マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  •   [No.3305] 「インドぞうの話」 投稿者:GPS   投稿日:2014/06/24(Tue) 17:33:05     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    最初のものが眠りにつこうとして、それでもまだ、もう一度。
    もう一つだけ、最初のものは作ったのです。

    最初のものは言いました。
    「お前はポケモンではない」
    最初のものは言いました。
    「かと言って、人間でも無い」
    生み出されたものは尋ねました。
    「それならば、私は何なのでしょうか」

    最初のものは言いました。
    「ライチュウの電気は10万ボルトにも達することがある」
    生み出されたものは尋ねました。
    「そのことと私と、一体何の関係があると言うのでしょう」
    最初のものは答えました。
    「お前はそれで気絶する」

    最初のものは言いました。
    「ゴースは薄いガス状の生命体である」
    生み出されたものは尋ねました。
    「そのことと私と、一体何の関係があると言うのでしょう」
    最初のものは答えました。
    「それに包まれてお前は2秒で倒れる」

    最初のものは言いました。
    「それでは行くといい、ポケモンの世界へ、ポケモンと人間が隣合って生きる世界へ」
    生み出されたものは尋ねました。
    「その世界で生きる、ポケモンでも無く人間でも無い私は何なのですか」
    最初のものは言いました。
    「お前に名を与えていなかった」
    最初のものは言いました。
    「お前は、インドぞう、と名乗るが良い」

    最初のものは眠りにつき、インドぞうは世界へと旅立ちました。
    時間が回り、空間が広がり、知識と意思と感情がうねる世界に、ポケモンの世界に、人間とポケモンが隣合って生きる世界に、インドぞうが生まれました。

    インドぞうは何なのか、それはだれにもわからないままです。

    だけど、今でも、インドぞうは世界の何処かにいるのです。

    世界の何処かで、ライチュウの10万ボルトに気絶し、ゴースのガスで倒れているのです。


    ----------------------------------------------------
    先日、チャットでインドぞうの話になったので。


      [No.3303] Re: 18歳以下お断り! 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/06/23(Mon) 23:47:41     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     こんばんは、コメント失礼します。ホムラの『猫』って呼び方がすごく好きです。周りが軽いノリで囃し立て
    てるのも何だかんだと優しいホムラもほのぼのした気分になれました。

     正直二人のやりとりにはかなり萌えたんですけど、(デート発言とか出会いとか)ラストで残念な気分になら
    ないのが不思議。『愛人』発言やカガリとの関係などのさり気ない伏線の上手さのせいか、もしくは恋と仲の良
    さは違うということでしょうか。

     作品のタグや今挙げた伏線以外にも、全体のふんいきややり取りが、かわいいし萌えるけれどなんとなく恋愛
    じゃないなーって感じがするんですよね。上手いこといえなくて申し訳ないんですが。妹さんとか部下とか動物
    とかいろいろな表現が出てきたけれど、個人的にはどれにも当てはまらない気がします。この不思議な関係好き
    です。

     恋愛感情かはさておき、ホムラも『猫』に懐かれるのは満更ではなかったような気もします。そして最後……
    。私の解釈が間違っていなければ歴史は繰り返されるということですね。


      [No.3302] 18歳以下お断り! 投稿者:きとら   投稿日:2014/06/23(Mon) 01:04:30     196clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ホムラ】 【ウヒョヒョ】 【リメイクなにがあった】 【なにがおきた】 【けっきょく】 【かくのは】 【ダイハル】 【なんだね

    「よし、アクア団を止めることが出来たな!」
     マグマ団のリーダーが去っていったアクア団を見送った。幹部のホムラも団員の無事を一通り確認すると、さっと身構える。視界には入ってないが油断ならない相手だ。気が抜けない。
    「ホムラっ!!!」
     ホムラの真後ろから背中に張り付いて来たもの。それは人間である。ただしまだ子供である。正体など確認しなくても解りきっていた。
     アクア団との抗争に巻き込まれた旅のポケモントレーナー。名前をハルカという。赤いバンダナが猫の耳みたいだから、ホムラは猫と呼んでる。
     アクア団に絡まれてるところをホムラが助けた。のはいいが、それ以降こんな感じだ。
    「ねーねー、アクア団いなくなったよ!マグマ団の仕事終わりでしょ!?ねーねー!ねーえーねーえーーーー!!!」
     耳元で大声で叫ぶ猫は迷惑そのもの。ホムラも耳を塞いで無視。しかし背中から離れないハルカはホムラに話しかけ続ける。ホムラがリーダーのマツブサに報告する時も、同じく幹部のカガリに話しかける時も騒いでる後ろの生物。
    「うるせえ猫!!!!黙ってろ!!」
     ホムラが我慢しきれず、ついに怒鳴る。大抵の子供はそれで黙るし、離れていく。うざいのがいなくなってせいせいしたとホムラは前を向いた瞬間、首がぎゅっとしまった。まだ背中の生物は張り付いている!
    「きゃーっ!!ホムラ大好きいぃいいい!!!」
     子供のパワーを侮ってはいけなかった。



     カガリも事情をわかってるのにおせっかいなやつで、一度くらい遊んであげれば、とアドバイスしてきた。ハルカはカガリに完全同意。マツブサもそれに同意。ホムラの味方はいなかった。
     というわけでホムラはなぜかハルカと遊んでる。コンテストが見たいというからカイナシティのハイパーランク会場にやってきた。人ごみにまぎれて帰ろうと思っていたが、ハルカはホムラの手をがっしり握って放さない。一体、マグマ団の幹部という肩書きである身であるのに、何が悲しくてポケモントレーナーに混じってコンテストを見てなければならないのか。
     つまらなそうにホムラがコンテストを見てると、さらに隣に熱気がやってきた。ハルカが腕を組んでるのだ。逃げられないようにしているのもあるが、ホムラと目が合うととても楽しそう。
    「はぁ……」
     ため息しか出て来ない。会場の警備の人間には「妹さんの手を離さないようにしてください」と言われた。こんな妹がいたら追い出すか自分が行方をくらます方がマシだ。
     おそらくハルカはアクア団が悪くてマグマ団が助けてくれるいい奴だと思い込んでる。確かにマグマ団の主張が正しいが、やってることは法律すれすれのことばかり。そんな人間に何を間違ってこんなに懐いているのだか。
    「ホムラあのね!」
     コンテストが終わってカイナシティに出た瞬間、さらに腕を絡ませて近づいている。いきなり腕をほどいたと思ったら、ホムラの目の前にハルカが猫のように立つ。
    「なんだよ」
    「これってデートだよね」
    「猫の散歩はデートと言わん」
     ハルカが頬を膨らませる。これで離れていけばホムラも苦労しない。今にも背中を虎視眈々と狙ってるハルカ。
     着信を知らせるアラームが鳴った。ホムラの顔色が変わる。
    「猫、予定が変わった。お前先に帰れっても、帰れないだろうな」
    「なんで?」
     ホムラが指した方向をハルカが見る。反射的にハルカがホムラに抱きついた。
    「こんなところでアクア団に囲まれてるとはなあ。暴れんなよ」
     多勢に無勢だ。ホムラはハルカを脇に抱える。そして自分のグラエナに後ろを任せると、カイナシティの人ごみに逃げ込む。アクア団が追え!と叫んでいる。ここで捕まるわけにはいかない。アクア団がよからぬことを企んでるのは解っている。
     マグマ団の誰かには連絡したので、誰かが応援に来てくれるはずだ。それまで居場所を固定せず、カイナシティの人の多いところを移動する。ポケモンセンターに逃げ込んでハルカだけ置いて行く選択肢もあったが、目の前にアクア団がいたので慌てて引き返す。
     計算違いだ。まさかこんな街中でアクア団の集団に鉢合わせて、しかも喧嘩まで売られるとは。別のルートでグラエナが戻って来た。後をつけられてない。教えた覚えはないのに、優秀なグラエナだ。頭を撫でてやるとボールに戻す。
    「ホムラ? カイナシティに現れたアクア団は数が増えてるみたい。応援に行くより迎えに行くからアジトに戻って来て」
     カガリの声で通信が入る。思わずホムラは聞き返した。
    「はぁ?今こっちはお前らの策略のせいで猫一匹連れてんだぞ。俺にどれだけ走れって言うんだ」
    「あら、そこまで言うならカイナシティ周辺のアクア団をマップに表示してあげましょうか? これはホムラが逃げた方が妥当だと思うけど」
    「……いや、いい。どうしても一言いいたかっただけだ。それに何だか目の前が真っ青だしな」
     人ごみの向こうに見える範囲ではアクア団の青いバンダナばかりだ。ハルカを抱える腕がそろそろ限界だ。かといってあんな犯罪者集団のど真ん中に置いて行くわけにもいかない。ハルカが心配そうな顔でホムラの顔を見上げている。怖がってる。あの時と同じ顔だ。
    「撒け」
     もう一つのボールを投げた。空高くクロバットが飛び上がったと思うと、四方に黒い煙をまき散らす。もっている煙玉からの煙幕は止まらない。ホムラは煙の中を走る。
     子供とはいえ人間を抱えているのだからそれだけ息が切れる。自然と人の気配がない方向へと走っていた。灯台に着いた。誰一人の気配もしない。物陰に到着すると、ホムラは座り込む。肩で息をして、喋る気にもなれない。ハルカが何も言わずに膝の上に乗って来た。
    「……はい」
     ハルカはおいしい水をホムラに差し出した。無言で受け取ると、浴びるように飲む。口からあふれた水が、服やコンクリートを濡らした。
    「ホムラかっこよかったよ」
    「そうか」
    「……私はホムラが好き」
    「そうか」
    「……でも、もっと頼っていいよ。初めてあった時みたいに、もう私弱くないもん」
    「そうはいかねえだろ」
     ハルカの頭を軽く二回叩いた。もう立ち上がる気力もないが、庇うことくらいは出来るはずだ。日を遮る影を見上げて睨みつける。
    「マグマ団幹部のホムラ様もガキの保護者かぁ?落ちぶれたな」
     でかいのはアクア団幹部のウシオだ。こいつが来てるとなると、ことは難航する。トップのアオギリも嫌だが、こいつも十分嫌だ。ホムラの体格より大きく、直接殴り合えばこちらの命が無さそうだ。
    「そのガキを渡せ」
     威圧感のある声。腹の底から縮むような思い。もうこれ以上動けないホムラは最後の虚勢に出る。
    「はぁ? 貴様そういう趣味だったのかよロリコン」
    「正確にはそのガキの持ってるものだ。デボンから預かってるものを……」
    「も、もう渡しちゃったもん!だから持ってないんだからね!」
     ホムラの影からハルカが叫んだ。ウシオは顔色一つ変えなかった。むしろ背後から感じるオーラが余計に増えたようだ。無意識なのかハルカがホムラを掴む手が強くなる。
    「嘘ついてるんじゃねえだろうなあ。ガキ一匹はかせるのは簡単なんだぜ」
    「ウシオ、お前はこんな小せえガキに、威勢はってむなしくねえのかよ」
    「ガキだからって容赦はしねえ。アクア団の目的の為にはな。ついでにお前もここでつぶせる。一石二鳥だろ」
     いきなりホムラはハルカの頭を掴むと、地面に押し付けた。そしてその上を自分の体で庇う。ウシオの髪を切り、ホムラの背中を風の刃が通り過ぎた。
    「あーら、お兄さん。相手が違うんじゃない?」
     大型二輪のエンジン音を響かせてカガリがボールをかざす。クロバットが収納された。そしてホムラに対して合図を出す。
    「轢かれたくなかったら、そこを退くことね。さすがに鉄のかたまり相手に踏ん張れるほど丈夫じゃないでしょウシオ!」
     カガリが容赦なくウシオへ向かって来る。ウシオも避けるしかない。そして減速する鉄の塊にホムラは飛び乗った。停車したのは一瞬。バランスを崩すことなく、カガリはそのまま加速する。このまま逃がしてなるものかと、ウシオはモンスタボールを投げた。
    「追え」
     ゴルバットが追いかける。カガリはミラーに映るゴルバットを確実に捉えていた。舌打ちするとさらにアクセルをまわす。
    「すっ飛ばすよ。保護者のつもりなら最後までその子捕まえてな!」
     道路をほとんど無視してカガリは走る。偶然なのか、信号すら危ないと判断したのか、全てがタイミングよく青に変わる。何度か角を曲がり、カイナシティの端まで来るとゴルバットの影は見当たらなくなっていた。
     エンジンを切り、端に止める。しらない誰かのものらしく、鍵がついていたのでそのまま借りていたのだそうだ。都合よくあることに感謝する。
    「しかしこれからアジトに逃げるっていうのに」
     ホムラの背中に張り付いてるハルカを見た。
    「ごめんなさい」
     小さな声でハルカが言う。しかしホムラから降りようとしない。ウシオが怖かったのか、カガリの乱暴な運転が怖かったのか、ホムラをしっかりと掴んで離さない。
    「状況が状況だから仕方ないわよね。放り出すわけにもいかないし。ねえ、保護者さん?」
    「俺は保護者でもないし飼い主でもない」
     ホムラの反論は無視される。カガリはすでに歩き出していた。その時にやっとハルカがホムラの背中から降りて来る。そしてホムラの手を掴んだ。子供じゃないと言っていても、中身は子供そのものだった。
    「どこへ行くの?」
    「アジトだよ。アクア団から一時的に避難するにはそれしかねえ」
     部外者を入れることでマツブサに何かしら言われることは目に見えている。しかしカガリの言うように、状況が状況だったのだ。小さな子供をデカい体で脅かすようなやつの前において行くわけにはいかない。


