マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  •   [No.3230] 投稿者:リナ   投稿日:2014/03/02(Sun) 23:53:01     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


     ユズちゃんの父、啓次(けいじ)は養子として杠家に婿入りした。今から十七年も前のことになる。杠という姓はユズちゃんの母、美波子(みなこ)のものである。「銭湯ゆずりは」も、すぐそばにある母屋も、母方の実家が所有しているものだった。
     彼が婿養子として杠家に来たのは、ある理由があった。
    「お母さんとお父さんは昔職場が同じで、お互いに新入社員のときに知り合ったらしいの。二人とも、まだ二十代のとき」
     ベンチの真ん中に座っているユズちゃんの話に、私と美景ちゃんは耳を傾けた。コノは、私たちの頭の上を、いつもと変わらぬ様子で浮遊していた。
     大手の総合化学メーカーの農業関連事業部で、ユズちゃんのお父さんとお母さんは出会った。若かりし頃の二人は、互いに惹かれ合い、ほどなく交際をスタートする。
    「普通に恋愛結婚で、何事もなく入籍ってなるはずだったんだけど、お父さんの家の方に少し問題があって、お母さん側の家族が結婚に反対したの」
    「――問題?」私が左側で、首を傾げる。
    「うん。あの人の家系がね、新世(しんせい)学会だった」
     言葉の並びが、すぐに頭に浮かんでこなかった。
    「――シンセイ?」
     ユズちゃんに“あたらしい”に世界の“せ”だよと説明されたけど、全然ピンとこない。
    「それだと、何かまずいの?」
    「新世学会は、日本の宗教法人の中でも最大規模の組織です」美景ちゃんが代わりに質問を受けてくれた。「もともとは仏教の古い一宗派の使徒団体でしたが、今では進行の内容も変わってきていて、ひとつの政党の支持母体になるほど巨大化してますので、学会員自体はそれほど珍しくありません。しかし、教祖である人物への神格化が過度なのに加え、非常に排他的な性質を帯びてきているため、新世学会には嫌悪感を抱く人が多いです」
     ユズちゃんのお母さん側の家族、つまり「杠家」の人々も、あまり良いイメージを持っていなかった。というより、ほとんど毛嫌いしていたのだという。気味の悪い宗教団体の男のところへ、うちの娘を嫁に出すだなんて考えられない、というわけだ。
    「あの人はそれほど狂信的な人ではなかったから、お母さんと結婚するために新世学会を抜けたの。それってすごく勇気のいる行動みたいで、当時はずいぶん面倒なことになったらしいけど」
     学会を抜けた啓次は、事実上、家族との縁を切ることになった。「脱会」とは、そういうことなのだ。
    「うちの母方の実家にあの人が婿入りしたのは、そういう理由があったんだって。前に、お母さんが教えてくれた。最初はうちのおばあちゃんもおじいちゃんもしぶしぶっていう感じだったみたいだけど、家族と縁を切ってまでお母さんと結婚したお父さんに、最終的には根負けしちゃったんだって」
     啓次と美波子の結婚生活は、式を挙げることもなく、東京の小さな一室で、静かに静かに始まった。まもなく美波子は妊娠したのを機に退職し、同棲していた東京から一人実家の天原に戻った。妊娠中は不便なことも多いだろうから、お父さんたちのいる実家で暮らしていた方がいい。そう言ったのは啓次だったのだという。
     そして一年後、ユズちゃんが生まれる。
    「あの人さ、もうずっと単身赴任なんだよね。一時期転勤で天原から近くの支社になったことがあるけど、そのときも週末に帰ってくるだけだった」
    「え、ずっと?」不思議に思って、私は目を細めた。
    「うん、今もずっと単身赴任」
    「そうだったの? ユズちゃんのお父さん、町内の問屋さんだって聞いたけど。今もずっとその会社なの?」
    「問屋さん? そんなことあたし茉里に言ったことあったっけ? ずっと最初の会社だよ」
     おかしい。杠さんのところのお父さんは、町で問屋さんを営んでいる。お母さんも、お店の手伝いで忙しい。そう聞いた。記憶違いではないはずだ。
     一体、誰から聞いたんだっけ?
