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初めまして、akuroと言う者です。
くろまめさんギャグ上手いですねー! 私もギャグ物を書いてるんですが、到底及ばない……尊敬する域に達してます!
後編も楽しみにしてますね!
この小説は、きとらさんより寄せられた「586さんの描く『ダイゴさん』像を見てみたい」というリクエストを受けての、586なりのレスポンスです。
拙い点ばかりですが、少しでもお気に召していただければ幸いです。
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第一印象は、彼はなぜこんなものを集めているのか、という至極単純な疑問だった。
「これは……石、ですよね?」
「そう。石だよ。どこにでも落ちていそうな、"路傍の石"さ」
ありきたりな石ころですよね、と私が二の句を継ごうとしたところに、先手を打って言われてしまった。過去に何度も同じことをされているとはいえ、この鋭さにはいつもヒヤリとする。
硝子戸を引いて、石を一つ取り出す。ケースから出てみれば印象が変わるかと一瞬期待したが、胸元まで寄せられた石は紛れも無く、これといった特徴の無いただの石だった。
「その、何か変わったところがあるとか……ですか?」
「この石がかい? いや、変わったところなんて一つも無いよ」
「一つも、ですか」
「ああ。硬さも形も色も重さも、どれを取っても特徴の無い、普通の石だね」
本人曰く「特徴の無い、普通の石」を、手袋を嵌めた手でもって繁々と眺め回す。その表情がまた童心に返った子供のように楽しげなものだから、首を傾げる回数ばかりが増えてしまう。私を軽くからかっているのか、と思ったが、彼の面持ちを見る限り、私のことは意識の埒外にあるようだった。
ひとしきり石を眺めて、満足感ある表情のまま一端目を離す。すっ、と流れる水のように、彼の視線が私に向けられた。
「そうだね。君が今何を考えているか、当ててあげようか?」
「……」
「どうして僕がこんな石を持っているんだい、そんなところじゃないかな?」
「……そうですね。概ね、それで合ってます」
こくり、こくり。二度に渡って深く頷く。右手に石を載せたまま、彼は話を続ける。
「僕がこの石を拾った理由、僕がこの石を残した理由、僕がこの石を飾った理由。それは……」
「それは……?」
一歩前に出て、彼の言葉に耳を傾けた。
「この石が、十枚の絵を生み出したからだよ」
十枚の絵を生み出したから、彼はこの石を今も大切に保管している。投げ掛けられた言葉の順序を整理すると、以上のような形になる。確実に言えるのは、何のことだか訳が分からないということだけだ。
私が困惑するのを見事に見透かして、彼はようやく本題に入った。
「いつだったか、少し遠出をしたときに、絵を描いている女の子がいたんだ」
「スケッチブックを抱えて、ですか?」
「うーん、そうとも言えるし、そうとも言い切れないね」
「それって、どういうことなんです?」
「持っていたのが、スケッチブック……が映し出された、タブレットだったんだ」
「ああ、今流行の……」
「そうだね。タブレットにペンをカツカツ走らせて、外で絵を描いてた。あれは、今風でいいと思ったよ」
彼が出会ったのは、スケッチブック・アプリをインストールしたタブレットを持って外で絵を描いていたという少女、だと言う。紙のスケッチブックを持ち歩く時代はもう終わったのかなどと、要らないことに思考を巡らす。
「絵を描いていたのは分かりましたが、どうして石が関係するんです?」
「気になるだろう? 僕も気になったんだ」
「そ、それは、どういう意味で……?」
「タブレットに描かれていたのが、今ここにある石だったからね」
再び、私の前に石が差し出される。彼のエピソードを踏まえて、もう一度石を眺める。何かのきっかけがつかめれば、何か目に留まるものがあれば、そんな期待を込めて送る視線。
