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ゲームやりながらカタカタしてたものが溜まって来たのでこの場をお借りさせて頂きます。上からチェレン×ベル、ヒュウ×メイ、カルム×セレナです。
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5月発行は延期になりましたが製作は進めています。 |
霧の深い山奥にあるここは、空気がとても美味しかった。
少々高いところにあるために空気は薄いが、深呼吸するだけで肺の中が洗われるような気分だ。崖を見下ろす線路に揺られ、ところどころ塗装の剥げたプラットホームに降り立つ。蚊との死闘を経ながら舗装されていない道を踏み締める。腐葉土の香りが鼻をくすぐった。
途中、遠くに見える橋をショートカットするべく谷を相棒のエアームドに乗って飛び越え、臓物が縮こまりそうな谷底の深さに息をのむ。
歩いて行ける場所にある、滝のしぶきがもろに降り注ぐ場所で水の香りを楽しんだ。そこで見た目も眩むような絶景は、滝が水の塊でなく飛沫を通り越し霧雨になるほどの高さである。
そこからさらに歩いて登ったところにある竹藪。そこには最後の休憩所があり、ロープウェイを使わずに来た物好きな観光客の疲れを癒すための甘いお菓子とお茶が購入できる。そこで得られる甘味に舌鼓を打って、眼前の石階段を眺める。歩く気力を削がれるような石階段の先に、目的の場所はあった。
表面に苔、石の隙間から雑草が生え放題の石畳の階段は、大抵霧が立ち込め表面も湿っている。登って行くうちに、霧の水滴なのか汗なのかわからなくなるほど体が熱くなり、頂上にたどり着くころには服がびしょ濡れだ。
重い荷物を背に乗せた私は、息も切れ切れ。思わず、ベンチでもない苔むした岩に座り込んでしまった。美しい緑色の苔を指で撫で、イーブイがリーフィアにでも進化できそうだなと考えながら、火照った体から熱を逃がす。汗は乾いてくれそうにないが、空気が冷たいので休んでいれば熱は逃げる。
呼吸も整い、熱も冷めてきた私は、時計についた水滴を拭って、時間を見たところで立ち上がる。
徐々に首の角度を上げながら歩き、出てくる客と正面衝突しないように見上げながら朱色に塗られた城壁のような分厚い門をくぐった。いや、ここは実際に城壁だったというべきか。分厚く高い壁、そして極端な角度の坂。空を飛べるポケモンでもなければ、正面の石段からしか攻められないここは、戦乱に巻き込まれた民間人たちが避難に来るような場所であった。
寺には、チャーレムやサーナイトと共に瞑想を続け、修験に励む修験僧たちが多数在籍しており、地形の助けもあって軍隊とてそうやすやすとは攻め入れない。今でこそ、景色の美しさと建物の荘厳さを仰ぎ見るための観光名所だが、かつてはここが生命線となった者も多いとか。
拝観料を払って門をくぐったその先には、今でもチャーレムがいる。と、いっても観光客の訪れる公衆の面前で瞑想や断食をしているようなこともなく、ポケモンには不釣り合いな大きさである人間用の竹ぼうきを、サイコパワーで操りながら落ち葉の掃除をしているだけである。
その子に会釈をして、石畳の上を歩く。漆喰の塗られた壁の高さと瓦の連なりを見ながら、内部へ。寺院の真ん中にある、腕が六本と顔が三つあるゴウカザルの像を拝顔し、かつて僧たちが断食の苦楽を共にしたという一室や、外部のならず者を探すための見張り台などを見て回る。
そうして一通り回ってみて、最後に残したのがここの目玉となる場所である。屋根のある石畳を土足で突き進むと、下り階段が顔を覗かせた。
天井は固めた粘土がむき出しで、そこから電気のランプが灯る。電線を引っ張って灯された橙色の頼りない光に照らされた、足元が闇にまぎれる手すり付きの階段を下り終えると、土臭く湿っぽく、僅かにかび臭い空気の中に、不気味に浮き上がるヒトガタ達。粘土で作られた物や、兵士たちの防具で作られた物。鍋や食器で作られた物。
木の破片で作られたものもあるし、布で作られたものもある。素材も大きさも無秩序に、そして無造作に置かれたこれらは、戦死者供養のためのヒトガタである。ここにたどり着く前に死んでしまった家族や友人を供養したいと申し出た者たちが思い思いの素材で作ったものだ。
それが行われた当時に作られたものは、一部の素材の物を除いて朽ち果てているが、今でも持ち込まれたヒトガタを、随時受け入れこうして安置しているのだ。
この国ではデモ行進や暴動が度々起き、その度に死者が出る。そういった機会に、当事者の家族がわざわざ来ることもあれば(デモを起こすのは大抵が貧民なので、わざわざこんなところに訪れる暇や路銀の関係で、当事者の来客は残念ながら非常に少ないが)それらの事件で心を痛めた人が勝手に供養を申し出ることがある。
戦場カメラマンなどがここを訪れることもあり、ここには新しいヒトガタが絶えることはない。風景の美しさも相まって、戦死者供養寺としても観光名所としてもそれなりに賑わっている場所だ。
私は、時計を見る。この寺院の開放日は、定期的にここのお話を聞かせてくれるイベントがあり、もうそろそろその時間である。
寺院の職員がベルを鳴らす。袈裟を着た坊主頭の僧が、揺れるロウソクを燭台に乗せて、しずしずと現れた。
「今日は、我らが寺院にお越しいただき、ありがとうございます。ただいま十二時を回りましたので、こちらに飾られたヒトガタと、それに関する逸話の紹介を行いたいと思います。お越しいただいた皆様は、携帯電話の電源を切り、また録音器具や撮影器具なども電源を入れることなく、御清聴をお願いします」
当然、この場所は撮影禁止で録音も禁止だ。メモや絵を残すことまでは禁じていないが、当然の決まりである。建前としては、『戦死者たちの霊がそういうのを嫌うので』だが、大部分の理由は商売への影響が出るという事もあるのだろう。
「さて、皆さん。準備はよろしいでしょうか? それでは、始めましょう」
ある程度は聞き及んでいるこの場所に伝わるお話。地下室に響く生の語り部の声に、私は改めて耳を傾ける。