    「あ、まあでも――」左側で首を傾げる私の横で、ユズちゃんは腕を組む。「問屋さんみたいなことしてるって言っていいのかなあ。お店に商品を卸しているわけじゃないけど」
    「と、言うと?」美景ちゃんが右側から訊いた。
    「あの人は、農薬を売ってるの」ユズちゃんはちょっと沈んだ声を出した。「自分の会社で作った農薬を、農家相手に営業してるってわけ。数年前から天原もあの人の担当エリアだから、もしかしたら『問屋さん』とか呼んでる人もいるのかもね」
     天原の農業従事者ということなら、まさにうちのことだ。
     天原町農協は、約三十世帯分の組合員で構成されている。全国的にも小規模の農業協同組合だ。我が「津々楽農場」は、その面積こそあまり大きい方ではないけれども、お父さんは農協で専務をしている。組合員の農家の人々の中でも、かなり顔が広いらしい。
     お父さんから聞いた話だったのかもしれない。杠さんのところは「問屋さん」なんだよ。ときどき新製品の農薬を紹介しに来るんだ――という具合で。
    「うちは確か無農薬で野菜育ててたと思うけど、ユズちゃんのお父さんが農薬売りに来たこともあったのかな?」
    「あったと思うよ。でも、買わなくて正解。あの人はとにかく、農薬がたくさん売れて、自分の会社が儲けさえすればいいの。たまにうちに帰って来たと思ったら、『利益率』とか『自然淘汰』とか『市場シェア』とか、仕事の話ばっか」
     私が天原中学校の入学式で見かけた、スーツ姿のユズちゃんのお父さん。あの時は「問屋さん」のイメージとあんまりかけ離れていて、とても不思議に感じていた。でも、ユズちゃんの話す「営業マン」のお父さんなら、あのスーツ姿がぴたりと当てはまる。
    「杠さんのお父様は、銭湯についてどう思っているんでしょう?」
     美景ちゃんが尋ねた。彼女はユズちゃんの話を聞きながら、唇にに手を当てたり腕を組んだりしていた。その仕草が、いちいち大人びて見える。
    「――私も、あの人が考えていることを全部知っているわけじゃない。でも、うちの銭湯のことを煙たがっているのは、事実だと思う。理由ははっきり分からない。けど、たぶんあの人の“性”に合わないの。お客さんをもっと呼び込もうとするわけでもなく、小さな町の銭湯のままで、細々とやっていくことがね。だからあの人は、今の銭湯を乗っ取ろうとしてる。乗っ取った後も銭湯なのか、そうでない何かなのかは知らないけど、とにかく今の『銭湯ゆずりは』ではなくなっちゃう」
     もうずっと前から、ユズちゃんのお父さんは銭湯の経営に口を出したがっていたらしい。こんな常連客に頼るような経営では、これからの時代やっていけない。古い経営方針はできるだけ早く改めて、新規に顧客を開拓していけるよう、きちんとマーケティングしていかなければならない。今のままだと、自然淘汰されるのを待つだけだ。 ユズちゃんのお父さんは、おおよそそんな台詞を並べて、昔一度生前のおじいちゃんに――杠家の主に――噛みついたことがあるという。
     おじいちゃんは眉間にしわを寄せ、一言だけ言い放った。
    「オレぁ銭んために風呂沸かしてんじゃねえ」
     ユズちゃんのお父さんはそれに対して、何も言い返せず、ただただ目を泳がせた。
     おじいちゃんが生きていた頃は、お父さんも大きな声で口出しできなかったらしい。昭和初期に天原に生まれてたおじいちゃんは、脚が悪くて徴兵からは漏れたものの、悲惨な戦中の日本を肌で経験した人だった。耳をかすめるほどの距離で爆音が轟き、爛れた死体が目に焼きつき、真っ暗な防空壕の中で眠る日々を経験をした人だった。
     戦後に生まれた者たちとは、隔絶した価値観を持った人種だった。
     六年前、桜の花も散る晩春の季節に、ユズちゃんのおじいちゃんは亡くなった。「銭湯ゆずりは」は、その頃はもうほとんどおばあちゃんが一人で切り盛りしていたけど、「やっぱり、銭湯を守っていたのはおじいちゃんだった」と、ユズちゃんは語った。実際、ユズちゃんのお父さんが「銭湯の経営」について、積極的におばあちゃんに打診をし始めたのは、おじいちゃんが亡くなったその年の夏頃からだったという。
    「杠さんのお父様の真意を確かめなければなりません」美景ちゃんが言う。「単純に『経営者気質』から、本当に銭湯経営によって利潤追求をしたいのか。もしくは、全く別の理由がある上での、詭弁なのか。それが分からなければ、こちらも具体的に動けません。今の私たちが強引にお父様を止めることは、難しいと思います」
