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青空のような瞳をして、真新しい黒いコートだか何だか着て、小さな肩が埋もれそうなくらい大きなリュックを背負い、じいさんーーもというんちゃら博士から俺の入ったボールをしっかりと握って受け取って。ポーカーフェイスを気取りながらもボールを持つ手が震えていたのは緊張か、興奮か。流れる漆黒の髪の下、俺は確かにうざそうなやつだと思った。お前は俺をハシバミと呼んだ。
どうせこいつもむちゃくちゃな指示ばかりすんだろうなと思っていたら、はじめての勝負ーー町のチンピラにからまれ挑まれた(これをはじめての勝負といっていいのだろうか)とき、はじめてにしては慣れた手つきでボールを投げ、「とりあえずひっかく」と何と呑気な指示か。相手のチンピラが出したラッタには到底勝てそうになかったが、指示されたようにとりあえずひっかいたが倒れなくて。ラッタが凄いスピードで突進してきたときはあまりに無謀だと思った。だけどお前は違った。「壁まで走れ!」と今まで聞いたことの無い真剣な声。全力で駆けた俺はそこで「伏せろ!」地に伏せる。ゴシャっと音がして見たらラッタが壁に突っ込んで目を回していた。俺らの初勝利だった。
それからというもの俺らの旅は順調に進んだ。はじめて来た町で傷ついた鳥を一匹お前は拾った。人目も気にせずに、慌てることなくポケモンセンターへ行って「あなたがやったんですか!?」と疑われていたのはさぞ笑えた。結局その鳥はお前が引き取り、ポッポという種族名にらしからぬアサギと名付けた。その翌日ジムを制覇した。
その後も二つ三つとバッヂを集め、俺は濃いオレンジ色の前より少々ゴツい姿になり、アサギも冠羽と尾羽が色付いて大きくなって仲間も増えた。ラプラスという種族の大人しい彼女はベニと言った。
四つ目のジムで俺らは負けた。手持ち最強の俺と相性が悪かった。最後に俺が敵のカメックスから波乗りを受けて倒れたとき、お前は真っ先に俺の元へ来て抱き締めた。耳元で「ごめん」なんてカッコつけて。でも悪くなかった。ジムリーダーに「惜しかったね」などと言われてカチンときた俺らは三日三晩修行して、俺が進化して火竜になってから再度挑戦した。圧勝だった。
それからものんびりまったりとジム巡りの旅をした。仲間も手持ち限界まで増えジムを制覇しては強くなっていった。そしてとうとう八つのバッヂを集め、リーグへの出場権を得た俺らはそれまでの間、強敵の出るところでそれなりに危険なダンジョンで修行することにした。恐ろしく強い野生ポケモンやそこを訪れるトレーナー。時に負けたがその分勝利した。さあいよいよ本番は近い。そんなある日のことだった。
お前は馬鹿みたいに無表情で不器用で呑気で優しい。そんなことはもう十分な位見てきた。だからーー
その日俺らは修行していた山の中で悲鳴を聞いた。お前は「……行くよ」と勇敢に駆けつけた。そこは崖で、悲しいことに見知らぬ女性が見知らぬ女性をポケモンを使って突き落とそうとしていた。普通なら自分も危険だから人を呼ぶなり警察に通報するなりする。それなのにお前はその細い体で突き落とそうとする女性を横に突き飛ばし、落下しそうな女性の腕を引っ張った。まあ落ちたら俺が飛んで拾いに行くだけだが。そんなことも無く無事なのを見て不覚にも安堵してしまった。だから気付けなかったのだ。突き飛ばされた女がギラリと光るナイフを片手に立ち上がったのを。
そこから先はあまり正確には覚えていない。ただナイフの女が奇声を発しながらお前の横の女性を刺そうとして、それをかばったお前が崖から落ちた。その瞬間最大限に加速してあまり長くない腕を必死に伸ばして凄い速さで落ちていくお前の手を掴もうとした。けどお前は「ごめん、ハシバミ」とだけ言ってベルトに装着された六つのボールを一斉に俺へとパスをした。反射的にそれらを受け止めてから追いかけたがそこはもう崖の下で、それなりに危険なダンジョンであったために尖った岩肌に頭をぶつけて盛大に血を流していた。青空のような瞳に光はなかった。
あれから丁度一年が経った。俺以外のアサギやベニ達はそれぞれ野生に返った。たまに俺達が全員で作った小さな墓に俺のいないときに誰かしら来ているらしく花や木の実が耐えない。恐らく二ヶ月ほど前に俺がお前の家族に伝えたからかもしれないが。
俺は今でもここにいる。お前の墓が荒らされたら困るし何より俺はお前のパートナーだ。俺は死ぬまでここにいる。俺は最期までお前の片割れであり続ける。
みなさん、遅ればせながらあけましておめでとうございます!
2012年もマサラのポケモン図書館を何卒よろしくお願い致します。
とりあえず今年の目標なんかを書いていこうというスレです。
はりきっていこー!
とある森に1匹のキュウコンがいました。彼の行く所はいつも晴れ渡っていました。彼自身、快晴である事はとても好きなのですが、こうも変わらないといくら何でも飽きてきてしまいます。しかし、彼にはどうする事も出来ず、半ば諦めていました。
そんなある日の事です。彼が昼寝をしていると、毛皮に何かが当たるのを感じました。雨です。空を見上げると、ぽつんと小さな雨雲が見えました。彼は自らが雨に打たれる感覚を、唯々噛み締めていました。唯、只管――。
水溜まりも出来ぬ内に雨雲は東へ移り、再び太陽は彼を照らします。そして彼自身気付かぬ内に、雨雲を追って歩き始めていました。
彼が雨雲に追いついても、雨雲は消えませんでした。今までは、たとえどんなに大きい雨雲を追いかけようと、彼の周囲だけはぽっかりと穴が空き、燦々と輝く太陽が彼を照らし上げていたものですから、彼にはそれが不思議で堪りませんでした。
暫く追い続けていると、不意に声を掛けられました。
「何か用かい? さっきから僕に付いて来てるみたいだけど……」
はっと前を向くと、そこには1匹のニョロトノがいました。空ばかり見上げていたので、気付かなかったのです。
「いえ、そういう訳では……雨雲を追っていただけですので……え〜、その……雨を殆ど見た事がないものでして……」
「雨雲をかい? そんなに雨が珍しいのかい? この森、そんなに渇いてる様には見えないけどなぁ……」
「いえ、その、私の周りだけ晴れてると言いますか、何と言いますか、その……」
「あぁ、なるほど。それなら僕と同じだ。僕も行く所行く所何処も雨でね。いつも雨雲が付いて来るのさ。僕は雨好きだから良いけど、周りからしたらいい迷惑だよね、ははっ。まぁ、僕も雨ばかりじゃさすがに飽きてくるんだけどね」
「そうだったのですか……。あの……私は雨に打たれるのは今日が初めてなもので、暫く付いて行っても宜しいでしょうか?」
「付いて来るより一緒に歩こうよ、そっちの方が楽しいじゃない?」
「宜しいんですか?」
「良いって良いって。晴れてるのがどんな感じか聞かせてよ」
「ありがとうございます。お言葉に甘えてご一緒させて頂きます」
「も〜、固いって。もっと楽に話して良いからさ」
「ありがとうございます。ではそうしますね」
「まだ固いって〜。ま、良いけどさ」
そうしてキュウコンはニョロトノと歩く事になりました。それから暫く歩き続け、森を抜けようかという頃――
「そろそろ森抜けちゃうけどどうする?」
「えー、ではあなたが良ければもう少しご一緒させて下さい。そうですね……森から1・2km程でしたら日が暮れる前に帰れそうですし……」
「うん、分かった。じゃあこのまま進むよ。帰りに虹が見られると良いねぇ。っと、あれ? 雨が止……痛っ!? 何だろう……? 急に視界も……。これは……砂?」
そうです。何故か突然雨が止み、砂嵐が吹き始めたのです。砂が当たる事に因る痛みと、すぐ先も見えない様な視界の悪さで、とても心地良くは感じられませんでした。しかし、2匹にとって砂嵐は初めての体験だったので、とても新鮮に感じられました。