時は、まだポケモンが超獣と呼ばれていた戦乱の世。農民たちは、若い者が戦に駆り出され、税として収穫を横取りされ、時には飢饉などが襲ってきて、その度に飢えに苦しんできた。戦争に巻き込まれると、田畑を踏み荒らされたりはまだいい方。酷い時には、冬の季節に敵に補給や休息を取らせないための焦土作戦で、家や田畑、森の木などを丸ごと焼き払われたこともある。
そうして、何もかも失って農民たちは多くが死に至る時代。この寺院が注目されたのも、そんな時代だった。
この寺院は当時、攻めにくい地形のこの場所で農作物を育て、自給自足の生活をしながら日々研鑽を積んでいた。俗世から離れた場所にあったここは、存在こそ知られていても訪れる者はほとんどなく。住処を失い故郷を離れた者たちでここにたどり着いたのは僅かであった。
このご時世だ。あまり多くは無理だが、寺の者は部外者を受け入れるのは慣れている。断食の経験も少なくないため、突然の来客で食事が少なくなろうとも、何ら不満は漏らさずに温かい食事を提供した。だが、それにも流石に限界があって、受け入れたはいいものの食事がなくなって結局、避難民が飢えの果てに死んだり、僧が真っ先に死ぬまで断食を敢行した事もある。
そうしたことは一度や二度ではなく、ある時死んでいった子供を供養するために親がミミロルのぬいぐるみを作った事がきっかけで、戦死者供養が始まった。避難しに来た者や、それに関連する死人が出た際、放っておけば死んでしまうような怪我人や病人、子供や老人を故郷か道端かに置いて来た際には、誰ともなくヒトガタを作って供養するようになっていった。
ヒトガタと言いつつも、前述のとおりミミロルの様な可愛らしいぬいぐるみが置かれたこともあるが、供養するという目的に変わりはない。せめて、戦乱に巻き込まれ、無念のうちに死んでいった者たちが安らかに天道へ導かれるように。それを願って、どんどんとヒトガタは増えてゆくようになったのである。
だが、戦死者の供養というものはそこに魂がなければ意味がなく、そのためなのか、このヒトガタにも魂が吸い寄せられる。それらはもちろんこのヒトガタ達の目的である戦死者やそれに準ずる者たちのそればかりで、魂は皆一様に穢れていた。
戦争が終わって欲しい、平和な世の中が欲しいと前向きな思いを残して死んだ者はまだいい。そういった者は、悲しみを癒してやれば、穢れも浄化してやがて風に溶けてゆく。だが、誰かを殺してやりたいとか、復讐してやりたい。そして、生き残った同胞に嫉妬し、道連れにしたいと思って死んだ魂は、程度によっては性質が悪くなる。
憎悪の念を抱えて死ぬことで穢れた魂は、簡単なもので病を呼んだり、事故を呼び込んだりといった疫病神に成り下がる。それですら怒りが治まらなかったり、似たような境遇、想いを抱えた魂と集合した場合は、非常に強い怨念となってヒトガタに宿ることがある。非常に凶暴なジュペッタとなって、この世に出るのだ。
本来は、大切にされたぬいぐるみに宿った魂が、捨てられたことで悲しみや憎しみを抱き、それが憎しみの感情に惹かれたカゲボウズと触れ合うことでジュペッタとなるものだ。そのジュペッタはぬいぐるみの思い出と憎しみを受け取って本能的に元の持ち主を探し回るが、そういった本来のジュペッタが憑依するぬいぐるみには根底に愛がある。
愛を受けたからこそ、それを捨てられた憎しみや悲しみが生まれるのだ。
けれど、ここで生まれたジュペッタたちには、憑代となったヒトガタに愛なんてものは欠片も存在せず、あるのは憎しみに塗れた魂のみ。死ぬときに誰かを強烈に呪った魂は、その想いだけに偏重し、生前人間だったころに受けた愛も、友情も絆も全て忘れてしまっている。
結果、新しいヒトガタを安置しに来た僧を無残に殺してしまい、寺院に在籍していた僧兵やチャーレムなどで鎮圧するだけでも、手酷い怪我を負ってしまったものだ。鎮圧するだけしたはいいが、殺してしまっても、結局呪いはここに燻ってしまう。それどころか、他のヒトガタに乗り移ってしまえばさらに呪いが凝縮されて厄介なことになりかねない。
結局、そのジュペッタはポケモンたちの力で急造で掘り進めた地下室の中へ厳重に封印された。丈夫な縄に経文を刻み、呪符を用いて幾重にも結界を張り封じ込めた厳重な警戒の元で、ジュペッタは動くことも出来ずに縛り付けられる。その状態では憎しみは癒えるどころか増すばかり。根本的な解決にはならなかった。
その騒動で傷を負った僧たちも怪我が癒えた、ある日のことである。この地に凶星(まがつぼし)が落ちた。この地域では、流れ星は凶兆とされており、それがこの地に落ちたという事で、住人達は大きな不幸の到来を予想していたのだが。不思議と、邪気のようなものを感じることはなく、超獣たちは怯えるどころか、むしろ星が落ちた場所へと興味深げに視線を向ける始末である。
この辺にも生息しているはずのアブソルは、ジュペッタの時こそ寺院の周りにワラワラと集まって激しく威嚇してきたが、凶星が落ちても騒ぎ立てることがないという事は、凶兆というのはもしかしたら全くの杞憂なのかもしれない。
何があったのかといぶかしげな寺院の者たちは、超獣を二匹と人間を二人派遣して、問題の場所を探ることとなった。寺院の入り口となる巨大な階段の反対側には、リオルの足で一日かかる距離、向こうに何もない山脈が広がっている。
その広大な山脈の樹海を踏み入った先に見たのは、黄金色に光る星型の頭部を持った超獣であった。
首から下が布に包まれているような見た目で、星型の頭部には青い短冊のような器官。目の下にある涙模様や、陶器のように白い肌が特徴的な見た目のその超獣。子供に化けた妖魔のたぐいだと疑わなかったわけではないが、どうにも連れてきたチャーレム達の様子を見る限りでは、全く敵意もないようだ。普段は警戒して他の超獣に接するはずのチャーレムが、ほとんど無警戒に近寄ってゆくさまは、僧たちも困惑した。
