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電車から降りて、スマホを確認すると、電話が来ていたのに気付いた。
……妻からだ。
一体、何故。
メールも来ていた。題名は、至急、連絡を。本文は無し。
「……」
何だと言うんだ。
電話を掛けてみる。すぐに出た。
「今どこに居る?」
二年振りに話す最初の言葉がそれかよ、と思いながらも俺は、その切迫した声に真面目に答えた。
「家から最寄りの駅の中だけど」
「出来るだけ頑丈な……近くにビジネスホテルあったでしょ、トレーナー用の。そこに入って。嵐がそっちに近付いて来てる。去るまで出ないで」
「……何でそんなに焦ってるんだ?」
薄々勘付きながらも、質問した。
「カイリューの夢を分析して見たわ。
トルネロスとボルトロス。そいつらにカイリューの子供のミニリュウが殺されてた」
「トルネロスとボルトロス? どんな姿だ?」
「殺された事も分かってたのに、伝説のポケモンや嵐に原因があるかもしれないって分かってたのに、そこまでは調べてなかったの? 下半身が雲に包まれてる、姿形がそっくりな二体よ」
俺の夢に限らずカイリューの夢までムシャーナを通してやっぱり見ていたのか、と思いながら答えた。
「調べようと調べなかろうと、もう変わらない気がしてな」
ウインディも、勿論ココドラも、伝説のポケモンには到底及ばない。それにカイリューが復讐を考えていたとしたならば、俺に止める術も無い。ココドラとウインディでやれば、出来るかもしれないが、する気も余り無いというのが本音だ。
「ああ、そう……」
少しだけ間を開けてから、また堰を切ったように話し始めた。
歩きながら、俺は耳を傾ける。
「それで、今回の嵐もそいつらが関わってる。ニュースでやってた。
そして、最新のニュースでは、ソウリュウシティを通過したらしいんだけど、ジムリーダーのカイリューだけが半殺しにされたわ」
……。
「既に通った場所でも、リュウセンランの塔は半壊して、湖の水が巻き上げられて酷い事になっているみたいだし、カイリューに似た容姿のポケモン、やドラゴンタイプのポケモンも酷く痛めつけられてる。
貴方の所に住んでるカイリューが、子供を殺された後何をしたのかまでは夢の中からは分からなかった。
けれど、これだけは確かよ。
トルネロスとボルトロスは、そのカイリューを探してる」
それから先は、聞かなかった。
地平線の先から、嵐の雲が物凄い速さで近付いて来ていた。
駅の前に、そのカイリューが居た。映っているテレビを真ん前で見ていた。
耳から降ろしたスマホから振動が伝わって来る。
電話を切った。電源も切った。妻は、別居しても俺の事を大切に思ってくれている。ただ、俺自身が危険に陥ろうとも、曲げてはいけない事だってあるのだ。
ただテレビを見ているカイリューだが、警察が近くに来ていた。
捕獲する準備も出来ているのだろうか。俺はカイリューに近付いた。
テレビでは、嵐の情報を流していた。明らかにこちらに近付いていた。
「……復讐するのか?」
カイリューは俺の姿を見止めたものの、何も反応を示さなかった。
……ドラマとかで良く、復讐を遂げようとする人に対して説得する人が、復讐する事を子供が望んでいるか? とか、そういうシーンを見る事がある。
ただ、そんなものをカイリューに言ったって無駄だろう。実際にそんな事があろうと、そんなセリフで復讐が止まる事もあるだろうか。無い気がする。
結局の所、復讐とは自分がやりたいからやるものだ。特に、自分の最愛がもう、この世に居ない場合。
そして復讐を遂げた所で、何も得られない事を、カイリューは分かっている気がした。
カイリューが後ろを振り向いた。嵐はどんどん近付いて来ていた。まだ遠いが、その激しさはこの距離からでも分かる。
ふわり、とカイリューは飛び上がる。その顔からは、何も読み取る事は出来なかった。怒りが限界を越えて、何も表情が浮かんでいないのか、そんな気もした。
嵐の方へ飛んで行く。警察が近寄って来た。
「放し飼いは困りますよ」
「捕まえてないんですよ。あいつは俺の家のただの居候です」
唖然とされた。
「では」
ウインディをボールから出した。出した瞬間から、嫌そうな顔をされる。
長い付き合いだ。俺がこれから言う事も分かってるんだろう。
「カイリューを追ってくれ」
分かったよ、と渋々と言ったようにウインディは俺を乗せて走り出した。
可愛げが無かろうと、俺の指示には従ってくれる、良い奴だ。
そして、見届けなくてはいけない、と俺は強く思っていた。自分でもそう思う理由は良く分からない。
単に強者同士の戦いを見たいから? それも無いとは言えなかった。
子を喪ったポケモンが、どんな道を辿るのか、知りたいから? 強い理由では無い気がした。
単なる居候とは言え、ここまで深く関わってしまったカイリューを放っておく事は出来なかった? 強い理由かもしれないが、だったら何故俺は、ウインディを鍛えたりしなかったのだろう。トルネロスとボルトロスにまで辿り着かなかったんだろう。
似た者同士だったように思えたから? 結局の所、それが一番強い理由かもしれない。
町の郊外に出る頃、カイリューの姿はほぼ点になっていた。
ウインディは走り続けるが、少しだけ速度が落ちていた。
「巻き込まれない位の位置で良い」
俺だけでももっと近くに行こう。
どうしてそこまでしたいと思っているのか。
カイリューに俺は傾倒しているのだとは分かっていても、何故、まではやはり、はっきりとは分からなかった。
やはりそれも、強いから、という単純な理由かもしれない。
畑が過ぎて行き、何もなくなっていった道をウインディは走って行く。良く見る野生ポケモンは嵐に怯えているのか姿を全く見せなかった。
雲の中から雷の光が見えた。感じる風が強くなって行く。雨が降り始めた。
ウインディが躊躇い始めた。カイリューは小山の上で止まっていた。カイリューとの距離も狭まりつつあった。
「……これ以上は行きたくないか?」
ウインディは止まった。
俺としてはもう少しだけ行って欲しい所だったが。
俺はウインディから降りた。
「逃げても良いぞ。俺は歩いて帰るから」
そう言うと、仕方なくと言ったように付いて来た。
雷が落ち、カイリューに直撃した。息が詰まるが、カイリューは怯んだ様子も無く敵を見つけたようで神速で、雲の中へと突っ込んでいった。
雷が一層激しく鳴る。時には躱し、時には身に受けて、カイリューはすぐに見えなくなった。
雲の中で戦っているのがはっきりと分かる。ばちばちと雲から雷が漏れている。カイリューの攻撃か、破壊光線の光が雲を突き抜けて遠くまで何度も飛んで行く。
雲の中、それは嵐を司る伝説のポケモンの最も得意なフィールドだろう。なのに、カイリューはそれでも勝算があると思っているのか。
あり得るかどうか、相手は伝説だ。それを踏まえてもあると思っているのか。
カイリューは普通のポケモンと比べても賢い方だ。そうでなきゃそうしないだろうけれど、怒りや恨みといったものが思考を惑わさせている可能性も俺には否定出来なかった。
雷が一層激しく響き、雲の中から何かが落ちて来る。
……カイリューだ。段々と姿が見える高度にまで、動かないまま落ちて行く。体から煙を上げて、その体も焦げていた。
「……おい」
殺される、と思った。茫然としていると雲の中からその二体が出て来た。
猛スピードでカイリューに迫って行く。二体がカイリューに手を向ける。
あのカイリューがこのままやられるのか? 二体は何も傷を負っているようには見えない。
信じられない、とも思った。それ程、あの二体は強かったのか。
手から雷と、竜巻が飛んだ。しかし、その瞬間カイリューは動き、その二つを躱し、技の後の隙につけ込み、雷を放った方の首を掴んだ。
そしてそのまま顔面に、ゼロ距離で破壊光線を放った。
がくり、とそのポケモンが力を失った。一撃で、ポケモンバトルで言えば、戦闘不能になっていた。
けれども、これは人が指示する、明確なルールのあるポケモンバトルじゃなかった。
風を司っている方、多分、トルネロスが怒ってカイリューに攻撃を仕掛けた。それを、カイリューは戦闘不能にした方、多分ボルトロスと言う方だろう、を盾にして防ぎ、更に顔面を殴りつけた。ボルトロスは体を震わせただけで、もう動かなくなっていた。
カイリューは叫んでいた。
雄叫びでは無かった。俺に背中を向けていてその表情は分からなかった。けれど、涙さえも流している気がした。
トルネロスが、今度はカイリューに何か攻撃を仕掛けた。
見えない攻撃のようで、カイリューが苦しみ始める。多分、エスパータイプの技だろう。
しかし、苦しみながらも、カイリューはトルネロスに近付いていった。トルネロスは一定の距離を保ちながら、その技を仕掛け続けた。
ただ、神速を使われては、その距離もすぐに無いものになった。
ぐるり、と体を回転させ、尻尾の一撃を見舞う。トルネロスはそれを下へ避けた。その直後に放たれた破壊光線も、ギリギリで避けた。
反動でカイリューの体が鈍る。すかさずと言ったように、トルネロスがまたエスパータイプの技を仕掛けた。
ただ、位置関係は、カイリューが上で、トルネロスが下だった。
反動、攻撃で動けなくなったカイリューがトルネロスへ落ちて行く。
トルネロスが慌ててそれを避けた。その隙を、カイリューは見逃さなかった。反動の時間が終わり、そしてきっと攻撃もその隙に弱ったのか、カイリューの体が驚く程スムーズに、しなやかに動いた。