そして二十秒ほど石を眼に映し出して、込めた期待は見事に空振りに終わったことを気付かされた。眼前の石はやはり何も変わらない、ただの石でしかなかった。
「この石を、タブレットに描いていたんですか」
「そう。一心不乱にね。すごく楽しそうだったよ」
「楽しそうに、ですか……」
「それはそれは、ね。繰り返しペンを走らせて、タブレットの中のキャンバスを作り変えていったんだ」
彼が遭遇した少女は、この何の変哲も無い石を題材に、楽しそうに絵を描いていたという。俄かには信じられないというか、流れの読めない話だ。一体何が、タブレットの少女をそこまで惹きつけたのか。
「気になったから、僕は思い切って声を掛けてみたんだ。『どうして石を描いているんだい』ってね」
「声を掛けたんですか」
他人にいきなり声を掛けるというのが、いかにも彼らしいと思った。以前にもトレーナーに声を掛けて、その後も何度か合っている内に親しい仲になったとか、そういう話を聞いている。
「そう。一度気になったら、調べずにはいられない性質だしね」
「そのことは、私もよく知ってます」
「ラボを空ける一番の理由は、間違いなくそれだからね」
石ころを掌の上でコロコロと転がしながら、彼は穏やかに答える。少女に声を掛けたときの情景を思い返しながら、その様を適切に形容できる言葉を探している。過去の出来事を話すときの彼の姿勢は、いつも同じだ。
「彼女はあなたに、どう答えたんですか?」
話すべき内容を取りまとめたのか、彼がおもむろに口を開いた。
「『どうしてって、石を描きたいから』」
「それが、答えだったんですか?」
「ああ、はっきり言われたよ。それ以外に理由なんか無い、って顔でね」
石をタブレットに描いていた少女が、何故石を題材に採ったのか。答えは、石を描きたいから。石を描きたいから、タブレットの上で繰り返しスタイラスペンを走らせている。
これ以上無い、最大の理由。描きたいから描くという、もっとも容易く理解できる理由だった。
「楽しそうだったよ。ペンをしきりに走らせて、どんどん石を描いていってさ」
「そんなに熱中していたんですか」
「僕も驚くくらいね。一向に止まらないんだよ。ディスプレイの中に、じわじわ石が浮かび上がっていくようだったね」
彼はそんな少女に興味を持って、もっといろいろな事を知りたくなったんだ、と言った。
最初の疑問である「何故石を描くのか」は分かった。けれどそれだけでは満足せず、「何故石を描きたくなったのか」、それも聞き出したくなったらしい。
「石を描きたい理由、それを知りたくなって、僕は続けて質問したんだ」
「どうして石を描きたくなったのか……そういう質問ですね」
「うん。そうしたら、彼女は詳しいことを教えてくれたんだ」
タブレットを操作する真似をして見せながら、彼は少女が教えてくれたという内容を復唱し始めた。
「彼女はインターネットのイラストコミュニティに、よく絵を投稿しているらしいんだ」
「ああ、あの……」
「たぶん、君の考えているところだろうね。そこは絵を投稿できるだけじゃなくて、絵にコメントを付けたりもできるんだ。すごい時代になったね」
「コミュニケーションの手段として絵がある、ということですね」
「その通り。彼女はそこで、好きなように絵を描いていた……けれど」
ふう、と小さく息を吐いて、彼が声のトーンをわずかばかり落とす。
「世の中には狭量な人がいる。それは、君もよく感じているだろう?」
「……そうですね。残念ですが、頷かざるを得ません」
「ああ。彼女もそこで、面倒な人に絡まれたんだ。コメント欄で、一体何を言われたと思う?」
彼は手にした石を掲げながら、ぽつりと一言呟いた。
「『あなたのような"路傍の石"が、知った風に絵を描かないでください』」
ぽつりと、一言呟いた。
「コメントを寄せたのは、彼女もよく知らない人だった」
「見ず知らずの人、ですか」
「そう。調べてみたら、少し前に同じコンテストに絵を投稿していた人だって分かったらしい」