二匹のチャーレムは、すやすやと眠るその超獣に近寄り、つんと頬を触る。何の抵抗もなく沈み込んだ指を離すと、頬がぷるんと揺れて元の形に戻る。無警戒に眠っている超獣は不快そうに顔をゆがめ、うんうんと唸る。僧たちも警戒する必要がないと感じて近寄ってみると、その超獣はゆっくりと目を開き、布に包まれた首から下を外気にさらす。
四肢は申し訳程度についているだけのような短いもので、腹には一本の横筋。人間の赤子よりも赤子らしい頭でっかちの姿があらわになり、体を包んでいたぬ布のようなものは、襟巻きに近い形状になって首から背中に垂れ下がる。
目を擦った後にぱっちりと開いた目は、真ん丸な瞳が、霧の中で光を照り返して見える、それは綺麗な瞳であった。
「こんにちは」
霧のようにふわふわとした、頼りない声が頭の中に鳴り響く。どうやら、念話のようだ。
「こ、こんにちは」
僧の一人が、戸惑いがちに答える。
「おや、元気がないね。君も寝起き?」
「いや、そういうわけではないが……」
挨拶を返した僧が、返答する。
「すまぬ、こんにちは」
もう一人の僧が、頭を下げる。
「うん、こんにちは。君達はだあれ? 僕はジラーチ。昔はそう呼ばれていたんだ」
目の前の超獣は、ジラーチを自称する。きりもみ回転をしながらふわりと上に舞い上がったかと思うと、今度は滑空して二人の頭上に。
「私は、ツァグン……後ろの山を登ったところにある寺院に住んでいる」
後に挨拶した僧が、頭上を回るジラーチを眺めながら自己紹介する。
「俺はタークです、同じ場所に住んでおります……よろしくお願いします……」
続けて、先に挨拶したほうが自己紹介をする。
「ふぅん、二人とも……よろしく」
言いながら、ジラーチはツァグンと名乗った僧の胸元に飛び込み、数ヶ月は洗濯していないのであろう汗臭い袈裟に顔を埋めてから上目づかいでツァグンを見つめる。
「僕はジラーチ。望みを叶える者……君達二人は、何か望むことはあるかい?」
ツァグンが自分を抱きしめるのを感じながら、ジラーチが問う。
「望む、事……と、言われても、なぁ?」
「私に振られましても……」
上目づかいをしたまま唐突なジラーチの質問に、タークがツァグンに話を振るが、ツァグンも唐突なこの質問には答えを用意していない。
「ふぅん……」
がっかりしたような含みを持たせて、ジラーチはツァグンの腕からすり抜けた。
「望めば、どんな願いだってかなえられる。それとも、君達は欲がないのかな?」
「欲……は、無くなるようには努力しているが……」
タークは口にしてみたはいいものの、様々な願いがここで浮かんでくる。断食がしんどいのでたくさん食べたいとか、避難してきた女性に触れてみたいだとか、実に生物的な欲求が。しかし、そんな願いよりも、大事なのは平和やら、飢えをしのぐための豊作祈願といった、民のための願いではなかろうか。
願わくば自分たちの飢えもなんとかしたいものだが、仏道に属する身としては、私利私欲のために願いを使うわけにはいかないし、何でもと言うほど凄いのであれば、なおさら相談なしに、勝手な願いを叶えることは出来ない。
「皆に、相談したほうがよろしいでしょうかね?」
「そうだな、俺達が勝手にどうにかできる話題でもなさそうだ」
ツァグンの提案に、タークが賛成する。
「すみません、ジラーチさん。ちょっと、私たちの住処まで来てもらってよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ。よろしくね、お二人さん」
結局、その場で願いを叶えることはせず、ジラーチは寺院の中まで連れてゆかれることになる。正体不明の超獣を連れてきたことで、凶星の言い伝えを信じる者たちは気味悪がって近寄るのを恐れたが、一番最初の願いで、その恐れも羨望のまなざしに代わる。
と、いうのも。避難してきた農民の女性が一人、肺の病を患っていたのだが、ためしにと願いを投げかけたところ、咳がぴたりと止まってしまったのだ。死んでしまったのではないかと思うほどの早業に、最初は誰もがいぶかしげであったが、咳が再発するような様子もない。
ジラーチの愛らしい見た目の良さも相まって、夜になるころには皆がちやほやするようになってしまった。だが、同時に問題も出てきた。
「あんな願いを、何個もかなえられるのか?」
さっきまで病人だった女性の夫が尋ねる。
「んーん」
ジラーチは首を横に振った。
「僕がかなえられる願いは三つだけ……僕の頭についている短冊の数と同じ。だから、叶える願いは慎重に決めようねー」
「そ、そうなのか……」
「僕らジラーチは、皆の恨みや憎しみ、悲しみや恐怖といった、嫌な気持ちを幸福に変えるんだ……でも、そういう気持ちを、僕の中に取り込むにはとても時間がかかるの……だから、そのための制限。あんまり大きなことを願いすぎると、僕の中の憎しみの力が足りなくなって、思い通りに願いをかなえられないからね。
それに、どうしても浄化しきれない嫌な気持ちもあるんだ……そういうものは、願いをかなえ終えた後に眠って、魂を空に飛ばして宇宙に流すんだ……太陽の光ならば、どんな嫌な気分も浄化する力があるからね。だから、僕たちは願いを叶えた後に千年も眠るの」
「憎しみの力……か」
話を聞いていた者たちが、意気消沈したように声を挙げた。
「そんな物、彼らは無尽蔵に取り込んでゆくというのに……なんというか、世の中適材適所とはいかないものだな」
僧である彼が思い浮かべるのは、地下室に隔離、封印したジュペッタ達。ジュペッタになりかけのヒトガタも一緒に、軒並みあちらに封印しているので、もはや地下室は魔窟と化している。迂闊に入り込めば拘束されていても、張りつめた殺気で死んでしまいそうなほど、異様な雰囲気に包まれているのだ。
「まてよ……」
と、傍で聞いていた僧はひらめく。残る二つの願いは、一つは豊作を祈願するとして、もう一つの願いをどうするかを決めかねていたのだ。戦乱の世を終わらせるというのも考えたし、それが最も良い願いだと思っていたが。
大量の憎しみを抱いたジュペッタ達の憎しみを抱えている。もしもその憎しみを願いの力に変えることが出来るのであれば、それはとてもすごい事なのではなかろうか?