     仮眠室とは名ばかりの倉庫にハルカを置いて、マツブサに報告しにいく。するとすでに入っていたカガリと揃ったところで怒りの言葉が聞ける。内容は部外者を連れて来たことではない。休暇中、しかも街中でアクア団に囲まれ、なおかつ逃げるしかなかったことだ。ガミガミと怒鳴ることはしないが、その言葉は怒りに満ちている。
     最近のマグマ団はアクア団に遅れをとっているとか、妖しげな研究をしているとか。とにかくアクア団の存在が最近横暴になってきたとマツブサは付け加える。
    「ところでホムラ。お前の愛人はいつまでここに置いておく気だ?」
     マツブサの言葉が何のことか解らず、ホムラは沈黙する。
    「あい、じん……あいつか!? 冗談きついです。俺は18才以下お断りだ!」
     カガリが吹き出す。顔をそらし、笑いをこらえている。ホムラの全力で拒否する姿は、今までに見たことなかった。
    「とにかく!アクア団から逃がしたんだし、帰ってもらいますから!」
     ムキになって去っていくホムラは、みんなのいい見せ物になっている。誰もがマツブサの愛人発言を真に受けていないのに。いつの間に二号さん作ったんですかとすれ違いざまに言ってきた部下の頬をつねった。
    「お!れ!は!子供に!興味ない!」
     マグマ団ならそんなの誰でも知っている。それなのに必死で否定するホムラが面白い。部下の頬を放し、無言で仮眠室へ向かうと、そこは楽しそうに団員と喋ってるハルカがいた。チョコレートやクッキーをもらえて大変ご満悦そうだが、その姿はさらに猫に見えた。
     ドアを開けたまま立っているホムラの姿を確認すると、ハルカは貰ったものを嬉しそうに持ってかけてきた。これもらったのーと自慢するハルカをはいはいよかったなと適当にあしらった。
    「で、お前らなんで餌付けしてんだよ。俺の味方はいねえのか!」
     団員に向かっていったが、彼らはしれっとした顔で言った。
    「えっ、ホムラさんの愛人っていうからちゃんと接待したんですけど」
    「違うわ!!!どこが!愛人だ!!ほら猫いくぞ」
     ハルカの手を握ってホムラは引きずっていく。いつまでも部外者をマグマ団のアジトに置いておくわけにはいかないのだ。ハルカはホムラから手を握ってもらえてとても嬉しそうだが。
    「あら、愛人つれていい御身分ね幹部のホムラさん?」
     入り口方向からカガリがやってくる。出会い頭に先制攻撃をされてホムラは何も言えなくなった。どんなにアクア団に突っ込んでいく怖い者知らずのホムラでも、カガリには勝てない。
    「でも残念だけど、外のデートに行かない方がいいわよ」
    「なん……まさか」
     カガリから全てを聞くまでもなく、状況はだいたいわかった。外にアクア団らしき人物がいるのだろう。それも出て行かない方がいいと判断したくらいの人数が。前からここがアジトだと張られていたようだ。すると今回の襲撃はアジトを特定するためのものだったか。ついでにハルカが預かってる何かを奪おうという、アクア団なら使いそうな手だ。
     このタイミングでそんなことになるなんて最悪だ。ハルカを見れば、さっきまで機嫌がよさそうだったのに、心配そうにホムラを見上げている。

    「いいか!仕事の邪魔したら速攻でたたき出すからな!」
     ホムラが使ってる情報処理の四畳半ばかりの空間の隅にある毛布の上でハルカはじっとしていた。つけっぱなしのパソコンをホムラが動かし、スリープモードから戻った。たくさんの文献をスキャンしたり文章化したものでいっぱいだ。必要なファイルを起動して、編集を加える。
    「わー、なにこれポケモン!?」
     いつの間にホムラの背中に張り付き、パソコンの画面を見つめていた。
    「邪魔だ退け」
    「やだー」
     何言っても無駄か、とホムラは黙って作業の続きを始めた。耳元が多少うるさいが、反応がないと解ったのかハルカもそのうち大人しくなった。
     アクア団が目を付けている古代のポケモンはカイオーガといい、大雨を降らせた逸話がいくつも残っている。そしてその力で海を広げた。そんな大雨に困った人たちを救ったのがグラードンと言われるポケモンだ。
     資料を反復していると、いつの間にハルカはホムラの膝の上に座っていた。本当に猫のようにするりと抜けて来る。前世はニャースでその癖が残っているんじゃないか。存在を無視することを諦めた。
    「ねえねえこれなに?」
    「カイオーガ。ホウエンの昔話によーく出て来る海を作ったポケモンだよ」
    「こっちは?」
    「グラードン。ホウエンの昔話によーく出て来るカイオーガの大雨から救ってくれたポケモン」
    「……この人」
    「これはウシオ、ポケモンじゃねえ。んなの知ってんだろ」
     アクア団の幹部だ。リーダーのアオギリのお気に入りその1。この体格でトレーナーだからまだ渡り合えてるものの、リアルファイトに持ち込まれたら勝てる見込みはない。アオギリの命令ならなんでもこなす。ハルカみたいな子供を力でねじ伏せることだってする。
     ホムラがハルカに会ったのもそんな現場だった。アクア団が海の博物館に盗みに入ったと聞いて、カイナシティに行ったのだ。もう解散した後だったのか、海の博物館にはほとんどいなかった。しかし少し離れたところで悲鳴が聞こえた。嫌だと言う声が、水を飲んでいるような声だった。誰かが海に落ちたのかと行けば、ウシオがハルカの頭を掴み、海に押し付けていた。どこへやった!?言わねえのか!と溺れる寸前で引き上げ、恐怖を叩き込んでいた。隣にいたカガリを息を合わせ、クロバットがウシオに飛び掛かり、その隙にホムラは海に飛び込んだ。むせているハルカを抱き上げ、もう大丈夫だからなと優しくしてやったのが全ての間違いだったとホムラは反省する。
    「わたしもう弱くないもん。アクア団なんて怖くない」
    「グラエナに勝ってから言え。毎回、お前のワカシャモ食われかけてんぞ」
    「むぅ……」
     強くするという訓練もしてやったこともある。が、ホムラの言う通りの結果に終わった。一番強いんだよと出して来たがその通りである。これじゃあ……とホムラは頭を抱えた。
     ハルカの相手をして、走り回って、アジトについてもハルカの相手をして。なんてついてない日なんだろうとホムラはぼーっとする頭で思った。対するハルカはホムラの膝の上でさっきのクッキーを食べている。こんなに興味ないと突き放しているのに自分の都合で寄って来る。まさに見た目と同じく猫なのだ。
     疲労を回復しようとしたのか、眠気を感じた。しかしハルカが邪魔で寝る事もできない。そのままの姿勢で眠さしか感じなくなった。ホムラが操作しないパソコンは再びスリープに戻る。ちらちらとホムラを見ていたハルカは、腕の間からそっと出ると、部屋の隅にあった毛布をホムラの肩にかけた。自分にも何か欲しいなとハルカは探す。ハンガーにかかった幹部用のマグマ団の制服を見つけた。ホムラがアクア団と戦う時にいつも身に付けている丈の長い赤いフード。ハルカはそれを取ると、それに包まった。大好きなホムラに守られているようだった。
     それから何時間かして、ホムラが起きた。少し寝てたな、と体を動かすと毛布がぱさりと落ちた。寝息に気付けばハルカが自分のマグマ団の制服に包まっていた。子供はさっぱりわからんなと落ちた毛布をハルカにかけてやる。パソコンの電源を落とすと自らも横になって眠りについた。


     朝になり、ハルカが目を覚ますとそこにいるはずのホムラはいなかった。代わりに自分に毛布がかけてあることに気付く。どこに行ってしまったのか探そうと立ち上がる。
    「起きてたか。飯くったら帰れよ」
     皿に乗ったパンとジャムを持ってホムラが来た。
    「美味いか?そのモモンジャム、カガリが作ったんだぜ」
    「うん。美味しい」
    「ついでにパンもカガリ作。あいつ何でも出来るとかあり得ん」
    「……何でも出来る人、すごいね」
    「強いしな」
     それから無言でホムラはパンを食べていた。ハルカはぺろっと平らげた。
    「絶対に今度はホムラのグラエナに勝つから!」
    「はいはい。がんばってください」
    「やくそく!それまでホムラに付きまとうから!」
    「なんでストーカー宣言なんだ。それに俺に付きまとってたらお前の大嫌いなウシオにも会うぞ」
     ウシオの名前を出した途端、ハルカの顔色が変わった。
    「でも……ホムラがいれば大丈夫だもん」
    「いつでもお前かばって戦えるわけじゃねえんだから、お前は逃げるが勝ちっつー言葉も覚えろ」
     食べ終えたハルカをアジトの入り口までつれていく。もう付近にはアクア団は見えない。
    「じゃあな。変なことに巻き込まれんなよ」
    「でもここにきたらまたホムラに会えるよね?」
    「部外者立ち入り禁止です。じゃあな」
     折りたたみ自転車を広げ、さっそうと去っていく姿は普通のトレーナーにしか見えなかった。
    「ホムラに会いたくてアクア団を探してるなんていじらしいじゃない」
     後ろにはカガリが立っていた。すでにマグマ団の制服を着て、数名の部下も一緒だ。
    「それでも俺は興味ない……あ、もしかしてカガリちゃんやきもちやっとやい……」
     ホムラの言葉は見事に無視された。


