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この前変なss投稿させていただいたので説得力ゼロですが、今日のは普通です。バレンタインネタではありますが。XYのアニメ楽しすぎて困る。
ポケモン尽くしの生活を送るサトシは気づくのが遅れたが、世間はバレンタインデーというやつであるらしい。その辺の店でもバレンタインデームードなので視界の端にくらい浮ついた空気が入り込むはずだが、自分が疎いものは認識されにくいものだ。特にサトシという少年は。
そんな彼がやっとこさ気づけたのは、セレナとユリーカの存在が大きい。二人とも優しい女の子だから、みんなの手持ちのポケモンとシトロンやサトシに、ポケモンセンターの台所を借りていっぱいチョコレート菓子を作って振舞ってくれたのだ。
みんなで騒がしい中ポケモンのように笑顔でチョコを頬張るサトシに、シトロンが説明をしてくれた。
「地域によっては、男の人から女の人に贈ったりもするそうですよ。単純に男女とか些細なことは関係なく、日頃の感謝を込めてプレゼントしたりもするそうです」
「グラシデアの花みたいにか?」
いつかの冒険で出会った、生意気で楽しいポケモンと、桃色の可憐な花を思い浮かべながら、サトシは何気なく言った。シトロンはかたいいしだと思ったら大きな真珠を拾っていた時のように驚いて、メガネの位置を直したりしていたが。すぐ優しい笑顔に戻って解説を続けた。
「グラシデアの花はちょっと大げさですね。あれは生えている地域が限定されすぎていて、おいそれと入手できるものではありませんし。ただ……」
デデンネに手から直接お菓子をあげているユリーカの方を見ながら、シトロンは言う。蓄積された知識を披露するのではなく、素直な気持ちをこぼしたように。
「足場は同じでしょう。一緒にいられる仲間や家族、そんな人達に感謝を贈るという気持ちは」
☆
昼間の騒ぎが夢に出る夜の時間、サトシは欠伸を噛み殺しながらポケモンセンターの部屋に戻ってきた。寝てるのならそれでいいと思っていたのだが、親友の一人での外出に、黄色いネズミはどうしたのかと訝(いぶか)しみ、あてがわれたベッドで黒目をパッチリ開けて待っていたようである。腰のボールを外し、枕元のテーブルに置きながらサトシはピカチュウの頭を撫でた。
「ゴメンな、急に思いついたからピカチュウ置いてく形になっちゃってさ」
「ピ?」
撫でられているピカチュウは、怒っているというより何をしていたの? というようにサトシを見上げている。そんな相棒に、サトシはポケットから何かを取り出して見せた。
何の変哲もない、ただの板チョコである。
「セレナとユリーカが、昼間いっぱい作ってくれたから、いらないかもしれないけどさ……シトロンも、気持ちが大事みたいなこと言ってたし」
サトシの前置きは、ついてきてくれた他の手持ちポケモンの反応に由来する。みんな申し出は嬉しいがお腹いっぱいで無理、とボディランゲージで表現し、丁重にお断り状態だった。
「ピー♪」
しかし流石はサトシの長年の相棒。あれだけ昼間に食べといて、食いしん坊が底知れない。彼なら食いしん坊ネズミとして、化け猫ニャースにケーキを次々持ってこられても平気でやっていけるに違いない。オムレットにチョコケーキ、クレープババロアなんのそのだ。
サトシがパキッと折ったチョコを、黄色いネズミはムシャ食べる。小さな相棒に勧められ、サトシもそれを一口食べた。
夜の時間に甘い匂いが広がる。旅に出る前なら絶対に怒られた、背徳的な夜食時間。みいんな眠った時間帯。一枚のチョコがなくなるまで、少年と黄色いネズミはお菓子の味を楽しんだ。
もっと尺が欲しいと思いつつシェイミ映画好きです。テーマ的にはポケ映画で一番好きかも。ポケモンなら大丈夫ってことで私はネズミポケにチョコを食わせるのをやめない。ポケモンカードと交換しようって持ちかけられるようなブツがポケモンに有害なはずがない(ネタ古すぎて意味不明)。でも現実の動物にチョコレートはあげちゃダメですよ。
七月七日、今年もライモンシティの警察署内にはレプリカの笹が飾られた。
警察の人間が、思い思いの色の短冊を選んで、笹に吊るし掛けていく。大きめの笹飾りは、あっという間に色とりどりの紙飾りに包まれた。机とか椅子とか壁とか、何かと灰色が多い警察署の片隅で、そこだけごてごてとして、明るかった。
「何だか、節操の無いドレスを着ているみたいだな」
背の高い美女が、そう言いながら自身もそのドレスに一枚投じようとしているのを、キランは黙って眺めていた。彼女は背が高いというのにその上わざわざ脚立に乗って、笹飾りの一番上に短冊を括り付けようとしている。キランの視線に気付いたのか、彼女は「何だ?」と言っていたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「いえ、随分高い所にするなー、と思いまして」
余程見られたくないのか。だとしても、普通に背伸びして括り付ければ、背の低いキランには見えないのに。それに、高所にあったとしても、いたずら者のエルフーンにでも頼めば、短冊は簡単に取られて見られてしまうだろう。そんなことをしてまで読もうとは思わないが。
気にならない、わけではないけれど。
