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 理想を実現しよう。
 一人の人間がそう言った。
 酷い現実に見て見ぬふりをすることこそが悪なのだと。虐げられる者を救うことの何が悪いと熱弁を奮う人間がいた。
 開放を。自由を。
 その理想に自分も惹かれた。傍らの相棒を虐げたことなんてなかったけれど、自分は虐げられる側だったから。傍らの相棒に救われたことがあったから、救われるのことの大切さを知っていたから。自分にできるなら、力になりたかった。
 その理想が押し付けであることも、それをすることで今度は別の誰かを虐げていると分かっていた。それでも、虐げている誰かは悪だと思っていた。
 理想の前では犠牲はつきもの。悪の犠牲で済むならば、安いものだとそう思っていた。
 そう思って久しかったが、一人のトレーナーが自分の前に現れた時、間違いだったのだなと気付いた。
 傷つきながら不敵に笑い、挑んでくるトレーナー。その期待に応えながら、戦うポケモン。その姿は虐げられる側でも虐げられた側でもなかった。
 冷水をぶっかけるようなその真実を目にしてしまえば、すべての人間からポケモンを奪えば、理想を達成できるという思いはあっさりと消えてしまった。
 だから、理想を求めた物語はここで終わる。
 次は正しく理想を実現するためにどうすればいいか考えよう。
 だから、これから始まるのは終わった後の物語。
 理想を抱いて、真実に敗れた後から始まる物語。
――ポケットモンスターブラックホワイト2――
最近はRPGの前になにか入れるのがシャレおつだそうなのでってことで嘘予告第三弾
【なにしてもいいのよ】
>  ぷち模様に渦巻き一つ乗せたそれはパッチールの耳カチューシャ。
 言い値で買おう
人間関係とは厄介なものである。特に思春期における女子同士の友情というものはいささかややこしいもので、特定の誰かと話しているだけで交換ノートに凄まじい嫉妬の文を書いて送られてきたりする。いらないプレゼントと言っていいだろう。
それもまあ思春期を終えて高校生になればいくらか収まるところだ。それでも生きている間はそういう感情と良くも悪くも付き合っていかなければならないのだ。
『嫉妬』『恨み』『妬み』…… 『愛する』ことより簡単であるが故に、それにズブズブと嵌っていく人間も数多い。それでも抜け出そうとしないでいれば、その先にあるのは――
破滅、だろう。
『えー、このxは横線を表しているわけだから、6を代入してそれと同じようにyも――』
先生の声が左耳から右耳へと綺麗に抜けていく。空腹感を覚える時間帯。時刻は午前零時を回ったところ。四時間目でしかも数学というのは、退屈で退屈で仕方無いカリキュラムだろう。現に周りを見れば、ほとんどの生徒が目に光を映していなかった。進学校と名高い晴明学園も、昼前の授業の反応は周りと変わらないのだな、と思わずため息が漏れる。
ミドリは一番後ろの席に座っていた。窓際の一列目。外ではグラウンドで他の学年が体育をやっていた。男子だ。格闘タイプを使っての柔道。一人の男子がナゲキに掴みかかっていった。だがナゲキの方が上だった。猪突猛進の男子の襟首を掴み、背負い投げる。
「ソラミネ、聞いてるのか」
はっとした。金縁眼鏡をかけた教師がこちらを見ている。その目にはやれやれ、という色が見て取れた。
「すみません」
「……後で職員室に来なさい」
何のお咎めもないことに周りは驚いたようだ。別の意味で静まっていた教室が、少しざわつく。ミドリは彼らの好奇の視線に気にせず、ただひたすらに窓の外を眺めていた。授業終了のチャイムが鳴ったのは、それから二十分後だった。
「ソラミネ、さっきの態度はなんだ」
