注・人によっては不愉快な茶化しネタ・くだらない思いつきが含まれます。
「あーもー、まただよまたー!」
特に目立ったところのない、モブという感じの特徴のない男が、建物の前で何やら叫んでいた。声を聞きつけ
た、物語の冒頭でかがくのちからってすげー! とか言ってそうな太った男が、モブっぽい男のところにドタド
タと走り寄って来る。
「いったいぜんたい、どうしたんだい」
「ああちょうどいい、マクノシタがきた。かいりきでこいつをどかしてくれよ」
「誰がマクノシタだこの野郎。てかこいつって?」
「こいつだよこいつ」
モブっぽい男が示した先には、一人の赤い帽子を被った少年が、フレンドリィショップの入り口を塞ぐ形で立
っている。
妙なことにこの少年、風が吹いても髪を揺らすこともなければ、瞬きすらしないのだ。まるで氷漬けにされた
ポケモンみたいに固まって、全く動かない。
「どうしちゃったんだこの少年。どっか具合でも悪いのか?」
「違うよ違う、『セーブ』して冒険終了中なんだよ。まったくもー、こっちは店の中に用があるってのに」
「あーなるほどプレイヤーさんかあ。まあしょうがねーべ、お母さんに『ゲームしてないで宿題しなさい!』っ
て怒られて、慌ててセーブしてやめたのかもわからんし」
「それもそうだな。おいマクノシタ、悪いけどこいつをかいりきで押すの手伝ってくれないか」
「だーかーら、だーれがマクノシタだっつーの」
言いながらも、太った男はモブっぽい男が少年を押すのを手伝ってやる。ちょうど一マス分くらい動かすと、
モブっぽい男は「ふう助かった!」と言って、店の中に入っていった。
しばらくして買い物を終えたモブっぽい男がドアから出てきて、ありがとう、たすかったよと太った男にジュ
ースを差し出す。
「さて、一息ついたところで悪いが、こいつを元の位置に戻すのを手伝ってくれないか?」
「え? だってこのままにしておいたほうが通るのに便利だろうに」
「よく考えてみろ。プレイヤーが冒険を再会したら、一マスだけ位置がズレてました、なんて動く日本人形みた
いで気持ち悪いじゃないか。小さい子だったら軽いトラウマになるし、ゲー●リの信用にも関わる。なぞのばし
ょやけつばんどころの騒ぎじゃないぞ」
「それもそうだな」
太った男は納得して、モブっぽい男と一緒に動かない少年を元の位置に戻した。軽い運動で汗をかいてしまっ
た太った男は、ふうと汗を拭いながらジュースをあおる。
「いやしっかし、どこでもセーブできるってのもアレだな、こっちには迷惑だな。他のゲームみたいに教会や魔
法陣、フィールド画面、後宿屋かどっかでだけセーブしてくれればいいのに」
「何言ってんだ。『どこでもセーブ、どこでも再開!』それがポケモンのいいところじゃないか」