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  [No.2845] 追加批評 投稿者:利根川 泰造   投稿日:2013/01/12(Sat) 04:20:52   79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 まずは、主催・進行様、作者様、参加者様方、みなさまおつかれさまでした。

 今回批評会に参加させていただきましたが、結構言おうと思ってたけど言えなかったことだとかがありまして、その分を『追加批評』として掲載させていただきます。


 この作品、かなり面白かったです。どストライクでした。
 実のところ、そもそも僕は批評会に参加する予定はなく、企画を知った段階で「まあ、傍観するくらいにしとこうかなあ」という気持ちでした。正直「誰、コイツ?」みたいな空気になって黙殺とかされたら立ち直れないので(結局は、そんなことは全くなかったのですが)。
 とまあ、そんな気持ちの僕が作品を読んだところ、これがめちゃくちゃ面白い。これはもう参加せにゃならんだろうと大きく心変わり。
 それくらい、本当に面白かったのです。結構ポケモン小説は読んできたのですが、その中でも五本の指に入るくらい。

 なにが面白かったって、とにもかくにも『地の文』です。
 本当に、地の文だけでかなり楽しめました。この感想は批評会でも出したのですが、地の文だけでこれほどまでに楽しめた作品というのは一般文芸、ポケモン二次創作小説のどちらにしてもなかなかありません(*1)。
 この作品は、主人公の一人称視点で描かれているわけですが、その主人公がとても魅力的。
 乱暴な口調の割に妙に詩的で、独特な角度から世界を見ているんですよね。それは当然その特殊な生い立ち、身体的特徴によるものなんですが、そこに全く違和感がない。つまり、生い立ちと思考回路の結びつきに関して、それがあまりにもスムーズなのです。これに関してはもう見事というほかなく、舌を巻いてしまいました。
 生い立ちと思考回路の結びつきがここまで完璧だと、この作品が一人称視点で語られる作品である以上、地の文にかなりの『説得力』が生まれるわけです。ユーモラスで、一見ライトとも取れる主人公の思考回路が、「*5*」「*6*」あたりで主人公のバックボーンが提示しはじめられたことで、主人公なりのシリアスな思考回路なのだと読者は自然に察することができます。この「*5*」「*6*」の部分は、クライマックスに向けて書いてあるのではなく、クライマックスに向かう道筋に向けて書いてあるんですよね。だから、この部分によってかなり作品の厚みが増してるんですよ。こういった部分を書けない作者っていうのは結構多くて、その点この作品の作者さんはちゃんと書いてんだなあと感心しました。

 褒め称えるのもこのへんにして、結構気になるところはありました。
 ひとつに、終盤の印象の薄さ。結局のところ、作品が一番盛り上がったのは「*11*」になるわけですが、その後の「*12*」になってくるとちょっとダレますね。読者が大体予想できてたような事実が明かされる展開で、そこでちょっと飽きを感じてしまいます。その後の愛の告白(でいいのかな?)のシーンも特にインパクトを感じず、むしろそれまで完璧にとれていた整合性がラストの百合で微妙に崩れてしまったかなと。正直「何で無理やり百合に持っていくんだよ!!」という感じでした。というか、地の文が極端に面白いがために、ストーリー全体の印象が薄くなっているような気はしましたね。
 あと、些細なことなのかもしれませんが、世界観を掴みかねるようなところもありました。普通にポケモン世界の話なのかなと思いつつ読んでいたら、筒井康隆とか3DSとか出てきて「あれ? 人間世界なの?」と混乱してしまいました。結局、よく分からなかったので筒井康隆と3DSの存在するポケモン世界なのだということで無理やり納得しました。

 と、まあ追加批評はこれくらいです。
 僭越ながら批評文を書かせて頂いて、自分の語彙力、文章力のなさを実感しました。もういっそこの批評文を批評していただきたいくらいです。
 では、お読みくださった方、本当にありがとうございました。

(*1) 具体名を出しちゃうと、一般文芸で町田康の『きれぎれ』くらいですね。方向性は全然違うのですが、地の文だけで楽しめるレベルのもの、という意味で(もちろん、ストーリーも面白いのですよ。)。
 あと、方向性の近い作品では綿矢りさ『蹴りたい背中』とかですかね。こちらも傑作です。


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