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次の日オンリーですが参加希望で。
日頃の憂さを晴らすぞ!
皆さんこんばんは。586さんです。
ありがたいことに皆さん6/3(土)でOKとのことですので、日程については6/3(土)で確定とさせていただきます。
引き続き募集は続けさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
日程ですが、自分は6/3日でも大丈夫です。
早くやりたいから27日って言っただけで、別に予定とかはないです。
6月3日なら紛れ込めるかもです!
違う日付になったらエア参加しながらひとり焼肉します!
初めまして?にっかです。
6/3(土)でしたら参加出来そうです。
よろしくお願いします
586さん
こんにちは。逆行です。
毎度オフの度に幹事をやってくださってありがとうございます。
ポケモン小説意見交換会ですが、自分も参加したいと思います。
日程の希望は2017/05/27(土) です。
よろしくお願いします。
こんにちは。586さんです。
GWも終わって一段落したところで、ポケモン小説意見交換会と銘打った小規模OFFを開催したいと思っています。
意見交換会というと何か高貴なイメージが漂いますが(あまり高貴ではない)、実際には何人かで集まって肉を焼いたりお酒とか飲んだりその後お茶したりする感じです。
開催要項はこんな感じで考えています。
開催日時:2017/05/27(土) or 2017/06/03(土) 19:00〜
開催場所:東京・池袋駅近辺
集合場所:池袋駅東口・いけふくろう前
人数:4〜5人
参加を希望される方は、5/27と6/3のうち希望する日付を併せて記載してください。
〆切は予約を入れる事も踏まえて、短めですが5/24(水)としたいと思います。
皆様よろしくお願いいたします。
注意:やや残酷なシーンがありますので念のため注意。
ある日の昼下がりのこと。ハノハノリゾートの砂浜の一角に人骨が散らばっているのが発見された。計三人の骨のようだった。
皆シロデスナにやられたと思われる。シロデスナはハノハノビーチの砂浜に時折出現するポケモンだ。シロデスナは人々の生気を吸い取って殺してしまう。殺された人間は骨しか残らなくなってしまう。
アローラ地方の砂浜には他にも危険なポケモンが生息している。ナマコブシというポケモンがいる。彼らは非常に小さいが、口から内蔵を飛び立たせて人々に殴りかかることがある。その力は以外にも強く、並の人なら失神してしまう。運が悪ければ死亡することもある。
アローラには砂浜だけでなく、森の奥地等にも人々に危害を加えるポケモンが数多く生息している。マシェードというキノコに良く似たポケモンがいて、このポケモンは要注意生物に認定されている。マシェードは森に迷い込んだ人間を発見すると、まず怪しい光で混乱させて、逃げられないようにしてしまう。訳も分からずその場で自分を殴っている人間をキノコの胞子で眠らせた後に、生気を吸い取って殺してしまう。
また一部の森だけではあるが、キテルグマという非常に凶暴なポケモンもいる。キテルグマは人間を見つけると追いかけてくる。彼らは巨体にもかかわらず足が早く、逃げ切るのは容易ではない。キテルグマは人間を捕えると背骨を折ってしまう。この危険生物は力がとても強く、人間の背骨を折ることは容易いのである。
その他にも、アローラでは数多くの野生のポケモンが人間を襲う事件が勃発している。だが野生のポケモンを無慈悲に殺すことは決して許されない。人間にできることは、危険なポケモンがいる場所には立ち入らないことと、きちんと育てたポケモンを所持しておくことぐらいであった。
被害に合うのは、特にトレーナーの子供達が多かった。ここ数年で島巡りを行う子供が急増した。子供達は珍しく強いポケモンが欲しいが故に、危険な場所にも平然と立ち入ってしまった。そして遺体となって親の元に帰っていった。
また、観光客の人々も被害に合うことが多かった。事前に良く調べずにアローラにやってきた人達は、危険なポケモンを警戒することなく刺激した。アローラは観光客も年々増加しており、それに伴って被害件数も増えている。
勿論一般の人々も被害に合うことが多くあった。ポケモンなんてそこら中にいる訳で、彼らの尻尾を誤って踏んづけてしまって攻撃されるなんてことも良くあった。
アローラの人々はこの惨状を大いに嘆いていた。どうにかできないものかと懊悩していた。だが警察はこのような惨状に対して、あまり積極的に動くことは無かった。
ある日のことであった。アローラの歴史に確実に残るであろう大事件が発生した。
それが、ウルトラビーストの出現だった。
どこかに馬鹿が一人いた。そいつが、ウルトラビーストの棲む場所、通称ウルトラホールの入り口をこじ開けてしまった。その結果、数匹ではあるがこの世界にウルトラビーストを迷いこませてしまった。
ウルトラビーストは非常に危険な存在であった。彼らは強大な力を持っていた。そして人々を躊躇なく襲った。通常のポケモンでも人間を襲うことはあるが、ウルトラビーストは更に酷かった。数は少なかったが、その被害は絶大だった。
ある区域では、ウツロイドというウルトラビーストに一人の男性が寄生された。寄生された人は、途端に包丁を持って暴れ回った。目につく人を片っ端から刺していった。それによって死んだ人は十人以上いた。最終的には、寄生された人を、ポケモンで殺して解決することになってしまった。
またある島では、デンジュモクが暴れていた。デンジュモクは、強力な電撃を放つウルトラビーストだった。次から次へと人々を黒焦げにしていった。並の電気タイプの十万ボルトとは威力が桁違いだった。デンジュモクは体力がなくなると、近くの発電所を襲撃した。そしてエネルギーとなる電気を吸い取り再び暴れ回った。ある老人は「神よ。どうか怒りを沈めてください」と手を合わせていた。デンジュモクは神ではないので当然その祈りは効かなかった。
また別の島では、マッシブーンという、ボディービルダーと蚊を足してニで割らずにそのまま出てきたようなポケモンが暴れていた。マッシブーンは町中に繰り出し、人々に筋肉を見せつけていた。筋肉を見せつけられた人びとは、何を考えているのか分からないという不安と、その筋肉を使って今後暴れてきたらどんな惨事になるだろうという恐怖に怯えた。やがてマッシブーンはとある建物の屋上まで上り、そこで人間に向かって自らの筋肉を見せつけた。町からは途端に悲鳴が湧き上がった。
一番酷いのはアクジキングというウルトラビーストだった。アクジキングは残虐なまでに、人々を片っ端から食べまくっていた。アクジキングは食べても食べても満腹にはならないようで、カビゴンとは比較にならない程の量を食べ尽くしていた。アクジキングは建物ごと口に放り込むので、家にいた人は家ごと喰われていった。避難場所に逃げた人も、その建物ごと喰われた。アクジキングに猛毒を喰わせることも試したが、全然毒は効くことがなかった。
ウルトラビーストはアローラ地方のそこら中で暴れに暴れた。残虐な彼らの行為は止まることを知らなかった。このままではアローラ地方は滅ぼされる恐れがある。
政府は強力なポケモンを持つトレーナーを集めた。トレーナー達は協力してウルトラビーストに攻撃を仕掛けた。
彼らの攻撃はそれなりに効いたが、ウルトラビーストを倒すまではいかなかった。ウルトラビーストはやはりとても強いのだ。レベルの高いポケモンが束になっても敵わなかった。
ウルトラビーストは特殊なオーラを纏っており、それによって強くなっていることがあるとき判明した。彼らは明らかに、普通のポケモンとは一線をなす存在であると分かった瞬間だった。
人々は絶望した。もう駄目だと諦めていった。
しかし、人々が諦めていった時期のことであった。ある一人の救世主が現われた。
その人間は、暴れ回る怪物達を次々と倒し、そして捕らえていった。
その人間は、数多くの強いポケモンを従えていた。そして彼らに対して的確に指示を出した。トレーナーとして殆ど完璧と言わざるを得ない程技の選択が巧かった。
トレーナーのポケモンはウルトラビーストに致命傷を与えることに成功した。オーラを纏われて強力な力を得ている彼らをも凌ぐ破壊力だった。
まずトレーナーはウツロイドを捕えることに成功した。それがニュースで伝えられると人々は歓喜した。そして残り全てのウルトラビースト捕獲の成功を祈った。
ウルトラビーストは例え弱らせることができたとしても、通常のモンスターボールで捕獲することが非常に困難であるらしい。しかしウルトラビースト専用のモンスターボールが最近開発された。そのボールを使ってトレーナーは捕獲していった。
デンジュモクとマッシブーンの捕獲にも成功した。その他のウルトラビーストも苦戦しつつもなんとか捕まえることができた。
アクジキングだけはかなり手間取っていた。トレーナーのポケモンが次々と倒されていた。トレーナーはその場から一旦退却した。
次にアクジキングの前に現われたときには、トレーナーはアローラの四体の守り神を手持ちに加えていた。カプ・コケコ、カプ・テテフ、カプ・ブルル、カプ・レヒレ。トレーナーはこの守り神達に協力してもらうことを考えた。
カプ・コケコ達はアクジキングに攻撃を開始した。守り神の攻撃は恐ろしく協力である。そして、その守り神を従えてしまうトレーナーの力も、恐るべきものと言うべきであった。
結果、トレーナーの勝利となった。なんとかウルトラビースト全てを捕獲することに成功した。このトレーナーがアローラを救ってくれた。
もう人々はウルトラビーストの脅威に晒されることはない。
ウツロイドに寄生されることもない。
デンジュモクに黒焦げにされることもない。
マッシブーンに威嚇されることもない。
アクジキングに喰われることもない。
そして、数ヶ月が経った。
ウルトラビーストによって襲われた町の修復も、だいぶ進んできた。観光客もぼちぼちまた増え始めていた。ビーチは人で溢れ返るようになっていった。また、島巡りを中断していた子供達も徐々に再開していった。子供達が試練を乗り越えていく姿がまたアローラで見られるようになった。
ある日の昼下がりのこと。ハノハノリゾートの砂浜の一角に今日もまた人骨が散らばっているのが発見された。シロデスナに生気を吸い取られる者は数知れない。
テレビを付けると、キテルグマに背骨を折られたトレーナーのニュースがやっていた。そのトレーナーは全力で逃げたが、捕まってしまったとのこと。シルバースプレーを一応持っていたが、効果がいつの間にか切れていることに気が付かなかったらしい。
海の傍に住む一人の老人がいた。彼はつい最近までウルトラビーストの脅威から逃れるために避難していたが、またこの町に戻ってきていた。家族とも再開を果たし、のんびりと余生を過ごしていた。
老人はソファーから立ち上がる。キテルグマがトレーナーを襲っているというニュースをやっているテレビを消した。
実に晴れやかな表情を浮かべていた。
老人は窓から海を眺めた。気持ち良さそうに大きく伸びをした。そして、このような独り言を言った。
「アローラも平和になったなあ」
老人が眺めている海の砂浜では、誰かがナマコブシに殴られていた。
※肉体に痛みはありませんが、ルカリオに対して精神的苦痛を与える話です。
表現力がないのでぬるめですが閲覧注意。
R-18ではないけどR-15くらい?R-12?
