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あれは私が五歳か六歳くらいの頃だったかな?
コーンさんがポッドさんに子供らしい悪戯を仕掛けて逆襲に合い、わんわん泣きじゃくるという、今の紳士っぷりからはとても想像出来ない珍事件が多発してたっけ。
なんで急にそんなことを思い出したかって言うと。
「おぷッ! おぷおぷおぷおぷー!!」
「や…やぷぅ〜! やぷぷぷぅ〜!!」
この状況が、当時のそれにそっくりだからだ。
「またか…飽きないわね…」
バオップに後ろからちょこっと水鉄砲をかけて驚かせてみたヒヤップが、猛烈な反撃に合ってわんわん、もとい、やぷやぷ泣きじゃくっている。今日だけでもう三度目。ほんと飽きない子たちだ。
一度目こそ間を取り持ったものだけど、見ている内にこれは放っておいても大丈夫そうだと気がついて、今は完全に放置してる。だってしばらくすれば、絶えず号泣するヒヤップにバオップが先に折れて、なんとか泣き止んでもらおうと慌てて謝り始めるから。
この、なんだかんだで結局ヒヤップに甘いバオップの姿も、昔のポッドさんを見ているようで懐かしい気持ちになる。ポッドさんはコーンさんに泣かれると物凄く弱かったのよね。
少ししてヒヤップが声を収めていき、バオップがもう怒っていないか窺い始める。バオップは常時困っているような顔を綻ばせて、ヒヤップを安心させようと努める。その結果、二匹はあっと言う間に仲直り。ぎゅっと握手を交わした。
そんな光景を見つめていた私は途端に、現在のコーンさんの十八番・白け顔になる。そんなに仲良しなら最初からちょっかい出したり怒ったりしなきゃいいのにね、と、もっともなことをヤナップに向けて溢してみた。
「なぷ♪」
隣に立つ木の枝からぶら下がって、同じく二匹を眺めていたヤナップが、私を見て嬉しそうににこにこ笑った。この傍観具合はまさに、デントさんだ。
昨日、三つ子から小猿の世話係に任命された私は、食事や就寝は自宅で面倒を見て、他の時間は夢の跡地などの町外れに赴き三匹を遊ばせる、というサイクルを現在進行形でこなしている。
急にポケモンを――それも三匹も家に連れ込むことになってしまい、両親から何を言われるかと心配だったのだけど、二人の反応は随分とあっさりしたものだった。
「父さんたちは全然構わんぞ。一所懸命、頑張ってごらん!」
「メイは自分のポケモンを持ってないし、いい経験になるわねぇ!」
なんだろう。非常に淡泊。他にもっと言うことあるだろうに。もしかしたら三つ子と裏で何かしら通じていたのかもしれない。現に店の裏(と言うか奥)で常時通じているけども、無論そういうことじゃなく。
何はともあれ結果オーライだし、勘繰るのはそれくらいにした。
さて。丸一日一緒にいれば、三匹それぞれの性格や対応を粗方把握出来る。
ヤナップは一見おっとりしてるんだけど、三匹の中で一番好奇心が旺盛。大体いつも最初に事を起こすのはこの子だ。
バオップは常に体を動かしている行動派。じっとしてるのが苦手みたいで、せっかちなのかな。あと少し怒りっぽい。
ヒヤップはお利口さんに見せかけておいて、内実かなり甘えん坊で泣き虫。何かあると真っ先に私の所に飛んで来る。
彼らは始めから私に懐いていたし、チョロネコの時とは進展の速度がまるで違った。もう、この子たちのことならなんでも聞いて、って感じ。
今までこれほどの長時間、ポケモンとすぐ傍で過ごしたことは無かったから、色々と発見があったりして(モンスターボールって便利なんだな〜とか、ポケモンって結構臭いんだな〜とか)、なんだか少し楽しくなってきちゃった。
昨日のあの時点では不承不承だったのに、変化するものだなぁと、我ながら感心してしまう。
「おい、メイ!」
「へ? あ、ポッドさん!」
跡地の階段に三匹と並んで座り、果樹園で採って来た果物をおやつ代わりにかじっていたら(三匹の食欲と言ったら相変わらず凄まじい。朝も昼もたっぷり食べたのにまだまだ入るみたい)、ざくざくと雑草を踏みしめて、ポッドさんが顔を出した。
と同時に、すぐ近くまで来ていたミネズミたちがさっと瓦礫の後ろに逃げ隠れ、尻尾を立てた警戒体勢を取る。
「なんだよッ。オレそんな怪しいか?」
小鼠たちの反応に少々傷ついたのか、どことなく寂しそうに言うポッドさん。
「あんまり見ない人だから驚いただけですって」
とりあえずそうフォローしておく。
ミネズミは元々警戒心がポケ一倍強いらしいから、仕方ないと言えば仕方ない。ちなみに私は頻繁にここへ来るので顔を覚えられていて、ポッドさんほどは警戒されなかった。
数秒経てば、ポッドさんが着ているウエーターのユニフォームから(そんな格好で来たら汚れちゃうのになぁ)美味しそうな匂いが漂って来るのに気がついて、ミネズミたちは鼻をくんくんと蠢かせ、ゆっくりこっちに戻って来た。ついでにお騒がせトリオも食べかけの果物片手に吸い寄せられて行く。ポッドさん、急にモテモテ。
「あの、どうしたんですか? 何かあったんですか?」
わざわざ訪ねて来るなんて、何か深刻な相談事があるのか、重大な事件なんかが起きたのか。事によってはお騒がせトリオそっちのけで応援に行きますよ。
「別に? 手透きになったから見に来ただけだぜ」
「……そうですか」
由々しき事態予想は不発に終わった。
「なぷぷーっ!」
「おぷぷーー!」
「やぷぷーぅ!」
お腹が満たされ体力を取り戻した三匹が、再び跡地の中を遊び回り出すのを、私はぼんやり眺める。小猿たちがいなくなって空いた箇所に、ポッドさんがどっかと腰を下ろした。そうして、私と同じように彼らの方を見る。
三匹は、辺りに立ち並んだドラム缶を飛び石みたいにして順番に飛び移ったり、屋根を形作っていたはずの鉄筋を綱渡りのようにして、跡地の中を端々まで探険して行った。
「楽しそうだなー」
「楽しそうですねー」
実の無い受け答え。だけど本当にそうとしか言葉が出て来ないのよ、あの子たちの動き回る様子を見ていると。
一体、何があの子たちをあそこまでうきうきとさせているんだろう? 考えてみると、昨日デントさんを介して聞いた彼らの経緯が思い出された。
旅――。
彼らは独立するにも早い時分で、独立以上に難しい挑戦をしているのだっけ。
そうは言ってもまだまだ子供な訳だから、高度な判断力は持っていなくて、お陰で行き倒れになりかけたけど……それでも、ライモンシティからここまで三匹だけで来たと言うのは、充分賞賛に値すると思う。
旅と言う、夢中になれるものがあるから。色々な場所へ行きたい、という目標があるから。三匹はあんなにきらきらしてるのね。
そんな答えを私は導き出す。
そして次に考えるのは――そういうものを私は持ってないんだなぁ、という現実。
「目標があるのって楽しそう」
ふっと、ポッドさんが不可解そうな表情でこっちを見た。
あ。今の、声に出てた?
聞かれても問題無い呟きだったので、後に言い訳とか補足だとかは続けなかった。だけどポッドさんは変わらず、食い入るような眼差しで私を見て来る。そんなに変なこと言ったかな?
互いに一言も発さず、不思議そうな顔を睨めっこのごとく向かい合わせる。十秒くらいそうしたら、観念したのか相手が先に目を逸らし、表情を改めてから口を開いた。
「おまえさ。自分のポケモンを持って、勝負したいって思わねーの」
想像の網に掠りもしなかった言葉が繰り出され、一瞬「?」となったけど、素直な気持ちで答える。
「思わないですねー」
私は人並みにポケモンが好きだけど、トレーナーとか勝負とか、そういったことにあまり興味が無い。トレーナーの指示通りに戦うポケモンの姿を見て、かっこいい! とは思うのだけど……自分がそれをやりたいかって言うと、答えはノー。
勝負を持ちかけられても片っ端から断っちゃうかも。でもそれは相手に失礼だよなー、なあんて考えちゃって……だから私は自分のポケモンを持とうとは思わないんだろう。
ポッドさんからの問いを受け、私はこの時初めて自分の、ポケモンへの考えというのを掘り下げた。野生のポケモンを観察したり、人が連れているポケモンと触れ合うくらいが、私には合ってるんじゃないかな。
急に何故そんなことを言い出すのか不思議に思った。けど、直後に思い当たる節があることに気がついた。私の両親だ。
両親は近頃、私の将来が心配らしい。私がいつまでも、昔とさほど変わらないことを漫然と続けているから。周囲の同年代の子はみんなそれぞれに夢を持って、それを実現するため動き始めているというのに。
宅の娘は悪い意味で、ちっともブレないんだから――なんて風に案じているのだとか。……そう言われましてもねえ。
そういった二人の嘆きを、ポッドさんは小耳に挟んだのかも知れなかった。
だけど、どうして『トレーナー』なんだろう?
