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Subject ID:
#127168
Subject Name:
ニャオニクス・テスト
Registration Date:
2010-04-20
Precaution Level:
Level 2 (2014-03-20以前)→Level 3 (2014-03-21以後)
Handling Instructions:
異常性を示す画像を認識する方法が既に確立されていますので、局員が直接画像を捜索する必要はありません。管理局が運用するクローラーによって自動的に画像が探し出され、発見し次第クローラーの管理者へ通知が成されるシステムを構築しています。通知を受け取った管理者は、様式F-127168-2に沿って申請書を作成し、画像を掲載しているサイトの管理者へ削除の要請を出してください。サイト管理者による画像の削除が規定した期間を経過しても行われない場合は、サイトがホスティングされているプロバイダへ管理局の名義でサイトの凍結または削除を指示してください。
これまでに回収されたファイルは、異常性を持つ画像ファイルを格納するための専用ファイルサーバに保管されます。実験目的で画像を閲覧したい場合、様式F-127168-1に必要事項を記入し、ワークフローを回付してください。画像の閲覧には機能を制限した専用のタブレット端末が貸し出されます。閲覧後、所定のレポートに結果を記入してください。ファイルに対して直接アクセスすることは許可されません。
Subject Details:
案件#127168は、携帯獣である♂の「ニャオニクス」を正面から撮影した1136x640の解像度を持つ標準的なJPEGファイルと、それに付随する一連の案件です。同種の画像をPNG形式に変換したものもインターネット上でわずかに配布されていますが、PNG形式のファイルは後述する異常な特性を示さないため、本案件では取扱いの対象としません。
2010年4月頃、ミニブログサービスの「Twitter」に投稿された以下のツイートに添付されたのが、当該画像が初出現したタイミングと推測されています(これ以上の拡散を防止するため、画像のURLを意図的に破壊しています)。
このニャオニクス、みんなはどっちの色に見えるかな???
青と白→RT♪
黄と白→ふぁぼ♪
pic.twitter.com/XXXXXXXXXX
このツイートは最後に確認された時点で4807回リツイートされ、7329人のユーザーがお気に入りに加えていました。投稿されてから一週間後に該当するツイートは削除されましたが、コピーされた画像が各種ボットによって大量に拡散されたため、これまでに一度でも画像を視認した正確な利用者の数は未だ分かっていません。オリジナルのツイートを投稿したユーザーのアカウントは削除とほぼ同時に凍結されています。アカウントの作成者を突き止めるための試みは現在も続けられていますが、有力な手がかりは掴めていません。
被験者の証言から、画像は健康な♂のニャオニクスを捉えたもので、画像そのものに不審な点は見られないとのことです。不快感や恐怖感といったネガティブな感情、逆に多幸感や解放感といったポジティブな感情のいずれも想起させず、画像が視認者に直接影響を及ぼすことは無いと考えられます。
当該画像の異常な特性は、画像をディスプレイを通して視認した際に発生します。およそ49%の被験者が、ニャオニクスは「紺色をベースにした色合いに一部白が混じった」姿をしている、すなわち♂の標準的なカラーリングであると報告します。続く48%の被験者は、ニャオニクスは「黄色をベースにした色合いに一部白が混じった」姿だと報告します。この特徴は♂のニャオニクスに稀に見られる特異個体、いわゆる「色違い」のものと一致します。
残る3%の被験者は、画像を見ても正確な答えを述べることができません。この時、一般的なニャオニクスの色に結びつくキーワード(「青系」・「紺色」・「寒色系」等)を与えると、即座に非特異個体のニャオニクスの姿が視認できるようになります。これは特異個体のニャオニクスのキーワード(「黄色」・「暖色系」・「輝いている」等)を与えた場合も同様であり、この場合は色違いのニャオニクスの姿が明瞭に見えるようになったと報告します。一度どちらかのニャオニクスの姿を視認できるようになった場合、もう一方のニャオニクスのキーワードを与えても、画像の認識に変化は見られません。
画像をプリンタを用いて紙媒体へ出力した場合、プリンタ及びアプリケーションの設定に拠らず、画像は常に256階調のグレースケールとして扱われます。そのため、出力結果は常に白黒です。画像処理を行うアプリケーションで画像の加工を試みた場合はあらゆる処理の実行時にアプリケーションが応答を停止し、結果として加工に失敗します。画像を表示させた状態でスクリーンキャプチャを作成し、別のファイルとして保存することは可能ですが、その場合の画像は被験者の視認結果に拠らず一般的なニャオニクスのカラーリングに固定されます。
画像を視認したことによる被験者への影響の可能性に付いては、付帯資料を参照してください。付帯資料に記載した仮説は現在も検証が続けられていますが、現時点で否定できるだけの根拠は見つかっていません。
Supplementary Items:
本案件には、1件の付帯資料があります。必要に応じて、すべての局員が付帯資料を参照できます。
(*'ω'*)感想ありがとうございます……!
