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英雄の独白
一人の人は言いました。俺は一人の青年の夢を終わらせたのだと。また一人の人は言いました。俺はポケモンと人間の未来を守ったのだと。このどちらも真実であり、そしてこのどちらも俺にとって忘れ得ぬものでした。
一人で夜を過ごす時、不意にそれぞれの言葉を思い出す時がありました。二つの言葉は俺の胸を抉るように、ぐるぐると渦巻きます。そして言葉は人の姿に変わり、俺に問いかけるのです。「お前がやったことは、本当に正しかったのか?」と。
何かを答えなくては。そう思って口を開こうとするのですが、何故か声が出ません。そんな俺を見るて、人影は意地悪い声で笑い出します。俺の真実と問いかけと笑い声。その三つに俺の心が押しつぶされそうになる一歩手前。そこでいつも俺は飛び起きます。
「俺のやったことは正しかったのか」そう周りの大人に聞くと、皆口を揃えて「正しいことをした」と言います。「君はイッシュを救った英雄だ。間違っていたのは彼らの方だ。君は正しい」と。ですが、その言葉に満足できるほど、俺の心は純粋では無くなっていました。
正しいのは、もう一人の英雄と戦い、俺が勝ったからです。彼が勝っていれば、俺はただの異端者でしかない。その程度の存在なのです。
ですが、彼は本当に英雄でした。
自分の夢を持ち、何よりポケモンのためを思っている彼の姿は、俺の行動よりも遥かに正義の色をしていました。
ポケモンのことだけを考えていた彼の夢を終わらせ、悪に仕立て上げたのです。対する俺には夢も無くて、ただ流されるままに英雄となり、戦った。それは果たして善と言えるのでしょうか。
この俺の想いは一種の後悔だったのです。
何度も何度も後悔する度に、思い出す最後の戦い。あの戦いの後の彼の絶望とも、喪失感ともいえない顔が忘れられないのです。
いつしか俺は、自分の道が信じられなくなっていました。何のために戦ったのか。理想を超えた真実は正義なのか。そして、自分だけでない、信頼していたパートナーのポケモンたちのことも。
そんな時、ある噂を教えて貰いました。「黒いドラゴンポケモンと共にいる緑の髪の青年」の話を。その青年は、遠くの地方で旅をしていると。その青年はきっと、彼なのでしょう。黒いドラゴンポケモンなど、俺の知る限りでは彼のトモダチしか知りません。
俺は彼を探しに旅に出ると決めました。友達は寂しそうにしていましたが、理由を聞くと笑顔で送り出してくれました。母も優しく俺を抱きしめ、今しか出来ないことをやるといいと言って送り出してくれました。
ですが、理由はもう一つありました。自分が分からなくて、辛い。自分の役割、自分の行い、自分の肩書き。全てが重荷でしかなかった。それならば、誰も俺を知らない場所に行ってしまえばいい。自分を、英雄やチャンピオンではない、ただの一人の人間と見てくれる誰かを探したい。そうすれば、もう苦しまなくて済むと。
どんな理由をつけたとしても、俺はただ逃げたかったのです。
俺は色々な地方へ行きました。
そして、様々な人とポケモンに出会い、それぞれの関係性を見ました。どこへ行っても、人とポケモンは共にいました。誰もがポケモンと共にいることを当たり前に思っているようでした。
そんな人々の姿を見ると、胸の奥がチクリと痛みました。こんなにポケモンと共にいることを幸せに思う人がいる。自分にとって当たり前のことも、彼にとっては普通では無かった。それを受け入れずに否定したのは、自分だったのですから。
ポケモンは何故人間と共にいてくれるのでしょうか。俺はあの時確かに、ポケモンと共にいる未来を望んで戦いました。しかし、それは俺のエゴだったのでは無いかと思ってしまうのです。
旅をすることで、自分の道から逃げるばかりか、俺は旅に出る前以上に何も見えなくなっていました。
ある紅葉の美しい街に来た時のことです。一人の少女がある紅葉の大木の前で、炎のポケモンと共に歌っているのを見つけました。特別歌が上手いわけではありませんでしたが、何故だか彼女の声に引き込まれました。彼女の声に合わせて、炎のポケモンは鳴き声を上げています。物語調で歌われるその歌は、この街の伝説を歌っているようでした。聞き馴染みのない言葉は、この地方特有の物のようで。それすらも、聞き心地の良い物でした。
「貴方も旅をしているの?」
