ピピピピ……ピピピピ……カチッ!
私は目覚まし時計を止めると、ガバッと起き上がった。
「ついに、この日が来た……!」
ーーポケモンと、旅に出られる日が!
一週間前、私は幼なじみのレオンと共に町外れのシンジ湖へと行き、そこで初めてのポケモンバトルを体験した。
私の助言を聞かずに草むらへと入ったレオンを追いかけ、鳥ポケモンと遭遇したっていう……。
慌てて逃げようとして、そこにあった誰かのカバンに躓いて転ぶとか、恥ずかしすぎる。
でもその拍子にカバンから出てきた2つのモンスターボールの中のポケモンで、私達はなんとか鳥ポケモンを倒せた。 私は青いポケモンを、レオンは緑のポケモンを使って。
それからフタバに帰る途中に、私達の使ったポケモンの持ち主……ナナカマド博士に、そのポケモンを託された。
嬉しかった。 ポケモンと旅に出られることになったから。
その事をジョウトに住んでるいとこに話したら、ポケモンをプレゼントしてくれるって言われた。 私はいいと言ったんだけどいとこの……ヒバナさんはどうしてもプレゼントすると言いはった。 まったく頑固なんだから。
それで一週間後にシンオウに行くと言ってたから、旅立ちはその日……つまり、今日に決まった。
私は服を着替えて、一階へと降りる。 この家ともしばらくお別れか……少し寂しい。
「あらシュカ。 おはよう」
「おはよーお母さん。 ヒバナさん、今日いつ来るって?」
「9時には来るって言ってたわよ」
私は時計を見た。 今は7時……ってことはあと2時間か。
「さあ、朝ご飯にしましょう! 今日からしばらく会えないから、シュカの好きな物、たくさん作ったわよ!」
「わあ、ありがとう! いただきまーす」
朝食を食べ終えた私は、荷物を確認した。 財布に、きずぐすりをいくつか。 それから相棒が入ったモンスターボールを腰のベルトに付けた。 ポッチャマというらしいこのポケモンを、私はうみなと名付けた。
ピンポーン……
あ、チャイム。 ヒバナさんが来たのかな。 私は急いで一階に降りて、ドアを開ける。
「やっほーシュカ久しぶり! 元気だった?」
「……」
あれ、ヒバナさんの隣に知らないトレーナーさんが。 誰だろう……?
「あ、この子はエンジュ! 私のトレーナー仲間なの♪」
「ヒバナ、なんで私までシンオウに来なきゃなんないのよ。 あなたがシュカ? 私はエンジュ。 よろしく」
「よ……よろしくお願いします」
私はエンジュさんに向かって軽く頭を下げた。 なんか気難しそうな人だな……
それから私達はテーブルに座って、軽く話をした。 なんでもエンジュさんはホウエン地方のトレーナーらしく、ヒバナさんに頼まれて私にプレゼントしてくれるポケモンを捕まえてくれたらしい。 って、ことは……?
「はい、これ♪」
ヒバナさんが差し出したのは、2つのハイパーボール。
「え、2体も……ですか?」
「うん、そう!」
「いや、そんなに貰う訳には……」
「せっかく捕まえたんだから! はい♪」
そう言ってヒバナさんは私の手にボールを押し付けた。
「右のボールがロコンのひばな! 左のボールがマイナンのらいむだよ!」
そう言われたので見てみると、可愛い顔をして眠っている小さな狐と、ニコニコと笑ってる青い耳の兎がいた。
「わあ……可愛い! ありがとうございます!」
「どーいたしまして! じゃあ私はそろそろ行かなきゃ! エンジュ、あとよろしく!」
そう言ってヒバナさんは家を飛び出していった。
「え、もう行くんですかっ!?」
「ヒバナ、ウツギ博士から電話が来て、すぐ帰らないといけなくなったんだって。 私ももう帰るわね……」
エンジュさんがため息をつきながら立ち上がった。
「あ、あの!」
私はヒバナさんに深くお辞儀した。
「ありがとうございました!」
「……楽しんでね」
エンジュさんはそう呟き、帰っていった。
私はお母さんに見送られて、フタバタウンを出発した。 腰には3つのボールが揺れている。
これからどんなことが起こるんだろう……私の胸は喜びと期待に満ち溢れていた。
[好きにしてください]