     友達の父親といえども、中学生が一人の大人相手に説得を試みるには、まだまだ心許ない情報量だった。
     もし仮に、ユズちゃんのお父さんが本当に銭湯の経営にテコ入れをして、結果的に今までよりもっとたくさん人が集まるようになれば、それはむしろ、私の望んでいたことではないだろうか。きっと賑やかな浴場を見て、湯の神さまも喜ぶんじゃないだろうか。
     でもそうではなく、口先では「流行らない銭湯の立て直し」謳いながら、本当は何か気に喰わない理由があって、「銭湯ゆずりは」をどうにかしてしまおうとしているのだとしたら? もしそうだとしたら、やはりコノの言う通り、湯の神さまは“ホームレス”になってしまうのだろう。
     ただどちらにせよ、やはり「経営を乗っ取られる」かたちになる。その事実だけで、私はあまり良い予感はしなかった。身内で経営権が移るだけと言われればその通りだ。でもやっぱり引っ掛かるのは、権利を得てしまう人が、実の娘から「あの人」呼ばわりされるような人だということだ。
     ありふれた想像をした。誰もいなくなったあの銭湯に、資材を積んだトラックが横付けさせる。背広姿のユズちゃんのお父さんがてきぱきと指示を出し、業者の人間がぞろぞろと土足で中へ入っていく。
     脱衣籠は鍵付きのロッカーになるかもしれないし、三色の牛乳の入った冷蔵庫はコカ・コーラの自動販売機になるかもしれないし、もろの木さまと湯の神さまが描かれたペンキ絵はあっけなく剥がされて、替わりに海の向こうの神様が置かれるかもしれない。
     そんなふうに変えられてしまったとしたら、ユズちゃんの言う通り、そこはもうあの「銭湯ゆずりは」ではないんだと思う。
    「杠さん。ちなみに、お訊ねしたいのですが」
     美景ちゃんは、いつの間にか膝を抱えて、ベンチに体育座りをしていた。目は、真っ直ぐ前のもろの木さまに向けられている。
    「うん、何?」
    「お父様の勤めている総合化学メーカーって、有知化学(ありともかがく)ですか?」
     美景ちゃんの口にした社名には、うっすらだけど聞き覚えがあった。
    「うん、そうだったと思うよ。知ってるの?」
    「大手で考えれば、ある程度絞られますから。コマーシャルでもよくやってるじゃないですか、アリやハエ用の殺虫剤の。あれも有知化学です」
     夕方の情報番組の合間によく流れているのをよく見る。あの白い髭の博士が出てくるCMだ。害虫に困っている家庭に突然胡散臭い博士が現れて、アリの巣に薬を吹き入れる。すると画面はCGに切り替わって、次々とアリたちがひっくり返る。そんな感じのCMだった。
    「そういえばそうだ。あのCMよく見るよね。あれうちでも使ってる。『アリ退治スプレー』」
     ユズちゃんが霧吹きのトリガーを引く仕草をした。
    「その有知化学が、どうかしたの?」
     美景ちゃんは銅像になったみたいに、相変わらずじっともろの木さまを見ていた。ただ、さっきより眉間にしわが増えている。
    「憶測では私も語れませんが、有知化学にはいくつかよくない繋がりがありますし、あまり褒められたものではない噂もあります。まあ、陰謀論を盲信するのも良いことではありませんけど――」
     私もユズちゃんも、じっと彼女の黒い瞳を見ていた。
    「ただ、もし私の想像していることが本当に起こっているのであれば、天原は思っていたよりもずっと深刻な事態に陥っていることになります」
     彼女の言うことは、私にはさっぱりだった。ユズちゃんとちらりと目を見合わせたけど、私と同じ「意味不明」の顔だった。
    「ちょっとそこまでほのめかしておいて何も言わないつもり? あたしたちにも分かるように説明してよ」
     詰め寄るユズちゃんに、美景ちゃんは首を振る。
    「すみません、確証が持てたらお話します。私だって正直あまり信じたくない。まずは、状況を正しく把握しなければなりません。それに、どちらにせよ『銭湯ゆずりは』が大きく変えられてしまう状況は、防がなければなりません」
     美景ちゃんは、抱えていた脚をほどいて立ち上がった。黒いショートヘアがふわりと揺れるのを、私は見つめていた。ダッフルコートのポケットに手を突っ込み、彼女はこちらを振り返る。
