マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  •   [No.2445] 【ポケライフ】採用面接 投稿者:フミん   投稿日:2012/06/04(Mon) 23:27:32     117clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    今日も一日が始まる。元気を出していこうと、中年の男性は意気込んだ。


    彼の名前はマナブと言った。マナブは、駅から少し遠い住宅地に紛れたコンビニエンスストアの店長だった。雇われ店長ではない、彼は業界でトップクラスのコンビニチェーン店から看板を借りて、自分で店を切り盛りする有能な男だった。妻と子どもが一人ずついて、仕事は順調、肉体労働としては大変だが人並みより少し多く給料を稼ぎ、アルバイトの若者からも信頼されていて人望もある。いつも明るく客に接し、時々現れる泥棒には持ち合わせの正義感と体力で、正面から立ち向かうような熱い気持ちを持ち合わせている(と言っても、刃物や銃を持つ犯人に突っ込んでいくような、無鉄砲さはない)。平凡といえばそれまでだが、当たり前の生活を営むことができる、幸せな男だった。

    そんな彼は、いつもと違いあまり落ち着かない。そわそわしながら商品を棚に並べ、店の周りの掃除をする時も周辺に視線を走らせている。その姿は、悪いことをして犯罪から逃れている指名手配犯と言われても仕方がない程だった。

    どうしてそんな様子なのか。何故なら、今日はアルバイトの面接に来るポケモンがいるからだ。

    彼の店では、半分以上の従業員をアルバイトに任せている。その従業員達は学生だったり、仕事をリストラされたマナブと同じくらいの歳の中年だったり、子育てが一段落した主婦だったり、様々な人がいる。しかし、彼の店ではポケモンを雇ったことはなかった。
    ポケモンは、人間と同じ理性を持ち、感情を言葉で伝えることができる生き物である。容姿は人間と違いポケモンによって大きく異なるが、中身は全く人間と変わりがない。一時期人とポケモンを公平に扱うべきかと審議されることもあったが、それは昔の話だった。今では、人もポケモンも手を取り合って生きている。

    こうなると、綺麗事だけでは世の中は進んでいかない。人が働いて当たり前ならば、ポケモンも同じである。
    近年、ポケモンが働くというのは不思議ではなくなった。昔からポケモンが人の補助をするのはよくあったことだが、人間と同等の待遇で働けるようになったのは、最近になってからだった。働けば給料を支払われ、怪我をすれば保険も下りる。有給休暇も利用できるし、休日も確保されている。この体制が安定してきたのも、ここ数年の出来事だった。今では不当な理由でポケモンを雇わないと、その職場は厳重に注意されてしまうまで法律が整備されている。

    もちろんマナブは、ポケモンを雇うことを避けてきた訳ではなかった。場所も都心部からは少し離れているせいか、働きたいと言ってくる人があまり多くないだけだった。


    しかし、今日は初めてポケモンの求職者が来る。マナブは、そのポケモン達を待っているのだ。
    偶然にも、同じ時期に働きたいと申し出たポケモンは二人いた。どちらも電話で申込んできて、容姿は分からない。一体どんなポケモンが来るのだろう。マナブは自分が指定した時間まで、不安定な気持ちのまま仕事をすることになった。
    しかし、仕事で手は抜けない。ここは自分の店であり、売上が落ちれば生活に直結する。彼は客が押し寄せる時間帯になると今日来るポケモン達のことはすっかり忘れてしまい、自分のすべきことに打ち込んだ。この店は周辺の住民だけでなく近くに高速道路があり、そこから来る客が立ち寄ることも多い。だからこそ、駅から離れた場所でも店が赤字にならずに済んでいるのだった。

    やがて客足も緩まり、マナブが指定した時間五分前になった。そろそろ来る筈だなと彼が思っていると、店の入り口に大きなポケモンが現れた。

    黄色に近い肌に目立つ大きな腹部、そのポケモンが歩くごとに地面が揺れ、店の中にいた客は誰もが視線を当てた。本人は慣れているのかあまり気にしていないようだった。
    見た目とは裏腹の可愛らしい顔。店の中に入り、マナブを見下ろして言う。


    「すいません、先日アルバイトの件で電話をした者ですが」

    マナブは、悠々と立つこのポケモンが今日の訪問者だと理解するのに数秒を費やした。よく見ればそのポケモン――――カイリューの手には、今日面接に来る際に準備しておいてと指定した履歴書らしき紙を握り締めている。側にいた学生のアルバイトも口を開けてカイリューを見上げている。

    「あ、はい、お待ちしていました。早速面接を行いたいのですが―――申し訳ありませんが、一度外に出て待っていて下さい。直ぐに向かいます」

    「分かりました」

    穏やかな表情でカイリューは返し、また大きな足跡を立てて店を出て行った。
    マナブはまだ口をあんぐりと開けているアルバイトに、暫く店を頼むと言い外へ出た。マナブの存在に気づいたカイリューが頭を下げる。その素振りから、礼儀正しくてモラルがあるのは明白だった。
    店の裏に行こうと話しかけ、カイリューは彼に従った。その際に履歴書を預かり、マナブは軽く目を通す。名前はアイコと言い、雌であることが分かった。必要事項に記入漏れはないし、志望動機も隙間なく埋めてある。字も読みやすく、写真も真っ直ぐに貼ってある。内容はともかく、完璧な履歴書だった。