そのコンテストで、少女は審査員特別賞を貰い、コメントした人は選外に終わったという。その構図が明らかになった時点で、彼女はコメントした人の意図が分かったようだった。
「有り体に言えば、彼女に嫉妬したらしいんだ」
「やはり、そうだったんですね」
「ああ。自分の絵が評価されなくて、彼女の絵が特別な評価をもらったことに、嫉妬したみたいなんだ」
評価されなかったのは、自らの努力不足に尽きる──すぐにそう帰結できる人間は、それほど多くはない。大抵はそれを認められなくて、外的要因を探してしまう。
コメント者にとっての外的要因は、少女だった。つまりは、そういうことだ。
「それで、あんなコメントを寄せた」
「……」
「あれっきり一度も顔を見せないから、邪推や推測が山ほど混じってるけどねって、彼女は付け加えたけどね」
そう話す彼の表情は、なぜかまた、楽しげなものに戻っていた。
「けど、ここからが面白くてね。彼女はそのコメントを見て、ふっとイマジネーションが浮かんだらしいんだ」
「イマジネーション?」
「そう。"路傍の石"という部分に、何か来るものを感じたって言ってたね」
「よりにもよって、その部分に刺激を受けたんですか」
「そうだね。いてもたってもいられなくなって、タブレットを持って外へ出た──そうして、僕に出会った」
掌の石を握り締めて、彼が再び話し始める。
「僕に出会うまでに、彼女は九枚も絵を描き上げたって言うんだ」
「まさか、全部石をモチーフにしてですか?」
「その通り。落ちている石を見つけて、何枚も何枚も、絵を描きつづけたんだって。石にばかり目が行って、"周りが見えなくなる"くらい、熱中してね」
「……」
「僕の前で十枚目を描き終えたあと、彼女は、自分が感じたことを僕に教えてくれたんだ」
「同じ形の石は存在しない」
「同じ色の石は存在しない」
「同じ大きさの石は存在しない」
「同じ重さの石は存在しない」
「すべての石は違っていて、"ありきたり"な石なんて存在しない」
「"路傍の石"は、すべてがあふれる個性の塊だ……ってね」
「絵を描いているうちに、彼女は同じ石が一つとして存在しないことに気づいた」
「同じ石は、存在しない……」
「似ているように見えて、手に取ってみるとまったく違う。それが面白くて、どんどん絵にしていった」
「そうして導き出されたのが、さっきの言葉なんですね」
「ああ。晴れ晴れとした表情だったよ。新しいものを見た、って感じのね」
口元に笑みを浮かべて、彼が私に目を向ける。
「そういえば」
「どうしました?」
「君は、僕が石を集める理由を知ってたっけ?」
不意に話を振られて、思わず答えに窮する。石を集めているということは知っていても、「なぜ」石を集めているのかということは、どうも聞いた記憶が無い。
詰まったまま時間が流れるに任せていると、割と早々に彼が助け船を出した。
「僕が石を集める理由は、石が好きだから。けれど、それだけじゃない」
「それだけではない、と……」
「そう。もう一つ、理由があるんだ」
一呼吸置いて、彼が私に"理由"を教えてくれた。
「石に関わる人、それが好きだからさ」
「人との関係、ですか」
「そう。石があって、人がいて、石を軸にして人が関わりあう。それが好きなんだ」
石を掲げて、彼が言う。
「人と石は、よく似ている」
「まったく同じ石が存在しないように、まったく同じ人も存在しない」
「在る場所で、丸くもなるし鋭利にもなる」
「他者とのぶつかり合いで、いかようにも形を変えていく」
「本当に、よく似ていると思うんだ」
人と石の類似性。生まれ持った個性、環境に左右される姿、他者との接触で変貌していく形。なるほど、言われてみれば似ている気がしてきた。
彼が何を言いたいのか。その輪郭が、朧げではあるが見えてくる。
「僕は、珍しい石も好きだ。すごく好きだよ」
「珍しい石"も"?」
「そう。珍しい石"も"だよ。だから──」
「珍しくない石も、また?」
「その通り。外を歩けば道端に転がっているような"路傍の石"、それも大好きなんだ」
さっきも言ったけれど、と前置きした上で。
