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> まさか、自分の誕生日にこのような作品と出会えるとは……!(ドキドキ)
> タグを見た瞬間、目が丸くなりましたです、嬉しいです、ありがとうございます。
よく言えばもう一歩大人に。
悪く言えばいっこ人生の終わりに向けt
( ま、まぁ、その、お誕生日おめでとうございます
> 出会えたあの日が
>
> 君と僕との
>
> もう一つの誕生日
> このフレーズ大好きです。
> その人やポケモンにとって特別な日。
> 色々な出会いがあるんだろうなぁと想像が膨らんでいきます(ドキドキ)
人それぞれ、いろいろな出会いがあると思います
それは生まれて死ぬまでずっとです、たぶん……
> 自分の場合は、小1の頃におじいちゃんとおばあちゃんが送ってくれたゲームボーイポケットと同梱されていたソフト……それがポケモンとの出会いでした。
私も、DS買う前にDSソフトのポケダン青かったりしてわくわくしてました、7年前(
出会い……は良く覚えていませんが、ずっと昔にアニメをテレビで見たときでしょうかね
> その出会いをくれたおじいちゃんとおばあちゃんにもありがとう。
みんなにいっぱいありがとうって言ってくださいね
それだけ、あなたもほかの人からありがとうって思われているはずです
> それでは失礼しました。
> 本当にありがとうございました!
またどこかでお話ししましょう
こちらこそ、よんでいただき、ありがとうございました
> 【めでたく23歳になりました。ピカチュウの番号まで後(以下略)】
また来年も時期が来たらですね……何かするかもしれません
まさか、自分の誕生日にこのような作品と出会えるとは……!(ドキドキ)
タグを見た瞬間、目が丸くなりましたです、嬉しいです、ありがとうございます。
> 出会えたあの日が
>
> 君と僕との
>
> もう一つの誕生日
このフレーズ大好きです。
その人やポケモンにとって特別な日。
色々な出会いがあるんだろうなぁと想像が膨らんでいきます(ドキドキ)
自分の場合は、小1の頃におじいちゃんとおばあちゃんが送ってくれたゲームボーイポケットと同梱されていたソフト……それがポケモンとの出会いでした。
その出会いをくれたおじいちゃんとおばあちゃんにもありがとう。
それでは失礼しました。
本当にありがとうございました!
> [みーさんがお誕生日と聞いて]
【めでたく23歳になりました。ピカチュウの番号まで後(以下略)】
反応遅くてすいません(汗)
コメントありがとうございます!
ラストの展開に鳥肌が立ったとか……とても嬉しいでございます。(ドキドキ)
> そうか!ピカチュウがあんなに強いのは先に出来たからなのか!!
>
> ・・・・と妙な納得をしました(笑)
いかに美和さんでも黄色いアイドルを超えることができないというタイトルに、こちらも思わず笑ってしまいました。>の数がそれを物語っている(笑)
> ドーブルの「スケッチ」は確かに謎いですね。レベルが上がると描写能力が上がるから?と考えてみたのですが・・・。どうなんだろう。
本当はレベルに応じての技しかスケッチできないとかというのも面白そうですよね。描写能力が低いからこの技までとか、描写能力が高ければ高い分、会得できる技の範囲が増えるといった感じで。
それでは失礼しました。
【ドーブルはイケメンですね!】
目を覚まして
一番最初に受ける言葉
おはよう
ご飯を食べて
歯を磨いて
出かける前の
いってきます
何事もない一日
いつも通りの朝
いつも通りの毎日の中に
一年に一度の
特別な日
きみの
ぼくの
この世界に生まれた
大切な日
君とこうして出会えたのも
ぼくが
きみが
何年も前の
この日に
あの日に
生まれたから
きみの誕生日はわからないけれども
こうして一緒にここにいる
出会えたあの日が
きみとぼくとの
もう一つの誕生日
―――
タマゴから孵したポケモンはしっかりお誕生日解りますが
野生ポケモンはどうなのでしょう?
若々しい全盛期なのか、生まれたてなのか、はたまたよぼよぼのお年寄りなのか
全くわからない……わからないからこそ、出会った日
出会った日もまた、誕生日
かもしれませんね
どこぞの誰かさんがお誕生日と聞いてかきかきしてみましたです。
心から、おめでとうございます
[みーさんがお誕生日と聞いて]
はじめまして。ねここです。
コメントありがとうございました!