> 報告書形式、楽しく読ませていただいております。
> POKKEN verDを読んだ後となっては、なみのり迷惑メール初読時に受けた、「よくわからないけれど無害そうなよくわからない感じ」――という自分の印象をそのまま信じてしまっていいのか疑心暗鬼になっています。掘り出したらまた何か出るんじゃないかな……って。
報告書に記載されている内容はあくまで「現時点で分かっていること」に過ぎませんからね。掘り下げてみると実は……てなパターンも大いにあると思います(恐怖を煽っていくスタイル
> ピッピちゃんのティータイムは、遭遇しても自分に実害が及ぶとかそういう感じはないけれど、でも不気味! そう、不気味なんです。出自の謎さもさることながら……“特異な”エピソードだけなら社会派ともとれるのに、少女漫画を流れをぶち割って入ってくる不気味さ。それによって、“何の意図があるのか”はわからないまま、増大した“何らかの意図”だけ感じられる、そんな不気味さ。出自不明のコミックシリーズであるだけなら、あるいは特異なエピソードが入ったコミックシリーズというだけなら、こんな不気味じゃなかったのでしょう。都市伝説らしさにただただ瞠目。
以下は、ホラー小説が好きなうちの父親と話したことです。
例えばものすごく恐ろしい化け物が登場したとして、その容姿や能力といった特徴を細々と書き連ねても、多分読み手の方は思ったほど怖がらないと思うんです。
ですが、意図が分からないけれどとにかく不気味で異常なことをいきなり書く、例えば――
「帰宅してみたら、家具の配置が左右反転していた」
こういうのですと、実害はほぼ無いですしすぐに誰かが死ぬとかそういう話でも無いんですが、想像すると意味が分からなくて結構恐ろしくないでしょうか。
うちは恐ろしいです。
> POKKEN verDは、最初は「なんだか妙ちきりんなエミュレータゲームだぞ」という印象なのが、付帯資料が一気にホラーですね……。ポケモンはデータ生命体、というところをこう持ってきたら完璧なホラー! 親資料を読み返して不安感も二倍! “この演出の意図は不明です”――なんで不明なの? 怖い! とまあこのような調子です。
> とにかく、付帯資料の表紙の「セキュリティクリアランスが〜」という文言と○に囲まれた禁という判子が赤でバンと押されて(このあたりはイメージです)あるのを無視して表紙をペロッと捲ってしまうと、知らなくていい真実を知ってしまった上もう戻れないというこの感じ。憎い演出ですね……。
> そうですよね……データ生命体ならデータから生成しようとする試みは考えうるものなのですよね。データ生命体ならデータ消去で消えますよね。なんていうか、人工的に作ったと公称されるポケモンがポリゴンだけでよかったと思いました。
> あと、色々と用語が出てきているのが読んでて楽しかったのです。
これはうちも書いてて楽しかったです(語弊あり
意味不明なアーケードゲームのまま終わらせることも考えましたが、先出の二つがオチが無いまま終わってしまったので、これについてはきちんとオチを付けた感じです。
その内容が如何なるものかは別として……(自覚
丁寧な感想を頂き、嬉しい限りです。日々の創作の合間にちょこちょこと書けて自分でも楽しいので、もうしばらく続けていきたいと思います。
報告書形式、楽しく読ませていただいております。