「だっておまえ、チョロネコ手懐けたんだろ。あいつらもすっげえおまえに懐いてるし……トレーナーの才能ありそうじゃんか?」
あいつらも、という所でポッドさんは場内を駆け回る小猿たちを顎で指し示す。
直ちに「チョロネコは手懐けたんじゃなくて打ち解けたんです」と訂正するも、「似たようなもんだろ」と即切り返された。似てないですって。似て非なるものですって。
「簡単にしてのけたみたいに言いますけどね。チョロネコとの戦いはそんなに甘くなかったんですよ?」
「へー。そうなのか」
ポッドさんの返答ではたと気がついた。そう言えば、私とチョロネコとの交戦録を誰かに話したことは無かったわ、と。
折角の機会だし、私はポッドさんに一部始終を話すことにした。
「始めはホント大変でしたよ…」
ある朝突然カラフルヘアートリオから、夢の跡地へ食材の調達に向かってほしい、との指令が下され、右も左も分からない林へ一人きりで入る羽目になっただけでも泣けるのに――
愛想良く近づいて来たチョロネコとじゃれていたら、その仲間のチョロネコに採ったばかりの果物を全部盗まれてしまったのだ。去り際に私の注意を引きつけていたチョロネコが、開いた口が塞がらない私に向かって、まるで人間みたいに「あっかんべー」って…………今思い出しても腹が立つッ!!
店に帰ればポッドさんに散々詰られるし、踏んだり蹴ったり。あそこにはもう行きたくない、チョロネコに会いたくないと訴えてみても、翌日にはまた向かわされてしまうから、さあ困った。あの時ばかりは「頑張ってね〜」なんて暢気に吐くデントさんが恨めしくてしょうがなかったのを覚えてる。
二度と騙されるもんかァ――!
決意を固めた私はチョロネコをいち早く発見して回避するために、跡地内では常に睥睨しながら歩くことにした。万が一チョロネコが愛らしく近づいて来ても、「お前たちの手口はお見通しだ」とばかりに睨みを利かせ、諦めさせる。作戦は完璧……のはずだった。
“あの”チョロネコを造作も無く追い返す、という挙動が余程恐ろしく映ったのか、ミネズミやムンナが必要以上に私から遠ざかってしまって……これじゃいけない、他の策を講じないと、と思い直した。
避ける方法ではなく、仲良くなる方法。それを見つけなければ!
「それで、チョロネコの関心があるものを探ろうと思って、観察を始めたんです」
休み時間に跡地へ赴き、遠くからこっそり観察し続けた結果、この辺りに棲むチョロネコたちは爽やかな香りと酸味を特に好むことが解った。跡地の林にはそういった香草や果実が数多く自生しており、それらに囲まれて育ったからなんだろう。私たちが言うところの故郷の味だ。
そこで早速彼ら好みの食材を用い、ポケモン用のお菓子を拵えて持って行った。彼らは一斉に「なんのつもりだ」と怪しむ目つきを見せたけど、匂いを嗅いで考えを改めたらしい、ひょいひょいとお菓子を持ち去ると全部、みんなで美味しそうに食べてくれたんだ。
それから一週間ほどの間、お菓子の他にも彼らが好きそうな花をプレゼントしたり、同じ目線になって同じ景色を眺めたりして、毎日少しずつ距離を縮めた。彼らが私に対してそう感じていたように私の方も、彼らに抱いていた警戒心が少しずつ薄れ、消えていった。
初めて会った日から三週間くらい経って、やっと私は彼らに騙し討ちをされること無く、食材を一つも欠かすこと無く、お店まで届けられるようになった。こうして私はチョロネコたちと信頼関係を築き、彼らとの間に丁度好い距離を作り出すことに成功したのだった。
「仲良くなりたい場合、食べ物を譲り渡すのが一番効果的なのは、人間もポケモンも同じかもしれないですね」
「あー。かもな」
「…………」
って。ポッドさんてば、人が真面目に話してるのに「へー」とか「ふーん」とか「はーん」とか、気持ちが籠ってない返事ばっかり!
旧知の仲だからか遠慮が無くて、私に対してお心遣いが結構な勢いで欠けてるのよね、この人。三ツ星のお客さんや私の友達なんかへの対応とは、明らかに温度差があるもの。その三分の一くらいでいいのでもう少し心を籠めて接しては頂けないでしょうか。
……話を戻そう。
大体、私はトレーナー業に関心が無い訳で。
「そう好きでもないことをやるだなんて、なんだかおかしいじゃないですか?」
そのように異議を申し立てる。
「そりゃあ、そうだろ……うん」
が、歯切れの悪い一言しか戻って来なかった。
「……あのー……?」
今日のポッドさん、なんか変だ。さっきから薄々変な予感はあったけど、いよいよ変だ。
階段に座した自分の両膝辺りに眼差しを注ぐポッドさんの横顔は、何かを躊躇っているかのよう。コーンさんが私に「服が裏表逆ですよ」的な発言をする前の表情、と表現するのが適切かな。でもそういう顔はコーンさんだから決まるのであって、元気溌剌・直情径行のポッドさんには似つかわしくない。
「ポッドさん。言いたいことがあるならハッキリ言ってくださいよ。ポッドさんらしくないですよ!」
このまましばし言い淀みそうだったので、助け船を出すつもりで指摘してみたら、ポッドさんはぽかん、とマメパトが豆鉄砲食らったような顔つきになった。
そしてぶるぶる頭を振ったかと思うとガバッ! と立ち上がる。
えっなに?!
思わず身構える私に、吹っ切れたような面差しでポッドさんは言い放った。
「アーもーいーや!!」
「…………へっ?」
今度はこっちが呆気に取られる番。
「オレの知ったこっちゃないしッ。よし! オレもう店に戻るぜ!」
すっかりいつものポッドさんに元通り。それはいいけど……こちとら何が何やらちっとも分からないんですが?
混乱している私を放かってウンウン頷き、「そんじゃ!」なんて軽いことこの上無い別れの挨拶を置くと、ポッドさんはすたこらさっさと跡地を出て行った。
「なんだったの」
取り残された私は一人呟く。当然、応える声は無い。離れた所で三匹が、楽しげな声を上げているのがわずかに聞こえて来るだけだ。
「…………」
あれほど煮え切らない態度のポッドさんを見たのは……私が知る限りでは、多分これが初めて。
本当は何かあったんじゃないか?