「どうします? このまま進みますか?」
「ん〜、僕は行くよ。雨が止むなんて初めてだもの! 君はどうするの? 無理してまで来なくても良いけど……」
「行きますよ? 戻ってもいつもと何ら変わらぬ快晴でしょうし、少しばかり辛くともこちらの方が楽しいですから」
「じゃ、行こうか。それにしても、これじゃあ虹は見られそうになくなったねぇ、はは」
そうして2匹はまた歩き始めました。それから程無くして、2匹は何かにぶつかってしまいました。
「ん? 何だお前等?」
そう声がしたので見上げたところ、ぶつかったのはバンギラスであることが分かりました。
「あ……申し訳ございません……。この砂嵐でよく見えなかったもので……」
「あぁ、そいつは悪かったな。この砂嵐は多分俺の所為だ。俺がいるとどうも砂嵐になるみたいでな、砂の無いとこに行っても起こるもんだからどうしようも無くてよ。全く何でなんだか……。まぁそういう訳でよ、迷惑掛けて悪かったな」
「いえいえ、迷惑だなんて……。私達は砂嵐が初めてなもので、楽しませて頂いてますよ?」
「そうそう。僕等だって今まではずっと同じ天気だったからね、凄い新鮮なんだ。あ、彼はずっと晴れだったみたいで、僕はずっと雨だったんだ」
「おぅ、そうだったのか。まぁでも、晴れとか雨とかは周りから喜ばれる時もあるだろうけど、砂嵐で喜ぶ奴はいねぇだろ?」
「僕等がいるじゃない」
「あ……おおぅ、ありがとな。でも痛いだろ? 無理しなくても良いんだが……」
「別に無理はしてないよ? 痛いと言えば痛いけど、それを上回る新鮮さがあるからね」
「私も同じです」
「そ、そうか。ありがとな。喜ぶ奴なんて初めてでよ。ホントありがとな」
「何でお礼言うのさ。楽しませてもらってるのはこっちなんだから、お礼を言うのはこっちだよ」
「いや、言わせてくれ。ありがとう」
「うん……こちらこそありがとう。ん、あれ? 砂嵐が収まった……のかな?」
「その様ですね……視界も先程よりは良くなりましたし……。ですが代わりに……これは何でしょう? 氷……ですかね?」
「みたいだな……少し寒くなってきたし。にしても痛ぇな、これ」
「まぁね。でも、きっと君も初めてでしょ? 新鮮で良いじゃない」
「まぁな。砂嵐の方が過ごしやすいが、何かこう……胸が躍るものがあるな」
「ね? 僕も砂嵐の時そんな感じだったんだ。まぁ今もそうだけどね」
「でも何ででしょう? 急に砂嵐が収まり、氷が降るなんて……」
そんな話をしていたところ、1匹のポケモンがやって来ました。ユキノオーです。
「のぅ、御主等はこの辺りの者かの?」
「あ、私でしたらそこの森に住んでますけれど……」
「おぉ、そうか。なら1つ聞きたい事があるんじゃが、この辺りにチルタリスは居るかの?」
「チルタリス……ですか……。えーっと、見掛けた覚えは無いですね」
「そうか……すまんかったな。儂は他を当たるが、御主等も早めにここを離れた方がいいぞ。儂の所為で霰が降っとるからの」
「霰? これ霰って言うのか?」
「何じゃ御主等、霰を知らんのか? まぁ説明しようにもこれが霰、としか言い様がないがの」
「へ〜、そうなんだ。僕等はみんなずっと同じ天気だったみたいだからね、他の天気をあんまり知らないんだ。あ、こっちの彼が晴れで、こっちの彼が砂嵐、で僕が雨ね」
「まぁ砂嵐は天気と言えるか分からねぇけどな、はは」
「でさ、さっき儂の所為、って言ってたけど、もしかして君も?」
「おぉ、そうじゃ。何じゃ、御主等もそうじゃったのか。儂も行く先々で霰が降っての。好きと言えば好きなんじゃが、やはり何事にも飽きは来る物でのぅ。そこでどんな天気も平凡な天気にするというチルタリスを探しておるんじゃよ」
「そんなチルタリスいるのか? 平凡な天気って良く分からねぇが」
「噂で聞いただけじゃからの、本当かどうかは分からんわい。まぁ、儂も暇じゃからのぅ。損をする訳でもないし、探すだけ探しておるんじゃよ」
「そうなのか。まぁ本当だったらいつかは会えると思うぜ? っと、ん? 霰止んでねぇか?」
「ですね……。陽も若干射し込んできた様ですし……」
「でも晴れ……とは言い難いかなぁ……。雲も結構多いしね。まぁ曇りとも言い難いんだけど」
「これは……近くにチルタリスが居るのか!? 何処じゃ!?」
「そうなのか? だったら俺も探すぜ? 興味有るしな」
「僕も!」
「私も協力させて頂きます」
そうして4匹はチルタリスを探し始めました。しかし中々見つかりません。
「見つかりませんね……」
「むぅ……まぁ、チルタリスを見つける事より霰を止ませる事が目的だったからのぅ、これはこれで良しとするかの」
「そうか……俺は見てみたいんだがなぁ……」
「まぁいいじゃない。いつかは会えるって君も言ってたじゃない」
「まぁな。でもなぁ……」
そうして見つける事を諦めかけていた頃、1匹のポケモンがやって来ました。
「なぁなぁ」
「ん? 何だ御主」
「何言われても……わいは見た通りゴルダックやで?」
「……で、何の用だ?」
「いや〜、さっきから君等よく見掛けるなー思てな。キョロキョロ見回しとったみたいやけど、何か探してるん?」
「えぇ、チルタリスを探しております」
「チルタリスを? 何で?」
「この天気じゃよ。儂がいると霰が降るはずなんじゃが、今はこの通り、降ってないじゃろ? じゃから噂で聞いた様なチルタリスが近くに居るかと思っての」
「ふ〜ん。霰が何かも、噂がどんなんかも知らんけどな、わいんとこはいつもこんな天気やで?」
「そうなの? ん〜じゃあ目的は達成できたのかな? チルタリスじゃないけど」
「ふむ……まぁそういう事になるんじゃろうな……多分」
「……なぁ、暫く付いて行っても良いか?」
「へっ? わいにか?」
「あぁ」
「別にえぇけど、何で?」
「あー、俺がいるといつも砂嵐になるんだよ。でも、お前がいればこんな天気なんだろ? だから暫く付いて行こうかと思ってな」
「そうなんか。でも何で砂嵐が嫌なん? 君なら砂嵐の中でも無事ちゃうん?」
「ん、まぁ確かに砂嵐の中は快適だけどよ、俺からしてもやっぱり視界は悪いんだ。星も見えやしねぇ。まぁ、何より周りに迷惑掛けたくないしな」
「あー、分かった。わいは別に何処行くかとか決めてへんから、行きたいとこあったら言ってな」
「俺も別にねぇけどな」
「儂も暫く付いて行って良いかの? 理由は大体同じじゃ」
「えぇでえぇで〜。多い方が楽しいしな。君等はどうするん?」
「私は森へ戻ります。愛着があるもので……。気が向いたらまた来て下さると嬉しいです」
「ん〜、僕はまぁ、適当にぶらつくよ。また会えた時はよろしくね」
「あいよ〜、ほな、わいは行くで」
「じゃあな、ありがとよ」
「じゃあの、礼を言う」
そうしてゴルダック、バンギラス、ユキノオーの3匹は去って行き、再び雨が降り始めます。
「じゃあ僕もそろそろ行くね」
「えぇ、ありがとうございました。宜しければまた来て下さい」
「うん。いつになるかは分からないけど、また来るよ。じゃあね、ありがとう!」
そうしてニョロトノも去って行きました。再び太陽がキュウコンを照らします。太陽が隠れていたのは高々3時間程ですが、彼にはとても新鮮に感じられました。
そして彼はその空を見上げます。空には鮮やかな虹が架かっていました。
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あ、ありのまま今起こった事を話すぜ……1000文字を目標としていたらいつの間にか4263文字まで伸びていた……何を言ってるか(ry
という訳でですね、1000文字どころか4000文字超えました。ヒャッホーイ!
