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拝啓
久しぶり。元気にしているだろうか。
君はまずこの手紙を見て「どうしてこんな山奥まで封書が届くのだろうか」と思うのだろう。そうして「こういう煩わしいものが絶対来れないような場所を選び抜いたはずなのになんてこった」と地団駄を踏むのだろうね。
どっこい残念、君がどこにいようと私からの手紙は届くのだ。そういうものなのだ。好きなだけ疑問に思えばいいし、好きなだけ地団駄を踏むがいい。踏み続ければ、そのうちダンスも上手くなってシンオウのコンテストにも出場出来るに違いない。
君の地団駄はさておき本題だが、私は君に文通の提案を持ちかける。理由は問う必要が無い。全ての物事に理由を求める方が間違っているのだ、それに理由などを追求したら、君がそのようなアクティブ引きこもりライフを送っている理由を明確にしなくてはなるまい。それは君にとっていい話では無いはずだ。というわけで、君は私の申し出に理由を聞かない方が良いだろう。
君が便箋を買うために山を降りる可能性は恐らくゼロだし、シロガネ山に便箋屋さんがある可能性も同じくゼロだろうから返信用の紙は同封してある。切手も同様だ。一週間後にまた運び屋を送るから、それに渡してもらいたい。
何、気負うことはどこにもあるまい。私からの文面を読んだということと、あとは適当なことさえ書いてくれればいい。山のことでも、奇特な挑戦者のことでも、君のポケモンのことでも、何でもだ。
とりあえず返信を頼む。私が求めるのはただ一つ、君からの返事なのだ。一言でも構わないから送ってくれたまえ。
シロガネ山
原点にして頂点 レッド様
追伸
ここまで君がきちんと読んでいればの話だが、もし君から返事があれば、回復アイテム等を送ることを約束しよう。尚、内容の充実さによってその量及び種類は変動する。
☆
拝啓
やぁ、この前は何十回目、いや何百回目かの殿堂入りをおめでとう。この前というか昨日かな? 相変わらずで何よりだ。
しかし一つ言わせていただくと、ポケモンリーグというのは君のATMでは無い。お小遣いをくれるおばあちゃんのおうちでも無い。あそこは神聖なる戦いの場所なのだ。君は『ちょっと自販機の下を覗き込んだら10円手に入った』くらいの気持ちかもしれないが、向こうにとってはそうでは無い。それをわきまえてくれたまえ。
それに君は、手に入った賞金をコガネのスロットで残らずスっているそうでは無いか。どれだけ阿呆な金の使い方なのか。スロットが悪いと言っているのでは無い、君が悪いと言っているのだ。馬鹿に強さを与えると碌なことにならない、とはまさに君のことである。
というわけで、今日から君には毎日の収支を報告してもらうことにした。どこからいくら手に入れたか、どこにいくら使ったか。それを残らず教えてもらう。しっかり書くように。
コガネシティ
ジョウト地方チャンピオン ゴールド様
☆
拝啓
こんにちは。この前は手紙をありがとう。君は字が綺麗だから、悪筆の私にとってはどうにも恥ずかしいものだ。読みにくいと思うが多目にみて欲しい。
さて、文通をしてみたいとは今時の子供としては珍しい申し出だね。でも私は大歓迎だ。最近はパソコンだのメールだのポケナビだの……いや、君はポケッチだったっけ? ともかく、ああいう電子機器が普及して手書きのものを送る機会も減る一方だから。こうして一文字一文字書くというのも、またいいものだね。
君はミオシティにいるということだけど、そこは良い町だ。本が好きな君にはたまらないところだろう。何せ、あの図書館の本は一生かかっても読み切れないだろうからね。
それに君の手紙によると、君は自分で書くこともするというでは無いか。是非とも見せてもらいたいものだ、君さえ良ければ送っていただきたい。シンオウを旅し、様々な者に出会い、豊かな経験を積んだ君がどんな話を紡ぐのか。全く想像もつかないよ。
それでは、風邪などひかないよう体調にはくれぐれも気をつけて。まあ、あのキッサキをあんな薄着で訪れた君にかける言葉でも無いけれど……。
ミオシティ
シンオウ地方チャンピオン ヒカリ様
☆
拝啓
やあ。地下鉄ライフはエンジョイしているかな? いい加減に太陽の光も浴びないとディグダになるぞ。
冗談はさておき、全くどういう了見だ。バトルサブウェイに篭って出てこない君が連絡を寄越すなど。初めは何かのイタズラだと思ったものだよ。不審に思って君からの電話を着信拒否した私を許してほしい。
言っておくが、切符代の無心ならば丁重に丁重を重ねて遠慮させていただく。いくら賞金が出ないからと言って、それは自分で用意するべきだ。ちょっと空を飛べばポケモンリーグというATM、じゃなかった、神聖なる戦いの場所があるのだから。一度行けば一ヶ月分の地下鉄ライフが約束されるだろう。
ともかく、連絡の理由を知りたいから返事の手紙をくれないだろうか。地下鉄内にも流石にポストくらいあるだろう、封筒の住所に送り返してくれれば構わない。電車の待ち時間などに書いてくれたまえ。
ライモンシティ
伝説のトレーナー トウヤ様
追伸
申し訳無いけれど、電話はなるべく遠慮してほしい。地下鉄の電波はお世辞にも良いとは言えないのだ。
☆
拝啓
こんちは。お元気ですか。私は元気です。
イッシュ地方もすっかり春だそうですね。そっちはどんな花が咲いているのですか? もし良ければ写真を送ってください。
この頃、君からの電話があまり無いので心配しています。メールを送ってもナナシのつぶて。SNSのアカウントもみんな消えてしまった。もしやまた何か思い詰めているのでは無いかと私は心配でたまりません。
君は強い。それ故色々と思い悩んでしまうこともあるかもしれない。誰かに相談しようにも、迷惑をかけてしまうだろうと思うのかもしれない。誰にもわかってもらえないだろうと諦めているのかもしれない。そもそも人に話したく無いのかもしれない。
しかしそういう時こそ、私を頼ってほしい。私はいつでも君の味方だ。なにせ敵になりようが無い。どんな時だって、君の目の前を真っ暗にしたりはしまい。
困ったことがあるならば、遠慮無く相談してくれたまえ。なに、もっと軽く考えるのだ。理想も真実も体重の減らし方も、なかなか答えが出ないのが世の常だよ。
悩んでばかりじゃ頭が凝り固まってしまう。君の防御値が上がるくらいしかメリットは無いよ。気楽にいこう。
ヒオウギシティ
イッシュ地方チャンピオン メイ様
☆
拝啓
どうも。いつも写真をありがとう。流石はアイドル志望だけあって、相変わらず君はとてもオシャレだね。清楚系で攻めるつもりかな、髪を黒く染めたのは新境地だ。私としてはロングがオススメだぞ。
ところで、今回は何故文通などを所望したのかな。どうせ君のことだから、アイドルとしてデビューした暁に「趣味は文通なんです」などと言ってカメラの前に手紙を並べ、かわいさアピールするのが魂胆だろうけど、まあ私は歓迎しよう。生まれた時からメールが当たり前の君達だ、色々な文化に触れるのも悪くない。
手紙には君の書きたいことを書けば良いのだ。何を書いたら良いのかわからない、だなんて考える必要は無い。君だって友達と他愛の無いことをメールだの電話だので伝え合ってるのだろう? そういう感じでいいんだ、ただし将来的にマスコミに見せるつもりなら、あまり過激なことは書かない方が良いかもしれないな。過激な話題には過激な返事しか出来ない。私が禁書を生まないような文面を頼む。
では、返事を楽しみにしているぞ。
ミアレシティ
カロス地方チャンピオン セレナ様
追伸
そのコートは新しく買ったのかな? ワンピースみたいなシルエットでよく似合ってるよ。ミアレのブティックはなるほどオシャレだね。
もし良ければ、値段など教えてもらえないだろうか。高いらしいと風の噂で聞いたけれど、具体的にどのようなものなのか気になるのだ。
☆
拝啓
御無沙汰しております。御活躍の御様子存じ上げております。あらためてお慶び申し上げます。
この度は、突然の手紙御容赦くださるよう誠にお願い申し上げます。卑しき存在である私めの愚筆など御覧になることすらお気に障ってしまいますでしょうが、どうかお情けを頂戴したいところであります。
誠に身勝手な申し出ではありますが、お一つお尋ねしたいことがありまして一筆奏上させていただきます。現在私めは少々理解し難い窮地に立たされておりまして、勿論それは私めの不徳の致すところであると重々承知の上でございますが、どうかこの卑しき民に貴女様のお力を貸していただきたく存じます。
単刀直入に申し上げます。いつか私めが貴女様にお貸し致しました、回復アイテム及び各種ドーピングアイテムの御返済について、それがまだ為されていないことについて、少しばかりこの愚脳が反応を示しているのです。勿論、今すぐ返せなどと申しているのではございません。ただ、少しばかり、少しばかり気になっただけでございます。
御返事は、御手空きの際で構いません。今の私めには、貴女様の明晰な頭脳と並々ならぬ美貌と天井知らずの技量と、そして回復アイテムが不可欠なのでございます。
御一報を心よりお待ちしております。
追伸
もしも御気持ちを損ねてしまうことがありましたら、どうかその時は、どくどくだまを送りつけるのだけは御勘弁願います。あれは大変苦しい。しかも鼻が曲がるほどの悪臭がする。御慈悲を。
バトルリゾート
ホウエン地方チャンピオン ハルカ様
☆
拝啓
急にこんなものを送りつけて申し訳無い。君が多忙なことはよく知っている、しかし私は今まさに、君の助けを必要としているのだ。
君は冒険家にして探検家、そして救助隊だ。だからこれは依頼だ。君の救助を要請する依頼なのだ。パラダイスランクがマスターの君にお願いだなんておかしいかもしれないが、しかし頼めるのは君しかいないのだ。
このダンジョンから、私を助け出してほしい。
いわゆる、でられません! というアレだ。閉じ込められてしまったのだ、謎の迷宮に。
暇で暇で仕方ない。おかげで、手紙を書くくらいしかすることがない。
不思議なことに手紙のやり取りだけは可能なんだ。ダンジョンから手紙を送れるって、本当のことなんだな。
ポケモンパラダイス
チームポケモンズ ピカチュウ様
とりあえず概要まとめ練習ってことでこの前書いた「僕は緋に燃える(http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=3671&reno= ..... de=msgview)」で書いてみた。
難しいなあ_(:3」∠)_
【梗概】(840字)
「僕」はタマムシシティに長期滞在中のトレーナー。バトルの賞金だけでは生活していけずコンビニの深夜バイトで何とかやっている25歳である。
彼の故郷では職業トレーナーへの風当たりが強く、親はトレーナーをやめて地元に戻れと言い続けている。彼はそれを快く思っていないが、勝率7割のムラッけ持ち、年齢もそろそろいい歳で、今後について思い悩んでもいた。
そんな時、彼は緋色のユニフォームを纏った集団を見つける。それは彼の生まれ故郷の「野球」のユニフォームであった。
引き寄せられるように球場に着いた彼は、かつて最も応援していた投手を見つける。その投手は彼と同じくムラッけ持ちで、最近けがから復帰していた。
彼の生活に野球観戦が組み込まれるようになった。例の投手は好投を続けていたが、ムラッけ持ちの投手に対してファンは冷たく、時に強烈な罵声が浴びせられ、ファンである彼は複雑な気分だった。
ある時、投手の経歴を調べていて、その投手はトレーナーだった両親に捨てられた事を知る。彼はあの投手はポケモンとトレーナーが嫌いなのだと思い、自分がファンでいる資格はないのではないかと絶望するのだった。
バトルの戦績も芳しくなく、何もかも辞めてしまおうかと考えていたバイト中、以前も来たことがあるトレーナーの女の子がやってきた。彼女は多くの大会で優勝し、人気が出てきていた。
彼女は彼のストラップを示し、その球団が好きなのかと聞いてきた。彼女は彼と同じ球団のファンだったのだ。
彼は彼女からひとつの動画を教えられた。かつて球界にとある問題が起こった時、あの投手の言葉が人を動かしたのだ、と。
動画の中であの投手は、彼の誤解を解いた後、「人に影響を一番与えるのは人だ」と言った。
その夜の試合、4回裏。スクランブルで登板したその投手は、見事に後続を抑え、無死満塁のピンチを無失点で切り抜ける。
その姿に魂を燃やされた彼は、新しいファン仲間であり、ライバルでもある彼女にメールを送った。
「また、どこかの大会か、球場で」
赤い花と黒い影 梗概 |
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1月5日 参加者(敬称略):(流月, 砂糖水, 音色, 門森 ぬる, αkuro)
※全員分写したつもりですが、お名前が抜けている方がおられましたらお知らせ下さい。その他にも何かお気付きになりましたら修正して下さって構いません。(筆記者・砂糖水)
前回の続きです。
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しかし、デデンネか。
生で見るのは初めてだけれど、大福を二個重ねたような体にポッキーのチョコ部分みたいなヒゲ。思ったよりもおいしそうだ。
なんか食べたくなるな。この見た目。いや、実際に噛りついたら、血とかどばーって出てきて、モザイクかかりそうだけど。
「デデンネー」
そんな考えを察知したのか、デデンネは軽く身震いすると頭から下りてしまった。
おい、待て。どこに行くんだ、このネズミ!