突然掛けられた声に俺はびくりと体を震わせました。彼女の歌はいつの間にか終わっていたようでした。白い帽子に赤の大きなリボンがついているのが印象的な彼女は、自分とそう変わらない年に見えました。俺が頷くと、彼女は肩のバックを大事そうに持って続けます。
「私も旅をしてるの。何度も何度も旅に出て、新しい物を探す。そんなことばっかりしてるんだよね」
彼女の言葉が終わると、強く風が吹きました。それによって紅葉の大木は、その枝をゆったりと揺らします。ひらひらと幾つもの紅葉が降ってきて、大木の下に鮮やかな色の絨毯を作ります。
「この街は、秋になるととっても紅葉が綺麗なの。だから、ベストな時期を狙っていつも来るんだけど、中々そうはいかなくて。でも、今年はピッタリの時に来れたな」
一枚の紅葉を手に取り、彼女は炎のポケモンの頭にそれを乗せています。炎のポケモンは、頭の上の紅葉を触りたそうにしながら上を見ています。彼女とポケモンの仕草が可愛らしくて、思わず笑みが零れました。すると彼女はほっとしたような表情を見せました。
「やっと笑ってくれたね」
彼女に言われ、自分がこの頃あまり笑っていなかったことに気がつきました。彼女は俺の顔を覗き込みながら話します。
「キミ、悲しそうな目をしてる。嫌なことでもあったの?」
目の前の彼女の琥珀色の瞳を見ると、何故だか自分に似ているような気がしました。そして、彼女なら分かってくれるような気がしたのです。それは、自分の勘のようなものでした。
俺たちは紅葉の大木の下に腰を下ろしました。そして、俺は彼女に話します。ポケモンと人間が切り離される世界の話、それを夢だと語った彼の話。そして、自分自身の想い。彼女は俺の話に聞き入ってくれました。話しながら、先ほど彼女の歌を聴いていた時と立場が反対になっていることに気がつきました。
話し終え俺が口をつぐむと、柔らかい風が吹き、紅葉を絨毯が揺れます。彼女は隣に座るポケモンの背中へ手を回しました。
「ポケモンと人が切り離されたセカイ。それって、とても不思議かもしれないね」
「不思議、ですか?」
思いもしなかった表現だと思いました。彼女は胸に手を当てて続けます。
「うん、不思議。何だろう、今まで全く考えもしなかったからかなぁ。そんな考えもあったんだって新鮮な気持ちなんだ」
迷い無く答える彼女に思わず問いかけてしましいました。
「否定、しないんですか。ポケモンと人間が離れるなんてあり得ない、みたいに」
「うーん。私は確かにポケモンと離れるのはイヤだから、簡単に受け入れらないかもしれない。でも、それも一つの意見、考えだから。それを否定する権利は誰も無いと思うな」
彼女は手に違う色に染まった落ち葉を持ちながら続けます。
「意見の違いはあって当たり前だもの。その違いは尊いもの。違いを受け入れ、意見が混ざり合うことで、世界はキラキラ虹色になると思うから!」
彼女は落ち葉の片方を俺の左胸にそっと、押し付けました。 俺 の胸へ
「キミも、そして彼も。私はどちらが正しいとも間違ってるとも思わない。どちらも自分の想いを、自分の夢を賭けて戦ったんだもの。傍から見れば、勝ったキミが正しいように見えるかもしれないけれどね」
それでもすっきりはしませんでした。俺が何も言わずにいると、彼女は横のポケモンの背中を撫でて口を開きました。
「でもね、絶対的な存在がポケモンを解放するようにとどんなに言ったとしても、ポケモンと人の絆を本当に消すことは出来ないよ」
彼女はポケモンの両手をぎゅうっと握った後、よしよしとその頭を撫でます。ポケモンはとても嬉しそうな素振りを見せていました。
「私たちはポケモンの声は分からない。だけど、私たちが彼らを大好きで居続ければ、彼らもずっと大好きでいてくれるの。大好きな人と一緒にいることが、ポケモンにとって一番幸せなことだから」
彼女は一度そこで言葉を切ると、真っ直ぐ俺を見据えます。
「キミもポケモンが大好きでしょう?」
彼女にそう問いかけられた時。俺の中で何かが溢れ出すのを感じました。ポケモンと人間の関係。理想と真実。自分の選択。何が正しいか間違っているのか。それに囚われていた俺を、彼女の言葉は解き放ってくれるものでした。
どうして今まで忘れていたのでしょう。モンスターボールを握った時。パートナーを抱き上げた時。バトルをした時。そのどの時も、俺はポケモンが大好きでした。