     昔話によく出て来る。そう聞いていた。その本物を目の前にしたのは中でも数人しかいないと思う。ハルカは目覚めたカイオーガを前に言葉が出なかった。低い声でうなるカイオーガは、そこにいる全員を恨んでいるかのように見えた。大きな波と共に海に潜ったかと思えば、カイオーガはどこかへと消えた。
    「最後まで邪魔してくれたな」
     アオギリがハルカを睨みつけた。どんなに強くなったと思っても、ウシオを乗り越えてアオギリにたどり着いても、あの時の恐怖が蘇り、体をすくめた。なんで誰も助けてくれないのか。後ずさりするが、どこにも逃げ場などない。
    「カイオーガの行方は後で追うとして、貴様にはたっぷり礼をしないといけないみたいだな!」
     アオギリの拳が風を切った。それだけでバランスを崩し、ハルカは後ろに手をついた。何かが視界に入る。顔をあげると殺気立ったアオギリが立っていた。殺される。生還の望みは薄く、ハルカは体をまるめて防御するしかできなかった。
    「おいおい、アクア団のおっさんってのはどうしてこうなのかね」
     獣の息づかいが聞こえた。大丈夫、と言うようにグラエナがハルカの頬をなめる。このグラエナはきっと、ハルカがずっと願ってた人のもの。グラエナをぎゅっと抱きしめた。
    「アオギリ、本当にやるとはな……地上が凄いことになってる」
     アクア団に負けない数のマグマ団がそこにいた。遅いよ、遅いよとハルカはグラエナを抱きしめながらつぶやいた。いつものグラエナの匂いは、ホムラがいつも連れていて、ワカシャモを何回か食べかけていたグラエナそのもの。頭に重さを感じて、ハルカは見上げた。
    「ガキのくせによくここまできたな」
     部下をほめるかのような顔だった。いつもアクア団と戦った後に部下を労る優しい顔。緊張感から解き放されて、嬉しいのと安心したのと、たくさんの感情でハルカは抱きついた。
    「ほむ、ホムラぁっ!」
     他の団員より少し長いマントはフードを被っていてもよくわかった。こんなところでも少しも変わらなかった。離れろとホムラは言ったが、うんともすんとも言わず、ハルカはいつもより力を込めてホムラに抱きついていた。
    「それこそ我らの理想……」
    「目を覚ませアオギリ。お前が一体何をやっているのか」
     アクア団とマグマ団のボス同士がにらみ合う。緊張感が高まり、今にも爆発しそうだ。それを先に解いたのはアオギリの方だった。地上にいるアクア団たちがアオギリに連絡を入れた。それと同時に鳴るマツブサのポケナビ。
    「なに、勢いが強すぎる?」
    「このままだと沈む、か」
     この洞窟に流れ込む海水もカイオーガを見る前より増えてきている気がする。ここから出ようと元来た道を引き返した。


     外は酷かった。前も見えない程の雨と、まだ昼間だというのに夜のような暗い空、耳を裂くような雷。カイオーガのいた海底洞窟の上は、浅瀬で波が弾けている深さだったのに、今では膝まで浸かっている。それがどういうことを示すのか誰も言わなくても解っていた。
    「こんなはずでは……」
     アオギリの視線は定まってなかった。稲妻に照らされた顔は先ほどまでの殺気が嘘のようだ。
    「現状を嘆くのはこの事態を収めてからにする。ホムラ!カガリ!」
    「はい!」
    「解ってますって!」
     マツブサの命令は簡単なものだった。幹部二人はいつものように部下へと指示し、自分たちも行動に出る。それを強く手を引いて妨害するものがあった。
    「どこいくの?」
    「仕方ねえだろ、誰も死なねーためにはやらなきゃいけねえんだよ」
    「危ないよ、ダメだよ!!」
    「お前こそ、こんなところいないでどこか高いところに避難してろ。わかったな?」
    「やだ!ホムラと一緒にいる!やだ!!わたしは!!よわくなんかない!」
     ホムラの手を離そうとしない。目を赤くして、雷に負けない大声でハルカはホムラを強く握る。振りほどこうとするほどホムラは子供に冷たくなかった。けれどこのままでは部下だけ行かせてしまうことになる。
    「知ってるよ。お前は強いよ。けどな、誰かがやらなきゃみんな死ぬんだよ」
     ハルカの目線に合わせてしゃがむ。あれだけグラエナが食おうと狙ってたワカシャモだってバシャーモになっただろ。そいつらと一緒にここまで来れたお前は絶対に弱くない。ここから先は俺たちがケリをつけることだ。お前はもう充分がんばったんだ。これから強くなるお前たちがここで死ぬことない。安全なところに避難しろ。
     ホムラはハルカの頭を優しくなでた。そして立ち上がるとハルカに背を向けて走り出した。波が高くてそうそう走れないが、ポケモンたちの力を借りてこの事態から身を守る術を知らない人やポケモンたちを助けなければいけない。雷鳴にまぎれて名前を呼ぶ声がした気がしたが、ホムラは一度も振り返ることはしなかった。少し空を見上げるとこんなときに空を飛んでいるものが見えた。
    「カガリ、少し出遅れたがいくぜ」
     ポケナビで作業開始の連絡を入れる。豪雨と雷で音声が聞き取りづらい。
    「そう思ったら人の二倍は働くことね」
    「まぁそう冷たくするなよ、俺たちの仲じゃねえか。それに……もうこうして会話すんのも最期かもしれねえんだし、それくらい……」
    「ホムラは父親のいない子供にするつもりなのかしら」
    「ウヒョ!?待って、もう一度言って、聞き取れなかったんだけどもう一度言って!?」
    「言ってほしかったら必ず生きて戻ることね」
     一方的に切られ、どういうことか状況を整理する間もなかった。これだからカガリは解りにくい。どんなにマグマ団たちからハルカが可愛がられようが愛人扱いされようが平気だったのだから、てっきり愛などもうないものだと思っていた。それでも時間の空いた夜には誘ってきたし、そういう扱いされてたのかと思っていた。解ってたならもっと早く言ってほしかったとか、任務があるから言えなかったんだろうなとか、終わったらもう労るしかねえとか。
    「ま、とりあえず死ぬなよお前らも」
     部下たちの気合いの入った声がした。移動のためのポケモンで空に舞い上がる。雷に注意して海面すれすれを飛べといった。部下が全員飛んだのを見て、ホムラも飛ぶ。ちゃんと逃げただろうかと不安になり、姿を探した。
     あいつは大丈夫だ。ちゃんと頼れる大人がいる。ちゃんと守ってくれそうなやつがいるんだ。……じゃあな、生きてたらまた会おうぜ。



     あれから、彼の姿は見なかった。あれだけ私に絡んできたアクア団もぱったりと見なくなった。
     人の縁は不思議なもので、出会ったり別れたりした。その中で、最も不思議な出会い方をして、別れ方をして、そして再び出会った人と結婚した。どこか子供っぽくてつかみ所がなくて、ダイゴさんはそんな人だった。
     時々、ダイゴさんにもホムラのことを話すことがある。というよりウシオとかアクア団の恐怖が私も知らない間にトラウマになっているらしく、そういう時にホムラの話をしていれば自然と怖くなくなっていたから。そんな時、ダイゴさんはいつも抱きしめて頭を撫でてくれた。そういうのも知っててダイゴさんは私を選んでくれたんだ。

     まだ子供ながらモンスターボールを携えた女の子は両親に向かって手を振った。トレーナーの第一歩を見送る父と母。よくある光景だ。けれど母親は本当は旅立ってほしくなかった。同じ年頃の時に酷い大人にからまれたことや苦労したことも含めて。
    「血は争えないね」
     ポケモンが好きでトレーナーになりたいという気持ちを否定することはできなかった。いつかの自分がそうであったように。
     少女は譲り受けたアチャモと一緒。タマゴの時からの知り合いだ。きっと楽しいことが待ってるはずだ。
     嬉しくて走り出す。どこからみても新米トレーナーは、金を巻き上げるにはちょうどよかった。
    「ねえお嬢ちゃん、勝負しない?」
    「俺たち勝ったら全額おいていこうか」
     にやにやと見て来る集団に、本能でやばいと思うが囲まれている。アチャモだって戦闘経験がそんなにあるわけではない。震える手でモンスターボールを投げた。
    「そんなガキから取り上げる金なんてタカが知れてんだろ」
     グラエナが集団にぶつかってきた。思わぬ乱入に集団はどよめく。歯茎をむき出しにしてうなるグラエナはとてもじゃないが敵わなそうだ。そのトレーナーはグラエナを手足のように使ってくる。不利だと悟ったやつから逃げ出し、最終的に誰もいなくなっていた。
    「あ、ありがとうございます」
    「もう大丈夫だ。俺もあーいうのに絡まれて強くなったんでねウヒョヒョ」
     帰るぞ、とグラエナに声をかけた。大人の男性トレーナーに、御礼を言うのが精一杯、なんてことにはなりたくなかった。
    「待って!あのね、お兄さん待って!」
     猫のように華麗な跳躍でグラエナのトレーナーに抱きつく。突然のことでトレーナーはそのまま前に倒れた。
    「あ、あのっ!名前教えて!!それと……」
    「なっ、離れてくれエネコ人間!」
     目をキラキラさせて背中に張り付いてくる子供を引きはがすのは大変だ。かかった時間は永遠の格闘に思えた。


      [No.2434] With Tranquill and Voice 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/05/23(Wed) 19:33:00     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     最近ポケモンが減って来た。原因など解っている。戦争が始まったからだ。
     優秀なポケモンはもちろんのこと、その辺にいる適当なポケモンだって戦力になると捕獲された。

     そんな戦争の初期、優秀なトレーナーはみんな徴兵された。この男もそろそろ自分の番とおびえている。
     殺し合い、奪い合い。なぜお上の決めたことに命をかけなければならない。いや原因は向こうの国が無茶難題を押し付けるからだ。そうでないと、今の裕福な生活はまもれない。そんなことは解っている。それでも殺される恐怖や徴兵される恐怖におびえていた。

     いつもならポケモンの鳴き声が朝からけたたましい。けれど最近はめっきり静かだ。静寂の朝を迎えて男は郵便受けを確認する。
     良かった、今日も来ていない。徴兵を知らせる紙が。
     
    「ぽぽくるぽー」

     男は上を見上げた。聞こえるはずのない声がする。
     この声は誰だ。確か、そうだハトーボーだ。ポケモンがまだいる。まだ鳴いている。野生のポケモンはまだ生きてる!
     しかし屋根を見ても空を見ても、ハトーボーの姿はなかった。鳴き声だけがそこにある。姿は見えなかった。

    「くるぽぽぽぽぽ」

     男はハトーボーに呼びかける。降りてきてくれ、と。
     野生のポケモンはいなくなった。朝も昼も夜も静寂。ひとたびその姿を見せればすぐに捕獲される。だからこそ男はハトーボーの野生に生きる姿を見たかった。

    「ぽぽぽぽ」

     ずっと右から聞こえる。どっちを向いても右から聞こえる。相当姿を消すのが上手いハトーボーだ。だからこそこんな時代でも野生で生きていられるのだろう。
     通りすがりの人が不思議そうな目で見ている。男は答えた。ハトーボーが鳴いている、さっきからずっと鳴いている、と。その人は何も聞こえないよ、と言った。
     
    「くるぽっぽー」

     姿は相変わらず見えない。けれどそこに確かにハトーボーが存在している。
     
     昼になってもハトーボーは鳴いている。増えてきたようで、さらに鳴き声はざわざわしている。
     ああそうだ、ハトーボーが集まるところには平和の国があると聞いたことがある。
     戦争しているこの時代に、ハトーボーが集まるのであれば平和に導かれているのかもしれない。そうだとしたらハトーボーたちを保護して住みやすいところにしてやりたい。
     平和の国のハトーボー。ああそうして戦争が終わって、平和な国になって。またポケモンたちが朝に鳴いて一日が始まるのに。

    「くるぽぽぽぽっぽー」
     
     なんだって、よく聞こえない。男はそう言った。
     男のまわりには常にハトーボーの鳴き声がしていた。心配になった家族が病院に連れて行く。
     
    「ぽぽぽくるるっっぽぽぽー」
     
     突発性難聴。そう診断された。
     ハトーボーの鳴き声もその症状だと。
     男は認めなかった。このハトーボーの声は確かに存在している。存在しているのに否定するのか、と。
     平和はそこまで来ているんだ。そんな病気ではない。
     邪魔するな。ハトーボーは確かにいる。姿は見えないけど確かにいるんだ!