何はともあれ、皆様明けましておめでとうございます。この作品は特に関係ありませんが。
それにしても台詞が多いですね。ノベルチェッカーによると台詞と地の文の比率が76:23だとか。地の文だけだと1000文字いってません。三人称の文章書くのが苦手なのかな……。
あと台詞の中の間投詞と三点リーダーも多いですね。読み辛くてすみません。
誰が台詞を言っているかは口調で区別したつもりですが、分からない箇所がありましたらすみません。当初はチルタリスを出す予定でしたがこれが理由でゴルダックに変更しました。オイラ口調にしてみてもまだニョロトノと被ってたので、仮完成後に関西弁もどきに変更してたり。結構間違ってると思うので誰か関西弁分かる方添削お願いします。
砂嵐と霰の時間が短いのはHPの問題という事にしておいて下さい。後付けですが。
ちなみに登場順は素早さの種族値で決めました。キュウコン100>ニョロトノ70>バンギラス61>ユキノオー60ですのでこの順に。同時に出した場合は遅い方の天候になるので。
ノーてんきのポケモンも飽きてくるかなーとも思いましたが、胃液ぶっかけたり悩みの種植え付けたりミイラになったりシンプルビームくらったりする描写が私にはまだ出来ないので。
後書きも読み辛いですね。すみません。
追記:2012/5/27 本文微修正
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【何してもいいのよ】
【明日の天気は快晴のち雨のち砂嵐のち霰のち晴れでしょう】
【関西弁の添削求む】
ただいま午前六時頃、頂上はもうすぐだ。
僕は白い息を吐きながら、ひたすら歩いていた。
ジャンパーなどを着込んでいるが、それでも寒い。
ここは初日の出が見やすいと途中の町でおばあちゃんに教えてもらった、ちょっとした山。
おばあちゃんいわく、昔、おばあちゃんの彼氏とよく元旦に行っていたらしく、穴場で人が全くいなかったという。
ちなみにおばあちゃんも彼氏である人も流石に年で膝を悪くしたらしく、行けないとのこと。
年の瀬だったこともあり、僕は折角だからその穴場スポットに行くことにしたのであった。ついでに初日の出を写真に収めておばあちゃんに見せるというのも悪くない。
そんなに高い山ではないが、寒さもあって、体に疲れが蓄積されていく。
今はないが、山を登る前には野生のポケモンとバトルもしていたし……。
ふと、僕が空を見上げてみると、そこで支配していた暗闇が徐々に力を失くしてきていた。まずい、もたもたしていたら、初日の出を拝めなくなる。僕は歩くスピードを速めた。
そんなこんなでなんとか山頂に着くと、そこは野原が広がっていて、人は誰もいない。
確かにここは穴場だ。人もいないし、ここならゆっくりと過ごせそうだ。おばあちゃんとその彼氏がここで色々なことを語りあっていたのかなぁ。
初日の出はまだ昇ってはいないようで、ホッとした僕は温かいお茶を飲もうと、リュックから水筒を出そうとしたときだった。
目の前には一匹のポケモンが。
え、いつのまに!?
そう驚いて目を丸くさせた僕に対し、目の前のポケモンはこちらを興味津々そうに見つめてくる。
白い上半身に紫色に染まった下半身。
両腕に伸びている、体毛が印象的な二足歩行のポケモン――コジョンドだ。
『なぁ、アンタ。ここに初日の出を見に来たってクチでアルか?』
「え」
『ははーん。どうやら図星みたいでアルね。まぁ、そうでアルね。、ここ見晴らしがいいから、初日の出にはピッタリでアルね』
「いや、あなたがしゃべったことに驚いているんですけど」
『うん? しゃべってなんかいないでアルよ。今、波動を使ったテレパシーみたいなことをしているだけでアルさ』
言われてみれば……凛とした姐御肌という言葉を思わせる言葉は耳にではなくて、脳に直接響いている感じがする。
ちなみに本で読んだことあるけど、コジョンドはルカリオみたいに波動を扱うことができるという記事を昔読んだことがある。
人間の言葉を使うのもそうだけど、テレパシーを使うポケモンと会うなんて、夢にも思わなかったなぁ――。
「ぐえ!?」
『夢じゃないでアルよ?』
「だからって、ぐふ、ボディーブロー一発、決めないで下さいっ」
どうしよう、このコジョンド。
なんかエスパーぽくって怖いんですけど。
あぁ、あれか僕から漂う波動の調子(気って言えばいいのかな)で、気持ちが分かったりするのかなぁ。
うん、なんか面倒くさい相手に会ってしまったようだぞ、これは。
『まぁ、とりあえず。名ぐらいは名乗っとくでアル。わたしは『あんにんどうふ』という者でアルよ。アンタは?』
「初陽。宮村初陽(みやむらはつひ)って言います」
『へぇ、ハツヒって言うのでアルかー。なんか女の子っぽい名前でアルな」
「いや、僕、女の子ですし」
『マジでアルか!』
なんか失礼だぞ、このコジョンド。
確かに、俗に言うボーイッシュみたいなかっこうばっかりしているから、勘違いされることもあるけどさ。
『それで、ここには初日の出を見に来たのでアルよな?』
「えぇ、そうですけど」
『今年は何年か知っているでアルか?』
「唐突ですね、辰年ですけど」
『そこで、初日の出が上がるまで、ワタシが辰年にかけて龍を披露するでアル!』
本当に唐突すぎるよ、あんにんどうふさん。
でも、確かに余裕を持ってきた為か、初日の出までにはまだちょっとだけ時間がありそうだった。
まぁ、ちょっとした暇つぶしにはいいかもしれないけど……。
『いいでアルか? よく見ているでアルよ? 『とびはねる』からの……』
グッと、あんにんどうふさんが膝に力を込め始めた。
相当な力を込めているからなのか、地面がメキメキっと鳴った。
『しょうりゅうけーん!!』
確かに龍だけど、それ技名ですよ!!??