彼と出会い、彼の理想を砕くための真実。それは俺がポケモンが大好きだったから。大好きな彼らと別れたくなかったから。それは俺の中の真実でした。それは善悪といえる物では無く、俺の想い、俺の夢なのです。
自分の腰からモンスターボールを外し、俺のパートナー達を見つめました。
そして気がつきました。
ポケモンと一緒にいる今は、こんなにも幸せなのだと。そして、今の今まで忘れていた自分はなんて愚かだったのだろうと思いました。
俺は泣きました。
みっともないなんて考えずに、声を上げてひたすら泣きました。悲しくて、悔しくて、切なくて。
うずくまり、モンスターボールを抱きとめ泣きました。
俺の涙に濡れながら、ボールの中のパートナーたちは、見守ってくれていました。今も、その前も。彼らは俺をずっと信じてくれていたのです。俺が一人暗闇の中で苦しんでいた時も、俺が彼らへの信頼を信じられなくなっている時も、ずっと隣で信じて見守ってくれていたのです。
言葉は交わすことは出来ないけれど、そこには絆があったのです。見守ることで、彼らは俺を信じ、愛してくれていた。
それに改めて気がついた今、ポケモンたちを好きで、彼らと旅をしてきて本当に良かったと、そう思いました。
彼女は近づき、子供のように泣きじゃくる俺の頭に手を乗せました。そして優しく頭を撫でてくれました。俺の涙が枯れるまでずっと。
ありがとうも、ごめんねも、さよならも。彼に何一つ言うことが出来なかった、あの時の幼い自分は、もうここにはいません。
俺はもう逃げない。彼からも、自分からも、そして世界からも。
そう決めた俺は、自分が生まれ育ち旅をしたあの場所へ戻ることを決めました。
優しい秋風が紅葉を誘う。
彼との最後のあの戦いから二年が経った、ある秋の日のことでした。
城での決戦の時は、いっぱいいっぱいで何も考えられなかったトウヤ君も、少し経つと途端に不安になるんじゃ無いかと思ったり。
トウヤ君は最強の巻き込まれ体質だと思います。
αkuro:ちょっと画像用入りまーす
↑
ここでにゃおにくすのえっちぃイラストをαkuroさんが書き上げて、入室者だけに見せているように見える。
それはきっとエロい
それは2014.07.08深夜に行われた。
それは即興だ。
それはフェチい。
それは下から読む。
入室:4 (c.f, 門森 ぬる, αkuro, 殻) 閲覧:1
門森 ぬる:お疲れ様です。何と言うか大分フェチい(00:07)
αkuro:きゅー(ω・ミэ )Э(00:07)
殻:たまちゃんきゅー(00:07)
殻:おわり(00:07)
お知らせ:画像用αkuro(3DS/NetFront)さんが退室しました。(00:06)
殻:にゃおにくすがこうこたえる、「にゃー」(00:05)
殻:「さあ」とおじさんが、「おきがえじょうずにできたねえ、えらいねえ」(00:05)
お知らせ:画像用αkuro(3DS/NetFront)さんが入室しました。(00:05)
αkuro:ちょっと画像用入りまーす(00:05)
殻:シャツまで着替えさせられ終えて、にゃおにくすはもはや無表情ではなく、情熱的な瞳で、おじさんを見つめている。(00:04)
殻:それなのに、おじさんがつぎにしたのは、にゃおにくすに新しいパンツを着せること。パンツが腰にかかろうとしたとき、思わず浮いたにゃおにすの手を、おじさんがそっとつかんで、下におく。(00:03)
殻:にゃおにすの吐息がしだいに熱くなる。胸が高鳴る。おじさんが「ふふふ」と笑ってどきりとする。ぴくりぴくりと、いじらしいしっぽがゆれてしまう。(00:00)
お知らせ:αkuro(Android/Safari)さんが入室しました。(00:00)
殻:おじさんがそれをじいとみつめるものだから、にゃおにくすは恥ずかしくなって、ぎゅっとめをつむってしまう。(23:56)
殻:するとそこに、にゃおにくすのかちこちになったかわいらしいしっぽがあらわれる。(23:55)
門森 ぬる:帰りの電車内で書いてる所もポイント(23:53)
殻:つづいておじさんは、にゃおにくすのパンツをゆるめ、やさしくていねいに下ろしていく。にゃおにくすは思わず腰を浮かせてそれを手伝ってしまう。(23:53)
c.f:雄のこなのか、雌のこなのか、そこも気になるぽいんと(23:52)
お知らせ:αkuro(Android/Safari)さんは行方不明になりました。(23:51)
殻:にゃおにくすが、聞こえないくらいほんのかすかにため息をこぼす。(23:51)