「待てっ」
まずいまた問題が起きてしまう。さすがに解雇されるかもしれない。そうなる前に回収しなければ。急いで屋内に駆け込むも、デデンネは影も形もない。逃げられた。あー……。何だろう、最近運勢悪いのかな。雇ってもらえた時は運がいいと思ったのに。
「デデンネ―食べないから出てこーい」
しばらく待ってみたが一向に物音一つしない。なんか最近逃げちまうポケモンのせいであれこれ騒動ばっか起きてねぇか?
「……でてこねぇな」
これは脅しが弱いのか。それとも猫なで声で呼ぶべきか。あーでもなんかあのもちもちした弾力のある触り心地を考えるとむしろ潰したいな。握りつぶす。さぞ気持ちがいいだろう。……あれ、俺何考えてんの。
ともかく考え込んでいる暇はない。もう一回アンテナを切るだのお菓子をやるだの飴と鞭を交互に呼びかけてみるが尻尾の一つも出さないと来た。出したらもれなくふんで捕獲するけど。
露骨に舌打ちをしたところを女将さんに見られて、あんまりお客様の前でそういう態度はとらないようにと注意された。ますますついてない。これは見つけたら一回くらいたたきつけても文句は言われないだろう、と思ったその時、視界の端にちらりと黒い尻尾が角を曲がって消えていった。
急いで追おうとしたその時。
「はい」
後ろから頭上にペロッパフを置かれた。
「貸してくれてありがとう。この子返すね。デデンネは見つかった?」
ぱふーとペロッパフがひと鳴きした。
「あれ、もういいんですか?」
「うん。その子も、君が良いって」
ぱふぱふ。ペロッパフがどことなく嬉しそうだ。
「それより、もう一匹ポケモン持ってるんでしょ? デデンネ探すの手伝ってもらったら? あの子すぐいなくなっちゃうのよ」
そんなポケモンを貸さないで欲しい。溜息を吐きたくなったが、ぐっと我慢。今は奴を見つけなければ。
とりあえず、アドバイスに従ってもう一匹のポケモンを出そうと手を伸ばすと、奥の部屋から物音と「デデーン」という鳴き声が聞こえる。というか物音がどう解釈しても何かが割れる音なんだけど、どうしよう。
これはやばい。おれのポケモンじゃないけど、逃がしたのは俺なのである。
デデーン。俺、アウト―。そろそろ女将さんにけつバットされるかもしれない。
これは嫌な予感がする。確か廊下なんかに置いてある花瓶とかお皿とかは結構なお値段がするものらしい。一流の場所には一流を置くとかなんとかいうお話を聞き流した覚えがある。俺の給料でそれは果たして弁償できるか。恐ろしい想像ばかりが掻き立てられる。とりあえずデデンネ見つけたら一発へこましたろう。
とにもかくにも捕獲しない事には意味がない。おそるおそる音のした廊下を覗き込むと案の定、そこにはひっくり返っている額縁と割れたガラス、そして「あ、見つかったやべぇ」という顔したデデンネだった。しかも一瞬だけ俺の方見てすげぇ嫌な顔した後、「ででね、ででねー!」とわざとらしく泣き叫びながらすごい勢いで逃げて行った。アイツこのままだと被害者面して逃走するつもりだ。俺の就職生命がやばい。
本能が確信してボールを投げる。出てきたのは俺が捕まえるのにちょうどいい技を持っているからという理由で見た目を気にせず捕まえたガメノデスがずしんと音をたてて着地した。
「アイツにみねうちな」
俺の指示に「いえっさー」「まかせろよ」「はらへった」「後で飯な」「俺もいつものじゃ飽きた」「おやつまだー」「ねむい」といった具合に七つの顔が示したが蹴っ飛ばして追い立ててやった。
ずしんずしんとガメノデスが行く。あれこれ追いつかないんじゃ、と思った矢先、曲がり角を曲がろうとしたデデンネと、あの目つきの悪い男がぶつかる。
「あ?」
デデンネはちょろちょろと逃亡をつづけようとする。
「そのデデンネ、捕まえてください!」
男は状況が呑み込めない顔をしつつも、ひょいと逃げ惑うデデンネを持ち上げる。短い足をばたばたさせるデデンネ。さあどうしてくれようか。と、ガメノデスがデデンネを抱えている男にみねうちかまそうとしている。やばい。
「待て待てガメノデス! ストップ!」
俺の指示に気付きガメノデスがは手を止めた。が。
「ででー!」
デデンネが放電を放つ。
「テメ、このやろ……だあああ、もう!」
男は痺れながらもボールを取りだし、デデンネもろとも放り投げる。
だあす。やけに毛先が丸いサンダースが出現し、デデンネをむぎゅと抱き締める。そうか、ちくでんか。
「なんなんだよもう……」
ずるずると壁づたいにしゃがみこんだ男に、ペロッパフがぱふと寄り添った。
ペロッパフ、おまえいつの間にそんなにそいつに懐いてるんだよ。
なんだか悲しくなってくるその光景を横目に、サンダースに抑えつけられているデデンネを確保する。咄嗟のこととはいえ、男がサンダースを出してくれたのは助かった。とりあえず、このネズミをどうしてやろうか。とりあえずは、説教はしないといけないな。こめかみに青筋が浮き出るのが自分でもわかるぐらいにデデンネへの怒りがたまっている。
「デデンネ、お前はあっちで説教な」
「おまえもだよ」
いつのまにか女将が後ろにいた。どう見てもキレてる。
「さっきからどすどすうるさい音がしてやかましいから来てみれば賞状を入れていた額縁が割れているしその掃除をしていればまたぎゃーぎゃーやっているし来てみたらなんだいこのデカブツは!」
指さされたのは案の定ガメノデス。確かに廊下の地響きの原因は此奴ですけど! その前の原因がこの鼠なんです! 俺の必死に訴える目は女将の睨み付けるで無効化されてしまった。いや本当なんですってば。
こっそりボールのスイッチを押して引っ込むガメノデス……ってこの裏切り者ぉ!逃げやがった!ボールに触れようにも手の中で必死に涙を浮かべている鼠を話すわけにもいかずぎゅうぎゅうとしめつけ続けていれば「その鼠もアンタのかね?」とさらに誤解を招きそうな事になる。さっきのお姉さん何処にいるの。
「い、いや、違いま」
「なー女将さん、俺も何がなんだかさっぱりなんだが」
ガラの悪いオッサンが口を挟んでくれた。
途端に女将さんはいつもの穏やかな表情に戻った。
「お客様、大変申し訳ございません。この者にはしかるべき処置を行いますので……」
「あー、いや、その」
歯切れが悪い。それもそのはず、女将さんは表情こそ穏やかだが、目が笑っていないのだから。なんとかうまいこと言ってくださいと目で訴える。
「あ、やっと見つけた」
そこに、男の後ろから髪が無造作に跳ねている青年がやってきた。男より一回り小さい。
「あ、テメどこ行ってやがったこの野郎!」
「それはこっちのセリフだ! なんだよこの状況は?」
ギャーギャーギャーギャーかくかくしかじかと男が青年に説明をしている間、女将さんは和やかに、俺は冷や汗をかきながらじっとしているしかない。汗で滑りが良くなったデデンネが手から抜け出し、頭上に行ったがそこをばしと両手で再度捕まえた。
「あれ、そのデデンネ……」
青年が何か気付いたようにデジカメを取り出す。そこには額縁を壊す正にその瞬間のデデンネの姿が写っていた。更に一枚スライドさせると、さっきの女性とデデンネが仲良くくっついている写真が。
―――――――――――――――――――――――――――
翌日が平日のため、0:30あたりに一旦終了となりました。
参加してくださった皆様ありがとうございました!お疲れ様でした!
