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  [No.2746] そらをとばない 投稿者:ねここ   《URL》   投稿日:2012/11/27(Tue) 16:07:19   140clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:そらをとばない】 【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【飛んでもいいのよ


 ざわざわとした空気。席を立つ生徒もいれば、そのまま友人とおしゃべりを続ける者もいる。俺は特に残ってすることもなかったため、前者をとることにした。机の横に掛けたバッグに手を伸ばし、教室を出てまっすぐ昇降口へ向かう。教室を出るとき、友達に声をかけられたが、適当な笑顔でスルーした。
 今日の最終下校はいつもより2時間早い、4時だ。そのせいか、昇降口とは逆方向にある中庭へ向かう人が群れをなしていて、歩きづらい。ひとり逆行する廊下の窓からちらりと中庭を覗くと、予想通りたくさんの生徒、そしてさまざまな種族のひこうポケモンが見えた。
 なぜか。それは、この学校では「そらをとぶ」で帰宅したい生徒は中庭でのみその技を使ってもよい、からだ。
 とはいっても、俺は毎日歩いて登下校をしている。ひこうポケモンがいないわけじゃない。でも、急ぐ理由もないし、家までの距離も大してない。まだ生まれて数日のガーディをボールから出すと、俺の足元で一声吠えて自慢気に歩き出した。一応散歩も含めての、徒歩通学なのだ。俺はこれでいいと思っているし、それはこれからも変わらないだろう。
 でも、この大通りだって、この前まではたくさんの生徒が歩いていたのに。「そらをとぶ」が許されてからは、まるで人の姿がなくなった。微妙な心持ちだ。並んだプランターにさえ、興味津々なガーディを軽く撫でて、また歩く。
 空は青く、飛ぶポケモンがよく映える。空からの景色もきれいだが、下から見る彼らの姿だってそうだ。そんな刹那に目もくれずに駆けていくガーディを追って行くと、いつもの公園へたどり着いた。マダツボミやらクヌギダマやらが生息する、俺たちの休憩場。だが、そこにはいつもとは違う風景が――俺と同じ制服を着た女子がベンチに座っていた。手持ちだろうか、フワンテが女子の周りをゆらゆらと飛んでいる。

「おい、ガーディ!」

 あっと気付いたときにはもう遅かった。あろうことかガーディは、すべり台や大好きなシーソーさえもをすり抜け、その見知らぬ女子の腕に飛び込んだのだ。慌てて駆け寄るも、ガーディは女子の膝上で、ちぎれんばかりに尻尾を振っている。そんなことをしても彼女の防御は下がらないぞ、なんて思いながら無理矢理引き剥がす。それでもガーディは嬉しそうに尻尾を揺らしているものだから、俺は思わずため息をついた。

「……ごめん」
「ううん。かわいいガーディだね」

 てっきり文句を言われると思っていた俺は、予想外の笑顔に驚きつつも安堵した。いきなりこんな泥まみれのガーディにくっつかれたら、俺だって文句を言うかもしれない。幸いにも泥はかわいていて、彼女の制服を汚すことはなかったが。するとフワンテがふよふよと近づいてきて、俺の頭に着陸した。息でも整えているのだろうか。見た目に似合わず結構重たいフワンテは、立ち上がり彼女が咎めようとした瞬間にまたふわりと浮いて空をぷかぷか游ぎだした。ガーディはその様子に興味を持ったらしく、俺の腕から抜け出てフワンテを追いかけ始めた。明らかにフワンテが優勢なかけっこだが。

「……フワンテ、初めて見た」
「珍しいよね。シンオウの親戚からもらったんだ」
「へえ。いいな」
「かわいいけど、少し目を離すとどっか行っちゃうから困る」
「あ、ガーディも同じ」
「だよねー。でもフワライドになれば、落ち着くのかなあ」
「……ガーディは進化しても落ち着かなそうだな」
「フワンテも」

 お互いの視線の先は、二匹のポケモンの戯れ合い。
 彼女とは制服が同じなだけで、別に知り合いでも何でもない。今知り合ったばかり。知り合ったといっても、名前も何も知らない。顔だって、覚えていられるのか不安。でも、なんだかこのまま別れてさようならというのは嫌だ。でも、俺みたいなのに名前を聞かれても、いや、それでも。これじゃ堂々巡りだ。彼女はひとり悶々と思考を巡らす俺に気づくはずもなく、何やらバッグをがさごそとかき回している。
 追い掛け疲れたガーディが、水飲み場から俺を呼んだ。すると、ガーディの頭上で浮いていたフワンテが俺の代わりにと思ったのか、器用にもその細い腕で蛇口を捻った。ガーディは流れ落ちて来る透明な水を浴び、ぶるりと身体の水滴を落としたところでフワンテが蛇口を閉める。ありがとう、と言えば、フワンテは嬉しそうに俺の周りを飛び回ってくれた。それを追うガーディにとっしんされたが。

「ガーディかわいいから、ついかまいたくなるんだよ」
「そうか?」
「うん。あとさ――きみは「そらをとぶ」で帰らないの?」
「……こいつの散歩したいし」
「わたしも、フワンテの散歩を兼ねて徒歩なんだ」

 ふと、ポケモンは主に似るというのを思い出した。彼女はしっかりもので、フワンテもしっかりもの。ガーディも俺も情けない。内心でため息をついて、肩を落とした。すると彼女が笑って、俺にお菓子を差し出した。

「ねえ、今度から一緒に帰らない?」

 あれ。だめじゃ、ないかも。





こんにちは、ねここです。
フワンテもかわいいです。メタモンと同じくらいかわいい。
わたしはそらをとぶで帰宅したいです、ええ。
初めてURLとタグのところに入力を致しました。緊張です、はい。おろおろです。


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