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No.017です。
本日のふぁーすと3で作者・スタッフ配布分を除きまして、
「ポケモンストーリーコンテスト・ベスト」完売致しました。
ありがとうございました。
即売会中、再版問い合わせや通販問い合わせが10件くらい入ってます。
冊数は印刷代と相談ですが、サンクリ55(4月15日)再版の方向で動きます。
あるところにウソをつくのが好きなウソッキーがいました。
ウソッキーは誰もが笑顔になるウソが好きでした。
ウソッキーは小さなポケモン達も好きでした。
子供たちはウソッキーのウソが大好きだったからです。
ウソッキーは色々なところを旅することも好きでした。
あちらこちらの風景に溶け込むことが好きだったからです。
ウソッキーは他のポケモンを驚かすことも好きでした。
みんなのびっくりした顔が好きだったからです。
怒りだすポケモンもいました。泣きだすポケモンもいました。
ウソッキーはその時、お詫び代わりにウソをつきます。
それは聞いていてとても楽しいウソです。
怒りだしたポケモンも、泣きだしたポケモンも、みんな笑いだしてしまいます。
ウソッキーはそんな笑顔が好きでした。
ウソッキーは気に入った場所にしばらくとどまります。
すると子供達はいつもウソッキーと遊びたがります。
みんなウソッキーのウソを聞きたくて仕方がないのです。
ウソッキーはねだられるままにウソをつきます。
小さなポケモン達は一つのウソが終ると、次のウソを、次のウソをとねだります。
笑顔が見たくて、ウソッキーも丁寧に一つ一つウソをついていきます。
あっというまにウソッキーはみんなの人気者になりました。
ある朝、ウソッキーは自分が空っぽになっているような気がしました。
どうも気持ちが良くありません。
いつものように小さなポケモン達がウソをねだりにやってきました。
ウソッキーは何かウソをつこうとするのですが、開いた口からは何にも出てきません。
まだかまだかとポケモン達は急かします。
ウソッキーは正直に、何も出て来ないと言おうとしましたが、その言葉すらも上手く出てきません。
みんなはだんだん機嫌が悪くなってきました。期待の眼差しが途端に鋭いものに変わります。
ごめんね、今日はウソはないんだよ。どうにか絞り出した言葉を聞いて、小さなポケモン達は文句をいっぱいぶつけました。
ひとつひとつがウソッキーの空っぽの心に刺さります。
お話のできないウソッキーなんていらない。ウソの付けないウソッキーはいらない。そういって小さなポケモン達は飽きたおもちゃを捨てて、ばらばらに帰って行きました。
ウソッキーはしょんぼりしながらその場所から去りました。
確かに小さなポケモン達の言う通りなのです。ウソッキーのウソを聞きたいから集まってくるのだから、ウソが付けなくなればウソッキーはただのウソッキーなのです。
ウソッキーはまた小さなポケモン達の笑顔が見たいなあと思いました。
ウソッキーは砂漠にやってきました。ここはいつも砂嵐が吹き荒れています。
普通のポケモンならとても居心地は悪い場所ですが、ウソッキーにとっては何ともありません。
しばらくここにいようかな、と空っぽのままウソッキーは思いました。
ところが、一つ問題がありました。
砂漠は何にもありません。これではウソッキーは風景に溶け込むことができません。
これは困ったなぁ、と思いながら、ウソッキーはとぼとぼ歩いていました。
ぽつんと砂漠のまんなかに何かが立っていました。
ウソッキーが近づいていくと、それが何か分かりました。砂嵐のなかで背の高いサボテンが立っているのです。
ノクタスがぼんやりとしていました。
砂漠にサボテンがいることは何にも不思議ではありません。
しかし、そのノクタスは好んで風景に溶け込もうとはしていないようでした。
ウソッキーがそばにやってきても、ノクタスは特に反応しません。
ずっと黙っています。
砂嵐の音だけが響きます。
何時しかウソッキーも隣に立ってずっと黙っていました。
夜になると砂嵐が止みました。