殻:にゃおにくすのつぶらな瞳がぷるぷるとふるえる。しかしおじさんは、小さく微笑んだかとおもうとすぐに指を離してしまう。(23:49)
門森 ぬる:アカンやつだとしても続ける辺りさすが(23:49)
殻:おじさんがシャツのボタンをひとつひとつはずしていく。あらわになる、にゃおにくすの胸板。それをおじさんが、指でそっとひとなでする。(23:48)
αkuro:(ω・ミэ )Эぷるぷる(23:46)
お知らせ:αkuro(Android/Safari)さんが入室しました。(23:46)
門森 ぬる:なるほど(23:45)
c.f:にゃんと……(23:45)
殻:これだめなやつだった(23:45)
殻:無表情で横たわるにゃおにくす、かすかにふるえる。(23:43)
殻:「さあ、ねこちゃん。お着替えしましょうねえ」とおじさん(23:43)
c.f:にゃおにくすのおめめがうまくかけないのぜ…… 無表情になっちゃうのですヨー(23:42)
門森 ぬる:にゃー(23:41)
殻:にゃー(23:41)
この投稿から約1年経ちました。暑いです。αkuroです。 |
皆さんの話を踏まえて息子と話したところ、「一週間考える」と留まってくれました。
でもいっしょに遊んだりしているところを見る限りだと、大丈夫なようです。
ラグラージの姿は見せていないので、また同じようなことを言われるかもしれませんが、
そのときもまた皆さんの話をしようと思います。
ありがとうございました。
【ありがとうございましたなのよ】
【ラグラージはかわいいのよ】
まさかの同士がいました!いやその前に初めまして!
Nがかわいそう、N悪くない!となった時にちげーだろって思ったのが発端です!
そーじゃなきゃ、途中途中でもっとNを利用してます的な発言が端々に感じられてもいいと思うのですよ!
あとゲーチスがそのままなのはその通りでございま!
高橋容疑者の件でも解った通り、名前を知られているのと知られていないのではやっぱり違いますし!
Nじゃなくてゲーチスが演説していたのは、年齢かさねた貫禄もありましょーが、あそこまで顔だしてると首謀者はゲーチスと聴衆は言うだろうし!
サザンドラは流星群なんか使わないで竜のはどうでいいです
それにしてもそういう表現があるのだな、と描いてみたをみながら思いました。
ゲーチスとNをありがとうございます! うすいほんだとそっち系しかn
人の身体と云うものは真に便利に出来ており、植物の養分と成ることは勿論、放っておけば実を削ぎ、白く小さな欠片となってくれるのです。あの形のまま、残り続けるのは勘弁ですが、少し散らしておけば芸術のちょっとしたアクセントになるもので
貴方もそう思うでしょう。
この建物の最奥の、小さな小さな寝室に、彼女は眠っています。優しく儚げな木漏れ日に照らされて揺れるーーそれはまるで秋千の様に、
ゆらゆらと揺れる彼女、ひらひらと揺れる私。
私は彼女のことを何一つ知らないのです。何故此処に居るのか、何故彼女を目の前にして私が生まれたのかーー理由は分からないけれど彼女は私と何か深い関係があったのではと。私はそう思いました。故に私は彼女を守り、此処を守り、彼女は私が喜べば喜び、悲しめば悲しみーー
赤い瞳の彼女、赤い瞳の私、
白い姿の彼女、黒い姿の私、
吊り下がる彼女、浮遊する私、
とうに死んでいる彼女、とうに死んでいた私、
黙す彼女、嘆く私、
詛う彼女、呪う私、
私は彼女、彼女は私ーー。
光の届かない影の闇が、静かに嗤った。
草に埋もれかけた畦道を行けば、嘗ての醸造所、赤い塗装の剥がれかけた三角屋根、煉瓦で造られた玄関、白い壁、人の去ったそれには蜘蛛の糸を貼り付けた様に蔦が絡み付いています。腐りかけた木の扉を開けば、ぽたぽたと水滴が零れ落ちてきます。屋根に空いた穴からは幾筋もの光が差し込み、薄暗い室内を照らします。食卓、椅子、暖炉、本、それら全ては二度と現れることのないであろう使用者をただ静かに待っています。
目を瞑れば人々の笑い声が聞こえてきそうなほど、此処は過去の声に溢れています。一つ一つの物体に長い長い物語が刻み込まれている様で、嗚呼、なんて美しいんでしょう。
人の消えた世界はありとあらゆるものを植物が飲み込んでゆく世界。鉄格子も鉄錠も全てを飲み込み、緑に染める。風に吹かれ、雨にうたれ、柱だけに成りながら、朽ちて果ててゆきながら、唯々人を待ち続けるそれは、どんな芸術よりも美しくーー