「出来るよ」
尋ねてみると、ジラーチは可能だと答える。
「その気になれば異世界や未来に誰かを送ることも出来るし、人間をゲンガーみたいな超獣に変えることだって出来る。だから、僕の力でそのジュペッタをジラーチに変えることだって不可能じゃないよ」
何とも魅力的な事をジラーチは教えてくれた。そのことをこの寺にいる者たちに話すと、ジュペッタの封印に従事していた者たちは、ようやく結界の様子に神経を張り巡らす生活から解放されるかもしれないと、非常に喜ばしい表情を浮かべている。
結局、残る二つの願いは豊作祈願と、ジュペッタをジラーチに変えることで、憎しみの力を消費するというものであった。皆の見ている前で豊作の願いをしてみたが、特に様子は変わらず。もちろん、いきなり草木や作物がニョキニョキと生えてきたら気味が悪いわけだが、目立った変化はすぐには訪れなかった。
そして、最後の願い。ジュペッタをジラーチにするという願いだ。封印されたジュペッタ達は、原種とは比べ物にならないほど凶暴なため、腕に自信がある僧と超獣のみを連れて、封印された地下室の前へ。
ジラーチに願いを告げてからその中に入ると、中ではジュペッタ達が山吹色の淡い光に包まれながら、次々と元のヒトガタへと戻ってゆくではないか。そして、淡い光は一ヶ所。ひときわ強力な封印が掛けられたジュペッタの元へと集まり、まばゆい光となって収束する。
地下室の中に太陽が出来たと見まがうほど強力な光が収まると、そこにはジラーチとは似ても似つかない、長さの違う直方体の結晶を束ねたような紫色の宝石がふわりふわりと浮かんでいた。これを見届ける役にも参加していたツァグンとタークは首を傾げていた。
「君の願いは叶えたよ……さて、僕はもう三つの願いを叶えたことだし……もう、眠るね」
「ちょっと待ってくれ……ジュペッタのあの姿は?」
「繭のようなものだよ」
「繭?」
ジラーチの返答にオウム返しに僧が尋ねる。
「うん、僕も、今でこそこんな姿だけれど、ずっと眠っている普段はずっとこの姿なんだ。大丈夫、あの子はもうすぐ目覚めて、僕と似た姿になると思うから。それと、僕ももうすぐあの姿になる……お休み」
「お、あぁ……もう眠るのか? ずいぶんと急ぎ足だな……」
「うん、ごめんね。また千年後……」
ジラーチがゆっくりと目を閉じる。彼を包んでいた淡い光は徐々に激しい光となって、紫色の結晶に代わってゆく姿を覆い隠した。そして、紫色の結晶に代わった体は、抱いていた手を煙のようにすり抜け、天井も同様に水面に飛び込むかのようにすり抜け、天へと昇って行った。元となったジラーチが天球へと還って行くのを見守り、この場に集まった僧たちは、まだ繭の状態のジラーチに注目する。孵化の時を待つ卵を見守るような面持ちであった。
やがて、繭の状態のジラーチは、白い光を放ってジラーチとなる。体を黄色い襟巻きで包むことなく、最初から覚醒した状態でのお披露目である。
顔も体型も色も、先程天へと還って行ったジラーチとほとんど相違なく、言われなければ違いには気付かないだろう。
「……僕を憎しみから救ってくれたんだね」
第一声がそれであった。
「ずっと、辛かったけれど……君たちのおかげで救われたよ。ありがとう……」
そのジラーチには、人間を見かけたら問答無用で襲い掛かり、そして犠牲者の一人を原型が分からなくなるほどに切り刻んだような、恐ろしいジュペッタの面影はまるでない。穏やかな、本当に穏やかな、赤子のような笑みをたたえるジラーチであった。
「今度は、僕が君たちの願いを叶える番だ……さぁ、願いを言ってよ」
「願いか……」
「そうして、僧たちが願ったのは、戦乱の世を終わらせること。ここのヒトガタ達が、もうジュペッタにならないようにすること。そして、ここに避難してきた人たちの下山の無事……その三つでした。
その三つの願いを叶え終えたジラーチですが、元がジュペッタなおかげなのか、そのジラーチは眠ることはなく、願いを叶えた見返りにと自分に名前を付けてもらうことを望みました。僧たちよりシャル=ノーテと名付けられたジラーチは、名前を付けて貰えたことにお礼を述べた後、山奥のどこかへと消えてしまったそうです」
長い話を一区切りつけて、語り部はため息をつく。
「このジラーチのおかげで、今でもこの寺院にジュペッタが発生することもなく、戦死者供養に相応しい聖域を保っております。憎しみのような、後ろ向きで暗い感情から生まれた呪いを、ジラーチは前向きな想いを叶える願いに変える……まさしく、慈愛に満ちたポケモンと言えましょう。
この寺院には、常に戦死者たちの怨念が渦巻いておりますが、それらを救えるのは神の愛以外にありえません。我らも欲を捨て、見返りを求めずに人に親切できるようにと頑張っておりますが、ジラーチはそれを生まれながらにして出来る、素晴らしいポケモンです。
我らも、生まれながらになどという贅沢なことは言えませんが、出来る事ならば、争いが起こらない世を作るべく、こんな寺院が必要なくなるような世界にするべく、愛を心に持って生きてゆきたいものですね。これで、私の話は終わりです」
最後に深くこうべを垂れ、語り部が話を終える。
