声をかける。戻っておいで、と。
ミシロタウンのオダマキ博士の研究所で、ユウキとハルカはラティオスとラティアスの話をしていた。実際にいたこと、そして心のしずくと呼ばれる綺麗な石を持っていたこと。それは心の傷を癒す話もした。
「なるほど、だからハルカちゃんは突然空を飛べるようになったんだね」
オダマキ博士は何かが解ったように頷いた。
「はい! すっごく気持ちよくて、怖かったのが嘘みたいです」
目の前のジュースを飲みながら、ハルカは答える。ユウキと言えばラティオスとラティアスから聞いた話をまとめていた。時折、ハルカのタツベイがかまって欲しそうにユウキを見上げている。
来客が研究所のドアを叩いている。オダマキ博士は迎えるためにその場を離れた。
「そういえばハルカ……その……ダイゴさんは?」
ユウキの問いに、ハルカはそっと左手の手袋を取った。そして薬指にある指輪を見せびらかす。
「私がそう簡単にあんなイケメン、逃がすはずがないわ!」
ーーーーーーーーー
空を飛んでる最中にニアミスとか接触事故とか墜落事故とか絶対あると思う。
かつてトレーナーだった人たちがやめていくのはそういう事故のトラウマかかえて夢を諦めなければいけないとかあってもおかしくない。
ダイハルでかいたけれどダイハルじゃなくてもいいよねなんて声は聞かない聞こえない。
【好きにしてください】
今週末(土曜日くらい)にチャット会をしようと思ってます。
何かテーマあったらください。
ポケモン小説に関することがいいです。
あと、今後のマサポケの方針とかも相談できたらと思います。
よろしくお願いいたします。
――次のニュースです。
故意に自分のシャワーズに洗剤を混ぜ軽傷を負わせたとして、ポケモン愛護法違反の容疑でタマムシシティ在住、会社員のアクァリ容疑者(34)が逮捕されました。
アクァリ容疑者は昨夜午後8時頃、自宅にて溶けさせたシャワーズに塩基性洗剤を混ぜ込み怪我をさせた模様です。その後シャワーズの異変に気付いた容疑者はポケモンセンターを訪れ、検査の結果ごく微量の水酸化カリウム等が検出された為ポケモンセンターの職員がアクァリ容疑者に話を聞いた所、事件が発覚致しました。
容疑者は、「同僚が色違いのポケモンを持っているのが羨ましかった。シャワーズを塩基性にしてフェノールフタレインを混ぜれば色違いの様になるんじゃないかと思った。怪我をさせるつもりはなかった。ポケモン程の耐久力なら何ともないと思っていた。シャワーズに謝りたい」と反省しているとの事です。
次のニュースです――
――――――――――――――――――――
化学の力ってすげー! 今じゃ指示薬を使ってシャワーズを様々な色に変える事が出来るんだと!
という訳でこんなの出来てしまいました。細胞が水分子に近いならシャワーズを溶媒に出来るんじゃないかとか考えた結果がこれです。化学に詳しくないので色々間違ってそうですが。
もしポケモンにとって何ともないとしたら、BTBやらメチルオレンジやらで黄色いシャワーズとか赤いシャワーズとかも出来ますかね。アシッドボムや胃液くらったら色が変わったりとか。それでもってシャワーズ変色キットなる物が市販してたりとか。夢が広がりんぐ。シャワーズかわいいよシャワーズ。
因みに容疑者の名前はシャワーズのフランス名「Aquali」から。浮かばない時こういうの便利ですね。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【溶かしてもいいのよ】
【化学の力ってすげー!】
【シャワーズかわいいよシャワーズ】
9/19追記:本文と後書き微修正
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