不審に感じながらも、私はまだまだ元気いっぱいな小猿たちの監視、及び観察を再開した。
*
お騒がせトリオとの共同生活、二日目。
今日はまだ薄暗い内から――六時にアラームがセットされてる目覚まし時計が鳴り出すより前に――三匹が私のベッドで跳ねまくって煩わしくてしょうがなかったので、仕方なく起きた。
父の提案を受け、今日は街の西にある公園へ行くことにすると、母が昼食にとお弁当を持たせてくれた(料理人作と言っても、サンドイッチに卵焼きにコロッケと、至って普通のラインナップよ。果物の量が異常なだけで)。小猿たちに急かされつつ家を出る。
出発は通勤ラッシュが始まるにも早い時間帯だったけれど、目的地へ到着する頃には、急ぎ足のビジネスマンやOLさんをぽつぽつ見かけるようになっていた。
辿り着いた公園は中央に大きな噴水が陣取り、周囲を滑らかに刈り揃えられた芝が占める。芝の上には点々とマメパトのトピアリーが立っていて、更に池が周りをぐるりと囲んでいる。
そこで、ランニングシューズを履いたお兄さん、ヨーテリーやハーデリアを連れたお爺さんお婆さん、それに野生のポケモンたちが、思い思いに過ごしていた。
「なぷっ!」
「おぷー!」
「やぷぅ!」
夢の跡地とはまた違った雰囲気の広場に、三匹はテンションが高まったようで、ぴょんぴょん飛び跳ねる。
「周りに迷惑かけないように遊んでおいで」
言うやいなや、ヤナップ、バオップ、ヒヤップの順で走り出す。それを感心と呆れの五分五分で眺め、噴水の縁に、背負っていたリュックをどさっと置いた。
こんなに重量感があるお弁当、お弁当とは呼べない。と言うか、どうして私が全部持って来てるのよ。半分以上はあなたたちが食べるんだから、あなたたちが持って来てよね。ブツブツ呟いてしまう私をよそに、三匹は散り散りになったり集まったり、抜きつ抜かれつ競争のように園内を駆け回る。かと思えば、進行方向から散歩中のムーランドがのっしのっしと威厳たっぷりに歩いて来ると、慌てて引き返して来たりもした。
「ふぅ…」
リュックの隣に座る。小猿たちが自分たちだけで遊んでいる間、私には平穏な……または、暇な時間が訪れる。時間を潰すための何かを用意して来た訳ではないので、当然の帰結と言うべきか、考え事に耽った。
今の時間帯、三ツ星ではモーニングとランチに向けての下準備が行われている。
本日の日替わりランチのメインは、ケチャップライスにチャイブの葉を混ぜた、ふわふわエルフーン風オムライス。あっさりシンプルな味付けで、カロリーも普通のそれより抑えてあるから、女性にも人気がある。私もお気に入りのメニューなの。
今日は誰が跡地へ行くんだろう。チョロネコにちょろまかされないといいけど。
ハーブの調達であれば、あの子たちの面倒を見ながらでも充分可能だと思う。それくらいはお手伝いしたいのに、私の気持ちとは裏腹にお店からの連絡は皆無。私はいなくても構わない、ってことなのかなぁ。そんな風に考えてしまって、ちょっぴり寂しくなった。
それと同時に、こんな考えも浮かぶ。
もし三ツ星で働いてなかったら、私は今頃どこで、どんな生活を送っていたんだろう……。
みんなカロスカロスしているので、これもカロス繋がりで旧約聖書から引用したものだと思われそうですが。
実はポケモンの小説として有名な「ポケットモンスターthe animation」の記述を参考にいたしました。
おそらくポケモンの起源や神話について言及した中で最も古い公式資料で、「ポケットモンスターの世界における民俗・文化」を取り上げるならばこれにも是非とも触れるべきだと思いました。ちなみにポケモンジャーナルでは一貫として「いつの間にかポケモンが居た、何故いるかは誰も知らない」としか書かれてなかったはずです。
今では当たり前のように出てくるポケモン世界の歴史と神々ですが、ゲーム中でちゃんと登場したのはホウオウとルギアの伝説を取り上げた金銀以後。初代時代は三鳥に詳しい説明は無く。ミュウ起源説は珍しい珍しいと皆にもてはやされたミュウが噂の中で神格化されただけで、金銀の図鑑説明で初めて「すべてのポケモンの起源かも?」と公式に明記されて、さらにルカリオの映画のコピー(すべてはミュウからはじまった)で有名になりました。
では物語へ伝説ポケモンの関与が一切無かった、まっさらな時代に設定された神話とは例えばどういうものなのか?と言うと、このように神とされるポケモンが一切出てこない神話で、それを知った私は深く感動したものです。
人は神に似せた存在で、第六日までに創られた地球上の全てのものの支配を神より任せられますが、その後 第七日に創られたポケモンは人から支配されることは神から任せられていない。人は神の「かたち」を似せたが、ポケモンは神の「ちから」を似せたものであり。ポケモンの「かたち」は人を含めたすべてのかたちに似せて創られた、人もポケモンも同じように似せて作られたものである。
と本当はこういうことも記事の解説に入れていたのですが、文字数制限に引っ掛かるので、泣く泣く半分削りました。他の記事は文字数制限なんて気にしない作品も多いので、気にせず送ってしまえばよかったかもしれません。
今ではアルセウスやゼクレシ ゼルイベなどのでんせつのポケモンが群雄割拠してますが、当初のポケモンにおける伝説はどのように捉えられようとしていたかを知っていただけると幸いです。
感想いただけただと…!?ありがとうございます、喜びに舞い上がってます!!
> しかもザングースにタカアキさん。親子の血というか脈々と流れるなにものかの存在を感じざるを得ません。
それはもう、親子ですからネーミングセンスとか似通いそうだなと(笑)
また手持ちが増えても主人公さんはこんな感じで名前付けるんでしょうね
> あれ? それ結構重大事件では……
自由奔放な母親のおかげで、ちょっとやそっとでは堪えない強かな子に成長した主人公さんです。
彼女にとってこのくらいよくあることのようで
お父さんと暮らしたらこんな感じかなぁと妄想しつつ書いてみました。
座布団でゴロゴロするお父さんとか、一緒にテレビ見たりしてるとことかも書きたかったです。
お庭にはきっとゴスの実が植えられているんだろうなぁ…。
またネタが降臨したら、お父さんと主人公さんのドタバタが書けたらいいなぁと思っております。
ちょっとでも笑っていただけたら幸いです!
こちらこそ読んでいただきありがとうございました!!
一行目と二行目で心を掴まれてしまいました。マッスグマのお父さん! 確かにポケモンのニックネーム五文字までいけるから「おとうさん」って入るけどなんで付けたのよ!? とつっこみたくてつっこみたくて。
しかもザングースにタカアキさん。親子の血というか脈々と流れるなにものかの存在を感じざるを得ません。
> それはもう涙なしには語れない深い事情が…。ということもない。
>ただ、数年前に突如トレーナーだった母親が失踪し、家に帰ると卓上に「お父さんと仲良く暮らしなさい」というメモと、その傍らに一匹のマッスグマが鎮座していただけである。
あれ? それ結構重大事件では……
しかし、それを重大と思わないところに有り余る魅力を感じます。
お父さんと仲良く暮らしている、その雰囲気が文章のそこかしこから漂ってきてたまりません。お父さんの仕草や様子を細かく描いているからでしょうか……ゴスの実好きなお父さん、口からゴスの実飛ばして吠えるお父さん、食器出してって言ったら不満そうなお父さん、どれも素敵です。素敵ったら素敵です。
本当、にやにや、かつ、ほのぼのしました。ありがとうございました。
「ねぇお父さん」
その呼び掛けに当たり前のように一匹のマッスグマがこちらを振り向く。この現象は何ら不思議ではない、何故なら私は彼に向かって声を掛けたのだから。
「今日晩ご飯何がいい?」
お父さんはクルルと喉を鳴らすと座布団から立ち上がり、冷蔵庫からゴスの実をいくつか持ってきた。彼の好物である。
「分かった、じゃあこれでサラダ作るね」
そう言うと、満足気な顔で座布団に戻って行った。今日の夕飯の一品はゴスの実サラダに決定。あとは適当なお惣菜と白米でいいだろう。
「あ、お皿とか茶碗準備しておいてね」
私は居間で寝転ぶお父さんが何か反論するように低く唸るのを聞き流し、キッチンへ向かった。
言っておくが私はれっきとした人間であり、ジグザグマやその他卵グループりくじょうの生き物ではない。由緒正しい人間には間違いない。私の知りうるところでは。では何故あのマッスグマを「お父さん」と呼んでいるのかと問われれば、それはもう涙なしには語れない深い事情が…。ということもない。ただ、数年前に突如トレーナーだった母親が失踪し、家に帰ると卓上に「お父さんと仲良く暮らしなさい」というメモと、その傍らに一匹のマッスグマが鎮座していただけである。その日から私は彼を「お父さん」と呼び、こんな感じで一応仲良く暮らしているわけだ。
母は腕の良いトレーナーではあったが、短気というか飽き性で、元々ひとつの場所に留まっていられない人だった。私が大きくなる頃には地方を股に掛け、あちこちを旅していたので家を空けることはよくあった。ジムバッヂ3つで飽きたなどと言って中途半端に帰ってきたり、そのくせ数ヶ月後に何を思い立ったか続きがしたいと旅に出る。そんな人だった。父親はこんな母親に愛想をつかして、とうの昔に違う女に付いていった、とは母から聞いた話である。
居間からお父さんのクルルルルという呼び声が聞こえハッとした。ボーッとして手を止めていたようだ。おい、遅いぞ飯はまだかと言われているような気がする。急いでゴスの実サラダと冷蔵庫のお惣菜を持っていくと、ちゃぶ台に二人分の茶碗と取り皿、私の分だけの箸が置かれていた。
