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青年は困っていた。なぜなら、目の前のパソコンが動かなくなってしまったからだ。
彼はそこまで裕福な暮らしをしていなかった。自分が生活するのに精一杯だった。毎日朝から晩まで働いている
のにも関わらず、家賃と食費、それに光熱費を払えば、毎月ほんの少ししかお金を貯めることができない。当然
、そんな状況では娯楽にお金を浪費することはできない。
そんなときに、大事な物が壊れてしまった。これには頭を抱えるしかない。
パソコンは、彼にとって今や生活必需品だった。様々な人と連絡が取れて、何か調べたいことがあれば簡単に検
索できる。音楽も聴けるし映画も観られる。仕事で使う資料も作ることもできる。全てをこれ一つで済ますこと
ができるのだ。
そんな大事な物が壊れてしまった。余裕のない生活をしている青年に、買いなおすお金は今すぐ用意できない。
と言って、お金が貯まるまでパソコンを利用することができないと考えると辛いものがあった。生活に支障が出
てしまうのは間違いない。
「お金、借りようかな」
青年は呟いた。すると同時に、あるポケモンが彼の頬を叩く。ぱちんと気持ちのいい音が鳴り響いた。彼は、頬
を叩いた張本人の方へ向き直る。
「悪かったよ、ポリゴンZ。そんなことはしない、我慢しますよ」
そうは言ったものの、彼は深いため息をついた。
側にいるポリゴンZは、青年のパートナーだった。物心がついたときはポリゴンだったのだが、公式の道具を使
いポリゴン2に進化した後、所持していた変な道具を勝手に使ってポリゴンZに進化してしまったのだ。他のポ
ケモンに比べれば感情が読み取りにくいし、万人受けしないかもしれないが、彼にとっては大事な家族だった。
それと同時に目付け役でもある。
青年はまだまだ子どもだった。だからポリゴンZも、彼が間違った方向へ行こうとするのを何気なく注意する。
ポリゴンZからしても青年は、大事な家族だからだ。
「でも、やっぱりパソコン使えないのは困るなあ」
再びため息。どんなに落ち込んだってパソコンが直らないのは分かっている。しかし気持ちが沈んでしまう。
明日から何を支えに仕事に励めばよいのだろうか。テレビと映像を再生する機械が壊れているから、観たい映画
も観られない。そういえば、明日までに仕事で必要な書類を作らないといけないことを、今になって思い出す。
手書きの書類だと労力がかかりすぎてしまう。どうしようか。やはり無理にでも購入するべきなのか。今すぐ、
電気屋さんに走るべきなのか。
青年が葛藤しているわきで、ポリゴンZは、使い物にならなくなった電化製品を眺めている。そして何を思った
か、もう動かないパソコンに優しく触れた。
何をする気なのか。青年は黙ってポリゴンZの行動を見つめている。
すると急に、パソコンがギギギと変な音を立てる。青年は思わず体をびくりと震わせた。何をしているのかもよ
く分からず、黙って指をくわえているしかない。ポリゴンZは、ただパソコンに自分の手を当て続けた。
やがて怪しげな音は止んだ。ポリゴンZは、パソコンから離れ、青年の方へ視線を送る。
もしやと思いスイッチを入れる。パソコンは、いつも通りの音を立てて起動した。
「信じられない。すっかり直っている」
青年は喜ばずにはいられなかった。少し弄ってみても、壊れる前と同じ。変わっているところは何もない。完全
に元通りだった。
たまらず彼は、自分のポケモンに抱きついた。
「ありがとう。本当に助かったよ」
ポリゴンZも、青年の愛情に快く甘えている。
でもどうして直ったのだろう。考えてみると、一つ心当たりがあった。
「リサイクルか」
それはポリゴンZが、ポリゴンの頃に覚えていた技だった。リサイクルとは、戦闘中自分が使っていた道具をも
う一度使える状態に戻すという、極めて特殊な技だ。青年はポリゴンZを使ってポケモンバトルはしないので、
珍しい技だからと忘れさせることをしなかったのだが、こんなところで役に立つとは思ってもいなかった。
まさか、自分が所持する道具以外の物も直してしまうなんて。青年は驚愕していた。
そして思いつく。
彼はポリゴンZを離し、物置に向かう。暫くして取り出してきたのは、去年壊れて使えなくなった扇風機だった
。
「ねえ、これも直せる?」
恐る恐る尋ねる。ポリゴンZはためらいなく頷いた。
先程と同じように手を当てる。すると、また鈍い音が響き扇風機が震える。ほこりを羽根が割れた扇風機は、段
々と綺麗になっていく。まるで時間を戻しているかのように、新品に近づいていく。
作業が済むと、ポリゴンZは嬉しそうに青年の胸に飛び込んできた。彼は自分のポケモンの頭を撫でながら、呆
然と扇風機を見つめていた。数年間使い続けてきたというのに傷ひとつない。今日買ってきたと誰かに見せても
疑われないだろう。でも確かにこれは、青年がまだ学生だった頃に購入し、壊してしまったので、捨てずに押し
入れにしまっておいたものだ。
ポリゴンZを抱き上げる。体を観察し、どこか異常がないかを確認したが、体調が悪い訳ではなさそうだ。
「なあ、気分は悪くないか。もしくは、疲れているとか」
この問いに、ポリゴンZは首を傾げた。無理をしている様子もない。
まさか、リスクなしで直せるのではないか。ということは、どんな物も直せるのではないか。
青年は興奮していた。当人であるポリゴンZは何も知らずに、目を見開き放心状態の主人にすり寄っていた。
翌日、青年は会社を休んだ。仮病だったが、今まで真面目に働いてきたので、彼の上司は全く疑問を持たなかっ
た。
向かった先は、ポケモンを研究している施設だった。彼はそこにいる、研究員である自分の兄を尋ねた。兄は、
弟である青年が突然訪問してきたことに驚いていた。
「どうしたお前。仕事が忙しいんじゃなかったのか」
「休みを貰ったんだよ。それより兄さん、ちょっと僕の話を聞いてくれないかな」
青年は、昨晩の出来事を詳しく説明する。
「なるほど。ポリゴンのリサイクルに、そこまで汎用性があったとは」