POKKEN verDを読んだ後となっては、なみのり迷惑メール初読時に受けた、「よくわからないけれど無害そうなよくわからない感じ」――という自分の印象をそのまま信じてしまっていいのか疑心暗鬼になっています。掘り出したらまた何か出るんじゃないかな……って。
ピッピちゃんのティータイムは、遭遇しても自分に実害が及ぶとかそういう感じはないけれど、でも不気味! そう、不気味なんです。出自の謎さもさることながら……“特異な”エピソードだけなら社会派ともとれるのに、少女漫画を流れをぶち割って入ってくる不気味さ。それによって、“何の意図があるのか”はわからないまま、増大した“何らかの意図”だけ感じられる、そんな不気味さ。出自不明のコミックシリーズであるだけなら、あるいは特異なエピソードが入ったコミックシリーズというだけなら、こんな不気味じゃなかったのでしょう。都市伝説らしさにただただ瞠目。
POKKEN verDは、最初は「なんだか妙ちきりんなエミュレータゲームだぞ」という印象なのが、付帯資料が一気にホラーですね……。ポケモンはデータ生命体、というところをこう持ってきたら完璧なホラー! 親資料を読み返して不安感も二倍! “この演出の意図は不明です”――なんで不明なの? 怖い! とまあこのような調子です。
とにかく、付帯資料の表紙の「セキュリティクリアランスが〜」という文言と○に囲まれた禁という判子が赤でバンと押されて(このあたりはイメージです)あるのを無視して表紙をペロッと捲ってしまうと、知らなくていい真実を知ってしまった上もう戻れないというこの感じ。憎い演出ですね……。
そうですよね……データ生命体ならデータから生成しようとする試みは考えうるものなのですよね。データ生命体ならデータ消去で消えますよね。なんていうか、人工的に作ったと公称されるポケモンがポリゴンだけでよかったと思いました。
あと、色々と用語が出てきているのが読んでて楽しかったのです。
コメントありがとうございます!
> 「彼」の生き様がいいなあと思います。金などいらない、木の実を投げてくれればそれでいい。というのが。
> ポケモンだって人と同じ仕事をしているという書き出しも好きです。
弾きたいから弾いている、人の価値観などいらない。でも時々観客が欲しい、みたいな心中なんでしょうね。
こう考えると、ポケモンって大変ですね。自分では普通のことをしているつもりなのに、それが人の目から見るとびっくりすることだったりして。
> こういう視点が変われば……みたいなものの見方は世界がグッと深まる気がします(ちょっと大げさかもしれませんが)
小さい頃に考えていた話に近いです。ポケモンの世界で、ポケモン同士話したり演奏したり料理したり。
人がやっている『当たり前』のことを、ポケモンにさせてみました。楽しいです。
高校時代に思いついてから、形にまとめるまで実に三年近くが経過してしまいました。もう少し掘り下げたかった。
ありがとうございました!
「彼」の生き様がいいなあと思います。金などいらない、木の実を投げてくれればそれでいい。というのが。
ポケモンだって人と同じ仕事をしているという書き出しも好きです。
こういう視点が変われば……みたいなものの見方は世界がグッと深まる気がします(ちょっと大げさかもしれませんが)
「彼」はまたどこかでピアノを弾いているんでしょうね。
(*'ω'*)<感想ありがとうございます!