体を回して、尻尾の一撃がトルネロスに当たる。
トルネロスは地面へと墜落して行った。
「……行こう」
ウインディに言った。
ウインディには乗らずに、ただ、一緒に歩いた。
コドラを連れて来なくて良かったと思いもした。これから起きる事は、子供には絶対に見せない方が良いものだ。
嵐は、まるで幻だったかのように、今はもう霧散していた。雨は止み、雷の音は全く聞こえなくなっていた。夕日さえも見えていた。
カイリューの叫び声が、小山を登っている最中から聞こえて来た。
そして、殴っている音も。
ウインディが顔を顰めた。きっと、血の臭いを感じたのだろう。
「……中に居るか?」
ウインディは首を振った。
「分かった」
そして、辿り着いた。
……既に、その二体は原型が無かった。肉も骨も、ぐちゃぐちゃになった何かでしかなかった。カイリューが、叫びながら、泣きながら、もう原型の無いものをひたすら叩き潰していた。
俺も、子を誰かの手によって喪ってしまったとき、こうなってしまう可能性があるのだろう。
いや、父親になったならば誰だってそうなのだろうか。
そのカイリューの姿に俺は怯えもしたが、自分自身に恐れも抱いた。
その時、その肉塊が光り始めた。
え、と言うようにカイリューが動きを止める。光はカイリューの手に付いている血からも出ていた。
光は肉塊を包んで浮き始めた。カイリューが一層強く叫び始めた。
きっと、これは、そういう事なのだろう。カイリューもきっと、分かっている。
テレビの中の人が言っていた事だ。伝説のポケモンは、転生する可能性がある、と。
殺しても、完全にこの世から消滅させる事が出来ない。ふざけるな、とカイリューは叫んでいた。
光を掴もうとしても、ただ透けるだけだった。カイリューの体にこびりついた肉や血は今はもう、全て綺麗に失せていた。
空へと光が飛んで行く。カイリューがそれを奪おうと飛び上がろうとして、がくりと膝を折った。体力はもう、無いのだろう。
そして残ったのは、カイリューの傷跡だけだった。
納得しきれないように、カイリューは地面を叩きつけていた。
皮肉な事に、雨雲はもう一つたりとも無かった。濡れた木の葉が夕日を浴びて輝いていた。
カイリューの傷跡と、荒らされたこの場所だけが、あった事を生々しく映していた。
そしてやっと、カイリューが俺とウインディに気付いた。その顔に一瞬恨みが浮かんだように思えたが、それもすぐに失せた。
そしてカイリューは、ただ、泣き始めた。
俺とウインディは、立ち尽くすだけだった。その一瞬の恨みは、見間違いじゃない。ウインディの脚もがくがくと震えているのがその証拠だ。
けれども、それが一瞬で消えたのも同じく見間違いじゃない。
カイリューは、もう、地面を叩きつけてはいなかった。子供が泣いているように、ただ感情をぶちまけて泣いていた。
そして、倒れた。気絶していた。
やはり、そのボロボロな体を見る限り、ダメージは大きかったのだろう。そして、精神的な負担も。
空のハイパーボールを取り出した。
ウインディもそれを見つめる。
「……いや、やめておこう」
どうするのがカイリューにとって、一番良い事なのだろう。ボールに入れてポケモンセンターに連れて行くのは、最善では無い。特に、勝手に気絶している最中に俺のポケモンにすると言う点で。
治療すべきなのか、しないべきなのか。傍に居るべきなのか、居ないべきなのか。
俺の思った最善を通して良いのだろうか。それすらも分からない。
悩んだ末に、ハイパーボールを仕舞い、元気の欠片と回復の薬を取り出して、カイリューに近付く事にした。俺の思った最善は、最悪じゃない事は確かだろうと思いながら。
カイリューの涙の痕が、やけに印象的だった。
いいですね。
作者からコンセプト説明があれば、批評にも反映させやすいですし、改稿のアイディアも出そうです。
このポジションを狙ってるとか
逆にここが自信無いとかも言ってもらったらいいんじゃないかな。
友達に貰った卵からリオルが孵った。
食べるのが大好きな男の子。食事時の期待に満ちたつぶらな瞳が、ぶんぶん振られる短い尻尾が、ああもう可愛くてたまらない!
君の幸せはあたしの幸せ。絶対に、守ってあげるから!
ボクが大好きなのは、美味しいご飯と優しいご主人様。
沢山食べるとにこにこ笑ってくれる、それが嬉しくてボクも幸せな気持ちになる。
早く大きくなって、あなたを守れるくらい強くならなきゃ。
待っててね、ご主人様!
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たまにはほのぼの系も書いてみたくなった。
犬族の、信頼と愛情いっぱいの視線っていいですよね!
【と言いつつ私は猫派だ】
【読了いただきありがとうございました】
【なにをしてもいいのよ】
ポケモン広場にて
キャタピー「ねぇトランセルくん! ポケダンの新作が発売するみたいだよ!」
トランセル「本当かいキャタピーちゃん! それはめでたいね。ずっと音沙汰なかったから心配してたんだよ」
フーディン「ふむ……確か2009年に冒険団シリーズが出たのが最後であったな」
ゲンガー「ケケッ、とうとうオレたちイジワルズの活躍をドラマチックに描いた待望の新作が発売するってのか」
ハスブレロ「んなわけねーだろ」
ガルーラ「おばちゃん、リストラの予感がするんだけれど、どうしてだろうねぇ」
カクレオン(弟)「ちょちょちょちょ、何かワタシの姿も見当たらないのですが」
カクレオン(兄)「まあまあ。心配いりませんよ。アナタの存在は、みなさんの心の中で生き続けるのですから」
カクレオン(弟)「に、兄さん……ううっ、兄さん! って、納得できるかあぁぁ! 出番よこせやぁぁ!」
プクリンのギルドにて
ペラップ「いやーめでたい♪ 発売日が待ち遠しいなぁ♪」
プクリン「ワクワク♪ ワクワク♪」
チリーン「親方様はやっぱりレギュラーキャラとして登場するんでしょうか……」
キマワリ「製作者側に愛されてそうですもんね……」
ドゴーム「ううむ、それにしてもこのタイミングで発表とは。誰も予想できなかったな」
ダグトリオ「いや。ワタシたちは赤緑が発売したころから予想していたが」
ディグダ「やっぱりパパはすごいや!」
ヘイガニ「ヘイヘイ……ほんとかよ……」
グレッグル「グヘヘェ……よーしビッパ、発売決定を祝して今からうんめいのとうのてっぺんまで登ってこい」
ビッパ「ぎゃああぁぁぁぁでゲスうぅうぅぅぅぅ!!」
未来世界にて
ヨノワール「何っ!? 3DS専用だと!?」
ヤミラミ「ウイイイーーーーーー!!」
セレビィ「まあいつかは新ハードに変わっていくものでしょうけど、持ってない人にはきついわよね」
ヤミラミ「ウイイイーーーーーー!!」
ヨノワール「おいヤミラミ共! Wiiの宣伝はもういい! 至急3DS宣伝の準備を!」
ヤミラミ「ウイィッ!!?」
ジュプトル「ヨノワール、やはりキサマが黒幕か」
楽屋裏にて
イーブイ「っと待ったあぁぁぁ! 全国1億5000万のイーブイファンの落胆する声が聞こえんのか! 7種類の分岐進化ができるこのキュートでセクシャルな魅惑のもふもふを差し置いて、幼女の髪に寄生したドラゴンなんぞが主人公候補に選ばれるとかどういうことだあぁぁ!!」
ニャース「馬鹿な……あの電気鼠がいるのなら、ニャーが選ばれる道理では……」
パラセクト「本家でボックスの肥やしにされていたオレたちの出番か」
モルフォン「新技ちょうのまいからのぎんいろのかぜで今まで以上に暴れてやんぜ」
デンチュラ「ふっかつのたねなんぞ食わせるか」
ゴローニャ「がんじょうで堪えてじしんで全体攻撃します」
チラチーノ「夢特性次第で無双します」
エルフーン「いたずらごころでおいかぜします」
ポケダン新作発売決定おめでとう!
色違いを見つけた。ちなみに2匹。
ズバットとメノクラゲの2匹で、よく見ると、2匹ともメスである。
ここはホウエン地方の南東に位置する小さな島村・ムロタウン。
その近くにある洞窟の前の砂浜に、瀕死手前の状態で倒れていた。
ズバットはまだ、翼をバタバタとさせて、何とか飛ぼうとしている元気はまだあるが
問題は、その横で力なく倒れているメノクラゲの方で、かなり酷かった。
麻痺状態に加えて、体中大きな怪我だらけ。
普段はゼリー状のツルツルとした体は乾燥気味だ。
よく見ると血も出ている。息はしている。しかし、意識は無い。
早く治療しないと、このままでは死んでしまう。
重症のメノクラゲをそっと抱き上げると、ズバットが隣で
キィーキィーと、先程より甲高く鳴き、威嚇してきた。
どうやらこのズバット。メノクラゲを守ろうとして返り討ちにあったらしい。
「大丈夫だ。落ち着けよズバット。俺はこいつをポケモンセンターに連れていくだけだ。」
「キィー!キィー!」
「大丈夫。女の子に手荒なマネはしない……信じてくれないかな?」
「キィー……。」
ズバットは悲しそうに、耳を垂れ、俯く。
友達であるメノクラゲを守れなかったことを悔やんでいるようだ。
「大丈夫。お前の友達は必ず助ける。俺はタケル。
しがないトレーナーだが、お前やこの子を守ることはできる。
だから、信じてくれ、ズバット。」
ズバットは、悲しそうな表情のまま、俺に抱き着いてきた。
相当悔しかったし、悲しかったし、何より辛かったのだろう。
「よしよし。よく頑張ったな……大丈夫。大丈夫だから。な?