いつもいつも、来なければいい、うっかり忘れて、そのままになってしまえばいい、と願っている。
でも、無情にも時計が午後十一時を告げる。
柱時計の音を耳にしたご主人は、それまで読んでいた雑誌から顔を上げた。
「あら、もうそんな時間なのね」
ご主人は雑誌を閉じると立ち上がり、私の名前を呼ぶ。
「クオン、おいで?」
艶やかに笑ってご主人様はそう言った。
普段なら喜んで駆け寄るのに、今はそうしたくない。ああ、またこの時間がやってきてしまった。
固まって動かない私を見たご主人が小さくため息をつく。私はその音を聞いてびくりと震えた。
ご主人をがっかりさせたくない。叱られたくない。
「悪い子」
囁くような小さな声だけど、私の耳はその声をしっかりと捉えてしまう。
悪い子。
その言葉に体が震える。私は慌てて立ち上がる。
「ふふ、クオンは、いい子ね」
ご主人様には褒めてもらいたい、いい子ねっていつだって褒められたい。
重い足取りで、でも一歩、一歩と微笑むご主人の下へと歩み寄る。
「いい子、いい子」
ご主人の手が私の頭を撫でる。私はその感触を目を閉じて味わう。
ご主人の手が私の頬までおりてくると、反対側の頬に柔らかな感触がした。
薄く目を開ければご主人の顔がすぐそこにある。軽く口づけしてくれたのだ。
「いい子にしてたら、もっといいご褒美をあげるから。ね?」
さあ行きましょうとご主人が私の手を取る。
連れてこられたのは私が寝転がるための台。台を前にしてなかなか動き出さない私に、ご主人が言う。
「もう、クオンたらいつまでたっても慣れないのね。大丈夫よ。痛くないって、知ってるでしょう?」
決してそういう問題ではないのだ。でもご主人様に悪気なんて、悪意なんてないのは知っている、よかれと思ってやっているのも。それは今だって感じ取れる。
「クオンはいい子だから、わたしの言うこと、聞いてくれるわよね?」
そう、私はいい子。ご主人の言うことをよく聞くいい子でありたい。だから私は台の上に仰向けに寝転がる。
私は落ち着こうと深く息を吸っては吐き出す。けれど、どうしたって逃げ出したくってたまらないのだ。それを意志の力で強引にねじ伏せる。呼吸に集中して気を落ち着かせていると、ぱちん、ぱちんと手足を拘束する枷をはめられる。
ひ、と喉が鳴り、どくどくと心拍数が上がる。大丈夫だ、大丈夫、これはご主人が私のことを思ってしてくれることだ。自分に言い聞かせて、荒れる息を強引に静めようと深呼吸を繰り返す。荒い息をしている口に枷がはめられる。目を閉じて大丈夫だと心の中で呟いていると、ゴリ、と胸元で嫌な感触がした。
ガツッと手足に衝撃が走る。手足が動かせない! どうして。逃げなければ逃げなければ嫌だ嫌だ嫌だやめて逃げなくちゃやめて嫌だやめてやめてやめ――――
私が暴れている間にもゴリゴリと嫌な感覚が続く。
「動いちゃだめじゃない、クオン」
大好きな、大好きなはずのご主人の声が降ってくる。そうして私は幾分かの正気を取り戻す。
今、ご主人は私の胸にある突起部分をやすりで削っているのだ。何もしなければ尖っているそれは、日常生活を送る上では危険なものでしかない。大部分は昔、病院で削られたけれど、放置すればまた元に戻ってしまう。だから定期的に削る必要がある。これはそういう、必要な処置だ。
でも、
ゴリ、という振動が体に響くたびに体中を不快感が襲う。はめられた口枷のせいでうーうーとしか唸ることしかできず涎がだらだらと口からこぼれて不快だ。首を振り手足を必死に動かし逃げようともがいても、ガチャガチャという音がするばかりでわずかしか動かせない。枷とこすれる部分に痛みが走るけれどそれすら些事に感じられる。気が狂いそうな不快感とゴリゴリという自分の一部が削られていく振動が体中を這いずり回る。
ああああああ嫌嫌嫌嫌嫌嫌やめてお願いやめてやめてやめてお願いやだやだやだ気持ち悪いあああああああカワイイ嫌嫌嫌嫌嫌嫌やめてスキお願いやめてやめてやめてお願いモットやだやだやだ気持ち悪いキモチイイああああああやめてお願いやめてやめてやめてアイお願い嫌嫌嫌嫌嫌嫌やだやだやだシテル気持ち悪いやめてお願いやめてやめてえええええええええええ――――
…………………………。
気がつくとかちゃり、かちゃり、と枷が外されていく。
「クオン、よく頑張ったわね」
ご主人が笑っている。上気したように赤らむ頬が艶めかしく、潤んだ瞳は恍惚とした光を宿している。
「ご褒美に、いいことしましょう?」
私はばんやりとしたまま頷いた。
――
一年くらい前に、ルカリオのあの金属の突起って危ないよなー、バトルしない子には不要だしそういう場合は削っているのでは?なんてツイッターで呟いたことがきっかけでした。
削られるのをルカリオ自身が嫌がってるとなおよし、などと呟いたような呟いてないような。
そういうわけです(
もっとねっとり書きたかったんですけど、それを成し遂げるには盛大に力不足でした。
いろいろテキトーに済ませた部分もあります(
このあとたぶんR-18展開になると思いますが、まあ書かないです。
ご想像にお任せします。
解説するのは野暮かとは思いますが、一応書いておきますけど、ルカリオがやだやだ言ってるとこに挟まるあれは、こう、読み取ってしまった波動的なあれが入り交じってですね。
えーあと、ご主人はこう、ぐしょぐしょですね(察して
以上です。
ありがとうございます!
ふてぶてしさが伝わったのならよかったですwwwww
たぶんアクア団のイズミさんとかにも「化粧が濃いよ。おばさん」とか言ってるんだと思いますw
カビゴン系女子wwwwwww
感想ありがとうございます。
自分でも、勢いで書いたのでこれがどんなテーマを持って書いたのか良く分かってないんですよね。
何かしら、確固たるテーマみたいのはあると思うんですけど、自分自身でも分からない内に完結しました。
どうしてこんな結末になったのか、どうしてこんな流れで、このキャラクターがこういう配置になったかすらも、僕には余り分かってないです。
まあ、本当にそんなものでしたが、読んでくださってありがとうございました。
脳内設定。こんなレベルのカイリューが釣れる訳ないとかそういうのはナシで。
カイリュー Lv85 ♂ さみしがり
はかいこうせん ドラゴンテール しんそく ?
ウインディ Lv47 ♂ のうてんき
しんそく インファイト ? ?
ココドラ Lv8 → コドラ Lv28 ♂ ずぶとい
がむしゃら ? ? ?
タグ: | 【カビゴン系女子】 |
絵からも字からも伝わる、アカリちゃんのふてぶてしさがツボです。
彼女はトシハルと会う前からこんなだったのかw
さすがあの絵葉書(元気なスバメが生まれた)を寄越しただけあるなあと思います。
面白く、読み応えがありました。
ノイズだらけであらゆるものが不定形な世界の中で、管理者と預け入れられるモノたちとの間で交わされる意思疎通が、出会いと別れの存在する一期一会の機会として繰り広げられる様が奇妙ながらも人間くさくて面白かったです。
水雲さんは、もともと計算機工学にお詳しい方なのでしょうか?
ハード、ソフト問わず専門用語が随所で活かされていて、最後まで世界観が一貫しているなと感じました。
こんな預け入れシステムがあれば自分もあれこれ預けてみたいですね。
きっと預ける前より少しブラッシュアップされたモノとして引き出すことができそうです。
イッシュ地方ヒウンシティ
まだ街は起きず、朝霧が港を優しく包み込む。
ポケモンセンターの電子看板以外は全て、物言わぬただの黒壁の板になってるだけ。
そんな優しい白の世界に、そっと包まれた、2つの影が溶け込んでいた
「朝の散歩には、まだ少し早かったかな。」
右手から肩にかけて痣が残るドレディア。名はジャスミン
紫の影は女性で、ドレディアの主人の『リーリエ』。
仲間や友人、それから双子の弟からは『リア』の愛称で親しまれている。
「ねぇ、ジャスミン。少し……遠出しようか。」
ジャスミンは、車椅子に乗る自分の主の姿を見る。
ロイヤルパープルのウルフヘアー。
チェリーピンクのつり気味の猫目。
左の頬から首、そして肩にかけて残る大きな火傷痕。
「れでぃ……。」
「心配しないで。今日は調子がいいんだ。このまま橋を越えてヤグルマの森にでも行くかい⁇それとも4番道路の方にでも行こうか?」
けど、まだ4番道路の方は冷えるだろうから、森の方かな。のんびりと、そして楽しそうに話す女性の顔を、ただ眺めながら、ドレディアは思案する。
彼女はなぜ、こんなにも強いのだろうか、と。
*
*
肉と血が焼ける臭い
大木が燃え、草が燃え、充満する煙と燃え盛る業火が生き物たちを追い詰めていく
雨が降る気配は無い。
いっそのこと清々しいほどに晴れ渡る、とてつもなく憎たらしい星月夜だ。
「っ、……ハイドロポンプは尽きた……水の波動も少ないし、雨乞いをしても、全てを消すほどにはならない………。」
火の粉の中をくぐり抜けながら走る紫の小さな影。
その背中には一匹のドレディア。
右腕には濡れたハンカチが当てられているが、よくみれば赤く爛れているのが布の下から見え隠れしている
「さて……この子を背負いながら走るのもそろそろ限界か………っ、!」
目の前に燃え盛る大木が落ちてきて、思わず足を止める。
散った大きめの火の粉が顔にかかったようだが、ドレディアを背中に抱えた紫の髪の『彼女』はおかまいなく、まだ燃えていない部分に足をかけて飛び越えた。
「っ、……あとで冷やすか。それよりも森を抜けなきゃね。こうなら最終手段だ。」
紫の彼女……リーリエはひとまず飛び越えた大木から少し離れて、一度ドレディアを背中から降ろすと、バックルから下げたモンスターボールのうちのひとつを宙に投げた。
そこから現れた、緑の体の三つ首の巨体のサザンドラが、するりとリーリエの前に降りてきた。
「私は他に逃げ遅れていないポケモンや人がいないか、探せる範囲で探してくる。レディはこの子を背中に乗せて、近くのポケモンセンターまで運んでやってくれ。……そんな顔をするな、レディ。これが私の仕事なんだから。」
頼んだよ、と告げてから、レディと呼ばれた色違いのサザンドラの背に、右腕に痛々しく、そして生々しい火傷を負い、気絶した状態のドレディアを乗せた。ドレディアが落ちないように、近くに運良く、燃えることなく残っていた長めの蔦を使って括り付けると、リーリエは送り出す。
大丈夫、心配しないでと笑いかけた。サザンドラは、主人である彼女のその一言を信じて、背中に乗せたドレディアが落ちぬようにゆっくりと高度をあげて、東に進む。
その先は、シッポウシティ。ここから1番近い場所はそこだろうと判断したらしいサザンドラを見送って、リーリエは視線を未だ燃え盛るヤグルマの森に移す。
「………さて。たとえこの命尽き果てようとも、師匠からの教えと、自らの誓いは守らなきゃね。」
決意に身を固めたその表情(かお)に、いっぺんの曇りも見当たらなかった。
*
*
3月10日(火)
一粒万倍企画掲載
砂糖水さんがリラさんのお話しを待ってくださったので
サプライズですわん
あと私事ですが誕生日迎えました。
これからまた1年がんばっていきます。
NOAH
.
旭光が静かに踏み込むにつれ、淡い朝靄が動き始めた。夜の冷気を宿す晩春の空気が、色づき始めた草露を残
し、森の奥へと引き退いていく。徐々に強まる白い光は輝きを増し、夜半の雨に打ち叩かれた下草を、力付ける
ように優しく包む。イッシュはシッポウの西に広がるヤグルマの森に、何時もと変わらぬ夜明けが訪れていた。
シッポウの街並が漸く目覚めようとしているこの時間、既にこの地の住人達は朝餉の支度を終えており、てん
でに箸を取る為稼業を切り上げ、住居の中へと舞い戻っていた。森際に点在する家屋は何れも一風変わった造り
であり、その殆どが広い庭を構え、更によく整備され細かい砂を敷き詰めた一区画を、その真ん中に設けている
。砂敷きの広場には木製の杭が立っており、散々に打ちすえられたらしいそれらはまだ比較的新しく、中には早
朝の鍛錬の結果へし折られた物も混じっている。ヤグルマの森近辺は格闘家の修練場として知られており、南方
の試し岩を基点として、幾つかの個人道場が散在していた。
無人となったばかりの稽古場が小鳥達の囀りに満たされる中、不意に何処か遠い場所から、微かな矢声が聞こ
えてくる。砂浴びを楽しんでいたムックル達は小首を傾げ、次いで何かに納得したように頷き合うと、小さな翼
をはためかせ、てんでに声のした方へと飛び去ってゆく。雲一つない朝空にゴマを撒いたような黒点が散らばる
と、まるでそれを引き寄せるが如く、再び鋭い気合いが風に乗って、ヤグルマの里に響き渡った。
踏みにじっていた下草を朝風に散らしつつ、じっと相手の隙を窺っていたコジョンドのスイは、その雪白の痩
身を宙空に閃かせ、眼前の敵に躍り掛かった。鞭の一振りの様に風を切り裂く武術ポケモンは一本の征矢と成り
、自分の一挙手一動を完全に把握しているであろう対戦相手に向け、一直線に突き刺さっていく。
果たして相手方のポケモンは、彼女の動きに対し的確な反応を示した。既に波導を通し、コジョンドの攻撃を
予測していたのだろう。相手の体が宙に浮いた瞬間には早くも姿勢を下げて地面を蹴り、最早軌道を変える事の
出来ない武術ポケモンの死角に位置すべく旋転する。くるりと半身を廻したルカリオは、必要最小限の動きでコ