「この石は、道端に落ちていた石だ」
「タブレットの少女が絵のモチーフに採った、ですよね?」
「その通り。彼女が絵に描いた、"路傍の石"だ」
掌に載せられた小さな石。
「道端に落ちていたところで、誰も気づくことのないような、ありふれた石」
「けれどその石は、一人の女の子に、人としての生き方にさえつながるような、大きな示唆を与えた」
何度見たところで、石がただの石であることに変わりはない。何の変哲もない、ただの路傍の石。
石がただの石に過ぎなかったからこそ、大きな影響をもたらすことができたのかも知れない。
「人は皆、路傍の石だ」
「気付かれなければ意識されることもなく、そして誰かに影響をもたらすこともない」
「僕も君も、あの少女も同じ。すべては、路傍の石に過ぎない」
すべての人は、道端に転がる石に過ぎない。
「それは、実に素晴らしいことだと思うんだ」
「二つと無い存在が邂逅して、融和して、衝突し合う。そうして、また新しい存在になる」
「石も人も、ぶつかりあって変わっていく。それが、すごく面白いんだ」
気にも留めなかったはずの存在が、進む道を変えるほどの存在になり得る。彼は、そこに面白さを見出していた。
「この石を手元に置いておこうと思ったのは、それを思い返すためさ」
「人は皆路傍の石、そして、路傍の石は代わりのいない存在。この石は、それを思い出させてくれる」
「ありふれたものほど、かけがえの無い存在だということをね」
ようやく、彼が何を言いたいのかがはっきりした。そして、あの石ころを手元に置いていた理由も。
「その石には、思い出というか、印象的な光景が詰まっているんですね」
「ああ。あの少女が見出した新しい世界、それがここに詰まっているんだ」
「分かりました。単なる路傍の石に過ぎないそれを、あなたが大切に持っている理由を」
タブレットの少女と彼は、ありふれた路傍の石から、実に多くのものを感じ取ったようだった。
ひとしきり話して満足したのか、彼は石を戸棚に片付けると、椅子からすっと立ち上がった。
「さて、僕はちょっと出かけてくるよ。明日までには帰るつもりだからね」
「明日まで出掛けるつもりですか?」
「何、いつものことじゃないか。面白い石を見つけたら、また土産話を聞かせてあげるよ」
そう言い残して、彼は颯爽と部屋から立ち去って行った。
彼はいつもそうだ。石が好きだというのに、去るときは風のように去って行ってしまう。
「やれやれ……」
ため息混じりに、時間を確認しようとポケナビに目を向ける。
すると……
「……すれ違い?」
ポケナビの機能の一つである「すれちがい通信」。ポケモンのキャラクター商品に関わるすべての権利を持つ大手ゲーム会社が発売した携帯ゲーム機に搭載され、その後後を追うようにポケナビにも実装された。所有者同士ですれ違うだけで、簡単な自己紹介を送り合うことができる通信機能だ。
通信に成功すると、右上部に取り付けられた小さなランプが緑色に光る。この部屋に来るまでは消灯していたから、新しいメッセージが届いたようだ。
「これは……」
して、そのメッセージの送り主と内容は──
「けっきょく ぼくが いちばん つよくて すごいんだよね」
送り主の名前は……今更、言うまでもない。
すべては路傍の石。悟ったように口にしながらも、心の奥底では、燃え上がる炎のような闘志を滾らせている。
「星の数ほどある石の中でも、一番でなきゃ気が済まない、か」
石集めに熱中する子供のようで、その実石から人世訓を見出す大人で、しかし底の底は無垢で幼い子供。
それがたぶん、"ツワブキダイゴ"という人物の姿なのだろう。
「……本当に、風変わりな人だ」
苦笑いとともに、そんな言葉が思わず漏れた。
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※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。
Thanks for reading.