「なにか、質問はございますか?」
私は手を挙げ、真っ先に指名される。
「そのジラーチ、今もまだどこかに生きているという噂ですが……どう思いますか?」
私が尋ねると、語り部はつばを飲み込んで質問に答える。
「今でも、この寺院ではヒトガタが突然行方不明になることがあります。それはきっと、どこかへと消えた元ジラーチの仕業じゃないかと考えられています。たまに、そのジラーチを求めて冒険者がここに訪れますが……貴方のその大荷物は……」
「あぁ、退屈を打ち壊しに来たんだ。いや、夢の中でジラーチに誘われちゃいましてね。旅行する場所も特に決まっていなかったので、ここにしたんです」
階段を上る時は捨てていきたかったくらいの大荷物。これは、山の中に踏み入るためのもの。
「そうですか……たまに遭難者も出ているので、お気を付けてください」
語り部が私を気遣って言う。大丈夫、私は旅慣れているつもりだから。
「ありがとうございます」
そうして、質問タイムは続く。私はそれを聞き流すように右から左へ受け流し、これからの旅路を想う。ジラーチが本当にいるのかどうかはわからないが、私の相棒であるエアームドと旅が出来るなら、結果なんておまけのようなものだ。
語り部との質問タイムも終わり、私は寺院を後にしてこれから踏み入る山脈を見下ろす。
「神の愛、か……」
見返りを求めない愛。憎しみを、喜びに変える力を持つというのはなんと素晴らしい事であろうか。
「でも、私はお前を愛するだけで精いっぱいだがなぁ……それが本当なら、すごいポケモンだよ」
なんて、隣を歩くエアームドの首に右手を回し、顎を撫でながら言う。彼女は気分がよさそうに首を傾け、私の顔に頬擦りをした。霧が出初めているせいか、すでに濡れている彼女の体は頬を湿らせる。
「でも、こういう風に平和に暮らせるのがそのジラーチってポケモンのおかげならば、良いもんだよな」
そのジラーチのおかげなのかは知らないが、この土地は自然災害も減り、それに応じてアブソルも姿を消したそうである。
この平和がジラーチのおかげならば、それを壊さないような無邪気な願いでも願ってみるとするかな。
「さ、いくぞー」
まずは山を下なければならない。空気の薄いこの場所で上りを飛ばせるのは負担がすさまじいのでやらないが、滑空するくらいならば彼女への負担も少ないので、湿った風を切りながら彼女の温もりを感じよう。
足爪で獲物を掴むフリーフォールの要領でトレーナーを運べる縄梯子のバーをエアームドに握らせ、私は珍しく霧の晴れている山肌を翔け抜けた。
とあるオタコンと、とある小説wiki第二回短編小説大会に出馬したお話。
オタコンには前編だけ投稿。短編小説大会には後編だけ投稿していました。
砂糖水さん
これはひどいお話になりました。
褒めて頂きありがとうございます。フミん節って…w
実は、最初は役割という短編と全く関係ない独立した話だったのですが、マスターボールのことを書いてからオチが思いつかず放置していました。ふと思いついて続編モノにした結果がこれである。
何故社長がわざわざあの男を探し出したのか、という部分を補う機会があって良かったです。
こちらこそ、いつも読んで頂いてありがとうございます。機会があったらまたお願いします。
フミん
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「お腹空いたな」
「もう昼飯時だもんなあ」
「ハンバーガーでも食べようかな」
「えー、もうちょっといいもん食おうぜー」
「……確かクーポンがあったはずだし」
「あーそっかー、それじゃあしょうがないなー」
相棒は、鞄から畳んだ地図を取り出した。
「次の町はシオンタウンか」
「イワヤマ抜けなきゃいけないんだな」
「ちょっと遠いなあ」
「大丈夫だって。お前のポケモン強いんだからさ。ま、あんまり無理させるのはよくないけどな」
「薬を多めに買っていくか」
「それがいいな。一応、あなぬけのヒモも買っておいたほうがいいんじゃないか?」
「わざマシンあるから……」
「ああ、そういえばこの間もらってたな」
「資金も十分だ」
「準備万端だな」
「とりあえず、ショップで売ったり買ったりしてくるか」
「おう」
相棒と俺の出会いは数年前。
場所は俺たちが生まれた町の小さな公園。ベンチと砂場とブランコしかない。
俺はいつもそこにいたんだけど、その日こいつがひとりでやってきた。半べそかいたような情けない顔ぶら下げて。
辺りを見回して、そいつはつぶやくように言った。
「誰もいないのかな?」
「ここにいるぞ」
俺はそいつを呼んだ。そいつは俺の近くにあったベンチに座った。俺も隣に座った。
「お前、いつも他の奴と一緒だよな? 髪の毛立ててる奴。今日はひとりか?」
「…………」
そうしたら、そいつが涙をぼろぼろこぼし始めた。
「ああぁぁごめん、悪かったって。泣くなよ。……ケンカでもしたのか?」
こいつとその友人の仲の良さは、何回か見かけたことがあるからよく知ってる。
まあ、言っても子供同士だ。ケンカくらいするだろう。
「やっぱり、僕は意気地無しなのかな?」
「そんなこと言われたのか?」