所変わって職員室。ミドリは先ほどの数学教師の前に立っていた。部屋は暖房が効きすぎていて、暑い。その場にいた彼らは意外な様子でこの光景を見ているようだった。晴明学園の中でも学年を超えてトップクラスの成績を誇るミドリが職員室に呼ばれること事態、珍しい。ましてやプリント運びではなくお説教とくれば驚くのは無理もないだろう。
「お前の優秀さは皆認めてる。先生だってそうだ。高校生でアドルフ・ヒットラーの『我が闘争』を原書で読める奴なんてそうそういないぞ」
「彼の独裁的思考と今の平和ボケした世界と一体何が違うのかを比較してみようと思ったんです」
「それはいい。日常の授業で叱られるなんて、お前にあってはならないんじゃないのか」
教師が一息ついた。そして哀れんだような目をミドリに向ける。気持ち悪い、と思った。
「まだ先輩のことが忘れられないのか。……無理もないが」
ミドリは頭を抱えながら『失礼します』と職員室のドアを開けた。
屋上―― 普段は立ち入り禁止だが、実はほとんどの生徒が昼休みに使用していたりする。ミドリもその一人だった。一ヶ月前からずっとここで食べていたのだ。教室に戻る気がしなかった。
一ヶ月前。冬休みが始まるギリギリ前。寒いのに晴れ渡っていて、雪も降らない冷たい夜だった。そして、何もかも焼き尽くした赤い夜だった。
先輩が、突然姿を消した夜。町外れの屋敷を黒こげにして、死んだように消失した夜。誰も何も見ていない。何も出てこない。死んではいないと断言できた。それに関する物が、何も出てこなかったから。
だけど、自分にとっては死と同じだった。
「先輩……」
腰のホルダーでジャノビーが不安そうにこちらを見ている。ここ数ヶ月で幾度かバトルさせる機会があり、彼をバトルさせていたら進化した。ツタージャから、ジャノビーへ。
食欲が出ない。ミドリはボールを出すと、持って来ていた弁当を広げた。首を傾げる彼に、薄く笑う。
「食べなさい。お腹空いてるでしょ」
言葉の通りだったらしい。少し躊躇った後、ジャノビーは短い手を器用に使っておかずを食べ始めた。その光景を微笑ましく思い、ミドリは今日初めての笑顔を浮かべた。
昼休み終了のチャイムが鳴り響く。だがミドリは動こうとしなかった。膝を抱えて、青い硝子を張ったような空を見上げている。ジャノビーが食べ終えても、全く視線を上から逸らそうとしなかった。
『――私はさ、誰にも邪魔されない世界を生きていたいんだ』
夏の緑と空が眩しい。一枚の写真のような風景をバックに、彼女は言った。その足はしっかりと地面を踏みしめ微塵の震えもない。
『邪魔されない世界?』
『何をするにも自分で決める。自分で決めた道を行く。当たり前だけど自分で選ぶんだから、危険な道だってある。もしかしたらその先に死があるかもしれない』
『えっ!?』
『驚き方がオーバーだね、ミドリは。……まあ仕方ないか』
『でも未練を残して死にたくはないな』
『この姿で生きていられるのは、これ一度きりだから』
突然空が暗くなった。闇が、影が全てを飲み込んでいく。違う。自分の場所だけ明るいまま。向こうだけ切り離されたように染まっていく。
『先輩!?』
何者かが足の下をすり抜けていく。誰かが闇の中で深々と膝をついた。忠誠を誓うかのように。
『バイバイ、』
手を伸ばしても届かない。影が溢れ、溢れて―― 全てが飲み込まれた。
「あ、起きた」
意識を取り戻して最初に耳に入って来たのは、自分が今一番聞きたい人の声じゃなかった。低い声。あの人よりも低い。あの人も女性の割りに低かったけど、少なくとも男よりは高かった。
虚無感を覚えてミドリは目を開けた。コンクリートに預けていた腰と背中が痛い。目の前には見慣れない姿の人間がいた。いや、人であることは間違いないが、ミドリは何処の誰だと認識したことはなかった。