    マナブは椅子が用意出来ないことをカイリューにお詫びして、本題に入る。


    「今日は、わざわざ来てくれてありがとうございます」

    「こちらこそ、驚かせてしまい申し訳ありません」

    「気にしていませんよ。だから、あなたも気にしないでください」

    再びカイリューは頭を下げてくる。履歴書を更に詳しく読んでみる。住居はここからそう離れてはいない、学歴はないが(ポケモンが学校に通い学ぶことは、まだまだ珍しい)犯罪歴もない。おかしな部分は見当たらない。第一条件は良し。

    「家からここまで、どれくらいかかりますか?」

    「は、はい。飛んで20分くらいです」

    緊張しているのがこちらにも伝わってくる。何かあれば、代理で仕事を頼める距離ではある。

    「失礼ですが、あなたの身長はいくつでしょうか」

    「はい、2メートル50センチです、私他のカイリューより少し大きくて」

    声が小さくなり彼女の自身が萎んでいくのが分かる。確か、コンビニは床から天井まで大体3メートルあるかないかの高さだった筈だ。

    「もし店で働くことになった場合、何曜日なら入れますか?」

    「夜は不可能ですが、朝から夕方ならいつでも働きます」

    雇う側としては都合が良い。少し会話を重ねた感じ、性格も温厚そうだ。仕事を一から教えていけば優秀な店員になるだろう。長年様々な人を雇い直接見てきたマナブは、彼女が自分の店で働いても問題ないと判断することができた。根拠は、店を運営してきた勘だった。経験者の勘は恐ろしい程よく当たる。
    しかし、彼は残念な結果を伝えなくてはならなかった。


    「申し訳ありませんが、あなたを雇うことはできません」

    当然、アイコさんは悲しがっていた。昔マナブもアルバイトの面接で落ちたことがあるので、彼女の苦しみは自分のことのようによく分かる。

    「雇いたい気持ちは山々なのですが、何せうちの店はそんなに広くないんです。アイコさんがしっかりしたポケモンなのは履歴書と態度で理解できます。しかし店で働くとなると、狭い店内を動き回らないといけないし、細かい作業も多い。間違って商品にぶつかってしまうと大変だし、働く人が休む休憩所にも入れないと思います。ですので、今回は―――」

    「分かり、ました。わざわざ、時間を割いて頂いてありがとうございます」

    「こちらこそ、求人を見て足を運んでくれてありがとうございました。履歴書はお返しします」

    寂しそうに去っていく後ろ姿は、悲壮感に満ち溢れている。ナマブは彼女の姿が見えなくなるまで見送ったが、途中であんなに丁寧に書いた履歴書をくしゃくしゃに握り潰しているのを、彼は見逃すことはなかった。
    こちらとしても彼女を雇いたかった。しかしあんなに大きな体では仕事が限られてくる。それで一番苦しむのは本人だろう。今回は仕方なかったとしか言えない。マナブは彼女が仕事を見つけられるように、ささやかに祈っていた。

    今度から、電話越しにポケモンの種族を聞くのも検討しようと考えながら仕事を再開する。次に来るポケモンがどんなポケモンなのか心配になってくる。
    店に戻りいつも通りに動いていると、再びポケモンが入ってくる。この店はポケモンも利用するので何も不思議なことではないのだが、先程のカイリューの様に履歴書らしき紙を持ち、紙とマナブへ交互に視線を当てているので、何となくあのポケモンかなと思ったら、向こうの方から話しかけてきた。


    「あの、今日面接を頼んでいたポケモンですけど」

    マナブは、そのポケモンの声に聞き覚えがあった。電話で聞いた声、今日来る予定の二人目のポケモンで間違いないようだった。
    水色の肌、短い手足に小さな目と大きな口を持ち、頬を上げ笑う顔はどこか穏やかだ。種族はヌオー。身長はマナブより小さく小学生を思わせる。
    もちろん彼は冷静に対応する。少なくとも、先程のカイリューみたいな体格の問題は少ないだろう。少し安心する。

    「では奥に行きましょうか」

    「はい」

    ヌオーから履歴書を受け取り店の奥へと案内する。リキというらしい。名前からして、雄のポケモンということが分かる。
    マナブはリキを椅子へ座るように案内する。リキは指定された場所へゆっくりと座る。

    「今日は面接に来て頂いてありがとうございます」

    「いえ、こちらこそお手数かけます」

    頭を下げる仕草も丁寧だ。腰が低そうだ。
    先程のカイリューにした質問と同じ内容を尋ねていく。住んでいる場所は本当に近い、ここから歩いて5分もかからない場所に住んでいるらしい。働ける時間帯はカイリューと同じ、夜だけは勘弁して欲しいとのこと。夜には既に他の従業員が働いてくれることになっているので問題ない。適度に世間話を持ちかけてみる。多少会話に間があるものの、ちゃんと目を見て会話をしてくるし、人間とは違う笑顔も印象が良い。マナブは、このポケモンを雇うことにした。彼の店で、初めてのポケモンの従業員になる。
    その旨を伝えるとリキは喜んでいた。マナブも先程みたいに、心苦しいまま断ることをしないで済んだので安心していた。