ジョンドの攻撃範囲から逃れると、そのまま着地際の間隙に乗ずべく拳を固め、尻尾を揺るがし身構える。
が、しかし――波導ポケモンが狙い撃とうとしたその隙は、コジョンドが着地寸前に見せた揺らぎによってあ
っさり消え去り、相殺される。完全に掴んでいた筈の相手の波導が予想外の乱れを見せた時、彼女は既に攻撃の
態勢に入っており、踏み込んだ脚は全体重を乗せて、次の一撃に向けた最終アプローチを終えてしまっていた。
「しまった」と臍を噛むのも束の間、次の瞬間ルカリオのリンは鞭の様なもので目元を強打され、出鼻を潰され
た瓦割りは空を切って、蒼い痩身はバランスを失い、大きくたたらを踏む。曝け出された無防備な脇下にはっけ
いを打ち込まれた事により、早朝の一本勝負は呆気ない幕切れを迎えた。
「フェイント、か。引っ掛かった」
息を詰まらせつつ立ち上がったルカリオが渋い表情で零すと、コジョンドのスイは稽古相手に手を差し伸べ、
苦笑いしつつ応じて見せる。
「見切りにはそうするしかないだろ? お互い様さ」
間に合わなかった企画作品その2。嘗て書いた作品の系列につながる御話。所謂過去編。それ以外については同
前(
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雨雲が去ったばかりの空に、大きな虹が懸かっていた。朝霧の残る踏み分け道はひんやりと涼しく、林の奥か
ら聞こえて来るテッカニンの鳴き声も、気持ちの良い微風に遠慮してか控え目で大人しい。朝露に濡れた叢を緩
やかにかわしつつ、ヒューイは木漏れ日に彩られた通い路を、のんびりとした二足歩行で進んでいた。
大きな房尾に尖がった耳。白い毛皮に緋色のライン。胴長の総身を覆う夏毛はそれでも十分に長く、立って用
を足すにはやや不適とも見える短い前足には、幾つかの木の実が抱え込まれている。シンオウでは非常に珍しい
ポケモンである彼は、猫鼬と言う分類や、それに纏わる数々の逸話には到底似合わぬ表情で、幸せそうに欠伸を
漏らす。この按配なら後二時間ぐらいは、あの狂気じみた殺人光線を恐れる心配は無いと言うものだ。
シンオウ地方はキッサキシティに程近い、とあるちっぽけな森の中。冬は止めど無く雪が降り注ぐこの辺りも
、夏の盛りとあっては是非もなく、昼間はそこかしこに陽炎が立ち昇って、涼味も何もあったものではない。元
々南国の住人である彼は兎も角、間借りをさせて貰っている同居人達は滅法暑さに弱いので、この季節は殆ど動
こうとしない。勢い役立たずの居候である彼に、雑用の御鉢が回って来ると言う訳である。最も彼自身、現状に
は酷く窮屈さを感じている為、こうして何かをさせて貰っていた方が反って有難いのだけれど。
足裏に感じる、まだ温まりきっていないひんやりとした土の感触を楽しんでいる内。やがて不意に林道は途切
れ、小さな広場に辿り着く。林の中にぽっかりと空いた、雑木も疎らな空白地。所々に岩の突き出たその場所が
、朝の散歩の終着点だった。足跡や臭いなど、様々なポケモンの痕跡が感じ取れる中、ヒューイは真っ直ぐ手近
の岩へと歩み寄ると、その根元を覗き込む。そこには良く熟れたクラボの実が幾つかと、硬くて噛み応えのあり
そうなカゴの実が一つ、大きな蕗の葉の上に並べられていた。此処には目的のものがない。そこで彼はその岩の
傍を離れると、隣に腰を据えている三角の岩に場を移す。此方の根方にあったのは、喉元を綺麗に裂かれて無念
気な表情を浮かべている、二匹の野ネズミの死骸。乾いた血の痕にぶるりと身震いした彼は早々にそこから離れ
ると、三つ目となる赤い岩の方へと足を向けた。日に焼けた岩肌に眼を滑らせていく内、漸くお目当てのものを
見つけ出す。岩陰に敷かれた緑の葉っぱに乗せられていたのは、つるりとした白肌も眩しい、三個の大きな卵だ
った。大きさからしてムクバード辺りのものだろうか。朝の光を浴びてつやつやと輝くそれは、如何にも新鮮で
美味しそうだった。
品物の質に満足したヒューイは、次いで視線を戻し、自らのなぞった道筋を辿って、岩肌の一角に目を向ける
。卵が置かれた場所より丁度腕一本分ぐらい上に岩を削って印が付けられており、続いてその下に、品物を置い
ていった主が必要としているものが、この種族独自のサインで簡潔に記されていた。一番上の表記を見た瞬間、
彼は思わず顔をほころばせ、我が意を得たりと独り頷く。個人を表すそのサインの主は、顔見知りのマニューラ
・ネーベル親爺のものだ。腕の良い狩人である半面酩酊するのが大好きな彼が欲しがるものと言えば、マタタビ
に辛口木の実と相場が決まっている。案の定『一個につきマタタビ三つ』と言う明記があるのを確認すると、ヒ
ューイは抱え込んでいた緑色の木の実を全て下ろし、代わりに三つの卵を大事に抱え込んで、悠々とその場を後
にした。
遣いに出て行ったザングースが帰って来た時、ねぐらの主であるラクルは、既に朝食となるべき獲物を仕留め
、丁度綺麗に『調理』を終えて、住処に運び入れた所であった。内臓を取り分けて皮を剥ぎ、近くの流れでよく
洗った野ネズミの肉を鋭い爪で分けていると、住居としている岩棚の入口から、「ただ今」の声が響いて来る。
無警戒な足音が近付いて来た所で顔を上げ、そっけない挨拶を返しながら、彼女は狩りのついでに確保しておい
たオレンの実を汚れてない方の腕で拾い、ひょいとばかりに投げてよこす。「お疲れさん」の言葉と共に飛んで
きたそれを、紅白の猫鼬は大いに慌てながらも何とか口で受け止めて、腕の中の荷物共々ゆっくり足元に転がし
た。
「どうやら収穫があったみたいだね。有難う、助かるよ」
やれやれと言う風に息を吐く相手に向け、ラクルは何時もと変わらぬ口調で礼を言う。御世辞にも温かみに溢
れているとは言えない、まさに彼女自身の性格を体現しているような乾いた調子だったが、それでも好意と感謝
の念は十二分に伝わって来るものだった。それを受けたザングースの方はと言うと、これまた生来の性分がはっ
きりと表れている感じで、多少慌て気味に応じて見せる。何時になっても打ち解けたようで遠慮会釈の抜けない
その態度に、家主であるマニューラは内心苦笑を禁じ得ないのだが、それを表に出して見せるほど、彼女も馴れ
馴れしいポケモンではなかった。
「いや、大した事じゃないし……! こっちは朝の散歩ついでなんだから、感謝されるほどの事もないよ。木の
実だって、僕が育てた訳じゃないんだし」
「どう言ったって、あんたが私達の代わりに交換所に行ってくれたのには変わりないさ。対価だって自前で用意
してくれたんだ。居候だからって遠慮せずとも、その辺は胸張ってくれて構わない」
「木の実一つぐらいじゃ足代ですら怪しいからね」と付け加えると、彼女はもう一度礼を言って、ザングースが
持ち帰った卵の一つを引き寄せた。肉の切れ端を一先ず置いて立ち上がると、卵を軽く叩いて中の様子を確認し
てから、奥の方へと持っていく。干し草を敷いた寝床の一つに近付き、横になっていた黒い影にそれを渡すと、
持ち帰った相手に礼を言うよう言い添える。体を持ち上げた黒陰は小柄なニューラの姿になって、そちらを見守
る気弱な猫鼬ポケモンに、笑顔と共に口を開いた。
「有難う、ヒューイ兄ちゃん!」
「どう致しまして、ウララ。暑い日が続いてるけど、早く良くなってね」
ザングースが言葉を返すと、まだ幼さの残る鉤爪ポケモンは「うん!」と頷いて、彼が持ち帰った御馳走を嬉
しそうに掲げて見せる。夏バテ気味の妹に寝床を汚さぬよう起きて食事するように言い添えると、ラクルはヒュ
ーイに向け、自分達も朝食にしようと声をかけた。
ヒューイは臆病者の猫鼬。ある日ふらりとこの近辺に現れた彼は、今目の前で一緒に朝食を取っている、マニ
ューラのラクルに拾われた居候だ。元々人間に飼われていた為、野生で生きていく術も心得も一切持たなかった
彼は、本来の生息地から外れたこの地で仲間も縄張りも持てず追い回された揚句、栄養失調で生き倒れになりか
かっていた所を、全くの異種族であり野生のポケモンである、彼女によって救われた。
まだ根雪の深い春先の頃、泥だらけでふらふらのザングースを見つけた彼女は、マニューラという種族が当然
取るべき行為をあえてやらずに、彼を生かして自分のねぐらまで運び込み、熱心に世話を焼いた。本来なら肉食
性の狩人であり、仲間内の結束は固い半面異種族に対しては非常に冷酷なニューラ一族の事であるから、彼女の
この行動は当時大いに波紋を呼び、実際実の兄弟達からも、さっさと始末を付けるよう何度も言われたらしい。
今でもヒューイ自身、これに関してあくの強い冗談や皮肉を言われる事が少なくないのだから、当の本人である
ラクルがどれだけ風当たりが強かったかは、推して知るべしと言ったところである。
ところがしかしラクル自身はと言うと、そんな事は自分からはおくびにも出さず、後に周囲からの言葉よって
己がどれほどの恩を受けたかを悟った彼が恐る恐る話題を向けてみても、「好きでやった事さ」と切り捨てるだ
けで、何ほどの事とも思っていないようだった。彼女は寧ろ、ヒューイが自分の妹であるウララの命を救った事
の方に強い借りを感じているようで、今でもやたらと『手のかかる』ポケモンである彼を止め置き、何くれと面
倒を見てくれている。正直身の縮むような思いではあるものの、未だに自力で生きていける自信が毛ほどにも感
じられない彼としては、こうして養って貰う他には光明が見出せないのが現状である。
ヒューイが彼女に恩を作ったと言うのも、いわば成り行き上の事に過ぎない。長い眠りから覚めたあの日、自
分の置かれていた状況がまるで分かっていなかった彼に対し、恩人の冷酷ポケモンはどこか落ち着きに欠けた様
子ながらも、好意的な態度で事の次第を話してくれる。「好きなだけ居てくれて良い」と言い置くと、気忙しげ
に場を立った彼女の態度が賦に落ちず、おっかなびっくり立ち上がった先で見たのが、熱にうなされているニュ
ーラと、それを看病しているニューラとマニューラの姉弟だった。狩りの際に負った傷が化膿し、明日をも知れ
ぬ容体だったウララを救う為、ヒューイはその足でキッサキの町まで駆け走り、毒消しと傷薬を手に入れて来て
、無事彼女の一命を取り留める事に成功する。長く人間と共に暮らし、『飼われ者(ペット)』の蔑称で呼ばれ
る身の上だったからこそ出来た芸当であり、同じように命を救われた彼としては寧ろ当然の行いであったものの
、これによって彼自身の株が大いに上がったのは間違いなかった。結果的に、彼は家族の恩人としてラクル一家
に受け入れられたし、群れの他のマニューラ達からも、『役立つポケモン』として一応の存在を認めて貰えるよ
うになったのである。
間に合わなかった企画作品その1。どうせ自分の事だからどこか別の企画で再利用するかもしれないですが(殴
)、取りあえず験担ぎも兼ねて……。
June,6
「バトルに使うポケモンのタイプ別傾向」などというレポートに使う資料集めのために、ライモンのスポーツ施設に通うようになって早一週間。初めのうちは面倒くさかったものの観てみるとなかなか楽しく、自分も参加したくなってきた。とは言え俺のヨーテリーじゃあすぐに負けてしまうだろうから、もっと鍛えてからだろうけれど。
June,8
今日の目玉は、エンペルトとトロピウスの一騎打ち。タイプ相性からトロピウスが勝つだろうと観客のほとんどが予想していたけれど、タスキで持ちこたえたエンペルトが冷凍ビームを放って逆転した。バトルには色々な工夫があるのだなあ。
June,9
今日はダストダスを連れたトレーナーが来た。あまりの悪臭に初めは何かと思った。毒ポケモンでもあそこまで強い臭いは今までお目にかかったことが無いかもしれない。見た目や臭いから物凄く強く感じたけど、レアコイルと当たったバトルで後少しのところで敗れてしまった。昨日とは違い、タイプが原因となって負けることも勿論あるのだ。
June,10
昨日のダストダスがまた来た。今日の対戦相手は最近カロスで人気に火がついて、ポケモンアイドル界隈で頂点に降臨しているニンフィアだった。フェアリータイプに毒タイプの攻撃は効果抜群、ダストダスの放ったヘドロの塊にピンク色の身体はドロドロにされてしまった。
……俺はあまりポケモンを見た目で判断する方では無いけれど、流石に今日のはニンフィアがかわいそうになった。俺以外にも、観客の若い女の子たちが悲鳴をあげていたりした。
しかし、一撃で倒すなんてあのダストダス、強いんだな。
June,12
いつものようにバトル観戦。と、半ズボンを履いた元気そうな少年からバトルを申し込まれた。昨日は一日トレーニングに当てていたこともあり、応じることにした。
結果は敗北。空を飛べるミツハニーに特訓した穴を掘るは通用しなかったのだ。今日の失敗を糧にして、また頑張ろうと思う。
June,13
大学の講義が長引き、急いで観戦へ。スタジアムに飛び込んだら、ちょうど件のダストダスがバトル中だった。ヤルキモノをげっぷで倒した時には会場が何とも言えない空気に包まれた。
しかし、今日は朝から降っている雨でスタジアムも湿気ていた。おかげでダストダスの臭いが一層気になる。トレーナーの人は大丈夫なのだろうか。というか、あの臭いじゃあ家の中には到底入れられないと思うけれど。
June,14
なんと、あのトレーナーと話すことが出来た。勿論「あの」とはダストダスのトレーナーのことだ。
