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弟の宿題を手伝うことになった。
バスケ部、塾、学校の宿題。彼の夏休みは夏休みじゃない。こんなことを言うと世の大学生や社会人の皆さんに怒られるかもしれないが、彼もまともな休みはお盆のみだった。
でもまあ、川に遊びに行ったりプールに行ったり遊びの面でも充実はしていたようだが。
さて、宿題の話である。塾の課題は親と一緒にやるため、どうしても時間が押してしまう。
この十三年間、一度も誰かに宿題を手伝ってもらうことがなかった弟が、下でポケモンをしていた私に『姉ちゃん宿題手伝って』と頼んできた。
『何でだよ』『だって暇そうじゃん』『暇そうなら誰にでも宿題頼むんかいお前は』『大丈夫だよ、数学じゃないから』『じゃあ何』『短歌作って』『……は?』
話を聞けば、去年の夏休みの宿題の進化版で、今年は短歌を作ることになったらしい。
「俳句はなんとかなったんだけど、短歌って難しいんだよね。ラストの十四文字」
「普通の俳句の後に『そしてかがやく ウルトラソウル』って付ければ何でも短歌になるよ」
「えwww ちょwww ブフォッww」
ツボッたらしい。一分間近く笑い転げていた。放っておこう。
自慢じゃないがこういう物は得意である。中三の冬休みの宿題で俳句を作り、某飲料水の俳句コンクールに出したら佳作をもらったこともある。あれは私の数少ない栄光の一つだ。『言われている人は舞台へ上がってください』と言われてスッと立ち上がった時の周りの視線が忘れられない。
まあ最も……その日は一がついた通知表が返ってくる日でもあったのだけど――
「できた」
人工の 青に映るは 水の色 瞳の裏に 焼きつく光
「ボツ」
「何で!?」
「アンタさあ、弟がこんなの作ると思う?」
「思いません」
「もっとこう……中二男子が作りそうな物をだな……」
母親と談義している横で、当の本人は漫画を読んで笑っている。カチンとくる。
「『兄弟に 宿題任せる 馬鹿一人 お前もやれよ この野郎』」
「ナイス」
「えー……」
「つべこべ言わないでお前も作れ!もう二度と漫画貸さんぞ!」
何度目かの『私何でこんなことしてるんだろう……』という気持ちが胸を包む。疲れた。もう怒る気力もない。
仕方ないので『中二男子』らしい物を作ってみる。
「『歯にしみる アイスキャンディー もう一本 今年は何本 いけるかな』」
―――――――――――――――――
余談。
実際にこういうことが我が家で起きているので書いてみた。ポケモン出てこないけど気にしない。
俳句・短歌は得意です。作者名言えないけど。
【宿題終わった?】
小さい頃、私はよく迷子になる子供だった。道に迷っても「迷ったということ」を認めたくなくて、ずっと一人で歩き回っていた――そんなような記憶がたくさん残っている。幼い私はとても頑固だった。今でもきっとそうなのだろうけど。
私はある時、近所の小さな山で迷子になったことがある。普段見たことのないようなたくさんのポケモンが木々の上で生活している様子を、目を輝かせて観察していた。
そうしたら、いつの間にか一人ぼっち。だが、私はいつものことだと軽く考え、自分からその山に迷い込んでいった。
甘蜜をなめるヒメグマ、木から木へ飛び移るグライガー、遠くへ飛んでいくヌケニン、相撲をとるヘラクロス、瞑想をしているアサナン――。
野生のポケモンも、その景色も、何もかもが私には魅力的に見えた。孤独の静寂さえ、楽しいものだった。
だがそれは、最初だけ。山にはじきに夕暮れがおとずれた。いつもだったらもう家に帰っている時間。でも私は、出口の分からない天然の迷路から出ることができないままでいた。静寂の中、あてもなく彷徨い歩くしかないそんな状況。次第にゴーストポケモンが増えてきたところで、私はようやく心細くなり、ついに、どうすればいいのと泣き始めた。
しばらくしゃがみこんで泣いていると、葉を踏む音が泣きじゃくる私の元へ近付いてきた。さくさく、さく、さくり。嗚咽に溶け込む足音。
「ココ」