次回は1月10日(金)もしくは1月11日(土)の21時頃開始を予定しています。
飛び入り参加も歓迎しております。1文からでも参加出来ますので、興味のある方は是非是非奮ってご参加下さい。
掲示板正式移行後の動作確認テスト。
【1】
それはとある街の近くにあります、ちょっとした森の中。
本格的な森と比べると、一本一本の木の間はそんなに密着しておらず、空からは太陽の光がさんさんと差し込んで地面まで届いています。
そんな平和そうな森の中で、一つ、違う空気がありました。
バチバチと火花が跳ねるような音が聞こえてきそうな雰囲気が漂っています。
「今日は、わちが勝たせてもらうわ」
「寝言は寝てから言いやがれ、この野郎。勝つのはこの俺様に決まってるだろ?」
一匹は白い毛皮に、お腹と目の辺りには赤い星模様、そして赤い爪を持ったポケモン――ザングース。
もう一匹は漆黒の縦長い体に、剣を連想させる鋭利な尻尾、そして毒々しい赤い牙を持ったポケモン――ハブネーク。
ザングースとハブネークは産まれながらにしてお互いの種族に敵対本能を持っているポケモンで、この二匹も例外ではありませんでした。今日も今日とて勝負を仕掛けあっています。
さてさて、殴りあいに、引っかきあってからの噛みあい、その場に響き渡る怒号と痛みによる悲鳴のバトルがこの後に想像されそうですが……ザングースが何やら一本の棒状のモノを出したところから何か違う勝負をするようです。ハブネークは何を出したのかと訝しげにザングースの顔を見やります。
「これはポフィッキーや。知らんかったん? 流行遅れやな」
「そ、そんなこと俺様が知らないわけねぇじゃねぇか! 俺様はただ、それで何の勝負をしようかって訊きてぇんだよ!」
説明しましょう。
ポフィッキーとはポフィンを棒状に伸ばしたポケモン版の某Pッキーのことであります。
なんでも一説によりますと、ルナトーンとソルロックが某Pッキーゲームなんてやったら萌えるよね〜、という謎の意見を元にオボン製菓会社が作り上げた商品でございます。
味はクセになる甘さのモモン味、爽やかな甘酸っぱさがウリのオレン味、口から火が出るほど辛いけど、そこにしびれるぅ! あこがれるぅ! というマトマ味、他諸々。
大きさもそれぞれのポケモンの大きさに合わせて作られており、小型ポケモン用のSサイズ(市販の某Pッキーぐらい)から大型ポケモン用のXLサイズ(市販の某Pッキーの十倍)まで取り揃えてあります。
「これでな、ポフィッキーチキンゲームをやろうと思うねん」
「ポフィッキーチキンゲーム、だと?」
なんなんだ、何をやろうとしているんだとハブネークがザングースを見やると、ザングースは勝つ自信が大いにあるのか、得意げな顔を浮べながら更に説明を続けます。
「一つの端をわちの口に、もう一つの端をあんさんの口につける。先にポフィッキーから口を離した方が負けや、どや? シンプルなゲームやろ?」
「面白そうなことを考えるじゃねぇか。いいぜ、その勝負買ってやるよ」
ビビッた方が負けという分かりやすい勝負に乗ったハブネークは勢いよくポフィッキーの一つの端を口に入れました。ザングースももう一つの端に口を入れ、これでお互い準備万端、目線と目線がぶつかりあって火花が飛び散るかのような雰囲気がそこにありました。空から「すばぁ」と鳴くスバメの鳴き声を合図に二匹の勝負が始まりました。
約四十五センチメートルの間、まずはザングースがプレッシャーをかけようとしてじりじりと一、二歩、前に進みます。どうだと言わんばかりの挑発的なザングースの目付きに反応したハブネークも負けじと身をよじらせ前へと進みます。両者譲らない勝負の下、少しずつお互いの距離が縮まっていきます。まだ行けると踏んだザングースが先に仕掛け、ハブネークにプレッシャーをかけますが、なんのこれしきとハブネークも更に前へ行きます。行き過ぎれば嫌な奴との口づけが、しかし仕掛けなければプレッシャーを与えることはできない、シンプルだけど心理面では奥深いゲームにザングースとハブネークの胸の鼓動は速くなっていきます。
気がつけばお互いの距離は残り五センチメートル、一歩間違えれば、キスが待っています。それだけは嫌だが、しかし、その状況の中ですから、うまく仕掛ければ大きなプレッシャーを与えられる距離でもありました。
さて、どのタイミングで仕掛けようかと、ザングースとハブネークは機会を伺っていました。
どくん、どくんとお互いの脈が早くなっていき、ハブネークの額から汗が一筋垂れ、ザングースの尻尾は緊張で逆立っています。
風が一つ吹き抜けます。
先に仕掛けたのはザングースでした。
大きく足を振り上げて、一歩前へと動きます。
実際には前へと言っても、一、二センチ程の小さな動きですが、大きく足を振り上げたのはハブネークに大きなプレッシャーを与える為でした……これで驚いたハブネークが口を離して勝利を得る、というのがザングースの狙いでした。
しかし、ハブネークは動じませんでした。
ザングースの目論見は外れた――わけでもなく、この彼女の仕掛けにはハブネークは心臓が飛び出てしまうのではないかと思うほど驚いていました。しかし耐えたのです。ザングースとの勝負にかける本能がなんとかハブネークをポフィッキーから離さなかったのです。
ギリギリなところで踏み止まったハブネークに対して、ザングースの目が丸くなったのは言うまでもありません。
これでお互いの距離は残りたったの二、三センチメートルとなり、ここからは我慢の勝負となりそうです。お互いの顔が間近となった今、一歩間違えればキスが待っています。なんとしてでもポフィッキーから相手の口を離さなければとザングース、ハブネークの両者は頭をひねらせます。嫌いな相手の顔が目の前にある中、なんとか勝てる方法を編み出そうというのは中々疲れるものです。どうすればいいのだろうかと考えていく旅にお互いの額から薄っすらと汗が浮かび上がってきます。そのままお互いに何も仕掛けないままただ時ばかりが過ぎていった後――。
先に動き出したのはハブネークでした。
そのぎょろっとした大きな赤い瞳をあちこち動かしています。寄り目にしたり、離し目にしてみたり、面白おかしくその芸を見せていきます。どうやらハブネークはザングースを笑わせて彼女の口をポフィッキーから離そうと試みたようですが……残念ながらザングースには効果はイマイチのようでした。やがてハブネークのターンが終わりますと、ザングースはお返しだと言わんばかりに両目に力を込めますと目玉をちょっとばかり飛び出させました。いわゆる目玉が飛び出ちゃったというよくありそうなネタなのですが、ハブネークには効果抜群のようでした。まさか彼女がそんなことできるだなんて想像にもしていなかったと一瞬、どきんと胸が驚きで高らかに鳴りましたが――なんとか耐えました。これもザングースに対するプライドが成せる業なのでしょう。
その後、二匹は身振り手振りで相手にプレッシャーをかけていきます。
ハブネークの尾がうねうねと変に動きますと、今度はザングースが左腕を頭の上に、右腕を横腹近くに持って行き、シェーとやってみせます。
まさに勝負の行方はこの芸対決に委ねられたと言っても過言ではないでしょう。
しかし、残り二、三センチメートルというのに、顔を動かさないようにしているとはいえ、そこまで動きを入れても大丈夫なのかと思っている方々もいるかもしれません
これが、不思議なことに残り二、三センチメートルから距離が変わらないのです。
まさになんとしてでも勝つという意地がそこにある証拠です。
さて、芸対決はお互い一歩も退かないまま、このまま続いていくのかと思われたおり――。
「おっと、ごっめんよぉー!!」
突如、ザングースの後ろからマッスグマが現れ、そのまま激突!