「ごめんごめん、ちょっと考え事してた。お待たせ」
座布団を移動させご飯のときの定位置につき、準備万端で私とサラダとお惣菜を出迎えている。向かい側に座ろうとすると茶碗を鼻でつついて私を見つめる。
「あ、お米」
すっかり忘れていた。慌ててご飯をよそう。ごめんって、と言えば訝しげな顔でグルルルと小さく声をあげられた。しっかりしろよとでも言いたげな様子であった。
毎回お父さんとの会話は当てずっぽうだ。ポケモンの言葉は人間の私には分からない。本当に言わんとしていることは違うかもしれないけれど、今までこの方法でやってこれているのだ。私の解釈は大きく逸れてはいないんだろう。多分、恐らくきっと。
「ああそうだ、お父さん。聞いて欲しいことがあるんだ。ご飯食べながらでいいから」
おっといけない、このまま切り出せずにいては何のために今日の夕飯リクエストを聞いたか分からない。ご機嫌とりもそこそこに、本題に入らなければ。サラダが気に入ったようで、食べるのを止めず目線だけが向けられる。然も重大そうに話しては、途中で逃げられるかもしれないので軽くいこうと関を切った。
「あのね、紹介したいひとがいるんだけど」
瞬間、ごふぅという音と共にお父さんがフリーズした。口からゴスの実出てますよお父さん。こちらを凝視する顔は、ノーマル技しか覚えていないときにうっかりゲンガーにでも出会ってしまったときさながらであった。細くクルル…と鳴る喉は、嘘だろ…とでも言っているのだろうか。
「タカアキさんっていうの。今会ってもらおうと思えばすぐにでも出てきてもらえるから。それで少し話を…」
続けた途端、机を前足で叩き大きな音で私の言葉を遮った。ギャウギャウと口から食べ物を飛ばしながら吠える。興奮しすぎていて、これが人間の言葉であってもなにがなんだか理解出来なさそうな勢いだ。今まで何で黙ってたとか、突然すぎるとか、とにかく怒りと惑いが伺える。私はまだギャウギャウ吠え続けるお父さんに負けず声を張り上げる。
「もう、決めたの。私が腹を括ったんだからお父さんも覚悟決めてもらおうと思ってる」
ぎっと睨み付けて言えば、吠えたままの口の形でぽかんとしていた。そのまま強く睨み続けると、目を泳がせてちゃぶ台から前足を下ろし大人しく座り直した。その表情は大変に不服そうではあったが、落ち着いて話を聞いてはもらえそうだ。
「準備してくるから、ここで待ってて」
私はそんなお父さんを居間に置いて、自分の部屋に入った。そこにはタカアキさんが心配そうな顔で座っている。さっきの騒ぎを聞かれてしまったようだ。私は無言でタカアキさんの手を握り、頷く。よし、行こう。彼と一緒に足早に自分の部屋を出て、居間に戻るとお父さんは背を向けていた。
「お父さん」
呼び掛けても背を向けたままだった。そんなことをしても私の気持ちは変わらない。
「こっち向いて。ちゃんと聞いて」
お父さんはゆっくりとこちらを向いた。床を見つめるその目が、これまたゆっくりと私たちを見上げる。と、同時に。すごく、ものすごく驚いた顔になった。口をパクパクして、酸欠のトサキントのようだ。
「お父さん、彼がタカアキさん。私のパートナーになるの。よろしくね」
私は隣に緊張の面持ちで構えるザングースのタカアキさんをもう一度しっかり紹介した。お父さんは未だ声を出せずにいるようだ。とりあえず、吠えつきはされなかったので本題を続けた。
「私もね、旅に出ようと思うの。リーグ挑戦、本当はずっと夢でね。いつかは行こうって思ってたんだ。それでこの前タカアキさんを捕まえて…ずっとお父さんに黙ってたの。ごめんね」
お父さんは、みるみるうちに安堵の表情になっていった。なんとも人間のようなため息をつき、長く弱々しい唸り声を出していた。突然の宣告にも関わらずタカアキさんにはウェルカムな雰囲気を全面に出すように挨拶をしている。さっきまでの態度は何だったのか。そして何故、お父さんは少し涙目なのか。でもお父さんとタカアキさんが仲良くなれそうでよかった。
いや、安堵している場合ではない。一番聞いて欲しいことはここからだ。私は背筋を正し、グッと力を込めお父さんを見た。
「それでね、あの、この旅に…お父さんも一緒に、来て欲しいの」
渾身の力を振り絞って放ったはずの声は少し震えてしまった。お父さんが私を見据える。
「だってお父さん、本当はお母さんのポケモンでしょ?だから、お母さんを待っていたかったらいいの。でも…お父さんさえ良ければ…一緒にリーグ制覇、したいなって」
思って、まで言ったつもりだったけれどなんだか怖くなって口をつぐんでしまった。そうなのだ。お父さんは元々母の手持ちで、ID表示は母のものが登録されている。私が共に歩みたくても、拒否されてしまったらそこまで。所詮私はお父さんの本当の名前すら知らない、只の捕獲者の娘。パートナーの絆はそこにはない。
しばらく私を黙って見ていたお父さんは居間を飛び出し、母の部屋に入っていってしまった。…これが彼の答えということ。こういうこともあるはずだと腹を括って覚悟を決めたはずの私は、しゃがみこんで涙をこらえるので精一杯だった。泣いてはいけない、ほらタカアキさんも困ってる。それでも流れる涙は止まらない。
クルルルル
近くでお父さんの声がした。恐る恐るその方向を見れば、モンスターボールをくわえたお父さんが座っている。それを私の手に押し付けて、早く受け取れと言わんばかりだ。
「…いいの?一緒に来て、くれるの?」
グゥ、と唸るお父さんはまるで当たり前だろうとでも言うような、ここ最近で一番の満足気な顔だった。ボールを受け取ると、その顔のまま何事もなかったようにちゃぶ台に戻りサラダにがっつきだした。私もタカアキさんに涙を拭われながら食事に戻る。少しばかりお父さんの態度変化の謎が残るが、まあ気にしないことにした。
明日、誰かさんのように卓上メモを残して旅立とう。鞄とパートナーと、お父さんを連れて。
『お父さんと仲良くリーグ制覇してきます』
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描いてもいいのよ
書いてもいいのよ
題名考えてくれていいのよ←
数年前にちらっとお邪魔したきりだったのですが、何かネタ降臨したのでまたしてもお邪魔させていただきました。
これでもポケライフっていうんでしょうかね…
登場人物
私:語り手。時折辛辣な突っ込みを放つ。周りからは酷いと良く言われるが、この場合は相手のボケが酷いのでそこまでこちらは悪くない。
K:友人。別に自分の意思の弱さに絶望して自ら命を絶つような性格は全くしていない。そして好きな子もいない。今のところポケモンがいればそれでいいらしい。
S:主に国語担当の先生。今回は古典講読の授業を受け持っている。パッと見カリスマデザイナーのような外見をしている。どんなだよ!好きな物は愚痴を言うこと、嫌いな物はうるさい子供。
何で学校の先生してるん?
美術室にて。
ガガガガガガガガガ
「ねえ紀成ー」
「何」
「欲しいポケモンやっと思い出した」
ガガガガガガガガガ
「あんまり珍しいやつは私でも持ってるか分かんないよ」
「エネコ欲しいんだよね」
「エネコォ?ブラック貸した時にボックスにいなかった?」
「わかんない。でも欲しいんだよね。ほら、あたしのブラック2じゃん?なんだっけ、ウサギの」
「ミミロル」
「そうそれ。それしか出てこない」
ガガガガガガガガガ
「別にいいけど、進化はそっちでしてね。石無いんだから」
「りょうかーい。後さ、電気タイプの」
「電気タイプだけで分かると思ったら大間違いだ」
「えー、なんだっけ。エレキブルの」
「持ってない」
「違う違う。一番最初の」
ガガガガガガガガガべキッ
「あ、折れた」
「力入れすぎなんだっての」
「変えてもらわなきゃ……。で?エレキッド?」
「そうそう。お願い!こっちは炎のやつ捕まえたから、交換!」
「ブビィね。分かった分かった。せんせー、糸ノコの歯が折れたー」
歯を変えるのに時間がかかるということで、もう一台でやる。再び部屋に響き渡る、耳障りな音。
「そういやさ、W(男子の名前)に言ったらミュウくれるって」
「アイツが?もらう前にID見た方がいいよ」
「……最初っから信じてないんだね。別にいいけど。てかさ、まだSS返してもらってないの?」
「催促してるんだけどねー。どうしよ」
「頼むよー、ルギア欲しいんだから。ついでに言えばグラードンとレックウザも欲しい。あとミュウツー」
「グラードンはともかく、レックウザはHG無いと無理だよ。あとミュウツーは殿堂入り後だし」
↓ここから先はポケモン要素ないです
古典講読。受験生にはいらない授業と仕分けされ、来年から無くなるらしい。だから私達は事実上、最後の生徒となる。
……シリアスな空気で始まったが、そんなことを思わせる暇などこの人は与えてくれない。
何で授業開始から二十分経っても話してんだよ!授業しろよ!そして皆も止めろよ!受験生だろ!
「だからさ、何で高三からいきなり中一の担任になったのか分からないワケよ」
「校長先生に直接聞いたら?」
「聞いたよ!『これはどういうことですか』って!でもさ、あの人いつもの飄々とした感じで『えー、いやー、それはですねー』しか言わないんだよ!」
「何か思い当たること無いんですか」
「……」
あるらしい。私はため息をついた。あくまで私は冷静な生徒を演じる。時折辛辣な突っ込みも入れる。
だってそうしないと、誰がこの先生と皆を止めるのよ!