こんなんでいいのかなあ、と思っていたのでとても嬉しいです。(初投稿だったので)
メタモンはかわいいんだぞ!ということが少しでも伝わったのなら、本望です。
あの反応に鈍そうな感じが何とも癒やしですね。
ずっと手持ちに入れておきたいです。
メタモン好きがもっと増えてくれたらいいなー。
ねここさんはじめまして。
うーんやはりメタモンのつぶらな瞳はかわいいですねえ。
メタモンの優しさ、というか
> 怖がっているということは、他のポケモンに伝わるんだと思う。だからこれまで、ポケモンたちは「怖くないよ」と伝えるために、後ろをついてきたりしていたんだ。
というようなこの話全体に漂う優しさがなんだかとっても好きです。
それにしてもメタモンってかわいいですね。
今日、お兄ちゃんが帰って来るらしい。
お兄ちゃんは、私が住んでいるタマムシシティよりももっともっと遥か遠くの、キンセツシティなるところに住んでいる。昔っからポケモンが大好きで、よくお母さんの言い付けを無視して、ポケモンを連れ帰って来ていた。そんなお兄ちゃんも、今や名の知れたポケモントレーナー。聞くところによれば、ポケモンとシンクロするかのような魅せるバトルをするらしい。私自身、お兄ちゃんのバトルを見たことはないのだけれど。
でも、妹である私は、彼とは正反対だった。ポケモンに対する苦手意識が心の中で、ぐるぐるとめぐっている。もちろん、私はポケモンを一匹も持っていない。でも、ピカチュウは可愛いと思うし、バンギラスだって格好良いと思う。触ってみたいとも思う。けれど、苦手だった。それなのに、外をのんびりと散歩するポケモンは、そんな私を癒そうとでもするように、わらわらと群がってくる。この前なんて、学校帰りに出会った野生のベロリンガが家まで着いてきた。薄ピンク色の可愛い子だったけれど、私はこれまでにないくらい緊張した。お兄ちゃんは、そんなにポケモンが集まってくるなんて羨ましいと言ってくれるけれど、私はちっとも嬉しくない。
だって、怖いから。
たとえば、家の周りによくいるガーディなんかをゲットするとしよう。でも、そのガーディはひのこを吐く。家のキッチンのガスコンロから出る火と同じ火が出るのだ。そんなの、怖すぎる。学校の友達は皆、ほのおポケモンがかっこいいだのみずポケモンがかっこいいだのとわいわい話をしているが、私に言わせてもらえればノーマルポケモンが一番ましだと思う。ゴーストポケモンは幽霊みたいだし、かくとうポケモンは威圧感がすごいし、こおりは寒そうだし、ひこうポケモンは勝手にどこかに飛んでいっちゃいそうで、心配になる。
結局、そんな考えがある限り、私にポケモンは合わないと思う。
でも、お兄ちゃんのポケモンは別だ。お兄ちゃんによくなついているし、礼儀正しいし、とても可愛い。野生のポケモンに対してよりも、ずっと心の壁が薄い気がする。お兄ちゃんのポケモンだったら、私でも仲良くできるかもしれない。けれど、やっぱり心のどこかで恐怖を感じているのだろう。と、何故こんな話をしているかと言えば、お兄ちゃんはどうやら、私にポケモンをプレゼントしたいらしいのだ。お母さんは、お兄ちゃんがくれるポケモンなら大丈夫よと笑っていたけれど、私の頭はどうしようを繰り返している。
「行ってきまーす」
「お兄ちゃん、お昼くらいに帰ってくるって」
「……うん」
でも、その前に学校だ。玄関の扉を開けると、晴れ晴れとした青空とぴかぴかの太陽が私を照らす。見上げると、そこでは登校中やお出かけ中の人たちが、自分のポケモンに乗って空を走っている。本当は、ちょっとだけだけど、私も空を飛んでみたい。でも、もしもらえるのが飛べるくらい大きなポケモンだとしたら、きっと外に出る時以外はモンスターボールの中に入れておかなければならない。でも、そんな窮屈な思いはさせたくない。ボールの中がどうなっているのかは、分からないけど。
とにかく、私も遅刻しないように行かなきゃ。
「え、ナツナ、ポケモンもらうの!?」
「うん……」
「何? 何もらうの?」
「分かんない」
「えー。じゃあ、もらったら明日学校連れてきてよ」
「……怖くなかったら」
「あのナツバさんが、妹の怖がりそうなポケモンをプレゼントしてくるわけないじゃない」
お昼時。授業のほとんどはもう終わり。私も、ご飯を食べ終わったらもう帰る。今頃、お兄ちゃんは帰ってきているのだろう。私の心は、ドキドキでいっぱいだ。お兄ちゃんが帰ってくるよりも、どんなポケモンを選んでくれたのかが気になる。もし、あんなポケモンだったら、こんなポケモンだったら、と、空想は家の前に帰ってくるまで止まらなかった。結局、何だかんだ言いながらも、楽しみにしている私だった。
「ただいま」
「ん、おかえり。ナツバ」
久しぶりに見たお兄ちゃんは、少しだけ日焼けをしていた。そろそろ夏真っ盛りだし、空を飛ぶ人なら当たり前なんだけど。でも、優しい笑顔は変わらなかった。ふんわりとした雰囲気からしても、強いポケモントレーナーには思えない。だから、強いのかな。なんて考えていると、お兄ちゃんはポケットから一つの青いボールを取り出して、私に差し出した。
「青が好きだったよね。ほら、プレゼントだよ」
「あ、あ……うん。ありがと……」
