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朝っぱらからサンタコスムウマージに着せ替え人形にされ、それでも仕事をこなすため、仕事場について作業着に着替える。
冬だからと支給された上着もチョロネコ印の紫色。紫ってゴーストカラーじゃん。どこまでこいつらとの縁が憑きまとうのやら。
自転車に荷物を積み、ヨマワルとルートをチェック。ゴースは木枯らしに吹かれて飛んでいきかけるのをヌケニンが見送っていた。おい!
いざ出発する前になるとどうにか戻ってきたゴ―スはするりとポケットに避難。やれやれ。
209番道路はそこそこ広いのに中州が多くてついでに橋も多い。最短ルートを見つけるのにいつも苦労する。
面倒な時は河原を突っ切る。バランスは悪いが時間には変えられないっつーの。
先を飛ぶヌケニンにヨマワル。お前らは空を飛べていいよなぁちくしょう!地べたを事情なんか知らないで気楽なこった。自転車の不都合を叫んでみる。意味無し。
ポケットの中でカイロと一緒にぬくぬくしているゴ―スの野郎はこのあと私の八つ当たりを受けることなど知る由もなかった。
12月の終わりといえばあっという間に暗くなる。仕事は終わって帰りのついでに買い物すればありゃ、星が綺麗。とかいってる場合じゃない。
吐く息は白い、要するに寒い。ヌケニンは呼吸してないからそうだが、ゴ―スもヨマワルも鬼火で暖をとって・・って、それ温いの?青白いのに?あぁ、化学的に考えりゃ青い方が温度は高いのか・・・。
自転車の明かりじゃ心細いが、正直鬼火も頼りにならない。ヌケニンのフラッシュはこ―ゆー時こそ打ってつけ、と思ったのだがあれって一瞬じゃん。ってことで却下。
早く帰りて―とか思いながら209番道路に差し掛かったら、どうも妙な音がする。みょーんみょーんと機械だか鳴き声だか微妙な感じの。あれだ、除夜の鐘の予行演習か?なわけないか。
何だこれ。怨霊かなんかでも出るってか?ゴーストがいたらマジビビりコースだが、生憎ゴーストホイホイ体質のこっちには本物が3匹ばかし憑いているわけだから全然怖くない。というか、怖いの域を超えてる。
お仲間?ゴ―スは知らんといい、ヨマワルは首を振り、ヌケニンは無反応。そうか、同種族じゃねぇか。
じゃあいいや。無視。これ以上うちのゴースト人口増やすわけにもいかんし。かかわり合いになるまい。
そう思って再度気合を入れてこぎ出した。近づく謎のおんみょーんもそのうち通り過ぎるだろうと思いつつそこそこ速度も出てきて良い感じになってきた瞬間。
ぎゅわん、と音がしてなんかはねた。
え、なに、小型のポケモンでも撥ねちまった?慌てて止まる。おい、鬼火持ってこい。
見づらい青白い炎に照らされて見つけてそれは。
・・・ただの石。
何だ、石か。その割にはいやに鈍い音がしたな。おんみょーんも急に止まったし。ゴ―スがせっつく。何。え、こいつポケモン?まじで。
いや、ポケモンにしちゃ小さくねぇか。石だけ。・・・ちょっと割れてるけど。撥ねた衝撃にヒビでも入ったか。
拾ってみると何か声っぽいのが聞こえる。よくよく聞くとおんみょーん・・・ってこいつか!さっきからうるさかったのは!
うるさい腹いせに買い物袋からサランラップを出す。うにょうにょ紫色の顔っぽいのが出てきたがオール無視。ラップでぐるぐる巻きにしてやるこの野郎。
3秒後、紫のうにょうにょは出てこれなくなった。こいつ、ゴーストっぽいくせに塩化ビニルはすり抜けられんのか。ゴ―ス爆笑。ヌケニン無表情。ヨマワルだけ気の毒そうに見ていた。
よし、気が済んだ。こいつこのまま放置・・ヨマワル嫌そうだね。しょうがないなー、ヌケニン、シザークロス。
出てきたうにょうにょがポケモン語で抗議するが無視。いや、ひたすらおんみょーんを連呼されても通訳通さなかったらわかんねぇし。
とりあえず落ち着いたっぽいから、ゴ―ス通訳よろしく。
この石、じゃないこのポケモン、ミカルゲとかいうポケモンらしい。予想通りゴーストタイプ。私のゴーストホイホイ体質超万能。嬉しくねー。
で、こいつ普段はこの道路のはじっこにある御霊の塔とやらにはめ込まれているらしいが、近所の悪ガキやら野生のポケモンがぶつかって崩れて道のまん中にほおりだされて恨み事を吐いていたらしい。それがあのおんみょーんか。
いや、悪ガキはともかく野生のポケモンに崩されるってどんだけもろいんだそれ。とりあえず直してくれと懇願してくるので夜中の騒音被害を防ぐために一応現場に向かって見る。
・・・これか、三途の河のほとりで積み掛けを崩された出来そこないの石の塔みたいなの。しょうがねぇな。直す、はめる。はいおしまい。
まぁ次は崩されないように頑張れ、適当に声をかけて家に帰った。その日は。
しばらくしてまた通りかかった時にヨマワルが気にするようなそぶりを見せたので様子を見に行った。
案の定ぶち壊れていた。あー、まぁ、うん、ミカルゲはどこだ。
その辺の落ちていた。・・・紫のうにょうにょが無いから寝てんのか?