「願い事は、知られてしまうと叶わないと言うじゃないか」
「そうですっけ?」
キランは盛り沢山の短冊を見つめた。皆、フランクに吊り下げていっている。警察の内部だけあって、内容は『事件が解決しますように』とか、『出来るだけ子供が寝る前に帰れますように』とか、そういうのが多い。キランも同じようなものだ。どれにしろ、見られて困るような願い事はない。
「あれ、違うのか? キランの故郷の風習なんだろう、これは」
不思議そうに首を傾げてから、彼女は脚立から飛び降りた。反動で脚立が揺れる。
「レンリさん、危ないですよ」
「どうなんだろう」
美女――レンリはキランの注意を無視して、笹飾りを軽く揺すった。笹はドレスを纏って踊るみたいに、さわさわと揺れる。
キランはひとつため息をついてから口を開いた。
「七夕には笹飾りに願い事を書いた短冊を吊るすと願いが叶うとか、恋人同士の織姫と彦星が年に一度、この日にだけ会えるんだとか聞きますが、願い事がバレたら叶わないとかは聞いたことありません。というかそもそもよく知りません。両親が向こうの出身なだけで、僕はこっちの生まれですから」
「うーん、じゃあ、ご両親に聞いたら分からないか?」
願いが叶うかどうか、とレンリは少し、声量を落として言った。珍しいな、とキランは思う。彼女はそういう迷信を信じない方だとばかり思っていた。
でも、それはキランの思い込みで、彼女も験を担ぐ人なのかもしれない。そう思いながら、キランは答えた。
「聞いても、願い事の話と織姫彦星の話くらいしか知らないんですよ、うちの両親。まあ、短冊に『もっとおしとやかな女の子が欲しい』って書いたら僕が生まれたらしいんで、効果は薄いと思いますよ」
言いつつ、自分の短冊を結ぶ。『事件が減りますように』うん、これでいい。
レンリはというと、「そっか」と至極残念そうに肩をすくめていた。
キランは目に痛い程、色とりどりの短冊たちを指先で突いて揺らした。
――こんなものに頼ってまで、叶えたかった彼女の願いって、何だろう。
キランの疑問に呼応するようにして、「ぷめっ」と鳴き声が上がった。「あっ、こら」レンリが伸ばした手の中に、白い綿だけが残る。いたずら者のエルフーン、キランの手持ちの一匹が、紅色の短冊を持ってキランの方にふわりと近付いた。
「ウィリデ、短冊を返し――」
レンリが言い終わる前に、短冊はキランの手の中へ。変な手触りだな、と思う間もなく、短冊をレンリに取り返された。
「見たか?」
「いえ、ちょっとだけ」
少しむくれた顔をして、レンリは再び脚立の上に登った。そして、懲りずに笹のてっぺんに短冊を括りつける。その様子を黙って見守るつもりだったキランだったが、つい堪えきれなくなって口を開いた。
「レンリさん、ケーキくらい買ったら」
「うるさいよ」
ご丁寧に、『ケーキたべたい』と書かれた面が笹の葉で隠れるように小細工をしてから、レンリは脚立を飛び降りる。その口元には、いつものいたずらっ子みたいな笑みが浮かんでいる。それで、流石のキランにも分かった。ああ、いつものいたずらだな、と。
その日の夕方、笹飾りの後片付けを押し付けられたキランは、役得ということで、レンリの書いた短冊を持ち上げながら言う。
「これ、どういう意味だろうね」
話しかけた先、キランのエルフーンは、ただ「ぷめっ、ぷめ」と鳴くばかり。「分からん」なのか「分かるけど教えてやらん」なのか、ちっとも分からない。付き合いが長いので、その二択なのは何となく分かるのだが。
『ケーキたべたい』
まさか本当に星に願ってでもケーキを食べたい、という意味ではなかろう。レンリのことだから、この短冊をみたキランがケーキを持ってくるのを期待しているか、あるいはこの願い事自体がダミーだとか……
「あ」
と呟いてキランは短冊の縁を擦る。少し段がついている。同じ色の短冊を二枚重ねて、貼り付けてあるのだ。道理で、さっき持った時、違和感があったのだ。
紙の隙間に爪を差し入れると、強い糊を使っていなかったのか、二枚の短冊はあっさりと離れた。そして、その内側に願い事が。
『母さんに会いたい』
キランは慌てて短冊を裏返した。見なきゃ良かった。
結局、キランは『ケーキたべたい』と書かれた短冊も、レンリの本当の願いが書かれた短冊も、他の色とりどりの短冊と一緒くたにして燃えるゴミに放り込んだ。笹飾りを片付ける前、一瞬だけ、『彼女の願いが叶いますように』と書いた短冊を括りつけて、その短冊も後で燃えるゴミに放り込んだ。これは、キランしか知らない願い事だ。叶うなら叶え。もう、破れかぶれだった。
「はあ」
何やってんだろうな。ため息をつく。そのささやかな呼気で、エルフーンが大げさに吹っ飛んでいってみせた。
「ウィリデの所為でしょ」
言ってから、また後悔する。興味を持たせるような、ややこしい行動をしたのはウィリデだが、あの短冊を剥がしたのはキランなのだ。
やらなければよかった。知らなければよかった。知らなければ、もしかしたら叶ったかもしれないのに。後悔ばかり募って、止まらない。
「ぷめ」