あたりがぐっと寒くなりました。
ふとノクタスが上を見上げました。
つられてウソッキーも空を見上げます。
そこには満天の星空がありました。
ウソッキーはその光景にただただ息をのみました。自分の持っている言葉をすべて使っても表せないであろうそれに、どうすればいいのか分かりませんでした。
ノクタスは黙っていました。
何も言いませんでした。
その沈黙に全てが表されているように思えて、ウソッキーもずっと黙っていました。
次の日、ウソッキーは自分が空っぽではないことに気がつきました。
とても清々しい気持ちです。
ノクタスを見ると昨日と同じ様にぼんやりとしていました。
ウソッキーはノクタスにお礼を言いたくてはじめて声をかけてみましたが、こちらを向くだけで特に何も言いません。
元来無口なのかもしれません。
お礼を言われる理由が分からないかもしれません。
それでも、よかったのです。
言葉を紡がない時間をくれたことにお礼が言いたかったのです。
心が満たされたウソッキーは、砂漠を後にしました。
ウソをつくのが好きなウソッキーがいました。
あちらこちらをまわるのが好きなウソッキーがいました。
景色に溶け込むのが好きなウソッキーがいました。
自分のウソでみんなの笑顔を見るのが好きなウソッキーがいました。
そして自分が空っぽになった時、砂漠で何も言わないノクタスと一緒に空を見上げるウソッキーがいました。
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余談 ドーブルが絵描きならウソッキーは語り部だと思う
あらゆるものを吐き出しつくして空になったなら、言葉を紡ぐのをやめてしまえば良い。
疲れたら休みましょう。
・・・的な何か。
【好きにしてもいいのよ】
昨日の春コミ、ありがとうございます。
お陰様で印刷屋さんから届いた分は、
3分の2が作者スタッフ配布と一般参加頒布で無くなりました。
スペースに立ち寄ってくれた方、
手伝ってくれた方、 打ち上げ参加の皆様、
そしてポケスコベストメンバーのみなさん、
改めてありがとうございます。
明日はふぁーすとなので在庫にとどめを刺してきます。(予定)
通販およびサンクリ分が無くなると予想される為、再販に関しては後日検討させてください。
いよいよ明日です。 |
財閥会長の孫娘が失踪した。至急探すように。
俺たちに託された事件の内容は、簡単に言えばこんな物だった。財閥会長の孫娘・失踪。この二つの単語を組み合わせれば、いくら素人でも理由を予測することくらい可能だろう。シックス・ナインズに近い確率で、
『悪い遊びをしていて、巻き込まれた』
こういう台詞ではなくとも、自業自得に近い出来事に巻き込まれたのではないか、という答えが返ってくるだろう。警察組織に身を置いているのであまりこんな言い方はしたくないが、ふと考えてしまうくらい今の子供達は危険を知らない。たとえ補導しても未成年であれば逮捕することすら出来ない。軽く説教して返さなくてはならない。
そんな事件を扱う日が続いていた時、それは起きた。
未成年とはいえない、幼い子供が失踪する事件。
初めは誘拐の線から当たっていた。だが親、友人、教師。そしてその子供が住む家の近郊にある交番全てを当たっても不審者は全く見受けられない。そして更に遠く離れた場所で再び失踪事件が起きた。ただしその被害者は中学一年生だったので、てっきり事件にでも巻き込まれたのではないか、と皆が思った。
だが話を聞いて、再び的外れな考えだったと分かった。その子供は通っている学校ではトップクラスの成績を誇り、しかも家が遠いため毎日のように母親か父親が送り迎えをしていた。これでは、事件に巻き込まれる理由も時間の隙間もない。そして何より重要なことは、失踪したのは家で部屋は完全なる密室状態だったということだ。
『娯楽にあまり興味を示さない子でした』と、見るからに教育してますという母親はハンカチで目を押えながら言った。これでは振り出しどころか二つの事件を未解決という名の谷に落とすことになってしまう。共に取り調べをしていた上司と頭を抱えていると、そういえばと母親が立ち上がった。