かけられた声に顔を上げると、小さな体に鎧を着込んだココドラが、同じ目線で私をじっと見つめていた。水色の瞳が、心配そうにゆらゆら揺れている。よく見ると、ココドラの後ろにはコドラが、コドラの後ろにはボスゴドラが――。ちいさな私は驚きのあまり腰が抜けてしまい、ひたすらそのココドラたちを見上げることしかできなかった。
しかし、ボスゴドラは私が迷子だというのを察したのか、ひょいと小さな私を肩に乗せてくれた。どこもかしこもごつごつしていたが、体温がよく伝わってきたのを覚えている。当時の私はまだボスゴドラの気性の荒さは知らなかった為、素直に「助けてくれたんだ」という思いしかなかった。
それから、ボスゴドラは丁寧にも私を家まで送り届けてくれた。人目につかない森から森へ。誰にも見付かることはなく、私は見知った住宅街に帰って来れた。何で彼らが私の家を知っていたのかは、今でもよく分からない。けれど、それから家に帰った私は――お母さんには物凄く怒られたけど――優しいボスゴドラたちと友達になることに決めた。
そして、今。私はあの時のボスゴドラたちと暮らしている。大学生になり、大きくなった今でも私の大切な家族だ。ココドラもコドラもボスゴドラも、あの頃から変わらない姿で、私の傍にいてくれる。迷子になった私を救ってくれた英雄たちは、今日も変わらずポケモンフーズを頬張っていた。
*
怖そうなポケモンがやさしいとかわいいと思います。
そうなん?みたいなツッコミは多々あると思いますが気にしない方向で。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
かえちゃんの「引っ越し」 と言うものが終わって
お昼ご飯も食べて、窓側になぜかあったあたしの特等席に立つと
かえちゃんは急に「何か」 をし出した。
ロゼッタ(ロズレイド♀)が言うには
『かえちゃんの本を片付ける』 らしい。
うー、みんな手伝うのかな……。
「メイプルー、ちょっと手伝ってー。」
『なに、かえちゃん!メイプル何でもやるよ!』
かえちゃんの頭に乗っかって、覗き込んだ。
かえちゃんの髪、綺麗な赤色でいい匂いー。
「これ、カーテン。付けれる?」
『お安い御用だ!』
よかった。あたしもかえちゃんの手伝いができて。
カーテンレールの上狭いから乗れないけど、何とかなるかな。
『メイプル、無理しないでよ?』
『もう、ロゼッタてば心配症なんだから!
このくらい平気だよ!と、言うか、これくらいできないと
かえちゃんの相棒失格になるよ、あたし。』
『大丈夫よ、そのときは私がカエデの相棒になるから。』
『え………。』
『うふふ♪冗談よ♪』
ごめん、ロゼッタ……冗談に聞こえない。
まあ、相棒の座を渡す気はないから、いいけどさ!!
とりあえず、カーテン付けちゃおっと。
――――――――――――――――――――――――――
「きゃああっ!!」
どさどさ!!
『な、なに!?かえちゃんどうしたの!?』
『たいへん だ ! あるじ が ほん の なか に うもれている !!』
『いけない、助けるぞ!!』
アコニ(ゲンガー♂)とツァオメイ(コジョンド♂)によって
かえちゃんは本の中から助け出されました。(気絶してるっぽいけど。)
あちゃー、部屋の中が本まみれだ。
大丈夫かな、これ……。
―ドンドンドンドン!!
「秋風さん!どうしましたー!?秋風さん!!」
『あるじ の おとなりさん だね。でようか?』
『俺が行く。アコニはここにいろ。
ロゼッタとメイプルは片付け頼む。』
あーあ、先が思いやられるよ……。
*あとがき*
今回はメイプル視点で書いて見ました。
全体的にどたっとしてますね、ごめんなさい。
引っ越し初日でトラブル発生。
どうしてこうなった……。
*タグ*
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【水東荘新規居住者、及び住人募集】
おお。神風さま!ホウエン居住レポートに
小説を投稿して頂きありがとうございます!!
201号室、水嶋兄弟、登録しました(^_^)
レパルダス可愛い……米粒つけてすり寄ってくるなんて……!!