    マナブは彼にどのくらいの頻度で働くのか、働く上でのルールや最低限のマナー等、雇う上で必要なことをその場で説明していく。リキは真剣に話を聞いてくれるし、はっきりと返事を返してくれる。良い従業員になりそうだと、ナマブは彼に期待していた。

    しかし、その期待は空回りをしてしまった。
    彼は確かによく働き、物覚えが良くて仕事の内容も直ぐに覚えてくれる。同じ従業員仲間とも打ち解けていて、客に対しても粗末な態度を取らない。いわゆる当たりだった。
    しかし彼には弱点があった。何においても動作が遅いのだ。
    元々ヌオーというのは、川底等で口を開け、餌が来るのをただひらすら待つというポケモンで、活発的に動くことはない。そのためか、リキは何の作業をしても遅い。レジで会計を済ませている時も、ゆっくりとお釣りを返すので慌てている客に怒られることも珍しくはなかった。商品を棚に並べる行為も、他の人間の従業員よりも終えるのが遅い。正確に仕事をこなしてくれるのは有難いのだが、人間の従業員よりも仕事量が圧倒的に少ない。最初は寛大にリキを迎え入れていたマナブも、人間よりも遥かに効率が悪い彼に、次第に不信感を積もらせていった。他の従業員も同じだったようで、何故彼と同じ給料なのかとぼやく者まで現れてしまった。

    リキがいくらのんびりしているからと言っても、職場の険悪な雰囲気に気づかない程鈍感ではなかった。次第に彼は周囲から孤立していき、笑顔を見せることは減っていった。そして一ヶ月もしないうちに、マナブへ働くことを辞めたいと告げてきた。頭でヌオーという種族のハンデだと分かっていても、仕事量の少なさを許容することは、マナブにはできなかった。
     





    リキが辞めた翌日、マナブは休憩所でため息をついていた。普段活発な彼が考えていることは、ポケモンを雇うというのはとても難しいということだった。
    せっかくやる気や素質があっても体格のせいで働かせることができない。種族柄のハンデで、こちらが求めている能力を引き出して貰えない。人間以外を雇うのに、こんな問題があるなんて最初は思いもしなかった。ポケモンが働くのが一般化しつつある今、まだまだ人間を優先して雇う理由が、マナブには何となく分かる気がした。人間だって、それぞれに合った職種を選ぶ。ポケモンは働きたいという願望があっても、体や種族が職種に合わなければそれだけで門前払いだ。なんて大変な種族なのだろう。

    コンビニで働けるポケモンだって多い。それなのに、明らかに無理なポケモンばかり集まってしまうのが歯痒い。
    そんなことを考えていると、近くにおいてある受話器が鳴る。マナブは気持ちを切り替えて電話に出る。


    「もしもし、○○コンビニエンスストアです」

    「お忙しい中すいません。そちらで、アルバイトを募集していると聞いて電話をしたのですが」

    女の声。声に張りがあり、耳を受話器から離しても透明感があるその声はよく響く。狙っているのか意識しているのか、無駄に大きな声量からして、中年の女ではないかとナマブは思った。

    「はい、募集しております」

    「私の息子なのですが、今雇うことはできますか? 平日は大体入れるのですが」

    息子?

    「平日は、早朝から夕方の間で募集しております。大体と言いましたが、何曜日なら入れますか?」

    「そちらの都合に合わせます。何曜日に入れば宜しいですか?」

    「――――少々お待ちください」

    細かいことは置いておいて、シフト表を確認する。今確実に必要なのは火曜日から金曜日。そう伝えると、電話越しの中年の女は言う。

    「もう少しシフトを多くできませんか?」

    「そう言われましても、現時点では火曜日から金曜日に入って欲しいんですよ。その後仕事量を増やせるかどうかは、他の従業員もいるので、これから先にならないと正確には分かりませんね」

    「お願いします。どうしても、もっと働きたいそうなんです。後一日でも増やせませんか?」

    マナブは電話の相手に聞こえないように小さくため息をついた。働きたい本人が電話で話さないだけでもおかしいのに(恐らく電話の相手はその息子の母親だろう)、こちらが雇う前提で話を進めていることが図々しいとは思わないのだろうか。それとも向こうは、これが当たり前だと思っているのだろうか。

    「申し訳ありませんが、平日は火曜日から金曜日の朝から夕方、それ以外は募集していません。店の入り口にもそのように書いてあるので」

    「じゃあ良いです」

    女性ははっきり言い残すと、電話が音を立てて切れてしまった。半ば呆れつつも、受話器を戻して体をほぐす。こう言った意味不明な要求には頭を悩まされたものだが、慣れてしまえばどうってことはない。


    全く、うちの店で人間は働きやすいのに、中身がどうしようもないと雇いようがない。いっそ、止む終えない理由で雇えなかったポケモン達と中身を取り替えてしまえば良いのに。





    ――――――――――

    お久しぶりです。企画を開催していると知ったのでお話を置かせて貰います。
    ポケモンも人間と同じで、働く場所を探すのには苦労しているんじゃないかなあと悶々と考えていました。
    因みに有給云々の話を作中で書きましたが、アルバイトでも法律上有給休暇は取れるんですよ。知っていましたか?