あっさりと渡されたそれを、恐る恐る受け取る。その瞬間、この小さなボールの中にポケモン一匹が入っていることの重さを感じた。どういう構造なのだろう。変なことに感動している最中も、お兄ちゃんは嬉しそうに、楽しそうにこちらを見つめていた。出してみてもいいかな、と視線を合わせると、彼は鷹揚に頷いた。ここで出せるのなら、きっとそんな大きくないポケモンなのだろう。もし怖かったら、お兄ちゃんがなんとかしてくれるだろうし、そんなに心配することもない、と自分に暗示をかけ、もう一度ボールに目を向けた。でも、どうやってポケモンを出すのだろうか。ボールを手に持ちながら、考える。くすくす、と笑い声が聞こえた。
「投げてみて」
「え、投げるの?」
「うん」
そんなことしたら、中にいるポケモンが酔っちゃうんじゃ。そんなことを思った。でも、これじゃますます投げられない。どうしよう。どうしよう。おろおろする私。笑う声が大きくなる。そんなに笑わないでよ、ボールから出すの初めてなんだから。すると突然、怖いのと緊張とで手にかいていた汗がするん、とボールを滑らせた。床に、落ちる。そう思った瞬間、世界は、スローモーションになったみたいにゆっくり動いた。
気付いた時には、ポケモンがそこにいた。
「……このポケモンは?」
ピンク色の体で、うにょうにょとスライムみたいに床をのびのび移動している。これが本当にポケモンなんだろうか。他のポケモンは動物みたいにしっかり体があるのに、このポケモンはそれがない。液体のようだ。思わず、恐怖を忘れてまじまじ見つめていると、黒々としたつぶらな、つぶらすぎる瞳と目が合った。にー、と口らしきものが笑みを見せて、ぺたりと手のようなところが、私の足に触れた。冷たくもあたたかくもない、のんびりとした温度と、何とも形容しがたい微妙な感覚が伝わる。でも、なぜか全く怖くなかった。むしろ、優しい感じがする。しゃがんで、その体にゆっくりゆっくり手を伸ばすと、そのポケモンはにこにこと笑いながら、体のほとんどを手の形にして、握手をしてくれた。ぐにょん。
「そのポケモンは、メタモンっていうんだよ」
「メタモン……」
「ちょっと見てて」
お兄ちゃんは、まだ握手をしたままの私たちのすぐ横に、金色に輝くサンダースを出した。いきなりで少しびっくりしたけれど、今はメタモンが傍にいるから、なんとなく大丈夫だと思えた。そう言われているような気がしたから。すると、メタモンはいきなり白っぽい光に包まれて、次の瞬間にはサンダースになっていた。手はまだ繋がれたまま。
「……サンダースに、なった?」
大きさも色もおんなじ。でも、一つだけ違うのは、その目だった。サンダースになったメタモンの目は、可愛らしくもそのままのメタモンの目。サンダースの大きな目と比べると、その差は歴然だ。それにしても、凄いものを見た。メタモンはきっと「へんしん」という技が使えるのだろう。前に聞いたことがある。ポケモンの中には、相手のポケモンに「へんしん」してしまうポケモンがいると。でも、そのポケモンは「へんしん」しか使えない。きっと、メタモンはそのポケモンなのだ。
「ね、気に入ってくれた?」
「うん。なんか……怖くない、ね」
「よかった。あ、なら名前つけてあげなよ」
「……この子、男の子?」
「ううん、性別はないんだ」
出会った瞬間から、止まった時計が動き出した気がしていた。これから、この子は私の家族になるんだ。そう思うと、何だか嬉しくなった。この前の私からは考えられないような、進歩。
怖がっているということは、他のポケモンに伝わるんだと思う。だからこれまで、ポケモンたちは「怖くないよ」と伝えるために、後ろをついてきたりしていたんだ。でも、もう平気。私は、もうポケモンを怖がったりはしないはず。そんなことを考えている私を笑わせようとでも思っているのか、メタモンはふにふにと楽しそうに踊りながら、時々リアクションを伺うかのように、ちらっとこちらを見た。思わずその動きに笑うと、どこまでも伸びるような口を横に細く伸ばし広げた。
「……じゃあ、」
私は、これから始まる新しい世界に期待を込めて、可愛い相棒に名前を付けた。
*
メタモンってかわいいですよね。さいきんのポケモンわからないのでなんかアレかも……。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
僕の恋人はポケモントレーナーだ。その実力は僕をも凌ぐ。はっきりいって嫉妬している。年齢の割に開花した才能。長いこと頂点にいたとはいえ、僕の才能が開いたのは時間をかけてのことだ。
その嫉妬に気付いたのは、彼女に負けた時だった。
チャンピオンとしてトレーナーの頂点に長いこといた僕は、トレーナーのやる気や見た目である程度の強さは解る。会った時になんとなくいつか追い越されるかなと感じていたけど、まさか本当に負けるとは思ってはなかった。彼女は僕と真っ正面から挑んできて正面突破していったんだ。
勝負がついた時はなんだかチャンピオンとしての重荷が終わって嬉しいような清々したような気分だった。彼女はすっごい複雑そうな顔してたけど、これでやっと自由だと家に帰ったんだ。
でもだんだんと悔しさが出て来た。だって、何となく解ってたとはいえ、あんな年下の女の子に負けるなんてさ……そう思ったらなんか一矢報いるためイタズラを仕掛けてもいいかなと思った。
初めて会った時、彼女の尊敬する肩書き「ジムリーダー」を一蹴した。だから、それより強いチャンピオンになったのだから、絶対に僕に何か言いに来るに決まってる。だったら僕の家で何か仕掛けてその反応を見て、大人に反抗するなんて早いと言おうと、仕掛けるまでは楽しかった。何を言うのか、どんな反応をするのか想像しただけで楽しいじゃない?