マッスグマは急には止まれないのです。
ド派手な衝突音が森の中を駆け抜けていくのと同時に、マッスグマもその場を駆け抜けていき、そしてマッスグマに後ろを押された形となったザングースはその勢いのままに一気にハブネークを押し倒してしまって――。
気がつけば、二匹の距離はゼロでした。
ザングースもハブネークもお互いの唇を重ねたまま、動きません。その目はこの世の信じられない物を見ているかのような形になっており、とてもじゃないですが、イチャコラといったような雰囲気ではありませんでした。お互いに嫌いな奴の唇に自分の唇を乗せたなんて、そんなこと認めない、認めたくない、信じたくない。そういった気持ちが限界まで膨らんだとき、ようやく二匹の唇が離れました。
それから体の距離も離して、お互いに改めて相手を見ると、なんだか顔の紅潮(こうちょう)が止まりません。このままだと混乱して目がパッチールみたいにぐるぐるんになってもおかしくありませんでした。
「あんさんのどあほおおおお!!」
先に叫んで気まずい沈黙の間を破ったのはザングースでした。顔を真っ赤にさせているだけではなく、全身の毛まで逆立っています。
「おい、ちょっと待てよ!」
ハブネークがそう声を上げましたが、ザングースはわき目も振らずにその場から走り去ってしまい、ただ一匹だけ、そこにぽつんと取り残される形になってしまいました。
「……なんだよ、最初にこの勝負にしたのはてめぇじゃねぇか、この野郎」
そんな愚痴を吐きながらハブネークに一つの風が吹き抜けます。
しかし、全身ほてりまくった彼の体には全然足りないものでした。
一方、ハブネークの前から去ったザングースは森を抜けたところにある川まで行きますと、その足を止めました。
はぁはぁと肩で荒く息をしながら、ザングースはやがて地面に尻もちをつけました。静かな場所だからか、なんだか自分の心臓の高鳴りがよく聞こえています。
これは全力疾走での疲れからくるドキドキなのか、それともハブネークとキスをしてしまったことからくるドキドキなのかはザングースには分かりませんでした。それほど彼女は混乱していたのです。
そのまま少し時が経ちますと、ちょっと落ち着いたのか、ザングースはこういうときは水を飲んでもっと落ち着くのが一番だと思いつき、目の前にある川へと顔を近づけさせました。
そこに映っているのは自分の顔。
それとハブネークとキスしてしまった唇。
その自分の唇を見た瞬間、ザングースの顔に再び火が上がりました。
そして、必死で忘れようと、水を飲むのではなく、ひたすら顔を洗い始めました。
相当、焦っていたのか、ばしゃばしゃ、とにかく水を自分の顔にザングースはぶつけ続けます。
自分が勝つつもりだった。
あんなことになるなんて思いもしなかった。
こうして、何度も水を自分の顔にぶつけていたザングースでしたが、やがてバランスを崩して川の中に落ちてしまいました。
幸い、川の深さはザングースの胸元辺りで、なおかつ流れも緩やかだったので、なんともありませんでしたが――。
「……顔が熱い」
冬の川は冷たいのに、顔だけはその熱さを保ったままで。
ザングースは困ったようにそう呟いていました。
【2】
さて、あのポフィッキー事件から三日後のこと。
とある街にある一軒の赤い屋根の家。
その家の一室にあるリビングルームに一人の小柄で亜麻色の髪を持つ女性と、一人の小太りで眼鏡をかけた男性がいました。
そしてその女性の傍らにはザングースが、そして小太りの男性の傍らにはハブネークがいます。
実は、このザングースとハブネークはそれぞれのパートナーだったりします。
「さてと、今日は麻呂也(まろや)とちょっと大事な用があるから、二匹はここで留守番して欲しいのよ」
「えっとね、とりあえずポケフーズは机の上に置いておくから、お腹がすいたらそれを食べてな。あんまり食べ過ぎてお腹を壊さないように」
「……麻呂也も太りすぎには注意してね」
「うぐ、気をつけるよ。さてとそろそろ行かないと。まずは会社の方に行かなきゃ。行こう? 亜美」
「お土産ちゃんと買ってくるから、いい子でね?」
それだけ言い残すと女性――亜美と、男性――麻呂也は一緒に玄関の方へと姿を消していってしまった。やがて留守番を任されたザングースとハブネークの耳には扉の開閉の音、それから鍵が閉まる音が届きます。こうしてテレビやソファー、本棚が置かれてある広々としたリビングルームにはザングースとハブネークの二匹っきりとなりました。
「ちぇ、なんだよ麻呂也のヤツ。俺様をあんなヤツと留守番させるなんてよ、おかしいぜ」
ソファーの上でとぐろを巻いていたハブネークは、窓際でカーテンの間から庭を見つめているザングースを見ながら愚痴を吐いていました。しかし、ザングースの耳には届いていないのでしょうか、彼女は庭を眺めているばかりで黙ったままです。いつもならここで怒って文句の一つや二つ言ってくるはずのザングースに対してハブネークは調子がちょっとばかし狂いそうになります。こんな変な空気が嫌でハブネークが思わず舌打ちをしたときでした。
ザングースが倒れたのです。
「おい? 何やってんだよ、日向ぼっこか、おい」
嫌みったらしくそう言いながらハブネークがソファーから降りて、窓際で倒れているザングースに近づき、顔を覗きこむと、彼の顔は困惑の色に変わりました。
ザングースの顔がなんだか赤く、それに苦しそうな顔で、息もなんだか辛そうにヒューヒューと鳴っていました。流石にこれは日向ぼっこではなくて、風邪だと気がついたハブネークはどうすればいいのだろうかと考えました。今、ここにいるのは自分一匹だけ。一体全体どうすればいいのだろうか。
そういえばと、ハブネーク主人の麻呂也のことを思い出します。
麻呂也が風邪を引いたときに何をやっていたことが、もしかしたらここで活用できるかと思ったからです。
『風邪のときはよく寝て、安静にしとかないとなぁ。というわけで、ちょっと早いけどお休みハブネーク』
そうだ、風邪には睡眠とかといった休養がいい、そしたらここはザングースを起こすわけにはいかない。
しかし、このままにしておくわけにもいかない、何か他に風邪に効きそうなことはないかとハブネークは思案します。
『寝るときにはやっぱり抱き枕だよね、これで疲れを取るのがやっぱ一番だよ』
抱き枕という単語にハブネークは妙案を思いつきます。
ザングースの横に寝そべり、背中の方をぐいっとザングースに寄せます。
うまくいくかどうか分かりません。嫌な相手を抱き枕にするなんてこと、ザングースだったら絶対にしたくないはずですし。
しかし、なんということかザングースはハブネークの体をぐいと抱きしめたのです。
もふっという感覚がハブネークの中で広がります。
「はぁ……なんで俺様ったらこんなことしてんだよな、本当」
本来なら嫌いな相手なのだから、風邪を引いていたって放っておいて、ざまぁ見やがれの一つでも言えてもおかしくなかったのに。いいや、これはあれだ。ザングースとの決着が着いていないのだから、ここで彼女ともう争うことができないなんてことになったら自分のプライドが許さないとハブネークは考え直して、こう呟きました。
「別に……てめぇの為じゃねぇんだからな、勘違いするんじゃねぇぞ」
その顔は若干、赤くになっていたのはハブネーク自身も気がついていませんでした。
そういえば、ザングースと会ってもう何年経っただろう?
ふとハブネークは昔を思い出します。
それは今から約三年前のこと。
麻呂也のパトーナーになったと同時にハブネークはザングースに出会いました。
気の強いメスで、変なしゃべり方してんじゃねぇぞとハブネークは最初からザングースに対して敵対心を持っていました。ハブネークの思い切りにらみ付けに、ザングースもお返しとばかりににらみ返してきたことも覚えています。それから毎日、因縁をつけてはザングースと色々なバトルを繰り広げていきました。ちなみに麻呂也も亜美も働き先の会社がポケモン禁制の為、家で放し飼いすることが多く、ハブネークもザングースも様子を見計らって、家からよく抜け出し、そしてあのちょっとした森の中で白黒つける為にバトルを繰り広げていたというわけです。
かけっこを始めとして、にらめっこに、どちらがかっこいいポーズを決められるかなどなど。
ハブネークが勝った日もあれば、もちろんザングースが負けた日もあります。
他人から見たら、よく飽きないなと言われるぐらいですが、二匹にとってはいつでも本気でした。
だから負けないで欲しかったのです。
ザングースに勝つのは自分だから。
風邪なんかに負けるなよとハブネークは自分を抱きしめながら眠っているザングースのに向けて、そう呟きました。
「ほわぁ……わちのだいしゅきなポフィッキー……」
まさかさっきの呟きで起こしたかと思えば、なんだ寝言かとハブネークがやれやれと思ったときのことでした。
なんだか背中に刺激が来ます。
「むひゃ、みゅふ、みゃふ……」
ポフィッキーを食べている夢でも見ているのでしょうか、ザングースがハブネークの背中を噛み始めました。しかし、本気の噛みつきと比べるとソレは弱く、どちらかというと俗に言う甘噛みでした。ザングースの白い鋭い八重歯がハブネークの背中に優しくチクチクと口づけをしていきます。
満足そうな寝顔でハブネークを甘噛みしていくザングースに対し、ハブネークはあまりのくすぐったさに戸惑っていました。このまま起こさない方がいいのか、しかし、このままだとなんか変な気持ちになりそうだとハブネークは必死に耐えていました。
意識をずらそう、そうだ、別のことを考えようとハブネークは麻呂也と亜美のことを考えることにしました。そういえばあの二人、仲がいいけど、どういった関係なんだろうかといった感じになんとか背中の刺激を振り払おうとしますが――。
甘い吐息が温かくてなんだか心地良い、白いもふもふとした毛も心地良い、白い牙がいい感じに背中をチクチクさせてくる、そしてときどき当たる赤い舌は熱くて――。
なんだよ、これ! 無理だろ、これ!
ハブネークはそう叫びたい気持ちでしたが我慢、我慢。
なんでこんな奴相手に惑わされなきゃいけないんだ、おかしいだろう、一体全体どうしてこうなったんだとハブネークは自身の心に尋ねてみますが、返事はもちろんありませんでした。
ハブネークの顔から沸騰でもするのではないかというぐらい赤くなり、心なしか湯気も立っているかようにも見えました。
「みゅふ、むひゅむひゅ、これ、食べて……早く、元気になってぇ、ハブネークと早くバトりたいでぇ、わち……むひゃ、むひゅ、みゅふ」
ザングースから出たその奇跡的な寝言に、ハブネークはなんとか鼻を鳴らして、こう言いました。
「……早く治しやがれ、この野郎」
顔は依然と真っ赤のままで。
【3】
買い物袋を提げた麻呂也と亜美が家に戻ってくると、そこにはリビングルームでハブネークを抱きしめているザングースの姿がありました。もちろんお互い眠っております。
「なんか心配したけど、そうでもなかったみたいかな?」
「だから言ったでしょ? 大丈夫だって」
二匹の様子を見ながらなおも不安そうな顔を浮べる麻呂也に亜美が家の中の様子を示しました。確かに、なんかしら暴れた形跡があるのなら、テレビが壊れたり、本棚が倒れて本が散乱したり、ソファーが破れて中からエルフーンの綿が飛び出ていたりしてもおかしくありません。しかも二匹隣同士で眠っていますし、どう考えても暴れたような形跡はありません。
「まぁ、要は麻呂也の杞憂に終わっただけって言うやつよね」
「ぐ、なんかカッコがつかないなぁ」
麻呂也が困った顔を浮べながら頭をポリポリとかきます。
「だってさぁ、本能的に敵対心を持っている二匹だろ? そりゃあ心配の一つや二つするよ。それにしてもなんで、こんなに仲がいいんだろうなぁ」
「さぁね。もしかしたら、私達が見ないところでバトルしてるかもしれないわよ?」
「え、そんな。傷なんてそうそうなかったけどなぁ……」
「馬鹿ね、バトルって言っても殴り合いだけじゃないでしょ」
「うーん、言われてみればそうだけど」
「それにさ、よく言うじゃん」
買ってきたものの整理が終わり、亜美も眠っているザングースとハブネークのところに行くと微笑みながら言いました。
「ケンカすればするほど仲がいいって。今日の敵は明日の友、明日の友はいつかの恋人ってね♪」
「え、そんな言葉ってあったけ」
ザングースとハブネークの寝顔はなんだかとても満足そうな顔を浮べていました。
【書いてみました】
え、2月14日って、2人で1本のチョコ味のポッキーを食べて幸せになろうというバレンタイン オブ ラブポッキーの日では(勝手につくんな)
……というわけで、バレンタインの日にチョコ代わりにと今回の甘い物語を投下しようと思ったのですが、間に合わず、一日遅れになってしまいました、無念。(汗)
ケンカには本気だけど、こういうことにはきっと不器用だよねこの二匹、と思いながらザングースとハブネークを書かせてもらいました。甘い味がしたのなら嬉しい限りです。(ドキドキ)
ありがとうございました。
【何をしてもいいですよ♪】