さあ、早いとここの子を助けに行こうぜ?」
ズバットは泣きじゃくりながら頷く。
俺はもう一度、彼女の頭を撫でてからメノクラゲと一緒に
腕にしっかり抱えると、ムロタウンのポケモンセンターへ、大急ぎで向かった。
*あとがき*
NOAHです。今回は色違いに関するお話し。
タイトルの意味はそのまま色違いです。
ズバットとメノクラゲにした理由は、初めてサファイアをプレイしたとき
ムロジム攻略に意気込んでポケモンを育てようとムロタウンの北の洞窟で
偶然色違いのズバットに遭遇。
そのあとボロの釣竿を貰ってさっそく使い
初めて釣り上げたのが、色違いのメノクラゲでした。
同じ日に2匹の色違いに出会ったことに興奮したのはいい思い出です。
サファイアではその後も大活躍してくれた
愛着のある2匹です。そのため、この2匹を主幹に置いて書いてみました。
私がどくタイプ好きになったのもこの子たちのおかげです。
NAME:タケル
モデルはRSE の男主人公。性格は勇敢
パートナーはミズゴロウのアグリ。性格は慎重
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】
ニンゲンになりたかった。
その手に筆を持ち、ノミを持ち、何かを作り出せるニンゲンに。
一浪で入ったカイナ大の入学式、その入場待ち列は騒がしかった。多岐にわたる学部・学科、それだけの人数を一気に収容できる施設は大学構内に無かったから、それは博物館近くのコンサートホールで行われた。入学式も、卒業式も、この大学は伝統的にそうらしい。
何、つまらないイベントだ。学長の長い挨拶に始まって、学部長の挨拶、教授陣の紹介が始まる。これがえらく長いのだ。こんなものは学校側の為にあるものだ。あるいは二階席で式を見守る保護者達の為のものだ。つまりは社会的対面を満足させる為のものに過ぎない。
吹奏楽部の演奏が入ったところで一度、休憩が入る。その時点でオリベは抜け出した。入学式を抜け出した。ここには自分を監督する両親は不在である。要するに自身がここにいる必要は無いと彼は悟った訳だ。それならば少なくとも在学中は暮らす事になるであろうこの街を見ておいたほうがよほど有益であろう。彼はそう考えて、入学式を抜け出したのだった。
カイナシティにはつい数日前に越してきたばかりだ。新居は間取りしか見ていなかったが、ひどいボロアパートだった。送られてきた荷物も大した量は無く、開けるのに時間はかからなかった。ホウエンの入り口、カナズミまでは寝台列車に乗り、それからは本数の少ないローカル線の乗り継ぎを繰り返した。ずいぶんと遠くに来てしまった。だが、彼自身の望んだ事だった。
そういえば市場にはまだ行った事がなかったな。そう思って彼は目標をそこに定める事にした。バスを使えば近いらしいが、何せ金が勿体無い。ホールの近くに立っていた看板地図と睨めっこをして、カタヒラ川の河川敷を通って向かう事にした。カタヒラ川は大きな川であった。海に流れ込む直前である川の向こう岸は遠い。向こう岸に開花の時期が終わって葉ばかりになった桜が見えた。カイナシティはホウエンでは大きいほうの都市だったが、こうして少し外に出ればやはり田舎である。橋をかける以外の目的では人の手が入っていないように見えた。広い土手には石が転がっているか、背の高い草、あるいは低木が無秩序に生えている。時折盛り上がり丘になっている場所がいくつもあった。そんな風景がずっと続いているのだ。海に近いここの空ではキャモメがたくさん飛んでいた。きっと草原にも様々なポケモン達が潜んでいるに違いない。
見れば数メートル向こうで、高い草ががさがさと揺れている。なかなか揺れが大きく、大物のようだった。オリベは少し身構えた。揺れる草がだんだんと上に近づいてきたからだった。
が、草を掻き分けて歩道に現れたのは予想に反して人間であった。出てきたのは色の白い男だった。スーツを来ていたが、草の葉があちこちについていて台無しになっていた。その後に続いて何やら小さめの黒いポケモンが現れた。黒棒に大きな目玉が一つ、それは宙に浮いていた。
「…………、……」
オリベがあっけにとられていると、そのトレーナーと目が合った。
「やあ、こんにちは」
トレーナーが言った。
それがツキミヤソウスケとの出会いだった。
淡い色の髪でくせ毛、歳は同じくらいか。後に話を聞くと、同じく入学式をサボっていたらしい。
奇縁という言葉がある。不思議な縁という意味であるが、ツキミヤとの関係はまさに奇縁であろう。今でもオリベはそう思っている。
*
私の目はヒトより遠くを見つめる事が出来たし、ヒトが見る事の出来ないものを見る事も出来た。たとえば先の事だ。
近いうちに雨が降るよ。
そう伝えるとヒトは私に感謝を捧げた。
私はヒトに無い能力(ちから)をたくさん持っていて、ヒトビトはそんな私を神様と呼んだ。この土地では私達の一族は特に大切にされていた。ヒトが持たぬ能力(ちから)。それをヒトは畏れ、敬った。
けれどヒトのほうがずっと多くの事が出来るではないか、と私は思う。
私はある時、一人の青年に出会い、一層強くそう考えるようになった。
*
ツキミヤは志ある学生であった。何せ動機がしっかりしているのだ。考古学をやりたい、と彼は語った。それで人文科学科に入ってきたらしい。何でもホウエン地方というのは、遺跡の宝庫であるらしく、もっと高いランクの大学に行けるにも関わらず、わざわざここを選んだらしかった。
実家から離れたい、行ける大学、そういう理由でホウエン地方を選んだ自分とはえらい違いだとオリベは思った。
「カタヒラ川の流域って古墳群なんだよ。ちょっと探検しててね」
と、ツキミヤは語った。なるほど、入学式をサボっていたのはそういう事か。
いわゆる「意識が高い」連中をオリベは毛嫌いしていたが、ツキミヤとはどういう訳か馬が合った。何というか彼は屈託が無かった。キャンパス内ですれ違えば挨拶をしたし、学食や講義で一緒になれば、隣に座って話しかけてきた。
だがその一方で、オリベはだんだん講義に出なくなった。始まったばかりの講義にはたくさんの学生がいるが、そのうちのいくらかが抜けて、だんだんとメンバーが固定されてくる。学期が始まって一ヶ月も経つとそういう現象があちこちで起きる。オリベはどちらかと言えば抜ける側の学生であった。なぜなら学ぶ目的など無かったからだ。彼は下宿から大学へは行かず、行ってもすぐに抜け出して、海の近くの神社やカイナ市場で時間を潰す事が多くなっていた。
大学から坂を下って海側に下りていくと神社があった。石段を登り青い鳥居を潜ると境内に入る。入ってすぐの所、松の木の下に海風がほどよく吹きつけるベンチがあった。オリベはそこに横になって、空を見上げる。無数のキャモメが輪を描きながら飛んでいた。目を閉じるとみゃあみゃあという声と波の音が響いた。彼はこれらの音が好きだった。こうして目を閉じて耳を澄ましている間は雑音が入らない。何者でもなく、捕らわれない自分でいられた。
「やあ、こんな所にいたんだ」
声がしてオリベは目を開ける。見ると、ツキミヤとそのポケモンの大きな目玉が上にあった。
「……何しに来たんだ」
「最近見かけないからさ、どうしてるかと思って」
「講義は?」
「先生が風邪ひいてさ、休講」
「何でここが分かった?」
「こいつだよ。こいつ」
ツキミヤは親指を立てると自身の後ろに浮かぶ黒いポケモンをくいっと指差した。ポケモンは丸い皿みたいな大きな目玉を軸に、申し訳程度に付いた枝のような胴をぐるぐると回している。アンノーンであった。様々な形があって遺跡などにいるポケモンだ。
「こいつね、探し物が得意なんだよ。目覚めるパワーって奴? 名前はクレフ」
「形がQなのに?」
「鍵って意味さ。形が鍵に似てるだろう?」
「まあ……」
クレフと名付けられたアンノーンを見る。するとクレフはふわりと寄ってきて、一つしか無い大きな目玉でじろじろとオリベを見ると、ぐるぐると周りを回った。
「奇怪な奴だ」オリベが言うと、
「君の事を気に入ってるんだよ。だから見つけられたのさ」と、ツキミヤは答えた。
ツキミヤは神社の自販機でジュースを買うと、缶をオリベに投げてよこした。モモンジュース、なかなか暴力的な甘さだが、オリベの好物であった。学食で飲んでいたからツキミヤも知っていたのだろう。
「いいのか、これ」
「昼寝の邪魔をしてしまったようだからね」
「じゃ、遠慮なく」
かちりとスチールの蓋を開けて中に沈めるとぐびぐびとオリベは飲み始めた。隣でツキミヤも缶の蓋を開ける。彼の開けたのはサイコソーダであった。
「なあオリベ、明日は出てこいよ」
缶の中身が半分程度になったところでツキミヤは言った。
「何かあるのか?」
オリベが尋ねると
「考古学概論の野外実習があるんだ。場所はカタヒラ川古墳群」
ツキミヤは目を輝かせて言った。
「へ、へえ」
「面白そうだろ?」
「どうかな」
「オリベも来るよな?」
「……分かったよ」
大して興味など無かったのだが押し切られた。こんな事をわざわざ言う為にここまで来たのだろうか。変わった奴だと思った。気付けばクレフと名付けられたアンノーンがふらふらと境内を漂って行ったり来たりを繰り返していた。あのポケモンなりに楽しんでいるという事なのだろうか?