    フミん


    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2444] コッペパーンチ! 投稿者:サトチ   投稿日:2012/06/04(Mon) 20:33:47     105clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    コッペパーンチ! (画像サイズ: 328×279 14kB)

    なんかひさびさのぞいてみたらライチュウらぶな方がいらしたので、昔描いたイラストを投稿〜。
    食パンにカレーパンでコッペパンがないけど、ライチュのおててで1つよろしくです!


      [No.2443] 蛇足 投稿者:白色野菜   投稿日:2012/06/01(Fri) 21:08:44     100clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    数年前に有名なゲーム会社が数十年前のゲームのシリーズの最新作を最新技術を結束して出した。

    ゲームのシリーズの名前は「ポケットモンスター」

    使われた技術の名前は「AR」と「VR」

    ARは拡張現実。

    VRは仮想空間。

    ARでポケモンは何時でも何処でも人の側にいられるようになった。
    勿論マナーの問題はあるが、食事を共にすることも一緒に授業に出席することすら可能になった。


    VRによって、人はポケモンの世界へと行けるようになった。
    さすがに五感は完全には再現されていないが処理落ちもなくかなり快適だ。
    トレーナーとして、旅をしながらバトルを磨くもよし、ブリーダーとして美しさを磨くもよし脇道をそれて育て屋さえ持てる自由度は高くそれなりに評価されているらしい。


    ここはそんなゲームが流行っている世界。
    ここは少し遠い未来の世界。









    という話を、書きたかったけれど文章能力が足りなかったです。
    【書いてもいいのよ】【焼いてもいいのよ】
    【批評歓迎】


      [No.2442] 休日 投稿者:白色野菜   投稿日:2012/06/01(Fri) 20:56:55     87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「………ぴーかちゅぅ?」
    目蓋を抉じ開けると黄色いネズミが、私の顔を覗きこんでいた。
    寝不足の頭をフル回転させて、昨日の夜の事を思い出す…。


    「そうか、交換して………そのまま寝落ちしたのか。」
    てしてしと人のでこを叩いてくる黄色いネズミを無視しつつ、見覚えのある天井を見上げる。
    茶色い人の形にも見えなくもない染みがそっぽをむいていた。

    何も変わらない
    何時も通りの朝だ。

    「よし!」
    気合いをいれて上半身を跳ねあげる。
    黄色い毛玉がころりと転がったが気にしない。

    時計は気にしない、今日の予定は無くなった。
    外が明るいので朝か昼だ。
    とりあえず、ご飯だ。

    「ぴーかーー!」
    「……黄色もお腹減ったか?」
    「ぴか!」
    「仕方ないなぁ………てか、お前の名前も決めなきゃな。」
    名前を決めるにしても、種族すらわからない。
    いや、見たことはある。
    たしか、赤い悪魔が使ってた……思い出せない。

    寝起き特有の空回りする思考を楽しみながら、フライパンを火にかける。
    加熱している間に棚から瓶詰めのポロックを一粒取り出す。

    「ほら、ご飯。」
    「…………ちゃぁ。」
    「ん?辛いのは嫌いか…………あとは酸っぱいのだね。」
    「ぴか!」
    「えー、酸っぱいのか。ストックほとんどないから後で作りにいかな駄目かな。」
    瓶の底の方に辛うじてあったポロックを黄色に投げ渡す。

    投げた結果は見ずに自分の朝食に取りかかる。
    若干、加熱しすぎたフライパンに油をしき卵を割り入れ蓋をする。
    火力を弱火にして、待ってる間にトーストにベーコンを乗せて一枚焼いておく。

    布団をたたんで折り畳み式のテーブルを出せばいい案配に朝食ができた。

    「いただきます。」
    「ぴーかーぴっ!」
    重ねられた声に黄色を見るとポロックを両手に持ってぺこりと頭を下げていた。
    それから、美味しそうにポロックをかじりだす。
    挨拶なんて妙な物を仕込んでるんだなぁ等と思いつつ、目玉焼きに醤油を垂らす。

    空間モニターには今日の天気が写し出されていた。
    生憎の雨らしいが彼方には関係ないだろう。
    たまにはポロックを作る以外にぶらついてみるのもいいかもしれない。
    卵の黄身を潰し私はぼんやりと考える。

    あぁ、そうだ。
    姓名判断師も探さないとな…。












    私が交換したポケモンの名前が変えられないと言うシステムを思い出すのは大分先の話である。


      [No.2441] うおおお 投稿者:teko   投稿日:2012/05/28(Mon) 23:55:33     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


     ふをおおおおおおおおおおお
     うおおおおおおおおおおおおおおお!!

     ということ、実はかなり取り乱したtekoです。そしてお久しぶりなのですw
     くいさん、あんなアホのためにこんなすんばらしい小説書いてくださって……うれしいです。僕としても!
     そして、このとき寝落ちしてすんませんした マジすんません

     自分でもすっかり忘れかけていたよーな話が、ここまでいいものになるとは感激です!
     あのアホ、こんなにかっこよかったですっけ?もっとアホじゃなかったですっけ?