【今年は一個(母上から)だけだったぜ。後は自分に買ってあげ(以下略)】
某月某日。
女性が男性に愛でとろけたショコラを送り、愛の言葉を囁き合う、そんな日。
女性は恋の行方に一喜一憂、男性は貰ったチョコレートの数に一喜一憂、いや、チョコレートを貰えるかどうかに一喜一憂している。
お菓子屋ならずとも、店という店にチョコレートが並び、町は数日前から独特の甘い匂いに包まれる。
数年前までそんな日だったはずなのだが、いつの間にやら友チョコとか逆チョコとか自チョコとかが出てきてなんかよく分からなくなった。しかし、町が嗅覚的な意味で甘い匂いに包まれているのは変わらない。
目の前の彼女も、非常に甘い匂いをさせていた。確か、事務の仕事をやっている子だったか。
「はい、どうぞ。エルフーンちゃん」
そう言って、腕に抱えた甘い包みのひとつを、足元のフワモコで可愛いと巷で人気の草羊に渡した。
「ココロモリくんにも」
彼女は机の上で丸くなっていたハート鼻の蝙蝠にもチョコレートを渡すと、今は持ち主が留守の机の上にも包みを置いて、部屋を出て行った。
「……僕の分は?」
ひとりチョコレートを貰えなかったキランは、彼女が去っていった方向を見つめて僻みたっぷりに呟いた。
エルフーンはそんな彼の様子は気にせず、貰ったばかりの包み紙を短い手でビリビリと引き裂いている。ココロモリはチョコレートの包みを足で押さえながら、キランの方を気にしていた。
「食べていいよ」
その言葉に安心したようで、ココロモリは風技と念力で器用に包み紙を切ると、箱を開けた。
キランは上司の机に目をやった。そして、見なければ良かったと後悔した。彼女の机の周囲は甘い有様になっている。
机にはまるでチョコレートしかないように見えた。もしかしたら、机もチョコレートかもしれない。隣り合った机や足元の床にまで、彼女の机に乗らなかったり、崩れたり落とされたりしたチョコレートが積み上がって、甘ったるい山を形成していた。今にも蟻が集ってきそうだ。
朝、キランが出勤していない時間帯からチョコ責めに遭い続けて、昼休みでこれだ。夜には家の一軒ぐらい建つだろう。今はチョコ攻勢から逃亡を図っているが、彼女、帰ってきたら胸焼けで倒れるんじゃなかろうか。
視線を感じてそちらを見ると、トリュフチョコを咥えたココロモリと目が合った。
くい、と顎をしゃくるようにしたココロモリに、キランは手を差し出す。噛み跡の付いたチョコが手の中に転がった。
「……ありがと、ノクティス」
心優しいココロモリは気弱そうに笑うと、エルフーンと貰ったチョコレートを交換する作業に入った。
つきそうになったため息を堪えた。自チョコならぬ自ポケチョコって何だよ。いや、いいんだ。自分を気遣ってチョコレートをくれるポケモンなんて最高じゃないか。うん、そう思うことにしよう。きっとそうなんだ。そうに違いない。
「……はあ」
堪えていたため息が出た。
ハート型チョコはそんなに美味しいのか。せめて向こう向いて食べてくれよ。
という指示をポケモンたちに出すのは空しかったので、キランの方が部屋を出ることにした。廊下に出ると空気が清浄に感じられた。あの部屋はよっぽど甘かったのだ。三回深呼吸して肺の中の空気を入れ替えると、気分がずいぶん良くなった。別に大量のチョコを貰うことが幸せではないと気付いたからではなく
。そして、息抜きついでにご不浄に行って用を足していると、真上の換気扇からエルフーンが出現した。
「そんな所から出るなよ」
換気扇から頭上に落下してアフロみたいになったエルフーンを離しながら文句を言う。しかし、エルフーンはキランの言葉も耳に入らない様子で、短い手足を振り回して酷く慌てている。顔はいつもと同じだが。
「分かった。分かったからズボンの裾引っ張らないで」
キランがそう言うと、エルフーンはひとまず安心したようで、握っていたズボンを離した。そして、キランたちの居室の方向へ走り出す。
しかし、エルフーンは背負った綿に風を受けて、少し走っては舞い上がり、少し進んではまたフワフワ……。
真面目に移動して欲しいが、こいつが本気で移動すると、白い綿だけ残って本人が行方不明になるので、それはそれで面倒である。
仕方ないので、エルフーンを両手に抱えてダッシュした。
見たままを言うと、蟻が集っていた。アイアントが。
部屋の壁を破壊して、鉄蟻の行列がチョコレートの山から外まで続いている。色とりどりの包みを鋼鉄の顎でガキッと挟み、回れ右して壁の穴から外へ這っていく。行列の先頭に出た次の鉄蟻がまたガキッとチョコレートを咥えて回れ右、そのスペースにまた次の鉄蟻が進み出て。
ココロモリが困ったように天井付近を旋回していた。キランも困った。
チョコレートが無くなれば彼らはお帰りしてくださるだろうが、それまで壁は半壊、吹き曝しのままというわけにもいくまい。
それ以前にライモンシティにアイアントはいないのだから、飼い主を見つけてポケモン管理義務違反で注意しに行かなければならない。仕事が増えた。それと、いつの間にか白い綿を残して姿を消したエルフーンも後で探さなければ。
「ああもう」とぼやきながらボールを手に取ったキランを押し退けて、ひとりの女の子が現れた。
先程やって来た事務職の女の子だ。
オコリザルも吃驚なぐらい目を血走らせ、ドン! と部屋の床を踏みしめて仁王立ちになると、ボールを取り出して手の血管が浮き出る程強く握り締めた。触れたら火傷しそうな程、怒っている。
「アンタたち……私がレンリ先輩に渡したチョコレートに汚い顎で触るなあ! 始末なさい、クイタラン!」
ひび割れた声でそう叫んだ彼女が繰り出したのは、縞模様のアリクイ、クイタラン。アイアントの天敵とされるポケモンで、
「ああっ、クイタラン!」
アイアントのストーンエッジで倒されるのはご愛敬である。
アイアントは人に教えられないとストーンエッジを覚えないから、彼らは人飼いであることが確定したわけだが、嬉しくも何ともない。厄介だと再認識させられただけだ。ついでみたいにココロモリも撃ち落とされてしまったし。
そう、後、厄介と言えば、この子も。
「何よ! 他のはいいけど、私のだけでも返しなさい!」
彼女は倒れたクイタランを戻すと、懲りもせずに鉄蟻の群れに向かって行く。無謀だ。
食料の運搬を邪魔されたアイアントたちが、彼女に不気味な鉄顎を振りかざした。
一斉に鋼色の蟻たちが下顎を傾ける様は、見ていて恐ろしい。事務職の女の子もそれは感じたようで、アイアントたちのはるか手前で足を止めた。
シャン、とアイアントたちの顎が同時に鳴る。そして、同時に顎を開いた。次には攻撃が来る。が、その時キランはこいつら息ぴったりだなと全くバトルに関係ないことを考えていた。それから、つい癖でペンドラーのボールを選んでいて、室内でどでかいムカデは出せないと気付き、ならばとドリュウズのボールを探して非常時に限って必要な物は見つからない、つまり詰みだ。
と思ったその時、
「ウィリデ、コットンガード」
いつの間にか戻って来た草羊が、綿の大玉となってアイアントたちの前に立ちはだかった。
先陣を切っていった鉄蟻の顎の脅威をモコモコの綿が吸収する。アイアントの攻撃に思わず立ち竦んだ彼女がホッとした様子でキランを見た。しかし、指示したのはキランではない。
黒髪に紅色のメッシュを入れた女性がキランを押し退けて現れた。キランの上司であり、チョコレートを売る程貰っていた当人、レンリである。
「ウィリデに引っ張られたんで慌てて来たんだが、こりゃ酷いな」
そう述べながら左手で事務の子の肩を掴んで部屋の外に出し、右手でモンスターボールを掴むと、彼女のポケモンを呼び出した。大きな紅色の花を頭に乗せたドレディア。
「ウィリデ、身代わり」
彼女は当たり前のようにキランのポケモンに指示を出すと、続けてパンツスーツをパン、と払った。
それを合図に、ドレディアがわざとリズムの狂ったダンスを披露する。それを見たアイアントたちは、次々と何かに感染したかのようにおかしな行動に移った。アイアント同士で頭をぶつけあったり、チョコレートの包みを粉々に砕いたり。
混乱したアイアントたちを花びらの舞で部屋の外に追い出すと、レンリはいつも肩に乗せているバチュルを使って大穴を蜘蛛の糸で覆わせた。
網の隙間から鉄蟻の恨めしそうな顔。しかし、バチュルの巣は電気が通っているから、いくらアイアントと言えども簡単には突破できないだろう。レベルも違うし。
ほっとするのも束の間、
「これ、修理するの大変そうだな」
上司のひと言で、キランは現実に引き戻された。
穴から吹き込む風が、冷たい。
通りすがりのローブシンに頼んで壁の穴を塞いでもらった。アイアントの持ち主も探してしょっぴいた。それが終わった時には日付が変わっていた。
「疲れた」という間も惜しく、上司は貰ったチョコレートの分類作業に入っていた。ただ単に部屋の隅にチョコを投げてるだけに見えるが。ホワイトデーにお返しをする気はなさそうだ。そう思って見ているキランの目の前で、上司が「あった」と声を上げた。嬉しそうだが、歓声と言うには大人しい声で。
「アイアントに持って行かれたかと思った」
そう言って、彼女は小さな箱を持ち上げた。飾り気のない白い箱が、彼女の白い手の中に包まれていた。そういう風に扱うのは、一体誰からの贈り物だろう。投げ打つ程にチョコを貰う彼女に選ばれるのは――それは、幸運に思えた。
彼女から選ばれる可能性があるのなら、じゃあ何か渡せば良かったと思って、その直後にその考えが嫌になった。上司の姿を視界に入れないよう、キランはそっぽを向いた。その肩が叩かれた。
キランの手に、白い箱が押し付けられた。白い手から。
引っ込められた白い手を追って、キランは肩越しに彼女を見上げた。目が合うと、彼女は髪をかき上げながらも目を伏せて、
「ほら、こういう日だから」
静かに言った。
戻ってきたエルフーンと顔を見合わせて、キランは箱を開ける。紙を一枚敷いた上に、ちょこんと丸いチョコレートが乗っていた。もう一度上司の方を窺うが、彼女はもうキランに背を向けて自分のチョコの山に取り掛かっている。
キランも彼女に背を向けた。慎重に箱の中から甘い塊をつまみ出す。手の平に転がすと、ココアパウダーがチョコを中心に散らばった。小さなトリュフチョコは体温で溶けて消えてしまいそうで、そうなる前にとキランはチョコレートを飲み込んだ。
甘さだけで出来た塊が舌の上で溶け
舌に激痛が走った。
反射的に口を手で覆い、出すのはまずいと思い切って飲み込んだ。すると喉が痛い。辛さが喉の中を上って鼻に回って涙腺も刺激して涙が出てきた。
口を開けて息をした。新鮮な風が当たると、少しだけマシになる。でもまだヒリヒリと、痛い。涙を堪えて上司の顔を見たら、いつもの悪ぎつねみたいな笑みを浮かべている。彼女はそういう人だということを忘れていた。
「ひっかかったな」
そう言って、風のように去って行く。
大量のチョコレートと一緒に部屋に取り残されたキランは、口の中のヒリヒリが収まるのを待つことにした。手持ち無沙汰なので、貰った箱を捨てる前に畳もうかと指先を動かす。底に敷いた紙を引っ張り出す。と、その下にまだもう一枚紙が入っていることに気が付いた。二つ折りになっていたそれを開いたキランは、やれやれとため息をつく。
『いつもありがとう』
そして、唐辛子爆弾を仕掛けた彼女と、これを書いた彼女と、どっちが本当なのかと思い悩む羽目になるのだ。
あそこをくぐり抜ければNがいる。ゲーチスが何か言っていたけれど、関係ない。わたしはただ、Nに言いたいことがあるだけ。
心臓が暴れまわり呼吸が乱れる。パートナーの入っているモンスターボールを握りしめて、わたしは覚悟を決めた。
行こう、Nのもとへ。
Nが、ゼクロムを呼んだ。呼びかけにこたえて、玉座の向こうから黒い竜が現れる。黒い竜は力を誇示するように吠え、電気のエネルギーを撒き散らす。圧倒的な力。あれが、伝説の竜。
体が震える。勝てるだろうか。違う、何をしてでも止めるって決めたんだ。
大きく息を吸う。若草色の目を見据えて、わたしは告げる。
*
N。わたしはきっと英雄なんかじゃない。だってそうでしょう? ゼクロムが現れても、ライトストーンは反応しなかった。
わたしは、あなたに言いたいことがあって来たの。わたしには求めるべき真実なんて分からないよ。この世界のことをほとんど知らないもの。
あなたは多分戸惑っているよね。わたしがこんなに喋るところを見たことがないだろうし。ベルもチェレンも、今のわたしを見たら驚くだろうね。でも、わたしにだって言いたいことがたくさんあるんだ。
聞いて、N。
わたしには分からなかった。なんでわたしが英雄なのか。どうしてNはわたしにこだわるのか。これは、今でも分からないよ。
あなたは何度も接触してきては、一方的に喋り、勝負を仕掛けてきた。電気石の洞穴では、勝手にわたしをニュートラルだと決めつけた。たしかに理想も、真実も知らなかったけど。それに、わたしの意思なんかお構いなしにわたしを選んだなんて言う。竜螺旋の塔でもそう! わたしにライトストーンを探せと言った。
なんで! どうしてわたしなの!