Written by 586
タンバシティのとある海辺で、セツカは空を仰いでいた。傍らには一匹のアブソル。
「この天気なら、無事うずまき島に行けそうだね〜」
「まさか晴れるとは……やっぱり、やめといた方がいいんじゃないか?」
「何言ってんの。ご飯は熱いうちに頂かないと!」
「命がけの旅が、お前にとっては飯と同じなのか?」
「まさに、朝飯前ってことだね」
一人はしゃぐ主人を尻目に、シルクは項垂れた。確かにこの天気ならば、うずまき島を取り巻く渦も小さくなっているだろう。絶好の機会と言えなくもない。一年のほとんどが曇天に見舞われるうずまき島の周りには、その名の通り、タンバの漁船をも飲み込んでしまう大きく激しい渦が点々と混在し、うまい具合に島の入り口を閉じてしまっているのだ。
本来ならば島に入ることすら出来ないはずだったのだが、運が良いのか悪いのか、その一行を晴天が向かえていた。暖かな光を止めどなく届ける太陽が、シルクには冷ややかに映る。シルクの三日月を描く漆黒の鎌が、黒く光っている。
──今回の目的はうずまき島に行き、海の神にあることを伝えることだった。
不満をおしみなく口にするシルクと地図を広げるセツカを乗せて、一匹のラプラスが海を泳いでいた。
「へぇ。ポジティブって泳げたんだな」
まるで初めて知ったかのように、わざとらしく感心した様子を見せるシルク。
「泳ぐため以外に、このヒレを何に使うんだい?」
「フカヒレとか?」
「それはサメだろ」
「馬鹿か。フカマルだろ」
「そうだった」
「メタ発言はほどほどにな」
「その発言がメタなんだよ」
「てか、ポジティブって名前、由来は何なんだよ?」
不意にセツカに問いかけたシルク。うん? と、地図から顔をあげてセツカは聞き直す。
「だから、ポジティブの名前の由来だって」
「え〜分かんないの? 少しは自分で考えないと、脳細胞増えないよ?」
「やる気の起きない理由だな」
「ふふふ。降参かね? それでは正解はっぴょー」
仰々しく両手を広げたかと思うと、強くパァンと合掌するように打ちならした。
「まず、ラプラスをラとプラスの二つに分解します」
「ふむ?」
「ここで着目するべきは『プラス』です。お二人方もお気づきになりましたか? そう! なんと私はこの『プラス』をプラス思考というキーワードへと発展させ、なおかつ! それを応用し、ポジティブへと変換させたのです! イッツミラクル!」
あきれ果てて首を振る気も起きず、シルクもポジティブも、ため息をついた。
「下らねえ……。『ラ』も仲間に入れてやれよ」
ん〜、と頭を傾げるセツカ。
「ポジティ・ラブ?」
「なんでポジティが好きってことを主張すんだよ。意味分かんねえよ」
「名前は五文字までだったっけ」
「そんなことは言ってない」
「空が青い!」
「論点をずらすな」
突っ込むのにも疲れたと、ポジティブの甲羅の棘のようなものにシルクは寄りかかる。あたしの頭はボケてないと、セツカ。
「そういえば」
「なんだ? また下らない話か?」
「上がる話だよ。空の話」
「へえ。そういえばセツカは風景を見るのが好きなんだっけ?」
「うん。どこで知ったかは忘れたけどね。こういう空の色のことを、天藍っていうんだって」
青く透き通った、けれどどこか黒ずんだ色もしているような空を、シルクとポジティブが見上げる。
「確かに、それっぽい感じはするな」
「漢字的にもね」
「それは誤字なのか!? どうなんだ!?」
シルクの声が、海に響きわたった。
題名に騙された。題名詐欺とでも名付けようか。
シリアスな感じかと思ってたらこれだよ!
そうかーイケメンにしか興味ないのかー 中身もきちんと見た方がいいぞー
イケメンで性格いいなんて男はリアルにはそうそういないからな!多分!
レックウザさんいいよね 私も欲しい ミミズくらいの大きさでいいから欲しい
「おはようこざいます! サクラさんですね? お届け物が届いております! こちらをどうぞ!」
朝早く、ライモンシティのポケモンセンターにやってきた私を出迎えたのは、1人の配達員だった。 配達員は私に1つのボールを手渡すと、どこかへ行ってしまった。
「なにかしら、これ……」
ボールの中を見ると、ただならぬ雰囲気を放つ黒い竜がいた。 図鑑で見てみると、「レックウザ」というポケモンらしい。
「なにはともあれ、図鑑が埋まったからいいけど……こんな珍しいポケモン、いったい誰が……」
私は全国図鑑を完成させるという、大きな目標を持っている。 今日もポケモンを登録しようと、人が多いライモンシティへ来たのだ。