     描写もいつものことながら、今回は動きいきいきですね!臨場感ぱないです
     格闘タイプのバトルって感じで本当に好きです!それも、本当にバトル技をベースとしてやるとなると・・・…ゲームに疎い自分には相当できない芸当ですが、だからこそポケモンらしくてスキです。アニメも見習ってよまったく

     姉さんの美しさが欲しいです。きっとしなやかでもふもふの毛ざわりなんでしょううう
     チビ君がどんな風に成長していくのか、先見たいんで宜しくお願いします
     でも、あんなのは見習わないほうがいいぞ!

     酒乱暴走というところにとても、なぜかわからないけど親近感を感じる!
     本当、あんなのをこんなにかっこよく書いてくれて本当うれしいです。こいつで何か小説書きたくなったじゃないですかどーしてくれんですかくいさんw

     また、ちゃっとでお会いしたさいに感想を吐かせていただこうと思います。
     筆舌に尽くしがたい!

     では、続きを期待しますw
     乱文失礼いたしやした!


      [No.2440] コメントありがとうございます 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/05/28(Mon) 21:22:26     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    > 私も「ポケライフ」用に図書館ネタを考えてたのですが・・・・穂風さんの方が数百枚上手です。参りましたm(_ _)m
    > ポケモンの特性をこうからめようとは一切考えたことがなかったので、これからの参考にさせていただきます。

     数百枚上手だなんて・・・!
     私もaotokiさんの「ポケモンとのほんわかした日常」の書き方を見習いたいです。
     それでも、何かの参考になったのなら嬉しいです。


    > 確かにエーフィは、本読んでても違和感が全くない気がします。
    > 現実でもポケモンでも、犬系は主人の読んでる本を眺めてそうですが、猫系は自分で読んでそうですし。やっぱり図書館には猫ですね。

     ガーディとかポチエナの犬系なら「遊ぼ遊ぼ!」って邪魔しそうですが、エーフィとかチョロネコの猫系なら「あたしはあたしで好きにやってるから構わないで」って言いつつも一緒にすぐ横で本を読んでそうです
     確かに図書館にいるなら猫ですね
     それと本目当てじゃなくて、エーフィ目当てで来てしまう人もいたりしそうです。穂風もそのうちの一人になりそうです(笑)

     それでは、コメントありがとうございました!


      [No.2439] 本には犬より猫が似合う 投稿者:aotoki   投稿日:2012/05/27(Sun) 15:49:51     89clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    読ませていただきました。この図書館、すごい行きたいです。リアルに。
    私も「ポケライフ」用に図書館ネタを考えてたのですが・・・・穂風さんの方が数百枚上手です。参りましたm(_ _)m
    ポケモンの特性をこうからめようとは一切考えたことがなかったので、これからの参考にさせていただきます。

    確かにエーフィは、本読んでても違和感が全くない気がします。
    現実でもポケモンでも、犬系は主人の読んでる本を眺めてそうですが、猫系は自分で読んでそうですし。やっぱり図書館には猫ですね。
    あと個人的には記者さんが可愛いな、と思いました。


      [No.2438] 【ポケライフ】大図書館の司書 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/05/26(Sat) 21:51:44     137clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     とある休日。私は巷で噂の大図書館を訪れていた。
     なんでも、今まで来館者がほとんどいなかったのが、近頃急に多くの人が来るようになったらしい。
     そのわけを知るべく、雑誌記者として館長に話を伺うことにした。