『それでも、これだけは面白いと言って息抜きにやっていたようです』
現場保存せずに証拠を移動させ、しかも隠していたこと事態捜査の妨げとなるのだが、その時はそれがどれだけ重要な意味を持つか分かっていなかった。一応確認してみましょうと言い、それを受け取って署に戻った。
そしてそこで、もう一つの失踪事件との共通点を見つけることとなる。
『あの子、よく友達とこれをやっていたんです。交換したり、バトルしたり。勝った時にはよく嬉しそうに話していました。私はそういうのに詳しくないんで、ただ相槌を打つだけだったんですが……』
シルバーのボディにはめられた、メモリチップのような小さなソフト。何のプログラムが入っているか分かるようにシールが貼られている。ロゴは宝石を思わせるデザイン。サブタイトルまで宝石の名前だった。
ゲーム。DSでプレイできると誰かが言っていた。俺はゲームをしないから分からないが、認識だけはしていた。テレビで大々的に宣伝していたからだ。
今やこの国が誇る、巨大なタイトル。
『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』
失踪した子供達はこれに夢中になっていたらしい。彼らのDSに差し込んでデータを見てみると、見たことの無い名前の生き物……ポケモンが六匹動いていた。手持ちというらしい。プレイヤーはポケモンを捕まえ、育て、戦わせる。そしてシナリオには各地の『ジム』の主将『ジムリーダー』との対戦、ポケモンを使って悪事を働く謎の集団を壊滅させること、そしてポケモンバトルの最高峰、『ポケモンリーグ』にいる『四天王』『チャンピオン』を倒すことで成し遂げられる『殿堂入り』など、挙げればキリがないほどの要素が盛られていた。
「最初に登場したのが十五年かた前ですから、大分ゲーム機が進化してプログラムも綺麗になっているんですよね」
詳しい後輩がそう言って器用にゲーム機をいじる。十五年前……俺はまだ小学生だ。だがゲームを遊んだことすらなかった。せいぜい頭の体操としてチェスやモノポリー、将棋をやっていたくらいだ。
「だが今回の失踪事件とそのゲーム、何か関係あるのか」
「ただの偶然ということも考えられます。中学一年生とはいえ、世間的にはまだ子供です。とにかくこのゲームのことも頭の片隅に入れつつ、地道に聞き込みをしていくのが重要かと思われます」
「よし、頼んだぞ」
そんな会話をしてから早一ヶ月が経過していた。その間にも失踪者は増え続け、必ず被害者がハマっていた物として『ポケモン』があった。もう間違いない。彼らはそれに関する何かに巻き込まれ、失踪したのだ。
だがそれが分かったところで何も手がかりは掴めなかった。発売元の会社にも行ってみたが、開発チームの人間にそれらしき人間はいない。
そんな時、その事件は起きた。先ほど前述した事件。
『財閥会長の孫娘が失踪した』
今度こそ普通の誘拐事件かと思い、早速友人である少女の家に向かい事情聴取をした。だが彼女の話を聞くうちに、最悪の予想が当たった。その孫娘はゲーマーで、ポケモンをプレイしていたという。
そしてその友人の言葉。何か事件の手がかりになるようなことを知っているかのようだった。詳しく聞こうとしたところで、連絡が入った。捜査会議をするから戻れと言う。
意味がない、と思った。いくら会議をしても情報が無ければ警察は動くことすらできない。歯がゆい思いで会議室に向かい、会議を始めかけたところで―― 新しい失踪事件が出た。
まさか、と思い通報先に行けばそこは、
「刑事さん達が帰った後、思いつめたような顔で二階に上がっていったんです。朝ごはんまだだったから、早く来なさいよ、って叫んだんです。でも返事がなくて…… おかしいなと思って部屋に行ったら、この有様で」
彼女の部屋は散らかっていた。だが母親に聞けば昨日帰って来て見た時には綺麗に片付いていたという。一晩でここまで散らかすことは、まずない。だがまた被害者を出してしまったことは紛れもない事実だ。
あの時、捜査会議の電話が入らなければ。
「で、やっぱりこの子もポケモンをやってたんだな」