「しかもね、全くリスクがないみたいなんだ。僕のポリゴンZは全く疲れていないんだよ」
青年の兄は爪を噛んで考えていた。彼の癖である。
そして手を叩いて言う。
「分かった。今から実験してみよう。お前のポリゴンZ、少しだけ借りるぞ」
そう言うと兄は、同じ研究員に何かを話し始めた。ポリゴンZは不安そうに青年を見たが、大丈夫だよと穏やか
な顔で安心させた。
しばらくして青年は兄に呼ばれた。案内された場所は、白い壁で覆われた八畳程の部屋。ひとつの壁には窓があ
り、開ける場所はない。そこから何人もの研究員が無表情で彼らを見つめている。部屋の中には、ごつごつとし
た体を持つポケモンのポリゴン、それに丸くてつるつるとしたポリゴン2がいた。どちらも青年にとっては見覚
えがあるポケモンだった。そして部屋の中心には、古いテレビが三つ。
兄が言う。
「実はポリゴンについては謎が多くて、研究があまりはかどっていないんだ。そろそろ成果を出さないと補助金
も出ない。そこでお前の話をしたら、是非実験をしたいってさ。これから、三種類のポリゴンにそれぞれリサイ
クルをさせよう。もちろん、お前の大切なポリゴンZに危険はない。お願いできるな?」
「うん。分かった」
青年は抱きつくポリゴンZを引き離して言い聞かせる。
「これから、ポリゴン達と一緒にこのテレビを直してくれないかな。一回僕は部屋から出ないといけない。あそ
こからちゃんと見てるから、安心していて」
青年は、この質素な部屋にある唯一の窓を指さしながら言う。ポリゴンZは不安そうに青年を見つめてくるが、
彼はぐっとこらえた。
「これが終わったら、久しぶりにどこかに遊びに行こう。だからお願い」
ポリゴンZは少し悩んでいたが、やがて了承してくれた。
青年と兄が部屋から出ると、早速実験は開始された。リサイクルを覚えたポリゴン達が、テレビを直していく。
それぞれのテレビからはバキバキと生々しい音が鳴る。兄と他の研究員が騒いでいたが、青年は予想していたこ
となので冷静にポケモン達を見つめている。そんな弟の様子を見て、兄もようやく冷静になった。
三つのテレビは完全に直った。これには、実験を見つめていた人間達は驚嘆した。
「信じられないな。本当に直った。三体の疲労状況はどうだ?」兄が言う。
「データを取りましたが、ポリゴンとポリゴン2には疲労が蓄積しています。ですが、彼のポリゴンZだけは疲
労が全くありません」研究員は嬉しそうに返した。
「どうやら、弟の言っていたことは本当だったようだな。これは凄い発見かもしれないぞ」
「役に立てたみたいで嬉しいよ。兄さん、もうあの部屋に戻っていい?」
「ああいいぞ。迎えに行ってやれ」
青年は直ぐに部屋に戻り自分のポケモンを迎えに行く。ポリゴンZは、まるで子どものように青年に近寄りはし
ゃいでいる。そんな様子を眺めながら兄は言う。
「これからはうちの施設でポリゴンZを育てよう。きちんと調べなければいけないな」
「そうですね。きちんと分析してみれば、どんでもない事実が分かるかもしれません」
兄は自分の弟を見守りながらも、既に研究者の表情に戻っていた。
そこからは一大事だった。ポリゴン達のリサイクルで機械や物を修理できるという重大なスクープは、あっとい
う間に世界中に知れ渡った。
その後も兄の施設で詳しく研究は続けられ、詳細が分かってきた。ポリゴンとポリゴン2がリサイクルをすると
、人間と同じように疲れが残る。中にはもうリサイクルをしたくないと意思表示する者もいた。しかしポリゴン
Zは違った。彼らは特殊な進化をしたせいか、どんなにリサイクルをしても疲れは残らない。そして、彼らの体
に後遺症が残ることは一切ない。単純にリサイクルをする行為に飽きることはあっても、やろうと思えば半永久
的に壊れた物を元通りにできることが判明した。
事実が広まった時は、古い電化製品や玩具、道具をゴミ広場から拾ってきて直し、売りさばくという行為に走る
者が後を絶たなかったが、皆が同じことをするので、そのうちそういう新しい物を買おうとする人がいなくなっ
た。ポリゴンZがいて現物さえあれば、誰でも新しい状態で欲しい物を手に入れることができるからだ。
残飯など、食物以外のゴミは減り始めた。捨てる意味がないからだ。例えば鞄が破れても、電化製品が壊れても
、服が破けても、全て元通りになる。
そのせいで、消費と生産のバランスが崩れ始めた。新しい電化製品を作ったとしても、買い直す必要がないから
売れない。流行の服が出ていたとしてもまだ昔の服が着られるので、そのうち買う人が少なくなってきた。昔と
変わらず買われるのは食べ物と使ったら無くなる消耗品、それに娯楽用品ぐらいで、他の商品を作る企業はどん
どん倒産していった。最初は政府がその流れを止めようと、ポリゴンZでリサイクルをするのは禁止する法律を
作ろうとした。だが、同じ物をまた使うのは自然を汚さないし環境を破壊しないので良いことなのではないかと
、国民やよく分からない団体などから総出で反対されてしまい、その法律は作ることができなかった。
良いこともあった。ポリゴン達のお陰で、昔の物、古代文明の石碑や建築物などを修復することに成功した。そ
のため、貴重な世界遺産や遺産を、完成した当時の状態で保存することができるようになった。それにより、歴
史も真実に少しずつ近づいていった。更に、家族の大事な遺品も綺麗に直すことができた。
特に、コレクターにはポリゴンZのリサイクルは好まれた。数十年前の骨董品や玩具が、当時発売日と同じ状態
に戻す人が増えた。中には古いから良いのだと思う人もいて、わざとリサイクルを使わない者もいた。
但し、生き物を蘇らせることだけは不可能だった。誰かが人間の骨から死んだ人をリサイクルしようと試みた者
がいたが、それだけはどうしても成功しなかった。ポリゴンのリサイクルは、あくまで物に限って効果を発揮し
た。
そのうち、一つの家族に一匹ポリゴンZがいるのが当たり前になり始めた。世界中で生存しているポケモンの中
で、ポリゴン達が圧倒的に多くなった。