バトルの空気を掴んでもらうため、俺はヨーテリーをボールから出していたのだけれどもヨーテリーが急に吠え出した。あまりに騒ぐから何かと思ったら、挙句駆け出してしまったので慌てて追いかけると、その先には例のダストダスに威嚇しているヨーテリーがいた。ヨーテリーたちは鼻が利くから、ダストダスの臭いが気になったのだろう。しかしどう見ても失礼な行為だから急いで謝ると、トレーナーは苦笑して許してくれた。
そこからここに通う者同士話が弾み、俺は昨日気になったことを尋ねてみた。どうやら、やっぱり家には入れられないから夜は家の近くのゴミ捨て場で寝かせているらしい。なるほど。
June,15
ダストダスについて少し調べてみた。ゴミを取り込み、自分の身体や毒ガスにしてしまうということがわかった。ゴミなら何でも良いのかな? 流石に、冷蔵庫とかの粗大ゴミじゃ駄目そうだけど。どちらかと言うと生ゴミ系統な気がする。
June,17
昨日、一昨日と行けなかった観戦に行った。ダストダスもいたのだが、対戦相手になったグラエナが異様に唸っていたのが印象的だ。ただ臭いから、と言うよりは一種の興奮状態に見えたけれど……俺にはよくわからない。
それにしてもあのダストダス、見るたびに強くなってないか? 特にダストシュートの破壊力は凄まじく、毒の力だけで無く勢いもすごかった。育て方が良いのか、それとも食べてるものが良いのだろうか? 良質の生ゴミ……なんてな。
June,18
ヨーテリーのトレーニングをすべく、早朝ランニングをしてみた。バトルサブウェイの方を走ったのだけど、近くのマンションのゴミステーションでダストダスが寝ているのが見えた。もしかしなくても、きっと例のダストダスだろう。
June,19
大学前で学生運動が行われていた。急いでいたからあまり内容はわからなかったけれど、ポケモン愛護関連だったと思う。
最近じゃあ、一部の過激なトレーナーがポケモンを『廃棄』するだなんて話もあるくらいだから、それが嘘か本当かはわからないとは言えああいう活動が出てきてもおかしくない。少し前には、ポケモンリーグの優勝者が孵化したばかりのポケモンのうち、弱いものを袋に詰めて捨てていた、などという報道が写真付きで週刊誌に掲載されたこともあったし。
アレはすぐに嘘だということがわかり、いわゆるマスゴミの自演として風化したけれども、ポケモンをそういう風に扱う人は絶対にいないと思いたいものだ。
そう言えば、今日もダストダスが来ていた。相性の悪いゴチルゼルのサイコキネシスにもドわすれで耐え、ギリギリのところで破ってみせた。また強くなっている。
June,20
今日はダストダスはいなかったが、俺自身がバトルをした。また負けてしまったが、もう少しのところだったから次はいけるかもしれない。ヨーテリーの気合も上々だ。
そう言えば、対戦相手になってくれた鳥使いに教えてもらったのだけれど、バトルサブウェイでは人のポケモンを見るのが得意なエリートトレーナーにアドバイスをもらえるらしい。どうやら、何がそのポケモンの良いところか教えてもらえるそうだ。明日行ってみようと思う。
June,21
早速行ってみた。俺のヨーテリーは攻撃力が高いらしく、エリートトレーナーは頭を撫でてしきりに褒めてくれた。ヨーテリーもわかっているのかわかっていないのか、嬉しそうにしていた。
エリートトレーナーによると、俺が来る少し前にポケモンリーグの優勝者が来ていたらしい。メラルバを沢山連れてきたという。後少し早ければ見ることが出来たかもしれないのに、と思うと少し悔しい。
June,22
ダストダスの今日の相手はウインディ。またもや異常な吠え方をされていたけれど、ダストダスとトレーナーはもう慣れきっているようだ。
結果はダストシュートでダストダスの圧勝。本当、見るたびに強くなっていてびっくりしてしまう。特に攻撃力が一段と上がっているような……。今度、強さの秘訣やトレーニングの仕方を聞いてみようと思う。
そう言えば、今日のダストダスの背中のあたりに赤くて尖ったものが刺さっていたけれど、あれはなんだったんだろう? この前までは無かったように思えるけれど。
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あの頃は、何の意味も無い単純な作業が楽しかった。全クリされたポケモンの赤をまだ遊んでいた。何をしていたかというと、自転車と波乗りと使ってぐるぐるとカントー地方を周っていただけだ。何が楽しかったのか、今考えると全く理解できない。
小学校一年生の頃なんて、所詮そんなものである。傍から見て訳が分からないし、自分でも訳が分かってないのだ。
それから一年くらいして、赤のセーブデーターを消した。元々ポケモンはおじから貰ったもので、データーもおじのものだった。一度消して自分で一からやり直したい。そろそろ自分もそう思いはじめたのである。同じ所をぐるぐる周るのは飽きたのだ。
しかし、そうしてみたはいいものの、自分はポケモンを育成するなんてしたことがなく、要領をつかめずにいた。最初の三匹から選んだヒトカゲは、レベル8まで育てることができたのだが、掴まえたコラッタが全然育たない。最初だけ戦闘に登場させ、後は強いポケモンに交代して倒すことで、経験値を半分入れて育てていくなんて方法は知る由もないし、思いつくわけがない。ポケモンが育たないことには、バッチを得ることができず、次の町に進めない。結局自分は同じ所をぐるぐるとしていた。
さて、本筋に入る。m君という子がいた。少し太っていて、けれどもガキ大将とかそういうタイプではなく、まあ少し声の大きい子だった。m君と自分はそれなりに仲が良かった。家が離れていたので、そう何回も遊んだわけではないが、たまに自分の部屋で一緒にゲームをやったりしていた。
そんな彼は自分の家から帰る間際、こう言ったのである。ポケモンを貸してと。
代わりに育ててやる、ということらしい。その言葉に自分の心が動いた。とりあえず、野生のポケモンは倒せる位に強くしてくれれば、後は育てるのは難しくない。そう思ったから、つい頷いてしまったのである。彼はそのままカセットを握りしめ、またねと挨拶して帰っていった。
それから三週間が経過した。
普通ゲームを貸すと言ったら、ニ週間くらいが限度だろう。まだ返ってこないだけでなく、そろそろ返すよ、という話すら無いのは異常である。
二時間目と三時間目の間の業間休みに、m君に聞いた。もっと早くに聞けばいいのに、今更である。
「僕が貸したポケモンどうなった?」
すると彼は、思いっきりわざとらしくぽかんとした顔をした。
「え、俺借りてないよ」
白を切られてしまったわけである。僕は追求した。いや、確かに自分は貸したと。三週間前に。それでも彼は絶対に認めなかった。何度言ってもである。
二十分の業間休みをフルに使って水掛け論をした。彼は己の間違いを最後まで認めなかった。
そんなにNOと言われると、本当に貸したかなと自らを疑い、部屋を確認してしまう自分は阿呆である。どこを探してもポケモンは見つからない。やっぱり貸したのだ。間違いない。
いったい彼は何故返さないのか。まだ遊びたいのか。だったら自分で買えばいいのに。
一ヶ月して、もう一度言った。
三ヶ月して、もう一度言った。
一年して、もう一度言った。
自分はもう諦めていた。いくら返せと繰り返しても、借りてないの一点張り。m君の部屋を確認することを求めても、それは駄目だと厳しく怒る。
いったい自分が何をしたのか。貸したのが間違いなのか。甘い誘いに乗ったのがいけなかったのか。
ゲームには育て屋と言って、ポケモンを預けると育ててくれる施設がある。しかし、そこはポケモンの成長に応じて、お金を払わなくてはいけない。ならば僕も対価を払う必要があるのか。
試しに、千円やるから返してくれと頼んだ。千円なんて持ってない。ただ相手の反応を見てみるだけだ。m君は、そもそも借りてないからお金を出されても困ると言った。やっぱり認めないのか。
そのうちに、周りは金銀を遊ぶようになった。つられて自分も金を始める。徐々に赤のことなんて忘れていった。もう自分はポケモンの育成方法を分かっていた。自分はそれなりに成長していて、だからちゃんと進められた。しかし、氷の抜け道を通過できず、クリアすると関東地方に行けることを知らないままゲームを終えた。
さて、そんなこんなで月日は過ぎる。中学生になった頃、m君は引っ越すことになった。正直クラスも変っていて話してもいなかったし、全然交流がなかったのでふーんで終わった。
しかし引っ越す三日前くらいに、彼が言ってきた。借りていたポケモンを返したいと言ってきた。
もう何年前のことであろう。今更何を言っているのだ、と思った。もうポケモンなんてやっていない。
しかし、自分の手の中にリザードンが描かれたカセットが握られたとき、少しだけ僕の心にノスタルジーに流れ込んだ。
家に帰って、割とドキドキしていた。さっきまでもういい今更かと思っていたが、考えてみるとこれだけ長い時間借りていたのだ。きっと強いポケモンが育っているに違いない。図鑑も完成しているかもしれない。そういえば、図鑑が完成したときの、オーキドの評価の言葉は何になるんだろう。
様々な期待があった。ロード中は少々いらいらした。続きから始めるを押すと、冒険がどこまで進んだのか色々記録が出るのだが、aボタンを連打していたから見れなかった。
そして、ついに主人公が画面に現れた。懐かしい音楽が流れた。しかし、その音楽はトキワの森であった。主人公がいる場所もトキワの森であった。
嫌な予感がした。
selectボタンを押し、手持ちのポケモンを確認してみると……
ヒトカゲ レベル9
コラッタ レベル3
ほとんど変っていなかった。
タグ: | 【フォルクローレ】 |
No.017です。
新たに参加してくださる絵師さんと担当記事が一部決まりましたのでお知らせします。
【一次・二次作品担当絵師さん】
「木の記憶 人の記憶」サトウマミさん
「ひとりあそび」夏菜さん
「渡し守の歌」じっぺさん
「今日も鼠の子は増える」椛苗ゆずさん
「木々を届ける神」天草さん
「雨乞い婚」きくよしさん
【記事選考中】
大崎えるさん
【三次応募から選んでくださる絵師さん】
yotoさん
喬川琴花さん
南瓜とるてさん
決まったのは以上です。
また、来週に参加や記事選びの答えを下さる方がいらっしゃいますので決まり次第発表します。
絵師さんの詳細は企画サイトからどうぞ。
http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/index.html
部屋を掃除していたら、とんでもない代物が出てきた。
と言っても、俗世間様には全く価値が無い物だけど。
「……」
時は十年以上前。私が小学二年生だった時のこと。ポケモンはジョウト編の最後の年。映画はラティアスとラティオス。唯一私が見損ねた映画でもある。
国語の授業で、『のはらうた』をやった。動物や虫の気持ちになって詩を詠むのだ。小二にしてはハードルの高い課題だったと言えよう。
当時私は工藤直子さんの小説『ともだちはみどりのにおい』を読んだばかりだった。馬鹿正直に私はそれを読んだことを詩に書いた。
へったくそな絵まで付けて。
「懐かしいな」
だがそれが先生の目に留まることとなる。しばらく後、私は後ろに貼られているはずの詩が数枚抜けていることに気づく。そしてその中には、私の詩も入っていた。
少し考え、まさかと思い私は教室を飛び出した。向かった場所は一年生が毎回帰る時に集合する場所。校門前。
うちの学校は独特の構造をしていて、入口が三つあった。一つは業者用。あと二つはそれぞれの道から登校してくる生徒用。
私は坂を登った先にある、校舎直通の門から入っていた。
そこには一年から六年までの掲示板があった。
「!」
二年の掲示板に、五枚の詩が展示されていた。
その中に、私の詩があった。
今思えば、それが私の一番始めの創作だった。
幼稚園の頃から何かを書くのは好きだったけど、ここで一区切りがついていた。
その後も時々書いた文章が学年通信に載ったりした。
『ともだちはみどりのにおい
わたしは図書館で かりた本をよんだ
さいしょにライオンがいて、
つぎにかたつむりがいて、
さいごにロバとともだちになる』
その時は、まだ自分がこんな所にその内容を書くなんて思ってもいなかった。
そもそも未来を夢見ることもあまりしなかった。
でも、
大人になれば、何でも出来ると――
それは、思っていた。
こんにちは。NOAHです。
まずは、この小説をここまで読んでいただき
本当にありがとうございます
長編未経験ながら、どこまで書けるか不安ながら
衝動だけで書き始めたこの小説ですが
少しずつ書き足していってるのが現状です。
これを書く前にも書き足したのですが
このような形で更新して大丈夫だろうか?
と、疑問に思いました。
と同時に、このまま書き足すことも、勝手に消してしまうことも
マサポケ管理者のNo.017様を始めとした
たくさんのマサポケノベラー様に、ご迷惑になるのでは?
とも思っています。
そこで皆さんに、お聞きしたいことがあります。
それは、この「アリゲーター・ロンド〜受け継がれる名前〜」を
消した方がいいか、書き終えた方がいいかということです。
私個人では、どうしても決めきれません。
皆さんのご意見を、ぜひお聞かせください。
NOAHより.