「そういや文化祭といえば」
「何ですか」
「いや、一番初めに受け持ったクラスでさ、文化祭にクレープ作ることになったんだよね」
聞けばスペースがないため教室で、ホットプレートで焼くことになったという。生徒達にホットプレートを各自で持って来させ(ある人は)、教室内のコンセントをタコ足配線にし、『さあやるぞー』と、一斉に電源を入れた。
そして。
ブチン
「……」
「焦ってさー、慌てて電源消して、幾つか隠させて、来た人に『いやー、電源入れたらこうなっちゃったんですよー』ってごまかしてさ」
「ブレーカー落ちるって予想しなかったんですか?」
「白熱灯が沢山あるから、電気タンクみたいなのあるんじゃないかなー、って。いや、業者のおっちゃんがすごい怖い人でさ、何回頭下げたことか」
「……」
怖いのは業者さんじゃなくて、それを予想できなかった貴方の頭です、先生。そして白熱灯と電化製品を一緒にしないでください。何のためにワットとかアンペアがあるのか、分かってますか?
―――――――――――
今日古典講読の授業で聞いた話。本当に大丈夫か、この学校!
今なら笑い話で済むところだけど、実際に起こされたらたまったもんじゃないぞ!
「なあ、聞いたか?」
金髪の男が、フードを被り、顔を隠す男に話しかけていた。ここは、喧騒と欲望の渦に沈むブラックシティ。黒く染まった大都会である。
「……何かあったのか。」
「ほら、あの単独で動く女裏ハンター!!名前は確か……。」
「キャシディ・マーニー?」
「そう!そいつ!毒蛇キャシディ!!」
「組んだのか?」
「らしいぜ。」
「……厄介なのが増えた。」
「何か言ったか?」
「何も……持ち場に戻ろうぜ。」
フードを被った男は、金髪の男を急かすように先に進む。金髪の男は戸惑いながら付いていく。その中で、フードを被っていた男は焦っていた。 気付けば、金髪の男は居なくなっていたことに気付いた男は、被っていたフードを取って息を吐いた。そしてそのまま座り込む。
(はあ……警察官も楽じゃねえな……これ終わったら、有給むしり取ってやる。)
浅く息を吐いて空を見上げた。何時の間にか、エルフーンが頭に乗っていたが、男は気にせず腕に抱いた。この男は、裏取引の情報を嗅ぎ付け、潜入捜査を行っている、国際警察官の刑事、シュロである。腕の中に移動させたエルフーンの♀、フォンは、彼の手持ちの一匹である。
「フォン、これ終わったら、必ずヒウンアイス食べような。」
「える!」
「……約束な。」
彼女が差し出した右腕に、自身の右手小指を当てて、指切り拳万と呟くと、彼女をボールの中に戻し、フードを被り直した。
「待って。」
「…………。毒蛇?」
「怪しいと思ったら……あなた、ヘリオライト?」
「あんたにも、俺のコードネームが伝わってるとはね……光栄だよ、キャシディ・マーニー。」
苦虫を潰したような、険しい顔付きで、現れた女を思いっきり睨み付けた。女、キャシディの隣には、こちらでは珍しいアーボックが威嚇している。キャシディは、アーボックを撫でて落ち着かせると、シュロの方へと向き直った。
「探している子はこの子かしら?」
「!あんた、知っててわざと……!!」
「この子がほしくて取り入ってたけど……興が剃れて、あんたのターゲット、眠らせちゃった。この子はそのお詫びの品よ。」
彼女がシュロに差し出したのは、一匹の、色違いのヒトモシ。恐らく♀である。福寿草の花が咲く、小さな鉢植えに寄り添って、ぐっすりと眠っていた。花が燃えないと言うことは、恐らく特性はもらいびだろう。お詫びの品と述べた彼女に不信感を募らせたシュロだが、大人しく色違いのヒトモシを受け取った。
「……辺りが騒がしいわね。起きちゃったかしら?」
「かもな……さて、暴れ時かな。」
「逃げないの?」
「残念ながら、ここの連中を全員しょっ引くつもりさ…………あんたの分の手錠は、残念ながら今回は持ち合わせていないけどね。」
「そう、それは残念……ああ、そうそう。その福寿草、私からその子への贈り物よ。」
それだけ告げて、毒蛇、キャシディ・マーニーは、フワライドに掴まり、アーボックをボールに戻すと、ブラックシティのビル群に囲われた空へと、ゆっくりと上昇して行った。シュロはそれをそのまま見つめると、自分が一番信頼する相棒・ワルビアル(♂)のヴィックと共に、黒の街へと舞い戻って行った。
*
「痛ってえ!?」
消毒液が突然、たっぷりと傷口に付けられて、シュロは思わず声を上げた。消毒液を付けた張本人は、彼の弟のようだった。
「兄さんのばか野郎!なんであんな無茶するのさ!!」
「ちょっ、リンドウ、うるさい!シンフーが起きる!!」
「……え?誰のこと?」
「ん。」
指さす先には、未だぐっすりと眠る、色違いのヒトモシ。ケージから出されて、椅子に座り込む、彼の相棒のワルビアルの膝の上にいる。そのヒトモシの近くには、ケージの中に一緒に入っていた、福寿草の植木鉢。エルフーンが、ジョウロで水を上げていた。
「シンフー?」
「そう。幸福って書いてシンフーね。」
「へえ……随分と深い意味合いで。」
「まあなぁ、『色違いは全部私の物だ!!』とか何とか言って、虐待死させたりしてたヤツだったからなぁ。」
「え……じゃあ、この子も?」
「おそらくな……まあ、ちょっとずつ、彼女の傷を癒してやるつもりさ。」
「だからって、父さんの二の舞にはならないでね?ヴィックも何とか言ってやってよ。」
そう告げたリンドウに、それは無理だと言わんばかりに、彼のワルビアルは首を振って、ヒトモシの顔を優しく撫でた。
「父親みたいだぞ、ヴィック。」
「!?」
「本当だね……兄さんを頼むよ、お父さん?」
そこで俺のことを言うのは違うだろう、とか、じゃあ誰が兄さんのストッパーになるのさ、とか、いろいろと言い合いを始めた主とその弟を見つめて、ヴィックは福寿草の鉢植えの土に刺さっていた、小さな紙を手にとった。それを見つめて、ヴィックはふ、と笑うと、黄色い愛らしい花の近くにそれを置き、このあと正式に、6匹目の仲間となるであろう、小さな小さなロウソクの霊を愛で始めた。
「福寿草:キンポウゲ科の多年草 アジア北部に分布。シンオウのテンガン山とジョウトのシロガネ山にも咲いている。季節は2〜5月。花の色は黄色。花言葉は、回想・思い出・幸福を招く・永久の幸福。」
*あとがき*
最後はヒウンアイス食べながら終わらせるつもりが違う形になった!