あなただけじゃない。みんな、みんなそう。わたしにやれと言う。わたしの気持ちなんて知ろうともせずに、英雄になることを強制した。流されるままのわたしも悪かったよ。でもさ、だんだん、言えなくなった。言える雰囲気じゃなかった。
みんなわたしに期待して……押しつけて。わたしは、まだこどもなのに。大人たちも、アデクさんくらいしかあなたに挑もうとはしなかった。そのアデクさんだって、わたしにライトストーンを持てと言った。正直怖かった。なのに、受け取れって。押し付ける形になってすまない? だったらやめてほしかった。でも、受け取る以外の選択肢なんてなかった。
あはは、こどもだよねえ。わたしもみんなに負けず劣らず自分勝手だよねえ。でも、もうやめるわけにはいかなかった。わたしだって、ポケモンのいない世界は嫌だったから。わたしがやるしかないって、言い聞かせてた。
ねえ、N。わたしね、あなたの考えには少し共感しているの。傷つくポケモンがいるのはやっぱりいい気はしないよ。たとえば、ずっと一緒にいるこの子たちが誰かに傷つけられるのは、嫌。でもさ、方法が間違っていると思う。たしかに、ポケモンと人間を引き離せば、人間に傷つけられるポケモンはいなくなるよ。でもその代わり、新しい悲しみが生まれると思う。
N。あなたは言ったよね? わたしたちみたいな人ばかりだったら、ポケモンの解放なんてしなくていいって。あなたは迷っているんじゃない?
あなたの部屋を見せてもらったよ。ずっとあの部屋の中で過ごしていたんだってね。
あの部屋を見て、ずっと迷っていたけど分かったんだ。言ったでしょう? 自分がどうして英雄なのか分からないって。ここに来るまであなたと戦うことに踏ん切りがつかなかった。英雄であるだけの、理由なんてなかった。でもこの城に入って、あなたの部屋を見て、あなたの過去を聞いて、自分がどうしたいか分かった。
あのね、N。あなたの見ていた世界はすごく狭くて小さいよ。
わたしも似たようなものだけど。わたしだってカノコタウンから外に出たことがなかったから。
ねえ、あなたは「外」で何を見た?
わたしはポケモンをもらって、外に出ていろんな経験をした。トレーナーとはポケモンバトルをしたし、ポケモンを交換することもあった。ミュージカルに参加したこともあった。人の仕事を手伝っているポケモン、ううん一緒に働いてた。みんな、楽しそうに笑ってた。ポケモンの言葉は分からないけど、見ていてそう感じた。
たくさんの人たちと、ポケモンたち。お互いがお互いを思いやっていた。
N、あなただって見たでしょう?
うん、そう。あなたがあの部屋で見てきたことも本当のことだよ。実際、人間に苦しめられているポケモンもいる。でも、ね。わたしが見たのはたいていプラズマ団のせいだったよ。ムンナの煙が必要だからって、蹴ったりして煙を出させようとしていたことがあったんだ。あの時はすごくびっくりした。この人たちはポケモンを大切に思ってないんだって、口先だけだったんだなって思った。あなたとはずいぶん違っていた。思えば、あれがあったからわたしはここにいるのかもしれない。
それから、ポケモンを解放するんだと言って、ポケモンと人を引き離していたよね。でもポケモンたちは、大切な人と引き離されてつらそうだった。ベルがムンナをプラズマ団に奪われたとき、ベルもムンナも、両方とも悲しんでた。やっぱりそういうのを見ると、こんなのは違うって思ったんだ。
ポケモンと人が出会って、たしかに悲しみが生まれたと思う。でも、それ以上に喜びが生まれたんじゃないかな。あなたは今ある喜びを、幸せを、すべて悲しみに変えるの?
それがあなたの『理想』なの? 目指すべきなのは、今ある幸せを壊すことなんかじゃなくて、悲しみを減らすことなんじゃないの?
わたしはこの子たちと出会えてすごく嬉しかった。喧嘩することもあったけど、一緒にいられて幸せだったよ。
ねえ、N。あなたはポケモンと一緒にいて幸せじゃなかったの? 幸せだったはずだよね?
それはあなたもわたしも、そして他の大勢の人も一緒なんじゃないの? あなたはきっとそれを見てきたはず。
なのに、あなたは自分が見てきたものを否定するの?
あなたがしようとしていることは、今まで見てきたことを否定してまでやるべきことなの?
わたしたちが見たのは、『真実』じゃないの?
*
そこまで言ったとき、バッグがもぞもぞと動いた。はっとして、バッグを開ける。
ライトストーン、が――――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
超今さらですが書いてみました。
書く書く言ってから大分たったのでわたしが言ったこと自体、皆様忘れてると思いますw
ぶっちゃけプレー中は、電気石の洞穴あたりから完全に置いてきぼりされてたので、こんなことは考えてないですw
これを書くためにプレー動画見てみたんですが、ゼクロム登場からレシラム登場までほとんど間がなく、思わずずっこけました。
もうね、明らかにゼクロム現れたから出てきただけだろ状態。
実際にプレーしてたときはあんまり気にならなかったんですけど。
というわけで、こんな感じのことがあったんじゃないかなあという妄想でした。
今更過ぎてごめんなさい!
【書いてみたのよ】【今さらでごめんなさい】
ガサ、ガサ。
子供はおろか、背の低い大人ならすっぽりと隠れてしまうような草むら.
その湿った中を掻き分けて進む一人の男がいた。
彼が背負っている革色のリュックはリズムよく踊る。
空にはどんよりとした雲が浮かび、今にでも大きな雨粒を落としてやろうと言っているかのようである。
男は、煙たい匂いが鼻の奥を刺激するのを感じた。
お香か。
男は、思う。
匂いの風上を頼り、草むらを抜けると、その元はあった。
高く聳える塔。
タワーオブヘブン。
イッシュ地方最大の、ポケモン用の墓地だ。
各地のポケモンの御霊がこの塔で供養されている。
塔の頂上には大きな鐘があり、それを鳴らすことでポケモンたちが安らかに眠ることが出来るといわれている。
内部の各フロアごとに墓石があり、お参りへ来る人が毎日いる。
しかし、天気があまりよくないからか、あたりに人の気配はなさそうだ。
男はキョロキョロとあたりを見回すが、薄暗い影の中の草木しか視界には入らない。
男は、この塔に鐘を鳴らしにきた。
ただ、鳴らしたいと思っただけだ。
それ以外に理由なんてない。
漠然とした理由で来た男は塔を眺めた。
見上げ、霞の向こうにある頂上が透けて見えるかのようにじっと見つめる。
その先の、なんとも形容しがたい魅力を感じる。
男は、すっかり心を奪われていた。
「あの」
という透き通った声が聞こえるまでは。
その刹那、男は体を震わした。
何者なんだろう?