警部が厚いシルバーカラーのDSを取り上げた。電源は落ちている。入っているソフトは、パール。ふと目の隅に引っかかる物があり、ベッドの上の掛け布団をどけた。
携帯電話だった。どうやら彼女は消える直前、これを見ていたらしい。母親に許可を取り、メールボックスを開く。
一番最近のメールは、昨日の夕方だった。差出人の名前にも驚いたが、その内容にはもっと驚いた。
『ごめーん。何かあの裏技、私の勘違いだったみたい。帰ってからもう一度見たら、下手すればゲームそのもののデータが消去されちゃうって書いてあったから。
だから忘れてね』
裏技。時々テレビでやっている裏技とは全く別物だ。慌ててそれより前のデータを見たが、裏技に関することは何も書いていない。だがこれは大きな進歩だ。ゲームに関することを知ったことが進歩なのか、と言われるかもしれないが、そもそも被害者の共通点が同じゲームにハマっていたことだけなのだ。
これには必ず、何かある。俺は携帯電話を取り出すと、先ほどポケモンについて教えてくれた後輩に連絡を取った。自分達が戻るまでに出来るだけ、ネットのポケモンに関する裏技のサイトを探ってくれ。その中に興味深い内容の裏技があったら、コピーしておいてくれ。
後輩は何も言わずに『分かりました』と言ってくれた。どんな形であれ事件の捜査が進むのは嬉しいのだろう。ましてや、それに自分が関わったとしたら。
「俺にはゲームの類は分からんが……本当に関係あるのか」
戻る途中、助手席で警部が訳が分からない、という顔をして聞いてきた。ゲームなんて俺にも分かりません、ただ、と続けた。
「せっかく掴んだ被害者のメールなんです。調べないわけにはいかないでしょう」
「まあな」
「それにその裏技の内容が気になります。下手すればゲームのプログラム自体が駄目になる……それほどのリスクを持つような裏技って、何なんでしょうね」
覆面パトカーは、ビルに囲まれた道路を静かに走っていく。
「事件が表沙汰になっているせいもあり、すぐに見つかりました。彼らの情報網には驚かされます」
そう言って後輩が見せてくれたのは、ある掲示板のログを印刷した物だった。記号を使った顔文字など一般人には分からない世界が広がっている。よく考えれば、ゲームもそうなのかもしれない。誰にも邪魔されず、時には気の合う仲間と共にいられる正に理想の空間。
「ここ、見ていただけませんか」
赤ペンで印を付けられた場所に、こんなことが書いてあった。
『251:何かポケモンが事件の中心らしいぜ
252:まじか
253:裏技で、ポケモンの世界に行けるーなんてヤツがあるらしい ほんとかどうかは知らんどな
で、そいつらは試していなくなった、という噂
254:そして だれも いなくなった!
255:ウソだろww 誰が信じるんだよそんなんww
256:中二乙
257:でも実際にサイトあるらしい 俺みたことある
258:うp希望 』
読みにくい。ひたすら読みにくいが、大体の内容は分かった。そして、と後輩が続ける。
「ひらすらログを追っていったら、一度だけこのサイトのURLが出てたんです。これが裏技の内容です」
背景は黒。そして文字は白。別の意味で読みにくい。そこにはこうあった。
『タイトル画面で特定のボタンを押し、マイクに向かって『全てのプレイヤーのリセットをわが身に委ねます』と言う』
「リセット?」
「本当はどうか怪しいですけどね。一応これが妥当かなと思って印刷したんです」
「リセット……」
黙ってしまった私に、後輩が慌てて付け加えた。
「結構普通なんですよ。特に初心者は一匹だけメインに育てちゃって、その一番強いやつがやられたら後は袋叩き状態ですから。それでレベル上げする気力もなくて、もう一度初めからやり直しとか。あとは能力値が高いポケモンを欲しがるとか、弱くてもいいから色違いが欲しいとか」
「ほー。そのポケモンとやらには能力の違いもあるのか」
「ええ。高ければ高いほど、育てていくうちに差がはっきり分かれてきます。そういえばエメラルドのファクトリーは辛かったなあ。自分のポケモン使えないんだから」