ですが、結果的にほのぼのになったのでいいです。
ずっと書きたかった話がようやく書けました。
福寿草の花言葉を見た瞬間「これだああ!!」 と思いました。
色違いのヒトモシって可愛いですよね。
私の書くワルビアルが本当にお父さんみたいですよね。
他にもツッコミどころ満載かもしれませんが触れません。
感想、お待ちしております。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】
雨は、あまり好きではない。あの日のことを思い出すから。
灰色の石は降り注ぐ雫で黒へと変わり、あの人の面影を消していく。
目を閉じれば、今でもそこにいるような気がする。
何も言わない骨となった貴方は、石の底で永遠の安らぎを手に入れたのだろう。痛みも苦しみも感じない、ただの骨。意味ある物は貴方に降り注ぐ雨の雫のみ。
それは、貴方を清めてくれるのだろうか。
『ねえ、何で君は泣かないの』
答えは簡単。失う物が無いからだ。
――――――――――――――――――――
傘の先から溜まった雫が落ちた音で、カズオミは目を開けた。足元を支えるアスファルトは既に黒く濡れ、その天気独特の匂いを醸し出している。太陽の光を浴びて熱していた鉄が、冷やされて冷めていく匂い。
そういえば昔嗅いだ物は別の臭いも混じっていたことを思い出す。土の匂いは幼い頃嗅いだ。まだ故郷が開発されていなかった時代。今となっては、はるか昔のことのように思える。実際そうなのだが。
ブルーシートを被せられていても漂う、その臭い。不謹慎かもしれないが、特に雨の日はより濃くなる。その臭いが叫んでいるように思えたのは、気のせいだったのだろうか。
雨に濡れた髪を揺らして、頭を下げる。目を瞑り、両手を合わせる。それは一種の条件反射に近かった。だが自分の心には、懺悔の気持ちがいつもあった。
それが誰に対してなのかは―― 分からない。
周りに人はいない。あのざわめきは、ここにはない。誰かの泣き声と、苦しげに顔を歪める後輩。彼はまだ刑事だった。両親共々美術系の仕事だったのに、何故か彼だけはこの職についた。
『いや、何ででしょうね。俺にも分からないんすよ』
一緒に飲んでいる時、決まってその話題になった。最後に見た時よりかなり痩せている体を反らして、彼はグラスを煽った。
『死んだ親父が最期まで良く言ってたんす。何でお前はわざわざ死に行くような仕事についたのかって。酷くないっすか?全国の現場を走り回ってる人達に失礼っすよ』
『その中には、お前も含まれているのか』
『当たり前じゃないっすか!俺はこの仕事に誇りを持ってますから。そりゃ、理想と現実のギャップに悩むことはありますけど……』
大分酔っているらしい。彼はカウンターに突っ伏した。
『それでも……。俺はこの仕事について良かったと思ってます。生と死を一番近くで見ることができるって、この仕事くらいじゃないっすか。消防士や病院に勤めている人もそうだけど、仏さんの無念の声を聞いて、自分達に出来る事をする。
この時代に、大切なポジションでいたいんすよ。刑事として』
今でも彼は、そこに所属している。ただし、もう刑事ではない。警部だ。当時の私と同じように刑事である一人の部下を引っ張り、指導しているらしい。
理想と現実のギャップに幻滅しても、なお自分のできることをしている彼を、私は羨ましいと思う。
私は――
「逃げた、のか……」
雨音は途切れることなく、傘を打ち付ける。あの日を思い出す。何故か人生の転機を迎える時は決まって雨が降る。雨男なのだろうか。それにしたって、嫌な運の持ち主だ。
例えば、彼女にカフェを預けたいということを告白した日。
彼の面会に行く日も、必ず雨が降っている。
警部という職業を辞めた日は、台風が近付いていて家に帰れないほどの大雨が降っていた。
そして、
「父さん」
父が、死んだ日。そして、彼の葬式の日も。
父は弁護士だった。母は私が幼い時に事故で亡くなり、以来男手一つで育てられた。
私が異常な雨男なのに対し、父は異常な晴れ男だった。母が死んだ日は、秋なのに二十五度を超えるほどの暑さだったらしい。
父は自分のその運を嫌っていた。よく酒に酔うと、私に話した。
『お前は、母さんの運を受け継いだのかもなあ』
母は雨女だったそうだ。幼い頃から特別な行事の度に雨が降り、クラスメイトから疎まれた。遠足、運動会、文化祭、修学旅行。
母もその運を嫌い、あまり外に出なくなった。すごいのは、母がその場からいなくなれば、そこがどんなに激しく雨が降っていても、十分も経たないうちに雲が晴れ、青空が見えてくる。
大学に進み、父と出会い、やっと晴れ間を見る日の方が多くなったという。
母が死んでからは、自分が雨を降らす役になった。
だが父もいなくなった今、この運はいらない物でしかない。
ポテポテという足音がして、カズオミは我に返った。道路の色がいくらか薄くなったように見える。傘に打ち付ける雫の音が、合唱から独唱へと変わっていた。
視界の隅に入る、緑色と朱色の影。背丈は腰くらい。自分の体が濡れるのも構わず、しきりに手を天に向かって伸ばしている。
それと同調するように、光が差し込んでくる。
「……!」
思わず傘を閉じる。ぽつん、と頭に雫が落ちたが、それ以外の打ち付けるような感触は無かった。空を見上げて、その理由を知る。
買ったばかりの青の絵の具を、思い切りぶちまけたような――
葉に付いた雫が太陽の光を浴びて、宝石のように輝いている。水溜りに空が映し出されていた。風が吹いて、波紋が出来る。雲が移動していくのが見えた。
隣を見て、その相手と、その原因を知る。
「ドレディア……」
緑のドレスを纏い、巨大な花飾りを頭に付けたような姿。普通に見れば場違いな女性だと眉を顰めるところだが、今はその理由は思い当たらない。何故なら、その姿が彼女の素の姿だからだ。
ドレディア。その外観から、世間でセレブと呼ばれる人間達のポケモンになっていることが多い。頭の花は大きいほど育て方が良いとされているが、上手く育てるのはプロでも難しい。
ドレディアが野生で出るという話は、カズオミの経験では聞いたことがなかった。おそらく誰かに飼われていた物が野生化したのだろう。その証拠に、今使った技は決して野生では使うことがない。
「『にほんばれ』、か」
少しの間、日差しを強くして炎タイプの技の威力を上げる。ソーラービームを放つまでの時間を短くする。バトルをする立場でなくとも、常識として学校で必ず習う知識だ。
ドレディアがこちらを見た。どうやら、この雨で困っているように見えていたらしい。少しもじもじとした仕草で下を向く。
傘を左手に持ち替え、そっと右手を差し出す。目がこちらを映す。
「ありがとう」
少し経ってから、ドレディアの手の部分である葉がそっと差し出された。雨に打たれたのだろう。濡れている。ポケットからハンカチを出し、渡す。
「良かったら使ってくれ」
ギンガムチェックの刺繍が施されたそのハンカチは、男が持つにはあまり相応しくない色をしていた。白地に赤と青と緑の三色。普通なら自ら選んで買うことはない。
それを送ってくれた『彼女』の顔を思い出し、カズオミは目を閉じた。
あの日、告げた瞬間彼女がどんな顔をしていたか思い出せない。覚えておくべきことのはずなのに、思い出そうとすると靄がかかったように、そこだけボウッとかすんでしまうのだ。
忘れたいことにインプットされ、そのまま知らず知らずのうちに消去されてしまったのかもしれない。随分都合の良い海馬を持ってしまったものだと、自嘲の笑みを零す。
その割りに、あの雨の記憶は忘れることがない。あれから四十年近くが経過しているというのに――
(忘れるな、ということか)
また意味合いは違えど、それと同様に強く焼きついてしまっているのかもしれない。もしくは、忘れてはならないということか。
疑う、ということをその仕事についてから強いられてきた。相手の隠していることを見抜く。自殺か他殺か見抜く。事件関係者を心の底から信じてはならない。そうしないと、裏切られた時のダメージが深くなってしまうから――
かつて尊敬していた父とは全く正反対のポリシーが、いつの間にか心の中に刷り込まれていた。
『相手を信じる。何があっても。判決が下るまで、相手を信じぬく』
差し出されたハンカチを仕舞い、カズオミは立ち上がった。傘はもう開くことは無い。そしてそこで何故こんな場所にいるのかを思い出す。散歩の途中だったのだ。雲行きが怪しくなってきたので傘を持参し、ここらまで来た所で急激に降り出した。それは風も伴う激しいもので、このまま進んでは傘が御猪口になってしまうと判断し、しばらくの間傘を差したまま立ち尽くす羽目になったのだ。
雨は上がり、空気はカラリとはしていないものの、先ほどの湿り気は引いている。自宅であるアパルトマンがある街目指して、カズオミはゆっくりと歩き出した。
それから三百メートルほど歩いたところで、後ろで何か鈍い音がし、振り向けば先ほどのドレディアが転んでいたのは、また別の話である。
その縁でそのまま『彼女』を手持ちポケモンの一匹にすることになるとは―― 今の彼が予想することはなかった。
――――――――――――――――――――
『クロダ カズオミ』
誕生日:不明
身長:179センチ
体重:70キロ
在住:不明
主な使用ポケモン:ドレディア
性格:しんちょう
特記事項:『マスター』と呼ばれていることが多い。本名を出すのは多分これが初。個人情報が不明な欄が多い。
カフェ 『diamante』の マスター。 いまは ユエに ゆずり かいがいに いる。
もと けいぶで ある じけんで ユエと しりあう。
ちちおやは べんごし だが 12さいの ときに しぼう している。
ユエの がくせい じだいの ほごしゃ ポジション だった。
ストイックな ふんいきと ときおり みせる やさしさに ほれる じょせいが おおい。
いまだに みこん だが べつに そのけが あるわけでは ない。
―――――――――――――――
リメイクその4。数少ない男性キャラ、マスター。
双子の存在を知っている人はどのくらいいるのかしら……。
ポケダン新作おめでとうー!!
これだけのために頑張って3DS買うよ!!
*青の救助隊*
逃避行イベントとエンディングに全俺が泣いた。
何ということだろう。ただでさえ涙もろいのに…!!