エルフーンが帰り道にある食料品店を指した。そういえば、ポケモンフーズもそろそろ買い足し時かな、と無理矢理そう思い込むことにして、キランは店に足を踏み入れた。ポケモンフーズが置いてあるコーナーへ、一直線に進む。キランが草タイプ用のポケモンフーズを物色している間、エルフーンはまたどこかへフラフラ離れて行っていた。しばらくすると、きちんとエルフーンは戻ってきた。
「おかえり、ウィリデ。それは?」
戻ってきたエルフーンは、綿に絡ませた品々を、買い物カゴの中に落として入れた。牛乳、卵(いくつか割れた)、小麦粉、生クリーム……
「ああ、そういうこと」
『彼女の願い』の内、どうでもいい方が叶ってしまっては困る。もしも気まぐれな神様かジラーチが短冊を見ていたのなら、勘違いしないように、もう片方の願い事はキランが叶えてしまわないと。出来るだけ早く、そう、明日の朝一番に、彼女にケーキを持って行こう。
「ウィリデ、何か果物も持ってきてよ」
エルフーンにお使いを頼む。エルフーンは「ぷめっ」と一言鳴くと、白い綿をひと欠片だけ残して、その場から消えた。
「これも験担ぎの一種だよね」
キランは残った卵の数を数えながら、そう、小さな声でつぶやいた。
(あとがき)
そういえば七夕だったので。
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「遅くまでごめんね。今日はありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございました!」
2人のトレーナーが対戦を終え談笑している時、傍らにはバトルに参加したポケモン達が休んでいた。
その中に1匹、他のポケモン達より明らかに疲れている様子のマリルリが大の字で寝ていた。
彼は先程相手のマリルリの「きあいパンチ」を鳩尾にモロに喰らい、そのままKOされてしまったのだ。
「うー……」
「おい、大丈夫かはまち」
隣にいたメガニウムが、うめくマリルリを除きこんだ。
「きゅうり……見りゃ分かるだろ。これのどこが大丈夫そうに見えるんだよ」
「まあそうだよな。よしよし」
メガニウムはそう言うとマリルリの頭をひと撫でした。
「あんた達何イチャついてんのよ。おとなしくしないとまた燃やすわよ」
そのやり取りをエルフーンを頭に乗せながら聞いていたハピナスが大きな声を出した。
「勘弁してくれよ、もーこりごりだっての。どうせならその綿毛燃やせよ。相手あからさまに嫌な顔してたぞ」
「コットンはいいのよ。可愛いから。ね」
「うんー、燃やさないでー」
エルフーンはそう甘えた声で言うとハピナスにしがみついた。
「あー可愛い。あんた達とは大違いね」
「くっそ……媚びやがって……」
メガニウムはエルフーンのあざとさが気に食わなかった。もし自分に甘えてきたら速攻逃げたい。
「そーだ、あの猿野郎はどこ行った?」
メガニウムは辺りを見渡す。すると。
「さっきのきあいパンチ、かっこよかったよー! 俺、強い女の子ってめっちゃ好みなんだよねー! どう? この後一緒に夜のハネム〜ン☆にでも行かない?」
はまちを地に叩き伏せたマリルリを口説いているゴウカザルがいた。
「あのやろー……何がハネムーンだ」
「きいいいい、燃やしたいわあああ」
「おう燃やして来い。存分にやってこい」
「あたしだけじゃ無理よ! あ、とび! 来なさい!」
「え、え、え、何ですか!? わああああ、引っ張らないで下さいーーーー!!!!」
頭にエルフーンを乗せ、怒りに満ちたハピナスが困惑顔のトゲキッスを引きずっていくのを横目で見ながら、メガニウムはマリルリの寝顔を見つめていた。
> 色々埋まりすぎてて怖い。
桜って成長が早いのでエネルギーをより必要とするとか何とか昔聞いたことがあります。
毎年一体どれだけ犠牲が出ているというのだろうか……フヒヒ
> 即興……だと……。
着想→投稿まで大体1時間くらいでした。
> 【その位置からダグトリオの下半身が見えるはずだ! さあどうなっている!?】
明かりがないから見えなかったようだ! 残念!
感想ありがとうございました!
お待たせしました。
「マサラのポケモン図書館、ポケモンストーリーコンテスト・ベスト」通販受付始めました。
GW明け一斉発送となる予定です。
通販サイト
http://www.chalema.com/book/pijyon/
ベストついでにNo.017個人誌も購入出来ます。
よろしくお願い致します〜
ドッ
ドッ
ドッ
ドッ
冷たいコンクリの床に寝そべっていると、耳を貫くような底から湧き上がってくる音で目が覚めた。俺は体に合わない小さな耳をピクリと動かす。エンジンの調子はいいようだ。そして、主人の機嫌もいいようだ。
「……よっし!異常なし!あとは着替えてヘルメットとゴーグルつけて」
主人は女だ。だが性格は男だ。普通、女が相棒と一緒に乗れるくらいのサイズのバイクを購入したりしないだろう。横に俺専用のカーをつけて。ちなみに色は青と黒。寒色系のコラボレーション。
暖色系の体を持つ俺が乗ると、何処へ行っても目立つ。
「はい、アンタもこれつけて!ヘルメットとゴーグル!まだこの季節は風が冷たいし、変な物目に入ったら困るから」
主人は既にレザージャケットに着替えていた。元々豊かな胸が、黒い服のせいでウエストが縮まってるように見えて更に強調されている。これで髪ゴムを外してそのままにすれば、どこぞのモデルのようになるだろう。