川につけてみる。冷たさで今年最大のおんみょ―んを聞いた。うるせぇ。
そしてまた壊されているのを見てショックを受けていた。
御霊の塔の場所が悪いんじゃないかって気がする。引っ越しを進めてみた。
数時間後、うちの庭に御霊の塔ができていた。
「いや、そーゆーことじゃなくて」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
余談 とゆーわけでミカルゲの出現場所はもりのようかんです。
【年末年始で間に合うのか】
【何してもいいのよ】
1:大人
「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「お母さん」
六つの声がこだまする。大きな椰子の周りを跳ねるそれらは、口々に質問を投げかける。
「僕達はさ」
「僕達ってさ」
「僕らはさ」
「僕達ってね」
「僕らはね」
「大きくなったらどうなっちゃうの?」
ぴたりと止まってじいっと見上げる。六対の視線にさらされた大木は、質問の意味を正確に読み取った。
「大丈夫、表に出てる顔は三つだけだけど、残りの三つもちゃあんといるよ。体は一つ、でも心は六つで一つ。それは大きくなっても変わらないよ」
それを聞いて安心したのか、六つの玉はきゃあきゃあと転がり跳ねる。
「そっかぁ」
「そうなんだあ」
「そうなんだね」
「それはいいねぇ」
「それでいいねえ」
「ああ良かった。僕達は皆揃って“僕”のままなんだね」
満足そうに揺れる六つの玉達。ゆさゆさ歩く椰子の後ろで、今日も仲良く飛び跳ねている。
2:ひび割れ
「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「お母さん」
六つの声が呼びかける。大きな椰子を囲む彼らは、慌てたように転がり回る。
「僕達の体のね」
「僕らの体にね」
「僕達の顔もね」
「僕らの顔もだよ」
「僕らの顔と体にね」
「少しずつひびが入ってるんだ。どうしよう、僕達割れちゃうの?」
心配そうにじいっと見上げる。不安な眼差しを受けた大椰子は、からから笑ってこう言った。
「気にしなさんな、坊や達。それは成長の証さ、ひびが増えるほど進化の時が近づいてるんだよ。『割れる』のはおめでたい事さね」
それを聞いて嬉しくなったか、六つの玉は喜び勇んで跳ね回る。
「良かったー」
「良かったよー」
「良かったよねぇ」
「良かったねえ」
「良かったなー」
「ああ、ほっとした。僕達、ひびが入るのが楽しみになってきたよ」
幸せそうに揺れる六つの玉達。のしのし歩く椰子の後ろで、今日も元気に飛び跳ねている。
3:金の……
「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「お母さん」
六つの声が母を呼ぶ。大きな椰子はそれに答えて、頭を揺らして屈みこむ。三つの顔が一斉に、どうしたんだい、と問いかける。
「あのね、さっきね」
「うん、ついさっき」
「今よりちょっとだけ前にね」
「そう、ちょっと前ね」
「あのね、えっとね」
「出会ったニンゲンに『君達が色違いだったら、おじさんの“きんのたま”にしてあげるんだけどねぇ』って言われたんだけど、どういう意味なの?」
無垢な瞳でじいっと見つめる。答えに窮した大木は、しどろもどろでこう言った。
「まあ、あれだよ、ほら……大人になったら分かるよ、きっと。お前達にはあんまり関係ない話なんだけどねえ……」
それを聞いてがっかりしたのか、六つの玉は不満そうに転がり跳ねる。
「つまんないの」
「つまらないね」
「つまらないよねぇ」
「つまらないよぅ」
「つまんないよね」
「なんだ、僕達には関係ないのかぁ。でも大人になったら分かるんだね。楽しみだなあ」
期待に揺れる六つの玉達。もそもそ歩く椰子の後ろで、今日も無邪気に飛び跳ねている。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
犯行の動機;「書いてみた」が上手く進まずに苛立ち、ついカッとなって書いた。後悔はしている。……ほんのちょっぴりだけ(
初代赤時代で遭遇したとき、グラフィックに震え上がったのがタマタマとナッシーでした。ゲンガーといい彼らといい、どうも体にいきなり顔が付いているタイプが苦手だった模様。
1:ドードーやディグダみたいに増えるならともかく、進化後に減るってどういうこと? と思って書いた小話でした。きっと中の人ならぬ中の玉になるにちがいない、と。
2:ひび割れの件は図鑑説明より。しかし一個、中身が見えるほど割れちゃってるのはホントに大丈夫なのか……。
3:例のおじさんの手持ちには、きっと色違いタマタマがいるに違いないという妙な確信がありまして(以下略)
これは一体誰得? もちろん俺得。と妙な満足をしたところで作業に戻ることにします。読了いただきありがとうございました!
【何をしてもいいのよ】
両方読んだけどこっちのほうが好きだわw
まぁ雑誌に載せるなら、雑誌掲載になってたほうであるということには同意する(笑
※多少残酷・グロテスクな表現が含まれています。苦手な方はバックプリーズ
「お前の願いを言え。どんな願いも叶えてやる。お前が払う代償は一つだけ――」
絶世の美女、と言ってもオーバーな気がしなかった。長くて美しいプラチナ色の髪。時折フードの隙間から見え隠れする瞳は、果てしなく深い灰色。まるで吸い込まれていくようだ。
裾の長いドレスを着、長い脚を器用に組んで椅子に座っている。写真の一枚でも撮りたいくらいだ。
「どうした?あまりにも美しいから、見惚れてしまったか?……心配しなくても、私は逃げやしないさ」
薄いルージュを引いた唇から、声が漏れる。隣に立っている狐が、苦い顔をした。目の前に座った女は、ハッと我に帰って目の前の美女から目を逸らす。
人を魅了する何か。『力』と言ってもいい。時代に名を残してきた人物は皆、それに魅入られていたのかもしれない。何に使うかは各々の勝手だが、独裁者として名を馳せた者も多いようだ。
そしておそらくは、この美女も――
彼女……名前は明かさないでおこう。一ヶ月前まで一児の母親であった。夫はいない。所謂シングルマザーである。子供が出来てからその男に逃げられ、一人で育ててきた。
だが一ヶ月前に子供が失踪した。まだ六歳の子供が。警察に通報したが、見つからなかった。最悪の事例―― 殺されたかもしれないということも考えて捜査してくれたが、未だに遺体の類も見つかっていない。もしそれが本当にあったとしたら、一刻も早く見つけて欲しい。
女は疲れきった顔をしていた。目の下の肉が落ち、頬はたるんでいる。まだ若いようだが、表情のせいで十歳は年を取っているように見える。流した涙のせいで頬が赤い。
髪は染めているらしい。明るい茶髪。染める薬のせいで少々毛先が痛んでいる――というのが、美女の隣で立っている狐の観察した結果だった。
彼女は悩み、苦しみ、喘ぎ、そしてここに導かれた。
隣の女…… マダム・トワイライトが主人をつとめる店、『黄昏堂』に。
