バトルサブウェイは地下を走っている。
当然見えるのは暗い壁やそして近づいては去っていく均等に配置された明かりばかりだが、ふと窓を見ると違う景色が見えることがあるという。
それは深海にいるはずのチョンチーの明かりだったり、トンネルに現れるいくつもの鬼火だったり。
バトルの合間になんとなく窓を見たら、ガラスにカゲボウズがびっしり張り付いていていた、という話もある。
体験談、作り話、ただの見間違い、酔っ払って見た幻覚。
もはやどれが本当でどれが嘘かもわからないが、これはと思ったものを紹介したい。
<終わりなきハブネーク>
ライモンシティに住むAさんは、バトルサブウェイの常連だ。
Aさんは一年ほど前、サブウェイの走るトンネルの壁を這っているきばへびポケモン、ハブネークを見たという。
「列車が動き出してすぐ後ですよ。なんとなく窓を見たら、壁を這ってて。顔は見えなかったですよ。胴体だけ。六角形の金色の鱗が光ってて、あの模様は間違いないですよ」
トンネルの中にポケモンが出る事は別に珍しくないという。走る電車が線路を軋ませているその直ぐ脇をコラッタが通ってる事なんてよくあるし、ズバットがいる事もある。だからAさんもハブネークがいたからといって、珍しくはあるが別段おかしいとは思わなかったという。
だが、
「そのうちに列車が走り出して、あれ……? って……」
ハブネークの長い胴体は車窓から見え「続けて」いた。
列車がスピードを上げ、すでに何十、何百メートルは走っているにも関わらず、だ。
「いくら列車が走っても、ちっとも頭にも尻尾の先にも到達しないんですよ。終わらないんですよ。そのハブネーク。一体何キロメートルあるんだって話。不思議と怖いとは思わなかったんですけど、バトルが終わるたびに振り向いてもまだ見えるんです。もう気になって気になって。何度見間違いかと思って窓に張り付いてよくよく見るんですけど、やっぱりどう見てもハブネークなんです。でも頭にも尻尾の先にも到達しないんです」
連勝が止まって下車したAさんだったが、下車してホームからトンネルを覗き混んだ時、もうその姿は見えなかったという。