もちろん言わないが。
俺は言われた通りヘルメットを被りゴーグルをつけた。暗い赤の世界が無限に広がる。そのまま専用のカーに乗り込む。主人も隣のバイク本体に跨り、再びキーをまわした。
心臓の鼓動。
エンジン音。
全てが混ざり合い、耳に入っては通り抜けていく。
「さあ、目指すはサザナミタウンよ!Lets go!」
(果てしなく遠い ゴールを探しながら 高速で転がる 直上型のBIG MACHINE)
――――――――――
この一人と一匹はユエとバクフーンです。似合うかなーと思って。
【何をしてもいいのよ】
色々埋まりすぎてて怖い。
> 俺の目と鼻の先で、ダグトリオが地盤を掘り返している。
> そういえば彼女も、ダグトリオじゃないけどモグラのポケモンを持っていたっけ。
> それを知ったのは、彼女と別れた直前のことだったけど。
最後二行でここらへんの意味が分かるのがすごい。すげー怖い。
雑多な感想ですが、失礼します。
即興……だと……。
【その位置からダグトリオの下半身が見えるはずだ! さあどうなっている!?】
レアコイルと桜の組み合わせとは、意外でした。
周りの温度が二度上がるの、知りませんでした。そこで桜前線とか、素敵だなあ。
ピッカピカに磨かれたボディに映る桜も、いいなあ……。
あと「期間限定のトレーナー」という言葉も好きです。毎年同じような時期にやってきて、その人が去ってふと気付くと桜が咲いている、みたいな。そんな風流めいた言葉に似合わず、道中のトレーナーを銀行がわりにしているのはポケモンらしいといいますか。
それでは、短い感想ですが失礼します。
前書き:カップリングです。http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=2393&reno= ..... de=msgviewのその後です。
ダイゴがソファに座った。ハルカも何も言わず隣に座る。その距離は今まででは考えられないくらいに近い。拒否されるかもしれない。恐る恐るハルカはダイゴの手に触れる。
「もっとこっちにきなよ」
体をまるごと抱き上げられ、ダイゴの膝の上に座る。後ろから抱きしめるダイゴにハルカは身を任せる。
「君を拒否なんてしないよ。だからもっとおいで」
ダイゴの甘い声がハルカの耳元で響く。彼女の体を痺れさせるには十分だった。
「ダイゴさん」
「ん?」
「好きでいたいです」
「僕もハルカちゃんを好きでいたいな」
惜しげもない愛の言葉がハルカに降りかかる。なぜこの人はこんなに怖がることなく愛を告げることが出来るのか。ハルカはいつもそれが不思議だった。
ハルカはいつも怖い。大好きなダイゴから嫌われることが。否定されることも 、拒否されることも。だから怖くて好意を表に出せなかった。ダイゴはそれすらも見抜き、ハルカを待っていた。
大人になれば解るのかな。ハルカは振り向き、ダイゴの目を見る。キスしてしまおうか。ハルカにふとそんな考えが浮かぶ。けど、もし拒否されたら。その考えがハルカを止めた。
「ねぇハルカちゃん」
「なんですか?」
「僕は今すぐ君を押し倒して犯したいと思っている」
「な、なにをっ」
「それくらい、ハルカちゃんが好き。これくらい言わないと」
ダイゴに引き寄せられ、ハルカは彼の胸に押し付けられる。
「臆病な君は僕に抱きついてくれないし、キスしてくれないだろう?」
何でも見通しているような目。ハルカは顔をあげてダイゴを見る。
「ダイゴさん、なんで何でも知ってるみたいに言うんですか!?」
「単純さ」
ダイゴが少しだけ笑う。
「君が大切にしてるポケモンを見る目と、僕を見る目、同じようで違うよ。ポケモンたちは思いやりがあるのに、僕を見る時は好きでたまらないと言いたげだ」
ダイゴに唇を塞がれ、抱きしめられては逃げ場ばない。どこにも逃げられない。
怖がってダイゴからのサインを見ないフリをしていた。それは違う、本当は私など見てないと。もっと早くダイゴに伝えていれば、こんな時間がたくさんあったのか。唇を重ねながら、ハルカは思う。
「とろけそう」
唇を離し、ダイゴに抱きついた。
「そうだねハルカちゃん」
ダイゴの声が少し震えている。
「もっと君が大きくなって、僕と同じくらいの立場になったら、たくさん教えてあげる。キスより気持ちいいこと、いっぱい」
ダイゴに抱かれるだけで胸がいっぱいになってしまうのに。ハルカはその先なんて想像つかなかった。
「だから今はポケモンのことを教えてあげるよ。大きくなってから知らないことがないように」
仕事だから会えないという旨のメールをもらったのはついさっき。こんなのはいつものこと。
「ハルカ!今日は暇?遊ぼうよ」
友達からの誘いにハルカは乗る。いつもの仲良しグループは、近くのファミレスに入る。
「えっ……」
ハルカは友達の話を聞いて、言葉が出なかった。
「何いってんの?付き合ったらセックスなんて当たり前じゃん」
友達には付き合って3ヶ月の彼氏がいる。けれど赤裸々にそんな話をされるとは思わなかった。
「むしろハルカの彼氏ってさぁ、もう2ヶ月じゃん?セックスないとか有り得ないよねぇ」
全くないわけではない。忘れるわけがない。付き合ったあの日、ダイゴに脱がされ、寸前の行為までしたこと。