黄昏堂。知る人ぞ知る店。主に曰くつきの商品を扱い、表沙汰に出来ないような物ばかりが並ぶ。ただし普通の『非合法』『闇オークション』『裏ショップ』と呼ばれている店とは、少々……かなり違う。それを証明できる理由は主に二つあり、
一つは、たとえ『非合法』だとしても、『闇オークション』だとしても、『裏ショップ』だとしても決してそれらに扱うことの出来ない品が商品になっているということ。
二つは、もしもそれらの店がその品を扱ってしまった場合、下手すれば命に関わる大事になるということ。
これら二つが主な理由だが―― 論外として外されている理由が、もう一つ。
三つ目。
本当に必要としている者の前にしか、その店は姿を表さない。
そしてその表す時間帯は、必ず黄昏時…… 夕日が沈みかける時間だということ、だ。
「つまり、アンタはその息子が生きているのか死んでいるのかを知りたいわけだ」
『くたばっている』と言わなかったあたり、マダムも少しは人間の心理という物を理解してきたように感じる。店を出した頃は全く相手の心情を理解せずにとんでもないことを口にし、服の襟を掴まれたこともあった。まあそのようなややこしい物を持たないマダムにとっては、人間の心情など厄介なことこの上ないのだろうが。
「ええ…… なんとかなりませんか」
消え入るような声だ。ずっと下を向いたままで、マダムの顔を見ようとしない。それに…… 気のせいだろうか。妙な感じがする。言葉では言い表せない、変な何か。
「解決してやってもいいが、その前に私からも一つだけ」
「え?」
いつものようにパズルを出すのかと思ったが、どうやら違うらしい。煙を吐き出し、口元を引き締める。
「アンタの旦那がいなくなったのは、何年前だ」
突拍子もない質問だった。女も目を丸くしている。マダムが白けた顔をした。
「質問の内容が分からなかったか。アンタの」
「どうしてそんなことを聞くの!?……アイツのことなんて、関係ないじゃない」
「答えなければ、息子の体の行方は永遠に分からないままだぞ」
こちらは切り札を握っているんだ、というような口調。その通りなのだが。女はなにやらブツブツ言っていたが、諦めたように口を開いた。
「五年前よ。急にいなくなったの。あの子が出来たと知らせた後だったから、逃げたのね」
「……」
「これでいいでしょ。あの子は今何処にいるの?」
マダムが隣の狐に目配せした。狐が一回転する。あっという間にそれは台付きの電話になった。さきほどの狐と同じ色合いの電話。かなり古いタイプだ。昭和の庶民が使っていたような黒電話を思い出させる。
「これは」
「黄昏堂の必需品。心と心を繋ぐ電話だ。会いたい人間を強く思えば、その人間にかかる。
……さあ、かけてみろ」
マダムが言い終わる前に、女は受話器を手に取った。震える手で耳に持っていき、息子の顔を思い浮かべる。コール音が耳の奥で鳴り響く。
コールコール キルキルキル
コールコール キルキルキル
コールコール キルキルキル
ガチャ
『……はい』
酷いノイズの中、聞きなれた幼い声が女の耳に届いた。女が歓喜の声を上げた。
「ああ!良かった、無事だったのね。今何処にいるの?すぐ迎えに行くから、そこで待ってて」
『これないよ』
落ち着いた声が、耳を貫いた。
『おかあさんは、これない。ぼくのいるところには』
「何を言っているの?だってこうして電話できているじゃない」
『ううん。これはこころをつなぐだけ。それはあいてのからだがなくても、はなすことができる』
「え……」
『ぼくはもう、いないんだよ』
マダムの吐き出す煙が、女の顔の周りに纏わりつく。電話は既に狐に戻っている。女は顔に煙がかかっても何も言わない。この世の者とは思えない表情で拳を握り締めている。
「騙した、のね」
「私は『心と心を繋ぐ』と言っただけで、『死者とは繋がらない』とは言っていない。良かったじゃないか。愛する息子の居場所が分かって」
「良くないわよ!死んだことは認めるけども、遺体の場所までは分からなかったじゃない!」
鬼の形相だ、と狐は思った。これは夢に出るだろうな、とも思った。だがマダムは表情一つ変えない。まるで相手がそこに存在していないかのように。
「教えなさい。あの子の遺体は何処なの?これは代償なしでも教えられるはずでしょ!」
「……」
「教えなさい!」
マダムがフードを外した。女が後ずさる。女の手を取り、相手の腹に当てた。
「ここ、だろう?」
「精神疾患・記憶障害、カニバリズム……
あの女はそれだったのか?」
「簡単に言えば、そうなるな」
マダムが紅茶を啜った。オレンジ・ペコ。味より香りを楽しむためのお茶だ。しかし、と狐――ゾロアークはげんなりする。この場でわざわざ飲むこともないだろうに。
先ほどマダムに掴みかかった女は、既にその報いを受けていた。その証拠に、高級そうな絨毯に点々と赤い染みが付着している。
「とてつもないストレスが原因だろう。夫が出て行ったというのも」
「喰ったのか」
「おそらくは」
マダムが左手を出した。その行動の意味が分からないゾロアークは一瞬首を傾げる。
「時の糸と、鋼の針を」
「……もう解れてきたのか。最後にやってから三十年しか経っていないぞ」
「そろそろ限界に近いらしいな。この身体も」
そう言って、マダムは何事もなかったかのように紅茶を啜った。
うちには、タマゴからの付き合いのヘルガーがいる。元々が猟師から貰ってきたから、狩りの本能だけはばっちりあるヘルガー。と思えばおすわりも覚えられないバカ犬であったり、庭に植えていたイチゴをかじっては捨てかじっては捨てた学習能力のないヘルガーである。かと思えば、人の顔は覚えていて、餌をくれた人はばっちり覚えているのだから現金なやつだ。
ヘルガーというのは食べ物を消化する過程の毒を燃やして炎を出すから、何日も洗わないと臭い。犬臭いなんてもんじゃない。冬は1ヶ月あらわなくてもいいんけど、夏はもう一週間洗わないと困る。
遠くに入道雲が見える。日差しが強くなって、ヘルガーも庭に穴をほってそこで過ごしてる。
「リンー! ヘルガー!」
「ラジャー!」
暗号だ。ママが一言でも「洗って」「お風呂」「シャワー」など言えばその場でヘルガーは姿を消す。炎タイプなんだから仕方ないとかいう問題じゃない。問題はこれが密室で言っても、筆談にしてもシャワー決行だと姿を消す。
「ヘルガー覚悟しい」
犬臭い。体を上から押さえつけるように抱き上げて風呂場へ向かう。その時のヘルガーの顔は「ぼくなにかしましたか」みたいな顔。ポケモンだからよくわからないけど。
風呂場についた。逃げられないようにドアを閉める。そうするといつもの場所につく。
浴槽の高低差を利用して、一番高いところに前足をかける。なるほど、なるべく顔に水がかかりたくないらしい。
シャワーをひねる。しっぽが動いてない。容赦なく後ろ足からお湯をかける。あっという間に濡れヘルガー。そこに大量のシャンプーをわっしわっしとつけてわっしわっしと洗う。
その間中、ずっと動かないヘルガー。騒ぐわけでもなく、大人しくしている。抵抗しても無駄と小さい頃から教えた甲斐があったもの。そんで顔を洗おうとするとすっごい嫌がる。口吻(犬とかのあの鼻先から口の名前)に生えてるひげがなんども濡れる。シャワー攻撃から逃げられると思うなよ!