なぜポリゴン達がそんなことをできるのか、原因を追究しようと多くの研究者が奮闘したが結局原因は判明しな
かった。特にポリゴンZに至っては、無限にリサイクルを行うことができる。ポリゴンZへの進化の要因にもなる
あやしいパッチを解析しても、労力は全て無駄になった。
今までと同じ物を新しく改良しても売れない時代を迎えた。車などの工業製品はもう作っても意味がない。壊れ
てもポリゴンZがいる。そんな時期が数十年、数百年と続き、工業系の会社は姿を消してしまった。
ついには、技術者というものがいなくなった。そのため、人は絵だとか本だとか、誰もが楽しめる娯楽に精を出
し始めた。人間が生み出す芸術は、作る側も見る側も、古い物だけではいずれ飽きられてしまうからだ。何十万
人という雇用者を雇っていた分野の会社が倒産し、一時期に社会に混乱が起きたが、そこで働いていた人達は農
業や漁業、林業などに勤め先を変えた。いつの時代も、生きることに直結する産業は衰退しないのだ。
人間は困らなかった。ポリゴンZさえいてくれれば道具は壊れてもいい。その代わりにポリゴンZを絶滅させない
ように、そしてきちんと増やせるように管理をした。万が一ウイルスが広まったりして彼らが全滅してしまった
ら一大事だからだ。
気づけば、世の中はポリゴンZ中心に動いていた。しかし誰もそのことに疑問を持つことはなかった。
あれから長い月日が流れた。ある場所に温厚そうな少年が住んでいる。
「ポリゴンZ。おいで」
少年に呼ばれたポリゴンZは、はしゃぎながら青年の胸に飛び込んだ。
彼の手には、ひび割れた腕時計が握られている。
「お母さんがうっかり踏んじゃったんだ。気に入っていたのに酷いよね」
腕時計はポリゴンZに手渡される。
「お願い。悪いんだけど、これ直してくれないかな」
当たり前のことをお願いした。この時代に生まれた彼にとって、壊したものはポリゴンZに直して貰うのは常識
なのだ。何も悪いことでない。
ポリゴンZは、いつものようにリサイクルをしょうとした。少年の方も、パキパキと音を立てて直る腕時計を想
像した。
しかし、いつまで経っても時計は壊れたままだった。
少年は首を傾げる。ポリゴンZ本人も、普段何気なくできていることが急にできなくなり慌てている。いくら同
じことを繰り返しても、現状は変わらなかった。
「ねえ、お母さん。腕時計が元に戻らないよ」
「あら、ポリゴンZちゃんに直してもらえばいいでしょう」
「違うんだよ。ポリゴンZが直せなくなっちゃったんだよ」
「そんなことある訳ないでしょう。きっとポリゴンZちゃんは悪戯をしているのよ」
「本当だってば」
独り取り残されたポリゴンZは、付けっ放しのテレビを黙視する。
『―速報です。世界中の化石燃料が枯渇したということです。いつかはなくなると言われていましたが、予定し
ていた年よりもずっと早く、えー五百年程早くなくなってしまったそうです。なぜこんな事態に陥ったのか、そ
れは現在不明ということです。専門家も、こんなことは有り得ないと口を揃えており、詳しい原因はこれから調
べるということです。世界にある燃料が突然枯渇したことで、各国で混乱が起こる可能性が高いということです
。この後、夕方のニュースで、更に詳しくお伝えします―』
――――――――――
何年か前にせこせこ書いた。修正ほぼせず。最後の最後までオチをどうするかで悩み、その結果ありきたりに。
初の薄い本に収録済み。
ポリゴンは悪くない。
> ああ! そのネタ使いたかったのにwww
> 先超されたかwwww
まさかのネタ被りwww ごめんなさい、でも似たようなこと考える方がいてちょっと嬉しいですwww
先越し云々はお気になさらず、ぜひとも書いてください。お願いいたします orz(土下座)
> やっぱこの一節は魅力ありますよねー。
ありますねー。むしろこのインパクトが強すぎて、桜と聞けばこれしか思い浮かびませんでした。
正当な美も妖艶な美も兼ね備える桜、好きです。
読了いただき、ありがとうございました!
※マサポケは良い子も楽しめる小説サイトです。これはそれを壊す可能性があります。
苦手な方はバックプリーズ
「マダム!」
黄昏時の静けさをぶち壊すような音が響いた。バン、とドアを勢いよく開けて一人の女が入ってくる。白い仮面に、長く美しい髪。神が特別に造ったような美形。
巷を騒がせている、怪人ファントム……レディ。彼女の後ろからカゲボウズが五匹続く。いつもより引き連れている数も種類も少ない。デスカーン達は外で待たせている。
黄昏堂の中は入り口から向かって両サイドに商品のサンプルが並べられている。表に出してはならないもの、愚か者が使うと命に関わる物、使い方を誤れば死ぬよりひどい目に遭う物、様々だ。下手に手を出せば、サンプルに化けてズラリと並んだゾロア達のエサとなるだろう。
天井からはどこぞの映画に出てきそうな豪華なシャンデリアがぶら下がり、その下には小さな大理石のテーブル。その後ろに美しく彩色、細工を施されたビロウドのソファがある。黄昏堂の女主人――通称マダム・トワイライトはここでお客を出迎えるのだが……。
「……いないな」
マダムはいなかった。主を失った椅子が寂しい雰囲気を植えつける。レディは肩をすくめると、店内を見渡した。右の方でカゲボウズ達がゾロアと化かし合いをしている。
舌を出すカゲボウズと、彼らの進化系であるジュペッタに化けるゾロア。外野から見れば写真を一枚撮りたくなる光景だが、生憎今はそんな気分にはなれなかった。
・マダム不在の黄昏堂
・執事(兼雑用係)であるゾロアークも不在
この二つを頭の中に入れ、どういう状況なのかを腕を組んで部屋を歩き回りながら考える。推理小説やドラマでよく見る探偵の推理シーンだ。分かっていることを一つ一つ並べていく。
『黄昏堂がきちんと表に出る条件が揃っていること』一般人は巨大な悩みを抱えていない限り見つけることはできないが、常連客は鍵を持たされており、それを持っていれば何処にいても店を見つけることができるのだ。ただし季節によって開いている時間は異なる。冬は早い時間帯に開き、早く閉まってしまう。反対に夏は遅い時間帯に開き、しばらく閉まることはない。