「オリベ、見ろよ。あれ」
そんなQのポケモンの動きを追っていると、ツキミヤが言った。振り返ると、青年は海に浮かぶ小島を指差していた。石垣で出来た人口小島で、その上は草木で覆われている。
「あれがどうした?」
オリベが尋ねると、
「台場だよ」
とツキミヤは答えた。
「ダイバって何だ」
「昔ここのあたりに外国の蒸気船が来た事があってね、その時に砲台を置いたのさ。もう砲台自体は無くなっちゃって、草ぼうぼうだけど。あれでも史跡なんだぜ」
「へえ?」
勉強熱心な男だと改めてオリベは思った。地中に埋まってるものしか興味が無いのかと思っていたのに。その後にも、ツキミヤはここの神社の言われなんかを語って聞かせた。何故そんな事を知ってるのかと尋ねたら、この間、ニシムラ教授の民俗学概論でやったと言われた。
「お前授業出てないからな、少しは出て来いよ。なんなら今までのノート見せてやってもいいぜ?」
そう言ってツキミヤは笑った。
「じゃあ次の講義あるから戻るわ」
そう告げるとツキミヤとアンノーンは石段を降りていった。忙しい奴だなぁ。そんな事を考えながら青年の背中を見送った。
そうして彼は、後になって知った。その日、講師は風邪などひいておらず、講義も通常通り行っていたらしい事を。
翌日にツキミヤの姿は大勢の学生と共にカタヒラ川にあった。オリベの姿には先にクレフが気が付いて、その動きから待ち人の到来を知ったツキミヤは軽く手を挙げて挨拶した。長袖長ズボンに軍手姿の発掘スタイルである。
実習が始まった。何、つまらない授業だった。大雑把な部分をシャベルで掘って、細かい部分や遺構を移植ごてで掘り進めて行く。溜まった土は「ミ」という塵取りを大きくしたような道具に集め、溜まったら土捨て場に捨てに行く。早い話が土木作業だ。何か埋まっていればまだ面白いのだが、そういう物が出てきた場合、素人の手出しは許されない。即座に教授か専門スタッフが飛んできて、学生はお役御免だ。つまりは力仕事の要員に過ぎない。ふと脇を見るとツキミヤが汗を流しながら、移植ごてで溝を掘っていたが何が楽しいのかさっぱりだった。
アホらしい。昼休憩を挟んで弁当を食べ終わった頃にオリベは現場を抜け出した。
カタヒラ川の土手は広かった。現場を離れて歩いていてもあちらこちらに小さな丘のようなものがある。もしやこれがみんな古墳なのか、とオリベは思った。手付かずの古墳もたくさんあるに違いない。
「ツキミヤの奴、ここの古墳を全部掘り返すつもりなのかな」
オリベはそう呟くとふかふかした草の生えた緩やかな傾斜の丘を選んで寝転んだ。天気はいい。海に近いこの場所にも、キャモメが飛んでいる。十字架のような形が逆光の黒になって空を舞っていた。さわさわと鳴る草の音を聞きながら、いつしかオリベは眠りに落ちていった。
――ユウイチロウ、ユウイチロウ。ちょっと来なさい。
そんな声が聞こえた。
振り返るとそこには母がいて、上からオリベを見下ろしていた。その手には何かの紙がある。
――またこんな点を取って。あなたこんなんじゃ進学危ないわよ。
母が言って、幼いオリベは顔をしかめた。ああ、この記憶は確か中学受験だったか、あるいは高校受験だったか、と。
「そんなの、上を目指すからだろ。俺、行ける所でいいから」
――そんな向上心の無い事でどうするの。お祖父様だってそこに行って勉強したのよ。
「じいちゃんと俺は違うだろ」
――ユウジロウだってそこに行かせるつもりなのよ。
始まった、と彼は思った。母はまた弟を引き合いに出した。
「勝手にすればいいだろ」彼は返す。
――だって、格好つかないじゃないの。あなたはお兄ちゃんなのに。
オリベは静かに母を睨み付けた。それは違う。格好が付かないと思ってるのは貴女ではないのか、と。
母にとっての成功モデルはオリベの祖父だった。彼は大学教授であった。そこはカントーでも随一の大学で。だから母は自分達兄弟に同じ道を歩かせようとしているのだ。同じ道、同じ学校に行き、同じ教育を受け、同じようなポジションに就かせる。それが母の教育の目的だった。それに対してオリベは反発を覚えたのだ。おそらくはポケモン関係の仕事をしている父の事も影響していたのだろう。彼はそのように理解している。一度ポケモントレーナーになりたいと言った事があったのだが、母の激しい反対に遭ったからだ。
一方で素直だったのは弟のユウジロウであった。彼は驚く程素直に、母の教育方針に従った。利発な弟だった。頭が良かった。それ故に母が弟のユウジロウに傾倒するのはごく自然な流れであった。
そのように母との確執が深まる中、ある夜に兄であるユウイチロウは聞いてしまった。ちょうど祖父が遊びに来ていて、母と二人で酒を飲んでいた。既に父や弟は眠っていた。その席で母が言ったのだ。思い通りにならぬ兄をこう評したのだ。
「あの子は半分なのよ」
母は兄の事をそう言った。
話を聞くに半分しか出来ないという事らしかった。人の言う事を聞かないし、半分しか出来ないのだと。テストの点も望む半分しか取って来ない。あの子は弟の半分しか出来ないのだと。
「せめてあの子が、ユウジロウの半分でも素直だったら」
半分。その言葉が抉り込む様に突き刺さった。
母との溝が決定的になった。母にとって理想の人間とは弟である。兄はその半分である。それはオリベにとって半分しか人間でないと言われたのと同義であった。
半分。自分は半分。人として、半分。
一浪をした時に、母はもはや自分を見放したのだろうと彼は思った。その視線は一年遅れで受験生となった弟にのみ向けられていた。浪人時代、人生の中でそこそこ必死に勉強をしたのは決して母の為などではない。ましてや見返したかったからでもなかった。ただ、遠くに行きたかった。考えられる限り遠くへ。ホウエン地方の大学を受けた事などあてつけでしか無かった。そこに目的は無い。大志は無い。やりたい事などオリベには無かった。
汗を掻いてオリベは目を覚ました。
ああ、また雑音だ。あの夢だ。ここは場所が悪いとオリベは思った。やはり海がいい、波音は雑音の入る隙を与えない。横たわっていた身体を起こす。場所を変えようと思った。神社に行こう。海に近いあの神社に。古墳らしき草ぼうぼうの丘の向こうに急な土手の上り坂を見、彼は歩き出した。
だが、急な坂を登りきり、まさに河川の敷地の外側に出ようかと言う時になって、彼の動きは止まった。その視線の下に先ほど通り過ぎた古墳があった。そこに草陰で覆われた入り口のようなものが見えたからであった。
それはまったくの好奇心であった。オリベは坂を降り、草を掻き分けて進んでいく。近づいてみて、その入り口が顕になった。周囲に粗末な石が転がって、地面にヒビを入れたみたいに三角形の口が開いている。膝を折ればなんとか入れそうな穴であった。暗い。懐中電灯も持っていないから、中は見えない。だが、好奇心がオリベを動かした。腰を屈めながら数メートル程進む。そこで急に天井が高くなったのが分かった。
オリベはその空間で立ち上がった。手さぐりをしながら内部を把握する。あまり広くはない。畳にすると四枚程度であろうか。中心に何か、表面がざらざらとした、長方形の物が置かれている。
これは何だろう? だが、暗闇では情報が分からない。明かりを取ってこないと。あるいはツキミヤを呼んできたなら……。そう思ってオリベが再び立ち上がった時、ばり、と何かが砕け散った音がした。靴から伝わってくる感触。どうやら何かを踏んだらしかった。
*
里の景色をよく見渡せる丘の上、そこに私は立っている。その下に瓦屋根の集落が見えて、私は焦点を絞る。
それは大きな屋敷の外れだった。軒先で、若い男が書き物をしていた。白い紙に黒い筆の線が走って、何らかの意味を作っていく。私達の多くは言葉を操れたけれど、文字にまでは興味が無かったから、誰も文字を読めなかった。だから内容までは分からなかった。
青年は毎日、毎日、ずっと書き物をしていた。そうでなければ書物を読んでいた。
丘の上から焦点を絞る。そうするといつも彼はそこにいた。
私は彼に興味を持った。同時に彼の記す言葉に興味を持った。
*
「オリベ! オリベ!」
聞き覚えのある声がしてオリベは目を覚ました。目線の先にはツキミヤとQのポケモン。手に伝わる感触はふかふかとした河川敷の草原のそれであった。どうやらまた眠ってしまったらしいと彼は思った。
「よう」
と、オリベは挨拶をした。
「よう、じゃない。またサボって。もうみんな引き上げたぜ」
ツキミヤが呆れ気味に言った。同時にふと、アンノーンと目が合った。するとどういう訳か、身を翻して、主人の背中のほうに回り込み、覗き込むようにしたのだった。
「……? 今、何時だ?」
こいつこんなによそよそしかっただろうかと思いながら、尋ねた。
「四時過ぎだよ」
「ん、もうそんな時間か」
ちょっとした昼寝のつもりだったのに、ずいぶんと長い間眠ってしまっていたらしい。一度は起きて、神社に向かったつもりでいたが、それもまた夢であったという事か。
「…………」
唐突にオリベは起き上がると、古墳の丘を走り登り、周囲の草を掻き分けた。だが、そこには何も無かった。ただ草が生え、石が転がっているだけであった。
「どうしたんだよ?」
ツキミヤとアンノーンが後から追いかけて来てオリベに問うた。
「いや、何でもない」
オリベは言った。あまりにつまらない発掘実習に乗じて見た夢だったのだ。やはり入り口などある訳が無い。渡る風が河川敷の草原をざわざわと揺らしていた。