第一印象は―― ポーカーフェイス。その目の色は状況によって立場を変え、どんな奴を敵に回しても冷静でいられるような感じだ。そして全く面識がない自分でも確信するくらい、彼の顔は整っていた。ああ、なんか入学したての頃に女子が騒いでいた気がするなあ……くらいの認識度であるが。
ジャノビーがスカートの上で丸くなって眠っていた。重い。
「優等生で、ギアステーション兼バトルサブウェイの主からも一目置かれてて、美術部の部長で、警察署長の孫で、世界的に有名な研究者の娘で―― って、
ソラミネミドリ。神様はお前に幾つ肩書きと七光りを持たせれば気がすむんだろうな?」
「自ら望んでこの人生を歩むことになったわけではありませんから」
何故か答えていた。皮肉にも、からかいにも取れる言葉を彼は遠慮無しにサラサラと紡ぎだした。ぶっつけ本番で言えるような長さではない。少々戸惑いを感じながらも、ミドリは冷静さを保とうとした。
そもそも男性と話すことに慣れていないのだ。あの人がいた頃は、授業中と短い休み時間以外ずっと隣をキープしていたから。あの人としか話さない日も、多かった。
だからなのか、一ヶ月経っても未だに彼女以外と話すことに慣れない。男なんて、もっての他だった。
空はだんだん赤みを増し、雲に金色の縁取りがされている。薄い青とピンクとオレンジが混ざった、独特の色が一枚写真のように目に焼きつく。
「というか、貴方誰ですか」
無礼な気もしたが、名前の分からない相手と長く話せるほど、ミドリは社交的ではない。頼りになるジャノビーはまだ起きそうもなかった。
「……認識されてなかったのか。参ったな」
男がミドリの両肩に手を置いた。いきなりのことに何も反応できず、ビクッと肩を震わせる。喰われる―― そう感じた。
「俺はショウシ。硝子って書いて、ショウシだ。覚えとけ」
気がついたら彼……ショウシが額を押えて倒れこんでいた。左腕で身体を押さえ、驚いた顔でジャノビーを見ている。
ジャノビーは起きていた。いつもは何事にも動じない冷静な目を、ナイフのように鋭くさせて威嚇している。ミドリは腰が抜けて立てなかったが、状況を確認してそっと立ち上がった。
「ジャノビー……私を助けてくれたんですね」
ガクガクと頷く。頭をそっと撫でると、ミドリはショウシを見た。怒っている様子はない。ハンカチを取り出し、額に当てる。遠目からでも血が滲んでいるのが分かった。
「ごめんなさい」
「迂闊だったな。まさかポケモンに隙を取られるとは思わなかった」
やっぱ女絡みのことはどんな男にでも隙を作らせるんだな、と一人で納得している。ミドリはとりあえずこの男を敵だと認識した。そして名前と顔と性格と自分にしたことをきっちり頭の中にインプットした。
(先輩、私変な人に懐かれたようです)
帰り道。ミドリは一人で歩いていた。下校時刻はとっくに過ぎていたし、一緒に帰るような友達を彼女は持っていない。
(今までは先輩が一緒だったから、何も恐い物なんてなかったけど……いなくなっちゃったから、自分で何とかしないといけないんですね)
(一体いつ帰ってくるんですか、先輩)
(私を置いて死ぬなんて許しませんよ)
ミドリは立ち止まった。空はもう、群青色に白い点が瞬いている。
(どんな形であっても、私は貴方を見つけ出します)
(必ず)
(必ず)
彼女の持っている感情は、『嫉妬』でも、『恨み』でも、『妬み』でもなかった。そこにあるのはただひたすらに純粋な『愛』。それが純粋すぎるが故に、狂気へと変貌していくことに彼女はまだ気付かない。
どうやらカオリは崖から落ちただけではなく、落としてしまったようだ。
ミドリの、『制御』という名の何かを。
ポケストを覗いたらこんなスレがあってフランス語の試験勉強がちっとも捗らない、紀成です!