私はレックウザの親を知ろうと、図鑑を操作してポケモン情報のページを開いた。
と、その時ポケモンセンターのドアが開いたかと思うと、聞き慣れた声が飛び込んできた。
「サクラ! 聞いて聞いて聞いて聞いてー!」
「モモカ!?」
飛び込んで来たのは私の双子の妹、モモカ。 双子なのに似てないってよく言われる。
「さっきそこで、超絶スーパースペシャルテライケメンに道を聞かれちゃったー!」
……こんなミーハーな妹に似たくないんだけどなあ……
私はモモカを無視して、ポケモン情報のページに目を通した。 その間もモモカはべらべら喋っている。
「マジでイケメンだったなあ……青い長髪を黒いゴムでまとめてて、超イケメンボイスで「素敵なお嬢さん、迷いの森への道を教えてください」なんて! 別れ際に手の甲にキスまで……キャーキャーキャーキャー!!」
暴走しまくってるな……フレンドリィショップのお兄さんやジョーイさんが睨んでるよ……気付かないのがモモカなんだけどさ。
「モモカ……少ないとはいえ人いるんだから、もうちょっと落ち着いてよ」
「これが落ち着いていられますかお姉さま!」
「誰がお姉さまよ……ところでモモカ、「ノブナガ」って人、知ってる?」
私はレックウザの情報が記してあるページをモモカに見せた。
「ノブナガ!? ランセ地方の!?」
「ランセ地方?」
「こことは文化が違うくらい遠い地方で、イケメンがいっぱいいるんだって!」
「モモカ……モモカの頭にはイケメンのことしか無いの?」
「無い!!」
……断言されても、困るんだけど。
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オチなし。 新キャラが暴走しまくった。
[好きにしていいのよ]
電波はけっして妙なものではなく、妙な受信の仕方をしてしまったのです。
> 想像以上の奇人変人っぷりでした(注意;褒め言葉です)。
変人奇人は褒め言葉(キリッ
マントのひととか、石のひととか、考古学のひととか以下略
タテカン立てたのは出奔に困ったリーグ関係者、「この顔にピンと来たらリーグへご連絡ください」みたいな文言が添えられているに違いありません。リーグ挑戦者ならつかまえてくれるだろうと(笑
お読みいただき、ありがとうございました。
※ポケモンを食べる描写みたいなのがあります
GEK1994のカウンター席で、ミドリは雑誌を読んでいた。いつもなら文庫本片手にゼクロムを飲んでいる姿が目立つのだが、今日は違った。派手ではないが、文庫本とは違う表紙とサイズが目立つ。
「ミドリちゃん、それは?」
気になったユエが聞いてみた。バクフーンが足元でのっそりと起き上がったが、睡魔に耐え切れず再び床に体を預けて眠ってしまった。鼾の音がする。
「昨日発売されたグルメ雑誌です。全ての地方の有名レストランのおススメメニューを取材してるんです。写真もありますよ」
そう言ってミドリが見せてくれた一面は、今月のトップを飾る店が載っていた。ホウエン地方、ミナモシティにあるレストラン。新鮮な海鮮を使ったソテーやグリルが有名だという。
中でも一際目を引いたのが、店の場所だった。その店はミナモでも、その近くの浅瀬にある巨大な岩の中に造られているのだという。行く際には長靴が必要らしく移動は多少不便だが、そのマイナス面が気にならなくなるくらい、そこの食事は美味しいのだという。
「へー。なかなか素敵ね」
「お値段もリーズナブルですし」
「ディナーで十万ちょっと…… まあ、ね」
流石に庶民のユエには頭を捻る値段だったが、ミドリは楽しそうにメニューの写真を見ていた。そこでふと思いついたように呟く。
「伝説のポケモンって、食べられるんでしょうか」
一瞬の沈黙の後、ユエが『んー……』と考える。
「そうね。伝説の鳥ポケモン、ファイアーやホウオウの生き血を飲むと不老不死になるっていう話なら各地方に伝わってるけど、流石に肉はねえ」
「チュリネの頭の葉は薬向きですね。苦すぎてサラダには使えませんよ」
「グルメ向きかしら」
「カントーでは、カメックスは固すぎてよく煮込まないと食べられないそうですよ。ゼニガメなら柔らかくてそのまま食い千切っていけるそうですが。あと、カメールの尻尾は大きいほどコラーゲンが詰まってるそうです」
足元のバクフーンがいつの間にか起きていた。ガタガタと震えている。大丈夫よ、とユエは頭を撫でた。