そしてもうその時の顔といったら……大泣きされてしまった。
僕に会いたいと涙を流して叫ぶ彼女は予想外だった。素直になりきれないクセに僕にあの手この手でかまってもらおうと画策して大抵失敗している。そのことは解っていたけど、僕の見ていないところではあんな素直になるなんて。
やっぱり、と思った。会った時に負けるとも思っていたけど、なんとなく僕を見る目が言ってた。僕のことを好きだと。でもその後はずっと反抗的な態度しか取ってないんだから、気のせいだとは思っていた。僕は確信した。
僕はこの子に嫉妬していたのではない。好きだけど素直になってくれないことにイラついていたんだ。隠れてる僕が見てることも気付かずダンバルを抱きしめて泣き続ける彼女を後ろから唖然と見ていた。もうイタズラだと言い出すタイミングを見失いすぎた。
だから敢えて明るく、冗談めいた声で話しかけた。多分今までだったら容赦なく叩いたり蹴ったりしてきてもおかしくない。それなのに泣いたままの顔で僕をじっと見て、目をこすって何度も見てた。僕の存在を確認してたね、あれは。
僕が幻ではないと解ったら、元の彼女に戻ってかわいくない態度をとっていた。さっきまでの大泣きが嘘みたいだね。もう一回からかってみた。今度は引っかからないかなと思った。
そこは子供だったね、僕が買いかぶってたかも。また引っかかって。僕に張り付いてじっと見ている。言いたいことが言えないんだろうね。さてどうやって僕を止めるのかな。
そうかと思えば、僕にポケモンを教えてくれと大胆な行動に出てきた。まさかこんなことを言われるとは思わなかった。強さは彼女のが上なのに、何を教えることがあるのだろう。そう言ってわざと突き放してみた。予想通り食い下がってきた。
いいだろう。僕もこの才能がどこまで通じるものか見届けたい。こんなかわいらしい女の子から繰り出されるポケモンたちの共演をずっと見守り続けるよ。
ダイゴは仁王立ち。ハルカは腕を組んでそっぽを向く。その間にはメタグロスが申し訳なさそうに立っている。
「絶対に炎技を耐える調整がいい」そう主張するのはダイゴ。
「炎受けはラグラージがいる。ならコメットパンチの威力を少しでもあげるから攻撃に全振りする」そう主張するのはハルカ。
ハルカがダイゴにポケモンを教えてほしいと頼んだ。その関係はもう長いこと経った。
そして二人が今、目標にしているのはエリートトレーナー試験。そう呼ばれているが、正式名称はポケモン訓練士1級である。これに受かるとポケモントレーナーとして施設で働くことも出来るし、ジムリーダーを勤めることができる。なお、これはリーグとは別なので例えチャンピオンとなっても資格がなければ働くことができない。プロスポーツと同じように登録してもらえない。登録のための資格である。
将来、ハルカはジムリーダーになりたいと言う。才能もあるし、夢を現実にするには申し分ない。だが、資格が必要だよ、とダイゴが案内したのがきっかけである。
筆記試験の勉強はいいとして、問題は実技だ。これは受験者同士の戦いである。勝てばいいというものではない。どのように勝つかが問題となっているので、勝ったところで落ちる可能性もある。
どのように勝つのかと言えば、全く普通である。ポケモンをいたわって命令しているか、命令に無茶はないか。上に立つポケモントレーナーほど、倫理が強く求められる。そのことはダイゴが何度も話しているし、筆記試験でもマナーやポケモン勝負禁止の範囲などが出される。賠償や保険、責任の所在など子供には難しい話ばかりだ。けれどこれを理解しなければ次に進むことができない。
今、両者真っ向から対立しているのは、明日の実技試験で使うメタグロスのことだ。瀕死にさせられる前に技を出さなければならない。メタグロスはそんなに素早いポケモンではない。下手したら何もできないのにノックアウトしてしまう可能性だって高い。そうダイゴは主張し、少しは耐えるようにと話した。
対するハルカは、メタグロスの高すぎる攻撃力と技でがんがん押すと主張する。確かにコメットパンチの破壊力は素晴らしいものだ。そうして乗り切ると話す。
二人とも主張は一向に曲げない。そうするとお互いにイライラしてくる。そしてついに。
「わかったよ。好きにしたらいい! 君が落ちる姿をちゃんと見といてあげるから!」
「ええ好きにします! それでダイゴさんに言われるまでもなく受かりますから!」
決裂。その後はずっと無言。お互いに一言も声をかけない。
ただの試験とはいえ、エリートトレーナー試験の試合は全国ネットで中継されている。地域ごとに試験日が違う。本気の人は、その試験日の違いを利用して全て受けるほどだ。
そしてその試合の解説に呼ばれたのがダイゴ。試合をリアルタイムで見守る中継席にいるのだ。だからこそ教え子に無様な負け方をして欲しくない。目の前で大好きな子の負け方を解説するほど惨めなものはない。
しかし受けるハルカは全く違う意見を持っていた。負けても仕方ない。そして落ちたらまた来年があると。
無言でハルカは出て行く。家に帰るのだ。攻撃系統に最終調整したメタグロスと共に。
「自分が教えてくれって言ったんじゃないか」
誰も聞いてない空間にダイゴは言った。
実技試験の日。筆記試験を通った強そうなトレーナーたちがわんさか集まっている。受験票をなくさないようにハルカは会場に入っていく。
プレッシャーと、昨日のダイゴとの意見の相違が尾を引いている。ハルカの心は怒りでざわついていた。
「ダイゴさんは私が意見もったポケモントレーナーだって思ってくれてない」
つい心の声が音声になってしまった。だけど他のトレーナーたちはそんなこと微塵も気にしていない。もし耳に入ったとしても、自分の試験のことで頭がいっぱいで、すぐに忘れてしまう。
ハルカは試験に集中する。ダイゴが思考を中断しにくる。何度も昨日の「落ちる姿を見ておく」という言葉が刺さる。それは同時に絶対に落ちないとハルカを決意させた。