    「たぶん、にわかに信じられるようなことではないですよね。神域である天原が侵されようとしているだとか、もろの木さまの力が弱まってきているだとか。正直、こんな話は怪しまれて当然なんだと思います」
     日が傾いて、道行く人々の東側には長い影が伸びている。ちょうど電車が来たところらしく、二つしかない駅の改札口から、ぱらぱらと人が吐き出されてくる。
    「でも、天原に少しずつ入り込んでいる“毒”は、色んな姿かたちをしています。今までもずっと、私たちの気付かないうちにそれは勢力を増して、より多くの“毒”を生み出し、そしてさらに肥大化してきました。例えば、ですが――」
     美景ちゃんは広場を見渡した。そして、駅の改札のそばのベンチに目を止めた。私とユズちゃんがあの夜張り込みをしたベンチだ。そこには今、黒いダウンジャケットを着た中年の男性が座っている。眠っているのか、腕をぎゅっと組んで、顔を伏せてしまっていた。
    「時間帯的にも、そろそろ集まっていると思います。見えるようにできますか? コノ」
     呼ばれたコノは、くるりと一回転してから「あのおっさん? 結構えげつないと思うよ」と言った。
    「でも、あいつらを見てもらうのが一番分かりやすいでしょう?」
    「そうだけどさあ――じゃあちょっと失礼するよ」
     コノはその長い腕で、私とユズちゃんの頭に軽く触れた。隣りに座っているユズちゃんから「ひゅっ」っと息を飲む音が聞こえた。
     目に飛び込んできた光景に、背筋が凍った。背中に冷水を流し込まれたかと思うほどだった。反射的に、ユズちゃんに身体をすり寄せた。
    「何? あれ何なの?」ユズちゃんが乾いた声を出した。
     それは、ベンチで寝ている男性の周りに、十匹ほど群がっていた。ちょうど大振りのてるてる坊主のような姿をしているが、深い紫色の身体をしていた。その頭には一本の角が生えている。そして、ぎょろりと大きなその目は、遠くからでも分かるほど嬉々としていた。
    「恨霊(こんれい)と呼ばれる、八百万の獣の一種です。少し特殊で、彼らは神に仕えるのを止め、怨嗟の気を喰い漁る、言わば悪霊です」
    「えっ、あの人大丈夫なの?」
     私は口を抑えながら言った。あのおじさん、今にも襲われそうにしか見えなかったのだ。でも、美景ちゃんは落ち着き払って「害はありません」と言い切った。コノはと言えば、すーっとその群れの近くまで行き、戻ってきたかと思うと「思ったほどではなかったかな」と呟いた。大きな当たりに竿を上げてみて、期待はずれの外道にがっかりする釣り人みたいだ。
    「ほんの少しですが、人に付く“毒”を食べてくれるという意味では、彼らはむしろ貢献してくれています。あの男性の境遇は分かりません。でも、恨みや妬みといった負の感情は、おしなべて“空ろ”に巣食います。空っぽとは、同時に「満たそう」という欲求だからです。がらんどうを埋めたいという、利己的な気持ちだからです」
     コノが、もう一度私たちの頭に触れる。恨霊たちが見えなくなる。あの男性は、何事もなかったかのように眠り続けている。
    「私が言っている“毒”とは、人間を“空ろ”にしてしまう。私は、それを何とかしたい。いえ、何とかしなくてはならないんです。策は、まだありません。ただ前に茉里さんにはお話しましたが、木行の気を持つあなたの力は絶対に必要になります。それに、恐らく杠さん。あなたは潜在的には、火行をお持ちです」
    「えっ、私も?」
     目をまんまるにして、ユズちゃんは自分の鼻を指差した。
    「はい。湯の神さまに所縁のある家系のようですので、多少の影響を受けているのではないかと。火行もまた、天原の土地にとって大切な要素でした。大桶で湯を沸かした湯の神さまの力は、火ですから」
    もちろん、潜在的にですので自覚はないと思います。自分の両手を交互に見つめるユズちゃんに、美景ちゃんは少し笑って言う。そしてすぐに色を正した。
    「でも、それを“開いて”力を使うかどうかは、当人が決断することです。そのためには私もコノもお手伝いすることはできますが、ほとんどの人は持っていても気付かずに一生を終えるわけですし、強制することはできません。だから」
     美景ちゃんは頭の上に浮いているコノをちらっと仰いだ。
    「私からは、お願いするしかありません。お二人には、力を貸して欲しい」