片腕を天にまっすぐ伸ばして高く飛んでいる、あんにんどうふさんがやがて地上へ戻ってくると、その顔は無駄に爽やかだったりした。
『どやでアル。中々、カッコイイ昇り龍だったでアルな』
嘘を言っても波動やらなんやらでばれそうだし、ぶっちゃけてもいいよね、これ。
「見事なスカイアッパーでしたね。というか、コジョンドってスカイアッパーなんて覚えましたっけ?」
『違うでアル! これは『しょうりゅうけん』でアルよ! スカイアッパーと一緒にしたらいけねぇでアル!』
「いや、本物の龍を見せるのかと思ったのですけど、まさかスカイアッパーだったとは」
『だ・か・ら! これは『しょうりゅうけん』である!』
「だからって、それってパクリじゃ」
『技の素晴らしい応用の仕方って言って欲しいでアル!』
駄目だ、あんにんどうふさんはこれと言ったら聞かないタイプだと見た。
僕がそう決め込んでいると、あんにんどうふさんはハァハァと息を荒くさせながら、『次、行くでアル!』と宣言した。ちょっと待って、まだ何かあるの?
『いくでアルぜ! 『とびげり』を応用させた――』
あんにんどうふさんがそう言いながら助走して、飛びながら横回転を加えた。
回転スピードは中々のものだったからか、ヒュッヒュッと風を切らす音が響き渡る。
『たつまきせんぷうきゃーく!』
確かにそれも竜だけど!!
グルグルと鮮やかな横回転蹴りを見せた、あんにんどうふさんは着地すると、今度はふらふらと足取りを狂わせていた。
『特別サービスで回りすぎたでアル』
「またパクリですか」
僕の言葉に不服だと、あんにんどうふさんがまた食ってかかる。
『だからパクリではないでアル! 技の素晴らしい応用の仕方と言うのでアル!』
「それと……龍って、別にどこにも龍なんて出てこないじゃないですか、技を見せたいだけですか?」
『何を言ってるでアル。ワタシの技の中に龍を見なかったでアルか?』
「いや、見てないですけど」
『なるほど、アンタの実力にはまだ早すぎて、見えなかったでアルか』
なんか、気に障るようなことばかり言っているような気がしてならないんだけど。
『仕方ないでアルな。ならこれなら、修行が足りない奴でも見れるアルから、やってみるでアルぜ』
そう言うと、あんにんどうふさんは両目を閉じて両手で何かを包むかのような形を取ると、深呼吸をした。
息をゆっくりと吐き終え、そしてうなり声をあげながら力を込めると、両手から蒼い玉が浮かび上がってくる。
『はどうだんからの……ど・ら・ご・ん・ぼーる!!』
あんにんどうふさんの叫び声とともに、その両手から発射されたのは龍の顔を象った蒼い玉。
勢いがすごくて、一瞬だったけど、確かにあれは龍の顔だった。
うん、それは確かにすごかったけど、色々ツッコミたいことがあって逆に困る。
さて、キリ顔を決めている、あんにんどうふさんになんて言おうか。技名に関してか、それとも今までの技も含めてどこから知ったということか、でもやっぱりこれが一番だよね、うん、きっとそうだ。
「人に向かって撃つなぁ!!」
『え、よく見えただろうアル』
「それでも、何か間違いがあって、年越した先に死んだら元も子もないだろう!?」
『ま、まぁ、落ち着くでアルよ?』
「頬をギリギリかすったのに、落ち着いていられるかっ!」
『おおう、魂がしょうりゅうけん、でアルか。うまいでアルぜ』
「それ言うなら昇天! ぜっんぜんうまくないわっ!」
僕がそこまで言ったときだった。
遠く後方から何やら甲高い鳴き声が聞こえた。
なんか「モエルーワ!!!」って聞こえたような気がするんだけど。
『アカンでアル、なんか知らんけど、どうやらレシラムに当たってしまったでようアルぜ』
「え、レシラムさんって、あの伝説の?」
昔話で聞いたことあるけど、本当にあのレシラムっていうポケモンだったら、会ってみたいなぁ。だって、あのレシラムだよ!? 昔話通りだったら白くてもふもふしている伝説の龍らしいんだけど、ぜひとも会ってもふもふさせていただきたい。あ、でも伝説のもふもふって安くないのかな、なんか代償で取られたりして……。
『やる気満々な波動がここまで伝わってくるとは流石でアルな』
……うん、そんなこと考えている暇はないよね。
『ワタシより強い奴に会いに行きたいでアルが、龍を魅せることに全力を注いでしまったでアルから、また今度がいいでアルぜ』
「はぁ……なんで、僕まで逃げるハメに」
『というわけで、おまけにおなかすいてペコペコで力が出ないでアルから、運んで欲しいでアルぜ。龍を魅せた料金はそれじゃ足りないでアルが』
「金取るのかよっ!!」
僕はそうツッコミながら、ポケットから空のモンスターボールを取り出してあんにんどうふさんを入れると、その場から逃げるように走り去った。無我夢中になって、走っていく。山を下っていく。追いつかれてしまうのだろうか、そうなったらおしまいだ。色々な意味でおしまいだ。残念ながら今の僕の手持ちじゃ伝説に勝てるだけの力量はないし、もちろん僕のトレーナーとしての腕前も含めてだ。
『逃げ切れるわけがないでありんすでしょう』
「げっ!?」
頭に響くはんなりとした柔らかな声。
そして僕の体に降り注がれた大きな影が一つ。
その影が通り過ぎたかと思うと、僕は浮いていた。
空を飛んでいた。え、もう死んだとかなしなんだけど。
『いきなり、止まれと言うても、それじゃあ止まれはできんせんでしょうに』
「あ……」
『安心してくださいでありんす。私はあくまで方向音痴な弾を飛ばした輩に用があるだけでありんすから』
なんだろう、レシラムさんの声を聞いていると、不思議と自然に気分が落ち着いてくる。
すると、僕はレシラムさんの腕につかまれて空を飛んでいるんだということに気がついた。暁に変わりゆく空が神秘的である。
『さて、そろそろ降ろすでありんすですよ』
「あ、は、はい」
レシラムさんも俗に言うテレパシーというやつなのかな、頭に直接響き渡ってくるや。
ゆっくりと旋回しながらレシラムは先程、あんにんどうふさんといた山の頂上に僕を運ぶと、そこで優しく降ろしてくれた。なんだろう、てっきり捕って食われるのかと思ったんだけど、違っていたみたい。目の前にいるのは白いもふもふな毛で覆われ、そして優しそうな澄み切った空色の瞳を持つ龍だった。なんか聖母ってこういう方を言うんだろうかというオーラがありそうな感じだった。
『さて……私に変な弾をぶつけた方を出して欲しいでありんすが……』
「えぇ、もちろん。それはよろこんで」
僕は即快諾した。
当たり前だよね、そうだよね、ちゃんと謝らなきゃいけないよね、これ。
僕はポケットからモンスターボールを一個取り出し、あんにんどうふさんを出すと、彼女はムスっとした嫌な表情を浮べていた。
『なんで出したでアルか、裏切り者』
「しょうがないよ。あんにんどうふさん、ここはちゃんと謝らないと」
僕がそう促したはずなのに、どうしてか、あんにんどうふさんはなんかカンフーのようなポーズを決めていた。
あんにんどうふさん独特の謝り方なのかな、そうなのかな。
『まぁ、いいでアル。ここで会ったがラッキーデー、勝負するでアルぜ!』
僕の淡い期待なんてすぐに吹っ飛んだ。
「ちょ、あんにんどうふさん」
『いいでありんすよ。身を持って償ってもらうことにしまうでありんすです』
『話が早くて、助かるでアルぜ』
もう駄目だ。
この二匹を止めることなんて僕にはできなかったよ。
もうこうなったら、二匹の戦いを黙って見る他ない僕をよそに、あんにんどうふさんとレシラムさんがにらみあっている。あ、もうちょっと離れて見たほうがいいよね、飛び火とかマジ怖いし。
『いくでありんすよー!』
先に動き出したのはレシラムさんの方だった。
その大きな口から赤い炎が勢いよく吐き出されるが、あんにんどうふさんは身軽にそれを避けると、一気にレシラムさんとの間合いを詰める……って、ちょっと待て。あんにんどうふさん、アナタおなかペコペコで動けなかったんじゃなかったけ?