「それでは、番号1002番の方から1021番までの方から始めます」
係員の声が届く。10人ほどのトレーナーが立ち上がった。
試験開始から何試合目。大きなスタジアムの中継席から双眼鏡を覗き込み、マイクに向かって解説を続ける。これが意外にハードなのだ。なぜその技か、なぜそのポケモンなのか。特性から技からタイプから、全国のポケモンに全く触らない人にも解るように話さなければならない。つい使ってしまいそうになる略語や専門用語を避け、誰でも知ってる言葉を瞬時に選ぶ。
試合のインターバルにダイゴはため息をつく。喉を休ませる貴重な時間だ。
昨日はあんな喧嘩をしてしまったが、ハルカのことは気になる。順番はまだ来ていない。
今日は快晴だ。炎タイプの威力が上がる。それを利用したトレーナーたちは多い。天候を変えようとしても、それは一時的なものだから、すぐに干上がってしまう。
炎技が上がる。それはすなわち使う予定のメタグロスの弱味を増やすことだ。そして炎を受けるといったラグラージは水タイプ。こんな天気では水タイプの技は威力が下がってしまう。
「では、次の試合です。大物ですよ。なんと解説のチャンピオン、ツワブキダイゴさんに勝ちながら年齢や資格がないのでなれなかったという経歴の」
アナウンサーの話を聞いて、ダルい体が一気に起き上がる。ハルカだ。
「ではツワブキさん、彼女と戦ったのですよね?」
「え、ええ。彼女は強かったですね。初めて見る相手にも、ラグラージの特性を巧みに使う。トレーナーは軍師のようでなければなりませんが、彼女は策士といったところでしょうか」
何をやっている。ラグラージを出して、相手がロゼリアなら逃げるしかないだろう。何を聞いていたんだ。
「ツワブキさん? では解説を……」
「え、ええ。そうですね、ラグラージとロゼリアは基本的に相性が悪い。そしてこの天候からして、ソーラービームをためなくても使えます。それにギガドレインがある可能性だってありますね。大抵はこの状況なら交換を……」
「なるほど。おや、ロゼリアはソーラービームのようですね。対するラグラージは、交換しない!」
何をやっている!!! ダイゴは実況席から身を乗り出した。ガラスに頭を打ったが本人はそれどころではない。
「ツワブキさん、これはどういうことでしょうか」
「いやー、私もこういう展開はあまり見た事がないので」
「おや、ラグラージの様子がおかしいですね。耐えましたラグラージ。ロゼリアのソーラービームを耐えて……ミラーコート!?」
全てを反射するような光にロゼリアは耐えきれなかった。助かった、とダイゴは大人しく着席する。
「ミラーコートは特殊技を2倍にして返す技ですね。ラグラージはタマゴから生まれる場合のみ覚えることができます」
「なるほど。知識の量も実力もチャンピオンを破ったトレーナーということですね」
それもダイゴが全部教えたことである。しかしこのソーラービームを耐えるとは思わなかった。
いや、それはダイゴが見落としていたこと。違うラグラージとはいえ、メタグロスの攻撃を何度か耐えた種族だ。あっさりさようならということはないのだろう。
「次のポケモンは、キュウコンですね」
「とても素早いでしょうから、ラグラージの減った体力では……」
ダイゴの解説を待たず、ラグラージはキュウコンの電光石火で倒される。
次をどうするかが不安だ。今の天候のメタグロスは危険だ。そしてもう一匹は攻撃を受けるということを考えていない。なぜならそれは翼を欲しがる青い竜。ボーマンダだ。
「おや、ボーマンダですね! これを持っているとはやはりレベルが」
「ドラゴンは炎タイプに相性がいいですからね」
「キュウコンがこれは炎の渦! ボーマンダを閉じ込めるつもりですね。対するボーマンダは、踊ってる?」
「あれは竜の舞ですね。攻撃力と素早さを上げます。遅めであるボーマンダの技としては最良ですね」
しかし火傷しないとは限らない。火傷をすると攻撃力が下がってしまう。攻撃を上げるボーマンダとは相性が悪い。
「おや、ここで、ボーマンダが」
ボーマンダはキュウコンを見据え、飛び上がった。空を飛ぶという技にも思えたが違う。着地の瞬間、大きくフィールドを揺らした。
「さすがボーマンダの地震となると、ここまで揺れますな」
「そうですね。キュウコンはもっと食らってると思いますが」
スタジアム全体が揺れた。後ろで指示しているハルカ自身も揺れに耐えられず手をつく。キュウコンがそこに倒れていた。
「さあ、最後のポケモンは、チャーレムだ!」
「相性は悪いですね。ボーマンダの攻撃力と素早さが上がっていますし、ボーマンダは……」
「おっとボーマンダを引っ込めたぞ。そして出て来たのはメタグロス!」
ダイゴの心は許す限り叫んだ。けれど音声が全てマイクに拾われる今、そのまま素直に出すわけにはいかない。
なぜそのままいかない。そのまま押せば勝てたし、無理をさせた試合ではない。トレーナー倫理に引っかかる試合でもない。なのになぜそこでメタグロスを敢えて出した。格闘技を半減するボーマンダと違って、メタグロスはそのままダメージが通ってしまう。
「チャーレムの飛び膝蹴りがメタグロスに入りましたね。急所に入ったようで痛そうです」
「メタグロスは防御力が高いポケモンですからね」
そこまで言いかけて、自分のメタグロスと違うことを思い出した。ダイゴのメタグロスならばもう一度チャンスがあったかもしれない。けれどハルカのメタグロスは……
「チャーレムの飛び膝蹴りがまたもや入る! メタグロスの足元がふらついてますね。もうダウンでしょうか」
ポケモンもポケモンでトレーナーに似るんだから! もしそこでメタグロスが倒れなければ試合は続行し、ハルカは瀕死の状態のメタグロスを戦わせたということで、落ちる可能性だってある。倒れろメタグロス、倒れろ!