> なみのり迷惑メールの原作にマジでありそう感も好きですが、ピッピちゃんのティータイムが特に好きです。
> 本当に謎って感じで。というか普通に読みたいです。
うちも書いてるうちにノってしまって、結構な文量になってしまいました。我ながら気に入ってます。
> 作者はセレビィとか色んな力借りてわざわざ謎っぽく経年劣化させたり紛れ込ませたりしてる、変わり者無害系知能犯だったりして。とか色々勝手に考えてしまう楽しさがあるなあと思います。
これは嬉しいお言葉……! 読み手の方にあれこれ想像してもらえるというのは、うちとしてはとても嬉しいことです。うちも他の方が創られたお話から着想を得ることが多々ありますし、こういった形で創作の輪が広がっていけばいいな、と思っています。
感想頂きありがとうございました! まだいくつかネタがありますので、気力の続く限り投稿していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
Appendix 1:
局員の提言に基づき、稼働中の「POKKEN ver.D」のプロセスを一時的に停止させ、メモリダンプから何らかの情報が得られないかという実験が行われました。実験時、プレイヤーはルカリオを、コンピュータはカイリキーをそれぞれ操作しているという状況でした。
エミュレータの機能を用いてゲームを一時停止させ、完全なメモリダンプが取得されました。この時、ダンプの取得は想定されるよりも相当に長い実行時間を要し、最終的に約3.8GBのダンプファイルが生成されました。ダンプファイルの作成中、OS標準のタスクマネージャはエミュレータが占有しているメモリ領域について、異常性の無いゲームを動作させた時と比較しても有意な差異は無いことを一貫して示し続けていました。
生成されたダンプファイルを一般的なデータ解析の手法で解析したところ、ファイルの約半分に相当する1.85GBが、携帯獣の「ルカリオ」の一般的なデータパターンと89%の精度で一致することが判明しました。続く約1.94GBは、同じく携帯獣の「カイリキー」のデータパターンと92%の精度で一致していました。残りのデータは、ゲームを動作させる為に必要なプログラムやその他のアートアセットで占められています。
以上から、この「POKKEN ver.D」は何らかの未知の方法により、現代の技術から見ても異常に精度の高い「人工の携帯獣」を短時間で生成する機能を持ち合わせているという仮説が立てられました。プレイ中頻繁に発生する異常な挙動は、システムによって生成された携帯獣がゲームから脱出しようと試み、結果として外部からの制御を受け付けなくなったことによるものと推察されます。現在のところ、この仮説を覆す根拠は見つかっていません。ゲームが携帯獣を生成し戦わせる理由についても、局内で統一的な見解は出されていません。
ルカリオ・カイリキー共に、データが一般的なパターンと一致しないまたは欠落している箇所は、外見的特徴の情報が格納される領域に集中していました。ゲームプレイ時にディスプレイへ出力されるキャラクターモデルの品質が悪いのは、これら外見的特徴の極度の情報不足に起因するものであり、ゲームが持つレンダリングエンジンの性能とは直接的な関わりを持たないことが分かりました。これについては、開発に当たって携帯獣として正常に動作させることにリソースを割き、携帯獣の外見については実装の優先度が下げられたためと考えられます。
ゲームプレイ中に生成された携帯獣を一般的な情報工学の技術に基づいて救出する試みは、いずれも失敗に終わっています。生成された携帯獣はゲーム中の戦いで死亡するか、またはゲームがシャットダウンされることで消失するかのいずれかしか選択肢を持ちません。
管理局の倫理委員会は、生成された携帯獣は事実上死亡するほか無いという結論に基づき、2010-07-11をもってこれ以上のゲームの起動を禁止する裁定を下しました。
Subject ID:
#115444
Subject Name:
POKKEN ver.D
Registration Date:
2006-08-02
Precaution Level:
Level 3