『ヘルガーが来たぞ!』
その声を聞いて集落は恐怖に包まれる。
『ヘルガーが来たぞ!』
見張りの少年の声を真似て、ペラップは何度も鳴きながら飛び回る。
その集落はメリープを育てる遊牧民のコロニーだ。そんな場所にヘルガーはやってくる。ヘルガーはその牙や爪、炎を使って人々やメリープを襲う。
大事な物を纏めて、もしくは何一つ運ぶこともできず、メリープと人々はその場から一目散に逃げる。
一人残らずに逃げ切ったところ、前々から決まっていた避難場所で皆が冷静になったところ、最後の一人が現れる。危機を知らせたペラップを肩に乗せ、皆のことを見回しながら少年は満面の笑みを浮かべた。その時だけ少年は笑う。
ヘルガーは来なかった。
少年の両親はヘルガーに食べられてもうこの世にいない。天涯孤独になってしまった少年をある親子が引き取って育てた。同じく妻をヘルガーによって失っていた男も、同い年の少女も、少年を新たな家族として迎え入れて精一杯の愛情を与えたつもりだった。
少年は男の言いつけを守り良く働いた。しかし少年は笑わなかった。幼くして両親を亡くしたのだ。無理もないと思いながら親子は特に変わらずに少年に接した。しかし、集落はそんな少年に最初こそ同情したものの段々と気味悪がるようになった。少年が熱心に働けば働くほど集落の心は離れていくようだった。
ある日、少年の働きが一人前と認められた時、集落はある決定をして少年に仕事を与えた。
見張りだ。
集落の端で放牧を行い、異変が起きればそれを皆に知らせる。重要な役割だ。そしてそれは危険な役割だった。
少年の父親代わりの男は異を唱えた。そんな危険な役を押し付けるのか、一人前に認められたとはいえまだ子どもではないかと。しかし少年は極めて平静に言った。僕がやります、と。
ある日、ペラップが集落を飛んで回った。少年の声で「ヘルガーが来たぞ!」と何度も鳴いて飛び回った。皆は少年がペラップを使って危険を伝えたのだと思い、メリープを連れて一人残らず逃げた。しばらくして少年が姿を現した。幸い、誰一人ヘルガーの餌食にならなかった。
それからしばらくして同じようなことが起きた。また犠牲者は出なかった。しかし集落に戻ったところで誰かがおかしい、と言い出した。ヘルガーを誰一人見ていないというのだ。そしてヘルガーが来た形跡すらないと言ったのだった。ヘルガーはほのおポケモンだ。少年の親が犠牲になった時も、それ以外の時も、集落で火事や焼け焦げた跡があった。しかしこの前も今回もそれが無い。その時はおかしいと思わなかった者達も、再びペラップが『ヘルガーが来たぞ!』と飛び回り、何も起きなかったことに不信を抱いた。そして誰かが少年に聞いた。
「どこも燃えてないのか。ヘルガーはここまで来なかったのか?」
少年は笑った。誰もが始めてみる満面の笑みを浮かべるだけで、何も言わなかった。
平穏が続き、忘れた頃にそれは繰り返された。そんなことが何度か続いた時、誰かが言い出した。
「アイツは我々にヘルガーが来たと嘘をついてからかっているんだ! 嘘をついて逃げ回っている俺達を見て笑っているんだ!」
「アイツは集落の者を恨んでいるんだ! 自分の両親が食われたのは我々の所為だと思っているんだ!」
人々は段々少年に不信感を募らせていった。
「寒くない?」
「うん」
夜風に当たる少年の元に少女がやってきた。頬を押さえる少年を見て彼女は溜息をつく。濡らしたハンカチを手渡して彼女は言う。
「またお父さんに殴られたの」
「うん」
「どうせ『だって』とか言ったんでしょ?」
「『言い訳するんじゃねぇ!』ってさ」
「あなたはペラップとは違って物真似の才能はないわね」
少女が薄暗いながらも彼の腕や脚に痣があるのを見つけた。父の仕業だろうか? いや、きっとそうではないのだろうと思った。少年を良く思っていない連中の仕業で、そのことが原因で口論になったのだろうと推測した。
「ねぇ、ペラップに『ヘルガーが来た』って鳴かせるのは止めなよ」
「どうして?」
「もし、ヘルガーが来なかったらどんな目に遭わされるか――」
「君はヘルガーが来た方がいいって言うのかい?」
「そんなことあるわけないでしょ!」
「じゃあ、僕は止めないよ」
そう言って、彼は家に戻っていった。
少女は、本当は見張りなんて辞めればいいと言いたかった。
でも言えなかった。
少年が見張りを辞めたら誰が見張りをやるのか。辞めろと言ったら「じゃあお前がやれ」と言われるのが怖かったのだ。それは彼女だけではない集落の皆が思っていることだった。だから少年はずっと見張りをさせられている。
我が身の可愛さに何もいえない自分が情けなくて、悲しくて、少女の目から涙が溢れた。
それでも家族である自分だけは少年を信じなければならないのに、人々が逃げ回った後だけ見せる彼の笑顔を見ると、彼女は何にもわからなくなってしまうのだった。
そして、またペラップが集落を飛び回る日が来た。
『ヘルガーが来たぞー!』
ペラップが飛び回りながら叫ぶ。何ども叫ぶ。
だが集落の者は誰一人として慌てる者はいなかった。
「またか」
「全くしょうがないやつだなアイツは」
誰一人として逃げる者はいなかった。皆は少年にどんな言葉をかけてやろうか考える。今度は騙されなかったぞ、と笑いものにしてやろうという者もいれば、今度こそ足腰立たなくなるまでぶん殴ってやると息巻く者もいた。
ヘルガーは現れなかった。そして少年も現れなかった。
夜になっても朝日が昇っても、次の日も、そのまた次の日になっても帰ってくることはなかった。
それから数日して少年が放牧していた場所の近くで、焼け焦げ食い散らかされた少年らしき亡骸が見つかった。近くにペラップが飛んでいて間違いないとされた。集落の皆は新たな見張り役が選ばれることを恐れ、その見張りは同じような目に遭うのだと思い、憂鬱になった。因果応報だと少年の死に悲しまなかった。親子を除いては。
「お父さん、飲み過ぎよ」
「うるさい」
枯れた声で娘が制止しても男は酒を飲むのを止めなかった。男はその日、朝からずっと酒を飲み続けている。
「もう、その辺にしておいてよ。私、水を汲んでくるわね」
娘が出て行くと、男は空になったコップに酒を注ぎながら、テーブルの上で豆をつまむペラップを見た。
「お前の主人は馬鹿なヤツだったよ」
呂律の怪しい男の声を聞き、ペラップは男をじっと見た。それが妙に癪に障り、男は紅い顔をさらに真っ赤に染めてテーブルを叩いた。
「テメェの主人は大馬鹿野郎だっ!」
大きな音と声に驚きペラップは飛び上がった。そして男の頭上を羽ばたいてぐるぐる回ると大きな声で鳴いた。
『ヘルガーが来たぞ!』
少年の声でペラップは何度も言う。
『ヘルガーが来たぞ! ヘルガーが来たぞ!』
「止めろ」
『ヘルガーが来たぞ! ヘルガーが来たぞ!』
「止めろって言ってるだろう!」
男は中身がまだ入っているコップを投げつけました。直撃し、落ちてきた所をさらに男は殴り、ペラップは壁に叩きつけられました。
『ヘルガー……ヘルガー……』
「まだ言うかこの――」
男が再び怒鳴り声を上げようとした時、ペラップは少年の声で言った。
『ペラップ、早く行くんだ』
男は動きを止めた。それは初めて聞く言葉だった。
『早く行って みんなに知らせるんだ』
羽を広げたまま息も絶え絶えにペラップは言う。
『ここは通さない ヘルガーめ 僕の大切な人達に近づけさせるものか』
「おい、何を言ってるんだ――?」
『あっちへいけ 絶対に通すものか おいペラップ何やってる 早くみんなに知らせるんだ早く』
男は知っている。ペラップは聞いたことしか物真似ができないことを。少年が会話しようとどれだけ喋っても、聞いたことをオウム返しに喋ることしかできなかったことを。
『ペラップ 帰ってきたのか でも下手を打ったかな いつもみたいにいかなかった いや いつもが運が良かったのかな? 大丈夫 先に行けよ もう 不思議と痛くないんだ もう少し休んだら行くよ』
それが何なのか想像することはたやすいことだった。
そう、これはペラップが聞いた少年の言葉。
「そんな馬鹿な――」
「どうしたのお父さん? そんなところに突っ立って」
顔を向けると入り口に少女が立っていた。彼女は部屋を見回すと驚き、水の入った桶を乱暴に置くと壁際に伸びているペラップに駆け寄った。
「ちょっとお父さん! ペラップは何も悪くないでしょ! 急いで手当てしないと!」
治療道具を急いで取ってくると娘はペラップの手当て始めた。
「そうだ悪くない」
「え?」
少女は父の呟きが聞こえて思わずその顔を見る。まるで生気の無い表情でどこか遠くを見ていた。
「ペラップも、あいつも悪くないんだ……」
男は気が抜けたように座り、そのままテーブルに突っ伏した。そして両手を握ると、何度も何度もテーブルに打ち付けた。
「ヘルガーが来なかった時俺達がするべきは怒ることじゃなかったんだ! そんなことじゃなかったんだっ!」
肩を震わせ叫ぶ彼に娘は何も言うことはできなかった。ただ、彼女の側でペラップが『馬鹿野郎』と男の声で小さく鳴いた。
その集落でペラップが『ヘルガーが来たぞ』と少年の声で鳴いて飛び回ることは二度と無かったという。
一匹のワルビアルが、突っ立っていた。
砂嵐のひどい、この4番道路のど真ん中で
傷だらけの体に何も手当てをせず、誰かをずっと待っていた。
その傍らには、1つのポケモンのタマゴがあった。
孵るとしたら、おそらく、メグロコ……。
このワルビアルの子が生まれるのだろうと、大体の検討がつく。
「……まだ待つつもりか?」
「がう。」
「お前のトレーナーは……ヤツはもう死んだんだぜ?
お前はもう野生だろう。ヤツの言葉に従うことはねぇだろうが。」
そう。コイツのトレーナーは、相棒であったあの男は死んだ。
コイツの目の前で、幼い少女と、傍らのタマゴを守ろうとして、死んだ。
ヤツが死んだことで、唯一の手持ちであったコイツは野生となった。
だがコイツは、今でも死んだヤツの、最後の言葉を聞いて、今まさに、それが果たされようとしている。
ザッ、ザッ、と、砂を踏む小さな足音が聞こえた。
吹き上げる砂煙の向こう側から現れたのは、12、3才くらいの少年だった。
砂嵐から身を守るための防護用コートで身を包んでいるため確認できなかったが
確実に、わかったことがある。
あの少年は、死んだヤツの子どもだ。
ワルビアルはタマゴを持ち上げると、無言で少年に近寄る。
少年は、ワルビアルとタマゴを交互に見やり、こちらも無言で受け取った。
「……父さんのこと、悔しかったろ。」
「…………。」
「ありがとう、父さんの傍にずっといてくれて。
……本当に、ありがとう。幸せだったと思うよ、きっと。」
少年は、自分より背の高いワルビアルに、臆せず話しかける。
普通のガキなら、そのいかつい見た目を怖がるっつーのに
ヤツの子である少年からは、微塵もその様子はなかった。
「よう、少年。」
「……だれ。」
「てめえの親父を撃った……って、言ったら?」
少年は眉を顰めて、ポケモンが入ったボールを
無言で突き出すように構えた。
ギロリ、と睨みつける目は、ヤツにそっくりだった。
「冗談だ。……俺はヤツの同僚だよ。」
「…………。」
「くくっ……親父そっくりだ……お前、名前は?」
「……『仁科シュロ』。」
「シュロ、な……お前、刑事になる気は無いか?」
その言葉で、シュロと名乗った少年は驚いた表情をする。
隣では、ヤツのワルビアルが、事の成り行きを見守っていた。
「素質はあるぜ、充分にな。」
「……試したの。」
「あたり。……お前なら、コイツと、ヤツの意志を継げるってな。刑事のヤマ勘信じろ。」
「へぇ……子どもに賭け事させるわけ?」
「刑事とその辺のペテン師を一緒にすんなよ。」
この生意気な口調も、親父譲りのようだ。
警戒心はもう解いたのか、ボールは既にしまっており
タマゴを改めて抱え直していた。
「刑事になれ、ね……考えとく。」
「おー、来るの、楽しみにしてるぜ。」
「……それじゃあ。」
シュロはコートをはためかせて、来た道をまた戻っていった。
砂煙の中に消えたシュロを見届けて、隣にいたワルビアルが
ついに事切れたように倒れ込んだ。
「なんだ……てめえも死期が近ぇのかよ。」
「ぐぅ……。」
「は、笑えってか?……そうだな、盛大に嘲笑って見送ってやる。」
にやり、と笑って、倒れ込んだワルビアルを見る。
コイツもにやり、と笑い返した。
「じゃあな、『ヴィッグ』。『仁科レン』の、良き相棒。」
最後まで笑みを浮かべたまま、コイツはその生涯を終えた。
*
-11年後-
「あ"ー!もう!雑務押し付けてどこ行きやがった、あの飲んだ暮れーーッ!!」
人の行き交うヒウンシティに、俺の主の声が響いた。
その横で、穏和な顔付きの、主の先輩にあたる緑の髪の男が笑う。
「あはははは、本当だよねぇ。班長ってば、俺たちほったらかして
昼間っから飲み明かすもんねぇ。……この前なんか、100万もするロマネコンティ飲んでたし。」
「ヒースさん、他人事のように笑わないでください!