自分の後ろで通な話をしている二人に、私は叫んだ。
「彼女のソフトがどうなっているか、リセットしたとしたらどうやってそのようにしたのか調べることは出来るか」
「え……それは難しい、というか無理です。前作のデータはリセットしていたら完全に消去されてますから」
そう言われながらも私はDSの電源を入れ、パールを起動させた。手持ちはなし。後輩があれ、と疑問の声を上げた。
「おかしいな。発売されてから既に半年以上経ってるはずなのにほとんど序盤の話だ。まだ最初のポケモンすら貰ってない」
「この後ろに差さっているのは何だ?これもソフトか」
「お、懐かしいな。サファイアだ。そうか。パルパークで連れてこようとしてたんだな。もしくは連れてきた後、リセットしたか」
「おいおいどういうことだ。ちゃんと分かるように説明してくれよ」
「分かりました。えっと……」
後輩の言葉をまとめると、こういうことだった。
・ダイヤモンド、パールの前にもポケモンはソフトをだしていて、それはルビー、サファイア、エメラルドの三種類だということ。
・ダイヤモンド、パールはある特定の条件を満たすと、その三つのソフトからポケモンを連れて来ることが出来るということ。
・ただし連れてくるには少なくとも殿堂入りしなくてはならないため、おそらく今のデータは殿堂入りした後何らかの理由で消去した後の物だろう、ということ。
「そうそうリセットすることなんて無いんですけどね。何か変な裏技でも使っ……あ、もしかしたら」
「裏技!?この掲示板に書いてある以外にもあるのか」
「ええ。あんまり言うとマネする馬鹿がいると思うので詳しくは言いませんけど、『壁の中から出られなくなる』っていうのがあるんです。黒いドットの無い世界で何をしても動けなくなるんですよ。普通ならセンターに連絡して直してもらうのが一番ですけど、時間もかかるし。この子はやらないままリセットしたのかも」
「……」
理解出来ない。手塩にかけて育てた仲間を、何の思いもなしに消去するなんて。それがゲームだとしても、あまりにも軽すぎる気がした。
変な胸の取っ掛かりを覚えた時、彼女の携帯履歴を調べていた方から連絡が来た。一つだけ非通知があったという。しかもそれは彼女が消える直前に掛けていた内容らしいのだ。慌ててパソコンの前に行くと、スピーカーから声が流れ始めた。クリアにしているため聞き取れることは出来るが、それにしても酷く聞き辛い。
「フィルターかけてるな。何処からかは分からないのか」
「それが……コンピュータからなんです」
「コンピュータ!?プログラミングされてるってことか!?」
会話の内容は十秒ほどだった。俺はその中にある言葉の一つが気になった。
『二つの世界は繋がった』
二つの世界。ここまで調べたら、分かる。分からなくてはならない。不要な物を排除していき、最後に残った物。それがどんなに信じられない事でも、それが真実――
「警部」
「何だ」
「彼女達の居場所が、分かった気がします」
警部は驚かなかった。俺より低い位置にある頭をこちらに向けて、いつもの通りの口調で喋る。
「言ってみろ。お前なりの意見を。もしかしたら俺と同じ意見かもしれないし、違うかもしれない。だがどちらにしろ、これは俺たち警察組織の手に負えるような事件じゃなくなってる。俺たちは技術者じゃないからな」
俺は一気にまくし立てた。
「彼女達は、プログラムの……『ポケットモンスター』というゲームの一部にされています」
「つまり、その『リンネ』っていうキャラこそが、失踪したお嬢ちゃんそのものなわけだ」
一度捜査本部を出た俺と警部は、喫煙室の中と外に分かれて話をしていた。警部は愛煙家だが、俺は煙草を吸わない。何とも奇妙な光景だが、両方が満足することが出来るのはこれだけなのだ。
「フィクションとかSFを苦手だって言ってたお前がそんな突拍子もない発想が出来るとは、成長したな」
「俺をからかっている暇なんてありませんよ。早く何とかしてプログラム化された子供達を助けなくては」
「馬鹿言うなよ。ここはリアルの世界なんだ。ゲームでもアニメでも、ましてや映画でもない。リアルに生まれた俺達は、リアルが『限界だ』っていう場所までしか捜査は出来ないんだ。第一、憶測だけで上が動くと思うか?」