単行本へ続く
少年は手を見る。
固まりきらない血がまだ光を反射して輝いている。地面にはいくつかの血痕があった。
その目の前では、ごめんなさい、ごめんなさいと、緑色の獣を腕に抱いた少女が必死に頭を下げている。
「本当よ。普段はすごくおとなしい子なの」
彼女はそのように弁明する。たぶんそれは嘘ではないし、彼女は何も悪くないのだろう。
だが、少女に抱かれたラクライは毛を逆立て、牙をむき、眉間に皺を寄せる。フーッフーッと息を荒くしていた。
「……気にしないで」
少年は言った。
ちらりと緑の獣を見る。獣は再びウウッと唸って毛を逆立てた。やはり見なければよかったと思い、急ぎ目を逸らす。嫌われたものだ。
獣の瞳に映ったのは恐怖だった。忌むべき者を見た恐怖だ。手を出してはいけなかった。望むと望まないに限らず嫌われる者はいる。世の中にははみ出し者や除け者というものが必ず存在し、忌まれる者がいる。
自分はどうやらそっち側の存在であるらしいと、この日、少年は理解したのだ。
海の見える学校の、広い敷地の狭い部屋の中で何人かの男達が会合を開いていた。
右上に小さな写真を貼った書類、そして写真の人物が書いた論文、考査の結果。それらを照会しながら彼らは品定めを行ってゆく。
「タニグチ君はいいね。卒業論文もしっかりしているし、うちの研究室で貰いたいのだがね」
「サカシタはどうだね」
「彼は考査の結果がねえ」
「だが体力があるだろ?」
「それは評価に含まれない」
「だが、フィールドワークでは重要だろ。よく働くんじゃないのかね、彼は」
「卒論はどうだった?」
「及第点といったところですかな」
「まぁいい。うちで面倒見よう」
そんな風に彼らは学生達をふるいにかけていった。何人かを通らせ、何人かを落とした。
しかし、ここまでの過程は彼らの予定の範囲内であり、予想の範疇であった。たった一人、最後の一人だけが彼らの本当の議題だった。
「さて、最後だが」
「彼か」
「ああ」
教授達は選考書類に目を通す。
「考査の結果は?」
「……トップですな」
「卒業論文は?」
「発表会、聞いていたでしょう?」
「考古学専攻はみんな聞いていましたな」
「私は誰一人、質問しないので焦りましたよ」
「あの後、学生が一人質問しましたな。いい質問だったが、いかんせん彼の切り返しのほうが上だった」
彼らはそこまで言ってしばらく黙った。誰も先に進めようとしなかった。
「欲しいのはおらんのかね」
一人が沈黙を破ったが、誰一人手を挙げない。
「能力的には並みの院生以上と思いますがね」
「取るか取らないかは別の問題だよ」
「分野的には、フジサキ研だと思うが」
「学士までと約束しました。皆さんもご存知のはずです」
その中でも比較的若い男が言う。
「しかし彼を落とすとなると、他の学生も落ちますよ」
「だから困っている」
「ようするに合理的な説明が出来るか否かという事だ」
「学士は所詮アマチュアだ。だが修士はタマゴとはいえ研究者。この違いは重い」
結論は出なかった。グダグダと議論が続く。
否、とっく結論は出ているのだ。議題の人物の受け入れ先など、最初から存在しない。後は誰が面倒な役回りを引き受けるか。結果を通知し、合理的説明をするのか。それだけなのだ。だが誰も関わりたくない。触りたくない。それだけなのだ。
「休憩にしますかな」
一人の教授がそう言った時、キイと狭い部屋のドアが開いた。
「お困りのようですな」
入ってきたのは一人の男だった。コースでは見ない顔だった。だがまったくの知らない顔、部外者という訳でも無かった。
「オリベ君、」
一人が男の名前を口にした。
「民俗学コースの教授が何の用事かね」
また違う一人が言った。少し不快そうだった。
彼らの視線の先にいる乱入者はラフな格好だ。ネクタイは緩いし、履物は漁師の履くギョサンだった。大学教授などそんなものかもしれないが、年配には印象がよくない。だが乱入者は気にする様子もなく、
「例え話をしましょうか」と、言ったのだった。
「考古学コースには誰もが認める優秀な学生がいる。どの研究室も欲しがっているが、その学生がコースの変更届けを出したなら、皆諦めるしかありません」
「…………」
しばらく皆が黙った。いや、食いついた。だが、腹の底で疑念が沸き起こる。
「オリベ君、何を企んでいるのかね」
「何も。私は優秀な学生が欲しいだけです。こっちでも院試がありましたがろくなのがいなくてねぇ。ただ……」
「ただ?」
「配慮いただけるのであれば、来月のあの件、譲歩いただきたい」
目配せしてオリベは言った。
「来月の……」
「そう、来月です」
オリベがにやりと笑う。その言葉の真意に部屋のメンバーも気付いた様子だった。
「つまり取引をしようというのかね。しかし彼が届けなど出すと思うかね」
「出させてみせます。万が一の場合、今日の事はお忘れくださって結構」
あくまでひょうひょうとした態度でオリベは続ける。
「そうですね。とりあえずは院試の選考を今からでも民俗学・考古学コースの合同だったという事にしましょうか。他のコースも巻き込めるなら尚いい。それで責任者を私にするんです。院試に関する質問は全て私を通す事にしましょう」
なるほど、と教授陣が目配せし合う。例の件はともかく、面倒事をオリベに転化できるのは彼らにとって都合がいい事は確かだった。
「……分かった」
彼らの代表格が返事をした。
「決まりですね」
オリベが言った。ずり落ちた眼鏡の位置は直さず、レンズを通さずに、下から覗き込むように教授陣を見据えた。そうして彼は二、三彼らに質問やら手続き的な頼み事をすると、部屋を出ていった。
冬であったが、この日は比較的暖かかった。日光が差し込む廊下をポケットに手を突っ込んで、すたすたとオリベは歩いていく。時折、学生とすれ違ったが知らない顔だ。互いにこれといった挨拶は交わさなかった。
とりあえず文書作成からかからなければなるまい、彼はそう考えていた。だが、
『一体何をしようっての』
途端に声が聞こえて足を止めた。
「ん?」
オリベはとぼけた声を発する。
『とぼけるな。あんな事言って。私は反対だと伝えたはずだよ』
声が響く。
「あのなぁ、俺はいつもお前の言う事ばっか聞く訳じゃないぞ」
面倒くさそうにオリベは言った。いかにもうるさいといった風に。
『どうして? いつもはあんなに素直なのに』
「これはこれ。それはそれ。前にも言ったけどな、お前の意見を聞くも聞かないも選択権は俺にあるの。たまたま聞く割合が多いだけだろ。あくまで選ぶのは俺だからな」
『私が言って、外れた事があった?』
「お前が勘がいいのは知ってるよ。だが、これはだめだ」
『だいたいあんなの無理だ。無理に決まってる。夏休み前に相当怒らせたくせに。あの時は本当に危なかった』
「怒らせるのはいつもの事だ」
『一緒にいた女の子を覚えてる? あれ以来学校で見かけない』
「だから? 大方、別れたんだろ? 男女にはよくある事だ」
『危険なんだよ。ユウイチロウ』
「お前はいつもそれだ」
『ユウイチロウは鈍いから分からないのかもしれないが、』
「うるさいな。あんまり喋るなよ。ただでさえ独り言が多いって言われてるんだ。文句なら部屋に帰ってからでいいだろ?」
そこまで言うと声が止んだ。やれやれとオリベはまた歩き出した。ポケットに手を突っ込んで、ぺたぺたとギョサンを鳴らしながら、民俗学教授は歩いていった。
日差しの差し込む長い廊下、そこにはオリベを除いて人は歩いていなかった。
単行本へ続く
「ブースターだ!」
「いや、シャワーズ!」
家が敷き詰められた住宅街のある一戸建て。まだ幼く元気のある兄妹が、言い争いをしていた。
喧嘩の理由は単純だった。二人の家に住むイーブイを、どの種類に進化させるかということである。
二人はまだ年齢が若すぎるため、自分のポケモンを持っていない。両親に何度もお願いして、漸く家に来たのが一匹のイーブイだった。
イーブイという種族は、様々な種類に進化することができる。住んでいる環境によって様々な個体へ姿を変えることができるため、他のポケモンよりも進化の数が圧倒的に多い。例えば、とても寒い地域に住んでいれば凍えて死なないためにグレイシアに進化する傾向があるし、森に囲まれて育ったイーブイはリーフィアに変化することもあると言われている。
それ故に、人間が故意的に進化を操作することも多い。理由は、様々だが、大方は人間の都合である。そのため、人間が管理しているイーブイは、環境以外の要因で何に進化するか決まってしまうことが殆どだった。
話は戻るが、兄弟は、イーブイを何に進化させるかで揉めているのだ。
「ブースターは可愛いじゃないか。赤い体にふわふわした体毛、ずっとぎゅーってしていたくなるんだよ」こう
言うのは、兄の方。
「シャワーズにすれば、ひんやりして気持ち良いし、一緒にプールで遊べるもん。だからシャワーズが良いの!」
そう述べるのは、妹の方。
この二人は、いつも意見が食い違っていた。例えば、兄の方は冬が好きだし、妹は夏の方が好みだった。他にも兄は走るのが好きだし、妹は泳ぐのが好きだったりと、常にこの兄妹はぶつかりあっているのである。
そのため、今回のことも珍しいことではなかった。
「シャワーズに進化させたら冬はどうするのさ。冷たくて触っていられないぜ?」
「ブースターなら冬に抱きしめられるもん。お兄ちゃんだって、真夏にブースターをずっとぎゅってしてるの?」