あれ以来、そういうことは全くないし、ダイゴの方からもアプローチはない。
「え、ないわけじゃないんだけど…」
「てかハルカはもっとアピールしなきゃ!やったもん勝ちだよ」
そういうものかな。ハルカはそう思っていた。
ダイゴの家でポケモンの訓練をした後に、夕食をごちそうになる。
「今日はポトフとビーフストロガノフだよ」
「なんですかそれ?」
「まぁ食べてみなよ。ハルカちゃんに食べてもらいたくて覚えたんだ」
嘘か本当かは解らない。ダイゴは台所からテーブルに料理を運ぶ。それを手伝うハルカ。ダイゴの姿を見て友達の言葉が浮かぶ。
確かにダイゴは大きくなったら教えてあげると言った。けどそれはハルカとしたくない口実なのではないか。ダイゴから聞いた話ではないのに、ハルカは一人で悩んでしまっていた。
「どうしたんだい?」
ハルカの変化に気づいたのか、ダイゴが心配そうに尋ねる。
「いえ……あの…ダイゴさん…」
「どうしたの?何でも聞くよ」
「私と…セックス…したくないんですか?」
「一体どこからそんな発言でて来るの?」
「だって友達が…付き合ったらセックスするんだって…したもの勝ちだって言うから…」
「ハルカちゃん。そういうのは貞操観念って言うんだけどそんなの人それぞれ。その友達がどう思っても、ハルカちゃんとは違うんだよ」
「でも…それにダイゴさん答えてください」
「何度言わせたら気が済むのかな君は」
少しイラついたような言葉。ダイゴは怒ってるように見えた。
「ハルカちゃんは僕のこと信じられないの?僕は君の先生で彼氏だよ」
「だってよく考えたら、ダイゴさんは年上で、こんなにかっこいいのに、私なんかを相手にするなんて…」
どんどん出てくるハルカ自身の欠点。ダイゴはため息をつくと、泣いてる彼女を抱き上げる。お姫様抱っこされて、ハルカも思わずダイゴを見た。
「ハルカちゃんはまず、自分に自信を持って。君みたいに真っ直ぐでかわいい子はあんまりいないよ。それに美人だからって僕が付き合うわけじゃない。ハルカちゃんだから付き合うんだ」
食卓につかせる。そしてハルカの頭をなでた。
「泣いてたらおいしくないよ」
こんなに優しくしてくれるダイゴに対し、自分はなぜこんなにダイゴを困らせるようなことしか言えないのか。
ハルカは泣きながらもスプーンを握る。そして一口、また一口。ダイゴが作ってくれた料理だ。残すわけにはいかない。
それから数日後のこと。午後からダイゴとミナモデパートに買い物しにいく約束だ。
「ハルカ…」
家の前で友達に会う。とても暗い顔をして。
「どうしたの?」
「ハルカ、どうしよう!私、私…」
「解らないよ、落ち着いて。ね」
「あ、あのね。私、妊娠しちゃったの…」
突然のことにハルカはかける言葉が見つからない。
「妊娠…?どういうこと?親にはいったの?彼には?」
「突然、連絡とれなくなって…親には言えない…どうしたらいいか解らないの…」
泣き出した友達を放置するわけには行かず、ハルカはダイゴに詫びのメールを入れて、とりあえず自宅から離れた公園へ行く。
「もう3ヶ月なの」
「それって確か…」
「会ってからずっとやってた。お金ないし、外に出すから大丈夫だって…」
ハルカはめまいがした。友達だって一緒の授業で教わったはずなのに。
「どうしよう。親にいったら怒られる…」
「でも言わないとどうしたらいいか私も解らないよ」
ダイゴからのメールが来る。友達とカナズミシティにおいで、と。会社の方に誘うなんて珍しい。ハルカは言われるまま、カナズミシティに行く。
ポケモンセンター前でダイゴに会う。ハルカに安心感が生まれ、友達の前というのに駆け寄る。
「ダイゴさん!」
「どうしたんだい?僕でよければ話を聞こう」
友達はダイゴに必死で状況を話す。それを端からみていたハルカは一つの感情を覚える。
嫉妬だ。ダイゴは自分だけのものだと思っていた。それなのに…
「解った。僕の知り合いの医者を紹介しよう。そこで解決した方が良さそうだ」
ダイゴは友達の肩に軽く手をまわし、ハルカには声をかけただけ。
「やっぱり、私なんかじゃ…」
ハルカは二人についていく。ただ黙って。
ダイゴは病院まで送り届け、医者に状態を説明すると、すぐにハルカの手を引いて出ていく。
「ダイゴさん、いたっ!」
「ああ、ごめんね」
ダイゴが力を緩める。歩き方も何だか怒っていたようだし、何かがおかしい。
「ハルカちゃん。君の友達のことを悪く言うのは申し訳ないけど、あれはないよ」
「え、何がですか?」
「あんな子にセックスする権利なんてない。セックスって確かに気持ちいいけど、それは子供を作る行為だってこと忘れて、しかも彼氏も嘘ついてそこまでしたいかな」
「え…」
「まぁ産むにしても下ろすにしても、あの子は一生消せない事実を作ってしまった。普通の結婚や普通の生活は望めないだろうな」
ハルカの胸に、ダイゴの言葉が突き刺さる。
ハルカがダイゴにねだった行為の結果が、今日の友達だ。もし、あそこでねだっていたら、今日泣いていたのは…
「ハルカちゃんは、セックスが怖い?」
いきなりダイゴに振られて、まとまらない考えは口に出ることはなかった。
「セックスしたら、あんな未来が待ってるかもしれない。大人ならまだいい。けど君は責任とれる年齢でもない」
「確かに、怖くなりました…」
「そうか」