俺は、事件のときだけマジメに取り組む
あのおっさんの鼻を明かさないと気が済まないんですッ!!」
「ねぇ『シュロ』君。新作スイーツ販売の度に
班長と同じようなことを仕出かすキミが言えた義理かい?」
「……………。」
主にとっては思いもよらない反撃だったらしく
つい押し黙った主を見て、隣の男がにへら、と
力の無い笑みを浮かべる。
「キミも大変だねぇ、『ヴィッグ』。似た者同士の義理の親子に付き合わされて。」
「ヒースさん、冗談でもそれ以上言わないでください。
有り得ないですから。マジで本当に、無いですから。」
「あーじゃあ…あれだ。キミの亡くなったお父さんと班長が似た者同士で
キミがお父さんの血を濃く引きすぎたから、親子に見えるんだ。」
「ヒースさん……言ってることが半分くらい無茶苦茶ですよ……。」
「そう?的を得てると思うけど。」
適当すぎる推理に突っ込みを入れている主を横目に
ずっと抱きかかえている、俺の子どもがいるタマゴを見つめる。
時々動く程度で、まだ生まれる気配は無い。
……やはり、信頼できるトレーナーに任せた方がいいだろうか。
「あー……何であの人の誘いに乗っちゃったかなぁ……。」
「誘われたんだっけ、子どもの時に。」
「そうですよ、『お前なら、親父と、親父の相棒の意志を継げる。刑事のヤマ勘信じろ。』……と。」
「へぇ、刑事のヤマ勘ねぇ……。」
「あの人のギャンブル運、半端無いっすからね。」
「そうだよねー、それはまあ、あの人のお子さんにも言えることだけど。」
「『あいつら』とあのおっさん、血ぃ繋がってないっすよ?」
「え、そうなの?」
主の言うあいつらとは、2人の上司にあたり、今現在をもって
行方を眩ませている人の元に、養子に入った双子の姉弟のことで
このヒウンシティで、『Jack Pot』という捕獲屋を営んでいる友人だ。
今俺が抱えているこのタマゴも、普段はそこに預けているが
ここ最近は平和なため、俺が親として責任持って抱えている。
「しかし、どこ行ったんだあの飲んだ暮れ……!!」
「何時も行くカフェにも、カジノバーにも居なかったもんね……。」
本格的に頭を悩ませる2人だったが、プライムピアの方が
やけに騒がしいことに気付いた。
何か事件でも起きたのだろうか。
よくよく見るとなんとこの街のジムリーダーがいた。
慌てて彼の近くに寄ると、ベレー帽の女の子がわんわん泣きながら、ポニーテールの女の子と
浅黒い肌の、元気そうな女の子に慰められていた。
「どうした、アーティ。」
「んうん……心強い刑事さんのご登場だ。
シュロ、ヒースさん、ちょっと力を貸してよ。」
「何かあったの?」
「聞いてよ!このお姉ちゃん、プラズマ団にポケモンを奪われたんだって!!」
「「……!!」」
プラズマ団、この状況で一番聞きたくなかった名前だ。
主の表情が、一気に険しいものに変わる。
「ちっ……またヤツらか……。」
「まずは、詳しく話を聞こうかな。キミたち、名前は?」
「私はトウコ。カノコタウンから来ました。この子は幼馴染のベル。」
「私はアイリス!」
聞くと、このベルという少女のムンナが、1人のプラズマ団によって奪われたらしい。
追いかけたが、この辺りで見失い、途方に暮れて泣き喚いていたそうだ。
ふと、こちらを見張るような視線に気付いた。
振り向いた先には、奇天烈な服を着た男。
間違いない。プラズマ団……!!
「ぎゃうっ!!」
「げ、バレた……!!」
「!待てッ!!」
脱兎の如く逃げ出したプラズマ団を、主とジムリーダー
そしてトウコと名乗った少女が追いかけて行った。
向かった先は、ジムの方向のようだった。
「ヴィッグ、タマゴは僕が預かるよ。
キミはシュロ君の相棒でしょ?
彼が無茶しないようにしなきゃ。ね?」
何かがあっては困ると、ココに残ることにしたらしい
ヒースさんにタマゴを預けて、俺は主の後を追いかけた。
*
カノコタウンを旅立った時から、度々目立つ集団がいた。
プラズマ団。ポケモン解放を訴える、奇妙な服装の謎の集団。
けど、実際はポケモンを道具としか見てないヤツらばかりだった。
このヒウンシティに来る数日前も、ジムと共同で動いている
シッポウシティの博物館の、展示品の盗難事件に携わったばかりだ。
あのときは追い詰めた先で、丁寧にも盗んだものを返してくれたが
今回は、物じゃなくてポケモンだ。しかも、幼馴染の、ベルのポケモン。
「絶対に、取り返してやる……!」
「ぎゃう!」
「!」
気付いたら、刑事さんのワルビアルが追い付いていて
私を諭すような目で見ていた。
危ないから下がっていなさい。そう言わんばかりの痛い視線だった。
しかし、その目線に何故だか懐かしさを感じた。
なぜだろう。私はあの刑事さんにも、ワルビアルに会うのも初めてなのに。
「……私、引き下がる気はないから。
このまま指を加えて見てるって云うのは嫌なの。
ましてや被害者は、私の幼馴染だから、余計に。」
「……がう。」
「どうしてもって言ってる?……もちろんよ。」
挑発的な目線を送れば、諦めてくれたのか
これ以上、咎めることはしてこなかった。
「……ありがとう。行こう!」
私の掛け声に彼が応えてくれた。
それが嬉しかったけど、ジムのすぐ近くのビルの前で
プラズマ団とバトルを繰り広げている刑事さんとアーティさんを見つけた。
「全員、携帯獣愛護法違反、強盗、窃盗!
その他諸々の罪で現行犯逮捕だ!!」
「ぎゃうん!!」
「!!」
「!トウコちゃん!!」
「私も戦います。ベルを泣かせた上に
彼女の大切なポケモンを奪ったんです。
絶対許さない……!!行くよ、ジャノビー!!」
*
あれから少しして、ビルの中に入ることが出来た私たちの前に
カラクサタウンで演説をしていた、壮年の男の人がいた。
ゲーチスと名乗った男の話の前に、目を泣きはらしたベルが
アイリスちゃんと、もう1人の刑事さんに隠れながらもやってきた。
彼は何を思ったのか、ベルにムンナを返すように指示し
そのまま煙玉を使い、結局は逃げられてしまった。
ワルビアルのトレーナーである黒髪の刑事さんは
悔しそうな顔で外に出ると、ぐしゃぐしゃに頭を掻き始めた。
それをもう1人の刑事さんが宥めている。
「くそ……また逃げられた……!」
「まぁまぁ。根気良く行こうよ。」
「……そうっすね。」
ハァ……と、ため息を吐く黒髪の刑事さんを見ていると
何だかずっと昔に会ったことがあるような気がした。
黒髪に……ワルビアルを連れたトレーナー……。
「……ぁ。」
「トウコ?どうしたの?」
「ベル……11年前、私が遭遇した事件のこと……覚えてる?」
「え……っと、確か、トウコを守ろうとして
亡くなった人がいるって言ってた、あの?」
「うん……あの黒髪の刑事さん……
たぶんその亡くなった人の、子どもさんだと思う。」
「ぇ……?」
「おー、じゃあキミがあの時の女の子か。」
ぽん、と頭に、男の人の手が置かれた。
……あれ?この人、どこかであったような……。
「あ。ギリア班長ー、どこ行ってたんですか?」
「……墓参りだ。あぁ、そうだ……アーティさんよぉ。」
「んうん?何でしょ?」
「どっか一室、貸してくれねえかなァ。
……11年前のこと、きちんと話してやろうと思ってさ。」
アーティさんは、突然の申し出ながらも
笑顔で承諾してくれた。
「…あの!…私も、お邪魔していいですか?」
「ベル……?」
「トウコを助けた人の話だもん……幼馴染として聞かなきゃ。」
「……ありがとう、ベル。」
「気にしないで!……あ、チェレンも呼ぶ?」
「……うん。」
「わかった。ちょっと待ってて!」
ベルが、ライブキャスターでチェレンを呼んでくれた。
今からジムに挑戦しようと思っていたらしく
すぐに駆け付けてきてくれた。
「んじゃ、話すか。……1999年、6月13日。
20世紀最後の、凶悪事件が発生した日のことを。」
*
-1999年6月13日・イッシュ地方ヒウンシティ-
「いやー、やっぱ向こうと違って、こっちは晴れの日が多いね!」
窓から外を眺める、長身の、黒髪の東洋人の男。
見た目だけなら、まだ人種差別も残っていた当時のイッシュ地方では
ソイツは異質な存在だった。
「そうかー?普通だと思うけど。」
当たり前のように返していたが、俺はこの男―…。
仁科レンが、少し苦手だった。
「ギリアは知らねえだろうけど、俺の故郷の
ホウエン地方はこの季節、どっこも雨ばっか何だよ。
晴れの日なんてホント稀!!」
「へェ……興味ねぇや……つーか声、うるさい。」
「おま……また二日酔いか?いい加減控えろよ……。」
「お前が甘いもん控えたら止めるかもな。」
「………。」
皮肉を込めて返したら押し黙った。ざまぁみろ。
ペットボトルの中の水を飲んで、息をつく。……やっぱ昨日、飲みすぎた……。
「……あ、お前、今日なんかあるんじゃなかったっけ?」
「あ"ぁー!!」
「だからうるさい……。」
「あ、すまん……。」
うるさくなったり静かになったり……。テンションの幅が本当にうざったい……。
このホウエン人の気質である、能天気なとこが苦手だ。
「少し出てくる。」
「おー…そのまま帰れ。」
「ひどっ。」
そしてげらげらと笑うレン。ギロリと睨みつけると
おどけた表情の笑みを浮かべて出て行った。
これが、事件発生1時間前の
俺とヤツの、最後のやり取りだった。
*
始めてこの地方に来たとき、目にする物全てが新鮮だった。
ホウエンの大自然の中で育った身としては、空を貫くような高いビルも
モノクロのタイルのようなレンガ道も、食べる物も、住んでいるポケモンも
何もかも、全てが違う場所。
生まれ故郷のホウエンを離れたのが18才のとき。
……あれから17年が経った。
今は守るべき家族がいて、良き友人がいて、ライバルがいる。
片手間に、途中で買ってきたミックスオレを持ち
ポケモンセンターへと入って行った。
「仁科さん。」
入ってすぐに、ここを取り仕切るジョーイさんが
タブンネと共に話しかけて来た。
「やぁ、ジョーイさん。……アイツは?」
「今日はお元気ですよ。相棒さん。」
「そうか、良かった……会えるかな?」
「わかりました。少しお待ち下さい。」
昔流行った○○の質問。
ふと思い出して、引っ張り出してきた。
ちょっと今にあわせて改造しようと思う
マサポケノベラーさんへ77の質問
■あばうと みー■
●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。
●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?
●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。
●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。
●5.オールジャンルで嫌いなもの。
●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……
●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。
●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw
●9.国語 数学 理科 社会 英語……学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?
●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……
■インターネットライフ■
●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……
●12.自分専用のPC(パソコン)って持ってます?
●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。
●14.お気に入りのポケモンサイト、教えてくださいw
●15.自分のホームページありますか?良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。
■ポケモンライフ■
●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?
●17.『GB(GBA)ソフト ポケットモンスター』あなたの持っているカセットは何色?
●18.こいつが俺のパーティだ!ゲームでのベストメンバー、教えてください。
●19.私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのがあったら。
●20.アニメ見てるかー?ポケスペ読んでるかー?ポケモンカードやってるかー?
●21.一番好きなポケモン!どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。
●22.一番好きなトレーナー!ゲームでもアニメでもポケスペでも……
●23.一番好きな、技? アイテム? 属性? ……何かある?
●24.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。
● 惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。
●25.17以外のポケモン関連ソフト持ってます?ポケモンミニとかは?
●26.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?
●27.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?
●28.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?
●29.ポケモン以外にはまっているモノありますか?何ですか?
●30.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。
● 名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。
■ノベラーライフ■
●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!
●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。
●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは?どんな所が気に入ってる?
●34.作者オススメw あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話は何話?どの辺のエピソード?
●35.一番書きやすいのはこんな感じのキャラ。また、自分の小説の中のこのキャラ。
●36.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ!ってのを最低でも一つ。
●37.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。
●38.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw
●39.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。
●40.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?
●41.アイディアが全然湧かない!!?どうしよう……。
●42.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡?それともどっちかというと、憧れの姿??
●43.小説の中の性的描写。あなたの意見を述べてください。
●44.小説の中の死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を以下同文。
●45.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOKです)
●46.小説の中のオリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。
●47.打ち切り……
●48.スランプと、その脱出法について一通り。
●49.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。
●50.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?
●51.同人とかサークル……やってますか?
●52.語彙(※ゴイと読む。使える単語量のこと)ってどうやって増やします?
●53.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!
●54.ポケモンジャンル以外の小説、書いたことありますか?
●55.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。
●56.そういや今更だけど、ノベラー歴は○○年です。○○歳からです。
●57.長く険しい人生。いつまで小説を書いていようかな……
●58.この人の本があったら絶対読む! 好きなプロ作家さんっています?愛読書でも可。
●59.ノベラーをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。
●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……
■おぷしょん1〜マサラのポケモンノベラー〜■
●61.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?
●62.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?
●63.他のノベラーさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。
●64.他のノベラーさんの小説の登場人物で、好きなキャラっています?誰ですか?
●65.他のノベラーさんの小説に、感想つけてますか?どんな内容を?
●66.最近流行のオンライン通信。実は私も発行してます?
●67.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?
●68.マサポケ誇る最先端技術、本棚アップローダーシステム。思うところを一言。
●69.密かにライバルだと思っているノベラーさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw
●70.我らがマサポケ管理人、タカマサ様に一言贈ってください。
■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■
●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)
●72.ポケモン以外で好きなアニメ・漫画・ゲーム。あります?何ですか?
●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。
●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?
●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!
●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は?恥ずかしがらなくていいですよw
●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。 今の想いを込め、好きなことを叫べ!!