「ああ、俺だったら真夏でも真冬でもブースターを抱きしめるもんね」
「そんなことしたら暑さでお兄ちゃんが倒れちゃうよ。だから、シャワーズにしようよ」
「そんなこと言ったら、冬に無理にシャワーズを抱きしめたら、お前が風邪引いちゃうじゃないか。だから、ブースターにしようぜ」
「嫌だ! シャワーズ!」
「俺だって嫌だ! ブースターが良い!」
お互いに眉間にしわを寄せ、睨みあう兄妹。彼らはまだ、譲り合うということができなかった。両親がいると大人しくなるのだが、生憎、この子達の両親は、まだ仕事で帰って来ない。
イーブイは、そんな兄妹を毎日見ているのに目もくれずソファーの上で昼寝をしていた。
散々続いた言い争いが終わったと思うと、兄弟はイーブイの目の前に立ち見下ろしている。
何事かと顔を上げると、先に兄が言う。
「ブイルは(イーブイの名前である)、ブースターに進化したいよな?」
妹。
「ブイルはシャワーズに進化したいよね。私のこと大好きだもんね」
「ブイルはお前のことなんか好きじゃないって。ブイルが好きなのは俺だよな」
「そうやって、人のことをいじめるような最低な人間をブイルが好きになるわけないじゃない。ねーブイル」
「あーあ、やだやだ。強引に姿を変えられるのは嫌だってさ。他人のことを思っているように見せかけて、実は自分の都合を突き通そうとしている人って、タチが悪いんだよな」
「お兄ちゃん。そろそろ怒るよ」
「やるか」
「手加減しないよ」
彼らは拳を握り、今にも喧嘩を始めそうになる。怪我をしたら流石に洒落にならないので、ブイルと呼ばれたイーブイは起き上がり、自分の気持ちを堂々と伝えた。
「僕は、昔からサンダースになりたいと思っているんだ」
胸を張り、しっかりと自己主張をするブイル。
すると、二人の表情は一変する。
「何言ってるんだ。サンダースになったら静電気が大変だろう。それに、ふわふわした体毛が少なくなっちゃうじゃないか」これは兄。
「そうよ。サンダースだと一緒にプールで泳げないよ? だから考え直そうよ」これは妹。
「だから勝手に決めるなって。ブースターが良いに決まってるだろ」
「違うの! シャワーズが良いの!」
「ブースター!」
「シャワーズ!」
ついには殴りあいの喧嘩を始めてしまう二人。さすがにここまでくると放っておけないので、ブイルはなんとか止めさせる。
「これ以上喧嘩するなら、何に進化するかお母さんに決めて貰おうかなあ」
さり気なく呟くブイル。
お母さん、兄妹にとって大切な家族であり、恐れる対象である。
兄妹は理解していた。お母さんが主導権を握れば、全ての物事は強引に決定してしまうのである。そのため、ブイルが何に進化するかを母親に頼むということは、自分達の意見が通らなくなることがほぼ確実だった。
「ごめんブイル、俺達が悪かった」
「お願いブイル、それだけは止めて」
母に決定権が移ることだけは、何としても阻止しなければならない。兄妹の態度は一変した。
「もう喧嘩しない?」
「しないしない。絶対にしない」
「うん。お兄ちゃんと私は仲良しだもん。喧嘩なんてしないよねー」
「ああ、しないとも」
ぎこちない笑顔で肩を組む兄妹。それならば、とブイルは言う。
「僕が何に進化するのか、仲良く決めてね」
兄妹は黙って頷いた。とりあえず、今日の兄妹戦争は回避できた訳だ。
しかし、明日には同じことを繰り返すのだろう。そう思うと、このままイーブイの姿で一生を終えた方が良いのではないかと思うブイルだった。
――――――――――
地味にお久しぶりです。
夏コミ82に来てくれた方がもしいたら、ありがとうございました。またちょくちょくイベントには参加していると思います。
9月のチャレンジャーは他のイベントで売り子を頼まれた為、参加を断念しました。鳩さんの新刊はまた今度になりそうです。
現在、冬コミに向けてワープロ打っています。こういうネタは直ぐ思いつくのですが、遅筆なのが悩みです。
フミん
【批評していいのよ】
【描いてもいいのよ】
| タグ: | 【ポケライフ】 【冥土喫茶】 【何もかも投げ出して喫茶店経営したい】 【|ω・)】 |
回答8:
色違いのゾロアークなら、この前借金を返しにきた。
子供手当が出たからやっと返せるー!ルーピー・ポッポ大統領万歳とかいいながら団子も食ってたな。
回答9:
私の友達が青いブラッキーを持ってました。
普通のブラッキーとは違って、夜に見ると青く光って綺麗でしたが、迫力はやっぱり黄色い方がよかったと思います。
回答10:
(この発言は当局によりスナイプされました)
回答11:
この前、ラブカスを釣ろうとしたら、変な色のホエルコつり上げちゃったよ。一瞬目がおかしくなったのかとおもった。
回答12:
色違いのゾロアークがこの前お店にきました。
先輩と親しいようだから、試作品を食べてもらったら全部まずいって言われた;;
それから口直しに賞味期限が近いやつを食われたけど、小さい子がいるっていうから包んであげたら喜んで宣伝してくれた。いいやつだったよ
回答13:
>12
貴方なにをいってるんですか?ゾロアークが喋るわけないじゃないですか。半年ロムってろ
回答14:
>12
お前ポケモンかよwwwwwwwwwwうぇwwwwwwwwwいいやつwwwwwまじwwwwwwwwステマwww
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知恵袋に寄せられた相談:
5日程前、エンジュシティの南の方で良い雰囲気なゾロアークのカップルを見かけたんですが、何と片方が色違いだったんです!
色違いなんて初めて見たので物凄く印象に残っています。そこでふと気になったのでお聞きします。皆さんが見た色違いのポケモンを教えて下さい!
回答1:
私も4ヶ月程前にヤドンの井戸の辺りで色違いのゾロアークを見掛けました。ロコンと一緒に歩いてました。
ロコンが鬣を触りたそうに見てました。実際少し触ったりしてました。微笑ましかったです。
回答2:
先月の下旬にキキョウシティの西の方で同じく色違いのゾロアークを見ましたね。
確かコジョンドと手を繋いで歩いていたと思います。紫色の鬣が綺麗でした。
回答3:
クチバシティに色違いのゾロアークと通常色のキュウコンの夫婦がいました。可愛いロコンの子供もいてとても幸せそうでした。
ゾロアークがキュウコンに一途なのが凄く伝わって来たっす。あれこそ夫の鑑っすね。
あと、質問者さんのゾロアーク達は絶対カップルじゃないです。決して良い雰囲気でもないです。
回答4:
うちのイーブイが色違いです! 銀色でもっふもふで超かわいいです!
この子タマゴから生まれたんですが最初見た時汚れてるのかと思って洗いそうになりました(笑)
進化させるか悩んでますがそれは別の話ですね。
回答5:
いつだったかは忘れましたがウバメの森で色違いのゾロアークを見た事があります。
キュウコンの尻尾を枕にして気持ち良さそうに寝てました。羨ましかったです。……羨ましかったです。
あの時からいつかキュウコンを手に入れて同じ事をするのが私の夢になりました。羨ましかったです。
回答6:
ゾロアーク大杉ワロタwwwwwwまあ俺が見たのもゾロアークなんだがwww
確か2ヶ月位前にヨシノシティの北辺りで普通のゾロアークと一緒に鬣を梳かし合ってたな。ゾロアークたんカワユス。
まぁ何が言いたいかって言うと、リア獣末永く爆発しろ。
回答7:
僕もこの間ラジオ塔の入り口付近でゾロアを抱いてる色違いのゾロアークを見掛けました。
ゾロアは普通の色でしたが非常に可愛かったです。
それにしてもゾロアークの目撃情報多いですね。同じ個体だったりして(笑)
回答15:
去年の冬頃だったかな、どこだったかは忘れたけど私も色違いのゾロアークを見かけました。
確かフォッコと焚き火囲んでたと思います。言うまでもなく可愛かったです。両方共。
それで確かゾロアークが振り向いた拍子に火が鬣に燃え移っちゃって2匹共焦ってたっけ。あれは笑った。
――――――――――――――――
どっかの誰かに似てますねぇ、フヒュヒ。本人じゃないと良いですねぇ、ニヤニヤ。
という訳で某ゾロアークをお借りしたかも知れませんしお借りしてないかも知れません。どっちでしょうねぇ、ニタニタ。
知恵袋のスレは既にありますが、これは毛色が違うので別で立てました。
とりあえずキュウコンの尻尾を枕にしたいです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【回答してもいいのよ】
【浮気してもい……浮気はだめなのよ】
【回答3はベストアンサーにはならないのよ】
【尻尾を枕にしたいのよ】
3/24追記: 回答15を追加しました
携帯をいじっていたらテキストフォルダからプロットらしきものが飛び出てきましたので、折角だからこっそりあげることにしました。後書きのページにも色々書きましたが、こちらも良かったぜひ(ドキドキ)
【以下、携帯のメモ帳からそのまま抜粋】
ポケモンストーリーコンテスト案を出していこうページ1
★タイトルは?
こちら鏡屋メタモンでありんす。
★主人公は?
メタモン。
殆どのポケモンを知っており、その知識を活かして、その者が知りたい姿を見せる鏡屋というモノを始める。昔、お礼にもらったというキセルをいつも身につけている。一人称はわらわっち。その辺の説明も入れておく。
★どんな話?