これからよろしくお願いしますね(^_^)
では、続きをば
――――――――――――――――――――――――――――
挨拶周りを終えて、部屋に戻った。
時計の針は12時を大きく過ぎていた。
『ヤミィ♪』
「ふふ……お隣さんのレパルダスとすっかり仲良くなったのね」
201号室の水嶋大輝さんと、その弟の凛さん。
大輝さんは礼儀正しい、真面目そうな青年で
凛さんはどこか、つん、とした、何だかチョロネコや
ニューラを彷彿とさせる少年だった。
そして、今はご愛用の止まり木で羽を休ませながら
日向に当たり、気持ち良さそうに目を瞑るメイプルは
挨拶周りで出会った、凛さんの足下にすり寄ってきた
一匹のレパルダスと、楽しそうに、何かを話していた様子だった。
悪タイプ同士、どこか話が合ったのだろう。
あの場に姉さんのマニューラがいたら、更に盛り上がっていたに違いない。
そんなことを思いながら、メイプルを始めとした、私の手持ち達の
お昼を用意して、私自身も、ここに来る途中で寄ってきた、コンビニで買った
お握りとお茶をちゃぶ台の上に置くと、残りの五匹をボールから出して
大量の本や調理器をどうしようか、近くにスーパーでもないだろうかと考えつつ
エビマヨの入ったお握りを口に入れた。
*あとがき*
セリフ少ない;;!!
書きたいこと纏まらなかった上にお昼ご飯のようすしか書けなかった……。
でも、これで一旦落ち着きましたので、ゆっくり書けます(^_^)
カエデちゃんはヤミカラス♀のメイプル含め、6匹の手持ちがいます。
他の5匹も追々、紹介する予定です。
あと、彼女のお姉さんもいつか出します。
*タグ*
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【水東荘新規居住者、及び住人募集】
おーい、ブースター。こっち来いこっち。歯磨き。こら逃げんな。
ほら口開けて。あーんしてあーん、あーん……何? 鼻にねじ込んで欲しいって? はいそうそうあーん。良い子良い子。
そのままじっとしてろよ?
――――――――――――――――――
久々に100字。
ザングースやアブソルの歯磨き絵見てたらポケモンの歯磨きってポケライフになるんじゃないかなーとか思いましてですね、こうなりました。
ブースターにしたのはほのおのキバ(笑)をネタにしたかったからなんですけどポケライフなら理由付けしなくても良いかなーとか思いましてですね、省いたら100字に近くなったのでいっそ100字にしてしまおうと。
まぁ何が言いたいかって言うと歯磨き絵もっと増えろって事ですね。イラコン関係無しに見たいですね。グラエナとかウインディとかブラッキーとかレントラーとかライボルトとk(強制終了
四足の子とか自分じゃ出来ないでしょうし、二足の子にわざわざやってあげるのも素晴らしいですね。いや、自分で磨いてるのもそれはそれで素晴らしいですけど。
とにかく歯磨き絵増えろって事です。歯磨き絵増えろ。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【寧ろ描いて下さい】
【ブースターかわいいよブースター】
【歯磨き絵増えろ】
チョロネコの額ほどの空間に、ちゃぶ台と座布団二枚。
ちゃぶ台の上に、湯のみが二つ。
湯のみの側に、野菜炒めの皿と御握りと味噌汁のお椀が二つずつ。
座布団の上に、子供一人。
座布団の上に、大人一人。
子供の側に、レパルダス一匹。
大人の側に、ルカリオ一匹。
『いただきます』の声が二つ。それを見計らったかのようなノックの音が、二回。
何でもない兄弟の日常が、この音で崩される。
「はい」
レパルダスを撫でていた凛は、兄である大輝が立ち上がったのを確認して御握りに手を伸ばした。熱いので注意して中身を割る。梅干入り。白米がピンク色に染まっている。
熱い味噌汁を見て、少し顔を顰める。
「もう少しぬるめにしてって言ったのに……」
凛は猫舌である。どんなに大好きな物でも、熱々は食べられない。おまけにこの部屋には冷房がついていない。あるのはいつ壊れてもおかしくない扇風機のみである。
それでも日当たりの関係か、ここに越してきてからは一度も熱中症にはなったことがない。兄の健康管理のおかげかもしれないが。
「凛!来て挨拶しなさい」