「ですが……」
「俺はな、ヒメヤ。『どうやって』プログラム化したのかっていう理由より、『どうして』そんな事件を起こしたのか……それが一番引っかかってるんだ」
久々に苗字を呼ばれた。いつも『お前』としか呼ばれないからだ。『どうやって』より『どうして』忘れがちだが、取調べの際には大切なことだと聞いた。『何故』も後者に入る。『何故こんなことをしたのか』『何故誰も止めることが出来なかったのか』『何故助けてやれなかったのか』『何故……』
この仕事を始めてから、数え切れないほどの『何故』『どうして』を繰り返してきた。時勢が時勢なのか、繰り返しても繰り返しても足りないくらい、同じような事件が起きていた。それと同時に、リアルな『リセット』も数え切れないほどあった。
「人生リセットか。ゲームに慣れすぎてるんだろうな。失敗作が生まれても、ボタンを押せばリセットできる。……分からないが、プログラム化された子供達はどれくらいゲームをリセットしてきたんだろうな」
「少なくとも彼女は、一度はリセットしています。今までの思い出が積み重なった、前のデータも一緒に」
「だよなあ。――俺はあの子らの気持ちが分からないのさ」
微妙な空気が、二人の間を流れていく。だが、と警部が付け加えた。
「もしかしたら、プログラム化された子供達もはっきり真実に辿りついてはいないかもしれない」
「は?」
「何故自分達が取り込まれたのか。自分達ではないといけなかったのか。無自覚は恐ろしいな」
カランと缶コーヒーの空き缶がゴミ箱に落ちていった。
「マスコミには何も言うなよ。まあ言ってもあちらさんも何も出来ないだろうが…… プログラムにされて連れて行かれたなんて夢物語みたいな話、報道できると思うか?
警察共々、世間の笑いものになるだけだ」
子供達のソフトは今も保存されている。DSの電源を入れた、プレイできる状態で。ゲームの中に取り込まれた『彼ら』は、自ら動くことは出来ない。プレイヤーが動かしてやらないと、何もできない。バトルも、買い物も……動くことすらできない。
「何とかできませんかね」
「あくまで希望的観測ですが」
後輩が言った。
「このゲームのシナリオは、主に二つに分かれます。チャンピオンを倒して殿堂入りする前に、悪の組織を壊滅させるのです。
だから、もし僕達がそれを倒す手助けをしてやれば……戻って来られるかもしれない」
………………………………………
気が付けば、真っ暗な世界にいた。右も左も上も下も分からないくらい、真っ暗闇。自分の姿は見えるから、光が皆無というわけではなさそうだ。
だけど、私の格好は普通ではなかった。普通とは言えなかった。頭に白いニット帽。トップスは黒いタンクトップ。スカートは今にも下着が見えそうな超ミニのピンク。そして同じ色のブーツに、マフラーと黄色いボストンバッグ。
それはどう見ても、昨日までやっていたポケモン『パール』の女主人公と同じ服装だった。それと同時にここがどこか理解した。記憶が蘇ってくる。ノイズだらけの電話と、白い光。
ここは、ゲームの中だ。
『ようやく気付いたか』
何処からか声がした。いつの間にか、横に私と同じ服を着た少女が立っている。……いや、多分彼女が本当の主人公なんだろう。だけど声と話し方に違和感があった。なんというか、私だけじゃない、全てを恨んでいるような声。
「貴方は」
『自分が今何処にいるか分かれば、分かるんじゃない?』
歳相当の声になった。何処からコピーしてきたのか、女の子の声。真っ暗闇の空間。何処が何処かすら分からない、不気味な空間。ずっといたら発狂してしまいそうな――
『私達、ずっと一緒だったじゃない』
その子が言った。
『どうして、リセットしたの』
> 作者は3DSの立体ポケモン図鑑でキュレムのおしりがかわいいと評判をききつけ、犯行に及んだと供述している。後悔しているが、反省はしている様子はない。
>
> 一応、ドラゴンタイプだったはずですよね
あえて言おう!
キュレムのケツはすばらしい!!!!!!!!