「戦争中はアーボとか毒抜きして食べたそうです。アーボックになると毒が強すぎて、抜く前に飢え死にするからアーボじゃないといけなかったそうで」
「ドンファンも一応食べられるんだって。足とかゴムみたいな食感らしいけど」
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オチなし。この前夕食の時に弟と話したことがそのままネタになってる。
ポカブとかまんま焼き豚だよね。
「あかね、かえんほうしゃ!」
オレの横を、あかねが放った真っ赤な炎が通り過ぎて行く。 その炎はバトルをしていた野生のオニドリルに見事にヒットし、焼き鳥が出来上がった。 ……って、オイ。
「あかね、もうちょい手加減できねーのか?」
オレは一仕事終えたあかねに問いかけた。
「バトルに手を抜くなんて、有り得ない」
……同情するぜ、焼き鳥、もといオニドリル。
「そうだよらいち! バトルはいつでも真剣にやらなくちゃ!」
あかねの後ろにいたモモコがうんうんと頷きながら言った。 まあ、その気持ちは分かるが……。
オレたちは今、まだまだ弱いワタッコのあおばにバトルを見せて、経験値を稼がせている所だ。 当のあおばは空中に浮かび、炎が当たらないギリギリの所でバトルを見物している。 ……器用だな、アイツ。
そんなことをしていると、焼き鳥の匂いにつられたのか、草むらからゴマゾウが出てきた。 ああ、ご愁傷様です……。
「あ、ゴマゾウ発見! あかね!」
「了解」
モモコがあかねに指示を出し、あかねは炎を吐き出す為に息を吸い込んだ。
ゴマゾウは臨戦体制をとっていたが、怖いのかその瞳は潤んでいる。
「……」
「モモコ? 準備オッケーなんだけど」
あかねのそんな声が聞こえてモモコの方を見ると……固まってんのか? あれ。
「……」
「オーイ、モモコー? どうしたんだー?」
「……か、」
「か?」
「か、可愛いいいーー!!」
いきなり叫んだかと思ったら、モモコはゴマゾウに飛びついてぎゅうーっと抱きしめた。 その速さといったら、カイリューもびっくりだ。
「……モモコ? どうしたのよ」
「可愛すぎるー! この子とは戦えないー!」
「……」
……オイモモコ、お前さっき「バトルは真剣に」とか言ってなかったか?
「あ、あそこにヤドン発見! あかね、最大パワーのかえんほうしゃー!」
「了解」
……ヤドンはいいのかよ!
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ほぼ実話。 ゴマゾウ可愛いよね
[なにしてもいいのよ]
みんな、ホントに大変そうねえ。でもあたしだってかなり苦労したのよ、あの“ボス”には。
史上最年少チャンピオンだか何だか知らないけど、あたしからすればただの小生意気なガキんちょだったわ。やたらデカい態度とか、年上にも敬語を使わないとことか、勝手気ままに振る舞うとことか。あたし相手ならまだしも、誰に対してもそんな調子。注意したって聞きやしない、こっちも敬語使ってやるのなんて三日で終了よ。
どんなに実力があっても、有名なポケモン博士の孫だって言っても、これは無いんじゃないのって思ったわ。……まあ、後で人から聞いた話じゃ、本人もその事でいろいろ葛藤があったみたいだけどね。悩んだ挙句にあんな態度取ってたんなら……ホント、まだ子供よね。
まあとにかく、あたし達は相当やりあったわ。口喧嘩なんて日常茶飯事、一度なんて殴り合い寸前までいった事もあったし。それに関してはあたしもガキっぽかったって事は認める。年上として手を上げちゃいけないわよね、流石に。あたしのポケモンが止めてくれなかったら、今頃ここで悠長に話してられなかったでしょうね。
え? ううん、それが原因で担当辞めたんじゃないの。相手の都合でね。
ライバルの男の子に負けちゃったのよ。かつてないくらいの本気で挑んで、その結果の負け。あの時は流石に落ち込んでたわ、いつもの減らず口も叩けないくらい。ちょっとだけ、ちょっぴりだけ心配したわ。
でもまあ、結局立ち直って今じゃトキワでジムリーダーやってるんだけどね。噂じゃ、しょっちゅうジムを抜け出して色んなところをほっつき歩いてるんだって。カントーで一番捕まりにくいリーダーとして有名らしいわ。全く、どこぞの伝説ポケモンじゃあるまいし何やってんだか。
この間たまたまジム戦の中継見たんだけど、相変わらずの生意気っぷりだった。ま、あの頃よりはちょっと大人になってるみたいだけど。なんにせよ、元気でやってるみたいでほっとしたわ……ちょっぴりだけね!