氷水を飲んでいたところへ、兄の声が響く。ため息をついて、レパルダスを飛び越えた。
玄関先に立つ二つの人影。一つは兄。もう一つは…… 女性だ。
髪は赤毛。以前読んだ『赤毛のアン』に出てくる赤よりも少しだけ濃い。あちらが『にんじん』なら、こちらは『トマト』とギルバートに言われることだろう。
背丈は小柄。いや、兄の側に立っているから小さく見えるだけかもしれない。兄は百八十近い。ちなみにオレは百五十ちょっとしかない。
彼女の頭に停まっているのは、図鑑でしか見たことのない、ヤミカラス。重くないのだろうか。
「今日からこの水東荘に住むことになりました、秋風カエデです。……よろしくお願いします」
「こちらこそ。私は水嶋 大輝です。こちらは弟の凛」
「……はじめまして」
困ったことがあれば何でも言ってください、という兄の言葉に彼女は『ありがとうございます』と言い、『これ、うちの実家の名物です』といかり饅頭を渡してきた。
こちらで言うヒウンアイスみたいなポジションだろうか。
ふと足元に柔らかい感触。レパルダスが玄関先までやってきていた。口元に米粒が付いてる。
「こら、レパルダス、ダメだってば」
『ミャオン』
レパルダスとヤミカラスはお喋りを始めてしまった。悪タイプ同士、何か通じ合うものがあるのかもしれない。
『これからよろしくお願いします』という挨拶で、一先ず彼女は部屋に戻って行った。
「美人さんだったね」
「……」
「どうしたの?……もしかして、気になった?」
「馬鹿を言うな。早く食べろ」
「はいはい」
華ができた、気がする。
なんだか楽しくなりそうだ。
――――――――――――――
えっと、初めまして。神風紀成と申します。
面白そうだったので書いちゃったんですけど…… いいんですかね、こんな感じで?
他の部屋の住人さんがどんな感じなのか気になってます。
とりあえず、彼らもよろしくお願いします(?)
では。
引っ越し。
それは住み慣れた土地を離れ、新しい土地で、新しい人達に出会うことができる、素敵なイベント。
ジョウト生まれのカントー育ちでありながら、シンオウやイッシュにも行ったことがある私なのだが、ホウエンには初めて来るどころか、これから目の前の、水東荘(みあずまそう)という二階建の古いアパートに、住むというから驚きだ。
まずいな私。生きていけるだろうか。
「貴女が秋風カエデさん?ヘェ、これまた
えーらしい子が来たなぁ。その紅い髪もえぇなぁ。」
「はあ……ありがとうございます……。」
「ああ、えーらしい別嬪さんやから見惚れてたわぁ。
私は一応、ここの大家やっとるんよぉ。
何かあったら声掛けてな?」
ああ、大家さんだったのか。
しかし、「えーらしい」 とは一体……。
方言かな。あとで調べよう。
とりあえず、大家さんに鍵を貰うと
突然、腰のボールホルダーのモンスターボールから
一匹飛び出してきた。
間違いない。我が相棒、メイプルだ。(因みにヤミカラスの♀である)
空中で翼を羽ばたきながら現れ、そのまま私の頭に乗っかった。
この子は、人の頭に乗るのが好き乗っかり魔である。
「まあ、ヤミカラス!初めて見るわぁ。
ホウエンにはいないから、なかなか見れないんよ。
それにしても、主人に似てえーらしい子やねぇ。」
あ、メイプルが照れた。「えーらしい」 の意味は
流石にわかってないな。だって私も知らないし。
とりあえず、大家さんに礼を言ってその場を離れると、私はこれから住む、203号室に向かった。
メイプルは相変わらず、頭に乗っかったままだ。
カンカン、と、子気味よく階建を登ってすぐが203号室。
貰った鍵を差し込んで扉を開けると、大きな本棚と、メイプルご愛用の止まり木(実は結構、高かったり)を含んだ
大きな荷物以外、段ボールの中で眠っている。
しかし、まず先に何をしよう。
片付けか、差し入れを渡すか、調べものか……。
メイプルは早速、ご愛用の止まり木に止まって部屋をぐるり、と見渡していた。
時刻はちょうどお昼頃。
しかも、今日は休日だ。
なら、差し入れを渡して、ご飯を食べて
それから片付けと行こうか。
そうと決まると、私はメイプルを呼んで頭に乗せると
ジョウト名物のいかり饅頭を持って、お隣さんへと挨拶しに向かった。
*あとがき*
覚えている人がいるかはわかりませんがお久しぶりです。