ダイゴは立ち止まる。
「けど僕は君を押し倒して犯したい」
「えっ…あ、あの…ダイゴさん?」
「僕はどちらも望んでる」
「どういう、ことですか?」
「もう少しハルカちゃんが大きくなったら、ちゃんと解説してあげる」
なんだか掴みどころのないダイゴが、今日はとても真面目に見えた。いままでよりもずっと頼もしく。
「ダイゴさん」
「どうしたの?」
「本当のこと言うと、さっきまで友達と仲良く話すダイゴさんが嫌でした。ダイゴさんは私だけのものだって思い上がってました」
「それで?」
「ダイゴさんは私のものじゃないのに…」
「ハルカちゃんは僕のことが好きだからそう思ったんだろう?僕は素直に嬉しいよ。けどね、他人は誰のものでもない。そこも気づいたのは、ハルカちゃんの心が大人になっていってる証拠だね」
ダイゴが歩みを止める。
「もうお昼かなり過ぎたね。何食べようか?」
「え、あ…オムライス!」
「じゃあそうしよう。」
カナズミシティのビジネス街のレストラン。時間もずれて、サラリーマンはほとんどいない。
「ねぇハルカちゃん」
「なんですか?」
「ちょっと伏せて」
言われるままにハルカは頭を下げる。そして振り向くと、ガラス越しに、見つかったと逃げていく人間。
「ハイエナみたいなやつだ」
「また、ですか?」
有名企業のトップから出たチャンピオン。その私生活を面白おかしく暴こうとする人間に、ダイゴは目で威嚇する。
「ああ。やつらにとって、君と付き合ってることも恰好のネタだからね」
水に口をつけ、ダイゴは一息はく。
「大丈夫。何があっても君のことは守る。僕はさらし者になっても、君のプライベートは関係ないからね」
ハルカにとって、怖いのはプライベートを全国に売られることではない。目の前のダイゴから拒絶されることが一番怖いのだ。
解って欲しい。ハルカはそう思ってメニューを渡した。
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お前が言うなと思った人は正しいよ(
ポケモントレーナーとして生命倫理は必ず持つべきものだと思うんだ。
特に頂点に立つ人の倫理観が書きたかった。
だって自分の他に生き物の責任を追う職業だから、必要だとは思うんだよね。
【好きにしてください】
北へ向かう。歩きで、電車で、船で、ときには鳥ポケモンの背に乗って。ホウエンからジョウト、カントーを経てシンオウへ至る。出発は風もすこし冷たい3月の末、シンオウにたどりつく頃には5月の始めになっている。
私が北へ向かう理由はないが、どうも私の連れには理由があるらしい。浮遊する生命体は焦ることなく、しかし北へ向かいたがる。道中、銀行代わりに……もとい経験のためにトレーナーとのバトルにいそしみ、宿屋代わりにポケセンに押しかけ宿泊する。期間限定のトレーナーとでもいうのだろうか。
私と彼が通りすぎた頃、あたりの寒さが緩む。濃紅色の桜のつぼみが色を薄め、ほろんほろんと咲いていく。桜前線の先駆をしているような気分になってくるのだ。
まるで桜の先駆けのようだ。ただ、彼に似合わないのが非常に惜しい。
お世話になるカーネル氏の言葉は、いつぞやそう言って賞金をはずんでくれた。チェリムやワタッコのような草タイプが先駆けならいざ知らず、彼はでんき・はがねタイプですよ。そう私は返し、灯台から降りる。
灯台に守られるようにある若い桜の枝に最初の一輪が花開き、淡い紅色を鋼のボディに写す彼を見て、私はカーネル氏の言を否定したくなる。
彼は確かに桜の先駆けだ。
レアコイルであることが、なんの失点になろうか。
☆★☆★☆★
レアコイルの半径1キロで気温が2度あがるそうではありませんか。
なら、レアコイルが北上すれば桜前線北上するんじゃないのかと思った結果が行き倒れ満載なこれでした。
「エビワラーよ。お前のことが好きだ」
「俺もアブソルの事は好きだよ」
「――――少し曲がって伝わったようだな。私は、お前を一人の雄として好きだ」
「そ、そうか」
一昔前。とある地方の、夜の帳が下りた人間がいない深い森の中で、二匹のポケモンが会話をしていた。仏頂面で生傷だらけのエビワラーと、にこにこと満面の笑みを浮かべるアブソル。夜が開けるまでは危険だからと互いに身を寄せ合っている時、ふとなんの余兆もなく雌のアブソルが雄のエビワラーに愛の告白をした。当然、心構えも何にもしていなかったエビワラーは、ただ戸惑うことしかできなかった。
「私とお前の出会いは偶然だったな。お前が森で体を鍛えているとき、殴っていて倒れた木に下敷きにされたのが始まりだった。よく覚えているよ。数日看病を受けている間に、私はすっかりお前に惚れてしまったんだ」
「あの時はびっくりしたけど、細い木で本当によかったよ。大木だったら大怪我だからな」
「いや、私も間抜けだったよ。お前が特訓をしてあんなに騒いでいるのにも関わらず、寝ていて気づかなかったのだからな」
アブソルはエビワラーの膝に顔を置いた。そのまま仰向けになり、下からエビワラーの顔を見つめる。
「だが、あの時に怪我をして良かったと思っている。ああいう劇的な出会いがあってこそ、私とお前は親密になれたのだよ」