『もらったでアルぜ! くらえ、とびはねるからの、しょーりゅーけん!!』
レシラムさんも目を丸くするほどの速さで一気に『しょうりゅうけん』を決めるけど、流石に体格差もあるし、そんなに効かないんじゃないかな――。
甲高い悲鳴を上げるレシラムさん。
後ろによろめいたレシラムさん。
効果は抜群のようだ……って、え!?
『なるほど、しょうりゅうけん、だけにドラゴンタイプの技でアルのか!』
「んなわけあるかぁー!!」
私はそう叫んでみたが、レシラムさんは顔色を悪くさせて、あんにんどうふさんを見つめていた。これってマジな話? 僕は信じないよ?
『よっしゃ、次はとびげりからの、たつまきせんぷうきゃくでアル!!』
「それも竜だけに、効果抜群なんて、そんなアホな話があるわけ……」
『うきゅうー!!』
『ふぅ、あったでアルぜ』
「……もう、何も言うまい」
その後もあんにんどうふさんは攻め続け、最後はあの『どらごんぼーる』とやらにレシラムさんは倒された。
仰向けに力なく倒れているんだけど、僕には信じられない風景だった。
なんていうか、これ、あんにんどうふさんの一方的な勝利だよね? そうだよね? えっと、レシラムさんが弱いの? それともあんにんどうふさんが強すぎるだけなの? もう訳が分からないよ。
『ま、負けてしまいましたでありんすですわ……』
『ふ、ワタシに惚れるでないでアルぜ?』
あんにんどうふさんがすごい調子に乗っているのがなんか腑に落ちないんだけど。
僕が心の中でそう文句を呟いていると、レシラムさんがゆっくりと起き上がり、そして、僕の方へと歩み寄ってくる。その顔には優しそうな微笑みが浮かび上がっていた。そうか、なるほど。きっとこのレシラムさんはバトルが苦手なんだよ、きっと。そうに違いない。そういうことにしとくから、あんにんどうふさん、あまり調子に乗っちゃ駄目だよ?
『中々、見事な戦いでしたでありんすなぁ……いやはや、このようなコジョンドを持っているからには間違いない。あの、モンスターボールとかってありますかでありんす?』
「え? ま、まぁ、ありますけど……」
レシラムさんに言われるがままに僕がモンスターボールを取り出すと、レシラムさんはニコッと笑った。
『そういえば、名前を訊いてなかったでありんすね。訊いてもよろしいでありんすか?』
「えっと宮村初陽です」
『はつひ……これからよろしくおねがいしますでありんす。英雄として、この世界を救ってくださいでありんす』
え、今、この龍、なんて言った?
レシラムさんに問いただそうかと思ったら、先にレシラムさんが爪で器用にモンスタボールの開閉スイッチを押して、そのまま入っていっちゃった。その後、レシラムさんからは何も聞こえなくなってしまった。どうやら、レシラムさんは僕のことを、あんにんどうふさんを引き連れているスゴ腕トレーナーと勘違いしているみたいらしい。
そして、その後のレシラムさんの言葉が全くよく分からない。
僕が頭を悩ましていると、あんにんどうふさんがいつのまにか近寄ってきていて、僕からモンスターボールを一個を取っていった。先程、あんにんどうふさんを運ぶ為に使ったモンスターボールだ。
『世界を救うってことは強い奴に会える可能性もあるってことでアルぜ、きっと! というわけで、これからよろしくでアルよ、ハツヒ!』
そう明るく言うと、あんにんどうふさんは勝手にモンスターボールの中に入っていった。
完全に顔を出した暁が僕の顔を照らしている。
これから慌ただしくなりそうな一年の幕開けに一言述べておこうかと思う。
「うん、どうしてこうなった」
【書いてみました】
明けましておめでとうございます!
ということで、新年最初の投稿をさせていただきました。
新春初笑い的な感じでギャグ路線で書いてみましたがいかがだったでしょうか、面白かったなら嬉しい限りです。
昨年は本当にお世話になりましたです。
今年もチャットなどで『見えないみーさん』とか言われている自分ですが、よろしくお願いしますです。
ありがとうございました。
追伸:これから初日の出を拝みに行って来ます。
【何をしてもいいですよ♪】
【今年一年、龍のように飛躍する年でありますように】
年明けまでもう少し。あー、今年1年でどんだけうちにゴースト増えた。初詣はあれだな。ゴーストホイホイがこれ以上酷くならねぇ様に祈るしかねぇな。
もう治る気がしない。何故だ。分からん。まぁ、いいか。
コタツでゲンガーがミカンを剥いてくれた。ありがとー。平和が染みいる。
来年もいい年だと良いよなー。とか思いながら、だんだんぼんやり眠くなる。
いかん、コタツで寝ると風邪をひく。そろそろ寝るわ―、初日の出は出来たら一緒に見ようぜ、と声をかけて夜が本場のゴーストたちを置いていく。
もそもそと布団にもぐった。ごろんと寝がえりを打つと、何気なしに壁にかけてある鏡を見た。ゆらり、波打ったように見えたか、見えないかで、寝た。
妙な夢を見た。
水が下から上に昇ってく。宙に岩が浮いている。明るくも暗くもない。全体ぼんやりとした水色。
えーと、どこだ、ここ。何だこの謎の世界。年の終わりに変なもの見てるな、私。
空中をすいすい泳ごうとするがうまくいかない。夢なんだからもっと都合よくいきゃいいじゃないか。
なんかのはずみで地面(?)に足がついた。あー、歩ける。ちょっと安心。
てくてく素足で歩く。これって、布団の中で実際に足もばたばたしてんのか?想像して笑う。
誰もいない空間。普段やかましいゴーストポケの一匹も夢の中に出て来ないのか。ていうか、あいつら確か夢の中に入ってこれる奴とかいなかったか?まぁ、どうでもいいか。
しかし寂しいな、ここ。なんでもいいから生き物に会えればなーとか思ってひょいっと下を見てみれば。
・・なんぞあれ。
でっかい影が過ぎていく。いやいやいや、なに、あれ。生き物、か?多分そうだよな。夢とはいえ想像力たくましいな、私。
怪獣というか、ドラゴンもどきというか。えーと、まぁ、いいや。
追っかけてみるか。どーせ夢だし。待てぃ!走ってみる。風にように・・・とはいかない。通常スピード。えらくリアル思考だなぁこの夢!ちょっとは都合よくいけばいいのに。
見失った。全然ご都合主義じゃないわこの夢。つまらん、どこ行った。
適当に座りこむ。遠目からじゃ全然姿が分からんが、あの黒いの何なんだ。どっかで見たことあるポケモンかなんかか?