「ゾロア、お前達の横暴極まりないご主人様とその尻に敷かれている執事は何処にいるんだ?マダムが黄昏堂の外に出ていれば、私は店に入るどころか見つけることすらできない。この中にはいるんだろ」
そこでふと、レディは今までのことを思い出した。ここにある商品は全てゾロアが化けたサンプル。本物は盗まれない……素人が扱うことのないように奥の部屋に厳重に保管されているという。彼女が出すパズルを解き、彼女のお眼鏡に適った者に対してだけ、本物を自らの手で持って来る。
(……奥の部屋)
何度も彼女に会っているレディでさえ、奥の部屋への入り口は知らない。いつも黄昏堂に入れば、その椅子で煙管をふかしている彼女が出迎えるからだ。そもそも自ら何かを欲したこともない。いつも欲求してくるのは向こうからだ。それを持って来て見合った商品と交換する――それがレディとマダムの黄昏堂での取引の仕組みだった。
まあそのもらった(押し付けられた)商品で幾度か危機を回避しているのも事実であり。
レディは椅子の後ろの壁の前に立った。何かあるとしたらここだと考えたのだ。右手でノックしようとして――
ふわふわした物体が足に擦り寄ってきたのを感じた。ゾロアだ。何、と聞く前に彼がボムッという音と共に何かに化けた。鏡だ。何の装飾もない、この店に合わない鏡。
「何で鏡に……」
言いかけた彼女の目が、中心に注がれた。金色の文字が浮かび上がっている。
『セント・アイヴスに向かう途中、家族に出会った
一人の旦那の後ろに 妻が五人 その妻一人ひとりの後ろに 子供が十人
子供達の持つ紐に 犬が三匹 犬達の背中に 蚤五匹
さてさて、セント・アイヴスに行くのは何人?』
読み終えた途端、再びボムッという音と共に鏡がゾロアに戻った。呆気に取られるレディを見てケケケケと笑う。馬鹿にされているような気がしたが、もう何も突っ込まない。疲れるからだ。
「この壁に答えを書けばいいのか」
目の前にそびえ立つ、巨大な壁。どれだけの厚みがあるのか。この先に何があるのか。
――そんなことはどうでも良かった。
「さて」
レディが腰に差していた業物・火影を手に取った。鞘から刀を取り出し、壁に向ける。
「刃こぼれしないかね」
一呼吸置いて――
数秒後、壁には縦に一本の裂け目がつけられていた。刀を戻し、呟く。
「遊びにもならない。引っ掛け問題程度のレベルだよ。答えは一人。だって行く途中に会ったんだから。
……次はもっとレベルの高いのを用意しておいてよ、マダム」
壁が消えた。幻術だったらしい。
「さっきゾロアが私を止めなかったら、私はどうなっていたんだろうね」
カゲボウズ達が集まってきた。術が解けた壁に現れたのは、小さなドア。飴色の、木で造られたアンティークを思わせる物だ。
「この先にマダムがいるの?」
ゾロアは何も言わない。黙って器用に首を足で掻いている。まるでチョロネコのようだ、とレディは思わず頬が緩むのを感じた。
「仕方無い。わざわざ呼びつけておいて客を待たせている店主を呼びに行くか」
カゲボウズがケタケタと笑った。
ドアの先は、暗い道が続いていた。何処が道で、何処が壁なのか。その境目すら分からない。だが出口と思われる光が、遥か先に小さくあった。
得体の知れない闇が、髪に身体に纏わり付くあのおしゃべりなカゲボウズ達が何も言わずに後ろにくっついている。
(マダムはこんな場所を通って商品を持って来てるのか……)
今更だが、レディはマダムのことを詳しく知っているわけではない。しばらく前にモルテに紹介されたのだ。彼自身死神とあって、時々危険な目に遭うらしい。それを回避するためにマダムの作る薬が必要不可欠なんだそうだ。
モルテがレディの話をした時、マダムはパズル合戦ができる相手を探していたらしい。それくらいなら、とレディはモルテに連れられて黄昏堂に来ることになった。
そして分かったことは、彼女がズル賢く、マダムという人間の長所と短所を全て持っているということ、そして悪趣味だということだ。
光が大きくなってきた。あと十メートル。九、八、七、六、五、四、三、二、一……
柔らかい感触が足から伝わった。光が頬を照らす。店に入った時と同じ、黄昏時の光だった。手を伸ばし、壁に触れる。
「ここは……」
薄いベージュをメインカラーにした壁だった。一定の間隔で小花模様が刺繍されている。左壁には窓があった。光はそこから入ってきているらしい。本で見たような、中世ヨーロッパの貴族の館のようだった。
あそこのドアがこんな場所に繋がっているのも驚いたが、マダムのこんな場所を造ることが出来る力にも驚く。だが力と言っても様々だ。金か、それとも……
「カゲボウズ?」
五匹のうちの一匹が、とろりと甘い表情になった。そのままフラフラと廊下を移動していく。続いてレディも気付いた。何か甘ったるい匂いがする。遠い昔嗅いだことのある香のような……
吐き気を覚え、口を押える。それぞれ五味を好むカゲボウズの中で反応したのはその一匹だけだった。甘味を好む者。以前虫歯になったことがある。
何かに導かれているような彼を追い、一人と四匹は走り出した。途中で角を何度も曲がる。長い廊下と数え切れないほどの部屋のドアが続く。『PLANET』『STREET』『DANCEHALL』『FOREST』などの名前が、金のプレートに黒の文字でプリントされてそれぞれのドアに張り付いていた。気になったが、開けて調べている暇はなかった。カゲボウズが速いのと、思った以上に構造が複雑で一度見失えば二度とカゲボウズを見つけることも、この空間を出ることも適わない気がした。
不意に、カゲボウズが止まった。慌てて足を止める。残りの四匹が背中にぶつかった。
そこは今まで見てきた部屋のドアとは違うようだった。薄いサーモンピンクに、バラやユリの絵が彫られている。プレートにプリントされた名前は、『DOLL HOUSE』
カゲボウズが涎を垂らさんばかりにドアを見つめている。少々奇妙な感じを覚えながらもレディはドアノブに手をかけようとした。
だが。
バチンッ!