Handling Instructions:
これまでの管理局の積極的な工作活動により、インターネットを経由して対象のROMイメージファイルをダウンロードすることは極めて困難、あるいは一般的に見て不可能な状態を作ることに達成しています。現在の本案件は、既にダウンロードされたイメージファイルを可能な限り回収すること、新たなクローンが作成されていないかを監視することの二点が主な活動になっています。
回収されたファイルは管理局が保持するオリジナルのROMセットと比較し、バージョンに相違が無いかを確認します。相違が見られない場合、対象のイメージは管理局の標準情報破棄手順に則って削除してください。何らかの相違が見られた場合は、対象を新規のROMセットとして登録してください。
管理局の倫理委員会の裁定に基づき、本案件で回収されたROMイメージはいかなる理由があろうと起動を許可されません。詳細は付帯資料を参照してください。
Subject Details:
案件#115444は、株式会社ナムコ(現・バンダイナムコゲームス)が開発した対戦格闘アクションゲーム「鉄拳2」の異常なROMイメージと、それに付随する一連の案件です。厳密には、正常な「鉄拳2」に大部分のモジュールを依存しつつ、異なるバージョンとして動作させるための「クローン」のROMセットが、本案件にて扱うべき主要なオブジェクトとなります。本来の「鉄拳2」のROMセットは、本案件の取り扱い対象外です。
出現した正確な時期は不明ですが、著名なアーケードゲームエミュレータである「MAME」が2006年中旬に行ったバージョンアップで、当案件のROMセットが「鉄拳2」のクローンとして新規に追加されていることが確認されました。そのため、当案件で扱うROMセットは概ねこの時期に出現したものと推定されています。ほぼ同時期に、多数存在するROMイメージの配布サイトに対して「pokken2ud.zip」の名称で一斉にファイルがアップロードされた記録が残っていることも、この仮説を補強している一因です。
このROMセットは「鉄拳2」の一般的なクローンの一つとして、「MAME」バージョン0.107以降及び「MAME」の同バージョン以降を元にした派生のアーケードゲームエミュレータで読み込むことが可能です。読み込んだ場合、画面には通常表示されるタイトルスクリーンではなく、黒い背景にごく簡素なフォントで「POKKEN ver.D」と書かれたタイトルが表示されます。エミュレータでコイン投入に相当する動作を行った後にスタートボタンを押下することで、通常通りゲームが開始されます。
起動後に一見して気付くのは、本来の「鉄拳2」に登場するキャラクターが選択画面に一人も存在せず、代わりにポリゴンで描かれた携帯獣のアイコンによってスロットがすべて埋められていることです。ここで操作するキャラクターを選択すると、シングルプレイヤーモードがスタートします。
ゲームの操作体系は正常な「鉄拳2」に準じ、レバー(あるいはレバーに割り当てたキー)でキャラクターを移動させ、ボタンの押下で攻撃や特殊動作を行います。プレイヤーはコンピュータが操作するキャラクターと戦い、最後に登場するボスキャラクターを倒せばゲームクリアとなります。プレイ開始から終了まで、プレイヤー自体には特段の異常は見受けられません。長期に渡る調査により、プレイそのものがプレイヤーに何らかの影響を及ぼすことは無いと結論付けられています。
ただしこのゲームの構成は、通常想定されるものと著しく乖離しています:
1.使用可能なキャラクターの変動
ゲームをリセットするか、ゲームクリアまたはゲームオーバーによってタイトルスクリーンへ戻るかのいずれかの条件を満たす毎に、使用可能なキャラクターが変化します。プレイヤーが選択可能なキャラクターは常に10体ですが、これまでに延べ287種類のキャラクターが選択画面に登場しています。特定のキャラクターを常に選択可能にするための方法も、選択可能なキャラクターが抽出される一定の法則も見つかっていません。また、正確なキャラクターの総数も判明していません。
2.キャラクター性能・性質の著しい変化