    「どうぞ、おかけになってください」
     通された部屋は、二階にある小会議室だった。ソファが八つとテーブルが一台だけというシンプルな場所だ。
     ゆったりとしたスーツに身を包んだ女性――館長は私を中に入れると、ドアを半開きにしたままで私の向かいに座った。館長の隣ではエーフィが大人しく座っている。
    「さて、単刀直入に訊きますが、なぜ多くの人が訪れるようになったんですか?」
    「やはりその質問ですね。では逆にお聞きしますが、記者さん。この図書館を訪れた感想はどうですか?」
    「えっと、とても広くて多くの蔵書があり、さすが地方一の図書館だと思いました。ですが、ここから目当ての本を探すのは一苦労しそうですね」
    「そうでしょう。一生費やしても読めないほどの本の量がここの自慢ですから。そのおかげで、『探すのが面倒だ』なんて言われて、全然人が来てくれなかったんです」
    「それは今でも変わらないんじゃないですか?」
    「いえ、違うんです。――その秘密がこの子でして」
     そう言うと、館長はあくびをしていたエーフィを抱え、テーブルの上――私の正面に乗せた。
    「話すより実際に体験した方が早いでしょう。何か悩み事はないですか? 早起きできるようになりたいとか、手軽な運動法を知りたいとか」
    「悩み事ですか。そういえば、何か楽器ができたら、と最近思ってるんです」
    「わかりました。それじゃフィフィ、いつものお願いね」
     フィフィと呼ばれたエーフィは面倒そうにもう一度あくびをすると、一歩私の方へ近づいた。
     薄紫の瞳が淡く光り、じっと私を見つめる。「ねんりき」だろうか。
    「何が始まるんですか?」
    「もうすぐわかりますよ」
    「はあ……」
     よくわからないまま見つめられるのは落ち着かないが、こらえてエーフィの両目を見つめ返す。
     そうして、不思議なにらめっこがしばらく続いた後、エーフィは扉の方へ体の向きを変えた。まだ瞳は光っている。
    「そろそろですね」
     館長がそういったのとほぼ同時に、半開きにされていたドアから二冊の本が現れた。正確に言うと宙に浮いてやってきた。
    「この本はフィフィが今、本棚から『ねんりき』で持ってきたものです。どうぞ手に取ってみてください」
     館長に言われた通り、二冊のうち少女とオカリナの写真が表紙の本を手に取ってみる。
     タイトルには『フルーラの簡単オカリナ入門講座』とあった。
     数ページめくってみると、オカリナの持ち方から音の出し方、簡単な練習法などがイラスト付きでわかりやすく書かれていた。
    「どうですか? 今のあなたにピッタリな本でしょう」
    「これは……驚きました。ちょうどオカリナに興味があったんです。しかし、私はオカリナとは一言も口にしてませんよ」
    「それがこの図書館が人気の理由なんです」
    「というと?」
    「エーフィの特性はご存知ですか?」
    「はい。『シンクロ』――それと最近『マジックミラー』のエーフィも確認された、ですよね」
    「その中でこの子は前者の特性を持ってるの。『シンクロ』を使って相手の気持ちになり、その人の目線からぴったりな本を選ぶ。これがフィフィの図書館でやってることなんですよ」
    「『シンクロ』にそんな使い方もあるんですか。――けどそれは、エーフィが図書館のどこに何の本があるか把握していないとできないのでは?」
    「フィフィは本が大好きで、毎日本を読んでるんですよ。繰り返し読むうちに本の位置を覚えてしまったんでしょうね」
    「人間の文字で書いた本をですか?」
    「ええ。最初は絵本を楽しそうに読んでいたんですけど、そこから字を覚えていったのか、今では『多角的視点創世論』なんていう難しい本まで読んでいて」
    「聞いただけで頭が痛くなりそうな題名ですね」
    「ええ、前までは読み聞かせをしてあげられたんですけど」
    「さすがに、そんな本は読み聞かせできませんね」
    「フィフィがシンクロを使うと体力を消耗するので、一日1〜2時間ぐらいしか仕事はさせてないんですが、睡眠・食事以外はずっと本を開いているんです」
    「本当に本が好きなんですね。私も帰ったらこの本を読んでみることにします。返却期限はいつですか?」
    「二週間です。きちんと返しに来てくださいね。本に触れる人が多くなったのは嬉しいことなのですが、延滞や返しに来ない人も増えているので」
    「わかりました。記事でも借りた本は返すように伝えておきたいと思います。それでは、本日は取材に協力いただきありがとうございました。フィフィもありがとうな」
     フィフィの顎の下をなでると、彼女は気持ちよさそうに喉を鳴らした。
    「では、受付で貸し出し手続きをしましょう。私についてきてください」
    「お願いします」
    「そういえば、こっちのもう一冊は?」
    「あら、フィフィったら。記者さんが独身だと知って気を利かせてくれたみたいですよ」
    「はは……。そっちの方も頑張らないと、ですね」
    「応援してますよ。そうそう、オカリナの本の作者さん知ってますか? オレンジ諸島では結構有名なオカリナ奏者で――」

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    こんばんは、穂風です
    「特性「シンクロ」をうまく使って、図書館のお手伝いをしてるエーフィ」を書いてみました
    エーフィがおすすめの本を選んでくれたらどんな本でも読んでしまいそうです
    毎日エーフィに会いに行って、おやつあげようとしたり、なでなでしたりしようとして館長さんに怒られる人がたくさん出そうですね


      [No.2437] どうも、数年ぶりのマサポケです 投稿者:天城のるあ   《URL》   投稿日:2012/05/26(Sat) 18:08:53     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    数年ぶりにマサポケに投稿しました、天城のるあです。
    はじめましての方は初めまして、久しぶりの方は久しぶりです。

    しばらく二次創作から離れてましたが、今年からレジギガスさんのスピードでスロースタートしました。


    久々に書いた結果がこの作品だよ!
    それにイシツブテを投げられる覚悟は出来てます。

    ちなみに作中の「僕」と名乗るポケモンは、伝説系や幻系以外で各々の想像にお任せしたいと思い、あえてはっきりさせないことにしました。

    今回はポケストのお題とは異なるが、重圧と責任、すれ違いと迷走とか混ぜたものになりました。
    ということで次はギャグでも書こうかと思ってます。


    天城のるあ


      [No.2436] ウィナーホーリクの狂宴 投稿者:天城のるあ   《URL》   投稿日:2012/05/26(Sat) 17:59:49     98clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    僕の主人の名前はルセア、ポケモンリーグのチャンピオンだ。
    全てのポケモントレーナーの高みに上り詰め、僕も共にその栄光と祝福を受けた。
    殿堂入りしたあの日から2年の時間が過ぎた今でも、主人はスタジアムに立ち続けた。

    「チャンピオンのルセア。これで68連勝です!」
    今日もスタジアムの実況が、僕の主人の勝利を伝えている。
    しかし、今は僕達がスタジアムで戦うことは無くなっていた。
    今の彼女がスタメンに使うポケモンは、殿堂入りした日とは全く違うからだ。