後ろへ下がった。右手がズキズキと痛む。見ればドアに焦げ跡がついている。文字だ。どうやらマダム以外が触れると自動的に仕掛けが出るようになっていたらしい。
「またパズルの類か」
文字は文章になっていた。『入りたかったら、次の問に答えること』と少々馬鹿にしたような言葉で始まっていた。
『子供の前に男が一人、女の後ろに男が二人、男の後ろに男が一人と女が一人、子供の後ろに女が一人。
さて、ここには最低何人の人がいることになるだろう』
なるほど、とレディは痛む手を押さえ、ドアを見つめた。いつだったかこういう問題をパズルの本でやったことがある。少々頭を使う必要がある問題だ。何せ『最小』で答えなくてはならないからだ。頭を整理し、何度か問題文を読んで考える。こういうのは図にすればいくらか分かりやすいだろう。
「子供の前に男が一人。子供の後ろに女が一人。子供の性別も考えれば、すぐに解ける」
わずか五分でレディは答えを出していた。つまり、男二人は同じ方向を向いているが、そのうちの一人は子供。そして子供と背中合わせで女が立っている。そうすれば、『子供』の前に男、女の後ろに『男』と『子供』の『男』、男の後ろに『子供』の『男』、そして子供の後ろに『女』がいることになる。つまり、答えは三人。
また火影を使ってドアに彫ってやろうかと思ったが、さっきと同じ電流が刃に流れたら今度こそ質が悪くなるのではないかと思い、ドアの前で答えを言った。
少しして、カチッという音がした。そっとドアノブに手をかける。もう電流が来ることはなかった。少し開けて、その空気に思わず顔をしかめる。鼻が曲がりそうなくらい、甘い。どうやらこの部屋全体に撒かれているらしい。
「窓が無い」
入って第一声がそれだった。広い部屋だ。壁紙は薄いピンク、床は大理石。ミスマッチな気がしたがマダムの趣味なら世間一般の感性とは違うのかもしれない。個人的には絨毯の方が合う気がしたが……それは置いておこう。
「甘い匂いの正体はこれか」
部屋の真ん中に置いてあるテーブルの上に、紫色の香水瓶が置いてあった。飲もうとするカゲボウズを止め、部屋を見渡す。ソファ、今いる白いテーブルは白木で造られているようだった。香水瓶の他にチョコレートの箱。個別包装と箱の美しさから高級品だということが分かる。
レディは左を見た。天蓋付きのベッド。幼い頃テレビや絵本で見たことがあったが、実物を目の当たりにしたのは初めてだった。白いシーツが皺になっている。
ドアのパズルの元になっていた男女は、壁の絵になっていた。油彩がどっしりとした重みを感じさせる。
カゲボウズのギャッという声で、レディは振り向いた。五匹が何か騒いでいる。天蓋ベッドの上。
「どうした。何かいるの」
彼らは主人であるレディの言葉も聞こえないくらい、パニック状態になっていた。バトルでいえば『こんらん』か。
何を見つけたのか気になって、ベッドに近づいてみる。そして思わず目を丸くした。シーツの影になっていたのと、まさかという思いが二重になっていて見逃していた。
子供だ。何も着ていない少年が、シーツにくるまって眠っている。
「……」
言葉が出てこない。自分がどんな表情をしているのかすら分からない。そこで気付いた。気付きたくなかったことを気付いてしまった。この部屋に付けられた名前。『DOLL HOUSE』……
中世ヨーロッパの貴族の間で流行していたという話を聞いたことがある。今でも法律の影でそういうことが行われていることがあるのも知っている。だが娼婦よりよほどタチが悪い。
「マダム」
その三文字にどんな思いが込められていたのか。言った本人も分からない。とにかくその時一番に考えていたことは、知ってしまった以上、無かったことには出来ないという諦めに近い思いだった。
ベシッ
カゲボウズの後頭部が顔に当たった。地味に痛い。鼻を押えて彼らを見ると、一つに纏まってこちらを見ていた。いつもは何かを嘲るような、一物ありそうな目の色をしているのにその時は違った,驚きと怯えの色が見て取れる。
理由はすぐに分かった。柔らかい何かが背中に当たったからだ。振り向いて、濁ったような茶色と目が合った。
座高……というか視線の高さはこちらの方が上。女かと思うくらいの美形だった。肌は白く、一度も太陽の下へ出たことがないのではないかと思うくらい。髪の毛はこげ茶で、主人の趣味なのか長くされていた。生まれつきの質なのか、柔らかい雰囲気がある。
何とも言えない、微妙な空気になりレディは必死で脳みそを回転させた。とにかく間違って入ってしまったこと、そういう趣味ではないことをどうやって騒ぎを起こさずに相手に分かってもらえるかを考えていた。
とりあえず顔を逸らそうとした彼女の頬を、柔らかい何かが包んだ。甘い香り……この部屋に充満している香水じゃない。自然に近い匂い。だが人間の匂いではなかった。時々泊まるホテルのバスルームにある、石鹸に近い。
顔をこちらに向かされ、再び目が合う。茶色のビー玉がこちらを見る。力が抜けて何も出来ない。相手が子供だからなのと、もっと別の何か……催眠術にでもかかってしまったかのように、身体が脳の命令を聞かなくなっていた。
まさかこんな場所に来てまで、こんな状況に遭遇するとは考えてもいなかった。そのまま首に両腕を回された。それだけ。それ以上、何もしてこない。
五分の二を占める♀のカゲボウズがボーーッとこちらを見ているので思わず額にデコピンをした。
耳に規則正しい感覚で寝息の音が聞こえてくる。起こすわけにもいかず、引き剥がすわけにもいかず、この全体重をかけられた身体をどうすればいいのかを考えて気分が重くなった。