過去のプレイで選択できたキャラクターが出現した場合、そのキャラクターを次のゲームプレイで再選択しても、ほとんどの場合その性能や性質は大幅に異なっています。変更箇所は外見的特徴やキャラクターボイスといった比較的変更が行われやすい箇所に留まらず、使用可能なムーブセットや攻撃力・移動速度等のパラメータといった通常のゲームであれば変更されることは少ない箇所にまで及んでいます。特にムーブセットの変更は著しく、以前のプレイで使用できたキャラクター固有の技がまったく使用できず、完全に別の技に変更されているというパターンが度々見られます。
3.登場するキャラクターの全差し替え
このROMセットは明らかに「鉄拳2」を親としているにも関わらず、登場するキャラクターは一貫して携帯獣のみです。これまでのところ、人間のキャラクターは一切登場していません。当初は本来の「鉄拳2」のキャラクターモデルを携帯獣のものに差し替えたものと思われていましたが、その後の調査でモデリングやモーションも完全にオリジナルの物が使用されていると判明しました。
母体である「鉄拳2」で使用されていたテクスチャやモーションといった各種アートアセットはゲームプレイに際してまったく使われず、すべて独自のリソースに置き換えられています。これらのリソースをROMイメージから直接抽出する試みは、今のところ成功していません。
4.ゲームの完成度
ゲームの動作は極めて不安定です。プレイ中は頻繁な処理落ちやテクスチャの貼り遅れ、サウンドのクリッピングが発生し、負荷が高まるとしばしばハングアップを引き起こします。プレイヤーからの一切の操作を受け付けなくなりゲームが続行不能になることも少なくありませんが、その場合、プレイヤーキャラクターは相手から逃走するような動きを見せるか、もしくは極度に暴力的な動きで相手を倒そうとします。この暴走状態はゲームオーバーまたはゲームクリアまで続きます。
元となった「鉄拳2」と比べてレンダリングのレベルは数段劣っており、キャラクターは違和感を覚えるレベルのローポリゴンで描写されます。コンピュータのアルゴリズムは作りがおざなりであることが明らかに分かる程度の物で、あくまで動作するというレベルに留まっています。戦略的な動きや複雑な連続攻撃を繰り出すことは困難か、またはそのためのルーチンが組み込まれていません。
5.その他ゲームプレイ時の特徴
・このゲームは「対人戦」の機能を持ちません。クレジットを複数投入しても、対戦プレイには移行できません。
・本来時間経過で解放されるキャラクター選択画面のスロットは、規定の条件を満たしても「?」のまま解放されません。
・上記に加え、オペレーターコマンドによる強制的な隠しキャラクターの解放も不可能になっています。
・ゲームをクリアするかゲームオーバーになるまで、プレイヤーの体力は一度も回復の機会を与えられません。
・プレイヤーが敗北した場合、コンティニューはできません。事前にクレジットを投入していた場合も同様です。
・対戦相手の携帯獣は多くの場合最初から体力が減少しています。また、しばしば脈絡の無い動きをします。
・一部のプレイヤーは、相手の動きを「逃げようとしている」「苦しみもがいている」と表現します。
・最終ボスとして登場するのは、最後にクリアを達成した際に使用していた携帯獣です。この法則は一貫しています。
・最終ボスとして登場する携帯獣の体力は、前回クリア時のプレイヤー側の残体力と同一値です。
・ゲームをクリアした場合、携帯獣を正面から捉えた映像が映し出されます。この演出の意図は不明です。
・一部のプレイヤーは、上記エンディングの演出に強い不安感を訴えます。不安感の原因は分かっていません。
・スタッフロール及びネームエントリーはありません。ゲームクリア後は直接アトラクトデモへ移行します。
このROMイメージはエミュレータで動作させることを前提として開発されていると思われます。ROMイメージを適切な手順でフラッシュROMに書き込み、そのフラッシュROMを搭載したSYSTEM11基盤による稼働検証を複数回実施しましたが、いずれも起動中に本案件に対応する4つのフラッシュROMすべてでチェックサムエラーが検出されてシステムが停止するため、未だ完遂できていません。