NOAHと言います。語り部九尾の作者と言えばわかるでしょうか……。
いろいろあって、現在は九州に引っ越して暮らしてます
場所は大分県です。なのでそこで覚えた方言を入れました
「えーらしい」とは、大分弁で「可愛らしい」 と言う意味です。
また暫くお世話になります。よろしくお願いします。
*タグ*
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【水東荘新規居住者、及び住人募集】
たまに、自分の今の日々に意味があるのか疑問に思うことがある。
過去を振り返るのも飽きてしまった。
最早退屈など感じてはいないが。
自分がここに存在する事は周りから快くは思われていないようだ。
しかし、いくら迫害されようが自分自身ではろくに動けない。
最早、夢も希望もない。
私の身体は常に膜で覆われている。
外からどう見えているかなど私の知った事ではないが、中から見てみると意外と半透明で不確かな物だ。
既に慣れてしまっただけかも知れないが。
ある日、自分の目に小さな光が入ってきた。
暗闇に慣れていた私にとって、その小さな光は視界が霞んでしまう程眩しかった。
「光」から拒絶され、何時の間にか暗闇を負の走行性を身に付けていた自分だが、今回はなんとなくその「光」に近づきたくなった。
自分の運命はなんとなく理解していた。
この半透明で不確かな膜が無くなり周りから煙たがられる「蛾」になるのだ。
その「運命」とやらを、「理解」はしたが、「受け入れた」憶えなど何処にもない。
―――自分は、「蛾」ではなく「蝶」になりたい。周りから煙たがられる、汚らしい「蛾」では無く、周りから求められる、美しい「蝶」になりたい。
強くそう思ったことが何度かある。
まあ、そう思うと同時に「理性」とやらにへし折られてしまうのだが。その「夢」や「希望」は。
例の「光」は日に日に強くなった。
「光」が強くなる度に、「痛み」も強くなった。
この身体になり、ろくに動けなくなってから受けた「痛み」だ。
私に「痛み」を与えた者の姿は克明に覚えているが、別に復讐しようだとかは全く考えなかった。
―――どうせ消えかけていた「痛み」だ。別にどうって事はない。
ただ、憶えていたいと思った。絶対に、永遠に憶えていようと誓った。
久しぶりに過去を振り返ってみた。
この半透明で不確かな膜が、私を包み込んだ直後の事を思い出した。
今ではすっかり荒んでしまったが、あの頃はまだまともな心を持っていた。
あの頃はまだ「夢」や「希望」を持っていた。
忘れないでいて欲しかった。
何かと繋がっていたかった。
恐らく、この願望は過去形で正しいと思う。
ある日の真夜中、光が強くなるのを止めた。
その代わりに、私自身が強く発光しているのがわかった。
それと同時に、私は自分に進化の時が訪れた事を悟った。
―――やはり私は蛾になるのだろうか。
―――やはり私に蝶になる権利はないのだろうか。
そんな事を思って、ようやく自分が解った。
自分は自分で思っている程諦めの良い生物ではなかったのだ。
そう悟りきった時、私の発光は止まった。
もしかしたら、私は蝶になっているのかも知れない。
そんな淡い希望を抱き、辺りを見回すが、生憎水溜りの様なものは見当たらない。
水溜りを探してうろついていると、遠くの方に光が見えた。
私は何かに導かれるようにその光へと飛んで行った。
−end−
おらっ はやく ねろ!
てめえら はやく ねろ!
うるせーよ はやく ねろ!
いいから はやく ねろってんだよ!!
「みんめえええええ!!!!」
「キャー!」
「きいいいいええええええ!!!」
「タブンネが鳴いたー!」
「タブンネー!」
「タブンネー!」
「みみひっぱるぞー!」
うぜえ。うぜえ、うぜえうぜえうぜえうぜえええええ!!!
人間どももうざいが、そのちいせえガキはもっとうぜえ!
タブンネの見た目じゃ「反撃しなそうだしもっとやっちゃえ☆」ってか!?
「こら!もう寝なさい!」
人間の女が同じことを言う。そーするとなぜか渋々布団に入るガキども。うぜえ。見た目で言うこと聞く人間を決めてんじゃねえぞこら。
つーか耳ひっぱるな! しっぽ触るな! 腹もむな!
布団に入って寝かしつけようとしたらまだかまってほしいのか!ふざけんな!