手を加えるものに、私は容赦しない。
昔昔、此の場所一帯は葡萄の産地として名の知れた場所でありました。所々に建てられた醸造所では可憐な乙女が実を踏む光景を見ることが出来ました。穏やかな陽射しが降り注ぎ、恵みの雨が降り注ぐ、豊かな土地でありました。
何故過去の話しとして語るのか。今や此の場所は寂れた寂れた土地。作られた道が僅かに残る程度で畑の跡など見当たりもしません。土地を使いすぎて荒れ地となってしまったわけでも、小川が枯れてしまった訳でもありません。今日も今日とて緑に繁る草ゝが温かな陽を浴び、風にゆらゆらと揺れています。
原因は不明ですが、あるときからぱったりと葡萄が育たなくなってしまったと云います。いえ、葡萄だけではありません。人の植えた物、人の連れてきた物、全てが突然弱り死に、育たなくなってしまった、と多くの智者が原因を解明してみせようと此の地を訪れましたが、誰一人としてその目的を果たせぬまま去って行きました。そして、また一人一人と去って行き、残されたのは壊されることなく放置された家々達……。
私が此処にいる理由は何でしょう。それは驚いたことに私にもわからないのです。私が意思を持ち、記憶があるのはそう、此の場所からなのです。気づけば此処にいて、何も持たぬまま佇んでいたのです。
真っ白で塗りたくられた場所に僕はいた。
自慢の尻尾で大好きな色を使って絵を描き続けている。
だけどね、いつも僕が描いているのはただの絵だけじゃないんだ……おや、ウワサをすればなんとやら。お客さんが来たよ。
僕の目の前に現れたのは一つのまーるい光。
ぽわぽわと淡い光を漂わせながら、ふよふよと浮いている。
やぁ、いらっしゃい。どのようなご要望で?
ふむふむ、まずは体を黄色にして欲しいと。
耳は長い方がいい? それとも短い方がいい? 聞こえやすさはまたオプションでつけておくよ。
それと、赤いほっぺたね、分かった。
あぁ、尻尾はつけるかい? 今のところ、キミの話を聞いていると、尻尾はつけておいた方が似合うと思うなぁ……オッケー、つけておくよ。
さてと、後はオプションとかだけど……能力はどうする? ほう、電気を出せる能力ね。中々かっこいいのを選ぶじゃないか……え、そんなの可能だって? 任させておいてよ。今のところ、僕に不可能なことはないからさ、多分ね。
この後も色々と僕は丸い光のお客さんに質問を投げかけていく。
涙とか汗とか出せた方がいい?
丸い光のお客さんはお願いした――涙を流したときとか、汗をかくときとか、その一瞬で生きているという感じが好きだと答えた。
言葉はどうする?
丸い光のお客さんは返事した――言葉は欲しいけど、ニンゲンの言葉以外がいい。自分がこれから産まれる姿にきっとその言葉は似合わないだろうからと答えた。
確かにそうだねと僕は相づちを打った。
それに見世物にされたら大変だしねと僕が言うと、丸い光は苦笑いしながらそれだけは勘弁と返事をした。
こんな感じで全部の質問が終わると、僕はいよいよ絵を描く作業に移し出す。
ひたすら、丸い光のお客さんの望む姿を造り出していくのさ。
まずは丸い光のお客さんが望んでいる姿を線描きで、だいたいの形を造る。これが土台になる作業なんだ……って言わなくても分かるか。
線描きが終盤にさしかかるところで、丸い光にこれでいいかどうかを答えてもらう。オッケーならこのまま本線を描き、駄目なら気になったところを指摘してもらってそこを直していくっていう感じ。
こんな感じでいいかな? 僕は丸い光に尋ねた
丸い光のお客さんは感心したような声を上げた――うん、これでいいよと。
一発オッケーをもらった僕は本線を描き始める。要らない線は消して、必要な線をしっかりと残しての繰り返し。ここで一つでもずれると、ほら、耳が大きくなっちゃったぁ……なんてことはないと思うけど。まぁ、ずれないようには意識して描いていく。
無事、本線を描き終えると、ここから色塗りである。
自慢の尻尾を使って、お客さんの希望通りに色を線だけの姿に乗せていく。
僕の尻尾は便利でね、多種多様な色を使えるんだ。
色って不思議だよね、一色一色が相手に違う世界を見せていくんだから。
簡単な例えだけど、赤だったら……熱血とか、こうやる気が湧いてきそうな感じがしない? あぁ、逆に怖いというイメージとかもありそうだよね。
後は青はなんとなく落ち着く感じかな……暗そうなイメージもあるけど。
黄色は明るくなれる感じ?