「随分とお楽しみだったようだな」
探し人が見つかった……というか、見つけられたのは三十分後だった。いつものようにフードを被り、長針を黒いドレスに包んでいる。フードからはレディの髪と同じ色の髪が零れている。
「全部見てたのかい」
「よくここまで迷わずに来れたものだ…… そのカゲボウズのおかげか」
マダムがドレスの裾からカラフルな棒付きキャンディーを出した。大きな口を開けてかぶりつくカゲボウズ。
「いくつか聞きたいことがあるんだけど」
「その前に、彼を返してくれ」
「返すもなにも、こいつがひっついて来ただけだ」
何も着ていない体に触れるのは抵抗があったが、カゲボウズに頼むわけにもいかない。腕を外し、ベッドに寝かせてシーツをかけてやる。よく見れば彼のくび元には黒い痣があった。
「引き剥がさなかったあたり、お前もそこまで冷たい性格ではないようだな」
「黙れ。質問に答えて。まず、ここは何処?」
マダムがため息をついた。煙草の苦い匂いが、部屋の甘い香りを消していく。
「おそらくお前は黄昏堂の壁から入ったのだろう。入り口は様々だが、この部屋に一番近いのはそこだ。鍵となるパズルは入ろうとする度に変わる。この部屋の鍵も、だ。
そしてここは黄昏の館。私の家のような物だ」
常に黄昏時を保っているらしい。時間間隔が狂いそうだ。
「もう一つ。彼のことだろう?彼は裏の人身売買オークションで目玉商品になっていたところを、私が買い取った。幼い頃に親に売られたせいか、年上に甘えたがる傾向がある」
「だから初対面の私にあんなことを……」
「いや。ここに来た頃は全く心を開かなかった。来てもう半年以上になるが、話が出来るようになったのは一ヶ月ほど前だ。ゾロア達には懐いているんだが……」
マダムが苦笑した。寒気が背中を走る。
「私に懐かないで、お前に懐くとは。妬けるな」
「ふざけんな。――アンタがズル賢くてでもそれを表に出さなくて悪趣味なのはしばらく前から知ってて、客の立場である以上きちんと把握しているつもりだったんだけどね……まさかここまでとは」
「もっぺん言ってみろこの小娘」
黄昏堂へ戻る際、廊下の窓の景色を見た。川縁に家や施設が並んでいる。水上都市だろうか。
それを見つめるマダムの目が不思議な光を湛えていることに、レディは気付かなかった。
図書館は取り返しました!
けど看板が上書きされちゃったのでこれからちょっと直してきます!!!!
いつものように、サイコソーダの栓を開ける、春の日の午後。
彼が瓶に口をつけようとしたまさにその刹那、それは起こった。
パキ ン。
一瞬の音と同時に、シェノンはアシガタナを顔の前で構えていた。
足元に、サイコソーダの瓶が転がる。彼がそれを見、小さく舌を打ったのが聞こえた。
並みの者が見ていたら、ただこうにしか見えなかっただろう。
しかし彼の赤い目は、目の前を一瞬にして通り過ぎた気配を見逃さなかったのだ。
足元の瓶は、割れていた――否、“切り裂かれていた”。すっぱりと斜めに、真っ二つに切られていた。
「うおりゃああぁぁぁっ!!」
レッセが放出した気合いで、無数の灰色い群れに多少の穴が開く。
が、液体であるかのように蠢き、鳴き声を上げ続けるそれらを退けるにはあまりにも小さな攻撃だった。
「囲まれちゃったわね」
隣のもう一匹のコジョンド――ティラが変身した姿である――が、灰色の群れから目を離さず言う。
「下手すると死ぬよ? 私達」
「皆も、もう死んでたりして。この数じゃね…」
お互いに背中を合わせた彼女らは、言葉と反して楽しむかのような不敵な笑みを浮かべた。
「片っ端から蹴散らすわよ」
二人を中心にして、激しい閃光と爆風が巨大な轟音を伴って発生した。
「……逃げて……」
抱きかかえているサワンの発した、小さな力の無い声をナイトは聞き取った。
草タイプであるにもかかわらず、勇ましく戦った彼女の身体には所々に痛々しい傷が付いている。翼で打たれたり、嘴でつつかれたりした傷だ。ぐったりしていて、とても一人で立てる状態ではない。
「馬鹿だな、お前を置いてくわけないだろ」
ナイトの発した声さえも、灰色の羽音に掻き消されてしまいそうだ。
その羽音の中で、虫の騎士は静寂を求めた。左腕にサワンを抱えた今、右腕にだけ精神を集中させ、そして深く息を吸い込む。
今はとりあえず、安全な場所へ避難する事だけを考えなければならない。そもそも安全な場所というのが存在するのかさえも分からないが。灰色の軍団――“マメパト”にこの空間が支配されてから一体どれ位の時間が経っただろう。
片腕のランスで迫ってくる灰色の生物を振り払いながら、できた道を突進していく。
アポロン、と太陽神の名前を持つ幼いメラルバは、恐怖に怯え震えていた。
彼の母親ナスカが周囲に熱を発生させている為、焼き鳥になるのを恐れてマメパトは近寄れなかったが、辺りを飛び交う灰色の渦は見ているだけで十分恐ろしい物だった。さらに、彼の父親のペンドラー、ファルの居場所も分からない。いつも遊んでくれるアギルダー、カゲマル兄ちゃんの安否も分からなかった。
「おかあ…さん」
「大丈夫よ、心配しないで。みんなきっと無事で居るはずよ」
彼女も本音を言えば、夫のファルと仲間がとても心配だった。ナスカのように、炎で敵を遠ざけられるならまだいい。飛行タイプに対して弱点を持つ彼らは、大丈夫なのだろうか。サワンはあの腕のいい騎士と一緒に居れば、おそらくは大丈夫だろうが……。
どこまでも灰色をした空間は、彼女がずっと居たあの遺跡の古い広間を思い起こさせた。
せっかく本を読みに来たのに、これは一体どういうことなのだろう?