ガキどもが布団に入って数時間。やっとこさ寝やがった。
こちとらやっと休憩だ。ほっとついて人間がくれるコーヒーを一杯。匂いはいいのに苦い。
「また増えたね」
「仕方ないわよ。こちらが打てる手は全部打ったから」
人間たちはまじめな話をしている。ここがそんなところだから仕方ねえ。
ここは人間たちが捨てた子供たちを育てる施設らしい。意味わかんねー。
自分の子供捨てるかふつー!? かわいくねーだのなんだのかんだのすきじゃないだのあいしてないだのうんぬんかんぬん。人間たちはいつも訳の分からん理屈をこねて自分が一番可愛そうだと力説すんの。なんでそんなかわいそうなドラマ仕立てのストーリーを話していくんだ。子供捨てることに罪悪感あるなら引き取れっつーの。かわいそうじゃないなら黙って捨てろっつーの。
まー、人間なんて勝手な生き物だわな。あいつも勝手に変なボール投げつけてきて、弱いからいらねーだのなんだの散々いってくれた挙げ句、知らねー土地に置いて行きやがった。木の実のなってるところも解らんし、野生のポケモンたちはやたらつえーし、死ぬかと思った。
腹も減って喉も乾いて、タブンネの見た目からして血眼で探すトレーナーから逃げて本気で死ぬかと思った。草むらが途切れてるところに逃げてやばいと思ったね。そしたらここの園庭だったわけだ。
それからはなんでかここで働いてる。24時間親に捨てられたガキどもの相手だ。我ながらこんなに適性のない仕事につくとは思わなかったがな。
あ?幸せだとは思ってねーよ!ガキはうぜえし人間どもはコーヒーとか苦いものばかり渡して来るからな!
「タブンネー!」
もう起きたのかよクソガキ。見に行ってやるか。
なんだよ触覚引っ張るなうぜえ……お前の体調なんて知りたくもねーわ!うるさい、うるせーよガキ。
「もう寝る時間よ寝なさい」
人間たちが寝かしつけてくれた。あーでももう少し起きててよかったんじゃね?
人間が我が子を捨てる理由のもう一つが、生まれ持った障害。ぎゃーすか騒ぐガキどもはまだいい。あいつみたいに自分じゃ動けねえ、呼吸も危ないっつーのばっかりだ。唯一動く手で触覚触るのは助かりたい本能なのか?
見に行ってやるか。お前のその心臓の音じゃあな……お前の親みたことねーから知らんけど、人間の親の真似くらいはしてやるよ。だから寝ろ。起きてる間のが苦しいらしいぞ。
そいつは触覚を握ったまま朝を迎えやがった。痛いっつーの。いくらお前の親の真似とはいえ触覚握っていいなんて言った覚えはないぞ。体くらい拭いてやるからよ。だから離せ。そーっとな、そーっと。いっててててて!
やっと触覚が抜けた手を熱いタオルで拭いてやる。背後に影を感じた。振り返ったら知らねえ人間が立ってた。人間って何かしら表情あるんだが、こいつら無表情だった。初めて見たが、こいつの両親だった。あー、弱い子供は自分の子でも要らねえのか。あーそうか。
何も言わずにそいつを引き渡した。これが正しいのかは知らん。が、これが今の仕事だ。その代わりに生きる権利を手に入れた。やっていくしかねえよ。弱いポケモンは生きられねえんだ。タブンネだからここに拾ってもらえて、やっていくしかねえ。
「タブンネ」
「めんめ?」
「今日、また一人来るって」
ああ、またか。そうだあいつ一人いなくなったところで世界は何も変わらない。自分の仕事は何も変わらない。生きていかなきゃならん。今さら野生に戻れるほど戦えるとは思ってない。
せめて捨てられたガキどもくらいは、野生の社会を戦えるだけの力を持って成長しろ。つーかしろ。しなかったらげしげしするからな。解ってんのか。だから触覚触るなクソガキ!
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おらっ はやく ねろ げしげし
タブンネの鳴き声は「みっみー」に聞こえるでございます。
ポケライフって間に合うのかな。捨てられたタブンネが孤児院で働いていく話でした。
【好きにしてください】
はじめまして、穂風奏です
私の作品からイラコンに参加してくださるとは、本当にありがとうございます
オオタチは見事に気持ちよさそうに扇風機独占してますね
写真の左のグレイシアと主人公のだるそうな様子はどうなるのでしょうか
完成を楽しみに待っております!
それでは失礼しました
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