「それは正しいな。あの頃の俺はろくに仲間も作らず、独りきりで修行に励んでいたからな。それに比べてアブソルは、誰とでも親しく関わるから、外から来たポケモンなのにすっかりここに馴染んでしまったな」
「お前は初対面の奴には人見知りするからな。やたらむやみにとは言わないが、信頼できる相手がいて損はないぞ。せいぜい、友人と呼べるポケモンは数人だろう?」
「数人いれば充分だ。交友関係は狭く深く、だ。それに、お前がいつも側にいるだろう。だから寂しくないよ」
「―――そうか。それは告白の返事だな。嬉しいぞ」
「いや、これは返事ではないんだけどな」
エビワラーの冷たい態度に、アブソルは落ち込んでしまう。
「なんだ、まだ私を雌として見てくれないのか。先は長いな」
小さなため息を吐く。アブソルは頭を回転させ、そっぽを向いてしまった。
「寝る。おやすみ」
「拗ねるなよ。ちょっと待て」
「女心をここまで表に出しているのに、結果がどうであれ答えを出さないポケモンは嫌いだ。雄らしくないぞ」
「あのな、俺の気持ちも考えてくれ。告白って、する方も凄く勇気が要るんだぞ?」
段々と、蝋燭の火が消えるように声が小さくなっていく。ふてくされていたアブソルは、もう一度エビワラーを見ようと振り返る。
「俺は、アブソルのこと好きだよ」
エビワラーは、震える口で声を絞りだし言った。告白を受けた本人は、最初は呆気にとられていたが、直ぐに笑顔になり体を起こす。
「本当か?」
「嘘ついてどうする」
「夢じゃないよな?」
「頬叩こうか?」
「止めてくれ。格闘技は、私には少々効き過ぎる」
そう言うとアブソルは、前足で自分の片方の頬を叩く。ぱちんと気持ちいい音がなるが、笑みは崩れない。
「ああ、ようやくこの日が来たのか。確かに私は毛むくじゃらで四足歩行、エビワラーは二足歩行で、まるで人間のような容姿。同じポケモンとはいえ大きな壁があるのは分かっていた。それでも、私は自分の心を殺すことはできなかった。望みが叶って嬉しいよ」
「俺だって、最初はアブソルのこと、正直鬱陶しいと思っていたよ。でも、一緒に生活していくうちに、気持ちが変わっていったんだ。確かに、俺とアブソルは種族が違いすぎるけど、それでもいい。今まで受け流していて悪かったよ。もう素直になる」
「そうか。これで両想いか。なら、これから遠慮しなくていいな」
エビワラーは、彼女が何を言いたいのか理解し、緊張で体が硬直する。それを理解しながらも、アブソルはエビワラーをゆっくりと押し倒した。白い体毛でエビワラーを包み込む。
「あの。俺な、そういう深い経験はしたことないんだよ。だから、気をつけるけど、嫌だったちゃんと言ってくれよな」
「私も経験はない。心配するな、嫌なものは嫌と言う。だから、安心して愛をぶつけてくればいい」
アブソルは、のしかかりながら軽くエビワラーに口づけをした。長く唇を重ねない、軽いキスだった。
その日の夜。二匹のポケモンの体が重なった。
数日後。エビワラーが、木の実を抱えて森の中を歩いていた。時刻は正午を過ぎる前で、昼食を食べるには丁度良い時間だった。
森の中をゆっくりと歩いて目指している先は、小さな丘にある横穴だった。意気揚々とエビワラーは中に入っていく。横穴の奥で枯葉の上に寝そべっているのは、毛並みが美しいアブソルだった。入ってきたのがエビワラーだと分かると、穏やかな表情で出迎えた。落ち着いた態度で、大事な番におかえりと言う。彼もまた、ただいまと言い返した。
アブソルは、一つのタマゴを抱えていた。真っ白で、ひび一つ入っていない。
「どうだ、タマゴの様子は?」
エビワラーは、アブソルの側に座りながら尋ねた。
「動く頻度が多くなってきているぞ。もう少しで産まれそうだ」
「そうか。ほら、木の実を持ってきたぞ。お前が好きなモモンの実もある」
「ありがとう。有難く頂こう」
アブソルはタマゴを傷つけないようにゆっくりと起き上がる。なるべく体毛に埋もれるように調整して、手渡された木の実を口に含んだ。
「しかし、まさか子どもができるなんて。俺達は余りにも違いすぎるから、半分諦めていていただけに嬉しいよ」
「そうだな。腹部に違和感があったときは驚いたよ。エビワラーに抱かれてから直ぐに、いきなりタマゴが出てくるんだからな。お前が小躍りしているところなんて、初めて見たぞ」
「仕方ないだろう。嬉しかったんだから」
あの告白の後、エビワラーとアブソルは、互いを激しく求め合った。今まで塞き止めていた感情が爆発し、それは全て性欲として発散された。彼らは睡眠も食事も忘れ、体力が続く限り体を弄り合い、深く愛を確かめ合った。
二匹は一日中交尾を続け、そして力尽きた。数時間後、エビワラーが目を覚まして最初に見た物は、腹を抱えて苦しむアブソルだった。彼は慌ててアブソルの腹を擦るが、痛みが引く様子がない。そして大きな悲鳴を上げて出てきたのは、一つの大きなタマゴだった。
正真正銘、二匹の子どもだった。
「焦ったよ。このままアブソルが死んでしまうのかと、泣きそうになった」
「とても痛かったし、恐かったぞ。体が裂けてしまうかと思った。でもその代わりに、大切な宝を授かったな」
「そうだな。それに、もう直ぐ俺達の子どもと会える」
エビワラーは、優しくアブソルの頭に触れる。お返しにと、アブソルはエビワラーの頬にキスをした。