イーブイの進化の悩みから可能性の広さを説く【未来編】
ルージュラの恋の悩みから、今というものと向き合う【現在編】
トレーナーが捨てた卵から変えられない過去を説く【過去編】
★流れは?
最初はメタモンの紹介で1000文字以内。
後は未来編、現在編、過去編の順番で各3000文字以内。
★それぞれの性格
・メタモン
古風な喋り方が特徴的。甘いモノに目がない。冷静にモノを見る。
・イーブイ
好奇心旺盛なイーブイで、メタモンに将来のことを相談しに来る。
・ルージュラ
恋に生きているポケモンで、もっと美しくなりたいと思っている。
進化することはできないかとメタモンに相談しに来る。
・トレーナー
卵を孵して、個体値が低いと見るや、そのポケモンを捨てる人。
間違えて高個体値のポケモンを捨ててしまう。
――――
ポケモンストーリーコンテストの案を出していこう。ページ2
★一人称は?
・メタモン…わらわっち
・イーブイ…ボク
・ルージュラ…わたくし
・トレーナー…俺様
★実は。
イーブイは実はトレーナーに捨てられていたポケモン。
後にエーフィに拾われ、育っていく。
話の終わりはイーブイがエーフィに進化して、メタモンが「願わくば、この子のように強く生きて欲しいでありんす」と呟いて終わり。
★セリフ。
・わらわっちはあくまでお主の見たい姿を写したにすぎん。
・未来を決めるのは最終的にお主なんじゃ。
決めて、その先を進んだら、戻ることはできん。
だから自分に責任を持つのじゃ。
それが今というやつでありんす。
・鏡はあくまで表面を映しているだけでありんす。
中身までは映せん。
どんなに姿を変えようともわらわっちはわらわっち。
お主はお主なんじゃ。
中身を変えること……それも進化の一つじゃないかのう?
・知っておるか?
捨てられたポケモンはな、成長すると、やがて捨てられた意味をというものを知って、捨てた人間に復讐するのだそうじゃ。
【このプロットらしきものに関する補足説明】
・現在編にて初期案はルージュラでありましたが、進化しないポケモンにするはずだったのに、ルージュラはムチュールから進化していたことを忘れていました。
ポケスコに提出後、それに気がつき、急いで他の進化しないポケモンを検索。
唇が気に入ったのでマッギョに決定。
・このプロットらしきものを打ち出したのは第二回ポケスコの募集が始まったときで、このプロット(?)を打ち出す前にこの案は薄らと浮かんでいました。
要するに温めていたのであります。
ちなみに、そのときに浮かんだタイトルは『メタモンが語る!』
・ページが二つに分かれているのはメモ帳が500文字までしか入らなかったからです(汗)
このような感じでわらわっちストーリーが生まれたわけですが、実際に物語を書いてみると、オムニバス形式で四つのお話を書かなければいけなかった上に、それぞれの字数目標を破ったりしてしまいましたから、全体で軽く10000字オーバーが起こって調整が大変でした。(汗)
それでは失礼しました。
「ライモンシティ行き、間もなく発車します。駆け込み乗車はおやめください」
帰りのバトルサブウェイが動き出す。ここから帰る人たちはいろんな事情を抱え込んでいた。途中で負けたもの、区切りをつけて帰るだけのもの。ただこの時間は人が少ないのか、広い車両に一人だ。
途中の駅で買い込んだキャンディを一口。そして真っ暗な窓の外を見る。
夜のように真っ暗だ。ここは地下鉄、景色なんて見えない。時々、反対方面に向かうサブウェイが見えた。それ以外は何の変わりもない、ただの暗闇である。
「パスを拝見します」
車掌の言葉に顔をあげる。首からぶら下げていたスーパーシングルトレインの許可証を見せた。
「あれ、さっきのサブウェイマスターの……サガリさん!」
「僕はクダリ!」
名前を間違えられて一気にフォーマルな表情から、プライベートな子供っぽい表情へと変わる。
「クダリさんですか、すいません」
シングルトレインにいたノボリと良く似た人だ。親戚なのかもしれないが、性格がだいぶ違う。
「クダリさんもバトルサブウェイ好きでこの仕事してるんですか?」
「ノボリと一緒にしないでよ!僕はバトルが好きなの!」
同じじゃないか。そう思っても言葉には出せなかった。苦笑いでやり過ごし、荷物から残ったキャンディをクダリに渡す。
「お疲れ様です。青リンゴ味ですよ。よければどうぞ」
サブウェイの窓は相変わらずの暗闇だ。ダイヤが違うのか、他のサブウェイともすれ違わない。
「お仕事は?」
「君で終わり。……さっきから外ばかり見て、何が面白いの?」
クダリがつまらなそうに言う。確かにそうかもしれない。彼にとって見慣れた暗闇。
「クダリさん。誰かが私に言ったんですよ。電車って人生に似てるって」
「なにそのいきなり哲学。僕に解るよう説明してよ」
「受け売りなんで上手く解釈できないんですが、電車は乗り遅れたら二度と乗れない。人生も、チャンスの電車に乗り遅れたら二度と乗れない」
クダリはとてもつまらなそうだった。相づちの声からしてもう話を聞いてる態度ではない。
「クダリさん、私、過去に一人、すれ違ったままの人がいます」
「その人は、ポケモンを人間から解放するといった信念で突き進みました。私は違うといって対決したままいなくなりました。その他にも私には友達がいます。二人とも、途中迷ったりしてましたが今では自分の道をいってます」
「その時、私は何をしていたんでしょうか。みんなより人生の特急に乗った気分で、二人に勝った気でいたんです。二人とも、普通列車に乗って、乗り換えで迷っても自分の行き先を見つけたのに私は乗り換え駅でどの電車にのっていいか解らないんです」
「で?」
今まで黙ってたクダリが口を開く。
「で、って、私が今思ってることですよ」
「何を迷ってるか知らないけど、乗り換え駅なら来た電車に乗ればいいじゃん」
クダリが飴を嚼んだ。
「これだから子供は嫌いだ。迷ってる自分がかっこいいとか思ってるんだもん。乗り換え駅にいて迷ってるっていう自覚あるなら最初に来た電車に乗ればいいだけじゃん。君つかれる」
クダリが立ち上がる。座ってる時とは違って、その背丈は大きい。クダリを目で追うと、窓の外に灯りが見える。
「もうライモンシティに着くよ。それじゃ」
「あ、クダリさん!」
「何?」
「また勝負してくださいね」
「君が勝ち抜ければね。……直接申し込むんだから腕には自身あるんだろ」
クダリは車両のドアに手をかけた。そしてもう一度振り返る。
「君、名前は?」
「私ですか?私はトウコです」
「ふーん、そう。じゃ」
そのままクダリは白いコートと共に消えて行く。トウコはその方向に頭を下げた。
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バトルサブウェイの帰り。今まで辿ってきた道は何だったのか。見えない窓を見て主人公は何を思うのか。
幼なじみはそれぞれ目標をみつけたのに、主人公だけぽーんと放り投げられたようで、エンディング後はもしかしたら
クダリにはまだ会ったことないけど下りだからクダリさんにした。
【好きにしていいのよ】【最近サブマスが気になるのよ】
メッセージありがとうございます!
ポケモン嫌いは結構好きな題材でした。
「私」側からの一方的な視点の話であったのに、タブンネの気持ちを汲んでもらえてとても嬉しいです。
他者と暮らすにはある程度の知識が必要ということですね。
親は自分が世話するんだから「私」は知らなくていいと思ったのか、両親もあまり知識がないか。
どちらにせよ些細なズレでこんなになってしまったのです。
それは現実の人間関係でもそうなんじゃないかなあと思います。
切ないっていう感想もらえて嬉しいっす!
ありがとうございました!
【タブンネの半分は優しさでできています】
久しぶりにマサポケを覗いたら、なんとまあ「ポケモン嫌い」を書いてくださっていた……! ありがとうございます!
なんだかもう……切ないなあ。
タブンネに対する誤解で嫌悪を募らせる“私”と、嫌われながらも“私”と家族を気遣うタブンネの姿が……うわああああ orz
愛玩用として可愛がられていたが為に、父親の変調に気付いてもどうしようもなくて。母親までもが同じ変調を抱えてしまって……それもどうしようもなくて。見守り続けることしか出来なかった上に、“私”からは殺されそうになるほど憎まれて……うおおおおお orz
でも、“私”が悪いのかといえばそうじゃないんだろうなあ、と。情操教育の為に子供に生き物を与える、というのは割と聞く話ですが、子供が全て生き物に興味を持つかと言えばそんなことは無いわけで。当然興味を持てない子だっているし、そんな子からしたら突然現れた「家族の一員」なんて煩わしいだけなんでしょうね。
ただ、もし両親が“私”とタブンネを引き合わせる時にきちんとした説明をしていたら。もし“私”が自分でタブンネの事を調べようとしていたら。
誰が悪い、という訳でなく、無知故に起こった思い込みによる悲劇だと思うと……悲しいなあこれ……。
> 「タブンネってポケモン知ってる? 倒すとたくさん経験値をくれる、優しいポケモンよね!」
相手を瀕死に追い込まないと経験地が貰えないという事を考えると、この一言はなかなかキッツイですね……。願わくば、いつか彼女に真実を知る日が訪れますように……。
面白かった、という表現はそぐわないかもしれませんが、この作品を読めて良かったと心より思います。読了後も残る切なさが半端ないです。
書いてくださったことにお礼を申し上げます。本当にありがとうございました!