ほらね、適当に挙げていくだけでも、こんなに相手を分岐させていくでしょ?
だから、色はいわば入り口なんだ。
そして、僕はここで命の入り口を作っているんだ。
おまたせしました、できあがりましたよ。
ようやく僕が完成させた姿に丸い光のお客さんは満足したようだった――とても可愛くて自分好みと。
ほめられた僕は尻尾を左右に揺らしながら、丸い光にその姿に向かうように促した。さぁ、どうぞと左手を完成させた姿に向けて。
それから、丸い光はふよふよと相変わらずゆっくりと漂いながらその姿に入っていき、やがて、その姿は動き出した。
黄色の体に、先端が真っ黒な長い耳、そして顔に浮かぶ赤いほっぺた、そしてイナズマ形の尻尾。
目の前にいるその子は両手を胸に寄せ付けて力を込めてみる。すると、赤いほぺったから青い光の線がピリピリという音をたてながらほとばしった。
どうやら希望通り、電気は使えていそうでなによりなにより。
その子も電気が使えることを認識すると、また満足そうな笑顔を浮かべ、ぴかと鳴き声を上げる。
僕はその鳴き声に応えるようにベレー帽の形をした頭に右手を置いて、告げた。
いってらっしゃい、お気をつけて。
その言葉に背中を押されたかのように、その子は鳴き声をもう一つあげると、まっすぐ歩いていった。
何歩か歩いたところでその子が振り返ると、手を振っている。
僕が応えて、手を振ると、その子はもう一度前を向き、そのまま今度は振り返ることもしないで、そして、その小さな背中は徐々にぼんやりとなっていき、やがて僕の視界から消えていった。
これでまた、僕に一匹だけの時間が訪れる。
とりあえず僕は尻尾を再び握って、適当におもむくままに絵を描き始める。
まぁ、絵を描ければそれでいいし、この一匹だけの時間なんてあんまり気にしてない……と言ったら嘘になるかな。
いや、もちろん最初はそうだったよ? 気がついたらここにいて、絵を描いてて、ときどきさっきの丸い光のお客さんから依頼を受けたり、なんとなく過ごしていたんだよ。
でもね、ここで過ごしている内に僕は思うようになったんだ。
僕はどこから来たのだろう。
それから僕はどこへも行くことはできないのかなって。
だってさ、あの丸い光のお客さんだって、どこから来たのかが分かっていて、そして、どこかへと向かっていくんだよ?
僕にもそれは可能なんじゃないかなと思ったりするわけなんだよ。
……なんだろうね、丸い光のお客さんと接している度に、僕の中で何かを求める気持ちが強くなっていくんだ。あの丸い光のお客さんが話していたことはとても面白そうなことばかりでね、そりゃあ話したらキリがないくらいさ。それは旅路の思い出話だったり、それは不器用で素直になれない恋話だったり、それはおなかが痛くなるほどの笑い話だったり。
その話とともに僕の心の中に浮かんでくるのは様々な色。
初々しい感じは桃色、涙を流した気分は水色、手に汗を握る赤色。
僕には新鮮だったんだよ。
色を作ることはあっても、そんな風に色と出逢うことなんて、少なくともここにはなかった。
だからさ、会いに行きたくなったんだよ。
ここから旅立ってみたくなったんだよ。
それがどういう意味を示しているのかは今の僕には分かる。
伊達にここで絵を描き続けていないしね。
そんなことを考えていたら、また丸い光のお客さんがやってきた。
ちなみに丸い光のお客さんは毎回、別の方でね。それだけに絵の依頼も色々と分かれていくわけなんだけど。
僕は右手を上げてこんにちはと告げると、丸い光のお客さんは早速お願いしたいことがあると答えた。
さて、なんでしょう?