「おっと、メタグロスの足が光りました。これはコメットパンチ!」
試合は盛り上がる。チャーレムの急所をメタグロスのコメットパンチがとらえた。チャーレムは倒れた。多いかぶさるようにメタグロスも倒れる。
「コメットパンチは反動がないはずですが」
余計なことを実況が言ってしまった。瀕死状態をかばってメタグロスは攻撃したのだ。これでは審判も見逃せない。
試合は終了となり、審判が難しい顔をして話し合っている。
「ツワブキさん、どうなるでしょうね」
「解りませんね。メタグロスがコメットパンチをするだけの元気がないサインをトレーナーに見せていたかも判断になりますが」
この頃にはすっかりダイゴはイスにだらけていた。落ちた。落ちてしまった。あそこでなぜメタグロスにした。なぜだ。メタグロス!
夕方になり、全ての試験が終わった。結果はその場で受験番号で公表される。スタジアムの電光掲示板が光った。
「合格者の番号がつきます」
アナウンスが入った。そして番号が順番に光っていく。ハルカは受験票を握りしめた。
「1019、1023、1024、1026」
ああ、まだだ。まだまだ。まだ順番にならない。
受験票は原型を留めてない。ハルカの手汗で文字はにじみ、もとの番号がかろうじて読める。
「1045、1056、1058、1060」
緊張で心臓の音が聞こえる。こんなに緊張しているのは初めてだ。
「1081、1083……」
次だ。次のランプが点灯しなければハルカは落ちたことになる。
「1084……合格だ……」
ポケモン訓練士一級。通称エリートトレーナーに合格した。あまりに嬉しくて、思わず叫ぶ。
「やった、やったよ!!!」
正しかった。メタグロスの攻撃力があったから、チャーレムは一撃で倒すことできた。これでよかったのだ。ハルカの試合は、ハルカの読みが当たったのだから。
発行されたばかりの一級免許を持って、会場の外に行く。
すっかりお祭り騒ぎで、屋台も出ていた。その中で報告のためにポケナビを鳴らす。まずは家に。母親が出て、合格したことを伝えるとおめでとうと帰って来た。その場で父親が取り次ぐ。
「ハルカおめでとう。ジムリーダーはこれからが大変だが、まずは一歩だ」
「うん、お父さんありがとう! これから帰るから遅くなるね!」
ポケナビを切る。そして次にかけたのはダイゴだった。もう仕事終わっていて、今はどこにいるのだろう。
「もしもし」
ほら私の言う通りだった。あそこでメタグロスがチャーレムを倒せたのは私の意見が正しかった。さてそのことをどう言ってやろうか。その時どんな返事をするのか楽しみで仕方ない。
「ハルカちゃん、君は何をしたか解ってる?」
ポケナビの相手を確認するまでもなく、ダイゴの第一声はこれだった。
「あのままボーマンダで押し切れば、メタグロスは不要に傷つかずに済んだ。トレーナー倫理審査も行なわれることなく、君は勝てた。相手も合格しただろう。それなのに君はあえてメタグロスに交換した。そして急所に当たり、瀕死なのを庇ったメタグロスのおかげで勝てた。それ解ってる?」
早口でまくしたてられ、ハルカは状況が解らない。解るのは、ダイゴがひどく怒っているということ。
「ダイゴさん? なんで怒ってるんですか?」
「君はあと少しで倫理審査で落ちるところだったんだ。それを解っているのかと聞いている」
「なんでですか? そもそも瀕死になったらポケモン動けないじゃないですか」
「だからメタグロスは君に遠慮してコメットパンチをしたんだろう。チャーレムに攻撃した後にすぐ倒れたのが何より証拠だ」
通話が切れる。その必要がなくなったから。目の前に声と同じく表情が怒ってるダイゴがいる。
「おいで。君のしたことを教えてあげる」
手を引かれ、スタジアムから遠ざかる。楽しげな声が彼方まで来た。
するとダイゴは突然ハルカを突き飛ばす。今までこんなことをされたことがなかったので、ハルカは驚くばかりだ。地面に手をついたままダイゴを見上げる。
「ジムリーダーって何だろうね。チャンピオンってなんだろうね。君は結局、中身を伴わない肩書きだけのエリートトレーナーだよ」
ダイゴの隣にはエアームドがいる。そしてダイゴは命じた。ハルカに向けて鋼の翼と。なぜそんな仕打ちを受けなければならないのか解らない。とっさにハルカは手で顔を庇った。
何があったのだろう。なぜこんなダイゴは怒っている。そして今まで怒ったことはあっても、こんなことされたことがなかった。それなのにどうして。
怖い。こんな言葉が通じないダイゴはダイゴじゃない。
「ハルカちゃん。顔をあげて」
穏やかなダイゴの声に、ハルカは顔をあげる。エアームドはボールに戻っていた。
「怖かったかい?」
「……はい」
「無駄に攻撃を受けたメタグロスはこうだった。痛かったと思うよ、急所だったし。もしボーマンダがそのままいけば、怖い思いをしなくて済んだだろう。君は無駄にメタグロスを痛めつけただけだ」
ダイゴはハルカを抱き起こす。彼女はようやく彼が怒ってる理由が解って来たようだ。試験合格の高揚感が抜けて、冷静になってきた。