    海の神と呼ばれるルギア、超古代ポケモンのカイオーガ、夢幻のラティオス、
    天空の神と言われるレックウザ、北風の化身スイクン、時渡りポケモンのセレビィ、

    そう、全て伝説のポケモンとか幻のポケモンが、今の主人の戦力だ。
    今の僕達は控え席に座る、単なる傍観者でしかなかった。

    「連勝記録を重ね続けるルセアさんが、今や観客に向けて手を振っています」
    多くの観客の前で手を振る主人は、表向きでは喜びの表情を見せるが、
    僕は心の中ではそのような気持ちがあるように見えなかった。





    試合が終わった後、僕はチャンピオンに与えられる豪華な控え室で、同じくベンチに座って観戦していた仲間達に、今の主人に対する不満を告げる。

    「今の主人は楽しそうに見えない。それに奴らも調子に乗っているよ」
    「でも俺達がここまで来られたのは、ルセアのお陰だぜ」
    「野生ポケモンでしかなかった私達を、ここまで強くしてくれたのはルセアさんだもん」
    僕の不満を聞いた、最初の一匹であるリザードン先輩と、後輩のサーナイトは主人に対する不満は無かった。
    主人が勝ち続けるのなら、傍観者でもいいという立場に甘んじている。

    「僕も主人に感謝しているのだが、今の主人には昔の主人にあったものが見えない」
    「それはお前の気のせいだろう」
    「ひょっとして、奴らに対する嫉妬?それもとスタメンの椅子取られて悔しいのか?」
    初めて殿堂入りした仲間、ドサイドンやアブソルも、僕の不満を違う意味で取っている。
    もちろん、僕は今のスタメンの奴らばかり出るという不満もあるが、それが本当にいいのか、今の主人が道を間違えていないのかというのが僕の不満だ。

    「もういい。お前達より奴らに話をした方が早い」
    「ちょっと待ってよ」
    僕はベンチ入りした仲間達に話しても無駄だと思って、この場を立ち去る。
    そんな僕の姿を見たピカチュウが、後ろを追ってくる。





    「お前達が来てから主人が変わったんだ!」
    「お、落ち着いて!」
    僕は感情をむき出しにして、主人が変わった原因が奴らにあるとして強い口調で迫る。
    ピカチュウは冷静さを失った僕を必死に止めるが、怒りに任せて静止を振り切る。

    「俺達はルセア様に忠誠を誓っている」
    「ルセア様を思う気持ちは我々も同じ。我々が信じることが出来た唯一の人間だ」
    「だったら、お前達が本当に主人のことを思って戦っているのか?」
    僕は主人に忠誠心を示すカイオーガとスイクンに、その言葉の意味に対して苛立つ。
    奴らの忠誠心は伝説のポケモンである故の傲慢さが見えてくる。
    彼らの言葉が信頼の意味があるとしても、今の僕には聴く耳は一切持たない。

    「我々が居なければ、今でも勝ち残ることは無かった」
    「ひょっとして、スタメンを外されたことでの不満ですか?
    僕達より実力が無いポケモンの嫉妬が一番見苦しいことですよ」
    レックウサの言うことも事実だし、悪意の無い子供のように振舞うルギアの言葉も一理ある。僕は奴らと比べても実力も能力も差がある。
    僕の感情や不満は嫉妬だけではないことは、奴らには全く伝わっていない。

    「お前達に僕の何が分かる!?お前達新参者が本当に主人を理解しているか!?」
    「新参も古参も関係ない!それにお前が主人の心境を理解していないだけだろう!」
    「仲間同士、ケンカはやめようよ。落ち着いて」
    もう奴らの話を冷静に聴く耳を持たない僕は、ラティオスを強く睨みつける。
    仲間割れの危機を避けるため、ピカチュウはお互いに宥めるのだが、この状況をとめることは出来ない。







    「仲間同士でやめなさい!」
    一触即発の危機に陥ったその時、主人が大声で僕達を一斉に制止させる。
    彼女の声で、ハイパーボールにトレーナー登録されているポケモンの条件反射に従い、
    人知を超える伝説のポケモンであっても一気に大人しくなる。

    「一体何が原因でこうなったの?」
    控え室にいるポケモンの誰もが、僕に原因があるとして一斉に指を刺す。
    この騒ぎの原因が僕なのは確かだが、こんな事態にするつもりは無かった。

    「あなたが何に不満があってこういうことをしたの?」
    僕は主人に対する不満を声のトーンを変えつつ、身振り手振りで必死に伝える。
    主人に言葉が通じるなら、僕もジェスチャーという回りくどい遣り方はしない。
    人間とポケモンの間で言葉が通じないのは不便だ。
    それに、気持ちというものは伝わりそうで、すれ違う厄介なものだから、共通言語があるというのは偉大なことだと思う。



    僕は昔のように旅をしていた頃が一番楽しかった。
    常に主人と共に苦楽を共にして、競争とか勝利数とか関係なく、ゆっくり高みを目指す。
    ポケモンリーグも世界一のポケモントレーナーになるという通過点の一つで、
    主人が世界一のポケモントレーナーになれるなら、僕達は全力に走ることが出来た。

    でも、今の主人はポケモンリーグチャンピオンとして、戦っているだけだ。
    旅の中で仲間になった伝説のポケモン達も、最初は同じ志を持つ仲間だったが、
    今はチャンピオンとして勝ち続けるために必要不可欠な力となった。