中に入ると、マメパトが図書館を占拠しているではないか。辺り一面灰色で何がなにやら分からない。料理をしているような匂いも漂ってくる。しきりに『マメポケ万歳!!』などと叫んでいるのが聞こえるが……。
「おじさぁん…これ……」
隣のコリンクが、不安げな表情で聞いてくる。大分物分りの良くなってきた彼に、今日も物語を読んでやろうと思ったのだが。
すぐそこに、初めて見るポケモンがいるのに気が付いた。青色の魚のような尾がある。首と顔に白い髭が生えていて、手には薄黄色く長い刀のような物を持っていた。灰色の渦を見つめていた彼は私達に気が付くと急に振り向き、赤い目でこちらを見た。
「おまえ、ちょっと手伝ってくれないか?」
開口一番、そんなことを口にする。
「何をだ」
「この図書館の開放。俺はダイケンキのシェノンっていうんだが、図書館に仲間が閉じ込められちまってな……。おまけにさっき俺が飲もうとしてたサイコソーダの瓶を切り裂いて、“マメパト参上!”とか書かれた紙落としていきやがって」
なんというか、明らかに後者の方にこもった恨みが強かった気がするのは置いておく。
目的が同じなら、一緒に行動して損はないだろう。多分。
「よし、マメパト鳴かしに行くぞ」
「シェノンさぁん、鳴いてるのは元からだと思うー」
「四月馬鹿だぜ、エイプリルフール」
「…………」
彼らの冒険は、今、始まった!!
物語の枠を超えた出会い、ダークライ&ルキにシェノンが繰り広げるマメパトだらけの図書館ファンタジー、連載予定☆
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お久しぶりです銀波オルカです
一応こんくらいの駄作が書ける程度には生きてます
もうなんかシリアスにしようとしたのかギャグっぽくしようとしたのか自分でも分からなくなってしまった
あと私はドラゴンクエストを人生一度もプレイしたことはございません
【好きにしてね】
【半日クオリティ】
うちのボスって、ほんとどうにかならないかと思うよ。
素行に問題があるとか言われて、トレーナー法違反の疑いがあるとか言われてるのに、まだあちこち出歩いて、やめてくださいって言ってるのに。ちょっと出かけてくるよ、すぐ戻るねの一言で一ヶ月ふらふらしやがって……。おかげさまで、ボスのスケジュール帳は予定が組めませんよ。
格好も奇抜だと思います。ハデでしょ、あれ。「ボクの付き人なら、このマントをつけなさい」だったんですよ、初対面の一言が。これからよろしくお願いしますってときに、これを着ろですよ。しかも僕の服のサイズ調べてあってぴったりなんです。担当者がころころ変わる理由が一瞬で理解できましたね。え、マントつけないのかって? 僕は堅実にスーツお仕事しますよ。
そうそう「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」って看板立ってるの、知ってましたか?
いまのボスは、とっても良い方よ。問題があったのは、前のボス。
石と語り合うのが趣味ってひとでね、日がな一日洞窟にこもって石見つめることが多かったんですよ。あなたのボスと同じように、やっぱりよく出歩いてたわ。洞窟にこもっててポケナビも通じないから、連絡とるのが大変だったのよね。大事な予定が入ってるときは、流星の滝あたりから石拾って渡しておくべしって、前担当者からの申し送りがなかったら、私三日で自信喪失したと思う。
ボスは世間じゃナルシストって言われてるけど、それはないわね。あのひとはただ単に、自分が好きなだけ。自分に陶酔してないわ。石には陶酔してるけどもね。いつだったか、チャレンジャーの女の子が持っていた闇の石ストラップに目をつけて、追いかけ回していたことがあったわ。
そうそう「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」って看板が立っているの、知ってましたか?
皆さん、大変ですねぇ。いえね、うちのボスは品行方正、文武両道、才色兼備。文句なんてつけるところ……多少はありますが目をつむれば問題ない方なんですよ。
僕には分からない文字みつめてうっとりなさることありますけど、そんなときのボスの横顔はホントにお美しいんです。僕が整理した書類をあっという間に乱雑にしてしまうこともありますけど、そんなときのボスのあわてようは愛らしいんです。訳の分からない世界に立ち入たりしたらしいんですが、そんなときボスは楽しそうにあったことを話してくれるんです。
ジョウトに行くときだって、前日に書き置きしておいてくれましたし、イッシュへ旅行のときだって三日前には教えてくれました。もっと早く教えろって? なに言ってるんですか、ボスは僕の管理能力を鍛え上げようとしてくれているんですよ。あなたごときに僕のボスのなにが分かるって言うんですか。ボスのために黒コートを買いに行きますよ、ボスのためにヒウンアイスだって買いに行きますよ。
そうそう「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」って看板が立ってて危ない感じがするので、ボスが帰宅するときは物陰に隠れてちゃんと自宅まで送っていくんですよ、知ってましたか?
☆★☆★☆★
他力本願スレから受信した電波が妙な電波だったらしいです。
【書いてみた】
【書いて良いのよ】
【なんでもしてちょーだい】
他力本願すぎることらです!ありがとうございます!エイプリルFOOOOOOOOOOOOOL!!!!!
身代わりの走れメロスと
ものまねの一発芸しか解らなかったYO!
まじめな講座はことらが書けないFOOOOOOOOOOOO!!!