    「ぽっぽー」

     戦争はやがて酷くなり、侵攻されるようになっていった。
     それでもハトーボーの鳴き声は止まらなかった。
     いつかこのハトーボーたちが戦争をとめて平和に導くと信じている。
     
     男の家も戦地となり、凶悪なドラゴンポケモンに焼かれるまで、ずっと。


    ーーーーーーーーーーー
    覚えてますか、エイプリルフールという名のマメパト襲来を。
    乗っ取られたタイトルを一つずつ見ていって爆笑したのが「ポッポ嫌い」と「よわむしピジョット」だったのはよく覚えてます。
    そして漏れず乗っ取られたのがマメパト。
    Tranquillは英語でハトーボーです。そろえた方がいいかと思ってこっちにしました。
    意外に冗談通じないかもしれません。
    外語ポケモン楽しいですね。
    ハトーボーの平和の国はいつか使いたいと思っていました。

    【なにしてもいいですよ】


      [No.2433] 観覧車は止まらない 投稿者:稲羽   《URL》   投稿日:2012/05/22(Tue) 22:05:35     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    はじめまして、稲羽(いなば)と申します。
    初投稿お疲れ様です。作品読ませていただきました。

    あんな状態であっても活気にあふれている「息子」の行動が良い意味で子供じみていて、微笑ましいです。
    あと、観覧車と時間の例えが上手だなあ、と思いました。どうしても止めようがないですものね。そのことを自覚したお父さんが今後どうなっていくかが気がかりです。

    父親も「息子」も、そしてゴーストポケモン達も同じ世界で暮らしている生き物、これからも一緒に楽しく生きて行ければ良いですね。

    それでは、また次の作品にも期待しております。


      [No.2432] 【ポケライフ】日曜は息子と遊園地に。(6/16修正) 投稿者:aotoki   投稿日:2012/05/22(Tue) 20:17:30     126clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    寝起きの体を、誰かに揺さぶられている、気がする。

    「・・・・うさん。おとうさん。ねぇ起きてってば。もう8時半だよ。」うすぼんやりとしたままの聴覚に、鋭い光のような声が刺さる。
    閉じているはずの瞼越しに、なぜか真っ青な空が見えた。どこまでも澄み渡った、真昼の青空が。
    「・・・・・んん」
    俺は黙って寝返りを打った。青空の代わりに、眠りの世界の入り口が見える。・・・もちろん入るつもりは無いけれど。
    「もー。起きてよー!遊園地しまっちゃうよ?ねぇだから早く早くー!」すぐ近くに”誰か”の気配。もちろん、俺の背中はわざと”誰か”に向けられている。
    「ぁー・・・大丈夫だから・・・あと30分・・・」「だーめ!」
    ドスッ、と背中に”誰か”が乗る。暖かみのある、幸せな重さ。予想通りの反応と予想外の重さに、自然と顔がほころぶ。
    「おとーさん起きて!いっつもそれでお昼まで寝ちゃうでしょ!」
    「だいじょーぶだって「だいじょーぶじゃない!!」
    そして手が俺の肩にかけられて・・・
    「うをうぉうぉ?!」肩ごとダイレクトに頭を揺さぶられた。「おーーきーーてーーよーー!おーーきーーてーー!!」おまけに耳にもダイレクトに大絶叫。容赦なく寝起きの頭は前へ後ろへ右へ左へ「わかったわかったわかったわかったから1回手ぇ離せ!!一旦降りろ!!」
    「あ、うん」
    ひょいと重みが無くなると同時に、俺の頭は枕に叩きつけられる。長年愛用の煎餅枕は、残念ながら衝撃を吸収してはくれなかった。
    「いっ・・・てぇ・・・」
    俺は背中を振り返る。
    さんさんと窓から降り注ぐ日差しに映る、小さな、真っ黒い影。

    「おはようおとうさん!!」
    「あぁ・・・おはよう・・・・また力強くなったな」
    俺は背中に乗った息子に、苦笑いで挨拶を返した。
    窓の向こうからは誰かの笑い声。


    今日は日曜日。どんな人も、ポケモンも、大切な人と思い出を作る、特別な日だ。


    ***

    想像以上だった息子からのモーニングコールのおかげで、しばらくまともに歩けなかった。
    おまけに当の本人は「じゃあ先朝ごはん食べてるね!」と無常にもリビングへ。
    なので、おれはまだ布団の上で怠惰にゴロゴロとしている。少しだけ開いたドアの隙間から、パンの焼ける匂いがしてくる。
    もちろん作っているのは俺ではないし、息子でもない。
    「朝飯作ってくれてたのはありがたいんだけど・・・な」
    俺は煎餅枕の枕元、オムスターの目覚まし時計を手に取る。7時にセットした目覚まし時計は、ジャスト6時59分59秒で針が止まっていた。
    「・・・あいかわらず手の込んだイタズラを」苦々しい気持ちを噛み締めて、俺は布団から体を跳ね上げた。

    少しだけふらつく足で、洗面所へ向かう。もちろんオムスター時計も一緒に。右手からカチカチという振動は伝わってくるものの、針が進んでいる気配は無かった。
    真っ暗な洗面所では、洗濯機が回されている。ガタ、ガタ、と一定のペースで振動が伝わってくる。
    もちろん、セットしたのは俺ではないし、息子でもない。
    「親切なんだか不親切なんだか、な!」
    俺は右手のオムスターを洗濯機に投げつけた。オレンジ色のボディに当たって跳ね返り、タオルの山にぼすりと埋まる音。衝撃で針がずれたのか、ジリリリリリリリリとオムスターが鳴き出した。
    「おいロトム!何回目覚ましにイタズラすんなって言ったら分かるんだよお前は!」
    キシシシシ!と洗濯機が洗濯機にあるまじき音で回った。喜ぶかのごとくガタンガタンと揺れも大きくなる。
    「せっかくカントー土産で貰ったのによ・・・お前のイタズラで壊れたらどうすんだよ」
    未だにオムスターは洗面所の奥で鳴き続けていた。タオルの山に埋もれているはずなのに、かなりの音量を保っている。そしてその山の中から、蓄光仕様の目玉がこちらを見つめている。
    カントーの友人から貰ったこの時計は、寝起きの悪い俺にはそのうるささと不気味さが絶妙に丁度よかった。夜中、たまにこれとふっと目が合って、飛び起きることもある。
    ちなみにカブトのデジタル時計もあるのだが、こちらはそれほどベルがうるさくなかったので普通の時計として俺の机に乗っていた。こいつも夜中、つい机でうたた寝をしてしまったとき、ふっと目が合って飛び起きる事がある。
    一つため息をついて、俺は嬉しそうにガタガタと揺れ続ける洗濯機に言った。
    「ベル止めて、時間も戻しとけよ。・・・今度やったら芝刈り機買ってくるからな」
    慌てたように、背後でベルと洗濯機の音が止まる。一瞬の間の後、洗濯機は何事も無かったかのように静かに回り始めた。
    「・・・さすがに庭のない家の芝刈り機は嫌か」
    ロトムの慌てぶりが可笑しくて、思わず笑ってしまった。

    そういえば着替えるのを忘れていたな、と昨日履いたジーパンを探していたが、洗面所に置きっぱなしだったことに気付いた。
    さすがにまた洗面所にいくのは癪なので、仕方なくもう一本のジーパンを引っ張り出す。あれはまだ一日しか履いてなかったよな、と一瞬思ったが、ふと今朝の息子の笑顔を思い出し、洗い立てのジーパンに足を通した。
    あんなに楽しみにしてくれていたんだ。こっちもそれなりの格好で行かないと父親として失礼だろう。
    それじゃあもう少しよそいきでも着るか、と俺はこの間買ったシャツを探し出す。シンオウだかどこだかのデザイナーがデザインした、グレーと赤と金のチェックのシャツ。
    向こうの伝説のポケモンをイメージしたらしいが、残念ながら俺はそっちのほうに明るくないのでどんなポケモンなのかは分からない。けれど金のラインのあしらい方と濃さの違うグレーの使い方がやけに格好よかったので、服に無頓着な俺にはしては珍しく、それだけを買いに店まで行った。

    しかし、それが見当たらない。

    「あっれ・・・おかしいな・・・」とりあえずクローゼットやらタンスやらの引き出しを、片っ端から開けていくが、どこにも無い。
    「1回は着たから、袋のまんまってことは無いはずなんだけどな・・・・・・ん?」目の端に何かが映り、俺はふと机の上に目をやった。
    そこには探していたシャツが、きれいに畳まれて置いてあった。その隣には昨日履いたばかりのジーパンも。俺は部屋のドアを振り返るが、もちろんきっちり閉まっている。
    もちろん、持ってきたのは俺である訳がないし、息子でもない。
    いや、この場合は息子でも出来るけれど、そんな事にわざわざ気付いてくれるほど繊細な心はまだ持っていない。
    「あぁ・・・洗面所に置いてたのか、どっちも」シャツに袖を通しながら、俺は心当たりを探った。「・・・なるほどね」バッ、と襟を整える。
    持って来てくれた奴には申し訳ないが、昨日のジーパンはタンスに戻した。

    ***

    リビングのドアを開けると、朝のあわただしい匂いが飛び込んできた。
    「デラッ!!」キッチンからはシャンデラの声。
    「あ、やっとおとうさん来た」息子は既に朝飯を食べ始めていた。口の端にパンくずが付いているのが目立つ。
    「シャンデラもおはよう・・・朝飯ありがとな」「デラ〜♪」フライパンを持ったまま、シャンデラがターンした。
    もともと料理には興味があったらしいが、最近俺が寝坊がちになり朝飯を作れない日が増えたのを期に、どんどん腕を上げてきた。
    もしかしたら今朝のアレはコイツが朝飯を作りたいあまり、ロトムと共謀したのかもしれない。そう一瞬思ったが、心のうちにとどめておいた。
    俺は息子の向かい側に座る。カウンター越しにシャンデラがコーヒーを出してくれる。「おい、流石に今朝のはやりすぎじゃなかったか?しばらく立てなかったぞ」
    「ごめーん。あんまりにも楽しみで、つい調子乗っちゃった」
    謝る気の一切無い顔で、息子はパンをほおばる。「だって久しぶりのお出かけだよ?」
    「あぁ・・・そうだな。でもお前もおっきくなってきたんだから、力の加減には気をつけるようにしろよ」俺はコーヒーを一口すする。「はーい」息子はもう一口パンをほおばる。