「でも、町の外に出るなんてやっぱり怖いよ」
「オイオイ、そりゃ危ないだろ」
「この辺りにはポッポとかコラッタとか弱いのしかいないから大丈夫って言ってたけど」
「あのなあ、ポケモンってのはどんなに小さくて弱そうに見えても、危ないもんなんだよ。お前、コラッタの集団にあの前歯で一斉に襲いかかられるの、想像してみ?」
「……やっぱり危ないよ」
「そうだよ。な? だからさ、どうしても出たいんならあの博士だか何だかに頼んでみろ」
「もう少し大きくなったら、博士にポケモンをもらえるんだ」
「おぉ! 最高じゃないか!」
「だからそれまで待とう、って言おう」
「そうそう。お前はいい子だな」
少し明るい表情になったそいつを見て、俺はため息をついた。
「あぁ、俺もやっぱり、ポケモン持つべきだったんだよなぁ……」
「あいつ、やっぱり旅に出るかな?」
「そりゃ出るだろ絶対」
「僕が行かなくても、やっぱり行くんだろうなあ……」
「俺も、友達みんな旅に出ちまったよ。ポケモン持って」
「それじゃあ、独りぼっちだ」
「ああ。あれからずっとな」
「……寂しい」
「わかってくれるか」
「独りぼっちは嫌だな」
「本当にな。でも、俺の方こそ意気地無しだったんだ。『ポケモンをください』っていう、たったそれだけが言えなかった」
深いため息をつく。そいつもため息をつく。
しばらく何か考えている様子を見せて、そいつはつぶやいた。
「……やっぱり、僕も町を出る」
「……そうか。お前も行っちゃうのか」
そうしたら、そいつが言った。
「一緒に旅に出よう」
「……えっ?」
「いいよ、って言ってくれるかな?」
「当たり前だろ!」
ずっと独りぼっちだった俺は、そいつの言葉が本当に嬉しかった。
その日から、俺と相棒はずっと一緒だ。
「それにしても高いタワーだなあ」
「これが全部お墓なんだよな」
「町の人は幽霊が出るって言ってたけど……」
「やっぱりあのカラカラのお母さんだろうな」
「ねえねえ、あなた」
青白い顔をした女の子が、声をかけてきた。
「あなた、幽霊はいると思う?」
「そりゃーいるに決まってるだろ! な?」
俺は相棒の右肩に手を置いた。
すると、相棒は笑って言った。
「いないよ」
「えっ」
「いるわけないじゃんそんなの」
青白い顔の女の子は、苦笑いを浮かべた。
「あはは、そうよね! あなたの右肩に白い手が置かれてるなんて……あたしの見間違いよね」
当たり前だろ、と相棒は笑った。
俺はそっと、相棒の右肩から手をどけた。
少年がタワーの中へ入ると、幼馴染がとある墓石の前に座っていた。
「おう、久しぶりだな」
「やあ。……それって、もしかして」
「……ああ。旅に出て最初に捕まえた相棒」
「そっか……じゃあ僕からも」
少年はリュックの中からミックスオレの缶を取り出し、墓前に置き、手を合わせた。
「呆気ないもんなんだな。命が終わるのなんて。もう少し早くポケセンについてりゃ……」
「ポケモンはずっと、僕らの代わりに戦ってるんだもん。気をつけないといけないね……本当に」
「気を抜きすぎてたな。強くなったから、多少は平気だろうって……」
「ポケモンは本当に見かけによらないからね」
幼馴染は深いため息をついた。
「……悪かったな。小さい頃、嫌がるお前を無理やり町の外に連れていこうとしたことがあっただろ」
「ああ、懐かしいなあ。そんなこともあったね」
「ポケモンの強さとか、危なさとか、理解してりゃあんなことしなかったのによ。しかも断ったお前に散々悪口言ってさ……」
「いいよもう。昔のことだ」
「あのあとじいちゃんに、昔ポケモンを持たずに町を出て、死んだ奴がいたって聞いてさ……俺、本当に……」
「いいってばもう。おかげさまで僕は元気だよ。一番の親友のおかげで、楽しい旅に出る決心もついたし」
「……そうかい」
幼馴染と少年は、顔を見合わせて笑った。
「……やっぱり、僕も町を出る」
(……そうか。お前も行っちゃうのか)
「一緒に旅に出よう」
(……えっ?)
「いいよ、って言ってくれるかな?」
(当たり前だろ!)
「でもさ、お前、昔っから言ってるけどさ、ひとりごとを延々とぶつぶつ言う癖は直した方がいいと思うぞ。気持ち悪いし」
「いやー僕も直そうとは思ってるんだけどねぇ。なかなか直らないんだよなぁこれが」
「きっと大丈夫だよ。あいつは僕の、一番の親友なんだから」
(これからはずっと一緒だな、相棒!)
(2012.7.27)
目次
“プロフェッショナル”に関わる5つの話
・トンカツ定食屋「切り切り亭」
・幸せな悪夢
・ザ・プロフェッショナル
・配達屋のペーゼさん
・とある犯罪捜査コンサルタントの話(書きおろし)
“あの日”に帰る3つの話
・廂間―ひあわい―
・てく〜いやしん坊ラルトスの話〜
・御都合主義(書きおろし)
“意思”にまつわる4つの話
・B's Will〜『B』の意思〜
・NOVELTYPE、な一日
・テングのウチワ
・電車の中(書きおろし)
こんな感じでいいのかなぁ……。全部一つにしたら長いかな。
ま、妄想だしいっかw
個人的に灯夢ちゃんの写真集が……いやなんでもないでs(ドキャドキャバキャバキャグシャグシャ、ゴスゥ!!)