実はゲームで泣いたのは救助隊が初めて。
その姿を妹2人に見られて驚かされました。
「「姉ちゃんがついにゲームで泣いた……!!」」
と、見事にはもってました。
*空の探検隊*
青の救助隊以上に泣いたゲーム。涙腺大崩壊しました。
最後、ジュプトルがヨノワール共々未来世界に行ってしまったところと
主人公が消えてしまったシーン。
それから親方さまと未来編のエピソードは何度見ても激泣きです。
もはや最終兵器と同等の価値でした。
今回も涙腺大崩壊させてくれ。
青の救助隊
1回目
チコリータ(♀):リサ ミズゴロウ(♂):ラグ
チームLaugh(ラフと読みます。意味は笑い)
2回目
キモリ(♂):ジェイド ヒトカゲ(♂) :ルビー
チームジュエル
3回目
ピカチュウ(♀):ユズ アチャモ(♀):カーマ
チームColor
リサとラグのコンビは結構スイスイ行けました。
氷雪の霊峰に少し苦戦しましたが……。
ジェイドとルビーのダンジョンも、同様に楽しく
プレイできましたが、ユズとカーマのコンビは
マグマの地底で大苦戦しました。
電撃も炎も効かない中で、復活の種無しで
グラードンに挑んでぼろ負けばっかり
ひどいときはモンハウで地震使われて一撃……
何度涙を飲んだことか……。
*空の探検隊*
1回目
ロコン(♀) :ショコラ コリンク(♂):ライム
チームキャンディ
2回目
ナエトル(♀):ナオ ワニノコ(♂):ショウ
チームストロング
未来組
ジュプトル→キーラ
ヨノワール→ヨミ
セレビィ→モモカ
ジュプ主♀に超嵌りました。
だって主人公ちゃん可愛いんだもん!!
ロコンが使えると知ったときは舞い上がりました。
一回目も二回目も、おっとりしてそうなポケモンで
パートナーは逆に元気そうな子になるようなセレクト。
一回目のラストエピソードの闇の火口は
ちょう大苦戦でした……。全然辿り着けなかった……。
二回目は一回目の二匹が弱点になるように、と選びました
ナオとショウの名前とチーム名は、とある芸人さんから頂きました(笑)
ただ、そのチーム名の通りに強くなってくれたので嬉しかったです。
……ナオちゃんのモデル、女じゃなくて男ですが。
他の方のエピソードも聞かせて下さい(^_^)
【よければ皆さんも語って下さい!】
シオンタウン郊外に、自転車を漕いでどこかに向う1人の女性
その自転車の籠にはカラカラがちょこんと居座り、その手には、赤と紫の花束
女性は白衣を来て、荷台に鞄を括り付けている。
栗色の髪をうまく纏めて、白い薔薇の嘴ピンで、前髪を止めていた。
「久しぶりね。こっちに来たの。」
「カラ……?」
「だって、私が医大卒業してからはずっとアサギにいたじゃない。」
女性の言葉に答えるように、籠に居座るカラカラのオスは、前を向いて、小さく鳴いた。
だいぶボロボロの自転車ではあるが、女性は白衣を靡かせて、ひたすら、どこかに向かっていた
「さあ、そろそろあの花畑よ。フジさんが先に着いてるはずだから
失礼のないようにしなさいね?オーカー。」
「カラ!」
「よし、いい子!さあ、飛ばすわよ!!」
*
僕のお母さんは、ちょっと前に天国へ行ってしまった。
そのときに、偶然出会ったのが、人間のクルミさんだ。
クルミさんは、寂しくないように、ずっと僕の側に居てくれた
そして、そのまま僕のトレーナーになってくれた。
そのときのクルミさんは、お医者さんになる勉強をしていたため
クルミさんに着いてきたというチャコールさんに、色々教えてもらった。
チャコールさんは、とっても強くてカッコいいマニューラの女の人で
僕の憧れであり、目標としている人だ。
もしお母さんがまだ生きてたら、チャコールさんみたいに
戦い方を教えてくれたのかな……。
「着いたわよ、オーカー……降りれる?」
お花屋さんで買ってきた、ちょっと高い花束を
いったんクルミさんに預けて、自転車の籠から飛び降りた。
「……こんなに逞しくなったの、チャコールのお陰かしら。」
花束をまた預かると、クルミさんは荷台の荷物を取ってから
たくさんのお花に囲まれた、丘の上の大きな木へと向かった。
その木の下に、僕のお母さんのお墓があるんだ。
「フジさん。」
「おお、クルミさん。お久しぶりです。」
「お久しぶりです。腰の具合はどうですか?」
「ええ、なんとか。しかし、最近のお医者さんはすごいですな!」
「医学は常に、進歩していますから……それじゃあ、始めましょうか。」
フジさんと言う人間のお爺さんとクルミさんは
お母さんのお墓を綺麗にし始めた。
僕も手伝えることをして、5分くらいで終わった。
それから花束をお母さんのお墓に置いて
蝋燭と御線香を立てて手を合わせた。
「オーカー。私達は向うに行ってるから
お母さんとたくさん話しておいで。」
「カラ……?」
(いいの……?)
「ほら……行きましょう。」
クルミさんとフジさんは、丘の下の花畑に行ってしまった。
それをじっと見送ったあと、僕はお母さんのお墓に向き合った。
「……お母さん。僕ね、前より強くなったんだよ。」
「まだまだ未熟者だってチャコールさんは言うけど
それでも、色んなポケモンと戦ってきたんだ。」
「お母さん、この花、好きだったから持ってきたんだ
花の名前は知らないけど、とてもいい匂いがするって言ってたもんね
これね、赤い方がグラシデアで、紫の方が胡蝶蘭って言うんだ。」
「お母さん……僕、ずっとずっと、お母さんのこと、忘れないから。」
ありがとう、愛しているよ、お母さん。
*あとがき*
Superflyさんの愛を込めて花束を聞いたときから
この曲はずっと、ガラガラとカラカラの二匹に会うなぁと思ってました
カラカラがガラガラに花束を送ると言うイメージが
焼き付いて離れませんでした。
感想、お待ちしています。
【描いてもいいのよ】
【感想求む】
昨晩はみなさまお疲れさまでしたm(_ _)m
チャットログ抜粋が見事にぴじょんぴょんで落ちているというw ……ハッ、これはもしや新手のステマでは!(違
ゼクロム。レシラム。キュレム。ついでにイーブイ。
前者はトレーナーが死ぬまでに会いたいポケモンとして、アンケートで毎回上位にランクインする。
後者は『もふりたいポケモン』として、どの世代にも人気である。中には宗教的な意味合いでの信者もいる。
ちなみに、バトルで使えるかどうかというのは、また別の話らしい。
このカフェでは、彼らはそういうポジションを貰っていない。
商品の名前として、訪れる客をもてなすためだけに存在している。
――――――――――――――――
キュレムはお冷を指す。運ぶことはできるが、自分はあまり好きではない。何故なら、自分はマグマラシというポケモンで、なおかつ炎タイプだからだ。
天気は晴れ。風はやや強め。空を見上げれば誰の手持ちなのか、それとも野生なのか。モンメンが一列に並んでふわふわ漂っていた。下を歩く人間がくしゃみをする。中にはハンカチで目元を拭っている奴もいる。
……花粉症は辛い。
春の次は秋に来る花粉。春は杉がその代表だが、秋はブタクサなどが挙げられる。だが草ポケモンが散らす胞子や綿もそれに入るらしい。特に車が多いライモンシティ、ヒウンシティは花粉症患者が多く、病院を訪れる患者が後を絶たないという。
元々、花粉だけではアレルギー反応は起きない。そこに排気ガスが加わり、花粉症を引き起こす。一度天然の杉が沢山生えている林に行った花粉症患者は、友人に連れられて嫌々車から降りたところ、全くくしゃみも涙も出ずに驚いた、という話を聞いたことがある。
さて、自分は未だに縁が無いが、花粉症にかかるのは人間だけではない。ポケモンだって、花粉症にかかることがある。
ふわあ、と欠伸をしてマグマラシは店内に戻った。ライモンシティはギアステーション前にある、個人経営のカフェ『GEK1994』。このマグマラシの仕事は、主人であるユエに頼まれて看板になること。
いわゆる『看板息子』である。
子供連れはあまり来ないが、例えばOLなどがこちらを見つければ、後はこっちの物。見つけた!というような反応で一気に駆け寄り、相手の顔を見上げる。ここですぐさま足に擦り寄ってはいけない。相手の反応を見て、笑顔を見せれば最初に二本足で立つ。そこで頭を撫でてくれれば、後は足に擦り寄る。
何事も出しゃばらないことが肝心なのだ。それに、中にはポケモンが苦手な人間もいる。まあそういう人間は目が合った瞬間に分かるが。
こちらにあまり良い印象を抱かない相手は、目が合った瞬間の表情で判断できるのだ。
そんなわけで、今日もマグマラシはカフェにお客を呼び込むのに一役買っている。
それは、一日中降り続いた雨が、残暑をすっかり吹き飛ばしてくれた、ある日のこと。午後になってから一人の女性が風のように現れた。
雑誌のモデルにいそうな、背の高い女性だった。年齢は二十代というところ。マグマラシから見れば、シルエットだけで判断すればユエの方がボディラインは良いと言える。ちなみにこれは♂ポケモンとしての価値観も微妙に入っている。