全部すすいで、本当に小さな黒いヤギみたいな生き物になったヘルガーは、まだ同じ所で抵抗してる。ヘルガー用のバスタオルを取ろうとした瞬間だ。いつもこの瞬間だ。ヘルガーの逆襲と名付けている。体についた水をぶるぶるして弾き跳ばすから、そこら中みずびたし。
夏だからかわかすことなくそのまま庭に出す。あつい日光にも関わらず、ヘルガーはそこらを走り回ってる。その顔はやっと開放されたという自由の喜びに満ちた顔だ。
一週間後。
庭に出る。ヘルガーは違う穴をほってそこで涼んでる。そして私の姿を見るなり、一目散に逃げ出した。
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犬バカですごめんなさい。
【なにしてもいいです】
タブンネ「はい、始まりましたぁタブンネの毒吐きお悩み相談室ぅ!
この番組ではぁ、全国から寄せられたお悩みをー、タブンネがげしげしするコーナーでぇすぅ(はぁと
ではぁ、早速いってみましょ(キラキラ
まずはホウエン地方にお住まいのラジオネーム ミネストローネさん
『こんにちは。いつもラジオ聞いてます。今回はどうしてもタブンネさんに聞いてもらいたくて投稿しました。長文すみません
私は送りび山の山頂でぬくぬくと楽しく暮らしていたのですが、ある日人間にさらわれてしまいました
それだけでは飽きたらず、人間は私を見るなりかわいいだの洗濯したいだの、言い出して、コンテストに出したんです。私が勝てるわけないと思ったら、技がコンボになっていて、大量得点をとってぶっちぎりで勝ってしまいました。
それからというもの、私をコンテスト用に着飾ったり、ポロックを食べさせたり。今では全コンディションがマックスになってしまいました。
私は平和な暮らしがしたいのに、あんまりだと思いませんか』
なめてるねー、なめてるねーこの投稿者。
てめぇが三食昼寝付きでぬくぬく暮らせんのは人間に餌もらってコンディションもあげてもらってるからだろうが
つうかこれのどこが悩み?幸福自慢?
げしげしすんぞミネストローネ
食い物みたいな名前しやがって、ごきゅごきゅすんぞコラ
さて、そんな場違いなのは無視して、次のお手紙いきましょ
お次はこれまたホウエン地方にお住まいのラジオネームエネコLOVEさん。
『いま大ブレイクしてるプリカちゃんのサインが欲しいのですが、サインが当たるチケットが』
あー、リスナーの皆様に補足すると、プリカちゃんはプリンだから、サインをたくさん書けなくて、CD1枚にサイン抽選券をつけてるのね。マジもののファンはCDに何千万も注ぎ込むらしいね。
あ、お手紙に戻ります
『サインが当たるチケットが欲しいのですが、俺の彼女がそろそろキレそうです。CD1枚でサインが当たる方法はないでしょうか』
し る か ボ ケ
てめぇの彼女が何言おうがどうしようが横っ面はたいて俺の趣味にケチつけんなくらい言えねぇのかヘタレ
あ、私はプリカちゃん好きよ。この前のアレルヤ!はいいと思う。熱烈なファンには受けが悪いらしいけどねー
さて、ヘタレはおいといて次いきましょ。
次はシンオウ地方在住のラジオネーム竜骨座さん
『僕は昔、厨ポケとか言われて、主人にも可愛がってもらいました。性格も粘って、タマゴ技ももらって、バトルタワーでも友達と戦うでも活躍しました
けど、今は格下だと思っていたカイリューとかが夢特性で強化され、僕はボックスで過ごすばかりです。
つい先日、強い仲間はみんなイッシュに行きましたが、僕はシンオウに置いてけぼりにされて寂しいです』
厨ポケきたー
てめぇみたいのがいるから、不遇ポケが出るんだろうが
なんのポケモンか知らねぇが、今までカイリューがてめぇをそう思ってたんだ、それくらい我慢しろボケ
はい、もう厨ポケは放置で、次いきますよ次。
お次は旅人で住所不定の、ラジオネームもふもふ狐さん。
『こんばんは。世界をもふもふにそめたくて、旅に出ましたが、一向にもふもふになりません。
家で待ってる妻子を早くもふもふしたいです』
妻子を置いて行くような狐がもふもふ語ってんじゃねえぞコラ。
時代はもこもこなんだよ。時代遅れもいいところじゃワレ
あー、次々。
寒いところにお住まいの、もこもこモンスターボールさんから。
『冷蔵庫の扉をあけたらビリリダマになってテレポートしながらいろんな世界をまわってたんだ。な、何を言ってるか解らないかもしれないが、世界の恐ろしさの鱗片を味わったぜ……』
ビリリダマがテレポート覚えるわけねえだろ。寝言は寝てから言え
今日はろくでもないリスナーが多い日よね。
今度はまともなリスナーの手紙を祈って、次いきます
えーと、イッシュ地方、でいいのかな字が達筆すぎて読めませんねー。とりあえずそこに住んでるラジオネームサイコソーダさんから。
『うちのメンバーのポケモンたちがいつも喧嘩ばかりしてます。どうしたらいいでしょうか』
それでもトレーナーかお前は。
つうかどうみてもこれトレーナーだろ。それくらいなんとかしろ
さて、次のお手紙が最後です
本日のトリは、カントー地方にお住まいのラジオネームデオキシリボ核酸さん
『私、一時期どころかかなり強いって言われてたんです!