『まずは灯夢という狐からの願いでアル! みたらし団子をもっといっぱい食べられるようにでアルぜー!! 腹壊すなよでアルヨー!! 』
コジョンドの波動弾が思いっきり、夜明け前の空に消えていく。
『次は日暮山治斗という奴からの願いでアルぜ! みぞ打ちが週に一度だけに減りますようにでアル! っていうかあきらめんなでアルぜー!!』
コジョンドの気合の入った波動弾がまた夜明け前の空に消えていく。
『今度はわらわっちメタモンからでアル! 商売繁盛アルぜー!! にっくいでアルねー!!』
コジョンドの叫びと共に波動弾が夜明け前の空に消えていく。
『次はミュウツーっていうやつからでアル! 借金返せますようにでアルぜー!! というかさっさと返せでアルぜー!!』
コジョンドのおたけびと共に波動弾が夜明け前の空に消えていく。
『続いて長老っていう狐からの願いでアルぜ! 池月とエリスがいつまでも中むつまじくラブラブでありますようにでアルヨー!! 池月ー! また今度、ワタシの新技を受けてくれでアルぜー!』
コジョンドの力を込めた波動弾が夜明け前の空へと消えていく。
『気合だ! 気合だ! 気合だ! で、アルぜー!!!』
コジョンドの全身から爆発音を立てながら波動が溢れる。
『ワタシからのお願いでアル! ワタシより強いやつに出会えますようにでアルぜぇぇぇえええ!!!!』
コジョンドの――。
「あああああ!! もううるさい! だまれぇぇえ!! ワンパターンすぎなんだよぉ! この野郎がぁああ!!」
『おぉ、なんか夜空から現れたと思ったら。ワタシはあんにんどうふでアルね、よろしくでアル』
「あぁ、それは丁寧にどうも、ボクはジラーチ、よろしくね☆ ……って、アホかっ!! もう朝だ、朝!」
『およ? なんか、おでこにタンコブができているでアルが大丈夫でアルか?』
「てめぇにやられたんだよぉおおおお!!」
『おぉ! さすが、ワタシの波動弾でアルね! まさにビックバンでアル! 照れるでアルぜ、礼ならいらないでアルぜ?』
「あほかぁああああ! もういい! 話が進まん! ちょっと狐好きの蛇野朗こいやぁあああああ!!」
※この後、責任持って、(半黒こげの)巳佑が短冊を笹竹にくくりつけました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
というわけで、かなり遅刻してしまいましたが、私も短冊をつけさせてもらいました。
『いっぱい絵や物語がかけますように、また出会えますように』
『単位がもらえますように』
『学生の間に一回は水樹奈々さんのライブに行けますように』
よし、後もう一つ。
『某ロコンにみぞおちでやられませんように』
ありがとうございました。
【七夕限定のコアラのマーチもぎゅもぎゅ】
【みんなの願い、星に届けー!】
滑り込みセーフ! ε=\_○ノズザー ……え? アウト? 気のせいじゃないですかね。きっとまだ7月7日です。そうに違いない。
と言う訳で数キャラに短冊書いて貰ったんですけどね、ライチュウの奴の以外名前が無いという事態。ポケモンは種族名で表記出来るから良いもののこういう時に困りますね。
とりあえずれっつらごー。
「ライチュウを使うトレーナーが増えます様に コッペ」
「早く良いイーブイが生まれる様に とあるトレーナー」
「イーブイ飽きた。他のが食べたい カイリュー」
「尻尾を枕にさせてくれるキュウコンが手に入ります様に 回答者5」
「いつかまた虹が見られます様に キュウコン」
「ヤミラミにじゃんけんで勝てます様に エビワラー」
「ルカリオのポケモン図鑑の説明文で波導と書かれます様に 門森 輝」
少し遅刻してしまいましたが願いが叶う事を祈ります。30分位なら許容範囲ですよね! 駄目ですかそうですか。
何はともあれ皆様の願いが叶います様に!
【滑り込みアウト】
【皆様の願いが叶います様に】
毎年こうだが、目の前は人、人、人。浴衣を着た少女が数人のグループで歩いていたり、家族らしき数人が固まって歩いていたり。年齢層は若い顔が多い。そりゃあ、老人がこんなところに来れば人混みで大層疲れるのは目に見えているけれど。
両脇に並ぶ屋台も、たこ焼きや綿飴、かき氷といった定番のものから、ハクリューポテトなる謎の食べ物まで多種多様だ。そしてその店の脇には、必ず一本の笹が立ててある。
今日はタマムシシティ大七夕祭り。老若男女ポケモンを問わず、誰彼もが星に願いをかける日だ。
『ただいま会場が大変混み合っております。モンスターボールの誤開や盗難を防ぐため、ポケモントレーナーの皆様はボールの管理に十分お気をつけください……』
そうアナウンスが聞こえる合間にも、きゃ、と短い女の叫び声がして、モンスターボールの開閉光が夜店の明かりに負けじとばかりに輝く。そちらの方を見れば、出てきたヒメグマが他の客に体当たりしそうになっている。
これが進化後でなくてよかったな、と心中で独りごちる。流石にこの混雑の中に大型ポケモンを持ち込むような非常識なトレーナーがいるのは困る。
隣を行くルージュラくらいが、常識的に受け入れられる最大サイズだろう。これでも道行く人の中には、たまに怪訝そうな視線を投げてくる人もいるけれど。
「とりあえず、一通り店回ってみようか。どっかの店でペン貸して貰って、それも書こう」
そう問いかけると、僕のシャツの裾を掴んでいるルージュラはこくこくと嬉しそうに頷いた。その手には、スターミーとピィの形をした紙が一枚ずつ。
入り口で配っていたもので、もう形からして短冊と言えるのかはよくわからない。配っていたのを見た限りでは、ヒトデマンやスターミーにピィとピッピ、それに三つの願い事を書けるジラーチのものなんかもあった。
三つも願うと欲張りすぎて逆に叶えてもらえないような気がする、と思って、僕らは一枚ずつ、一つの願いを書く短冊をもらった。
出店横に笹がありますので、と言われたが、もうどの笹も短冊でいっぱいだ。今まさに短冊を笹にかけていく人の姿も見える。
それを見ながら人波に流されるように歩いて行って、まずは気になった「ハクリューポテト」と大書された屋台の前で立ち止まる。ご丁寧に直筆らしいハクリューの絵もセットだ。
「いらっしゃい! どうだいお兄さん、そっちのルージュラと一緒に食べてかないかい? うちはポケモン向けの味付けもやってるよ!」
言いながら店主が示したのは、ジャガイモを厚くスライスして、原型を残したまま串に刺して揚げたような食べ物だった。フライドポテトの一種だろうか。
しかし何故これがハクリューなのか、僕にはちょっとよくわからなかった。ジャガイモがそれらしいというわけでもないし、フレーバーにそんなイメージのものがあるわけでもない。
「これ、なんでハクリューって言うんです?」
「ああ、これな。ちょっと切り方に工夫がしてあって……」
店主は刺してあった一本を手に取ると、僕とルージュラの前でくるくると回して見せた。輪切りだと思っていたそれはよく見れば螺旋状で、相当心を広く持って見ればなるほど、長いハクリューの体に見えなくもない、気がする。
「こうやって全部一繋がりにしてあってな、ほら、ハクリューが使うだろ?『たつまき』。形が似てると思ってな!」
「……そっちなんですか? てっきり、ハクリューの体が長いのに似てるからかと」
「いやー、最初はそのまま『たつまき揚げ』とかにしようと思ったんだが恰好がつかなくて」
がはは、と豪快に口を開けて笑う店主に、僕もつられて笑いを返す。ルージュラはじっと興味深そうにポテトを見ている。
「おじさーん、ケチャップ味とポケモン用の苦いのに渋いの、一本ずつちょうだい!」
「人間用一本とポケモン用二本で千円だよ!」
Tシャツ姿の少年が、隣から千円札を突き出している。僕はスペースを作るために、少し脇へ寄った。少年はお金と引き替えにポテトを三本受け取ると、手に持ったジラーチ型の短冊を店横の笹にかけて、後ろの人混みの中に消えていく。
少し内容が気になって、その中身をこっそり横目で覗いてみた。
『チャンピオンになる! トモキ』
真ん中の短冊に力強く大きな、でもお世辞にも読みやすいとは言えなさそうな字が書いてある。両脇の短冊には、「ガウ」「ポポー」の名前と一緒に、ポケモンの足跡。前者の方は短冊からはみ出して、ジラーチの顔に被っている。
なるほどこういう使い方もあったか、と感心した。一人が三つ願い事を書くのは欲張りかもしれないが、三人で一つの大きな願い事を書くなら、叶う確率はもしかしたら上がるかもしれない。
そう思っていたら、シャツの裾がぐいぐい引っ張られた。そちらを見れば、種族に特有の不思議な言葉を発しながら、ルージュラがポテトを指差し何事か訴えている。見ているうちに食べたくなってきたのだろう。
「わかったわかった。……おじさん、ガーリック味とポケモン用の辛いの一本ずつ下さい」
「はいよ! ……ん? 辛いのでいいのかい? ルージュラっちゃあ氷ポケモンだろ? 苦手なんじゃないのかい?」
「あ、いいんです。こいつ、氷ポケモンなのに辛い味が大好きで」
「ほー、見かけによらないモンだねぇ……人間用とポケモン用一本ずつで六五〇円だよ!」
小銭入れから七〇〇円出して、釣りの五〇円とポテトを受け取る。一本はすぐルージュラに渡しておいた。代わりに手の空いた僕が、ルージュラの持つ短冊を受け取った。
トゲトゲしたスターミーと、それよりは丸みを帯びて文字を書くスペースの取り易そうなピィの形をした短冊には、まだ何も書かれていない。
どこか空いたところを探さないとな、と思った。列を作っていた人が後ろから来ているのでは、願い事を書くために店の前を占領してはいられない。
『迷子ポケモンのお呼び出しをいたします。トレーナーID61963、タカノコウキ様。運営本部にてルリリをお預かりしております、至急運営本部までお越し下さい……』
そんなアナウンスが聞こえた頃に、僕らは通りの交差点へと差し掛かった。角に、ひときわ大きな人だかりができている。子どもたちとその手持ちの小さなポケモンが多い。
店の垂れ幕に大書されているのは、「あめ」の二文字のみ。店の隣に座って悠々としているのは、一匹のポニータだ。店主の男は棒の先につけた飴の塊をその体の炎で熱し、へらで細工してひとつの形に仕上げていく。
飴の塊は、既に頭の部分が大きく、尾にかけて細くなる流線型を描いていた。別の、本体に比べれば小さな塊をつけたへらによって、その尾に尾びれがつけられる。男が、集まった子どもたちに向かって問いかけた。
「おじさんは今、何のポケモンを作ってるかなー?」
子どもたちはまだ答えが出せないようで、隣の子どもと相談し合ったり、首を傾げている。その間に飴細工には胸びれがつけられ、頭に小さなツノがついていく。
その様子を見ながら、ピンときたらしい一人の子どもが叫んだ。
「ジュゴンだ!」
「正解! それじゃあここから顔を描くところを見せてあげよう」
外形の完成し終わったジュゴンは、食紅のついた筆で顔を書き加えられてますます本物に近づいていく。目と鼻、それに口を書き加えた飴細工は、最後に袋に収められて他の飴細工と一緒に並んだ。
子どもたちがわあわあと歓声を上げ、そこを見計らって店主が声をかける。
「すごーい!」
「そっくりー!」
「本物みたい!」
「飴ってメタモンみたいだな!」
「この飴細工一個九〇〇円! だ・け・ど、飴風船チャレンジに成功したら、この飴細工をタダであげちゃうぞー!」
目を輝かせて、やるやる、と殺到する子どもたちが受け取っているのは、何の細工もされていないただの飴の塊だ。子どもたちはまるで風船を膨らませるように、ぷうぷうと懸命にその塊を吹いている。
なるほど、これを大きく膨らませることができればOKというしくみらしい。しかし大半の飴は吹いている途中で薄くなって固まり、破れてしまう。
そうした子どもたちが悔しがって再挑戦をし出す間に、男は加工用の飴をまた熱し始めた。
「今度は何のポケモンを作ってみようかなー?」
「ヒトカゲ!」
「バタフリーがいい!」
「カイリュー作ってー!」
そのうちの一つを聞き届けたのか、それともそのどれでもないポケモンを題材としているのか。ひのうまポケモンの熱で暖められた飴は、ただの丸い塊から一つの目的へ向けて姿を変えていく。さながら、ポケモンが進化するように。
それを熱っぽく眺める子どもたちの、その大半の手にはもう短冊はない。もうどこかの笹にかけてきてしまったのだろう。
まだ願うべき夢を持っている年代だからだろうか、などと言うと、まだ若いのにと言われるのだろうか。見飽きてきたらしいルージュラが急かすのに合わせて、僕はその人だかりの前から歩き出した。
「現在、タマムシシティ大七夕祭り会場から生中継しております! 見て下さいこの人出、今年の夏も大賑わいです!」
浴衣姿のレポーターがカメラへ向けてそんな台詞を言っているのを後目に、その人だかりのそばを通り過ぎる。ピチューを頭に載せたあのレポーターは、名前は覚えていないがお天気コーナーか何かの顔だったはずだ。
そんなことを考えていると、不意に前に進もうとしていた体がぐっと後ろへ引っ張られる。裾を引きながら後ろを歩いていたルージュラが、急に立ち止まったのだ。
何だよ、とぼやきながら振り返ると、ルージュラの視線はこちらを見ていなかった。
その視線の先にあったのは、「氷」の垂れ幕と、店のテントの内側に貼られた「罰ゲーム用!? 激辛マトマシロップ」の張り紙。僕はそれへ向けて指を指して、ルージュラに聞いてみた。出てきた声は、自然と、なんとなく諦めたような声だった。