声の主に意識を向けた。
「はい?」
男は振り向いて、その姿を瞳に焼き付ける。
少女が、いた。
ぴゅう、と吹いた風に栗色の髪はさらりとなびく。
栗色のワンピースを着た少女は男をじっと見つめていた。
「おにいさん、塔にのぼるの?」
透き通って、消えてしまいそうなその声は、どこか悲しげだと男は思った。
「そうだね、今から塔の頂上に行くんだ」
ふぅん、と少女は言った。
「あのさ、あたしも、ついて行っていいかな?」
「君もかい?」
「うん」
少女はうなずいた。
「一人で行くの、こわいから」
塔の中は昼間だというのに薄暗い。
壁にかけられた蝋燭の灯はぼんやりと光、墓石を、床を橙に染めている。
中には人はいないようだ。
だが、何かが見つめている。
そんな感覚に襲われた。
「おにいさん、きをつけて。このあたりはヒトモシがすんでいるの」
「そういえば、そんなことを聞いたことがあるよ」
この塔にはヒトモシが生息している。
彼らは人の魂を好んでいるため、下手な行動をすると命取りになりかねない。
そんな話を昔聞いた覚えがあった。
「あの蝋燭もヒトモシよ」
「えっ?」
男は壁の蝋燭を見つめた。
ゆらゆらと炎が燃えている。
蝋がにやりと笑った。
「!?」
男は正体の顔を見たと同時に、腕を引っ張られる感覚に襲われた。
右腕をつかんでいたのは、少女だった。
「はやく行きましょう。こわいでしょ」
少女は足早に歩き始めた。
男は崩しかけた体勢を整え、付いていく。
「危なかった……。しかし、よく知ってるね。ここ何回か来たことあるのかい?」
男の質問に症状はビクッと体を震わした。
もしかして、聴いちゃいけなかったかな。と男が考えていると、
「……うん、何回か」
消え入るような声が答えた。
「一人で来たら危ないから、だれかいないかさがしていたの。そしたら、あなたが来たからたすかった」
少女の手はひんやりとしていた。
塔の薄暗さがそのまま体に出ているかのように。
少女に引きつられて、螺旋階段までたどり着いた。
一段踏み出すごとに、こつん、こつん、と音を響かた。
ヒトモシの灯に映し出されたひとつの影は、鐘へと近づいていく。
長い長い階段の先を超えると鐘があると期待した男は墓が並ぶフロアが続いたことに肩を落とした。
「まだまだ先よ」
少女の発した言葉に重なって、
「……ぼう……」
という声が聞こえた気がした。
「なんだ?」
と男は振り返ったが、人がいる様子は無い。
「ヒトモシのしわざよ。はやくしなきゃせいめいりょくをすい取られるわ」
少女は声の方向に目もくれず、次の階段に向かっていた。
「おにいさん、いそぐわよ」
少女は、駆け出した。
おおっと、と男は声を漏らした。
駆ける少女に引っ張られながら、次の階段へと向かっていく。
彼女の冷え切った手につかまれながら。
幾段もの階段を上り、規則的に並ぶ墓石を目にし、進んだ。
そして、最後の階段にたどり着いた。
「もうすこしで頂上よ」
「ああ、そうかい」
最後の階段の先から光が屋内に差し込んでいる。
一歩、一歩階段を踏みしめる。
外気は少女の手のようにひんやりとしてきていた。
間違いなく、頂上が近いんだ。
男は思った。
「君のおかげでヒトモシに襲われることもなかった」
「そうね……ありがとう」
少女はぽつりとつぶやいた。
階段を踏みしめるごとに、体の重みが男を苦しめた。
ずっと歩き続けたからだろう、男は痛みを堪える。
視界は次第に明るくなっていく。
そして、最後の一段を踏んだ。
頂上は、ぼんやりと霞がかっていた。
その中にうっすらと大きな鐘が見えた。
「これが、頂上か…」
男は鐘へと歩み始めた。
一歩足を踏み出すたびに重くのしかかる感覚を堪える。
そして、鐘の前に立った。
鐘から垂れた紐を手に取り、引っ張った。
ごおおん、ごおおん。
鈍い音がん響き渡った。
遠く、深くまで。
男の心の奥底にまで染み込む。
重い体から何かが離れていくような、そんな感覚に包み込まれた。
目的を達成してすっきりした男が鐘に背を向けると、少女が立っていた。
「もう、かえるの?」
「ああ、やりたいことは終わったしね」
少女は拳を握った。
「……つまんない」
少女は、拳を振り上げた。
「つまんないつまんないつまんないつまんない! もっとあそぼうよ!」
「お、おい……落ち着け!」
少女は体を震わせて睨み付けた。
「あそびたいんだよ? この子たちもあそびたいんだよ?」
刹那、男の肩に重みを感じた。
視線を右肩に向けると、いた。
白い体に、赤いともし火。
ヒトモシだ。
「なっ……」
男は、意気揚々としたヒトモシの姿を見て、頭にぐるぐると何かがめぐり始めた。
「なっ、なんで……ヒトモシがいるんだ……?」
渦の中から拾い上げた言葉を発した。
「あそびたいんだよ? ミ……ンナ、アソビタ……インダ……ヨ?」
少女の顔は、ゆがみ始めていた。
口は左頬の位置まで伸び、鼻は斜めに、目は右頬に傾いている。
口から、目から、鼻から、緑色の液体が流れ始めた。
男は、息を呑んだ。
瞬きをすると、歪んだ少女は消えた。
そこに、一匹のポケモンがふわふわと浮かんでいた。
灰色の体に大きな頭。お腹の4つのボタン。
オーベムである。
「あ、あぁ……」
そこに、少女などいなかったんだ。
最初から幻影だったんだ。
男は、体中の力が抜けきってしまった。
ぺたり、とつめたい地面に尻をついた。
肩のヒトモシはぴょこん、と降りた。
……遊びたいんだよ?
「……やめてくれ……頼む……」
男の体はすっかり冷え切っていた。
次第に近づいてくるオーベムが大きく、そして恐怖に感じられた。
……なんで、遊んでくれないの……?
「やめろ……やめるんだ……この化物……!」
ぴたっと、オーベムの動きが止まった。
……化、物……?
体をぶるっと震わせた。
……ボクって、化物なの……?
悲しそうな瞳で男を見つめた。
潤んだ瞳の奥には何か、淋しげな感覚があるように見えた。
……そうだよね、怖いよね。
オーベムはがっくりとうな垂れた様子だった。
さっきの一言が重くのしかかったらしい。
……ボク、ただ遊びたいだけだったんだ……
「オーベム……」
男は膝をついた。
「酷いこと言っちまってごめんな」
男はオーベムの頭をなでた。
オーベムは驚いた様子で男を見つめる。
潤んだ瞳に男の顔が映りこんだ。
……許してくれるの?
「こっちこそ酷いこと言ったしな。お前はただ遊びたかっただけなんだろう」
オーベムはコクリと頷いた。
「そうだな、ちょっとだけ遊んでもいいぞ?」
……え? 本当に?
オーベムは目を丸くした。
男はああ、と言った。
オーベムは踊るように喜んだ。
……やった、ありがとう!
その姿を見ながら、男はにっこりと笑った。
後ろから、ヒトモシがぴょこんと肩に乗った。
そして、にやりと笑った。
「次のニュースです。フキヨセシティ郊外のタワーオブヘブンそばで男性の遺体が発見されました。
遺体は死後数週間が経過したものと思われ、警察が身元の確認を行っています。
近辺には革色のバッグがあり――」
――――――――――――――――――
お久しぶりです。名前のとおりのものです。
最近ご無沙汰だったので、リハビリがてら。
ところで、書いていくうちにオーベムが可愛く見えてきたんです。
あのくりっくりとしたおめめ。なにこれ可愛い。
もっと怖いってイメージだったんですが、気づいたら抱きしめたくなってました。
そんなノリで無理やり乗り切りました。
【好きにしていいのよ】【オーベム抱きしめてもいいのよ】
回答8:
色違いのゾロアークなら、この前借金を返しにきた。
子供手当が出たからやっと返せるー!ルーピー・ポッポ大統領万歳とかいいながら団子も食ってたな。
回答9:
私の友達が青いブラッキーを持ってました。
普通のブラッキーとは違って、夜に見ると青く光って綺麗でしたが、迫力はやっぱり黄色い方がよかったと思います。
回答10:
(この発言は当局によりスナイプされました)
回答11:
この前、ラブカスを釣ろうとしたら、変な色のホエルコつり上げちゃったよ。一瞬目がおかしくなったのかとおもった。
回答12:
色違いのゾロアークがこの前お店にきました。
先輩と親しいようだから、試作品を食べてもらったら全部まずいって言われた;;
それから口直しに賞味期限が近いやつを食われたけど、小さい子がいるっていうから包んであげたら喜んで宣伝してくれた。いいやつだったよ
回答13:
>12
貴方なにをいってるんですか?ゾロアークが喋るわけないじゃないですか。半年ロムってろ
回答14:
>12
お前ポケモンかよwwwwwwwwwwうぇwwwwwwwwwいいやつwwwwwまじwwwwwwwwステマwww
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知恵袋に寄せられた相談:
5日程前、エンジュシティの南の方で良い雰囲気なゾロアークのカップルを見かけたんですが、何と片方が色違いだったんです!
色違いなんて初めて見たので物凄く印象に残っています。そこでふと気になったのでお聞きします。皆さんが見た色違いのポケモンを教えて下さい!
回答1:
私も4ヶ月程前にヤドンの井戸の辺りで色違いのゾロアークを見掛けました。ロコンと一緒に歩いてました。
ロコンが鬣を触りたそうに見てました。実際少し触ったりしてました。微笑ましかったです。
回答2:
先月の下旬にキキョウシティの西の方で同じく色違いのゾロアークを見ましたね。
確かコジョンドと手を繋いで歩いていたと思います。紫色の鬣が綺麗でした。
回答3:
クチバシティに色違いのゾロアークと通常色のキュウコンの夫婦がいました。可愛いロコンの子供もいてとても幸せそうでした。
ゾロアークがキュウコンに一途なのが凄く伝わって来たっす。あれこそ夫の鑑っすね。
あと、質問者さんのゾロアーク達は絶対カップルじゃないです。決して良い雰囲気でもないです。
回答4:
うちのイーブイが色違いです! 銀色でもっふもふで超かわいいです!
この子タマゴから生まれたんですが最初見た時汚れてるのかと思って洗いそうになりました(笑)
進化させるか悩んでますがそれは別の話ですね。
回答5:
いつだったかは忘れましたがウバメの森で色違いのゾロアークを見た事があります。
キュウコンの尻尾を枕にして気持ち良さそうに寝てました。羨ましかったです。……羨ましかったです。
あの時からいつかキュウコンを手に入れて同じ事をするのが私の夢になりました。羨ましかったです。
回答6:
ゾロアーク大杉ワロタwwwwwwまあ俺が見たのもゾロアークなんだがwww
確か2ヶ月位前にヨシノシティの北辺りで普通のゾロアークと一緒に鬣を梳かし合ってたな。ゾロアークたんカワユス。
まぁ何が言いたいかって言うと、リア獣末永く爆発しろ。
回答7:
僕もこの間ラジオ塔の入り口付近でゾロアを抱いてる色違いのゾロアークを見掛けました。
ゾロアは普通の色でしたが非常に可愛かったです。
それにしてもゾロアークの目撃情報多いですね。同じ個体だったりして(笑)
回答15:
去年の冬頃だったかな、どこだったかは忘れたけど私も色違いのゾロアークを見かけました。
確かフォッコと焚き火囲んでたと思います。言うまでもなく可愛かったです。両方共。
それで確かゾロアークが振り向いた拍子に火が鬣に燃え移っちゃって2匹共焦ってたっけ。あれは笑った。
――――――――――――――――
どっかの誰かに似てますねぇ、フヒュヒ。本人じゃないと良いですねぇ、ニヤニヤ。
という訳で某ゾロアークをお借りしたかも知れませんしお借りしてないかも知れません。どっちでしょうねぇ、ニタニタ。
知恵袋のスレは既にありますが、これは毛色が違うので別で立てました。
とりあえずキュウコンの尻尾を枕にしたいです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【回答してもいいのよ】
【浮気してもい……浮気はだめなのよ】
【回答3はベストアンサーにはならないのよ】
【尻尾を枕にしたいのよ】
3/24追記: 回答15を追加しました
携帯をいじっていたらテキストフォルダからプロットらしきものが飛び出てきましたので、折角だからこっそりあげることにしました。後書きのページにも色々書きましたが、こちらも良かったぜひ(ドキドキ)
【以下、携帯のメモ帳からそのまま抜粋】
ポケモンストーリーコンテスト案を出していこうページ1
★タイトルは?
