【011】鏡の彼 作:風間深織 ☆10 ☆☆15 ☆☆☆5 =55 (自由感想) 鏡を通してお互いを思う。 ものすごい上手いと思いました。扱い方がとても好きです。 絆を書き上げることが出来る作品が好きなので、例外なく好きです。 詩的な進み方も好きです。このような心を見えるように描く、そこがとてもツボに入りました。 キトラ ☆☆☆ テーマは鏡と思われる。誤字脱字及び話に不自然な点は見当たらなかった(5/12時点)。そしてテーマの鏡を上手いこと使って、存在感があった。以上の点から☆☆☆とした。これは評価と関係ないが、♀のブラッキーも♂のエーフィも大好き。 あつあつおでん ☆☆☆ グッと来た文【「ねぇアルシス、元気? 私、やっぱりアルシスがいないとだめなの。今までたくさんのものを半分こしてきたでしょう? 大好きなパンケーキも、一緒に使っていたお部屋も、この体、命でさえ……半分こしてきたでしょう? だから、やっぱり一緒にいないとだめなの……」】 よく二つで一つとか言う言葉を耳にしますが、この物語はその言葉がピッタリとはまる作品だと思いました。そしてイーブイの『私』とテイジスが鏡に向かって話しかけているシーンには胸がジーンとなりました。『私』はブラッキーに進化して、『彼』はエーフィに進化して……お互い自分の希望とは違ってもそれを選んだ二匹のイーブイの心はきっと鏡を通して繋がっていたのだろうなぁ……と感じたり。まさか、『私』と『彼』がそう来るとは予想してなかったです。(汗)太陽と月の関係性を考えると、今回のエーフィとブラッキーというポケモンはこの物語でのメッセージ性を更に強くしていると思いました。(ドキドキ) 巳佑 ☆☆ お題:鏡(物理的、あなたを映すもの) 途中で何となく結末は予想できてしまったけれど、この作品は奇を衒ったものではないので、それは問題ないと思います。いるはずのないアルシスを見たという場面で、ふたりのロッテを彷彿とされられました。(全然違いましたが!)そのせいか、児童文学を読んでいるような安心感に包まれました。 レイニー ☆☆ 遠くの彼を想い続けるために彼が望んだ姿になるまでの心の変遷が上手く書かれていてよかったが、相手の存在がそこまでのものになるまでの絡みが少なかったので、そこを綿密に書くとぐっとよくなると思う。 西条流月 ☆☆☆ ◇あれからひとりで四回の満月を見ました。あと八回、私はひとりで満月を見なければなりません。 季節の移り変わりを鮮やかに描写、その中に、愛する彼への気持ちが織り込まれたとても綺麗な作品でした。 上の一文もそうなんですが、彼への「会いたい」という気持ちが間接的に綴られているのが何とも言えない――恋文を呼んでるかのようでした。「あなたがいない――」の三行は、その三行だけで作品になり得ると思います。 リナ ☆☆ お題を巧く使っていますし、表現が綺麗で非常に読みやすかったです。しかし私の読解力がなかったせいでしょうか、二匹の飼い主は恐らく双子ですよね。それなら何故、冒頭の会話では二人が滅多に会えないがために別れを惜しむようになっているのでしょうか……。離ればなれになるのはその時点では分かっていなかったようですし。 鶏 ☆ ちょっぴり演劇っぽい感じがいたします。幻想的。盛り上がりに欠けることが残念です。ただただそれっぽいことを流しているだけで、心にフックをひっかかってくれる要素がないのが残念です。申し訳ないですが、僕はこの話に面白さを見出せなかったです。 乃響じゅん。 ☆☆ 一読目:双子にイーブイ。双子は鏡で来ると思ってたけど離れ離れになったイーブイが鏡を見つめてしかも相手のなりたかった姿に進化するとかこれもう美しい話ですなぁ。ただ、淡々としててちょっと流し読みでは特に印象に残らなかった。 二読目:じっくり読むと前半の複線を後半で回収してある。進化のくだりとか。物凄く丁寧だこれ。すげぇ。 三から八読目:繰り返し読むと本当にこれ物凄く丁寧に書かれてるなぁと思う。ただ、逆を言えばそれだけ。欠点がない分、褒めるところもなんというか、少ない。 九から十読目:☆2つ。なんだろうなぁ。3つとまではいかないけど、これすごく上手にまとまってる。ただ、お上品すぎるかな。ここ面白いよ!って言えるポイントが正直言って見つからなかった。 音色 ☆☆ 初読したときはそんなにでしたが、初読したとき一読したときよりも面白く思いました。オチが綺麗。ブイズものでいいなと思えるものに会う機会がなかなかなかったので尚更です。 こういう関係いいですよねー。とても和ませてもらいました。 なにより鏡の使い方が上手い。これは感心しました。賢い。ここが評価の最大のポイントでした。 気になったところは以下。 >そして、まだ完全ではない満月を見て、こう言いました。 完全でない……満月? 満ちてない月でいいのでは。>>いつものように当たり前に、言葉も交わさずに…… 重ねた表現で重複表現してます。 でりでり ☆☆ ポケモン版「賢者の贈り物」か。