【げしげししていいのよ……だと……? とんでもねえ!!】
私が物心ついたときから、そいつはいた。ピンク色のタブンネというポケモンだった。
私の情操教育に、と大人しいポケモンを知り合いからもらってきたという。そのタブンネは両親の願いにそぐわず、私に触覚のような耳を押し当ててはどっかへ行くようなやつで、私も特にタブンネを好きじゃなかった。気に入らない時には叩いたりした。その度に両親はタブンネをいじめるんじゃないと怒っていた。私はますますそれが面白くないので、タブンネの耳を引っ張って遊んでいた。小さなタブンネは私のおもちゃだったと思う。
そのタブンネが最も懐いているのが父親だった。毎日触覚を背中に押し当てては父親のまわりで何かやっている。父親を取られた感覚もあって、私は本当にタブンネが好きじゃなかった。父親と遊んでる時に、ちらっとこっちを見てくるのも不快だった。
私の誕生日、こたつでケーキを食べていると、いつも一番に父親のところへ行くのに、触覚を押し当てただけで私の隣に来た。お祝いしてるよと両親は言ったが、私はタブンネにケーキを取られると思った。だから耳の触覚を引っ張った。タブンネはいつものような高い声で鳴いた。母親が私を叩く。タブンネがかわいそうだと。私はかわいそうじゃないのか。タブンネは母親のところに行った。何度も父親を振り返った。
次の日もタブンネは父親に近づこうとしなかった。肩が凝り過ぎて痛いと言えばタブンネはいつもならさする。けれどお気に入りのソファーに座ってても、父親が来るとこたつの下に潜る。ついに嫌われたんじゃないと母親は笑っていたが、正直タブンネがいなくてすっきりした。
数日後、父親は死んだ。心筋梗塞。心臓の血管が詰まる病気だといった。
原因なんて解り切っている。タブンネがやったんだ。ポケモンだから、人を病気にすることなんてできる。あんなに懐いていたタブンネがぱたっと懐かなくなった。そのあたりから具合が悪くなったんだ。
母親に訴えてもタブンネはそんなポケモンじゃないとしか言わない。絶対に嘘だ。タブンネはそんなことをするポケモンだ。誰も信じない。
タブンネは父親がいなくなると、私によってきて耳の触覚で触って来た。あれに触られたら殺される。いつも以上にタブンネを叩いた。しばらくタブンネは遠巻きに私を見て、それからまた近寄ってくる。叩かれることが解っててそれでもタブンネは近づいて来た。気持ちが悪かった。
私に近づかなくなったタブンネは、母に近づいた。けど私の姿を見るとそこで止まる。私が怖いらしい。
そうして母と私とタブンネは一緒に暮らしていた。タブンネの姿を見るだけでもむかついてくるが、母親はかわいがっている。私の背が大きくなり、タブンネを見下ろす形になって、ますますタブンネは私に近づいて来なくなった。
私は遠くの大学に進学することになり、実家に母と悪魔のタブンネを一緒にしておくわけにはいかないといった。けど母親は相変わらずタブンネはそんなポケモンではないとしか言わない。タブンネはじっとこちらを見ている。その青い目が小さな頃の思い出と重なってむかついた。あいつさえいなければ父親は死なずに済んだのに。
タブンネのことで母親とモメたのもあって、その日は早く寝た。
朝早く起きると、タブンネは耳の触覚で母親の背中を触っている。またあいつやっている。またあの時と同じことをやっている。今度は両手を添えて、背中をさするように触ってる。けがらわしい。
タブンネの耳を引っ張ると、いつもと違って散々抵抗する。短い手を振り回して私をつかみにかかる。突然の反抗に戸惑った。母親もタブンネを怒らすんじゃないとしか言わない。タブンネは母親の方しか見てない。
数日後、母親が倒れた。父親と同じ心筋梗塞だった。
もう間違いない。タブンネは二人も殺した。葬儀の間、ずっと私の隣から離れなかった演技も全てお見通しだ。お前のせいだ。お前がうちにいるから二人とも死んだ。私の両親を返せ。
私の後にくっついて、何のつもりだタブンネ。もうお前を庇う人間はいない。私は台所から包丁を取り出した。タブンネの目がおびえる。
一歩前に出た。タブンネが一歩下がる。命乞いのつもりか、涙を浮かべてる。ポケモンって泣けるんだ。人の親を殺しておいて、自分は命乞いするんだ。
包丁を振りかざした。タブンネは一目散に逃げ出した。閉まっていた玄関を開けて、後ろを振り返らずに去っていった。
悪魔はいなくなった。しかしあのタブンネを逃がしたのは私の気がおさまらない。
「タブンネってポケモン知ってる? 倒すとたくさん経験値をくれる、優しいポケモンよね!」
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他力本願スレより、ラクダさんの「ポケモン嫌い」から頂きました。
ブラックの図鑑を初めて見て、タブンネって脈で体調を知るんだーって思って、そういえば漢方も脈から診断するはず、そして癒しの波動ってかなりレベル高くないと覚えないんだなー。
そんなタブンネの妄想から始まり、「無知は虐待へつながる」という言葉をもらい、げしげしにいたりました。
ずっと前にDV的なものを書きたいと言ってたのがついに投稿できるよ!
私はゲーム中に出てくるNPCをいじるのが好きみたいです。
【好きにしていいのよ】【げしげししていいのよ】【げしりかえすから】
ばあちゃんちに遊びに来たらコ―タスが火鉢の周りでぼんやりしていた。
丁度あったかくなっていたのでそのまま火鉢にあたる。
ぺけぺけと呑気な足音をさせてぶちまるが餅の袋を持ってきた。
「ぷやぁ」
焼いてくれ、とでも言いたげに差し出してくる。
しょうがねぇなぁと3個ばかりだして金網の上に乗せる。まだ膨らむまでは時間がかかる。小皿と調味料を取りに行った。
海苔と醤油と、後はチーズなんかも良いかも。落とすとまずいのでぶちまるにはマヨネーズを持たせた。
戻ってくるとコ―タスが欠伸をかまして餅を睨んでいる。ふくらみはまだまだといったところか。
早く焼けろとばかりにぶちまるは耳を揺らしながら餅を眺めている。焦ったって焼けねぇっての。
餅を見るのに飽きたのか、コ―タスの背中をぱしぱし叩いて反応を見たりしている。遊べ―とばかりにコ―タスまとわりついているが、湯気亀は全くの無反応。
そうこうしているうちにぷっくら来た。醤油とマヨネーズをあえてソースを作っている間にひとつ、ぽんと弾けてぶちまるが飛びあがった。
チーズをかけて海苔に挟む。ほら、火傷するなよ。
猫の手は使えるくせに猫舌じゃないらしいぶちパンダははふはふ言いながらびよよよんと伸びる餅を頬張る。
コ―タスの分も焼くべきかなぁ、とぼんやり思いながら頬張った。
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余談 前田くんちのおばあちゃんちには火鉢があります。決してコ―タスの名前ではない。
マヨ醤油チーズ餅は至高。コレステロール値は保証しません
【好きにしちまえばいいのよ】
ん〜、カッキーン☆
まさかの書いてみた降臨にどきどきです。
今度は一体何が入ったんだ主人公の家の壁w
しかし自分の家の壁がこんなのだったら自分も確実にキレると思いますwww
>【もしもし、あたしキトラ!いま貴方の後ろにいるわ】
壁の中、だと……ごくり
(以下無限ループ
ありがとうございました!
「おい、そのピカ何とかの鳴き声はいいから、普通に喋れよこの不法侵入者」
「らーい」
おいおい今度はもっと言葉が通じないやつが来たぞ。ピカなんとかの鳴き声はもういいっていったらライなんとかの鳴き声にしやがった。
代わり映えのない芸しかもたねえ、つまらないやつだ。しかもずっと壁の中かららーいらーいと言っている。答えて欲しいのかこいつは。
「らーい」
義務的に俺が声を発すると、明らかに壁の中の空気が変わった。
「らーい!」
さらにテンションが上がる。こんなのテレビの中でしか見た事無いぞ
「らーい!」
俺に言えというのか。俺の答えを待っているのか。そんな恥ずかしいことできるか!!!!
「らーい!!」
「……らーい……」
「らい!?らい、らいらいらい!!」
おいおい一人でやり始めたぞ。俺はなんで壁に向かってこんな茫然と立ち尽くしてんだ。人の入らなそうな薄い壁の中から、足音がドタバタとする不思議。一人目の時もそうだったが、どうやって動いてるんだ。
「おい、いい加減にしろ!」
思いっきり壁を殴った。壁は黙った。気配も消えた。こんなことなら最初から叩いておけばよかったかもしれない。
「セイセイセイセイ!」
やたら落ち目の芸人の真似するやつだ。感心してる場合じゃない。
「いい加減にしろ不法侵入者!」
「イーヨー!」
ちなみにテレビは反対側だ。どうやって壁の中でこんなのができるんだ。疑問だらけだ。壁からギターの音色が聞こえる。
「マサラタウンはポケモンがいないって言うじゃなぁい!?」
「オチは解ったから黙れ」
俺の言葉はやっと通じたか、壁は黙った。いやむしろそれが正解だ。壁がペラペラこうも喋っては気味が悪い。
明日業者を呼ぼう。それがいい。そしてこの壁を解体して調べてもらおう。
そう決意した後ろで、壁が再び「らーい」と言った。
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「ピカー」に対抗できるのは「ライー」しかないと思った。
こんなんで書いてみたと名乗っていいのか物凄い疑問
本当に疑問。
しかし壁の中の言い出しっぺとして書かずにはいられなかった
【げしげししていいのよ】【もしもし、あたしキトラ!いま貴方の後ろにいるわ】
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