いや、見たことあるかどうかなんて知ったこっちゃないんだけども・・・。ん、なんか急に暗くなった。
真上をあのでかいのが通って行った。・・ぶっちゃけ、ムカデっぽい。
いきなりビビらすんじゃねーよぉ―!思わず叫んでみた。ぐるんと、頭の先あたりが反転した。
・・え。
こっちきた。
思ったより、つーか、かなり、でかい。えーと、黒いムカデもどきドラゴン(っぽい何か)。
何か挨拶でもしたほうがいいんだろうか。
とりあえず、明けてないけど「明けましておめでとうございます」と、言ってみた。
・・無反応。正月の概念があるかどうかもわからねーからなー。
適当にしゃべくる。お前ここで一人なの?一人っつーか一匹か。寂しくね?あー私は夢とはいえ結構心細かったな―。あれだよ、同じ夢がまた見れるかどうか分かんねーけどまた会えたら会おうぜ。な。
オール無反応。これはこれで、きつい。まぁ、一人よりはマシ、か。
なぁ、お前なんて言う名前だよ。通訳いないから通じるかどうかわからんが聞いてみる。夢だし!
はじめて、そのドラゴンもどきの口が開いた。
「 」
そこで目が覚めた。
あり?
なんか、えらいはっきりした夢見てなかったか?
・・・。
まぁ、いいか。時計は朝の4時50分。ちょっと早いけど、初日の出を見るんだからもう起きとくか。
「ギラティナ、だっけ?あれ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
余談 シンオウゴースト勢終了―――!
イッシュの皆様は年明けです。というか、ここでゴーストシリーズ第1部は終りっす!
【意地でも〆切に間にあわす】
【来年も頑張るぜぃ!】
一年の終わりだからかどうか知らないが、雪まで降ってきたらしい。ヨノワールさんが訪ねてきて中途半端だった掃除も一区切り終えて休憩中に外の作業組が逃げ込んで来た。
まぁ、ヌケニンなんか効果抜群だもんな。何匹か力尽きてヤミラミが担いで持って入ってきた。・・誰が御霊の塔まで運べっつった。こいつは放置プレイで良いんじゃね?
・・・ミカルゲさぁ、寒いんなら石の中に戻れよ。え?体感気温は変わらない?しょうがねぇなー、今だけだぞ。後で外に出すからな。
にしてもゴ―ストポケモンだらけだから中もそこまで温くはないな。ゲンガーっているだけで気温が5℃下がるらしいし。
屋敷の広さが仇となったな―。ストーブの陣取り合戦勃発。おい、私の場所だ。押すんじゃない。
元気のある奴はおしくらまんじゅうでもして自分で温かくなってください。う―寒い寒い。こりゃ早いところ仕事を再開して動いた方がいいかもしれねぇな。寒さで手が動かなくなる前に。
よーし、仕事再開すっぞー!文句いうな。ちゃっちゃか終らせたあとは蕎麦食うなりコタツにもぐるなり紅白見るなり好きにしてくれていいから。
急に気合が入りやがったなこいつら。現金な奴。まぁ、いいか。
数分後、物置から悲鳴が上がった。何だ!?あれか、黒いつやつやのGのつく虫でもあらわれたか。一応その場合の対応はピンポイントのナイトヘッドや鬼火を許可しているので大丈夫だと思っているんだが、まぁ、怖いものは怖いか。
一応ゴキバスターを持ったままそっちに駆けつける、と。ゴ―スたちがビビりながらすっとんで来た。おい、おい何があった?
扇風機が空飛んで追っかけてきたぁ?
なんだそれ。ポルターガイスト?ははは、ふざけるのも大概にしろよ。どーせ誰かほかの奴等が悪戯でもしたんじゃねぇの?まともに考えて。
全くもー。お前らゴーストなんだからさ、それくらいの超常現象だって起きるにきまってるだろう。むしろ、超常現象が起きる要素しかないだろ。ほら、一緒に見に行ってやるから。
・・・ほら、なんともないじゃないか。ただの扇風機だよ。な、これで大丈夫だろ?自分の持ち場に集中しろよー。
・・・今度は何だ?庭グループ。芝刈り機がすごい勢いで御霊の塔に突っ込んでぶっ壊した?ミカルゲ、お前嘘つくならもうちょっとまともな嘘をつけよ。
そんなに家の中が良いのか。休憩時間だけって言ったろ?・・・え、ヤミラミ達も見たの?でもさ、うちの芝刈り機って錆まくってて動かないはずなんだけどさ。
錆びてなかった?むしろオレンジ一色で派手だった?そんな趣味の悪いカラーの芝刈り機見たこともないぞ。
って、家の中でまた騒ぎが起こってるぽいな。
電子レンジに噛みつかれた?おまけに火をふいた、と。おいおい、掃除中に妙なものを温めたんじゃないだろうな?雑巾で拭こうとしただけ?じゃあ何でそんな事になるんだよ。
そっちは冷蔵庫に閉じ込められかけた?妙だな、いかに超常現象が起きるからといって悪戯にしちゃああっちこっちで起こりすぎだろう。
おまけにやってることは全部ばらばらじゃん。追っかける、破壊する、火をふく、閉じ込める。なんじゃらほい。
今度は洗面所か!?あーもう、誰だこんなことやってる奴は!
あー・・・、本当だ。趣味の悪いオレンジの洗濯機が跳ねてる。ぴょんぴょんしてるよ。なるほど、一連の超常現象の原因はあいつか。
で、あれに水をぶっかけられたと。はぁぁ、仕事増やしやがって。ちょっと説教してくる。
おいそこの洗濯機!跳ねるな!動くな!つーか掃除の邪魔じゃボケぇぇぇ!いいか、お前がやってんのはただの悪戯超常現象だ。大掃除の仕事を増やしてくれるって言うのはどういうことだ?ん?そんなに私に怒られたいか?あっちこっちで騒動起こしやがって困ってんだよ!遊んで欲しいんなら邪魔するな!洗濯機は洗濯機らしく元の場所に戻って洗濯機をやってりゃいいの!冷蔵庫も電子レンジも扇風機なんかこの季節いらねぇから!芝刈り機も全部草抜いちゃったから仕事ないから!分かったか!