「……欲しいんだな?」
ルージュラはこの日一番じゃないかと思うくらいの笑顔で、大きく頷いた。
人混みをかき分けて屋台へ向かうと、丁度それらしき真っ赤なかき氷が、一人の青年の手に渡されていくところだった。連れらしいもう一人の青年にそれを突き出して、何やら揉めている。
「バトルで負けたら食うって言っただろーが! 俺覚えてんぞ!」
「やっぱ食えねえよこんなモン! どう見ても辛いの好きなポケモン用じゃねえか!」
本来の罰ゲーム用途に使うとああなるらしい、という図から目を背け、改めてかき氷を注文し直す。人間の食べられそうな味も売っているから、そのメニューにも一通り目を通して。
「あの激辛を一つと、メロン味一つ」
「はいよ。七〇〇円ね」
ルージュラが隣ですぐにでも小躍りを始めそうな様子で、氷が削られていくのを見ている。こいつにしてみれば好きな温度である冷たいものと、好きな味である辛いものが合わさった食べ物が食える機会なんてそうそうないから、楽しみにするのも分からない話ではない。
紙コップに山盛りの氷が盛りつけられ、その上に見るからに辛そうな真っ赤なシロップがかけられていく。この赤さはイチゴ味と間違わないためなのか、いや違うな。
最後にストローで作ったスプーンが刺さって、差し出された紙コップをルージュラが受け取る。続いて削られ始めた氷は僕の分だ。
その音を聞きながら、僕は店先のペンを取る。書くことがはっきり決まったというわけではないけれど、なんとなく、今のルージュラの様子を見ていたら書きたくなったのだ。他よりも少しだけ、待ち時間が長いというのもある。
スターミー型の短冊の上を、ペンの頭がこつこつと叩く。もやもやとした願い事は、うまく固まってくれない。
「はいよお兄さん、メロン味置いとくよ」
「ああ、ありがとうございます」
ことんと音がして、側に出来上がったかき氷が置かれる。短冊は真っ白なままだ。んー、と唸りながら悩んでいたら、ルージュラが置いてあった短冊のもう片方、ピィ型のものを取っていった。スプーンに頼らず飲んだんじゃないかと思うくらいの速さだ。氷ポケモンだしできてしまうのかも知れない。
何を書くのだろう、とその様子をしばらく見ていたら、ルージュラがペンで書き始めたのは、その口から出るのと同じ、人間にはよくわからない言葉だった。テレビの字幕で見たアラビア語を見ているような感じがする。
ルージュラはそのまま迷いなくさらさらと謎の文字を書き終えて、ペンを元あった場所に戻すと、満足そうに短冊を顔の前に掲げてみせた。何を書いたのかは分からないが、おそらくは心からの願いなんだろう。
そんな表情を見ていると、自然にこちらの筆も動いた。スターミー型の中心、本物ならコアのある部分に、小さな文字で詰め込むように。
『ルージュラの嬉しそうな顔が、もっと見られますように』
書き上げて隣を見てみると、頬を抱えたルージュラが真っ赤になっていた。そりゃあ、僕がルージュラのを見たんだから見られるだろうとは思っていたんだけど。
その様子を見咎めた屋台のおばちゃんが、にんまりとした顔でこちらを見ている。
「あらお兄さん、こんなに女の子真っ赤にしちゃって。まったく色男なんだから」
「は、はあ……えっと、ちょっと失礼します」
周囲からの注目もなんとなく集まっている。僕はかき氷の入った紙コップを取ると、さっと店の脇にある笹に、二人分の短冊をかけた。
トゲのある形の真ん中だけが黒いスターミーと、落書きされたみたいにぐちゃぐちゃの文字が並ぶピィが、他の短冊に混じって揺れる。
それを見届けると、視線から逃れるように、そそくさと僕らはかき氷屋台の前を後にした。
「……にしてもお前、何書いたんだ? まさか、あのかき氷がもっといっぱい食べられますように、とかじゃないよなあ」
道すがら聞いてみると、ルージュラは相当に驚いた顔でこちらを見返してきた。どうして分かった、とでも言いたげに。
図星か、と問えば、黙って頷いていた。
「わかったわかった、今度作るよ。タバスコとかだから、ああいう店で見たのみたいじゃないかもしれないけどさ」
言うが早いか、僕の頬を強烈な吸い付き攻撃……いや、ルージュラのキスが襲った。愛情表現は嬉しいけれど、正直毎回痛いと思っている。
ついでに今日は祭り会場の人の視線もプラスだ。ルージュラを引き剥がして、ふう、と少し溜息をついてみせる。
「そーいうのは家でやって、家で!」
……ただ正直、ここまで愛されるの、まんざらでもない。
――――
七夕と(私の)ノスタルジアとバカップル。
飴細工の屋台を全く見ないんですよ。地元限定だったのだろうか。
他にも屋台にしたら面白そうなのあったんですが、時間と息切れの関係上書けませんでした。
【お題:ポケモンのいる生活(ポケライフ)】
【スペシャルサンクス:#ポケライフ(Twitter)】
【描いてもいいのよ】
【書いてもいいのよ】
【10分弱オーバー】
先客がいたようだ。ついでだからみんなが何を願っているか見ていくか。
「ジムリーダーになりたい ガーネット」
トレーナーなのか。それにしてもハンドルネームではないのだから、本名かいていけばいいのに。織り姫と彦星だって本当の名前が解らなければ叶えようもないだろう。
「微生物研究にいきたい ザフィール」
理系の人間のようだ。字からして男子……だろうか。それにしても最近は短冊にすらハンドルネームを書くのが流行っているのだろうか。私が本名ばりばりで短冊かいてあるのがなんだか怖いではないか。
「商売繁盛。ついでに黒蜜がうるさいので早く諦めさせてください 金柑」
綺麗な字で書いてある。印刷物かこれ。こんな綺麗な字を書く人間がいるとは思わなかった。商人のようだが、きっと学校の成績もよかったのではないか。うーん、なんだか負けた気分だ。
「早くあの子が振り向いてくれますように☆ 黒蜜」
その札の隣にあったのがこれなので、おそらく友達なのだろう。面白いハンドルネームを考えるものだ。
「ゾロアークにお嫁さんが来ますように ツグミ」
ポケモン想いのトレーナーだな。けどゾロアークのお嫁さんなら、トレーナーが探すのがいいのではないだろうか。結構ポケモンセンターでもお見合い希望の紙はってあるし。
「ツグミに彼氏ができますように ネラ」
そこから離れたところに釣り下げられてるのがこれ。ツグミという子は友達に恵まれたのだな。友達に彼氏ができて欲しいというところをみると、ネラという子はもう彼氏持っているのだろう。
あ、この辺なら空いてるな。さて、吊るしてかえろう。
「人間の青いイケメンください。石マニアでもいいです くろみ」
今年こそ、かなうといいなー!
しゃらしゃらと涼しげな音を立てながら、大きな笹が夜風に揺れています。
その枝葉には、色とりどりの短冊がいくつも結び付けられていました。柔らかな風に踊るそれらには、人とポケモンの祈りや願いが書き込まれています。
道の向こうからくたびれた様子の駱駝が一頭、とぼとぼと歩いて来ました。
足を引きながら笹竹の前にやってきた駱駝は、大きな溜息を吐いて背中の荷を下ろしました。小さな袋に詰め込まれた短冊の束です。
あれからもう一年が経ったんだなあ、と呟きつつ、さらさらと手元の用紙に何かを書き付けています。
肉厚の蹄で器用に――どうやってという疑問は胸にしまっておきましょう――結び付けられたそれには、『藁一本で背骨が折れそうなこの現状を、なんとか打破できますように』とありました。なんとまあ、辛気臭いことです。
……それはさておき、自分の分を書き終えた駱駝は、預かってきたらしい短冊たちを次々と結び付け始めました。
『ブラック3・ホワイト3で主役級に抜擢されますように 風神・雷神』
『またポケンテンの新作料理を食べられますように 学生A・B』
『監督の尻をひっぱたいてとっととロケを終わらせて、年内には上映できますように 飛雲組』
『世界中での百鬼夜行を望む 闇の女王』
『第三部及び完結編まで続きますように! 甲斐メンバーの一人』
『今年の夏休みも、あいぼうといっぱい遊べますように 夏休み少年』
『いつまでも“彼”と一緒にいられますように 名も無き村娘』
『もう大爆発を命じられませんように ドガース』
『今年も美味しい食事にありつけますように。 桜乙女』
『僕たちが無事に「割れ」られますように タマタマ』
『彼らの旅立ちを祝福できますように…… マサラの研究員』
『この世界に生まれ出ることができますように 未完の物語一同』
さらさら、しゃらしゃらと笹が揺れています。
一年分の願いを括り終えて、駱駝はふうと息をつきました。
しばらくぼんやりと色紙の踊るさまを眺めていましたが、やがて意を決したように首を振ると、元来た道をのろのろと引き返して行きました。
おや? 駱駝の立っていた場所に、二枚の短冊が落ちています。どうやら、付け忘れてしまったようです。
仕方がないので、私が結んで締めくくりましょう。
『受験・就職・体調・原稿その他もろもろの、皆様の願いが良い方向へ向かいますように』
『自分の思い描くものを、思い描いた形に出来ますように。今後も地道に書き続けられますように』
七夕の夜に、願いを込めて。
ご無沙汰しています。
しとしと雨の降る七夕を迎えました。
それでも街中では浴衣を着た人たちに出会ったりちいさな七夕飾りを見つけたりと、すっかり七夕ムードですね。
「黄金色を追い求める最高のトーストマイスターになる ちるり」
「リーフィアといっぱいあそべますように ミノリ」
「今年もご主人さまのいちばんでありたい チリーン」
「さらに出番をよこせ ムウマ丼推進委員会」
「めざせコンスタントに短編投下 小樽ミオ
「池月くんがエリス嬢のもとに帰れる日が早く来ますように」
今年は夏コミにスペースを出される方もいらっしゃるので、素晴らしい祭典になるようにお祈りします。
個人的には、有明夏の陣2012で私自身が討ち死にしないようにと願うばかりです(笑)
短冊の願いごと、届くといいな!
※追記:読み返したら語弊ありげな箇所があったので直しておきました、すみませんm(_ _)m
梅雨の宿命だわな……
止まれ、不景気な事言っててもしゃあないので……!
『今年こそ日の目を…… 書きかけ山脈関係者一同』
『武運長久・凶運回避 ボックス対戦組』
『求むルカリオ 目指せ獣人パ結成! アジル(コジョンド)・シュテル(コジョフー)・グリレ(ゾロア)・ギブリ(ゾロアーク)・ケム(リオル)』
『神は言っている……仲間を救えと イ―ノック(コイキング move担当)』
『原こ(赤黒いものが飛び散っていて読めない……) **ウィ』
うーん、不景気だわ(
皆さんはもっと明るく楽しい七夕祭りをお過ごしくださるよう……!(笑)
では。ゲームも創作の方も、もっともっとギアを上げて行きたいですね〜。
『これからもこの場所により多くの作品が集まって、創作者の方々の良き憩いの場であり続けますように』。
サイコソーダ大好きダイケンキ、シェノンがてくてくと道を歩いていると、目の前に笹が立っていました。
その笹には短冊がたったの一枚だけ、ひらりひらりと揺れていました。水色の短冊には、太く黒々とした、おそらく筆ペンで書いたのであろうでっかい『合格祈願』の四文字。
「何かすっげぇ切なくなる光景だな」
ありのままを口にした後、そのシェノンは何も言わずに代表として持ってきた短冊をかけていきます。去年よりも数枚、増えている気がします。シェノンはまず彼の仲間たちの短冊をかけ終えると、見覚えの無い字形で書かれた残りの三枚を見つめました。
一枚目は、ひらがなとカタカナだけで書かれた、まるで小学生が書いたような文字。
『これからも おじさんと たくさん ほんが よめますように! ルキ』
二枚目は、綺麗な、大人が書いたような文字。名前はありません。
『平和な日々が続き、彼を置いていったりするようなことが起こらない事を祈る』
三枚目は、少し丸みがかった、女の子っぽい字。黄色い短冊です。
『今年も向日葵が沢山咲きますように。 再会できますように 夏希』
その三枚も掛け終えると、シェノンは「サイコソーダの季節だなぁ」などと呟きながら去っていきました。
夜空に、星々を湛えた天の川が輝いておりましたとさ。
【短冊 どうか増やしてほしいのよ】 【なんか今年もやっちゃったのよ】
こんばんは、6時のニュースです。
さて、今日は七夕。各地で笹が飾られる中、ある事件が起こりました。では現場から中継です。
「本日午後3時頃、このトクサネシティで大量のキュウコンを連れて辺りを干上がらせた疑いで男が逮捕されました。男は非理亜住(ひりあ じゅう)容疑者で、調べに対し容疑を認めているとのことです。非理亜容疑者は特性が『ひでり』のキュウコンを使って夜を明るくしようとしましたが、駆け付けた警察に『明るくても七夕じゃなくても、カップルはいちゃいちゃするんだぞ!』と説得され、その場に崩れ落ちました。非理亜容疑者は動機を『夜を明るくすれば七夕をできなくなると思った』と語っています。以上、現場からでした」
ありがとうございました。1年前にも似たような事件がありましたが、どこにでもこうした人はいるものですね。では、次のニュースはこちら。
1年前はサーナイトのブラックホール設定を使い、今年はキュウコン。来年はどうなることやら。
自分の過去記事がいきなり上がってるとビビりますね。こんばんは。
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