母に許可は取りました。父は分かりませんが、多分大丈夫だと思います。この前の夏は一週間皿洗いで夕食の許可取ったんだよな……
行けます。タブンネ。リストに名前の記入をお願いします。では。
 
 始まった時から終わっていた。きっと私のやっていることはそうだったんだろう。未来なんてない袋小路。勝ったところで失うしかない負け街道。それでもいくしかなかった。止まるわけには行かなかった。
 戻ることのできない道で止まってしまえば先には進めないから。考えなくてよかったことを考えてしまえば、次の一歩が遅れる。遅れた分だけ余計に考えて、その分だけ救いが遅くなる。それを知っていた。
 だから、だからね。
「ベル。もうやめて」
 トウコには来てほしくなかった。あなたにだけは止めてほしくなかった。親友に呼び止められれば、足を止めざるを得ないから。
「トウコ。まだ――」
 止める気なのか、あるいは止められると思っているのか、どっちを聞くつもりだったのか自分でも分からない。遮るようにして放たれた言葉に思考が停止してしまったから。
「ポケモンが好きだって言ってたじゃない」
「えぇ、そうよ。”ポケモン”は好きよ」
「なら!」
 親友の声が聞こえる。今にも泣きだしそうな声。駆け寄って頭を撫でたくなる胸に刺さる声。
 その声を聴くのは辛い。でもその声に耳を塞ぐことはできない。許されない。
 自分は同じような声を聴き続けるからだ。友達を取らないでよ、と叫ぶ人から容赦なくポケモンを奪うと知っているから、その声に駆け寄ることは許されない。
 なによりも、
「トウコ、ポケモンが好きだからこうしているのよ」
 これが正しいのだと思って行動してきた。ポケモンのためになると思ったから。大好きなポケモンのためにやってきた。そのためだけにこんなことをやり続けてきたのだ。
「それでもこんなの……こんなの絶対間違ってる」
 駄々をこねるように否定する友人を見るのは辛い。私とて気になることで彼女が心を痛めることは分かっていたのにそれでも辛い。
「そうね。私のやってきたことは正しくないわ」
「ベル。そこまで分かっているならやめましょう。まだやり直せるわ」
 この親友はやっぱり優しい。あんなに酷いことをしたのに、まだこんな言葉をかけてくれるのか。それでも、そうだからこそ、
「私に止まることは許されないのよ」
 こうすることもやめられない。親友と戦いたくない。そんな私はきっとひどく我儘なのだろう。けれど、やめることはできない。私は欲張りだから。
「お願い、トウコ。私と一緒に来て」
 泣かせたくない。戦いたくない。けれど、止められない。だから、だから。
「私の手を取って。ポケモンが笑っていられるように。ポケモンが辛い思いをしないように一緒に戦いましょう」
 私は手を差し伸べた。
――ポケットモンスターブラックホワイト2――
 せっかくなら、きとかげさんの黒ベルに返信投稿しようと思ったけど見つからなかったorz
 てなわけで嘘予告第二弾。今回は敵勢について書いてみた。悪とは言えない悪。果たして主人公の取る道は――
ってところで切れるCM雰囲気 
【今度はまともな嘘予告なのよ】
【思ったより黒くないのよ】
【好きにしていいのよ】
記事立て乙です〜
場所は浜松町か新橋付近ですかね。
HARUコミの場所自体は東京ビッグサイトです。
http://www.akaboo.jp/event/0318haru17.html
入場に1300円かかりますので、他の同人誌(ポケも出てますし、他ジャンルもあります)を見て回りたい人以外は
打ち上げだけ あるいは しめしあわせてどっかで遊んでいるといいかも。
ご無沙汰しております。586です。
No.017さん主催の「ポケモンストーリーコンテスト・ベスト」の頒布を行うイベント・HARUコミックシティの開催が近づいてまいりました。
ポケスコの力作群を集めた、まさに珠玉の一冊になる予定です。
ちなみに、当方も昨年のコミックマーケット82にて頒布した「プレゼント」の再販を行う予定です(しれっと宣伝
さて、3/18(日)のイベント終了後に打ち上げを行いたいと思います。
時間帯はイベント終了後、少々余裕を持って17:00前後開始を考えています。終了は状況にもよりますが、概ね20:00頃の見込みです。