丸い光のお客さんが声をあげた――自分を神様にして欲しい、神様になって、世界を色々と覗きたいと。
これはまたすごいお願いが来たもんだと、僕は驚いた。なんかの冗談かなと一瞬思ったりしたけど、丸い光のお客さんから漂う真剣な空気にそれはないかと苦笑を漏らした。
なんで笑ったかって? そりゃあ、あんなことを考えていた矢先にこんな依頼が来たからさ。なんてタイミングがいいんだろう。もしかして、これが旅立ちの合図なのかなって思いながら、僕は今度は微笑みを浮かべて、丸い光のお客さんに告げた――おやすいごようと。
姿形はご自由にと任されたので、とにかく描いてみることから始めてみる。
大きな四肢の体、そしてその背中に浮かぶのは宝石をはめ込んだ神秘的な金具か何か――なんか威厳がありそうな顔つきにして、一回、丸い光のお客さんに見せた。結果はこれまた運よく一発オッケー。後は色を塗るだけ。
大きな四肢の体は殆ど白に染まり、顔の部分は黒、例の金具には金色を塗り、宝石には深緑を溶けさせて、瞳には赤を込めた。
こうして出来上がった、姿に丸い光のお客さんはうんうんと満足そうな声をあげた。
後は丸い光のお客さんがその絵に飛び込むだけになったとき、僕はちょっと待つようにと声をかけた。
神様になろうというキミに僕から贈り物。
そう言って、僕は自分の尻尾の先を引きちぎった。
不思議と痛みはなく、尻尾の切れ間からは血が流れることもなかった。
丸い光のお客さんが驚いた様子を見せるなか、僕はこの尻尾にはなんでもできる力を持っていることを告げた。
姿を作るだけではなく、その姿に色々なもの――力といったようなものをつけてあげられることも教えてあげた。神様になるキミにはピッタリの品物だよと僕が言うと、僕の尻尾を受け取った丸い光のお客さんが心配そうに尋ねてきた――そんなことをしてお前は大丈夫なのかと。
もちろん、力を失くした僕にもうここに留まることは許されないのか、僕の体は足から少しずつ消えていく。
一か八か賭けみたいなものだったけど、通用して良かった。
この先、僕は丸い光のお客さんみたいにどこかへと向かうんだろうなと思いながら、僕は右手をベレー帽の頭に乗せて笑顔で言う。
生まれ変わるんだ、僕もキミも。
新しい色になって、たくさんの色と出逢って、この先の世界を描いていくんだ。
それぞれの場所で。
それぞれの体で。
それぞれの命で。
【書いてみました】
とある曲を聴いていたら書いてみたくなった今回の物語……ようやく書けました。
多分、お分かりだと思いますが、語り部はドーブル君です。
ハハゴモリさんで命を編むとかも素敵かなと思ったのですが、やはり、ドーブル君の持つスケッチの力とかも考えると、ドーブル君の方がいいかと思いまして、このようになりました。
ドーブル君のスケッチって本当に不思議だよなぁ、一体どういう原理で技を会得する流れになるんだろう……と思ったり(
ありがとうございました。
【何をしてもいいですよ】
もしご子息が旅に出られる年齢でしたら、1ヶ月くらいでも良いので旅に出させてはいかがでしょう。
持ちポケはもちろんヌマクローです。
旅に出たはじめの内は1体でも多くのポケモンが必要です。他のポケモンを捕まえてもヌマクローを逃がすということは難しいです。
そうしている内に、ヌマクローの良さも分かるでしょうし、そうでなくともラグラージに進化するでしょう。
それでもなおヌマクローやラグラージはいやだ、とおっしゃるようでしたら仕方ありません。
ポケモンにとってもトレーナーの間には好き嫌いも含めて相性があります。
親御さんのお気持ちも分かりますが、親の気持ちを押しつけることだけが教育であるとは思えません。
逃がすのはあまりおすすめしませんが、ご子息が望むポケモンとの交換に出すという手もあります。
P.S.
