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【フシギバナから生まれた子】
ある夫婦は子に恵まれずに悩んでいた。
地元の産婆に相談すると、夫婦で花を育てなさいと言う。毎日の水の代わりに交互に二人の血をかけて育て、花が開いたらその花粉をフシギバナのメスの花に受粉させなさい、と。二人は言われた通りに花を育て、フシギバナに受粉させた。
するとフシギバナの花が閉じ、幾月かののちに再び開いた。中には人間の赤ん坊がいて鳴き声を上げた。その瞳はフシギダネのように赤く、二の腕にもフシギダネの模様に似たアザがあったという。その子供は植物と会話する事が出来た。故に農作業を手伝うようになってからは村一帯に豊作をもたらした。
これは私のおじいさんから聞いた百年くらい前の話である。
【吸血樹】
森でコノハナに出会った。人語を操るコノハナだった。
「私が人間だった頃は半兵衛という名前だった。私は燈火ヶ原で討ち死にした。私が力尽きた処には一本の樫の木が生えていた。私の血を吸って樫の木は実をなし、タネボーとして生まれ落ちた。コノハナになってこうして口を利けるようになったのだ」
コノハナはそう語ると森の奥へと消えていった。
彼を生み落した血を吸う樫の木は今でもトウカのどこかに生えているという。