【017】よわむしかがみ 作:ヤシマ

 ☆13 ☆☆13 ☆☆☆4 =51


☆☆☆
 テーマは鏡と思われる。誤字脱字誤用及び話の流れに不自然な点は見当たらなかった(5/14時点)。また、テーマの鏡は随所で顔を出している。以上の点から☆☆☆とした。これは評価と関係ないが、主人公がチコリータであることにビックリ。ずっと萌える兄妹かとばかり。
あつあつおでん

☆☆
 兄という呼び方に強い違和感を感じたので、そう呼ぶに至った説明などがあるとすんなり入っていきやすかったと思う。それ以外は上手く書けており、叙述トリックの場面も上手く回収していたと思う。
西条流月

☆☆
 グッと来た文【『弱虫は鏡の向こうへあげてしまったの』】
 妹さんはポケモンのチコリータさんのことだったのですね。トレーナーである人間の『兄』さんとは兄妹のように育ってきたということですかね?チコリータさんのコンプレックスが鏡を通じて、胸にとても突き刺さりました。そして兄さんを守る為に立ち上がった姿には思わず惚れちゃいましたです。(ドキドキ)個人的には兄さんのことが大好きなんだなという気持ちがそのゴローンとの対峙シーンで一番伝わってきました。大好きな兄の為にも! といった感じで。最後のチコリータさんが鏡と向かい合ったシーンでは、チコリータさんの『今』が強く伝わりました。人は、ポケモンは変わることが出来る! その言葉が強く脳裏に出てきた作品でした。
巳佑


 お題:鏡(鏡の向こうの自分)主人公が人間かと思っていたら、最後の最後でポケモンであると判明させられる作品。「兄」という表現で完全に騙されます。ラスト「弱虫は鏡の向こうへあげてしまった」とありますが、結局彼女がどう強くなったのかもっと描かれていればよかったかな。
レイニー

☆☆☆
 すっかりだまされてしまいました。ラストシーンもにやりとしてしまいます、面白かったです。

☆☆
 くそっ、やられた!!笑兄ってそういう兄ですか。やられた!!←そうでなければいつまでもお風呂入ったり一緒に寝たりしませんもんね。うまいミスリードでした。弱虫が勇気を振り絞るという王道展開もいい味出してます。強いて言うなら、鏡の絡み方が強引かなぁ……。最後のセリフは凄くいいんですけど、全体として見ると差引きマイナスでした。鏡の向こうに弱虫な自分を追いやるという考え方自体は凄く好きで、クールでした。が、どうも最初の方で違和感を感じてしまうのです。
乃響じゅん。

☆☆
 一匹のポケモンが成長をする物語。最後の控え室に入るまでにはどれだけの時間があったのでしょうか。たった一度危ない橋を渡っただけで、ずっと引きずっていたトラウマを解消できるとは思えないので、恐らく長い時間があの改行の中にあるのでしょう。しかしもしそうなら、もう少し深く書いてもいいと思いました。書かれていないのでどこかご都合主義的と言いますか、無理やり結末に合わせてしまった感がある気がします。全体のストーリーとしてはおもしろかったので、字数制限のない状況で書き直されたものが読んでみたい作品でした。



 主人公は人間と思わせておいて、最後に主人公の正体が明らかになる。叙述トリックということになるのだろうか。しかしその場合、「兄」という表現はいかがなものか。あからさまに血縁、もしくは正式な家族であることを示す言葉だと思うのだが?「お兄ちゃん」等にした方がよかったのではないか。
サトチ

☆☆
 騙された。お兄ちゃんにくっついていくか弱い「人間の」妹なのかと思ってたらなんか違った。ゴローンのバトルあたりからなんかおかしいなぁとは思っていたのだが。 二読目にチコリータだという前提で読むとこれでもかというほどしっくりくる。彼女の惨めさというものが騙されて読んでいたころより浮き出てくる感じだった。欲を言うならば二読目に新しい発見があるといいのだが。
 ある本で読んだのだが、雛のころから人間に育てられたスズメは自分が人間だと思ってしまい、仲間のスズメを同族として認識できなくなっていた。本主人公はポケモンとしての自覚はあったようだけれど、気持ちが人間の側に立っていたのかもしれない。それにしてもお兄ちゃんの根気はすごい。私だったらまずキレちゃう。こういう長い目で見れる力があるからチャンピオンになれたのかもしれないなぁ。周囲の小説のトレーナーが廃人ロードに走る中(笑)、彼の存在は貴重である。爪の垢でも煎じて飲ませたいわ。
お題:鏡
タグ:一人称、一人称詐欺、チコリータ
地方:不明
死亡:なし
No.017