むしろパーティには必ず入っていて、バトンタッチが流行ったんです!
でも調子乗りすぎたのか、次の作品から出してもらえなくなりました。もう一度出たいです』
特定した
てめぇ破壊の遺伝子か
オコリザルサワムラーカイリキーケンタロスドードリオが持って出てきた時の恐怖を考えろ
てめぇの自己満足で出たいとかいうなハゲ!
はぁはぁ、今日のタブンネのお悩み相談は終わりです。また次回お会いしましょう」
ーーーーーーーーーーー
書いてもいいのよタグからしかとってないはず。もしつけてないのに勝手に使うなってのがあったらいってください。
【タブンネにげしげしされたい方はお名前、住所、ラジオネーム、職業、年齢を書いた上でご応募ください。
採用された方にはレベルが10上がる経験値をプレゼントしています】
『クリスマスはまだ終わっちゃいねぇ!! 今日が当日なんだ! 幸いアイツは午前中いっぱい居ないし!』
『おまえら、三時間で仕事完了させやがれえぇぇ!!』
*
一匹のシュバルゴが、目の前に生える沢山の針葉樹を、まるで品定めするかのように見渡していた。
「ったく、リーダーのアシガタナの方がこの仕事には適任なんじゃねえのかよ…」
ぼやきながらも、彼はだいぶ小ぶりな若木に近づいていく。
「あなたが木を切らないと、始まらないわよ? あなたのお姫様だって待ってるし」
「そうだな、早く戻ってやるか」
「リーダーの事だから、もし遅れると人質…ポケ質にされても知らないわよ?」
彼は若木の前に立ち止まった。隣のウルガモスからクスクスと笑い声がする。
「そん時は、リーダーであっても俺のメガホーンでぶっ飛ばす」
ナイト――騎士と呼ばれたシュバルゴがため息を一つ吐いた刹那、彼の背後でドサリと音が立った。
「ナスカ、後は頼んだ」
「サイコキネシスって本当に便利ね」
ピンクの光に包まれた針葉樹は、いとも簡単にふわりと浮遊する。
*
「……と、パイ生地と、お菓子を沢山に、シャンメリー。あとはサイコソーダ…」
メモをそこまで読み上げた女性は、はあっとため息をついた。反対側の左手には、すでに膨らんだ買い物袋が下がっている。
「全くもって子供っぽいわねぇっ! 今日になって突然言い出すなんて!!」
ターン! と八つ当たりをするかのように、今いた家の屋根を蹴ると、そのまま数メートル近く跳躍し次の屋根へと飛び移る彼女は、すでに黒い毛皮の狐、ゾロアークだった。
*
「シザークロスのPPが切れた」
「あまりの冷たさに角の感覚が無い、だと…」
周りには、クリスマスツリーに飾り付ける透き通った天使、球、プレゼントボックスが転がっている。
無論、今ぐったりと床にへたり込んでいる彼ら…ペンドラーが氷塊を砕き、シュバルゴがシザークロスで形を作ったのだった。冷たい氷を使った細かい作業に、二匹の体力と精神力は限界に来ていた。
「私も熱風がもう出せないんだけど」
ウルガモスは氷の表面を薄く溶かして、つるっと滑らかにしていた。溶かしすぎては駄目なので、火力の調節がこれまた絶妙、上の二匹と同様の状態である。
「もう気力が限界なんだけど、まだ作るの?」
「これ以上やったら身がもたないでござる」
「…エネルギー切れです…」
隣の三匹、コジョンド、アギルダー、ドレディアはそれぞれ波動弾、エナジーボールを使って氷に細工をしていた。
氷の中に光が閉じ込められ、とても美しく光るのだが『気』とか『波動』を使った特殊な細工のため、量産すれば疲れる事この上ない。
六匹が何故ここまで凝った“クリスマスツリーの飾り”を作っていたのかといえば、全ては『リーダー』と呼ばれるダイケンキ――シェノンの命令である。
「リーダー今頃何してんのかなぁ…」
*
そのダイケンキは、今彼らとは別の場所で、ツリーに別の作業を施しているのだった。
「後から考えれば、氷技を使えるのが俺だけだったっていう…」
冷気を枝に吹きかけるのを一時中断すると、代わりに口から出たのはため息だった。自業自得というのだろうか、こちらもれいとうビームを使いまくって、クリスマスツリーに霜を降ろして白くする地道な作業に、本人もへとへとになっていた。
「あいつらも多分辛いと思うから、差し入れでもしてやるか…」
普段子供っぽい彼は、彼らしくない言葉を発した。疲れでどうにかしてしまったのだろうか、それとも、心の底には皆から慕われるモノがあるのだろうか。
少なくとも、彼の口の端が持ち上がったのは確か。
*
「先生! てっぺんに飾る大きな星がありませんっ!」
「ナ、ナンダッテー!?」
「もうPP切れでござるよ…」
「でも、星がないと多分クリスマスツリーにならないと思う!! それにリーダーがなんて言うか…!」
六匹がぎゃあぎゃあ言っていると、ガチャンと部屋の扉が開いた。
「シェノンリーダーからの差し入れだってー!」
疲れ果てた六匹の元にやってきたメラルバが背に乗せてきたのは、籠に入ったいくらかのPPマックス。それと、少し大きい氷塊。
絶妙すぎるタイミングと、それらが意味する事に、彼らは言葉を失った。
「要するに…もっと頑張れって事か…」
笑顔のシュバルゴの顔は、妙に引きつっていた。
「わが子の笑顔が眩しく、そして胸に痛いわ」
ウルガモスとペンドラーは、複雑な表情をしている。
「アポロン君、重かったでしょ? お疲れさま!」
一人だけ笑顔のドレディアはメラルバの頭を撫でながら、内心どんな事を考えていたのだろうか……。
「あ、そうそう、ツリーのてっぺんに飾れそうなもの見つけたんだよ!」
「おお! でかしたぞアポロン!」
思わぬ展開に賞賛の声が上がった。
メラルバが黒い手でドレディアに差し出したのは、クリーム色っぽい星型……ではなく三日月型の物体。中心の辺りから、クチバシの様なものが飛び出している……。見るからにルナトーンそのものだった。しかし、こいつはただのルナトーンではない。
「「「それは噂に聞く『スケベクチバシ』だあぁぁぁぁ!!!!」」」
六匹の絶叫が響き渡り、PPの残っている技が一斉にスケベクチバシに放たれた。
シュバルゴからメガホーン、ペンドラーからポイズンテール、ウルガモス、アギルダーからむしのさざめき、コジョンドからドレインパンチ、ドレディアからはなびらのまいが“何もしていない”スケベクチバシに炸裂し、どこかへぶっ飛ばしたのであった……。
不憫だ。今回に限っては不憫すぎるスケベクチバシであった。吹っ飛んだ先で、また誰かにツイートされたりはしたのだろうか?