他力本願すぎて誰かが書いてくれれば読めるのに的な酷い有様ふぉおおおおおおおおおおおお
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ありがとうございました。
「黒蜜、お使い頼まれないか?」
だるそうに仰向けになっているゾロアに、長いしっぽの金柑というライチュウが聞いた。
ここは和菓子屋。今日は定休日である。いつも休みの日はどこかへと消えて、商売しているという噂がある金柑だ。
「えー、俺だる……」
「いってくれれば技マシン45メロメロをやるぞ」
「いくいくいく!」
ころっと態度を変えた。金柑は黒蜜に分厚い書類を渡す。
「なんだこれ」
キャバクラ 借金 借金 借金 池月 督促状 キャバクラ もふもふ 池月 キャバクラ 借金 金融
「取り立てて来い。いいか、お前は小さいから、なめられないように怖い顔のおっさんに化けていくんだぞ」
落とさないように背中に書類をくくりつけたら、黒蜜はさっそく言われた住所に出かけていった。
道中出会った最も顔の怖そうなおじさんにイリュージョンしたら、準備は完璧。黒蜜は家の前に立つ。
「じゃあお母さんいってきます!」
飛び出して来たロコンに引かれ、黒蜜のイリュージョンはとけた。そして背中の書類の重さによりひっくり返る。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫」
「お客さん?お母さんは家だよ」
そういってロコンはそのまま出かけていってしまった。残された黒蜜はなんとかひっくり返った亀からいつものゾロアの体勢に戻る。
「はあ……ロコンのくせに」
もう一度イリュージョンしようとしても遅い。すでに目的のポケモンはそこにいる。
「あら、かわいいゾロアねえ。どうしたの?」
キュウコンに話しかけられては化ける暇もなかった。金柑のお使いで来たと言うと、なぜかお邪魔することになってしまったのである。
「え、ええーっと」
「ぼたもち食べるかしら? おだんごもあるわよ」
緑茶とぼたもちを出され、さらに食べ慣れてる団子も出され。借金取りに来たとは言いにくい。
「あの、その、俺はその、借金を返して欲しくて」
「借金?あら、うちの夫が迷惑をおかけしています」
「借用書の住所がここで」
「でも夫はいないのよ。ごめんなさいね」
「あの、それで奥さんに返して欲しいって」
「こんなに大きなお金を借りるなんて、夫を後でしからなきゃダメね」
「いや、その」
「でもいつ帰ってくるか解らないのよ」
黒蜜の言葉を自然とのらりくらりかわすキュウコン。これには何て言ったらいいかわからずタジタジ。
「また夫が帰ってきたらその人に連絡するわね」
そうして、黒蜜は借用書と共に帰ることになっていた。
「な、何をいってるのか」
黒蜜は帰って金柑に全ての事を話す。
「……つまりお前は奥さんのイリュージョンにやられたんだな。うんお前が。イリュージョンのお前がイリュージョンにやられたんだよ」
「ど、どういうことだってば!」
「修行が足りん! そんなんじゃ技マシン45はダメだな」
「え、やだ、俺ほしい、いったんだからくれくれくれよー!」
「だめだ。おとといきやがれ!」
金柑の長いしっぽが黒蜜を吹っ飛ばした。
その頃。
「ふふ、イリュージョン使いの中でもやつは最弱……ちょろいわあ!」
幻想黒狐と書かれた包みとみたらし団子を横に、青いゾロアークがにこにこしていたとかなんとか。
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もふぱらだし、借金取りもゆるゆるだよきっと。
【書いてみた】
【好きにしてください】
こんばんは、ニュースの時間です。今日は4月1日、エイプリルフール。各地で様々な冗談が飛びかいました。そのうちの一部をご紹介します。
「カイナシティのがんばりやさんが本気を出して、薬を1つ490円で売ると聞いてきたんですよ。ところが今日は何の日か忘れてたんだ。うっかりしてたねえ」とは、キンセツシティ在住のAさん。
「『けっきょく ボクが いちばん つよくて すごいんだよね』なんて言ってくる人がいたんですよ。私、今日が何の日か知ってたからこう答えたの。『ほんとうに なると いいね!』って」とは、ミシロタウン出身のHさん。
「チャンピオンロードの中腹で休憩していたら、いきなり辺りが揺れたのよ。何かと思って後ろを見たら、ポケモンリーグの背後にお城が現われてるじゃない! さすがの私もびっくりしちゃったわ」とは、カンナギタウンにお住まいのSさん。
どれもこれも思わず笑っちゃいそうですね。ですが、明日からは控えておきましょう。それでは、ニュースに入ります。
10分で書いた。適当なのは許して。
ポケモン死んだりします。ワンクッション。
大量発生の原因究明はしなくても、ポケモンを逃がすトレーナーは諸悪の根源とか(笑)
ポケモン解放を謳う宗教団体に対しては特に何もしないのに、バトルの強いトレーナーには反発するとか(笑)
あー、後者はあれか。多少の規制っぽいのはしていたけど?廃人に対する風評よりはマシっていうか?
それにしてもメディア素晴らしすぎるワロスwww。
見事に元々はただの過激な少数意見を煽ってあおって膨らまさせていかにも『世論は廃人撲滅運動を推進している』だwwとwwかww。
なんかさ、全体的に馬鹿ばっか。
ニュースのいうこと真実だとさ。新聞に書いてあること正しいってさ。ゴシップ記事こそ疑うっていうのにそこそこまともそうな雑誌に書いてあったからきっとそうなんだとかさ。
そうやって俺達追い詰めて何が楽しいの。世間が無難なことばっかりだから何か憎むべき悪っていう対象を常に祭り上げておかないと気が済まないわけでしょう?
ひゃっはぁぁ!
そしてあっさりそれに流されちゃう国会もどうかしてるよ―。流石、立法行政司法に次ぐ第4の権力マスコミwww。
小さなポケモンを野に放つのはかわいそうとか(笑)
生態系が乱れるとか(笑)
世間様の目を気にしてそれなりにおざなりの事を言う学者とwwかww。
専門家とかいう肩書って便利ですよねー、はいはいワロスワロス。
え?俺?
ごめん廃人とかじゃない。あと別に廃人目指してるとかでもない。
俺はそうだな、特に何を仕事としてるわけじゃないし。強いて言うなら狩人か、適当に食ってやっている。
いやでもさー、ここまで派手に情報がピックアップされてると笑えちゃうわけよ。俺はシンオウの山出身でさ、ポケモン食うのとか皮剥いだりするのが普通だったしさ。
大体、都会の人間とか自分が食ったり使ったりしてる原材料知ろうともしてないんだもんww。
原材料表記規制法?地味な法律の名前でポケモンの名前を極力漢字とかに書き変えてるんだもんねwww。そりゃ知らないかww。
出稼ぎでイッシュとやらに来たんだけども、ここも派手だねww。プラズマ団とか俺吹いたもんww。故郷に宇宙人いたけどこっちにも宇宙人とかww。
とりあえずポケモンはその辺にいた角材運びを蹴ったおしてボールに入れたのでこいつと一緒に森で狩りしてます。
ドッコラ―って得物を持ってるだけあって手際が良いしね。昨日も森に適当に放たれた茶色いウサギを仕留めてくれたし。
適当に皮剥いで肉は美味しく頂きました。皮はしばらくほしておいて良い感じにたまってきたら適当に売りさばいてます。
この間までは廃人がガンガン逃がしてくれてたから食うのに困らなかったのにな―。最近はムカデの毒抜きとかそんなのばっかりなんだよね。
政府の人も早い所撤回してくれねぇかな。っと、そろそろ日が暮れるから帰るわ。じゃ。
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余談 全力でふざけ倒してみた。後半は若干クーウィさん所のパロディです(設定が)
【なにが書きたかったのかもカオス】
【好きにさせていただきました】
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