おおきな穴がぽっかり空いたジャイアントホール。その奥の奥に住んでいるのが、キュレムです。図鑑完成に必要なしと言われ、なかなかキュレムに会いに来てくれるトレーナーさんもいないので寂しかったキュレムですが、最近嬉しいことがありました。
キュレムを主役に迎えた映画が発表されたのです。それだけでも嬉しいキュレムに、またまた嬉しい知らせが届きました。キュレムを主役に迎えてゲーム本編が発売されるというのです。おまけに、パッケージにまでキュレムが飾られています。
嬉しくて歌っていたら、いつのまにか自分の冷気で体を凍らせちゃった、ちょっとおっちょこちょいなキュレムなのでした。
☆★☆★☆★
作者は3DSの立体ポケモン図鑑でキュレムのおしりがかわいいと評判をききつけ、犯行に及んだと供述している。後悔しているが、反省はしている様子はない。
一応、ドラゴンタイプだったはずですよね
この話には、グロい表現があります。
昔々、流星の滝にタツベイの子とチルットの子がいました。どんな竜の子も必ず踊るような動きをするので、それをりゅうのまいと呼びました。チルットはそれがとても美しく踊れるのに、タツベイは酔っぱらいが千鳥足で歩いてるようでした。
さらにチルットは空を飛べます。タツベイは飛べませんでした。空高く舞い上がるチルットをいつも岩の上から見上げてます。
けれどもタツベイはチルットが大好きでした。いつか自分のおとうさんおかあさんと同じようにボーマンダとなって、チルットと一緒に空を飛ぶことを夢みていました。
ドラゴンタイプの中ではりゅうのまいが最も美しく踊れるポケモンがモテますので、チルットはいつでも雌に囲まれていました。そんな雌の外にタツベイはいました。それでもチルットは将来お嫁さんにするならタツベイがいいと言って他の雌を寄せ付けません。他の雌は一番りゅうのまいがヘタクソなタツベイが選ばれることが不思議で仕方ないようです。
はやくチルットと空を飛びたいタツベイは、毎日流星の滝から飛び降りては空を飛ぶ練習をしていました。石頭なので落ちても平気です。何度も練習して、チルットと空を飛びたいのです。
たくさん飛び降りました。タツベイの体はやがて白い鎧で覆われ、体重も重くなりました。コモルーに進化したのです。あまりに嬉しくてチルットのところへと遊びにいけば、すでにチルタリスになっていました。チルタリスは進化してからりゅうのまいが一層美しくなっていました。コモルーはりゅうのまいが一層踊れなくなっていました。丸いからだでは動きにくいのです。
美しいチルタリスとほとんど動けないコモルー。育った時期も年も同じくらいなのに、手の届かないチルタリスの美しさ。それに引き換え足で移動するよりも転がった方が早いと思われてコモルーの醜さ。チルタリスと自分はつり合わないと、コモルーは次第に遠のいていきました。
それからというもの、コモルーは飛び降りることもなく、ただひたすら流星の滝から空を見上げては先に進化した仲間たちの後ろ姿を目でおってました。そして思い出したように動くと、流星の滝から転げ落ち、再び登ります。コモルーの固い殻は傷だらけでした。
チルタリスに会わなくなってからかなり経ちました。どんなに会わなくてもコモルーは忘れたことはありません。けれどこんな醜い姿で会うことが耐えられなかったのです。
長い年月が経ち、いくつもの季節が通りました。背中にむずがゆさを感じ、コモルーは地面にこすりつけました。丸いからだですので、そのまま転がってしまいます。止まることなく、コモルーの体が重力に引かれました。背中は一層かゆくなり、一生懸命はばたきました。しっぽは長くなり、顔は凛々しくなりました。ボーマンダとなることができたのです。
水面にうつるボーマンダとなった自分をじっと見つめ、鋭い爪がはえ揃った前足で地面を蹴ります。今までにないくらいにわき上がる力に、ボーマンダは翼を羽ばたかせて空を飛びました。そして空を飛びながら、チルタリスが見せてくれたりゅうのまいを思い出しながら踊ってみます。それはもう空を無敵の竜が昇っていくかの美しさでした。これならばチルタリスと一緒にいられると自信に溢れます。
さっそくボーマンダはチルタリスのところへと向かいました。久しぶりに会う姿は進化していますし、もしかしたら解らないかもしれません。ボーマンダがいなくて寂しかったかもしれません。
翼がはえたばかりで調節は難しいですが、なんとかチルタリスのところへとやってきました。するともう一匹チルタリスがいるのです。ボーマンダが姿を見せなくなったので、死んでしまったか嫌われたのだと思い、他のチルタリスと番になったのだと言われました。