こちら鏡屋メタモンでありんす。
★主人公は?
メタモン。
殆どのポケモンを知っており、その知識を活かして、その者が知りたい姿を見せる鏡屋というモノを始める。昔、お礼にもらったというキセルをいつも身につけている。一人称はわらわっち。その辺の説明も入れておく。
★どんな話?
イーブイの進化の悩みから可能性の広さを説く【未来編】
ルージュラの恋の悩みから、今というものと向き合う【現在編】
トレーナーが捨てた卵から変えられない過去を説く【過去編】
★流れは?
最初はメタモンの紹介で1000文字以内。
後は未来編、現在編、過去編の順番で各3000文字以内。
★それぞれの性格
・メタモン
古風な喋り方が特徴的。甘いモノに目がない。冷静にモノを見る。
・イーブイ
好奇心旺盛なイーブイで、メタモンに将来のことを相談しに来る。
・ルージュラ
恋に生きているポケモンで、もっと美しくなりたいと思っている。
進化することはできないかとメタモンに相談しに来る。
・トレーナー
卵を孵して、個体値が低いと見るや、そのポケモンを捨てる人。
間違えて高個体値のポケモンを捨ててしまう。
――――
ポケモンストーリーコンテストの案を出していこう。ページ2
★一人称は?
・メタモン…わらわっち
・イーブイ…ボク
・ルージュラ…わたくし
・トレーナー…俺様
★実は。
イーブイは実はトレーナーに捨てられていたポケモン。
後にエーフィに拾われ、育っていく。
話の終わりはイーブイがエーフィに進化して、メタモンが「願わくば、この子のように強く生きて欲しいでありんす」と呟いて終わり。
★セリフ。
・わらわっちはあくまでお主の見たい姿を写したにすぎん。
・未来を決めるのは最終的にお主なんじゃ。
決めて、その先を進んだら、戻ることはできん。
だから自分に責任を持つのじゃ。
それが今というやつでありんす。
・鏡はあくまで表面を映しているだけでありんす。
中身までは映せん。
どんなに姿を変えようともわらわっちはわらわっち。
お主はお主なんじゃ。
中身を変えること……それも進化の一つじゃないかのう?
・知っておるか?
捨てられたポケモンはな、成長すると、やがて捨てられた意味をというものを知って、捨てた人間に復讐するのだそうじゃ。
【このプロットらしきものに関する補足説明】
・現在編にて初期案はルージュラでありましたが、進化しないポケモンにするはずだったのに、ルージュラはムチュールから進化していたことを忘れていました。
ポケスコに提出後、それに気がつき、急いで他の進化しないポケモンを検索。
唇が気に入ったのでマッギョに決定。
・このプロットらしきものを打ち出したのは第二回ポケスコの募集が始まったときで、このプロット(?)を打ち出す前にこの案は薄らと浮かんでいました。
要するに温めていたのであります。
ちなみに、そのときに浮かんだタイトルは『メタモンが語る!』
・ページが二つに分かれているのはメモ帳が500文字までしか入らなかったからです(汗)
このような感じでわらわっちストーリーが生まれたわけですが、実際に物語を書いてみると、オムニバス形式で四つのお話を書かなければいけなかった上に、それぞれの字数目標を破ったりしてしまいましたから、全体で軽く10000字オーバーが起こって調整が大変でした。(汗)
それでは失礼しました。
「ライモンシティ行き、間もなく発車します。駆け込み乗車はおやめください」
帰りのバトルサブウェイが動き出す。ここから帰る人たちはいろんな事情を抱え込んでいた。途中で負けたもの、区切りをつけて帰るだけのもの。ただこの時間は人が少ないのか、広い車両に一人だ。
途中の駅で買い込んだキャンディを一口。そして真っ暗な窓の外を見る。
夜のように真っ暗だ。ここは地下鉄、景色なんて見えない。時々、反対方面に向かうサブウェイが見えた。それ以外は何の変わりもない、ただの暗闇である。
「パスを拝見します」
車掌の言葉に顔をあげる。首からぶら下げていたスーパーシングルトレインの許可証を見せた。
「あれ、さっきのサブウェイマスターの……サガリさん!」
「僕はクダリ!」
名前を間違えられて一気にフォーマルな表情から、プライベートな子供っぽい表情へと変わる。
「クダリさんですか、すいません」
シングルトレインにいたノボリと良く似た人だ。親戚なのかもしれないが、性格がだいぶ違う。
「クダリさんもバトルサブウェイ好きでこの仕事してるんですか?」
「ノボリと一緒にしないでよ!僕はバトルが好きなの!」
同じじゃないか。そう思っても言葉には出せなかった。苦笑いでやり過ごし、荷物から残ったキャンディをクダリに渡す。
「お疲れ様です。青リンゴ味ですよ。よければどうぞ」
サブウェイの窓は相変わらずの暗闇だ。ダイヤが違うのか、他のサブウェイともすれ違わない。
「お仕事は?」
「君で終わり。……さっきから外ばかり見て、何が面白いの?」
クダリがつまらなそうに言う。確かにそうかもしれない。彼にとって見慣れた暗闇。
「クダリさん。誰かが私に言ったんですよ。電車って人生に似てるって」
「なにそのいきなり哲学。僕に解るよう説明してよ」
「受け売りなんで上手く解釈できないんですが、電車は乗り遅れたら二度と乗れない。人生も、チャンスの電車に乗り遅れたら二度と乗れない」
クダリはとてもつまらなそうだった。相づちの声からしてもう話を聞いてる態度ではない。
「クダリさん、私、過去に一人、すれ違ったままの人がいます」
「その人は、ポケモンを人間から解放するといった信念で突き進みました。私は違うといって対決したままいなくなりました。その他にも私には友達がいます。二人とも、途中迷ったりしてましたが今では自分の道をいってます」
「その時、私は何をしていたんでしょうか。みんなより人生の特急に乗った気分で、二人に勝った気でいたんです。二人とも、普通列車に乗って、乗り換えで迷っても自分の行き先を見つけたのに私は乗り換え駅でどの電車にのっていいか解らないんです」
「で?」
今まで黙ってたクダリが口を開く。
「で、って、私が今思ってることですよ」
「何を迷ってるか知らないけど、乗り換え駅なら来た電車に乗ればいいじゃん」
クダリが飴を嚼んだ。
「これだから子供は嫌いだ。迷ってる自分がかっこいいとか思ってるんだもん。乗り換え駅にいて迷ってるっていう自覚あるなら最初に来た電車に乗ればいいだけじゃん。君つかれる」
クダリが立ち上がる。座ってる時とは違って、その背丈は大きい。クダリを目で追うと、窓の外に灯りが見える。
「もうライモンシティに着くよ。それじゃ」
「あ、クダリさん!」
「何?」
「また勝負してくださいね」
「君が勝ち抜ければね。……直接申し込むんだから腕には自身あるんだろ」
クダリは車両のドアに手をかけた。そしてもう一度振り返る。
「君、名前は?」
「私ですか?私はトウコです」
「ふーん、そう。じゃ」
そのままクダリは白いコートと共に消えて行く。トウコはその方向に頭を下げた。
ーーーーーーーーーー
バトルサブウェイの帰り。今まで辿ってきた道は何だったのか。見えない窓を見て主人公は何を思うのか。
幼なじみはそれぞれ目標をみつけたのに、主人公だけぽーんと放り投げられたようで、エンディング後はもしかしたら
クダリにはまだ会ったことないけど下りだからクダリさんにした。
【好きにしていいのよ】【最近サブマスが気になるのよ】
メッセージありがとうございます!
ポケモン嫌いは結構好きな題材でした。
「私」側からの一方的な視点の話であったのに、タブンネの気持ちを汲んでもらえてとても嬉しいです。
他者と暮らすにはある程度の知識が必要ということですね。
親は自分が世話するんだから「私」は知らなくていいと思ったのか、両親もあまり知識がないか。
どちらにせよ些細なズレでこんなになってしまったのです。
それは現実の人間関係でもそうなんじゃないかなあと思います。
切ないっていう感想もらえて嬉しいっす!
ありがとうございました!
【タブンネの半分は優しさでできています】
久しぶりにマサポケを覗いたら、なんとまあ「ポケモン嫌い」を書いてくださっていた……! ありがとうございます!
なんだかもう……切ないなあ。
タブンネに対する誤解で嫌悪を募らせる“私”と、嫌われながらも“私”と家族を気遣うタブンネの姿が……うわああああ orz
愛玩用として可愛がられていたが為に、父親の変調に気付いてもどうしようもなくて。母親までもが同じ変調を抱えてしまって……それもどうしようもなくて。見守り続けることしか出来なかった上に、“私”からは殺されそうになるほど憎まれて……うおおおおお orz
でも、“私”が悪いのかといえばそうじゃないんだろうなあ、と。情操教育の為に子供に生き物を与える、というのは割と聞く話ですが、子供が全て生き物に興味を持つかと言えばそんなことは無いわけで。当然興味を持てない子だっているし、そんな子からしたら突然現れた「家族の一員」なんて煩わしいだけなんでしょうね。
ただ、もし両親が“私”とタブンネを引き合わせる時にきちんとした説明をしていたら。もし“私”が自分でタブンネの事を調べようとしていたら。
誰が悪い、という訳でなく、無知故に起こった思い込みによる悲劇だと思うと……悲しいなあこれ……。
> 「タブンネってポケモン知ってる? 倒すとたくさん経験値をくれる、優しいポケモンよね!」
相手を瀕死に追い込まないと経験地が貰えないという事を考えると、この一言はなかなかキッツイですね……。願わくば、いつか彼女に真実を知る日が訪れますように……。
面白かった、という表現はそぐわないかもしれませんが、この作品を読めて良かったと心より思います。読了後も残る切なさが半端ないです。
書いてくださったことにお礼を申し上げます。本当にありがとうございました!
【げしげししていいのよ……だと……? とんでもねえ!!】
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