    強いポケモンと弱いポケモンがいるのは、弱肉強食の世界である限りは必然的。
    旅をしていた頃の主人は、そんな道理は一切関係なく僕達と接してきた。
    今の主人を見ていると、ポケモンリーグチャンピオンであり続けることが目標となり、
    強いポケモンと弱いポケモンの関係でしか、僕達を見ていないのかと疑うようになった。

    僕は表現できるあらゆる手段で、今の主人に対する不満や疑問を投げ続ける。
    これで通じるのなら、僕の気持ちを分かってくれるはず。
    僕は主人を信じてメッセージを放ち続ける。



    「あなたが言いたいことは分かった。私は目的のために今を頑張っているの。
    でも、私はみんなのことを平等に愛しているつもりよ。
    私は旅していた頃と同じ気持ちを持って、チャンピオンであり続けたい。
    私は・・・目標のために強いポケモンの強いトレーナーとして強くならなきゃいけない」
    僕は主人の放つ言葉に強い絶望感を抱いた。
    主人は表面上では楽しくポケモンバトルというスポーツをしても、内面ではチャンピオンとして勝ち続ける義務と重圧が、戦うことを強いられている。

    「私は勝ち続けなければいけないの!
    勝たなければみんなに認められない。負けたら何もかも失うのよ!
    だから私はチャンピオンとして、戦い続けるの!それが分からないの!?」
    そんなこと僕は分かりたくも無いし、理解したくも無い。
    それでも主人は負けること、戦いをやめることが怖いことだけは分かった。
    勝利の美酒という快楽と、それを享受できなくなる日を恐れるジレンマ、敗北が喪失と同じ意味になって、ウィナーホーリクともいう依存に完全に陥っている。
    主人にとっての勝利は、薬物やギャンブルと同じ嗜癖を齎してしまった。

    僕のウィナーホーリクに苦しむ主人を見たくないという想いが、伝わっていない。
    伝わったとしてもチャンピオンとしての責務から拒絶する姿を見せる。
    主人に対する苛立ちが募ったことで、僕の中の何かがキレた。

    僕は主人に対して反抗の意志を示すように、技を放った。



    「何するの!あなたは私の気持ちが分からないの!」
    僕の気持ちが分からない癖に、自分の気持ちを分かれというのはおかしい。
    今まで溜めてきた不満が、主人への力づくの反抗という形として表に出た。
    もうこれ以上は、僕は主人の言葉を聞きたくなかった。

    些細な考え方の僅かなすれ違いが、大きな想いのすれ違いとして変質する。
    主人も僕もお互いの言葉や意志に、耳も心も傾ける気は無くなっていた。

    手持ちのポケモンとしてやってはいけないこと、主人に対する反抗を行った僕は、
    制御できない危険なポケモンとして、処分されることになったが、主人の最後の温情からか、野生のポケモンとして野に放たれた。







    手持ちの仲間が反抗したことで、野生に帰してから半月も経たない中、私はポケモンリーグチャンピオンとして再びスタジアムに立っていた。

    「四天王を破って、ポケモンリーグチャンピオンを目指すチャレンジャーの前に、
    ポケモンリーグチャンピオンのルセアが姿を見せる!
    彼女は王座を守りきることが出来るか!?」
    会場全体に響くアナウンスと観客の声に、私は落ち着いた素振りを見せて、チャレンジャーの目の前に立つ。

    《ルセア様、我々の力で愚かな挑戦者を退けましょう》
    《この程度の相手、ルセア様と私の敵ではない》
    《僕が最初に戦いたいな。ルセアさん、早く出してよ》
    伝説のポケモンと呼ばれる手持ちポケモン達は、中で控えているハイパーボールを振動させる。これは自分達が戦いたいという合図だ。

    「私の最初の相手はこれよ」
    私は強い意思表示を示す一匹が納められたハイパーボールを選び、宙で円弧を描くようにスタジアムの中央に放った。
    私は戦う意志を強く示したものを戦わせ、私は今日も勝ち続けなければならない。
    負けたら全てを失い、彼らも弱いトレーナーと見なして離れていくだろう。
    だから私はチャンピオンであり続けなければならない。







    「ねえお父さん。ルセアさんカッコいいよね」
    「ああ、カッコいいな」
    子供と一緒にポケモンリーグを観戦して、運良くチャンピオン戦を見ることが出来た。
    子供はルセアと手持ちポケモンに、目を輝かせて強者に対する憧れを見せたが、
    私は彼女が伝説のポケモンによって、戦わされているようにしか見えなかった。
    私のように周囲の熱気に呑み込まれず、彼女を冷静に見つめるものは少ないだろう。

    「僕もルセアさんのようなトレーナーになれるかな?」
    「お前も本気でポケモントレーナーを目指す日が来れば、その時に分かるよ」
    今の私の子供にはルセアがヒーローに見えるのだが、彼がポケモントレーナーになったとき、彼女がどのような想いで戦っていたのか分かる日が来るだろう。







    あの事件から主人と袂を分かち、野生に還った僕はさ迷い続ける。
    ポケモンリーグチャンピオンのポケモンだったから、大抵の野性ポケモンには負けない。

    僕は野生ポケモンという不安定な道を歩み、主人もまた勝ち続けるという綱渡りの日々を送っているだろう。
    僕もまた負けたら死という生存競争という綱渡りを通して、あのときの主人の気持ちが少しは分かってきた。






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