    シャンデラが用意してくれた朝ごはんは、なかなかに豪勢だった。
    焼きたてのパンに、赤色のミックスジャム。ホットサンドにも出来るようフルーツまで切ってある。おれならジャムかフルーツかの二択だから、こうはいかないだろう。
    一口大のクッキーはポケモン用だろうか。上に少しずつブリーのジャムが乗せられているあたりに、俺は普段の適当ぶりを反省する。
    真ん中には多めのサラダ。焦げがないから、こっちはヨノワールが作ってくれたのだろう。
    サラダボウルを置いてから、隣に座ったヨノワールが視線だけこちらに寄こす。俺の格好を一瞥すると、何も無かったかのようにパンに手を伸ばした。
    「ヤッミ〜♪」
    ヤミラミが焼きたてのハムエッグを運んできてくれる。もちろん、焼き加減は黄身が流れないくらいの半熟。息子はパンの上に固焼きのハムエッグを乗せようとしていた。
    「・・・サイズ的に無理じゃないか?」「いいの!」バターロールになんとか卵は乗ったが、案の定ズルリと滑り落ちた。「ああー!」ヨノワールが少しだけ笑った。
    「今笑わなかった!?ねぇ!」プイとヨノワールは明後日の方を向いた。おどけたようなその素振りに、ますます息子は怒り出す。「なんなんだよー!」
    「今のは無理したお前が悪い。な?」「ヤミ。」「デラ。」席に着いたヤミラミとシャンデラも頷いた。
    「おとうさんたちまでそういうこというの!?もー・・・」ぶすくれた顔で、息子はひしゃげたハムエッグを口に入れた。
    「・・・おいしい」
    シャンデラが満足げな顔を浮かべたのが分かった。

    さすがに全部皆に任せて出かけてしまうのは忍びなかったので、俺は後片付けをしていた。息子は部屋で遊園地に持っていく荷物でも考えているのだろう。
    そんなわざわざ支度するほど特別な場所ではないはずだけれど、息子に言わせれば「久しぶりのお出かけだから」らしい。
    俺の脇を皿を抱えたヤミラミが通り過ぎようとする。
    「あーあーいいいい。そこは俺がやっとくから」「ヤミ?」「お前たちに任せてばっかじゃ、俺の気が済まないんだよ。ただでさえ今日は留守番頼んだし、寝坊しちまったんだからさ」
    俺はベランダに目を向ける。
    「・・・まぁ寝坊したのは俺のせいじゃないけどな」ベランダには洗い立ての洗濯物が翻っている。
    もちろん、干したのは俺ではないし、息子でもない。
    「だからいいよ。休んでな」「ヤミィ・・・」それでもヤミラミは、皿をしまってから向こうへ行ってくれた。リビングでは、言ってもいないのにヨノワールがテーブルを拭いてくれていた。
    「あ」「・・・・・・・ヨノ」こちらと目が合った瞬間、すうっと姿を消す。既にテーブルはきれいに拭かれていた。
    「・・・やれやれ」そういいながらも、俺の頬は自然に緩んでいる。

    周りの奴らには、お前の手持ちはゴーストばっかりで怖いだとか不気味だとか言われるが、そんなに恐ろしい事をされたこともないし、毎晩うなされる訳でもない。
    他の奴らは幽霊は夜しか動かないと勘違いしているらしいが、幽霊だって早起きするし、朝ごはんまで作ってくれる。
    魂や命のために一緒にいるのかもしれないが、あちこちさりげなく手伝ってくれているあたり、本気で魂を奪おうとはしていないらしい。
    たまに妙なイタズラも仕掛けてくるが、それもまた一興だ。
    ゴーストとの暮らしが一番いいとは言わないが、こういうすこし奇妙な奴らとの生活のほうが俺には合っている気がする。
    もしこいつらのせいで早死にしても、俺は文句を言わないだろう。あれだけ手伝ってくれているんだ。”お小遣い”くらいケチるつもりはない。
    「・・・よし。終わりっと」
    最後の皿を戸棚にしまってから、俺は息子の部屋に向かって声をかけた。
    「おーい。片付け終わったからそろそろ出るぞー」
    「あ。待って!」部屋から息子が飛び出してくる。
    時計を見れば、もう9時半過ぎ。窓の外には抜けるような晴天。

    遊園地に出かけるには、最高の時だろう。


    ***

    「わぁーーーーーー!!」ゲートをくぐって第一に、息子は大声で叫んだ。

    ジェットコースターに、大観覧車。
    メリーゴウランドにコーヒーカップ。
    カラフルなテントの前にはピエロと相棒のキルリアが一匹。
    おんなじように笑い、駆け回る子供とポケモン達。
    誰かの飛ばした風船を、ハトーボーが捕まえて戻っていく。
    一緒にアイスを食べる親子のポケモン。
    手を繋いで歩く人のカップル。
    空にあふれるさまざまな鳴き声と喚声と笑い声。

    「おとうさん!一緒に観覧車乗ろうよ!あ、でもジェットコースターにも乗りたい!!」握った手を離さないまま、息子は走り出そうとする。
    「そんなに焦るなって。丸一日あるんだぞ?ゆっくり楽しめばいいじゃないか」
    「えー?でも、こんなにいっぱい遊ぶとこあるんだもん。回りきれないよ!!ねぇだから!」
    「わかったわかった。じゃあ初めは観覧車な。その次は・・・そうだな。コーヒーカップでも行くか」
    「うん!」
    息子の手を離さないよう、俺は大きな円に向かって歩き出した。


    たくさんのものがせわしなく動く中で、ゆっくりと回リ続ける観覧車。
    何者にもとらわれず、淡々と一定の法則にしたがって回るその円に、どうしても俺はある姿を重ねてしまう。


    そのとき、誰かが手を引っ張った。
    「・・・おとうさん?」
    「あ・・・あぁ。なんだ?」俺は息子に顔を寄せる。
    「あのね。さっき向こうに黄色いのが見えたんだけど・・・」息子は観覧車の脇―ポケモンを模したテントの方を指差した。「すぐ隠れちゃった」
    「ん?・・・あぁ、ピカチュウか」テントの前の人だかりの隙間から、確かに黄色い耳が見え隠れしていた。
    「うそ!?ねぇ、おとうさん、握手してもらいに行ってもいいかな?」息子は大きな目で見上げてくる。
    「いいぞ。お父さんはここで待ってるから、すぐ戻ってこいよ」
    「うん!」
    そう言って、小さい三本指の手が俺から離れる。
    「じゃあおとうさんはここで待っててね!迷子になっちゃだめだよ!」
    黄色いぬいぐるみへ、走り出した息子の真っ黒な後ろ姿は、たちまち人とポケモンの波の中に消えていった。


    一人になった俺は、近くのベンチに腰を下ろした。ここから見上げる観覧車は、想像以上に大きい。
    たくさんの部屋が、誰かを降ろし、また乗せて回っていく。
    ゆらゆら揺れながら回る窓の人影に、また俺は息子の姿を重ねていた。
    小さな女の子が二人だけで、観覧車に入っていく。

    じゃあおとうさん、いってくるね。

    そう、俺に手を振らないまま、息子は観覧車に乗ってしまった。
    一度動き出した観覧車の中は、1周して戻ってくるか、鳥にでもなって覗き込むかしないと見ることは永遠に出来ない。
    だから観覧車が一回りしてくるまでの10年間、俺はただ観覧車を見上げる事と、その部屋の中の風景を想像することしか出来なかった。
    「・・・いや、それすらもしていなかったかもしれねーな・・・」
    とべない翼を求めて、存在しないチケットを求めて、当ても無く無駄な方向に歩いていき、いつの間にかだれにも探されることもない迷子になっていたのだろう。
    もしかしたら観覧車の1周は、俺が思っていたより短かったのかもしれない。
    そして小さな部屋の中で回り続けた息子は――。
    観覧車から、男の子とポケモンが降りてくる。

    生前と同じ顔のマスクを持つという、小さな幽霊。かつては人間だったものがなる、ゴーストポケモン。

    俺はいつのまにか自分の影を見つめていた。空に反比例するように黒さを増す影から目を離し、観覧車を見上げる。
    相変わらず、円は同じ速さで回り続けている。抱いた部屋に誰が入ろうとも、出口で誰が待っていようとも、その速さが変わる事は無い。
    「・・・それはこっちも同じ、か」
    こちらがどんなに頑張ろうとも、足掻こうとも、努力しようとも、世界の巡る速さは変わらない。
    この瞬間を、この風景を、ずっと留めておきたい。そう思っても、部屋の中から観覧車は止められない。
    だから、人は、ポケモンは、思い出を作るのだろう。永遠には続けられないその日常の中に。


    息子が俺のいる方へ走ってくる。
    「おとーさーん!!ピカチュウに会えたー!!」「おぉ!そりゃよかったな」俺は息子の手に自分の手を重ねた。
    「・・・じゃあ、乗るか。観覧車」「うん!」



    今日は日曜日。どんな人も、ポケモンも、大切な人と思い出を作る、特別な日だ。



    "Sunday with theme park & my son" THE END.



    [あとがき]
    初めまして。aotokiと申します。
    初の企画&BBS&小説サイトで恐れ慄きオノノクスです。
    こんな拙い文ですが宜しくお願い致します。

    「朝ごはんを作るゴーストポケモン」「ポケモンと一緒に遊園地」
    ここまではよかったのですが、あのポケモンを思い出した瞬間何故かこんな展開になっていました。ナンテコッタイ
    でもこの親子とゴーストポケモン達は個人的に気に入っているので、またどこかで出したいと思っていますΦ(・ω・ )

    [追記 6/16]
    はじめましての方ははじめまして。
    また読んでくださった方は、ありがとうございます。aotokiと申すものです。
    誤字脱字が酷かったのと、すこし書き換えたい箇所があったので修正させていただきました。

    ていうかまずきちんと確認しとこうぜaotoki!
    初投稿でマジオノノクスとか言うなら確認しとこうぜaotoki!

    話の大筋は変わっていませんので、この修正はまぁ作者の自己満だと思ってください。


    【なにしてもいいのよ】


      [No.2431] 花と嘘 投稿者:レイニー   投稿日:2012/05/22(Tue) 10:30:44     106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     始まりは、一輪の向日葵だった。出かけた先で親切な人から偶然一輪もらったのだ。
     家に帰って一輪ざしに挿してみたら、彼女が反応した。草タイプであるチュリネにとって、やはり花に対して何か思うところがあるのだろうか。
     日課の水やりは、気がついたら彼女がするようになっていた。時折一方的に花に話しかけたりしていた。その姿は花を愛でるというより、共に日々を過ごしているようだった。

     そんな向日葵はあっけなく最期の日を迎えた。
     しょげている彼女を片目に見ながら、枯れた向日葵をゴミ箱に捨ててしまうのは忍びなかった。

     向日葵が去ってから、彼女はすっかり元気をなくしてしまった。
     彼女がふさぎ込んだ姿を見るのがあまりにも辛かったので、僕は嘘をついた。
     彼女のために新たに買ってきたのは、作り物の花。
     紙で出来た偽物だということを知らない彼女は元気を取り戻した。

     この枯れない花のように、彼女の笑顔が枯れなければいい。そう思っていた。
     しかし、僕は彼女に優しい嘘をついたことを後悔することとなる。

     彼女は花に水をやりつづけたのだ。かつて本物の向日葵にそうし続けたように。
     僕がこっそり水を捨てても彼女は水がないことにすぐに気づき、水をやっていた。
     紙で出来た花は水を吸い、枯れないはずの花はどんどんやつれていった。

     彼女は造花が弱っているという不自然な状況には何も気づかず、かつて生きた向日葵に与えたそれと同じように、ちょっと悲しそうな瞳をしながら、それでも水をやり続けた。

     ふと、昔テレビで観た物語を思い出した。
     親がこの世を去ってしまったことを言いだせず、優しい嘘をついた兄。親が戻ってこないことを知らず、帰らぬ親を思い続けた妹。

