マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  [No.3740] その後 投稿者:Ryo   投稿日:2015/05/07(Thu) 18:51:38   39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

そういうわけで今、私の家からはきのみの木も、アースフードも消え去ってしまった。
職場の昼休みを利用してアースフレンド社に電話をかけてみたが、返品よりもむしろラブタやセシナの成分を抜いた別商品との交換を薦められたので呆れて切ってしまい、買い替えたばかりのアースフードはそのままプランターと一緒にゴミ箱行きとなった。集団訴訟を起こす動きもあるらしいが、私個人はもうこの企業と係る気が完全に失せてしまった。
レッチーは今、肉食性のポケモン用の缶フードを朝夕に食べる生活をしている。ほとんどの乾燥フードは多かれ少なかれきのみの成分が入っているので、与えることができないのだ。幸いにもそういう生活でレッチーの体に支障は出ていないし、体重も戻ってきた。今思えば、体が引き締まったのも、頻繁な毛づくろいも、彼の体が合わないフードに必死に抵抗していた証だと思うと、今すぐ過去に戻ってアースフードを捨ててしまいたくなる。
しかし、過去は過去だ。問題は今、私とパッチーに起きている。ずっときのみ食を続けてきた私だが、今回のレッチーの事件、そしてそれに対する企業の対応は私のきのみ食への信頼を大きく揺らがせる結果となってしまった。しかしこれまでの習慣というのは恐ろしいもので、今やきのみや雑穀、野菜以外のものを口にするのがとても恐ろしいことのように感じられるのだ。最近はファストフード店の前を通っただけでにおいが気になるほどになっていたくらいである。
パッチーはふっくらとしてきたなどと言って喜んでいたが、なんでもない、ただ食べ過ぎて太っただけだ。きのみばかりを食べ続けていたらこうなったのだ。レッチーのことがあって心配になったのでパッチーもポケモンセンターで診てもらったが、きのみアレルギーにはなっていなかった。だが、やんわりとだが、太り過ぎだと言われてしまったのだった。
「あんまり体重が増えると、高血圧などにも繋がるので気をつけてあげてくださいね」
これではきのみで健康も何もあったものではないではないか。

私はある日、仕事帰りに救いを求めるように本屋へ立ち寄った。もうネットの情報は信用できない。アサガオさんのホームページもブックマークから消えた。よく考えたら彼女はホームページなど持っているがただの一般人ではないか。数々のレシピもどうせその辺の素人が考えたものだ、なぜそんなものを信頼したのだろう。お陰でここ数日玄米ご飯と野菜スープしか食べられていない。そんな食事でまともに頭が回るはずもなく、お客様の質問に頓珍漢な受け答えをしてしまい、上司に大目玉を食らってしまった。ああもう!
私は怒りの赴くまま、闇雲に本棚の間を歩きまわった。絵本コーナー、スポーツ雑誌の棚、音楽情報誌の棚…そうしていつしか、健康法に関する本が山のように置いてある棚の前に来ていた。
平積みで置いてある本を見下ろし、ある一冊が目について手に取る。それはきのみ食を激しく批判した本だった。

「こんなに危ないきのみ食!―ドクター・キタノが教える正しい食生活」
白い表紙に大きくきっぱりとしたフォントで書かれた題字が、私の中の怒りに呼応して一艘頼もしく見える。私は表紙をめくり、まえがきを読み始めた。
「私、キタノ・ミヤアキは、長年人とポケモンの正しい食生活について研究してまいりました。その中で近年、きのみ食なるものを提唱している人々がいると聞き、私はその実態を調査しました。そしてその内容が実に恐ろしいものであることを知ったのです。
『きのみは体に毒である』
―いきなりこんなことを言われても、信じられない人もいるでしょう。しかし、本書で語るきのみ食の実態、また、きのみがどのような過程で作られた食物であるかを知れば、誰もが頷かざるを得ないと思われます。結論から言ってしまえば、あれは人間がどのようなポケモンにも食べられるように味を極端にした毒なのです。言わば砂糖をたっぷりかけたお菓子や、思い切り塩辛くしたおつまみのようなものなのです。例えばモモンの実に含まれる糖質は1個当たりおよそ30gで、こんなものを健康によいからといって食べさせ続けていたらあなたのポケモンは糖尿病になること間違いなしです。
人とポケモンが健康に、幸せに生きていくためには、何を食べ、何を避けるべきか、それを記したのが本書です。その答えは動物性蛋白質にあります。きのみなどを食べなくても、肉や魚肉、乳製品などで充分にビタミン類は補えるのです。…」

私はそこまで読むと、万感の思いで本を閉じた。ここ数日の迷い、怒り、きのみ食への反感や疑問を解決し、その先を示してくれる先生がここにいたのだ。怒りに赤く曇ったようだった景色は今や、霧が晴れたように鮮やかに見えていた。レジ係の人に向けて表紙を見せつけるように本を置いた時の私の顔は、ここ数日で一番輝いていたと思う。
そしてそのまま私はフレンドリィショップに自転車を走らせ、意気揚々とパッチーのためにササミジャーキーを探し始めたのだった。


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