*
黒い狐――ゾロアークは買い物袋を両腕に提げ、お昼過ぎに家に戻ってきた。彼女を出迎えたのは見事に飾り付けられた輝くツリーと、飾り付けを終え死屍累々の如く転がる七匹だった。メラルバがゾロアークに駆け寄る。
「どうしよう…みんな疲れちゃってて……」
彼女はメラルバに頷くと、袋から一本サイコソーダを取り出した。ダイケンキが瞬間的に飛び起きる。
「お昼ごはんの後ですよー」
物を言わせぬうちにゾロアークは意地悪な笑みを浮かべながら答えた。
「なかなか立派なクリスマスツリーね。……てっぺんの星は?」
気付いた他の六匹が、あっと声を出した。
「ヤバイ…忘れてた」
「でも今からじゃアイツが帰って来ちまうな…どうする?」
「全く……わたくしティラにお任せあれ!」
ゾロアークが右手の爪を立て、くるくるっと魔法使いのように回した。
ツリーのてっぺんに輝きが生じ、直後にポンっという音と共に大きな金色の星が現れた。
「幻影、か?」
「そのとおり。これで大丈夫でしょ?」
そこに居た全員に笑みが浮かんだ。
………ガチャッ
「ただいまぁー」
彼らの主人を迎えたのは、仲間たち全員で作った即席ツリーだった。
――――
うわぁグダグダ。もんのすごいグダグダ。前のダークライさんの記事が台無しだねwww
クリスマスは何が何でも二つ書こうとか決心した結果がこれだよ!
ケーキを争奪したり喧嘩したりもするけど、彼らも時には協力して何かをすることがあるんですね。ほとんどはシェノンの我が侭だと思うけど!
あとスケベクチバシを勝手にお借りしました。…いろいろな意味ですみませんリナさん…
【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【クリスマス終了まで約三時間前なう】
ドス、ドスと、思い足音の主について歩く森の小道。
毎日の日課はこの散歩で、前を行くドダイトスはのんびりと散歩を楽しんでいる。
ふと、視界の端にパチリスが写った。
がさごそと、地面をあさっては何かを埋めている。
土を掻き分けるたびにその背中に舞い上がった落ち葉が積もるのを見て、もう秋なんだと実感させられる。
ふと、目の前のドダイトスを見てみた。
・・・何時もどおりだ。
だけど、背中の木の葉っぱは紅葉して、落ち始めていた。
何で。
とりあえず、このままでは葉っぱが落ちて悲しいことになるのは目に見えている・・・どうするか。
そういえば、とポッケの中を探れば、クラボの実が出てきた。
近所のおばさんにもらったはいいが、うちのドダイトスは甘党だし、固さといい味といい人間が食べるには
あまり向いた物ではなかったのでそのままにしていたものだ。
一瞬、パチリスが物欲しげにした気がしたが、気のせいだろう。
ちょっと、とドダイトスを呼び止めて、その背中によじ登る。
無理やり緑色の一部をひっぺ剥がして、クラボのみをねじ込んでから水筒の水をかけておいた。
最近の改良された木の実って奴は、一年中育てられるし実もなるそうだから紅葉することもないだろう。
明日が、楽しみだ。
今日も、日課の散歩だ。
ドダイトスの背中にはクラボの木が育っているものと思いきや、あったのはちっちゃい芽。
もっと早く育てよと悪態をつきながら、今度は栄養ドリンク数種類をブレンドしてかけておいた。
当のドダイトスは、しらんぷり。
朝が来て
今日も日課のお散歩日和。
ドダイトスの背中には、やたらと大きいクラボの芽が生えていた。
何が、あった?
当のドダイトスは、しらんぷり。
次の日、少しだけ 大きくなってた クラボの芽
数日後、もうすぐ 花が咲きそうだよ クラボの木
そして、一週間。
今日もドダイトスは前を行く。
その背中には二本の木が。
一本は、葉っぱが完全に落ちてさびしい木。
一本は、もさもさと見事に茂ってクラボが実ってる。ただし、やたらとでかい。
せっかくだから、クラボを収穫するとするか。
ここまできても無関心なドダイトスを呼び止め、その背中によじ登る。
登って気が付いた。
実のある位置が、少々高い。これでは手が届かない。
ならばと、元々生えていた木に登って採ればいいか。
元々生えていた木はクラボの木に比べて細く、なんか頼りない。
何負けてるんだよと思いつつ足をかけたその瞬間、
世界が一回転した。
地面に転がっていることに気づいたときにはもう、元から何も言わなかった木の成れの果てと、
ここに来てやっと何やってるんだと言いたげな反応を示したドダイトスが自分を見つめていた。
今日もお散歩日和。 ドダイトスは、前を行く。
その背中にはクラボの木。
やったね、クラボが食べ放題だ!