      [No.3229] うちの先生 投稿者:WK   投稿日:2014/02/21(Fri) 15:06:09     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     うちの先生の話をしよう。


     先生は、太ってる割にあまり食べない。
     以前昼食を見せてもらったら、木の実数個とパン、それに牛乳だけだった。
     思い出してみると、修学旅行先の食事も他の先生に上げていた。
     誰も気に留めなかったけど、私は気になった。

     不思議なことがある。
     先生は古典を担当しているんだけど、その時に限って、すごく眠くなる。
     お昼が終わった後だからかもしれないけど、それにしても眠い。
     うっかり寝てしまい、友達に起こされることなんてザラだ。
     でも先生は怒らない。

     先生は小説をよく読む。
     面白い話が好きらしい。
     以前授業で、物語を一人ずつ書いた。
     皆面白かったけど、先生は私の話を一番褒めてくれた。
     『とても夢がある話だ』と言ってくれた。
     私は普段から子供っぽいと言われていたので、すごく嬉しかった。

     ……そういえば。
     
     友達は先生の授業、一度も寝たことがないらしい。
     むしろ、私が何で毎回寝てしまうのか不思議だと言っていた。
     先生の授業は面白くて、寝る暇なんてないという。
     私もそう思う。でも、

     あのゆったりした声を聞いていると、

     脳に直接語りかけてくるような声を聞いてると、

     知らぬ間に眠くなって、

     私は寝てしまうのだ。

     そういえば、もうひとつ。
     最近、一度も夢を見てない。
     あれだけ寝ているなら、一度は見てもいいはずなんだけど。

     うちの先生は、スリープみたいだ。
     なんというか、目つきがそれにそっくりなのだ。
     おまけに太ってるし、背は低いし。
     だから皆、陰で彼のことを『スリープ先生』と呼ぶ。
     
     本人も満更じゃなさそうだ。
     だって、

     あのスリープみたいな目を、キュッと細めるから。


      [No.3228] 100文字もどき 投稿者:WK   投稿日:2014/02/21(Fri) 14:48:31     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     東の海で、トリトドンが大量発生したらしい。
     北の海が、南の海みたいになったらしい。
     西の海でも、トリトドンが大量発生したらしい。
     北の海が、赤潮みたいになったらしい。
    (80字)


     ゴーストポケモンが、オーケストラをやりたいらしい。
     何匹かが私に相談してきたんだ。配役を決めてくれって。
     なかなか考えられていたけど、一つだけ忠告しておいた。
     『絶対に合唱はするな』ってさ。
    (93字)

     
     うちのゲンガー、ゲームが大好きなんだ。暇さえあればやってる。
     得意なのはアクションだけど、意外なことにホラーが苦手でね。
     理由を聞いてみたら、人工物のホラーは逆に怖いんだって。
     ……どう回答すればいいんだ。
    (100字)


     私のエネコロロ、光り物が大好きで。散歩ルートにジュエリーショップがあるんだけど、
     いつまでたっても動いてくれないんだ。
     困ってたら店員さんが出て来て、ジュエルキャンディをくれて。
     その帰り道はご満悦だったなあ。
    (102字?)

     
     彼は友達が少ない。少ないというより、作らない。
     理由を聞いたら、踏み潰してしまうかもしれないって。
     だから私は言ったんだ。
    「そう考えられる君は、優しい人なんだね」
     心配しなくても、きっと友達はできるよ。
     (99字)

     
     最近、スリープがよく行き倒れている。
    一匹助けて話を聞いたら、餌がないという。
    木の実はそこらにある。何が食べたいの、と聞いたら腹の音が返ってきた。
    「夢が食べたい。子供達の」
    (84字?)


    伝説の名前をもらったコーヒー。彼らが見たら、どう反応するだろう。
    「見てみたいですね」
    「大きなバケツを用意しないとね」
    「え?」
    「このカップじゃ、味を知るには少なすぎるもの」
    そんな日はいつか来るだろうか。
    (100字)



    ―――――――――――――
    何か書かずにはいられなかった。とりあえずショートショートショートを。


      [No.3227] 文化の差 投稿者:フミん   投稿日:2014/02/19(Wed) 00:40:00     124clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ミミロル】 【批評してもいいのよ】 【シェルダー