・・・ぜーぜー、何で大晦日にこんなに労力を使わなきゃならんのだ。
洗濯機はしょんぼりしながら元の場所にもどった。それでよし!さて、さっさと仕事終わらせるぞ―!
大掃除が終了して紅白でも見ようか、と思ってテレビのある部屋に行った。既に同じような奴等がコタツに潜っていた。お邪魔する。
テレビを付ける。・・・つかない。あれ?
うにょん、と画面が歪んで妙なのが出てきた。どっかで見たオレンジ色。あぁ、おまけか、超常現象。お前も一緒に年を越そうぜ。
けたけた笑って引っ込んだ。テレビがついた。
「やれやれ、ひねくれもんだ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
余談 ロトムのテレビフォルムはまだですか。
【ラスト一匹!】
【好きにしちゃえ】
大掃除の最中に古新聞とか手紙類とかも整理していたら見覚えのある物を引っ張り出してしまった。自分のアルバムとかそんなんじゃなくて、ついこの間の写真だけど。
うわーこれは、焼却処分すべきだろうなぁ。黒歴史だ、間違いなく。思い出すのも恥ずかしい。あの時の格好が悔やまれる。
ハロウィンのシーズンあたりで菓子を寄越せとうるさいゴーストポケモン共に大量購入した怨念飴をばらまいていたらゲンガーが友達を連れてきた。
さて、どんなポケモンやらと思ったら、なんかもじもじしてないか。その、雪女、じゃないユキメノコ。照れ屋さん?へー。飴いる?どうぞ。
まぁいらっしゃい。ゆっくりしていって・・え、何?私に用事?はぁ、なんでしょう。
ゲンガーが翻訳。『コンテストに一緒に出てください』すっごい可愛らしい文字で書いてあるけども、えーと。
どゆこと?
このユキメノコ、何かのきっかけで見たポケモンコンテストに憧れがあって、どうしても出たい!・・と思い詰めているらしい。
いや、それなら普通にトレーナーを見つけて出れば良いんじゃないか、とも思ったけどそれってある種賭けだよなぁ。いや、案外コンテスト会場近くでトレーナーの近くに行けば・・まぁ、部外者があれこれ言える立場でもないか。
で、私と。まぁ、確かにゴーストホイホイ体質のおかげかこうやって通訳できるポケモンもいるし、事情も分かるもんなぁ。
しかし、その、私は自分のポケモンを持ったこともないし、バトルは愚かコンテストなんてやったことないぞ?いいの?
・・・『私も初めてだからお互い頑張ります。よろしくお願いします!』・・ですか、すっごい真っ直ぐな眼差してこっち見てるよ。あー弱ったな。私は目立つの嫌だし・・。
ほら、コンテストってテレビ放送なんだよね・・。あれだよ、後からテレビ見たよーって注目とかされるのが嫌なんだよ。
悪いけど他を当たって・・ほしいんだけど・・・なんでゲンガ―までそんな目で見るんだよ。嫌なんだからしょうがないじゃないか。こればっかりは曲げないよ。
『一生のお願いです!一度だけ、一度でいいんです!お願いします!』・・の横に『こっちからもお願い。なんならここにいるゴーストポケ達から署名を集めたっていい』と脅迫まがいのゲンガ―の意見。
そんな目で見るな。私が悪役見たいじゃないか。わかった、分かったってば!一回だけだよ!
で、とりあえず館の本棚をあさると『必勝!コンテスト攻略』なる古臭い本が見つかった。今から本屋に買いに行くのもあれだし、とりあえずこれを参考にするか。
えーと、まずはどんな技が使えるのか聞いてみる。ゲンガーが書いた紙には。
『吹雪 怪しい風 ギガインパクト 氷の飛礫』
あれ、なんか明らかに変なの混ざってないですか。ギガインパクトって・・野生で覚えるの?
・・・そんなあからさまにもじもじされても困るんですが。まぁ。いいや。深く追求しない方がよさそうだ。
本によると『第一審査をまずクリア―するために!コンボ技を決めろ!』・・あー、コンテストって一次と二次があるのか。テレビに長いこと映りたくないから一次落ちを目指せばいいわけね。
と、ゆーわけでコンボは決めない方向で。・・・そんな目をするなよ―。第一コンボって何。わからん。
コンボの前にそれぞれがどんな感じの技なのか披露してもらった。正直な感想、すげぇ寒かった。あと迫力があった。そんくらい。
プロってどうやってコンボとやらを決めてるんだ・・。本にはお手本らしきコンボ、があったが残念なことにユキメノコに応用できそうなもんは見当たらなかった。つーか、よく分からんかった。
本人にこうしたいとかそういうのがあるのかと聞いてみる。
『こ、個人的になんですが!最初に怪しい風で氷の飛礫を巻き込んだ後吹雪でこうぱあっと持って上がってギガインパクトでフィニッシュが良いです!』
じゃあ、考えるの面倒だからそれでいいや。ていうか、本人ちゃんとイメージできてんじゃん。私はお飾りだもんなぁ。うん、安心。本は燃えるゴミに出そう。
コンテスト当日。初参加なんですが、と受付で行ったらカードを作ってくれた。エントリーに間にあってとりあえずホッとする。
・・で、この衣装の数は何だ。テレビに出てくるコーディネーターって派手だよな―衣装自前かなーと思っていたらここで借りられる・・もとい、強制的に着せられるらしい。
あんな派手なドレス着たくない。が、後ろでスタッフさんが物凄い笑顔で待ち構えている。怖い、これは、ちょっと、すごい怖い。逃げたい。ユキメノコまでビビっている。
結局、着せられたのはドレスではなく軍服みたいな・・えーと、まぁよく分からん。感想を聞いてみる。『超イケメン!』byゲンガー。『すごく格好良いです』byユキメノコ。やっぱりそーゆー方面でしか褒められんのか、私の容姿は。
顔を出したくない、といって見るとマスクを手渡された。・・・これってあれだよな、なんかの有名なオペラに出てくる奴じゃねぇ?まぁ、顔バレするよりマシだし。どうせ一次だけ出てすぐ帰るし。
番号が呼ばれた。それじゃあ行きますか!