まあ、収穫できないし自分もドダイトスもクラボは苦手だったりするんだけどね。
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読んでくださりありがとうございました!
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】
遅ればせながら私も参加してみたいと思います。
(帯の表)
「約束よ。必ず私を迎えにきてね・・・。」
その約束から3年。ポケモントレーナーとなったマサトが、コトミやトモヤ、そしてたくさんの仲間やポケモン達と共に繰り広げる、冒険と感動の物語!
(帯の裏)
・・・ラルトスとの約束から3年、ポケモントレーナーとなったマサトは、ラルトスとの約束の地・イザベ島に向かう。そこでマサトはラルトスとの感動的な再会を果たす。
だが、ラルトスを狙って現れたのはロケット団。そして舞台はカントーの南の島・ナナシマに。数々の言い伝えのある島々を巡り、同じラルトスのトレーナー・コトミ、ニドキングを使いこなすトモヤと共に、ナナシマを巡る大冒険が始まる!
「『Our Future 〜3 years after〜』(1)ナナシマ編」マサポケ出版から好評発売中!
(帯の表)
「そんな、言ってくれると嬉しいわ!ありがとう!」
次なる冒険の舞台はジョウト地方。マサト、コトミ、そしてミキが繰り広げる、夢と希望あふれる大冒険!ポケモン小説シリーズの決定版!
(帯の裏)
ナナシマのロケット団の野望を打ち砕き、バトルチャンピオンシップスにも参加、ポケモントレーナーとして、またポケモンコーディネーターとしての実力をつけていくマサト達。
ナナシマリーグのジムリーダー候補に選出されたトモヤと別れ、新たな仲間・ミキと共に、ジョウトを巡る大冒険が幕を開ける。数々のライバルとの出会いを経て、目指すはジョウトリーグ、グランドフェスティバル、そしてミキはエキシビションマッチ。
だがそこに待ち受けているのは、ナナシマで野望をくじいたはずのロケット団の影だった・・・!
「『Our Future 〜3 years after〜』(2)ジョウト旅立ち編」マサポケ出版から2012年春発売予定!
(帯の表)
金と銀、10年の思いの彼方にあるのは、かつて届かなかった淡い恋の思い出だった。
(帯の裏)
2009年9月12日、ポケモン金・銀のリメイクとして発売された、ハートゴールド・ソウルシルバー。発売日当日、降りしきる雨の中ポケモンセンターに向かう歩の頭にあるのは、昔親しくしていた明日香に貸したオリジナルの金バージョンだった。
今、10年の季節(とき)を超えて紡がれる、金・銀とハートゴールド・ソウルシルバーの思いをあなたに。
「『金銀恋唄』」マサポケ出版から好評発売中。
・・・考えてみるとマサト達の冒険は今のアニメを題材にしている以上、テレ東や任天堂やらアニメに関連した企業の許可なく出版できませんね(汗
ついでに金銀恋唄は題材が青葉城恋唄、となるとさらに権利問題がややこしくなって(ry
[大掛かりな組織犯罪が多発し、大規模な地下組織が相次いで摘発される昨今、そこに所属していた容疑者やポケモン達の社会復帰が、深刻な課題となっている。進まぬ対策と法整備の遅れ。渦中の人々の証言から、今何が起き、求められているのかを問う。]
抜けるような青空の下、子供達の歓声が上がった。漸く涼味を帯びて来た秋の風を熱っぽく掻き分けて、まだまだトレーナー免許を許されていない小学生達が、一列に並んでいるポケモン達に向け、懸命に走っていく。
彼らの手には、先ほど通過したチェックポイントで手に入れた、ポケモンのNN(ニックネーム)を書き記した紙。ポケモン達の列線に辿り着いた児童らは、思い思いの感情や熱意を込めて、目的のポケモン達の名前を呼んだ。
――ここは、ジョウト地方にある小さな小学校。運動場に於いて、児童達が秋の体育祭のプログラムである、ポケモン借り物競争で火花を散らしている。
「足の速い子には、走るのに邪魔にならない様なポケモン。あまり駆けっこが得意で無い子には、適時機敏にサポートが出来るポケモンが当たるようにしています――」
そう話すのは、イタミナオヤスさん(34)。老人ホームや小学校などへの慰問やイベント参加を専門にしている、福祉専門のポケモンブリーダー。――元、ロケット団のメンバーである。
八年前に組織が解散してから、一年間の更生プログラムと二年半の職業訓練を経て、この仕事に就いた。
「あのポケモン達も、みんな元ロケット団員達の手持ちです。今ではああやって穏やかに振舞える様になってますが、当初は環境の変化に慣れさせるのに苦労しました」
私と同じ様にね――彼はそう言って苦笑すると、遠い空に向けて目を細めた。
現在確認が取れているだけでも一万余人。一説には、下部組織も含めると二万人規模だったとも言われるロケット団の元団員達の内、イタミさんの様に無事満足の行く形で社会復帰が出来た人は、約五千人程度だと言われている。全体の半分にも満たない数字だ。
「怖い」、「嫌悪感を感じる」等、一般住民の忌避意識は今も根強い。
「職業訓練を受けても仕事が無い。住居の前を通る時、ポケモンを予めボールに入れる人もいる」
カントー地方に住む、元団員の女性。孤独感と疎外感から、再び非合法組織や残党グループの仲間入りをする元メンバーもいると言う。
「職業訓練と更生プログラムを終えても、トレーナー資格を取り戻すには試験が必要。例えそれに受かっても、新たなパートナーを手に入れるのは躊躇われる」
ポケモンを持つことが、周囲との摩擦を更に悪化させてしまう可能性を捨てきれない――彼女はそう話す。
嘗てロケット団員達が所持していたポケモン達についても、行政は対処に追われている。