    この地方には、昔からミミロルを食す文化がある。
     
    近くの山には野生のミミロルが特に多い。故に、ここに住む人間は、よく野生のミミロルを狩り、様々な方法で調理することが多い。
    青年は、物心ついた時からこの地方で暮らしている。食卓にミミロルの料理が並ぶのは日常茶飯事であったし、夕飯でミミロルを使用したご飯が出ると知った時は小躍りする程喜んだ。ミミロルの料理は、青年の大好物だったのである。
    青年が成長し、都心部へ単身で移り住んだ後も、時々実家へ帰る機会があれば必ずミミロルの料理を求めた。その度に幸せを噛み締め、自分は今最高に幸せなのだと心満たされる程だった。もちろん、都心部でもミミロルの肉を使用した料理を提供する店があるので、彼はよくそこへ通った。しかし、やはり地元で捕れた新鮮な肉を使用した料理の方が味は良い。都会の色に染まり切った青年が故郷との繋がりを維持するもの、それがミミロルの料理だった。

    青年が引っ越して数年経った頃、彼に恋人ができた。会社の先輩だった。
    一緒に仕事をする内に恋愛感情を抱いてしまい、複数回二人で遊びに出かけた後、青年から想いを伝えたところ、相手も好意を持っていたという流れである。彼らは勤め先には上手く隠しつつ、互いの時間を共有する日が増えていく。同じ職場の先輩という壁を青年はあっさりと乗り越え、大切な相手がいる日々を堪能していた。
     
    この恋は上手くいった。数年後、青年は相手に家族になって欲しいと伝え、相手もそれに承諾した。
    青年は、会社の先輩である女を自分の故郷へと連れて行く。青年の転機に彼の両親は喜び、女を温かく迎え入れた。
    母は青年が大好きなミミロルの料理を振る舞った。もちろん青年は喜び、久々の故郷の味を堪能した。
    一方の女は、最初美味しそうにミミロルの料理を口にしていたが、何の肉を使用しているのかを知ると、途端に箸を置いた。それからは、なるべく肉以外の野菜や穀物で食べ腹を満たしていた。

     

    青年の実家を出て都心部へと帰宅すると、女は青年にこう宣言する。

    「私、あなたと結婚するのは嬉しい。あなたと出会って良かったと思っている。でも、一緒に暮らすようになってからは、ミミロルを料理するのは嫌なの」
     
    青年は、予想外の発言にもちろん驚いた。

    「どうして? 別に君が肉を解体する訳じゃないだろう?」

    「それでも嫌、私、ミミロルを調理すること自体嫌なの」

    「母の料理が口に合わなかったのかい?」
     
    とっさに思いつく質問をする。しかし、女はそれをあっさり否定する。

    「私、ミミロルを食べるってことは、とても残酷なことだと思うの」
     
    青年は首を捻る。女は、真顔のまま言う。


    「聞いたけど、あなたの実家の周辺では、よく野生のミミロルを捕まえて食べるんですって? 私達の生活の中でポケモンを食べることはよくあることだけど、わざわざあんなに可愛いポケモンを食用にすることは、私には考えられないの」

    「でも、君はあの料理を美味しそうに食べていたじゃないか」

    「確かに美味しかったわ。でも、それとこれとは話が別よ」
     
    女の声が大きくなる。

    「ミミロルと言えば、男女共に手持ちのポケモンとして人気のポケモンじゃない。あなた、ピカチュウやマリルを食べるなんて想像できる?」

    「それは想像しづらいな」

    「そうでしょう? あなたがミミロルを食べているのは、ピカチュウを食べるのと同じことなのよ。聞いただけであまり気分が良くないでしょう?」
     
    確かに、ミミロルは美味しいだがピカチュウが美味しそうに見えるかと聞かれればそうではない。当たり前だが食欲もわいてこない。

    「できれば今後あなたにミミロルを食べないで欲しいけど、そこまでは求めないわ。でも、家庭の料理には持ち込まないで欲しい」
     
    青年は理不尽と思いながらも考える。
    誰にでも好みというものはある。例えばの話、世間にはどうしてもトマトを食べられない人もいれば、この世で一番好きな食べ物は何かと聞かれればトマトと即答する者もいるのだ。食べ物の好き嫌いを無理に変えることは、とても難しいことである。
    女の言っていることは不条理だった。しかし、これ程否定してくるということは、彼女は本当にミミロルを食べたくはないのだろう。今後一切、自分にミミロルを食べるなと圧迫してこない辺り、かなり妥協したのかもしれない。青年はそう結論づけた。
    何よりも青年は、一生を添い遂げようと決めた相手と、こんな些細なことで喧嘩をしたくはなかった。元々自分でミミロルの料理を作ることはほぼなかったので、自宅であの味を堪能できないことは些細な問題ではなかった。