我ながらこのいで立ちにファントムマスクは痛い。痛すぎる。破り捨てようかと思ったけども、それもまたあれだよなぁ。写真をしまう。
結局の所、演技が終ったあとに結果を確認せずにさっさと荷物をまとめて帰ったのちに、新聞に『仮面のコーディネーター失踪 〜仮面の怪人の噂〜』という謎の見出しで記事を飾ってしまうのを見つけてしまい大騒動になるんだけども、また別の思い出。
「さて、仕事に戻るか」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
余談 コンテストの話はアニメ寄りです。ゲームの奴は正直難しいと思う。
【後二体!】
【好きにしちまえ】
遅いクリスマスはゲンガーお手製のクリスマスケーキをゴーストポケどもが食い散らかすという大惨事。どうやら私が帰ってくる前に片づけをすまそうとした形跡らしきものがあった。ようするにわちゃわちゃ。
仕事納めでようやくゆっくりできると思った矢先にこれか。お前ら居候の分際で何やってくれてんだこの野郎ども。
ホウエンから帰った時以上にひでぇぞ、こりゃ。
おいそこ、逃げるな。大掃除すっぞ。
年末の大掃除、というかただのクリスマスパーティの後片付けというか。要するに兼ねればいいんだ、両方。
手のある奴はハタキ持って手のない奴も雑巾絞って働く!ゴーストタイプだろう。それくらいの超常現象は起こせ。
ヌケニン達は草刈りよろしく。ヤミラミは草取り。根っこまで処理しないと意味ないんだよ。フワンテ持ってくんな遊ぶんじゃねぇ。御霊の塔はちょっとばかし崩しても問題ないから。
・・・なんだよミカルゲ。おんみょんうるさいぞ。文句いうな、お前のニックネームを『ぼんのう』にしてやるぞ。・・よし、大人しくなった。
サボる度胸がある奴は毎度お馴染み掃除機→高速脱水コースだ。さすがに身に染みてきてるな。みんな真面目でよろしい。
何でこんな時にチャイムなんか鳴るんだ。押し売りか?セールスか?こっちは大掃除で忙しいっつーの。誰か驚かして追い返して来い。・・手が離せないっぽいな。しゃあない、私が行く。
「すいません、今ちょっと立て込んでまして」
玄関を開けたら、ヨノワールがいた。
『大掃除中にお邪魔するとはとんだ失礼をしまして・・・』
さらさらっと当たり前のように紙に書かれた謝罪の言葉(ゲンガー通訳)にどうすりゃいいの分からないままにとりあえず食堂に通した。
これ御土産です、とばかりに手渡されたのは。
「・・・いかりまんじゅう・・」
出張土産です、とのメモ付き。いや、まぁ、ご苦労様です。何の出張か分かんないけど。
なんか適当に御茶受け、というと『どうぞお構いなく』(っぽいジェスチャー)。・・なんだこのよくできた人、じゃないポケは。
えーと、とりあえずどちらさんですか。うちの居候のどれかの親戚かなんかでしょーか。にしても、あのでかい手じゃ来客用の湯のみが小さすぎるな。つまむようにして飲んでるよ・・。
紙来た。相変わらずゲンガ―の字が達筆過ぎる。『親戚、というより上司に当たります』。上司・・?え、ちょ、お前らどういう事。
ここから要するにゴーストタイプって何やってんのかを説明するヨノワールさん(と、それを全部文章にするゲンガ―)。なんか、すごい必死。
でまぁ、すごいざっくり言うと。ゴーストタイプの仕事は2つで、死んだ生物の魂を霊界に持っていくのと、もう1つが企業秘密だそうで。気になるけど。
『一匹一匹にノルマがあるもんですから、あれこれ裏工作してノルマを達成しようとする輩が多くて困るんですよ』
・・それはあれか?やたらとゴーストポケモンの図鑑説明が怖いことに対する弁解か何かか?フォローになってねぇよ。そっちの都合とか余計こと怖いわ!
まー私が知ってるゴーストポケモンっつーのは掃除機に吸い込まれるガス玉、本職のくせに超ビビり、パティシエ、ポニテ、脱殻、職人、黒坊主、恨み人形、案内人、アフターケア、風船、気球、コーディネーター、後ぼんのう。・・おい、図鑑説明どこ行った。
で、この洋館はそーゆー仕事をさぼる奴のたまり場・・・おい。お前ら。今一斉に私から目をそらしたな。この二ートポケモン共ぉぉぉ!居候してる上に本来の仕事をしていないってど―ゆーことだっ!
ダメだ、働かないポケモンだらけかここは。だから上司がわざわざ来たんじゃねーの。精々怒られろよお前ら。
あ、でもすいません。うち何匹かはうちの仕事で使ってます。と、言ってみるとそこも調査済みだとか何とか。マジか。良いのか。分からん。
結局のところご用件は。
『働くように発破かけに来たのと、ご挨拶に』
年内のうちに来たかったらしい。もう新年のあいさつを兼ねてくれば良かったんじゃないか、と突っ込むと『それもそうですね』。要領が悪いのか機転が利かなかったのか。まあいいか。
年の瀬にお邪魔しました、とここまで丁寧にされちゃこっちの腰も連れられて低くなる。つくづくよくできたポケである。
いえいえお構いなく。またいつでもどうぞ。
顔をあげたらもういなかった。
と、思ったら帰ってきた。え、お願いがある?うちのマッサージを受けたい。予約取ってなら良いんじゃないんですか?あ、嬉しそうに帰っていった。
「ポケモンの世界も大変だな、こりゃ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
余談 ヨノワールって働く仕事のできる上司なイメージです。
【今日一日で行けるのか】
【お好きにどうぞ】
僕はもう行かなければならない。ここではない、どこか遠くに。
僕はまず家に寄った。きっとあの子はここに立ち寄ってくれるはずだ。
あの子には本当に悪いことをした。僕に好意を持ってくれたこと、素直に嬉しいと思っているよ。
だから、最後のダンバルは君に託そう。まだまだ輝く未来を待つ君のパートナーとして欲しい。
机に向かう隣にはエアームドが力無く鳴く。ごめんね、最後まで無理させて。僕にもう少し力があれば、こんな結果にはならなかっただろう。
全ての真実を手紙にしても、君にはちょっと信じられないことばかりだから、僕は誰にも告げずに旅立つ。
ごめんね。本当は君のことをもっと誉めたかった。君の成長を見届けたかった。君の好意を受け止めたかった。これじゃあ僕が君から逃げたみたい。
神様はいつも意地悪だ。願い事など叶えてくれない。けど一つだけは叶えてくれたようだ。
手紙を書き終えた。ペンをおいて、ダンバルのボールを置いた。きっと見てくれると信じている。
扉の開く音がする。思ったよりも早かったね。
「ダイゴさん?」
いつもと違うから戸惑っているのかな。机の上にある手紙を見つけてた。何を考えてるかなんて表情で解るよ。
「ダイゴさんに会いたいよ」
ごめんね。君の願いを聞くことはもうできないよ。僕の願いが叶ったのだから。だから僕は遠くへと行かなければならない。君にこんな無様な姿を見られたくはないんだ。
ポケモンたちが行こうと言う。君が開けた窓から潮風が入り込む。君の髪が潮風に揺れた。僕も君の髪に触れて旅立つ。
「さようなら、ハルカちゃん」
君が教えてくれたのは、人の暖かみ。こんな小さな子に教わるとは思わなかった。
君が立派なトレーナーになって、僕を打ち負かした時は、なんて早く願いが叶ったのだろうと思った。僕はとても嬉しかった。
『ルネシティで、若い男性のものと見られる遺体が発見されました。なお、死後かなり経過しており、警察では身元の確認を急いでいます』
「ざまぁねぇな」
「この先には行かせない…君たちのような無法者に、未来を摘み取る権利などない」
「口だけは達者だな。望み通りしてやるよ!」
もし、生まれ変わりがあるとしたら
君のポケモンになって、ずっと一緒にいてあげる
それで悪い奴らに絶対に負けないくらい強く、君を守ってあげるからね
ーーーーーーーーーーーーー
あまりの欝さに自分が暗くなった。
【何してもいいのよ】
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