「親が代わったポケモン達は、簡単には新しい主人を信用しようとしません。……手っ取り早く言う事を聞かせるにはバッジが必要ですので、どうしても人手不足になりがちなのです」
担当者はこう明かす。
資格を剥奪され、手持ちのポケモンの親権を失った元団員達が孤独に喘ぐ一方で、逮捕された団員達から『保護』されたポケモン達の再教育も、遅々として進んではいない。
一方此方は、海の向こうのイッシュ地方。同地方の海の玄関と言われる港町、ホドモエシティのマーケットに売り場を構えるジョゼフ・サーキースさん(23)は、元プラズマ団の構成員だったと言う過去を持つ。
『ポケモンの解放』を唱え、まだ記憶に生々しい『プラズマ団蜂起』で知られるこの組織に、彼が加担したのは大学生の時だったと言う。「幼い頃から、ポケモンの扱われ方に疑問を抱いていた」と言うジョゼフさんは、プラズマ団幹部による街頭演説で感銘を受け、そのまま入団。その後は組織に従って『解放闘争』に身を投じ、支給されたポケモンと共に各地を転戦する内、『リュウラセンの塔』に於いてバトルに敗北。逮捕・拘束された。
「四ヶ月の懲役を終えて家に帰って来た時、一番に迎えてくれたのがこいつだったよ。……飛びついて来たのを受け止めて、ただ今って言った時。その時が僕にとっての、本当の再出発だった――」
社会復帰プログラムを受け入れて、地域のコミュニティ活動に積極的に参加、職業安定所で斡旋してくれるパート労働で地道に資金を溜めて、今の商売を始めた。色取り取りの香炉が並ぶ売り場の隅には、組織から与えられて以来、ずっと一緒に生活しているレパルダスが、ふかふかした敷物の上で丸くなっている。
「嘗て戦った相手だったトレーナーが、買い物に尋ねて来てくれた時が一番嬉しかった」と振り返る彼は、静かに手を伸ばすと、うとうとしている紫色の相棒を、愛おしそうに撫でた。
こうした海外での取り組みに刺激されて、近年我が国に於いても、元犯罪組織の構成員からの手持ちポケモンに対する親権や、ポケモン取り扱い免許の剥奪を、猶予すべきではないかと言う声が上がり始めた。
「入手の経緯はどうであれ、ポケモンと主人の絆は、言葉では簡単に言い表す事が出来ないほどに深いものです。無理に引き裂くのではなく、一緒に更生させる道を選んだ方が、当人達の精神的な苦痛も、行政の負担も軽くなると思われます」
『シンオウブリーダー連盟』の、カイザワシゲハル副会長はそう主張する。非合法の地下組織・『ギンガ団』による一連のテロ活動に晒された同地方では、組織の基幹が崩壊した後も元団員への徹底的な制裁をあえて避け、嘗ての組織の基盤を利用した再生企業である『ギンガコーポレーション』を通して、彼らを地域社会に溶け込ませると言う方針を採った。カイザワさんの所属するシンオウブリーダー連盟でも、シンオウリーグで活躍した高名な元トレーナーやアドバイザー達が中心となって、元団員達の職業訓練などの支援に当たっている。
同じ様な風潮はホウエン地方でも見られ、元マグマ団員やアクア団員達が、地質研究所の職員やマリンレンジャーとして公的機関に採用されるケースも増えて来た。街頭での署名活動など、草の根レベルの運動も、着実に成果を上げている。
しかし一方で、こうした流れを手緩いと評する声もある。「被害者の感情を考慮し切れていない」、「行き過ぎた保護主義は犯罪抑止力の低下を招くだけ」と言った批判は、何処の地方でも共通のものだ。
「地下道を歩いてて殴られた人も、うちの家族の様に物を盗まれた人もいる。飼っていたポケモンを傷付けられたり、あまつさえ奪い取られて殺されたりした人間が、簡単に連中を許せるとは思えない」
自らも住宅を損壊させられ、盗難の被害にあった事のあるハナダシティの男性は、複雑な表情でそう語る。今尚過去の記憶に苦しむ被害者の精神的なケアや、効果的な再発予防法案の策定無しには、真の解決もあり得はしない。
保護されている側にも不安はある。
「時々、『こうやって生活していて本当に良いのだろうか』と思う事はあります」
冒頭で紹介したナオヤスさんは、駆け走る子供達を見ながら、呟くように胸の内を語る。ヒワダタウンやコガネシティでの、一連の暴力行為に関わった自らの身の上を悔やむ頻度は、実は周囲の人間達が思っている以上に深刻なものだ。
「夜中に魘されたり、仕事中にストレスを感じる事も日常茶飯事です。嘗て追い使っていたポケモン達がどうなったのかなど、思う所は尽きません――」
しかしそう語りつつも、彼は現実を受け入れて前に進む道を選ぶ。
「贖罪で済むとは思いません。取り返しもつきません。……けれども、もう投げ出す訳にも行かないんです。今の私にはあいつ等がいるし、受け入れ、仕事を教えてくれた方々の恩に報いる為にも、生涯この負い目を背負っていく心算です」
静かにそう結んだナオヤスさんが、心の支えにしている言葉がある。
『人は必ず生まれ変われる。何時どんな時だろうとも、自分を必要としてくれる者の存在を、身近に感じる事が出来たのならば』 ――裁判に於いて彼を弁護してくれ、ポケモン取り扱い免許の再交付に尽力してくれた、今は亡き老弁護士の陳述である。
――――――――――
夏菜さん主宰の雑誌風ポケモンアンソロジー・POKEMONDAY’Sに寄稿するべく書いてみた短編の内の一つ。……後から読み返してみると、どう見ても雑誌の記事と言うよりは新聞の社会欄ですorz 本当に(ry
空気が読めない人で御免なさいとだけ…… お世話になった方々に、心よりお礼申し上げます。
【好きにしていいのよ】
【暫く何も入れてなかったので 後悔は(ry】
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