自分のじゃなくてもいいですか(殴
・師匠の作品集(タイトルはやはり師匠につけていただきたいので仮で(苦笑
目次・・というより入れていただきたい作品
・雪の降る夜
・風合瀬の宴(続きに期待してるのですがまだですか師匠ー!
・あるアウトローの軌跡
・船鬼始末
・Shall We Dance?
・竜の舞
師匠がこちらで投稿された奴はざっとこんなもんかな・・・?
【書いてみた】の奴は省かせていただきましたが・・。赤い月はあっちに載るし。
帯はやっぱり誰か著名な方に書いていただきたい・・!
俺が書いたらただの師匠へ愛を叫ぶコーナーになりそうだから(爆)
ついでにもう一冊
・あっちの掲示板の、あれ。
師匠にはこれで分かっていただけるはず。
むしろこっちだしてください。
師匠が出さなくても俺が個人でまとめる可能性もありますが(爆)
※妄想っつーか願望
★その1:『巳畑の収穫祭』(仮)
【帯】
やっちゃいましたっ☆
【内容】
第三回のポスケコで撒いた種が育って短編集ができました。
【目次】
・送贈-SouZou-
・あわにのって
・あかむらさき
・One daybreak One yell!
・カボチャンデラ
・巳の這いずりながらの後書き
頑張ってイラストも描きま(以下略)
【特典】
未定(コラ
【価格】
テイクフリー(え
★その2:『お狐様のもふもふガーデン』(仮)
【帯】
買ってくれた奴はもふもふ。
買ってくれなかった奴は鬼火でもふもふ。 by長老
【内容】
ある日、長老と呼ばれているキュウコンに言われた一言。
「狐が出てくる物語九つ書けー! 書かなきゃ、鬼火でもふもふの刑じゃ♪」
「いきなりクライマックス!?」
そんな無茶振りを振られた巳佑の運命は――。
【目次】
・『もふパラ』から見た世界史
・語り狐
・雨宿りも悪くない。
・こなゆ。(ただしポケスコに提出したものから大改稿、とりあえず最後のシーンとか削ります)
・ねつき屋(仮)
他四作品の予定。
「九人から話を集めるのも面白そうじゃのう、ほほほ♪」
「それ某イラスト集じゃ(欲しかったなぁ……というのはここだけの話)
【特典】
長老があなたをもふもふして狐にしてくれるよ!
レッツ、もふパラデイズ!
【価格】
「99円なんてどうじゃ?」
「まさかの(以下略)」
★その3:『狐日和』
【帯】
鳩尾崩壊注意の高校生活に青年、大ピンチッ!?
【内容】
関西弁のロコンさんがひたすら鳩尾を撃つお話です。
……おや誰か来たようだ(ドキャバキャグシャ!!)
【目次】
『未定』と赤い字で書かれている……。
【特典】
灯夢さんのピンナップでいいんじゃ。
なんなら裏表紙は灯夢さんのセクシーな写真でいっぱいにしてもいいし。
……おや誰か来たようだ(ドキャドキャバキャバキャグシャグシャ、ゴスゥ!!)
【価格】
『みたらし団子』と赤い字で書かれている……。
*全て、あくまでも妄想です。タブンネ。
冒険してた奴、ちょっと来い 〜まとめて読む掲示板〜
目次
・【幼馴染は】暇だから幼馴染の女に安価でメールする【マジ化け物】
・幼馴染にバトルサブウェイに強制連行されているんだが
・【団員】組織を作って世界征服を目指す【募集中】
・冒 険 し て た 奴 ち ょ っ と 来 い
…他、全8話を収録
舞台はインターネット。
「改造」から「モンスターボールの使い方」までを手広くカバーする巨大掲示板群。
今日も好き勝手に罵り合い、慰め合い、笑い合う住人達。
そんな日常の中、時には笑いあり、涙ありのドラマが生まれることも……?
話題を集めたスレッドをまとめて書籍化!
※タイトルは適当です
※話数も適当です
※スレタイも適当です
※ネタがありません
● タイトル「世界と日本の名作集」
◇目次:
1.イソップ寓話より、北風と太陽
2.浦島太郎
3.桃太郎
◇背表紙:
嘘じゃない! ホントなんだ! 一体どこにルナトーンが出てるってい(ry
じゃあ、私はロングのシリーズを。
「ポケリア〜ポケモンがリアル世界にやってきた!」
(帯)舞台はオオサカ。そこで巻き起こる、主人公とその友人、そして彼らのポケモン達による日常、悪党とのバトル!
これまでの連載に加え、「書いてみた」シリーズでのスピンオフ版、番外編、さらに書き下ろし作品も数本!
皆様、是非お買い求めください!
じゃあ皆様ご存知?のシリーズを。
『幻影淑女と死神紳士』
・『少女から淑女へ。一人と一匹が織り成す不思議な物語』(帯より)
・今までのファントムシリーズに大幅書き加え、更に書き下ろし長編もつけました。
『黄昏婦人の優雅な日常』
・『紅茶と一緒にお楽しみください』(帯より)
・黄昏堂にやってくるお客や、曰くつきの商品の説明などが沢山入ったエッセイ集。
優雅な日常 目次
・トワイライト
・狐執事(書き下ろし)
・ローレライ
・時をかける少年(書き下ろし)
・黄昏色の目の人形(書き下ろし)
おまけ:商品の調合リスト
『again』
・『芸術家とは爆弾である。特に周りが見えなくなった場合、それは時にとんでもない出来事を引き起こす』(キャッチコピーより)
・マスターの子供時代、父親、そしてライバルである検事兼芸術家。時を越えて再び事件が蘇る。
[出せる日が来るといいな]
せっかくなので帯の煽り文を書いてみる。
ポケモン好きから廃人まで満足できる、冒険小説の決定版! 全86話のボリューム、緻密なダメージ計算、駆け抜けるストーリー……。夜のお供に是非。
大長編ポケットモンスター、上下巻セットで990円。お申し込みは当サイトまで。
自分の小説で単行本を出したら……?