すると、突然タマゴが激しく揺れる。二匹は驚いたが、直ぐにこの現状に気づいた。
「産まれるみたいだな」
「ああ。いよいよだぞ」
ついに待ち望んでいた時がやってきた。数日の間大切に守られてきた白い殻に初めて亀裂が入る。徐々に音を立てて広がり、中から出てこようともがいているようにも見える。エビワラーとアブソルは、この瞬間を見逃すまいと食い入るようにタマゴを凝視する。
そして次の瞬間、タマゴは光り二匹の視界を奪う。彼らは反射的に目を瞑った。
数秒間、横穴には沈黙が流れた。二匹は一息おいて、ゆっくり瞳を開ける。
そこにいたのは見たことがないポケモンだった。まん丸とした頭に、大きな丸い目。細い体に、人間が服を着るみたいにズボンを履いているように見える。何より特徴的なのは、全身が黄色いということ。その姿には、両親の特徴が全く受け継がれていない。
産まれたばかりのポケモンは、地面を這いアブソルの元へ近寄る。必死にもがき、自分の母親の乳房に近づいていく。呆然としていたアブソルも我に返り、産まれた我が子を胸に抱き寄せた。
そのポケモンは、乳房から母乳を吸い始める。
「ああ・・・俺の・・・子」
父親になったエビワラーは、夢中で食事をする自分の子どもを撫でようか止めようか、何度も手を出し引っ込めて、ようやく小さな頭を当てた。
「可愛いなあ。天使みたいだ」
「当たり前だ。私達の子なのだからな。容姿は多少違うが、表情はお前そっくりだ。この母乳を吸っているときの顔、私の乳に口付けするときと似ているな」
「――こんな顔していたのか俺は」
「ああ、そっくりだ。顔は父親似だな」
「直ぐそういう意地悪言うんだから、アブソルは」
「でも、まんざらでもないだろう?」
「ああ、お前みたいに、優しくて純粋な子に育つと良いな」
二匹は、親になった喜びを噛み締めていた。
時が経つと、後にこの子どもの種族は、人間達からズルッグと呼ばれるようになる。
――――――――――――――――
フミんと言います。また短編を置かせて貰います。
【批評していいのよ】
【描いてもいいのよ】
皆さんが楽しんでくれれば幸いです。
たとえば、
とても大切な人が大怪我をして、
苦しんでいたとして
どうしてその痛みを分かち合うことが出来るのだろうか。
「……酷くやられたね」
レディはモルテの腕に包帯を巻いていた。切り傷、打撲痕、噛み跡。回収の際に姿を見て怯えたハーデリアから付けられた物だ。『かみつく』『かみくだく』
こうかは、ばつぐん。
『油断した。次は大丈夫だ』
「次が無かったら、どうするつもりだったの」
長い髪が春の風に揺れる。毛先が大分傷んできたようだ。そろそろ切りたいな、と思う。
『伸びたな』
「そうだね」
『最後に切ったのは……』
「半年前かな」
他愛も無い会話。包帯を巻き終え、鋏で切る。もう動いていいよ、と言うとモルテはそっと浮き上がった。
レディは鋏をジッと見つめている。
『どうした』
「あのさ、」
「『いたみわけ』ってあるだろ?」
カシャン、と音がして手から鋏が飛んだ。そのまま近くのゴミ箱に突き刺さる。続いてモルテの左手からぽたりと赤い血が流れた。
「……何を考えてこうしたかは知らないけど、手当てするのはこっちなんだからね。
そこらへん考えてね」
『いたみわけ。相手の体力と自分の体力を同じにする技…… あだっ』
「よかった。そんなに深くなくて」
お互いの傷を舐めあうのか。下らない。どんなに相手に同情したって、その痛みが分かるのは本人だけだ。かわいそうなんて言葉、軽々しく口にするもんじゃない。
「モルテ」
『なんだ』
「たとえ私が死に掛けたとしても、変に助けようとしないでよ」
返事が遅れた。だが確かに彼は、
『ああ』
と言った。
おもに俺の空想(妄想)に
へーいマグロ丼いっちょおおぉぉっ!
> うおおおおおキターーーーー!!!!!
> あんな後ろ向きのクイタランからこんなお話ができあがるとは...!!有難く頂戴致します。ありがとうございます!
休み明け地理のテストの最中、大問4の後半で詰まる
ふと外を見ると桜だがだいぶ散っている
その中に山合いに一本だけまだ初々しい枝垂れ桜
見上げるクイタラン
ダージリン
桜フレーバー
こ れ だ
そして時間が切れる。
とか言いながら元々のネタは絵を見た3秒後位に出来ていたのに形にするのに時間がかかりまくりましたすいませぬ。
> クイタランは元からあんな目してるせいで、ひねくれてるというかこういう屋台の親父さんとかによく合うキャラですね。いいですねえ、俺もこんな桜散る屋台で一杯やってみたいものです。あ、お酒はすぐ赤くなるんでダージリンでネ
アールグレイは少しきつめらしいですね。
クイタランと紅茶は何処かに書いた奴と同個体ですタブンネ。
> 自分の絵からこのように物語を連想し形にしてくれるなんて今まで無かったのでとても嬉しいです。
> ワンチャンあったらこりゃもうメッチャ画力上げて音色さんの文章に似合うのを描かんとあかんな...
な ん だ と
となれば俺はさらにタクティスさんの画力に見合う文章に昇華せねばならんっ!
> 今後も影ながら応援させていただきます
ありがとうございまするっ!
それではっ
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