「調整なんかは後でいくらでも何とかなる。でもジムリーダーやチャンピオンに求められているのは、違うことじゃないかな」
「ごめんなさい。私、昨日ダイゴさんに言われたのが悔しくて、絶対メタグロスで勝ってやろうって。だからボーマンダに戻ってもらったんです」
「その負けず嫌いがハルカちゃんのいいところだけど、ポケモンを傷付けるのだけは気をつけて。それと謝るのは僕じゃない。メタグロスに謝りなさい」
ハルカはボールを開いた。回復してすっかり元気になったメタグロスが出て来る。夜のライトに反射して眩しい。
「ごめんねメタグロス。無駄な攻撃されないようがんばるから、もう少しいてくれる?」
メタグロスは答えない。そのかわり、ハルカの足元にしっかりと寄り添った。主人と認めたトレーナーにする行動だ。いつでも命令が聞けるように待機するのだ。
「メタグロスの調整、確かに攻撃もありかな」
ダイゴは言う。今までメタグロスは防御力で防いできたから、ほとんどそれしか知らないのだ。
「僕も完全に固定観念にとらわれてたよ。そういう戦い方もある。僕も勉強になった」
「もし防御にしてたら、急所うけても瀕死にならなかったかもしれないし、防御もありですね」
ダイゴと目が合う。そして彼の胸に飛び込んだ。苦しいほど抱き返してくれる。
師匠といっても解らないことだってあるんだ。そしてそれについていくだけが弟子じゃないんだ。解らないことがあれば試していけばいいんだ。それで二人で進んでいけばいいんだ。
「エリートトレーナーおめでとう」
「ありがとう、ございます」
ジムリーダーなんて名前だけ。私の夢をけなした彼に訳の分からないまま惹かれて、反抗して。
世界が干上がるかもしれない時に、私を信じて最後まで応援してくれた。待っててくれたからがんばることができた。
チャンピオンとして戦った時、なんで名前だけなんて言うのか解らなかった。何手も先を読んでるような目だった。お金やコネで何とかなる実力じゃないのに、不思議だった。 こういうことなんだ。実力のある人ほど、自分がそれに相応しいか不安なんだ。
ダイゴさん大丈夫だよ。実力は私よりかなり上の、そして私の師匠は、チャンピオンなのだから。
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ポケモン世界の資格ってどーなってんのか気になる。
なんだかポケモンもったらポケモントレーナーみたいな感じではあるけど、その前に講習とかないのかね。普通ありそうな気がする。一日でも出ないと、ポケモンきっちり管理できないと思うし
しつけ教室なんてのもあると思う
エリートトレーナーは上級資格の一種、ベテラントレーナーは要経験という解釈でダイハルぎみに書いてみた。
バトル廃人みたいなところがあるので攻撃に調整するとか防御に調整するとか言ってる。解らない場合は雰囲気で読み取ってください。
【好きにしていいのよ】【他にもポケモン関係の資格試験あったりするのかしら】
正直言ってこの仕事は辛い。と俺は一人、埃っぽい部屋で思う。
絶え間ない権力争い、終わりの見えない研究作業、次から次へと舞い込む不確実なデータ、おべっか買い、妙な誤解、それを巡る果てしない論争…
よほどのバカか物好きでない限り、この職業は勧められないと俺はいつも思う。
じゃあもし、俺が俺に仕事を勧める機会があったとして、俺は自分にこの仕事を勧められたか、と聞かれると、答えは『ノー』になる。正直言って、何故今もここにいるのか俺自身が一番良くわかってない。
…惰性?それを言っちゃ何もかもおしまいだろう。
実の所、その「答え」は出ているのかもしれない。
ドアの向こうから誰かが走ってくる音がする。
その音はだんだんこちらに近づいてきて、バン、と部屋の扉が乱暴に開かれて止まった。
「カイドウ室長!こちらにいらっしゃったんですか!」
「あーなんだようるせいな…もうちょっと静かにこれないのかよ」
両手一杯に資料を抱え込んだ部下は、俺の机にカッカッと歩み寄ってきた。明らかに機嫌が悪いが、おおかた俺を捜して小一時間歩き回ってたんだろう。俺が部屋に居るなんて普段なら考えにくいことだろうから。
「静かに、ってこの状況でどう静かに開けろっていうんですか」
「言葉のアヤだ」
「アヤ過ぎます」堅物に定評のある部下は、器用に眼鏡を直した。それくらい器用ならドアだって開けられただろうにと思うが、心内にとどめておく。
「あーもうそこはどうでもいいよ…それより何だ本題は。お前だってヒマじゃないだろ?」
不機嫌そうに俺を見下ろしていた部下の顔が、ワンテンポおいてにやりと笑った。そして、抱えた紙の束からガサガサと一枚の紙を俺の前に差し出した。「今日はどうしても室長に見せたいものがありまして」
紙にはずらずらとした外国語の文章と、一枚の写真が載っていた。
「・・・・なんだこれは?」俺は答えを知りながらそれを聞く。
「今日付けで出された新個体の情報です。今度のはかなり面白そうですよ」
俺の口が、にやりと曲がったのが分かった。
「場所は?」
「ten.イッシュです」
ten.― tentative、つまり仮称。