ボーマンダの心は激しく燃え上がります。黙って消えて悪かったなどとみじんにも思えません。約束を破ったチルタリスへ全ての怒りをぶつけます。ボーマンダの力はチルタリスのそれよりかなり強いのです。チルタリスも、番も巣も全て鋭い爪で切り裂き、嫉妬の炎で燃やし尽くします。巣の中には割れたタマゴの殻が散乱していました。
完全に赤い固まりになったチルタリスをボーマンダは何も思わず鋭い牙で噛み付きます。初めて食べるチルタリスの味が良かったのか、夢中でむさぼります。残ったのは血に濡れたふわふわの羽と骨だけでした。2匹目は途中で飽きたのか爪で切り裂いて遊んでいました。
それからというもの、ボーマンダはチルタリスを襲ってはその肉を食べて暮らしていました。かならず前足で切り裂き、青い羽毛が見えなくなってから。まだ心臓が動いて命乞いをしているチルタリスもいました。容赦なくその首にかみつき、苦しみに悶えるチルタリスの絶叫を楽しんでいました。
流星の滝はボーマンダのえさ場となりました。チルタリスたちはボーマンダを恐れましたが、空から一気に襲いかかるボーマンダから逃げることは不可能でした。そこで、チルタリスはりゅうのまいを最も力強く美しく踊る神様、レックウザの元へと行きました。レックウザはチルタリスたちから話を聞くと、自分の住処であるそらの柱に身を隠すことを許可し、流星の滝に向かいます。
なにも知らずボーマンダが餌のチルタリスを探していると、急に空が暗くなりました。天気が悪いのかと見上げると、いきなりわしづかみにされました。「ドラゴンなのにドラゴンを食べるボーマンダはお前だな。これからドラゴンタイプと認められないよう、お前からりゅうのまいを取り上げよう」とレックウザは言いました。みるみるうちにボーマンダはりゅうのまいの記憶がなくなっていきます。もう力強く空を昇る竜を表現することはできなくなりました。
空を飛べるのにりゅうのまいができない。そんなボーマンダは仲間のボーマンダからも無視されるようになりました。毎日を流星の滝で泣いて過ごします。チルタリスに最初から言っておけばよかったこと、なぜ殺してしまったのだろうということ。ふと頭を持ち上げ、翼を動かしました。羽ばたくとレックウザを探しに空へ高く高く上がります。
レックウザを探すために何日も飛び回り、ボーマンダは空腹です。けれど一向にレックウザは見つかりません。最後の力を振り絞り、一際高い塔へと飛びました。
待っていたかのようにレックウザはボーマンダを見ています。ボーマンダは言いました。「ごめんなさいごめんなさい。私からりゅうのまいを取り上げないでください。チルタリスは悪くないのにやつあたりしてしまいました」レックウザは言いました。「今までお前がどんなことをしてきたか解ったようだね。お前にりゅうのまいは返そう。ただしチルタリスのことを忘れないように、自分では覚えないようにしておくよ」レックウザはボーマンダにりゅうのまいを返しました。ボーマンダは喜んでレックウザの前で踊ります。けれど本当に見て欲しいチルタリスはもういないのです。
その後、改心したボーマンダはさらにりゅうのまいを美しく踊るようになり、それを見た人間たちは芸能の神様として祭り上げました。さらにチルタリスへの思いから、恋愛成就の神様としても有名になっています。
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そんな説明書きを見たカップルがボーマンダへ参拝する。けれども良く見た方がいい。ボーマンダは嫉妬によって狂ったドラゴンだ。それなのに番で来るなんて、いかにも「食ってくれ」と言わんばかりじゃないか?
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お題、ドラゴンタイプ。やはりボーマンダとチルタリスはいいのです。本当に。流星の滝でチルットかわいいし歌えるし飛べるしいいなと思いながらタツベイが空への憧れを持ってたらなお。
タブンネは激怒した。かの嘘吐き西条流月を取り除かねばならぬと思った。タブンネには情報が解らぬ。小説サイトでげしげしして暮らして来た。しかしデマに関しては人一倍敏感であった。
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発売前のあのデマ飛び交うの何とかならないかなというメッセージを
つまり
【ごめんなさい】
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