 これも兄弟間コンプレックスを扱った作品。
 ……ただし、此方はずっと一緒に旅をしていると言う、ちょっと珍しいケースですね。先ず最初に評価したいのは、非常に言葉のリズムが優れている点。 兎に角一文一文のテンポが良く、予め音読を予定して書かれたのかと思えるほどに、読んでいて気持ちが良かったです。また情景描写や心理描写も相応で、読んでいる側から頭の中に景色が浮かび上がり、始終作中世界に腰を据えた状態で、最後まで読了する事が出来ました。 文章全体を通して一種の清涼感があり、その意味ではとてもすがすがしい一作。自らの殻を破ろうとする主人公の、しっかりとした決意も印象的でした。
 『弱虫なんて、そんなものは鏡の向こうにくれてやる――』この表現は大好きです。ただその反面、ストーリーの内容自体の方は、些か物足りなかったかも…… と言うのも、この作品の内容は要約してしまうと、『兄についていってポケモンに襲われ、その後ポケモンリーグに到達した』と言うそれだけのパートで終わってしまっており、純粋なストーリーとしての面白さと言う点では、残念ながら他の作品群と比べると、かなり見劣りしてしまうのです。描写や展開、作中のリズムが宜しかっただけに、この内容量はちょっと残念。
 ……パートを増やす予定が無かったのなら、せめてゴローンとのバトルのシーンを、簡潔にでも入れて欲しかったかなぁ(汗)後、誤字もチラホラ。
 ……リズミカルな文章は構築に手間が掛かるものですが、それでも最終的な見直しだけは、きっちりやって置いた方が無難です。綺麗なテキストに、異物は大敵。
 これで汚すのは勿体無い……!
クーウィ

☆☆
一読目:おにいちゃんおにいちゃん連呼しておきながらお前チコリ―タかい。てっきりマユルドのまゆ子ちゃんと似たようなものかと考えた。ほら、ポケモンと人間の兄弟みたいな。え?やっぱり違う?うーん、よく分からない。
二読目:とりあえずじっくり読む。だいぶ印象変わる。とにかくこのチコリ―タはご主人をおにいちゃんと呼ぶ。兄妹みたいに育ったからなのかどうか分かんないけどね。一人称詐欺だろこれ。まぁ、無事という事はゴローンに勝てたんだろうという事で。とにもかくにも、チコリ―タちゃん成長物でほほえましい。が、なーんか落ちでつまらなく感じてしまった。何故だろう?悪くない。面白い部類のはずなのに。
三から八読目:どことなく気に入らない理由判明。戦わないからと言って小さなチコリ―タをそう簡単に弱虫弱虫って言うか?ポケモンだぞ?大体、人間という先入観で見ていたけれど、ポケモンとして考えたらおかしくないか?旅に出るのに反対されるのだって、ポケモン連れて行くのに何がおかしいんだ?ってなるからだ。タブンネー。
九から十読目:結果、☆二つ。種明かしへのつなげ方は悪くないけども、それまでの書き方がどうも不自然というか微妙な気がした。
音色


 読みやすいテキストだけれども、自分の殻を打ち破るパワーがそれほど感じられない。たぶんチコリータが技を出す、或いは相手の技で傷付く描写がないからだろう。さらっと綺麗に過ぎてしまった。 戦うというのは本当に恐ろしいことで、特に野生のゴローンが相手となれば、トレーナー同士のバトルとは話が違ってくる。よわむしな自分を振り切るエネルギーが、身体的な盛り上がりに現れてほしかった。 鼻息荒く、闘牛よろしく後肢で地面をかくような異常な興奮状態。アメフト選手の入場のように泣いているのか吠えているのか、とてもまともなではいられない狂気の瞬間。 戦うというのは本当に恐ろしいことで、作中主体が置かれた危機的な状況に、作者が追い付いていないように思う。ポケモンを作中主体としてバトルを描くのならば、格闘技の取材などをしてみるといいだろう。
渡邉健太

☆☆
 実は主人公がチコリータだったというミスリードは面白く、それを踏まえて読み返すとなるほど合点が行くと思う反面、兄? と思いました。兄の「ような」存在ってこと? それともシンオウ神話的なことやっちゃって本気で血が繋がってるんすよふひひなの? しっくり来ない。なんらかの補足がないので、スッキリした読後感が得られなかった。どうして兄なのか、本当に教えてください。同様に父母も。
 ただ心理描写が分かりやすく、そこが上手いし面白さを引き立ててるなと思います。
 あと文章の突っ込みどころの少なさから技量の高さは伺えます。気になったのは一つ。
>>横っ飛びに飛ぶ。 重複表現が重なってる!
でりでり

☆☆
<作品情報>
テーマ種別 →鏡作品タグ →【観念的な鏡】【主観の錯覚】【チコリータ】
ポケットモンスターシリーズの二次創作としての意義 →問題ないレベルにある。
テーマの消化度合い →特筆すべき点はないが、問題は無い。
<講評>
 この作品のキーポイントは、恐らく「読者を引っ掛けること」にあると考えています。主人公のチコリータに「兄」と呼ばせることで、主人公を「人間の妹」であると錯覚させ、最後のブロックで「実はチコリータでした」とひっくり返す……という構図ですね。驚いた読者がよくよく読み返してみると、主人公には「」付きの台詞がひとつもなく、チコリータでも通用するようになっていることに気付きます。私も初見では物語にすっかり騙されてしまった(完全に人間だと思い込んでいた)ので、この試み自体は上手くいっていると思います。こんな風にもっといい意味で読者を欺けるようになりたい……! 作中ではチコリータが「兄」を「兄」と呼ぶに至った経緯が記されていないので、ここが何らかの形でクリアできるといいと思ったのですが、考えてみると若干難しい(兄にわざわざ「お兄ちゃんと呼べ」と言わせるのは不自然ですし)ですね。これについては、チコリータが「兄」を「自分と同じような存在(=ポケモン)」に思った、逆にチコリータが「自分が『兄』と同じような存在(=人間)」だと考えていたと解釈するのが無難ですかね。 お題である「鏡」の使い方はごくごく普通で、上手く消化できていると思います。今後の更なる活躍に期待しております。
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