    「分かった。少なくとも、君にミミロルを調理させることはないよ」

    「ありがとう。後、我が儘を言ってごめんね」

    「そんなことないさ。知らないうちに君に不快な思いをさせないで良かったよ」
     
    二人は、ぶつかった壁をあっさりと乗り越えることに成功した。

     




    後日青年は、女の実家へと訪れていた。
    女の両親に挨拶を済ませ、仲睦まじく会話を重ね、青年はまた一つのハードルを乗り越えたところだった。
    その日の夕方、青年は夕飯をご馳走されることになった。


    「君は、貝は好きかね?」
     
    脂肪を蓄えた体の大きな女の父親は、青年にそう質問する。

    「はい」
     
    青年は、さわやかな笑顔で返答した。

    「それは良かった。今日は君が来るということだから、地元で有名な食材を用意しておいたんだよ」

    「そうなのですか。わざわざありがとうございます」
     
    しわを作り笑う女の父に、青年は軽く頭を下げる。青年の隣に座る女は、上機嫌な様子で囁く。

    「私が頼んでおいたの。お母さんが作る貝の料理、本当に美味しいのよ。きっと気に入るわ」
     
    彼は、将来の妻の気遣いに感激しつつ、振る舞われる料理を想像する。
    青年は普段動物の肉を好んで食べる。女はもちろんそのことを知っている。それを分かっていて、あえて魚介類を勧めてきたのだ。地元でしか食べられないのもあるだろうが、女の台詞からも、青年が満足するだろうという自信がうかがえた。
    期待に胸を膨らませて待っていると、ついにその料理が目の前の机に並んでいく。
    大きな皿が複数並べられる。貝の揚げ物、貝の刺身、貝の煮つけ。どれも貝を中心にした一品ばかりである。


    「さあ、召し上がれ」
     
    これらを用意した女の母は、青年に笑顔を向ける。彼は、まるで料亭に並んでいるように綺麗に盛り付けられたおかずに箸を伸ばしていく。
    口に入れ、ゆっくりと味わってみれば、確かに女の言う通りどれも美味しいものばかりだった。ついつい、料理を口に運んでしまう。女の父の遠慮はするなという気遣いに甘え、青年は口数が少ないまま腹を満たしていく。

    「とても美味しいのですね。これは何の貝なのでしょうか?」
     
    お腹がいっぱいになりかけた頃、青年は、何気なく女の家族にそう尋ねた。

    「シェルダーだよ。意外に美味しいだろう?」
     
    ここで漸く、青年の手が止まる。

    「シェルダーですか?」
     
    シェルダー。2枚がいポケモン。そう、れっきとしたポケモンである。
    彼は戸惑いを隠せなかった。というのも、彼女は、青年がミミロルを食べることを酷く嫌悪していたからである。故に彼は、女は一切食用のポケモンを食べない主義と勘違いしていたのだった。
    青年は目を見開いて女を見る。そんな将来の夫を、女は笑顔で見返した。

    「美味しいでしょう?」
     
    純粋な笑顔だった。

    「とても美味しいよ。驚いた」
     
    自らの意思とは、真逆の言葉がこぼれてくる。

    「君は、昔からシェルダーを食べているのかい?」

    「そうよ。私の地元では有名な名産だもの。自然と好きになったわ」

    「私の知り合いに漁業関係者がいてね。毎年時期になると、シェルダーを譲って貰うのよ」
     
    女の母が横から呟く。青年はそれを殆ど聞き流していた。
    彼が戸惑っていると、突然部屋の襖が開く。部屋中の人間の目がそちらに向く。
    入ってきたのは、うざきポケモンのミミロル。

    「ミミちゃん。久しぶりね」
     
    女が手招きをすると、そのミミロルはすぐさま女の膝に飛び込んだ。嬉しそうに目を細め、喉を鳴らしている。

    「そのポケモンは?」
     
    青年が質問する。

    「ミミロルのミミちゃんよ。昔、家に迷い込んで来て、そのまま居ついちゃったの。今では大切な家族よ」

    「確かもう、十年以上前になるな」
     
    女の父が懐かしそうに呟いた。
    青年は思い出す。随分前に実家の方へ残してきたポケモンがいると女が話していたことを。その時に彼女は、進化前のポケモンが好きだからと、かわらずのいしを持たせていると語っていたのだった。
    ミミちゃんと呼ばれるミミロルが、青年を認識し凝視する。青年は、野生ではなく、人間に飼われているミミロルを観察する。ミミちゃんは、女の膝から離れると、青年の膝の上に乗り寛ぎ始めた。