以下は最初期に確認された、管理局が「オリジナル」と推定するROMセットの情報です:
pos1verd.2f 1,048,576byte C4F66A0B
pos1verd.2k 1,048,576byte ABCB4982
pos1verd.2j 1,048,576byte 668CA713
pos1verd.2l 1,048,576byte D936BF60
ファイル名は、このROMセットが「バージョンD」であることを示唆しています(これはzipアーカイブのネーミングとも一致するものです)。そのため、前身として「バージョンA」から「バージョンC」までが存在した可能性があります。これらのROMセットについては、継続して調査と捜索が続けられています。
2007-03-24 追記:
後に管理局が「MAME」開発チームにコンタクトを取り、当案件についてヒアリングを行う機会を設けました。ヒアリングの結果、開発チームはこのクローンセットが「MAME」の対応ROMセットとして追加されていることを一切認識していなかったことが明らかになりました。現在、更新履歴からはこのROMセットについての記述はすべて削除されていますが、ソースコード上に対応するルーチンが存在しないにもかかわらず、依然として「MAME」及び「MAME」派生のエミュレータは該当するROMセットを読み込み、正常にゲームを動作させることができています。
2010-07-11 追記:
管理局内部の協議に基づき、研究目的を含むこれ以上のゲームプレイは一切許可しないとの方針が打ち出されました。異議がある局員は、管理局の倫理委員会に対して異議申し立てを行うことができます。
Supplementary Items:
本案件には、1件の付帯資料があります。適切なセキュリティクリアランスを持つ局員のみが、付帯資料を参照できます。
>>あいがるさん
はじめまして、水雲です。コメントありがとうございます。遅れてすみません。
電脳世界(預かりシステムの中)ってどんな世界なんだろう、という妄想を文章に起こしてみた上記二作でございます。わたしは元々ポケモンを人間くさい感じに書いてしまうきらいがあるのですが、そこに「モノ」も登場させてしまったのですから、異質感満載です。そこに、ひとつの共通の「信念」を固定させることで、キャラを安定化させました。
お恥ずかしながらわたしはバリバリの文系でして、SFは本を呼んで影響を受けたクチです。リアルでのプログラミングなどはまったく存じ上げないのです。とにかく「それっぽい単語をばんばん出してハッタリきかせまくれば、それっぽい世界になるだろう」と思ってのアクションです。なので、二作とも、あまり意味のない単語が多かったりします。ノリや勢いで作った単語のほうが多いかもですね。
便利ですよね、預かりシステム。ポケモンも道具も瞬時に引き出せる、現実世界ではまだまだ信じられない高文明な技術。電位の祝福を受けた道具たちの帰る場所にある空気は、きっと暖かなものでしょう。
それでは、失礼いたします。
>>SBさん
はじめまして、水雲です。コメントありがとうございます。遅れてすみません。
そうそう、伊藤計劃さんです。ハーモニーに強くインスパイアされたのがこの作品です。これをそのままポケノベさんのの短編企画にもちこんだのですから、我ながらなかなかの神経だと思います。
パソコンの預かりシステムやモンスタボールなど、ポケモンの世界って初代から中々技術が高いイメージがあるので、そこにSFを組み込んでみました。ポリゴンやロトムなど、ひねればいくらでもSF風にできると信じています。
SBさんの感性にマッチしていたようで何よりであります。企画系の作品ですし、文字数や締め切りのこともあり、結構急ピッチで仕上げたものですので、こうしてマサポケさんに投稿するときには「やはり色々と甘いなあ」と自分でも指摘したくなる部分が目立ってきます。これからもこういう色の作品を書くときはもっともっとニッチな部分までこだわってみたいものです。
それでは、失礼いたします。
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