交換するとき、相場にあわないポケモンを望むようでしたらそれはないものねだりの類だと思います。
老婆心ながら、その場合は親御さんがぴしりと言うべき場面であると付言致します。
まだか? まだなのか? いや、きっともう少しだ。
ネジ山の奥、氷に覆われた岩の側。俺は戦い終えたイーブイを一旦ボールへと戻し、再び野生のポケモンを探してうろつく。
今まで何匹倒しただろうか。後何匹倒せば良いのだろうか。確かに今のイーブイにとってここら辺のポケモンなら楽勝だ。だがこれだけ倒したんだ。そろそろ、そろそろ進化しても良いはずだ。
うろつく内にクマシュンを見つけた。俺はボールからイーブイを出し、今まで通り突進を指示する。イーブイがクマシュンに向かって走り出す。今回もこれだけで倒せるはずだった。
――が、こけた。イーブイが。躓いたのだろう。突進の勢いのまま転がって行く。
驚きと心配から、咄嗟にイーブイに駆け寄ろうとする。しかしそれより早くイーブイの体が輝き始めた。
その輝きは今までに何度も見た事のあるものだった。進化だ。イーブイが進化するのだ。しかし何故だ? 通常は相手を倒した後に進化するものだ。バトル中に進化したという話も聞いた事が無い訳ではないが、何れも何かしらきっかけがあったという様な話だ。それらに対し今はまだ何もしていない。イーブイがこけただけだ。実力差も大分あるからこけた位じゃピンチにもなりやしないし、きっかけになるとも思えない。進化する理由が無いのだ。クマシュンの方も突然の事に戸惑っている様子だった。
まぁ良い。理由なんてどうでも良い。イーブイがグレイシアに進化するんだ。これをどれだけ待ち望んだ事か。これまでの苦労が報われるというものだ。
イーブイの輝きが収まり、新たな姿を現した。だがそこに、期待していた姿は無かった。赤い体に素晴らしいまでのもふもふ。可愛い。凄く可愛い。だがグレイシアじゃない。どう見てもブースターだ。
何故だ? 何故だ? どうしてだ? 炎の石は使ってないはずだ。ここはネジ山の奥だし、側にはちゃんと氷に覆われた岩が存在している。本来ならグレイシアに進化するはずだ。ブースター自身もグレイシアに進化するものと思っていただろう。自身の前足を見つめては首を傾げている。何故ブースターに――。
ふとバトルの最中であった事を思い出し、慌てて先程と同じ指示を出す。今度はこけずにクマシュンへと突っ込む。クマシュンが吹っ飛ばされ壁に叩き付けられる。動かない所を見ると気を失っている様だ。今まで通り気が付き次第逃げて行くだろう。
ブースターがこちらへ戻って来る。ボールへ戻す前にまじまじと観察する。可愛い。素晴らしく可愛い。だが進化した理由は分からなかった。ブースターをボールへ戻し思考を続ける。
何故だ? グレイシアに進化するはずなのに。そもそも何故あのタイミングで進化したんだ? いや、結果としてブースターになったんだ。という事は炎の石で進化したという事だ。それなら相手を倒したかどうかなんて関係無いからその点に関しては説明が付く。しかし炎の石なんて使った覚えが無い。
念のためバッグの中身を確認する。やはり炎の石の数は減っていない。まぁ色々な洞窟を探し回って見つけた貴重な石だ。使った覚えも無いのに勝手に減っていても困――
そうか、そういう事か。
それから数週間経ち、俺は再びイーブイを育てている。今度こそグレイシアに進化させる為に。そして今日、これからネジ山へと向かう。このイーブイもあの辺りのポケモンは楽勝だろう。注意すべきはただ一つ。グレイシア以外への進化だ。
俺はイーブイに靴下を履かせ、ネジ山へと向かった。
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と言う訳で進化の石のお話その2。触れると即進化なのは同じです。というかそこが要点です。洞窟で石踏んで進化って案自体は投げ付けるよりも先に出てはいたんですけれども。
一応数戦した後はちゃんと回復させてます。主に突進の反動分。ガントルには別の技使ってますが。
締め方がどうもしっくり来なかったり。どう書けば良いんですかね。分からなかったので妥協してます。案が思い浮かび次第修正したいですが多分思い浮かばないでしょう。あと靴履かせてないので靴下という表現にも違和感があったり。靴下と言いますか足袋と言いますか、何と言ったら良いんですかね。まぁ何にしても多分ホームセンターで買ってきたんでしょうけど。
主人公がどれだけグレイシアが好きか書けなかったのも心残り。グレイシアかわいいよグレイシア。ブースターもかわいいよブースター。ブイズかわいいよブイズ。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【好きにしてもいいのよ】
【ブイズかわいいよブイズ】
2013/8/4追記: 後書きの脱字を修正。
> ちなみにポケモンはヌマクローです。
進化させましょう。二段階進化のポケモン、とりわけ最初の三匹の中盤は見た目的にも能力的にも微妙な物が多いです。
ただしジュプトルは別ですが。
進化させてラグラージにしてしまえば、見た目がキモイとかキモクナイとか以前にバトルで使えるようになります。ただし草タイプ対策はきちんとしておきましょう。
息子さんに言ってあげてください。キモかろうがなかろうが、所詮ポケモンは強さなんだと……
あれ、違うか?
もしどうしても、というなら貴方が育てればいいと思います。荷物持ってくれるし、波乗りはしてくれるし、日常生活の中でも役に立ちますよ?
【そんなキモイかねえ】
【サファイアが初プレイ・ミズゴロウが相棒の私涙目】
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