    「珍しいわね。ミミちゃんが家族以外に近づくなんてあまりないことだけど」
     
    女は驚き、そして嬉しそうに言う。

    「流石は娘が認めた男だな」

    「本当ね」
     
    女の両親も、同様に微笑んでいる。
    青年は、自分に擦り寄るミミロルを、食用ではないミミロルを撫でながら、目の前に出されたシェルダーを口にしていた。複雑な心境だったが、それでも彼は、とても満足しながら料理を堪能していた。



    ――――――――――

    うさぎを食べた経験がないので、いつか食べてみたいと思う時はあります。


      [No.2288] ディスプレイボード1 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 17:29:47     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    ディスプレイボード1 (画像サイズ: 1200×850 283kB)

    掲載作品決定の流れとかです。


      [No.2287] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:風間深織   投稿日:2012/03/11(Sun) 16:07:12     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    予算の見直しをしていただいたそうで、どうやら私も打ち上げに行けそうです。
    今月のマステは我慢します……
    春コミではお手伝いをさせていただきますので、よろしくお願いします!
    めいみちゃんの遺影持っていきますね!


      [No.2286] 【お知らせ】場所/予算の再掲 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 15:51:04     99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    記事を掲載して一週間+αが経過しました。
    イベントの開催当日まで一週間となりましたので、少々気が早いですが


    3/13(火) 21:00


    上記の時間までに参加表明をなされた方でメンバーを確定したいと思います。
    まだ参加表明をされていない方は、お早目の返信をお願いいたします。


    -----------------------------ここまで前回のお知らせ-----------------------------


    鳩さんからアドバイスをもらい、予算関連の見直しを行いました(鳩さん、ありがとうございます)。
    以下のような形で行こうと思います。


    1.中学生・高校生・浪人生・今年まで高校生だった(=4月から大学生になる)人
      → \2,000
    2.大学生
      → \3,000
    3.社会人
      → \4,000


    前回は参加のハードルが高すぎたので、構成を考え直してみました。
    少しでも気軽にご参加いただければ、と思います。

    場所は以下の通りです。こちらは変更ナシです。


    お祭り御殿 新橋店
    http://r.tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13131629/


    大体17:30〜18:00頃に開始したいと考えています。ご意見などありましたら、お気軽にお寄せください。

    以上、よろしくお願いいたします(´ω`)


      [No.2285] ベスト大賞作品 感想・キャッチコピー募集【3/11いっぱいまで】 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 03:13:25     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ポケスコ大賞作品の感想を募集します。

    ・140文字以内でまとめてください。
    ・いい感じのものは即売会展示の作品紹介に採用します。
    ・ポケスコ参加者かどうかは問いません。


    対象作品:

    フレアドライブ
    こちら側の半生
    赤い月


    よろしくお願い致します。


      [No.2284] 追記 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 01:53:16     95clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    予算は見直します。
    しばし待たれよ。


      [No.2283] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 01:43:08     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


     スカイプで参加表明するように言われたので。

     いきます。
     しばらく東京ともお別れです
     めいっぱい都会の空気を吸い込みながら
     吐き出し
     ゆっくりと天を仰ぎ
     フランス語でアンノーンを説得します

     うそです

     行くのはうそじゃないのでよろしくお願いします


      [No.2282] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:西条流月(代理タブンネ)   投稿日:2012/03/10(Sat) 22:54:33     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



    きとらさんが諸事情あってPCが使えないようなので、代理として書き込みました
    きとらさんもさんかするらしいので、名簿に加えておいてください。


      [No.2281] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/03/10(Sat) 21:13:36     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    記事を掲載して一週間+αが経過しました。
    イベントの開催当日まで一週間となりましたので、少々気が早いですが


    3/13(火) 21:00


    上記の時間までに参加表明をなされた方でメンバーを確定したいと思います。
    まだ参加表明をされていない方は、お早目の返信をお願いいたします。


    ※場所は検討中です


      [No.2280] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/03/10(Sat) 21:12:44     106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ホテル取れました。
    何とか行きたいと思います。


      [No.2279] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:渡邉健太   投稿日:2012/03/10(Sat) 20:43:14     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    じゃ、フランス留学経験のある俺が勉強を見てあげるという名目で。

    たぶん、行けると思う。


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