「…要するに新しいポケモンって訳か」
「まだ学内では確定的な意見は出されていませんが、研究者間での非公式見解では十中八九そうだろうと」
「…よしわかった」
俺は勢いよく机から立ち上がった。
「カシワギ!」「はい!」「今ある資料はこれだけか?」俺は部下から資料を全てひったくる。ざっと目を通していくが、まだしっかりとした根拠は出揃っていないらしい。
「はい。資料科から取れるだけもってきました」
「もっかい行って探してこい。まだρ-DNA関連のデータがあるはずだ」
「それは僕も探しましたが、まだ出てないようで…」部下の視線が少し泳ぐ。そこに俺は紙の束を叩きつけた。
「そんならうちで出すしかないだろ?遺伝子解析室の割り当て見てこい。あとこの公開試料」さらに資料を部下に押し付ける。
「こいつの個体データも。この辺りだと…イカリ辺りが専門か?」俺は普段おぼろ気な研究員のリストを脳内で引っ張りだす。
「じゃあρ-DNAについては僕とイカリでまとめておきます」
そう言って部下は机から離れた。
「おう、そうしてくれ」俺は資料を漁りながら片手を上げた。部下のいう通り『取れるだけもってきた』らしく、信憑性の高いデータから関係ないジャンクまでよりどりみどり。これをより分けて裏付けするのだけでも一週はかかりそうだ、と何となく見当をつけてみる。
まぁ学内のレジギガスとまで揶揄される俺のカンだから、果たして当たっているのかどうかはわからないが。
「…あとカイドウさん」扉の方から、部下の声が聞こえた。
「なんだ?」俺は手を休めず答えた。
「…こちらのサポート人員も集めてきます。データの裏付けだけなら外の人間でも平気ですよね?信頼できるツテがあるので辿ってみます」
俺は首だけなんとか扉に向けた。
「…悪いな、カシワギ。いつもいつも」
部屋から出ようとしていた部下も、首だけでこちらを振り返った。
「だって室長が本気で動くのを見られるのは、こんなとき位ですから。こちらだって数少ないチャンスを無駄にはできませんよ」
では、失礼します。そう笑いながら、部下は扉の向こうに小走りで消えた。
「…ったく、よく出来た奴だよ」
また一人になった部屋で、俺は紙の山から一枚をつまみ上げた。
蛍光灯の安い光に透けて映るのは、見たこともないポケモンの姿。これから俺達が出会う、まだ見ぬ誰かの"仲間"の一匹だ。
「…へへっ」
俺はその輪郭を指でなぞる。
果たしてこいつは本当に新しいポケモンなのか、それを調べるのが俺達研究者の一番の仕事だと、この世界の片隅に居る俺は少なくともそう思っている。
こいつを、こいつの仲間たちを、生涯一緒に過ごせるパートナーに出会わせるための仕事。
星の数ほどの出会いのいくつかが俺の手から、汗から、涙から、生まれる。それだけで、その喜びだけでこの世界にいるだけの価値があるってもんだ。
…誇大妄想?それを言っちゃ何もかもおしまいだろう。
「………さて、と」
俺は紙を山の上に戻す。
これからこの部屋も忙しくなってくる。多分この手柄を狙って、全ての研究室が動きだすだろう。こういう競争主義な所が俺は一番嫌いだが、まぁこの世界に身を置く以上仕方ない。
案ずるより生むが易し。
「…さぁ旅立つとしますかね」
俺は紙の山をかき分けた。
****
「・・・・ん」
珍しく新聞を読んでいたら、珍しく友人の名前を見つけた。
『カント―学会カイドウ博士・新個体を発見か』『「ファーストコンタクター」またもや快挙』
地方紙にも関わらず四分の一の紙面を割かれたその記事には、友人が見つけたらしいポケモンの詳細と、友人の研究がすこし誇張された文体で書かれていた。
「ファーストコンタクター、か」
まぁ確かにポケモン図鑑はポケモンとの出会いのきっかけにはなるけれど、それにしても凄いあだ名だと少し笑ったとき、後ろからヨノワールが覗き込んできた。
「?」
「あぁ、これか?俺の昔の友達だよ。大学で一緒だったんだ」
窓の向こうには広い空。
今日もどこかで、あいつの作ったファーストコンタクトが生まれてるんだろう。
"Contacter" THE END!
[あとがきのようなもの]
初めましての方は初めまして。
また読んで下さった方、ありがとうございます。aotokiと申すものです。
何が相棒との出会い?こっちゃ先に会ってるんだよ!!というポケモン学者のお話。
作中の単語は全て創作です。スイマセン。
現代のポケモン図鑑はきっとたくさんの研究者さんが関わってできていくのかな〜とか思っています。
安全なポケモン・危険なポケモン・生態・能力・習性・・・・それが分かって初めて素敵な出会いが成り立つ。
縁の下は大事。そんな作者の妄想なのでした。
ちなみに最後の「俺」は、「日曜は(ry」のお父さん・・・・のつもりです。
コメントありがとうございます!
銀は初見の印象でチコリ―タを選んだクチなので後々苦労しました・・・・
あぁ、バクフーンえらんどきゃよかったなぁ・・・・(遠い目)
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