     ああ、優しい嘘は、何も事態を解決しやしないんだ。

     僕はもう限界が来ていた美しかった紙を捨て、新たな命を購入し、花瓶に挿した。
     今度は命の終わりをきちんと彼女に語ろうと心に決めて。


     時が過ぎ、そんな彼女も今はドレディアになった。自らもいずれ枯れるのだということを理解しながら、そしてその時が近づきながらも、今でも花に水をやり続ける日々だ。
     そして僕も、いずれ枯れる日が来るまで、彼女が花と共に生きるように、彼女と共に生き続けよう。


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    最近文章書きから遠ざかってしまっていたので、リハビリのための習作。

    ----------------

    追記:投稿久しぶりすぎてタグ付けるの忘れてました(汗)
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


      [No.2430] ライチュウを広める為に 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/05/20(Sun) 21:30:06     121clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     ――次のニュースです。
     本日正午頃、他人のポケモンを無断で進化させる事件が起き、ポケモン保護法違反の容疑でニビシティ在住、自営業のコッペ容疑者(26)が逮捕されました。
     コッペ容疑者は本日正午頃、トキワのもり付近にてピカチュウを連れた少年にバトルを持ち掛け、そのバトル中に容疑者のライチュウのなげつけるを用いてかみなりのいしを投げつけ、少年のピカチュウをライチュウに進化させた疑いが持たれております。容疑者は、「故意にライチュウに進化させずにピカチュウのまま冒険するトレーナーが多いと聞いていた。もっと皆にライチュウの魅力を分かって貰いたかった。ライチュウを使って貰えれば魅力が伝わると思った」等と供述しており、容疑を認めています。
     続いて明日のお天気です――

    ―――――――――――――――――――――

     らーい。らいらーい。ライチュウかわいいよライチュウ。らーい。因みに被害者の少年がすっかりライチュウにはまった為結局不起訴になったとか。らーい。
     当初はイーブイに炎の石を投げつける王 唯一(おう ただかず)容疑者(36)とか考えてましたが、ブースターが大好きでブースターを広める事が目的なのにブースターを使わないのは少し違和感があったのでなげつけるを使えるポケモンに変更したり。
     進化の石って触れただけで進化するんですかね。アニメだとクチバジムの回でピカチュウが尻尾ではたいてましたから瞬間的なら大丈夫なんですかね。よく分からないのでとりあえず触れただけで進化する旨で書きましたが。
     あとこの行為を違法とするならばどういった法律が適用されるんでしょう。器物破損が適用される関係でもなさそうですし。良く分からない時はポケモン保護法とか愛護法にしておけば大体誤魔化せる気はしますが。
     とにかくライチュウかわいいよライチュウ。インドぞうを気絶させたり手の感触がコッペパンみたいだったり。らいらーい。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【お任せするのよ】
    【ライチュウかわいいよライチュウ】
    【コッペパンチ】


      [No.2429] とおいちほう 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/05/20(Sun) 05:21:31     135clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



     サザナミタウン。
     夏のリゾートとして有名なこの場所に、防寒具を着込み、双眼鏡を構えて立つ私は、場違いに見えるだろう。それ以前に、今は冬なのだから季節外れだ。
     幸いシーズンオフでもあるから、奇妙な格好をして双眼鏡を海に向ける私に気を止める者は、誰もいない。私は安心して双眼鏡を構え、海を見る。変わらない、鈍色の塊を見つめている。

     不意に潮が吹き上がった。はい、と手を挙げるみたいに。


    「ねえ、このホエルコ、遠い場所から来たんだよ。ホウエン地方だって」
     幼い手の中の赤白のモンスターボールを、少女は高々と上げる。少女の遊び相手に選ばれた少年は、柔和な笑みを浮かべてそれを見る。その笑みと、彼のパートナーのツタージャは、似合っていた。どちらも草の雰囲気がした。

     昔々、といっても十年少し前のことだが、まだ少女だった私は、親がもたらす恩恵を自分のものとして、当たり前のように享受していた。そして、それを当たり前のように周りに見せびらかしていた。私の遊び相手、というより生贄に選ばれた少年は、いつも穏やかに笑って、私の自慢にもならない自慢を聞いていた。
     全く、私は馬鹿だったと思う。もしも過去に行けるのならば、過去の私を殴ってホエルコのボールを取り上げたいものだ。そんな私だったけれど、彼はいつも相手をしてくれていた。この時も、近くの川にホエルコを放って観察するという私の提案に付き合ってくれた。草の匂いのしそうな、あの柔和な笑みを浮かべて。

     河原を歩き、ちょうど良い滝壺を偶然見つけて、そこにホエルコを放つことにした。思えばそれだって、無茶な行軍をしたものだ。河原のすぐ上の道は気まぐれに切れていて、私と彼は何度も河原に降りて進まねばならなかった。道がすっかり低木で覆われていて、小枝を体で折るようにして進むことも度々あった。これでは満足に進めないと、私たちは河原を行くことにした。足に優しくない石ころにふうふう言いながら、川沿いをずっと進んだ。道中で現れた野生のミネズミやクルミルは、彼のツタージャに追い払ってもらっていた。そこまでされていて、滝壺に着いた私はお礼のひと言もなかった。彼がそうして従者みたいに付いて来るのを、当たり前に思っていたのだ。今なら分かる。過去の私は調子に乗ったクソガキで、彼は得難い友であった。そういうことは、いつも失ってから気付くのだ。昔々の人々が、何度も繰り返し言ってきたように。

     私たちは滝壺でホエルコと触れ合った。私はすぐ飽きてしまって、河原に転がっている、一見綺麗そうな石を見繕い始めた。その時の石ころも、持って帰ったのにいつの間にか失くしてしまっていた。
     彼はというと、ずっとホエルコに向きあって、肩にツタージャを乗せたまま、そのゴムみたいな肌をいつまでも触っていた。「お前はどんなところから来たの。ホウエンって暑いところらしいね。こっちは寒かないかい。あっちの海もこっちと同じくしょっぱいのかい」……そんなことを言っていたように思う。
     ツタージャの冷たく赤い大きな目と、彼の草を思わせる目が、ずっとホエルコに注がれていた。人間である彼はともかく、ポケモンであるツタージャがずっとホエルコを見ていたことが、印象に残っている。


     それから年が少し巡ったが、私と彼の関係は変わらなかった。私は相変わらず親の力でポケモンを手に入れては、彼に見せびらかしていた。彼は黙って、ツタージャ一匹を連れて、いつも微笑んでいた。ツタージャしか連れていない彼に、私のポケモンをあげようかと言ったこともある。彼はもちろん穏やかに断った。全くもって愚かな人間の子どもの言うことだが、最後にそれだけは果たしたことになる。
     少し変わったのは、あの夏のこと。

     中等学校の一年目を終えた私は、その日、女友達数人と意味のないことではしゃいでいた。町の中心部に出てカラオケかウィンドウショッピングか、その他その年頃の女の子が考えつきそうなことを計画していた。その行く先の、道の真ん中に彼が立っていた。
    「あ」私は嫌な顔をしたはずだ。中等へ上がって以来、彼と人前で話すのは極力避けていたのだから。クラスメイトに彼と付き合っていると思われるのが嫌だという、子供っぽい理由だった。私は彼を避けた。そして、その内彼と話すこと自体なくなっていた。
    「こんにちは」と彼が言った。その声は低く穏やかで、柔な草が若木になったような、そんな印象を抱かせた。ただ、それは後で感じたことで、その時は……彼が私の知らない間に声変わりしているのが、悲しいような、悲しくないような、そんな衝撃を受けた。
    「少し、いいかい」声変わりした声で、彼が言った。女友達が何かを暗示するように私を見る。「大事な話なんだ」彼の言葉が彼女たちの妄信に拍車をかけた。意味のない音を漏らしつつ、彼女たちは私の肩や腕を叩き、やたらとにやにやしながら彼を避けて道の先へ消えていった。

     後には彼と私だけが残された。
    「何の用なの」つっけんどんに私は言った。彼はいつかと同じ、柔和な草を思わせる笑みを浮かべて言った。
    「旅に出ようかと思ってさ。ほら、夏休みだし」
     旅? と私はオウム返しに聞いた。そう、旅、と彼は返した。
     旅には、本格的なものには中等を出てから行く人が多いのだけれど、その時の彼みたいに、長期休暇を利用して行く人も、結構いる。長期休暇が始まると旅立って、終わる頃戻ってくる、そんな期間限定の旅。
    「いいんじゃない」
     私は何故か安堵して、そう言った。男子はよく行くし、夏休みが終われば帰ってくるし、いいんじゃない。私はそんな風に安心したのだ。
    「そっか」彼はまた柔和な笑みを浮かべて言った。「じゃあ行こうか、ツタージャ」
     不意に草蛇が、彼の背中から生えてくるようににょっきりと顔を出した。涼やかな赤い目が彼を見つめ、ぴうい、と小さな声で鳴いた。
    「皆、行っちゃったね。ごめんね」
     彼は女の子たちが去って行った道の先を眺めていた。そして、私を振り返ると、「君には言っておきたかったんだ」と言った。
    「別にいいよ」言ってから、ぞんざいな返事だと気付いた。
    「別に、今生の別れってわけじゃないんだしさ」
     彼は戸惑ったように目を迷わせて、「それじゃ」と言った。私は「またね」と言った。彼の服の背に手足を引っ掛けたツタージャが、赤い大きな目で私を見た。悠々、といった風格を漂わせるツタージャに、私は何故か、負かされた気がした。

     彼がいない夏休みは、別段寂しくはなかった。友達とは遊びに出るし、宿題もするし、ポケモンの世話もする。ただ、強いて言えば乳歯が抜けた時のような、座りの悪い思いをしていた。
     私は夏休みの大方を、ポケモンを強くすることに費やした。親に貰ったホエルコを中心に、やはり親に貰ったアブソルやマイナンやスバメなど、ポケモンバトルの訓練をした。私は、親に貰ったポケモンもその内飽きて、結局親が世話をしているということが多かったのだけれど、彼に見せたのと同じあのホエルコだけは、自分で面倒を見ていた。
     そうして夏が過ぎた。私は夏休み中にホエルコを進化させようと頑張っていたのだが、それは叶わなかった。学校が始まり、私は教室で彼の席をちらりと見る。始業式には彼は来ていなかった。彼が戻ってきたのは、新学期が始まって二日目になってからだった。少し、日焼けしていた。けれど、ツタージャは変わらずツタージャのままで、私は少しだけホッとした。

    「ごめんごめん、少し遅くなって」
     放課後、私は彼と話をした。学生がよく行くファーストフード店で、私はジュースだけ頼んで席に座った。彼はハンバーガーセットをひとつ頼んでいた。そんなによく食べる方ではなかったのにな、と私はふと思った。
     旅に出て、なんとなく、彼が変わったように感じていた。話し方や行動が、ほんの少しだけ、きびきびしている。多分それは若木が樹皮を固め始めたような、確固たる芯を手に入れたような、そんなものなのだ。
     彼のツタージャはまだ、ツタージャのままだけれど。

     ちょっと道に迷って、と付け足したのは、新学期に遅れた言い訳なのだろう。私に言っても仕方ないのだけれど、と思いながら相槌を打った。
    「旅先では色々あったよ。道に迷って、海に落ちて、ランセ地方まで行っちゃって」
    「ちょっと待って、それ、どこ?」
     彼は頭を振って、よく知らない、と答えた。とにかく、彼はツタージャと共に海に落ちて、ランセ地方まで流れてしまったのだそうだ。
    「右も左も分からないし、本格的に道に迷ってしまって、困ってるところをアオバの国の」
     そこで彼は言葉を切った。私は別なところに引っかかった。
    「国? 地方の中に国があるの? 普通逆じゃない?」
    「ランセ地方ではそうなってるんだよ」
     だとすれば、彼は見当もつかない、よっぽど遠い場所まで行ったのだ。
    「国って呼ばれてるけど、規模は僕らの言うタウンぐらいだよ。そこのブショー……ジムリーダーみたいな人に助けられてね」
     彼が漏らした言葉を気にしつつも、跳ね上がった彼の語尾に注意を取られる。私はストローを口に咥えなながら、「それで?」と先を促した。彼は話した。若木みたいな声で、本当に楽しそうに話した。