ツンとすまし顔だが、ここに入るのが楽しみで仕方なかった、というのが雰囲気で分かる。どんなにごまかしても、分かる人には分かるんだろう。現にマスターであるユエは心からの笑顔で『いらっしゃいませ』と言った。ちなみに彼女は表情を作るのが上手だ。ただぎこちなさは、無い。
メニューを開いた後、お客はモンスターボールからエンペルトを出した。毛並みがいい。頭にあるのは王者の風格を放つ金色の角。王冠に見えるのは気のせいではないだろう。
睫が長いことから、♀だと思われる。
ソファ席に座って、少し退屈そうに店内を見渡していた。
「よう」
自分の数倍上にある顔を見ながら話すのは、すごく疲れる。特にオレは普通体勢が四つん這いだから、仁王立ちに鳴れていない。進化すればこの悩みも解消されると思うけど、主人はバトルをあまりさせてくれない(というか機会が無い)からレベルアップすることもない。
エンペルトがソファから降りた。主人である女性は何も言ってこない。
「何用かしら」
「お前は注文しないのか?」
「お小遣いもらってないのよ」
「んなもん、オレだって貰ってねえよ」
お小遣いを貰うポケモンなんて聞いたことがない。俺が食べる物は、ここのアルバイトや店員に休憩時間にもらう賄い食の残りだ。
はっきり言って食べ飽きてるけど、ユエは期間限定商品はなかなか食べさせてくれない。
理由は『贅沢』だかららしい。
「ゼクロム飲むか?」
「ゼクロム?ポケモン飲むの?」
「違う。ここではブレンドコーヒーのことを言うんだ。ちなみにミルクコーヒーはレシラムゼクロム、な」
一先ずキュレムが運ばれてきた。喉が渇いていたのだろう。すぐに飲み干して――その表情が『!?』に変わるのをオレは見逃さなかった。
ガラスコップの底に印刷された文字。
『ひゅららら』
「……どういうことなの」
「いや、こういうデザインだから」
付き合いたて、熱々カップルで来るのはお勧めしない。以前オレは、これを見てしまって水を噴出した男が彼女に振られたシーンをその場で目撃したことがある。
熱しやすく、冷めやすい。この場合はキュレムがそれを冷やしてくれたということだろう。いささか冷やしすぎな気もしたが。
ユエはその時は無表情でマスターとしての対応をしていたが、その日店を閉めた後、耐え切れなくなってカウンターをバンバンと叩いていた。『くそwww腹筋崩壊しかけたww』『リア充ざまあww』と言っていたことは、従業員には内緒だ。
「名前長くない?」
「オレも最初はそう思ったんだけど、ユエがどうしてもって言うから」
「変な人ね」
ゼクロムが運ばれてきた。カップにはこのカフェのマークがプリントされている。『1994』を真ん中に、トライアングル式に『GEK』の文字が並んでいる。色は緑かチョコレート色。この時は緑色だった。
一口啜って、ほう……とため息をつく。
そんな主人を羨ましそうに見つめるエンペルトに、オレは持ちかける。
「お前も飲むか?」
「だからお金持ってないのよ」
「奢る」
「……」
考え込むエンペルト。ゼクロムを飲みたいという気持ちと、プライドが天秤にかけられている。一分、二分、三分経過した。カップ麺が作れる時間だ。もっとも、自分は一分立たずに開けてそのまま食べる派だが――
話が逸れた。約五分経ったところで(生麺タイプが作れる時間だ)、エンペルトが目を開けた。
「飲む」
カウンター裏へ行って、コーヒー豆をブレンドする。キリマンジャロにモカ、ブルーマウンテン。うちのゼクロムはザラザラしてなくて少し甘みが強い。モカを多く使っているからだ。
流石に企業秘密ということでそこは見せない。
主人がいつもしているやり方で入れる。そこで忘れてはいけないのは、必ず手袋とマスクとゴーグルをすること。ユエはしていないけど、オレはしないといけない。毛が入ったら大変だ。
せっかくなのでとっておきのカップに注ぐ。黒い陶器。取っ手が独特の形をしている。底の文字を見て、思わず笑う。
小物に隠されたネタを、ゼクロムと一緒に堪能してもらおうか。
「できたぞ」
お盆に乗せたカップを見て、エンペルトは目を丸くした。実はこれ、ゼクロムをモチーフにしたカップ。レシラムもあるけど、そちらは主にミルクを使ったドリンクに使うことが多い。
ジグザグの取っ手。ただし持ちやすいようにきちんと改良してある。
「何これ」
「ゼクロムカップ。レシラムカップもあるぞ。ちなみにお冷を入れるのはキュレムタンブラー」
「すごいアイデア心ね」
「アイツに直接言ってやってくれ。このカフェのメインはゼクロムとその小物なんだ」
ふと店内を見渡せば、そこかしこにポケモンをモチーフにしたグッズがある。
たとえばタンブラーを乗せているコースターはディアルガの胸部をデフォルメした物だし、カウンター隅の籠に置いてあるキャンディーは、色合いがクリムガンとアーケオスの二色だ。
「美味しい……」
「火傷には気をつけろよ」
「分かってるわよ…… ?」
カップの底が見えるまで飲んだところで、何かが薄っすら書いてあるのに気付く。もしやタンブラーと同じネタかと思い、一度口を離して深呼吸する。
そして一気に飲み干し、底を見る。
『ばりばりだー』と書かれていた。
「……ナイス」
「このカフェ、元々はユエのじゃなかったんだ。『diamate』って名前で、主人はそこで働いてた。看板娘みたいな感じで。お客の出入りはあんまりよくなかったけど、当時のマスターが元・警部だったことで部下がよく休憩しに来てて、それで成り立ってた。
だけど三年位前に、そこのマスターがユエに店を預けるって言い出した。理由は分からないけど、とにかく店を受け渡した後フラリと何処かへ行っちまった。その後の消息は未だ掴めてない」
「何故かしら」
「ユエは多分知ってる。だからユエはマスターが戻って来る時まで、ここを守ろうと努力してるんだ。最初はなかなか大変だったけど、今ではリピーターも増えた。特に女子高生が多くてさ。あの年代のクチコミ効果は馬鹿に出来ないぜ」
最初、二人だったのが次の日には三人か四人に増えている。ついでに『課題セット』(そのまんま。課題をして良い代わりに特定の飲み物と軽食を付けたセット)を学生限定で始めたところ、女子高生の使用率が三倍になった。
若いがそこまで騒がしいタイプではないユエを慕い、大人しいタイプも集まってくる。中には相談事をしてくる人もいる。そんな彼女らの話を、ユエはゼクロムを淹れながら聞く。その間、従業員達は忙しくなる。
ユエが話を聞くことに集中しているからだ。
こんなのアリか、と思う人もいるかもしれないが、未だに苦情が来たことは一度もない。
「皆、ユエに話を聞いてもらいたいんだ」
「……」
「話を聞いてもらうだけで大分スッキリした顔で帰っていくからな」
女と男の違い。それを知ることが、付き合いを円滑に進める第一歩だという。
女はただ話を聞いてもらいたい生き物。男は何か意見を言いたがる生き物。
女が相談事、と言って話し始めた時は、男は黙って相槌を打っていればいい。そして、『どう思う?』と聞かれたら決して自分の意見を言ってはいけない。『君が正しいと思うよ』『大変だったね』と言わなくてはならない。
たとえどんなにその女に非があったとしても――というかそんな女とは別れた方が身のためだが――相手を否定してはいけない。
少し店を周りに任せ、一日一本のお楽しみに火を付ける。いつから吸い出したのかは分からないが、健康の害にならない程度に楽しむようにしている。
左手で持ち、煙を吐き出す。先から白い線が揺らいで空に上がっていく。
今のところ、順調に来ている。マスターが戻って来るのが何時になるかは分からないが、それでも何かあったら連絡をくれるはずだ。
そう信じたい。
「……」
流石にもう、半袖で外に出れる季節ではなくなってきたなと、ユエは二の腕を押えて思った。
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『ミナゴシ ユエ』
誕生日:9月16日 乙女座
身長:165センチ
体重:64キロ
在住:イッシュ地方 ライモンシティ
主な使用ポケモン:バクフーン
性格:ずぶとい
特記事項:体重が重いのは胸のため。子供が大の苦手。高校時代に剣道部を全国優勝に導いた経験あり。
じつは このはなしでは なまえは まだ でていなかった。
あとに なって やっと なまえが あかされた。
べんきょうは あまり できないが ざつがくは たくさん しっている。
とくぎは コーヒーを いれることと りょうり。
ひょうじょうが よく かおに でるため つきあいやすい。
タバコを すうという せっていは さいきんに なって つくられた もの。
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リメイクその3。面倒なのでユエも登場させた。
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