そんな妄想をしてみようというスレです。
タイトルや目次、
カバーの紹介文や、帯の煽り、あとがきなんかを妄想してみませんか?
書けば案外実現するかも?
見ず知らずの――よい子限定ですが――人に黄金をプレゼントする。
そんな行為を半世紀近く続けてきたぐらいなグッドでアルティメットでウルトラなおじいさんがおりました。
ただ、この行為はアルティメットにグッドすぎたのでしょう。残念なことに完璧なまでの球体に加工した黄金を配るおじいさんの元にはあまり人が近づいてきてくれないので、なかなか黄金を配ることはできませんでした。
それでも、おじいさんはめげませんでした。
いつだっていいことは受け入れにくいものなのです。
いいことをするのも受け入れて協力するのも恥ずかしい、面倒くさい。そんな世の中だということを知っているからです。
街を綺麗にしようという清掃活動の呼びかけも暴力のない世界を作ろうと呼びかけることも人はいつだって見ないふりをするものなのです。それがたとえいいことだと無視している人も知っているのにも関わらず、に。
それと同じです。
だから、おじいさんはめげません。近くを通る人に声をかけ、きんのたまを配ります。
悪い人だった昔の自分を悔いるようにいい人になろうとおじいさんは頑張り続けました。
そんな行為を続けて、早数十年。
おじいさんはあるとき、ふっと疑問を覚えました。
自分はこのままでいいのだろうか、と。
その問いはもう幾度も通り過ぎた道でした。
見ず知らずの人に配っても、幸せになるのはきんのたまを受け取った人だけ。おじいさんの目的は世界中の人が幸せになることなのに、それではいささか範囲が小さすぎるのではないか、と。
そんな疑問が浮かぶたびにおじいさんは、千里の道も一歩からと言う言葉を胸に刻み続けて、その問題を解決してきましたが、今日はそうはいきませんでした。
配り続けてきたきんのたまの数は膨大だというのに、いまだに世界は幸せになりません。
世界は広いのだと思おうとしました。広いから分からないのだと思おうとしました。
でも無理でした。
今度は、どれくらいの年月をかければ、どれほどのきんのたまを配れば世界が幸せになるのかということを考えてしまったからです。
ふう、と溜息を吐いて、視線を落とせば、視界の端には深いしわの刻まれた節くれだった手。その手には杖を握っております。
もうおじいさんは若くない。いつ倒れるかわかったものではありません。
しかし、このアルティメットグッドマンの道を継いでくれる者はだれ一人としておりません。
この黄金に目を眩ませず、ただ奉仕の思想をもって、人に配り続ける。そんな人をおじいさんは長い月日を過ごしてなお、見つけることはできなかったのです。
いつ志半ばで倒れるか分からない。そんな不安を抱えてしまったのです。
おじいさんは思いました。
このままでは願いがかなう前におじいさんが死んでしまいます。
そうなったとき、残った黄金はどうなるのでしょう。
誰かが世のため人のためと使ってくれることを信じたいですが、世の中はそんなご都合主義はなかなか存在しません。
ただ、放っておかれるだけならいいですが、悪人の懐に入ってしまうことも十分に考えられます。そうなれば、おじいさんの願ったことと真逆のことが起きるのは明白です。
そして、あーでもない、こーでもないと思案した結果、おじいさんはひとつの結論を導きました。
やりかたを変えようと。
そうです。おじいさんは今まで、偏見を持たずに自分に近づいてくることをできる人をいい人だという選別基準を設けていました。しかし、それではおじいさんに近づいてくれる人が少なかったという弊害がありました。
おじいさんはこのことを今までそれだけいい人が少ないのだと思っていましたが、その話しかけられなかったという人に、内気でシャイな子がいる可能性に思い至ったのです。今朝のテレビでも、コミュニケーションが取れない人が急増しているとやっていました。
おじいさんの若い頃はそんなことはありませんでしたが、きんのたまを配り始めて数十年。時代が流れれば、人も変わるものです。
おじいさんもやりかたを変えるべき時が来たということでしょう。
おじいさんは今度は自分から声をかけ、配ろうと決めました。
幸せが歩いてこないように、目的の成就も歩いてきてはくれない。そんな当たり前のことにいまさらながらに気付いたのです。
まず、おじいさんはイッシュ地方に行くことを決めました。
さまざまな町で人を見定める。出会う人数は多い方がいい。
ならば、ビッグでフリーダムな地方を、ということをツイッタ―で検索したら、引っかかった地方だからです。
まずは注文すると次の日には届くと噂の密林でイッシュの地図をクリック。そして、イッシュへ向かう船旅のチケットを入手。きんのたまの形を崩さないようにブリーフケースに入れることも忘れません。
密林から地図が届いたと同日、おじいさんは船のタラップを踏みしめていました。
長い人生、イッシュという地を踏んだことは未だにないということに忘れかけていた冒険心がちりちりと胸を焦がすおじいさん。
自然と笑みが零れます。
◆ ◆ ◆
首が痛くなるほどの高いビル。そのビルに努める多くの人々。
同じ「街だというのに、おじいさんのいた街とは雲泥の差です。やはりイッシュはでかかった。
しかし、と名物のヒウンアイスを舐めながら、おじいさんは苦々しく思っていました。
大きい街だからでしょうか、人々に余裕はなく、皆自分のことで精いっぱいでとてもではないですが、人のために行動できる人が少なそうです。
今までは自分に近づいてくる人に見境なくあげていたおじいさんはこまってしまいました。だれがいい人なのか判断する基準を持ち合わせていなかったのです。
人の良さと言うものが見た目で分からないのが残念です。
しかし、まだイッシュにきたばかり。これから探せばいいのです。
溜息を吐きながら、おじいさんはヒウンシティを後にしました。
【書いていいのよ】
【好きにしていいのよ】
【レイニーさん、アルティメットグッドマンお借りしました】
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