     ジムリーダーみたいな人、モトナリさんに助けられ、ずいぶん世話になったこと。そのモトナリさんもツタージャを連れているそうで、モトナリさんと彼はそれで息が合ったらしい。きっとモトナリさんも、彼みたいな草っぽい人だろうな、と私は密かに思った。

     ランセ地方では変わったファッションが流行っているようで、全体的にゆったりしたものが好まれているらしいこと。例えばモトナリさんは、二段構えの不思議な帽子を被っていたらしい。これは説明を聞いてもよく分からなかった。

     ランセ地方でポケモンを育てられるのは、才能ある限られた人だけ。皆がモンスターボールを持ってポケモンを持てる地方じゃないんだね、と私が言うと、そもそもモンスターボール自体ないんだと彼が言った。私は声に出して驚いた。
    「モトナリさんも驚いてたよ」彼は笑った。
     モトナリさんはモンスターボールにいたく興味を示し、出来ればじっくり研究したいとまで言ったそうだ。しかし、彼はツタージャのボールしか持っていなかったので、その件は保留にしたと言った。
    「今度行く時に、ボールをいっぱい持って行くんだ」
     モンスターボールだけじゃなくて、他の種類のもねと彼は嬉しそうに言った。
     その今度がいつなのか、どうやって行くつもりなのか、私は尋ねなかった。

     その夜、私はベッドに寝転んで、電気も消さないまま、ぼうっと天井を眺めていた。家に帰ってから、私はまず地図を調べた。けれどランセ地方という文字は、私の持っている地図のどこにもなかった。探し方が悪かったのかもしれない。地図に載らないような、遠い、遠い場所なのかもしれない。私はホエルコの入ったボールを高く上げた。赤と白の球体の向こうは、どうしても見透かせなかった。そして、思い描いた。
     誰もポケモンをモンスターボールに入れない世界。一部の人だけがポケモンを連れて歩いている。人は皆ゆったりした服を着て、畑を耕したり、山菜を取ったりしている。二段構えの帽子を被ったモトナリさんはそんな国の人の様子を眺めて、傍らのツタージャに話しかける。
     うまく想像できなかった。
    「お前もそんな遠くから来たのかい」
     ボールの中のホエルコに話しかける。返事はない。生まれ育ったところと余りにも勝手の違うところへ来たら、寂しかろうなと私は思う。それとも、余りに遠すぎて、故郷を思うことさえ辞めてしまうだろうか。
     お前は帰りたいかい、ホエルコ。それとも……
     いっそのこと、もっと遠くへ行きたいかい。
     私は心の中でだけ、ホエルコに問いかけた。

     彼の二度目の旅立ちは、中等卒業の時にやってきた。ホエルコはホエルオーに進化して、ツタージャはツタージャのまま、私たちはその日を迎えた。
     彼は、色んなモンスターボールが入った袋を背負っていた。
    「じゃあ、行ってくるよ」
    「うん」
     夏のサザナミ湾から少し南に外れた、ひと気のないビーチで、彼は言った。それから、ホエルオーをしばらく貸してほしいと言った。ランセ地方へは海を渡らねばならない。ランセ地方から帰る時は野生のホエルオーに頼んだが、こちらで同じことは出来ないと言う。きっと、モトナリさんがホエルオーに頼んだのだろう。
    「いいよ」
     快諾して、私はホエルオーのボールを彼の手の中に落とした。
    「でも、ちゃんと返してよ」
    「分かってるよ」彼は枝葉を広げ始めた木の趣きの笑みを浮かべて、言った。
    「まずは一年ほどで戻ってくるつもり。少なくとも、再来年の年明けまでには帰るから、待っててね」
     そう言って、彼はホエルオーに乗って大海を行った。私は彼の姿が見えなくなっても、しばらく水平線に向かって手を振り続けていた。

     後はお察しの通り。年が明け、一年経ち、二年経っても、彼は戻らなかった。

     鈍色の海の中から、不意に玉を撒くような、潮の柱が立ち上がる。何度目だよ、と思いながら私は見ている。もう、今年はこれくらいにしておくか。
     私は荷物をまとめ、冬のサザナミタウンから引き上げることにする。来年はもう、来ないかもしれない。いや、やっぱり来てしまうだろう。
     だって、彼は帰って来なければならないのだから。貸しっぱなしのホエルオーを、返してもらわなければならない。モトナリさんがどれだけモンスターボールを喜んだか、アオバの国の外はどうなっていたのか、話してもらわなければならない。それとも、お前はランセ地方に根を張ってしまったか? あるいは、ランセ地方からさらに、遠い場所まで行ってしまったか?
    「帰って、来おい」
     私のささやかな願いは潮騒に消える。鈍色の海は変わらず、陽の光を物憂げに弾いている。





     ランセ地方ってどこにあるのでしょうか。地方というからには地球上にありそうな、でも遠そうな、簡単には行けなさそうな、そんなふいんき(何故か変換できた)

    【何してもいいのよ】


      [No.2428] 過去作品ですがポケライフ登録します。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/05/19(Sat) 19:31:26     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    このように過去作品に【ポケライフ】タグをつけても構いません。
    イラストにしたら面白いものあればぜひ。


      [No.2427] 【ポケライフ】鳩急行のイラコン連動企画のお知らせ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/05/19(Sat) 16:10:55     99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    えー、この度、きまぐれから、私が過去に運営していたイラストコンテストを期間限定で復活させる運びとなりました。

    ■鳩急行のイラコンSP
    http://pijyon.schoolbus.jp/irakon/

    ●お題
    「ポケモンのいる生活」

    ●お題について
    もしもポケモンがいたら……一緒に何をしたいでしょうか?
    一緒にご飯を食べたり、お昼寝したり、ちょっと街へ出かけるのもいいかもしれませんね。
    街へ行くといろんなお店があります。
    お花屋さんやカフェ、パン屋さん、アイスクリームの屋台……そこではどんなポケモンが手伝っているでしょうか。
    お父さん、お母さんもポケモンを持ってるかもしれません。
    家事を手伝って貰ってるかも。通勤の時、背中に乗せて貰ってるかも。
    ビジネスマン、OLさん、看護婦さん……ゲーム中のトレーナーを見回してもこの世界にはいろんな人がいます。
    彼らはポケモン達とどのように暮らしているのでしょうか?
    あなたの考えるポケモンライフをイラストにしてください。

    ●募集期間
    5月19日(土)〜7月28日(土)


    せっかく、イラストジャンル、小説ジャンル双方にお友達がいるので、
    まことに勝手ながら管理者権限で、小説クラスタも巻き込みたいと思います。
    以下のことをやろうと思います。

    ★イラコン開催期間中、お題をイラコンと同様の「ポケモンのいる生活」とします

    ★参加作品は題名の頭に【ポケライフ】をつけてください

    ★このタグがついた作品には「イラコンでこの絵を描いてもいいのよ」と意志表示したものとみなします





    小説クラスタのみなさんの参加、お待ちしております。


      [No.2426] 夢を集める人 投稿者:紀成   投稿日:2012/05/17(Thu) 19:37:31     106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ごくたまに、カフェに野生のポケモンがやってくることがある。
    それは雨の日だったり、よく晴れた暑い日だったり、とても寒い日だったりする。つまり、来る時期や時間帯は定まっていないのだ。
    一体何処から来るのか、ライモンでは見ないポケモンも来たりする。以前冬にバニプッチがやって来た時には、それはもう驚いたものだ。
    バニプッチは主にホドモエ・ネジ山にしか生息していない。餌が少なくなっているのだろうか。だがそんなことを抜きにしても、野生ポケモンを餌付けするわけにはいかなかった。

    「かわいそうだけどね……」

    街中にカフェを構えている以上、生態系はきちんと把握しているつもりだ。遠い地方で人間の食事の味を覚えてしまったポケモンが人里に下りてきて、多大な被害を齎しているという話も後を絶たない。自分がしたことが後に巨大な問題にならないとも限らない。
    だが。

    「何でそんな目で見るのよ!まるでこっちが加害者みたいじゃない!」

    ゴミ(生ではない)を捨てようと裏口のドアを開けた途端、幾つもの目がこちらを見る。なんというか……純粋な子供の目だ。相手を疑うことを知らない、純粋無垢、穢れなき色。ポケモンによって色は様々だが濁っていないことは間違いなかった。
    ユエはうっと言葉を詰まらせる。が、ブンブンと首を横に振る。そして叫ぶ。

    「私はね、貴方達にとっては敵なの!餌が欲しいならどっかの年中餌ばら撒いてる阿呆共の場所にでも行きなさいよ!」
    「ユエさんどうしたんですか」

    ハッとして後ろを向くと従業員の一人が焦った顔でこちらを見ていた。見ればバイトと従業員も怯えている。しまった、と思ったがもう遅い。変なところで剣道部女部長兼主将のスキルを発揮してしまったようだ。

    「ごめんね。野生のポケモン達が餌を集りにくるもんだから……」
    「あー、アレですか。私も何度か見ましたよ。あげてませんけど」
    「本当に?」
    「本当に」

    そんなやり取りが二日ほど続いた、ある夜のこと。既に店は閉め、後片付けをしているところだった。
    裏のドアを叩く音がする。

    「?」

    不審に思ってスタッフルームにある箒を一本取り出す。利き手は左。右手でドアノブをまわして――

    『こんばんわ。夜分遅くにすみません。珈琲一杯いただけませんか』

    子男が立っていた。身長はユエの胸の辺り。刑事コロンボのようなダボダボのコートを着ている。帽子で顔が隠れていてよく見えない。だが怪しい匂いがした。

    「ごめんなさい。もう今日は……」
    『待ってください。ここのカフェを探していたらこんな時間になってしまったのです。お願いです。カントー地方からやって来たのです。一杯だけ』
    「カントー地方!?」

    カントー地方はイッシュから一番遠い地方にあたる。船で四日、飛行機を使っても乗り継ぎの時間を入れて三日はかかる。今まで来たお客で一番遠かったのはシンオウだった。(ちなみに従姉妹はお客には入らない。ホウエンだけど)
    ユエは改めて相手を見た。この季節には会わない厚手のコート。右手には革製の鞄。ステッカーを貼れば旅行鞄として使えるだろう。だがそういう使い方はしていようだ。かなり年季は入っているようだが……

    「分かりました。どうぞお入りください」
    『ありがとうございます!』

    男はカウンター席に座った。視線を感じながらユエはゼクロムをいれる。ブルーマウンテン、キリマンジャロ、モカなどの豆を取り出す。きちんと計らないとこの独特の味は出ない。当たり前だが。
    しばらくして、いい香りがしてきた。特製コーヒー、ゼクロムです、とユエは呟く。男は目を閉じて香りを嗅いだ後、一口含んだ。

    『素晴らしい。今まで飲んだ中で一番のコーヒーです』
    「ありがとうございます」

    ふと、ユエは彼の横に置いてある鞄が気になった。視線に気付いたのか、男が切り出す。

    『気になりますか』
    「……ええ」
    『それでは、閉店時間過ぎに見知らぬ客人をもてなしてくださった貴方に敬意を表して』

    男が鞄を開けた。ユエは息を呑む。中には色とりどりの硝子瓶が入っていた。赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍色、紫、白、黒、ピンク、グレー、黄緑、水色、金、銀……まるで何十色ものクレヨンや色鉛筆のようだ。
    呆然とするユエに、男はニヤリと笑って言った。