最後の終わり方も決して悪くないが、むしろ、互いを思い合った結果であることを強調して、「舞い散る桜の花びらと、きらきら輝く彼の瞳は、一年前のままでした。」で終わるのも余韻があって良いようにも思う。 サトチ ☆☆ イーブイの進化もの。 これはポケモン二次の中では、間違いなく王道の部類に入りましょう。 うん、間違いねぇ(笑)ところがしかし、一方のその内容については非常に独創的であった上、近頃読んだお話の中では類を見ないほどにロマンティックで、普通に舌を巻かせて頂きました。 ……うん、やられた(汗)作中での『鏡』の使い方が大変面白かったのと、情景描写と心理描写の絡め方の見事さ。 その二つが主な評価点として上げられますね。 終わった後の余韻も申し分無し。欠点らしい欠点はありませんでしたが、主に触れている事象は物語の核となる部分だけでしたので、些か盛り上がりに欠けるきらいはあったでしょうか? ……まぁでも、このお話には無理矢理そんなものをねじ込む必要も無さそうですし、やっぱりこのスタイルで良かったのでしょう。後は、単なる別離にしては、姉妹である筈の双子の反応が、ちょっと大袈裟に過ぎた感じかな?(汗) 死別したり、両親の離婚で会う機会を半永久的に奪われたりしたのならともかく、一年程度の別離にしては、やや嘆き方が深刻でした。 電話で声を聞く位は出来ましょうから、少なくとも近代以降であろうこの物語の範疇では、明らかに悲嘆がかち過ぎている印象です。 仲が良いのにケチは付けたくないけど、人生それぐらいで泣き暮らしてちゃ生きていけませんぜ……以上です。 全体的な印象は、文句なしに良作。 久し振りに、はっきりと心に残るイーブイものを拝見させて頂きました! ありがとう御座います。 クーウィ ☆☆ まさに正統派。本コンテストの応募作中で最も正統派な「鏡」小説だと思う。最初のイーブイ二匹はそのまま鏡写しの自分という風に見ることが出来、再会を果たした二匹はやはり鏡にうつった自分なのだ。その構図がなんとも美しい。NHK教育のおはなしのくに(今でもやってるのかしら?)あたりでイラスト付で朗読したらかなり雰囲気出ると思う。(私は邪道に走ってしまいがちなのでこういうのを書ける人はすごいと思う) お題:鏡 タグ:一人称、イーブイ、エーフィ、ブラッキー、双子 地方:不明 死亡:なし No.017 ☆☆ とても綺麗な文章で、ドラマもいい。 表現が気になった二点。ふたつめの大段落、二匹のイーブイが語り合うパートで“まだ完全ではない満月”という表現。これはいただけない。直前で“少し欠けた美しい月”とあるのに、次に“満月”と言ってしまうのはどうにも味気ない。 次の大段落、“私はちょこんとテイジスの膝の上に乗り「どうしたの?」という目で彼女を見つめました。”は作中主体の動作表現としてどうか。この瞬間だけ筆者の視点からイーブイを描いてしまってはいないか。「私が見つめた」という力強さがなく、どこか客観的な表現のように思える。例えば「どうしたのだろうと彼女の顔を伺った」とか、文字通りイーブイ目線で描く必要があった。 加えて残念だった点。 緑や風といった自然に恵まれた丘が象徴的な舞台として設定されているのにも関わらず、その姿の移り変わりを生かし切れていない。桜の花と青葉は登場するが、次に現われる屋外の描写はもう雪である。さみしさに打ちひしがれて緑が色あせ、どこかくすんだ秋色になる丘がすっとばされてしまった。 どこかモデルになる丘があるのであれば取材はできるだろうし、定点観測した風景写真か風景画を探せば表現の助けになったと思う。季節のワイルドフラワーや、朝霧、陽光をはじくダイヤモンドダスト。丘の一年には飽きることない美しいものがたくさんあり、それらが少しも心を喜ばせないほど彼の存在の欠如は大きな意味を持たせる。 一生懸命に粗探しをしてしまったが、こうした注文を付けたくなる、いい作品だった。 渡邉健太 ☆ <作品情報> テーマ種別 →鏡作品タグ →【物理的な鏡】【イーブイ進化系】【鏡合わせ】 ポケットモンスターシリーズの二次創作としての意義 →問題ないレベルに達している。 テーマの消化度合い →鏡、というところから連想できる妥当な範囲に収まっている。 <講評> 向き合う二人がお互いの姿と記憶を目に焼きつけ、そしていつしか鏡のように自分がその姿になる――という展開は、鏡というモチーフをうまく生かしていると思います(シチュエーションはかなり異なりますが、「フェイス/オフ」というアクション映画で似た手法が使われていたのを思い出しました)。エーフィとブラッキーという対比もよく効いています。 全体通して二次創作としての要件も満たしていますし、テーマの消化というところでも無難にできているのですが、今回のコンテストを通して見たときに若干「おとなしい」という感は否めませんでした。綺麗にまとまることももちろん重要ですが、そこからさらに一歩踏み込んで、読者の心に入り込むような話作りができるとよいと思います。今後の更なる活躍に期待しております。 586 |