そうそう「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」って看板立ってるの、知らなかったわ。あたしが担当退いてからできたんじゃない?
みなさん、苦労されてるんですね……。僕はまだまだ、修業が足りないな。
いえ、うちのボスに関しては、実はそれほど語る事は無いんです。誤解しないでくださいね、どうでもいいんじゃなくて愚痴る内容が無いって意味ですからね!
情が厚くて朗らかで、豪快な方らしいんですよ、うちのボス。この間協会がトレーナーさん相手にアンケート取ったら、バトルの強さと人柄の良さでは部門ぶっちぎり優勝。老若男女関係なくですからね、本当にイッシュ中で支持されてる方なんだなあって、感心しちゃいました。
噂では結構なお年らしいんですが、年齢を感じさせないくらい若々しいんだとか。この間お会いしたトレーナーさんが、『かなりの高所から飛び降りるのを見たけど、その後も全然普通に会話を続けてたんだ。きっと足腰の強い人なんだね』って言ってましたから。ちなみにその方、プラズマ団相手にボスと共闘なさってるんです。羨ましいなあ。
……どうして「らしい」とか「噂では」なんて言い方をするのかって? 実はですね……。
お会いしたことないんです、ボスに。
えっ、そんなに驚かなくても。だってあの方、随分昔にリーグ協会から出て行ったきり、未だに戻らず放浪なさってるんですから。待ちきれなくなった前任者も、とうとう会わずに辞めてしまいましたしね。たまーに協会に連絡があるから、お元気らしいことは分かるんですけど……挑戦者の為にもそろそろ戻ってきていただきたいですねえ。といってもこればっかりは……。お弟子さんや四天王の皆さんも、あの方だから仕方ないって苦笑いしてました。何か理由があるらしいんですが、僕は聞かされていませんので。
まあ、いつか戻っていらっしゃると信じて待つのみです。付くべき人のいない付き人というのも肩身が狭いですが、これも精神修行だと思って頑張ります!
恐ろしく前向きだ、って? はあ、そうでしょうか。
そうそう「リーグ付近でこの人を捜しています、ご連絡ください」って看板が立っているの、知ってましたか? その顔にピンときたなら、ぜひ協会まで電話してくださいね!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
> ☆★☆★☆★
> 他力本願スレから受信した電波が妙な電波だったらしいです。
他力本願スレから怪電波を飛ばした張本人です。書いてくださってありがとうございます!
もう、読んでてにやにやが止まりませんでした。想像以上の奇人変人っぷりでした(注意;褒め言葉です)。これは付き人のみなさん大変だわww
ただ、ぶつくさ言ってる割に誰も辞めたいとは言ってないのが、自分のボスへの愛着(愛情?)なんだろうなあと思うとほっこりしました。みなさん実にいい人。
「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」の看板を立てたのがリーグ側なら、物凄くシュールな話ですね。全員身内の仕業(?)じゃないか、と思わず突っ込んでしまいましたw
奇行と愛情に魅せられて、つい調子に乗って前カントーチャンピオンとイッシュチャンピオンを捏造してしまいました。最初期の赤版、一周しかやっていない白版からのうろ覚えにつき、妙なところがあったらごめんなさい。
改めまして、書いてくださり誠にありがとうございました!
【書いてみたに書いてみたのよ】
【何をしてもいいのよ】
> ああ! そのネタ使いたかったのにwww
> 先超されたかwwww
まさかのネタ被りwww ごめんなさい、でも似たようなこと考える方がいてちょっと嬉しいですwww
先越し云々はお気になさらず、ぜひとも書いてください。お願いいたします orz(土下座)
> やっぱこの一節は魅力ありますよねー。
ありますねー。むしろこのインパクトが強すぎて、桜と聞けばこれしか思い浮かびませんでした。
正当な美も妖艶な美も兼ね備える桜、好きです。
読了いただき、ありがとうございました!
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