つきましては、参加を希望される方を当スレッドにて募らせていただきます。
なお、既に参加を表明されている方に付きましても、今一度メンバーの確認を行うため、当スレッドにて記名いただけると幸いです。
イベントに参加されてそのまま雪崩れ込む予定の方も、打ち上げだけ参加されるという方も、どちらも大歓迎です! 奮ってご参加ください(´ω`)
以上、よろしくお願いいたします。
世の中には言い出しっぺの法則とやらがあるそうなので、書いてみた。
この量書くのに三時間もかかってしまった。精進精進
いやぁ、マジで中身が予想できないので完全に妄想爆発状態ですが、
――――――――――――――――
 人生五十年。言葉にすればこれほど短いが実際には様々な出来事があった。酒に女に戦いに、と。そして、出来事が起こるたびに様々なものを失っていく。それは者であり、物だった。そこまで思い返して、
「いろいろあったの七音で済む程度の人生だのう」
 と自嘲した。そうだ。短い中には様々なものがあったけれど、結局はそう短くできてしまう程度でしかない。死んでいった者たちの言葉を覚えていても、どんな声音であったか分からなくなっていくように、多くの出来事は色あせていった。
 気にも留めてない出来事も含めれば、その数は無数にあるだろう。数えられるはずなのに、混ざり合い数えられぬのは歳を取ったせいか。
 城に置いてきた妻がこの場にいれば、こんなことを考える自分を笑うのだろうな。髭をしごきながらそう思う。人間だから当たり前だと慰めるようにそう言うのだろうとも。
「フン。年寄りの冷や水か。隠居でも考えたらどうだ?」
 思考に割り込むように聞こえたのは遠雷を思わせる低い言葉だった。誰かは問うまでもない。この自分に無礼なことを言うのは、一人しか否一匹しかいなかった。背後にちらと視線をやる。血を思わせる朱い瞳と雷雲のように黒き体を持った龍がそこにいた。
「いつも通り、礼儀を知らぬな。その翼、切り落としても構わぬのだぞ」
「昔ならいざ知らず、今の貴様では我の動きを捉えることすらできんだろう」
 脇差に手を添えながらの剣呑な言葉にそう切り返された。
 これが他の者ならすぐに平身低頭し、許しを請うのだろう――それ以前に無礼な振る舞いをする者はいない――がこの龍は怯えもせず、むしろ更なる言葉を返してくる。
 こいつとも長い付き合いだ。妻よりも長い年月を共にした。だから、というべきかはわからないが、相棒とも言うべき存在はこの尊大な龍以外にはいなかった。周りに人はいても、家来か敵かだ。軽口や愚痴を聞かせられる他の存在はもう死んでいる。
 良いやつは早死にしてしまうというから、一番口汚いこいつが生き残るのもある意味至極当然、当然ではあるがやはりどこか釈然としない。神や仏がいるのなら、良き裁定をしてほしいものである。
「寺に泊まった程度でそんなに感傷的になるとはな」
 思わずと言った形で漏れた呟きに対しての返答に確かにらしくなかったなと思い、口の端を歪ませる。
 それも致し方なし。血も涙も信ずる神がいなかろうと、
「人が死ぬときは命の行く末について、考えてしまうのさ」
 言い終わると同時、目の前の襖が開く。
 入ってきたのは一人の男。
「第六天魔王であっても死ぬときはやはり恐れるものなのですね」
 怜悧な瞳をこちらに向け、そう言った。会った時から変わらない。氷鳥を従え、冷めた瞳をしているせいで冷めていると思われがちだが内に秘めた情熱は人一倍。そういうやつだ。いつかこういう日が来ると思っていた。
「殿。あなたはもう十分生きたでしょう。現世のことは私に任せ、地獄の天下でも取りに行ってください」
「天運がなかったと諦めて、我が主に打ち取られてください」
 肩に留まった氷鳥と共に、好き勝手に言ってきてはいるが、まだ死ぬ時ではない。まだ見ぬ世界を残している。生きることに飽くには長生きはしていない。
「ふん。貴様に止めることは叶わん。我が覇道はこれからだ」
―――――――
【騙す気しかなかったのよ】
【NはノブナガのN】
【何してもいいのよ】
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