    『これらが何か、お分かりになりますか?』
    「いえ…… 何かしら」
    『夢ですよ』
    「夢!?」

    夢。『眠っている間に見る物、何か強い望みなどのこと』という辞書のような説明が頭の中で渦巻く。だが夢は実体がない。瓶に入れられるなんて聞いたこともない。
    訝しげなユエに男は構わず説明を続ける。

    『人は夢を見る生き物です。私の仕事は眠っている人間の寝床にお邪魔して、彼らが見ている夢を少しだけ取らせていただくことです』
    「お邪魔って……」
    『流石にセキュリティがきついマンションなどには入れませんが。私には協力してくれる仲間が沢山いるんですよ』

    そこで、男はフウとため息をついた。今までとは違う雰囲気に、ユエは引っかかりを覚えた。

    『しかし、最近は少々仕事が成り立たなくなっておりまして』
    「セキュリティうんぬんってことですか」
    『いえ、それよりもっと悪いことです。私どもが取るのは子供達の夢です。彼らが見る夢はエネルギーが強く、時折素晴らしい質の物が取れることがあるのです。
    しかし最近は…… 彼らが夢自体を見なくなっているのです』

    夢を見ない子供。それはつまり……

    「現実的ってことですか」
    『おっしゃる通りです。将来こんな仕事をしたい、こんなことをやりたい。そういう空想とも言えるべき夢を彼らは見なくなっています。原因はこの世間です。不景気のせいか皆様方ギスギスしていましてねえ。そんな両親を見て育った子供も当然、そういう性格になる方が多い。
    現実を見ろ、もう子供じゃないんだから。……そんな夢を見ている子供に、私は最近よく遭遇するのです』

    男は悲しそうな顔をしていた。ふと思い立って、ユエは聞いた。

    「あの、私の夢ってどんな色なんでしょうか」
    『……マスターさんの夢ですか』
    「何か気になったんです。最近見た気がしても覚えてなくて。
    もしよかったら、引っ張り出してくれませんか」

    男はしばらく驚いた顔をしていたが、なるほどと頷いた。

    『貴方の瞳の色は輝いています。夢を見る子供と同じです。……取らせていただきましょう』


    ユエは眠っていた。意識だけが暗闇の中でふわふわ浮いている。
    男が言うには、ソファ席に横になって自分の手の動きを見ていて欲しい。そうすればすぐに瞼が重くなるということだった。
    本当かしら、と思った途端、瞼が重くなった。そのままスッと意識が落ちていく。落ちていく。落ちていく……

    ザブン、と体が水に包まれる感じがした。瞼の裏に明るい青が広がる。驚いて目を開けると、そこには空と海が広がっていた。
    何と言えばいいのだろうか。下に雲の平原、上には真っ青な空。水は透明、しかし呼吸はできる。
    遥か上空には星達が煌いていた。
    どうにか腕を動かすが、カナヅチでユエは浮かぶことができない。そのままゆっくりと雲の平原の方へ降りていく。雲の切れ間からは、美しいコバルトブルーの海と小さな島が見えた。どうやら向こうが普通の……陸地の島らしい。
    じゃあここは、空の海?
    ユエは以前読んだ漫画を思い出した。


    『はい、いいですよ』

    男の声でハッと目が覚めた。横を見ると男が笑って小瓶を振っている。色はコバルトブルーとエメラルドグリーンが混ざることなく二つになった色。
    マーブル模様のようだ。

    「これが、私の夢?」
    『久々に美しい夢を頂きました』
    「それ何に使うんですか」

    男はユエの夢をそっと鞄に閉まった。入れ替わりに別の小瓶を取り出す。透明な色の夢が入っている瓶だ。

    『世界には、夢を見たくても見られない子供達がいるんです。私は彼らに夢を届ける仕事をしているんですよ』
    「夢を見たい子供達……」
    『この国は本当に裕福なのでしょうか。夢を見れるのに見ない子供達。現実を見ろと諭す大人達。その連鎖が続けば世界は……』

    柱時計が午後十時半を告げた。男が透明の小瓶と小銭をユエに渡す。

    『コーヒー、とても美味しかったです。この小瓶は私からのプレゼントです』
    「……」
    『いつも枕元に置いていてください。それでは、また』

    また男は裏口から出て行った。初夏なのにつめたい風が吹く。その中で、ユエは人ではない者の後姿を見たような気がした。

    「これは、夢かしら……」

    ユエの手の中で、小瓶が輝いていた。

    ――――――――――
    ユエって不思議な話がないなーと思って書いてみた。
    イメージ的にはつるばら村シリーズです。動物達がお客さんの短編集。

    【何をしてもいいのよ】


      [No.2425] 私と『彼女』の22時 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/05/16(Wed) 23:28:22     120clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:|ω・)

     大きな森。
     目の前には古ぼけた小さな祠。

     その上に、『彼女』は座っていた。

    『なるほど……それで過去に戻りたい、と』
    「はい」

     祠の上の『彼女』は、左右の足を組みかえた。
     昼間でも薄暗い森。ましてや今は夜。月明かりもまともに差し込まず、数時間この場所にいて暗闇に慣れた目でも、一寸先はほぼ闇だ。
     そんな中でも、『彼女』の姿ははっきりと見えた。若草のように鮮やかな薄緑の身体から、淡い光を放っている。

     『彼女』(この『彼女』に性別があるのかは不明だが、便宜上そう呼ばせていただく)を見つけるために、どれだけの苦労をしてきただろう。
     書籍を片っ端から漁った。当然インターネットも使い古した。どんな些細な情報も逃さなかった。会えると噂になった方法は片っ端から試した。
     そして今、ようやく『彼女』と出会えた。

    「どうしても、あの時の……若い頃の自分を、止めたいんです」
    『……』
    「私の人生はあの瞬間からめちゃくちゃになってしまった……私が、あの時……」
    『……人を殺してしまったから』

     私は黙ってうなずいた。

     今から15年ほど前のことだ。
     きっかけは……ほんの些細なことだったような気がする。
     ちょっとしたことで友人と口論になり、ついカッとなって刃物を持ち出した。
     そこに見知らぬ中年の男が現れた。けんかを止めに入ったのか、いきなり私たちの間に割り込んできた。
     頭に血がのぼって判断の遅れた私は、うっかりその男を刺してしまった。

     顔も名前も知らない、どこの誰かもわからない人間を、私は殺してしまったのだ。

     その瞬間から、ごくごく一般的だった私の生活はまるっきり変わってしまった。
     住処を変え、名を変え、顔を変え、ありとあらゆるものから逃げ回る日々。
     後悔しない日はなかった。あの時の自分を止めてやりたい、止められれば、と何度思ったことだろう。

     そんな生活の中、『彼女』の噂を聞いた。

     「時」を自由に渡ることができるポケモンがいるらしい。
     出会うことができれば、未来でも過去でも好きな「時」に行けるらしい。
     そしてそのポケモンは、大きな森の守護者でもあるらしい――

     噂を聞いてすぐ、私は『彼女』を探し始めた。
     『彼女』に会えば、過去を変えられる。若かった自分を、止めることができる。
     平々凡々な人生に、戻ることができる。

    「私は過去の自分を止めたい。真っ当な人生を歩みたいんです」
    『…………』
    「お願いします、私を過去に戻してください!」

     私がそういうと、『彼女』は再び足を組みかえ、腕を組んだ。
     そして大きなため息をつくと、言った。





    『ば―――――――――――――――――…………っかじゃないの?』





     それまで静かで落ち着いた雰囲気を醸し出していた彼女の『言葉』に、私は呆気にとられた。
     『彼女』はふっと蔑むように鼻で笑うと、私の背よりも高い祠の上から、水色の瞳で見下ろしてきた。

    『アンタ、本気で過去が変えられると思ってるわけ?』
    「え……」

     あのねぇ、と『彼女』は腕を組みかえて言った。

    『アンタみたいにたかだか数十年しか生きてない、何の力もない単なる一般的な人間には分かんないでしょうけどねぇ、「時の流れ」ってのはこの世界が生まれたその瞬間に、最初から最後までぜーんぶ決まってんのよ。今どこかで小石が蹴られたことも、昔どこかで戦争が起こったことも、今こうやって私とアンタがしゃべってることも、ぜーんぶ「時の流れ」で決められてたことなの。この世界にあるもの全てはそこから抜け出すことはできないし、変えることなんてできやしないのよ。アタシもアンタもね。アンタが過去に人を殺したことも、そいつがアンタに殺されたことも、どう足掻いたって消えやしないのよ「時の流れ」から無くなったりしないの。アタシは確かに時を渡れるけど、それだって全部「時の流れ」の中では決められてることなのよ。過去を変える? 歴史を変える? そんなの出来るわけないじゃないばっかじゃないの? アタシごときにそんな力あるわけないじゃない。どうしても歴史を変えたいなら、世界を最初っからぜーんぶ作りかえることね』

     『彼女』はそう言って、私を見下ろしてまた鼻で笑った。

     まるで出力マックスの放水車で水を浴びせられるような、怒涛のごとき『彼女』の言葉に、私は言葉を返すことが出来なかった。
     『彼女』は氷のような冷たい目線でこちらを見下ろしてくる。
     風が吹いた。木々がざわめきのような音を鳴らす。

    「……わかりました。帰ります」

     『彼女』は森の守護者。
     ざわめくような森の声は、きっと『彼女』の「帰れ」という言葉の代弁。

     そう判断した私は、『彼女』の座る祠に背を向け、歩き出そうとした。


    『――ちょっと待ちなさいよ。誰が「帰っていい」なんて言ったの?』

     『彼女』が声をかけてきた。私は足を止めた。
     ふわり、と『彼女』は空を飛び、私の前で静止した。

    『まだやることが残ってるでしょ。アタシはアンタを過去に送らなきゃ』
    「え、しかし……私の過去は消えないとさっき……」
    『当たり前じゃない。だから、よ』

     『彼女』はそういうと、にっこりと笑った。
     その笑顔を見た瞬間、背筋が一瞬にして凍りついた。

    『アタシはアンタを過去へ送らなきゃならない。だって、「時の流れ」でそう決まっているもの』

     逃げたい。逃げなければ。
     でも、足が動かない。
     つたが絡まって、足が動かない。

    『そうね。一応教えておいてあげるわ。アンタがやらなきゃならないこと』

     『彼女』の目が妖しく光る。
     小さくて短い両腕に、エネルギーがたまっていく。

    『けんかをね、止めてきてほしいのよ』
    「……!?」
    『どうすればいいか、わかるでしょ? だって……』

     『彼女』が手を私の額の前にかざした。
     視界がだんだん、白く染まっていく。


     ああ、そんな、馬鹿な。
     そんなこと、あるわけない。

     顔も知らない中年男性。
     風の噂で、身元が全く分からなかったと聞いた。

     過去の罪から逃げるために、全てを変えてきた私。
     逃げてきた過去が、とうとう私に牙をむいた。


     『今』と『昔』の景色が混ざる。
     暗い森は薄汚い路地に。
     『彼女』の笑顔は、煌く刃に。
     



    『それじゃあ、「世界」のために、死んできてちょうだい』





     私が最期に見た『彼女』の笑顔は、とびきり優しく、美しく、冷たかった。








    ++++++++++

    激しいイライラ+現実逃避=コレ
    良い子ちゃんな『彼女』ばっかりだったからちょっとアレなの書きたくなった、ただそれだけ。
    あとタイトルは適当。



    【好きにするがいいさ】


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